特許第6248144号(P6248144)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248144
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20171204BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   F04B49/06 321Z
   F15B11/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-114427(P2016-114427)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-218989(P2017-218989A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2017年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100197516
【弁理士】
【氏名又は名称】秋岡 範洋
(72)【発明者】
【氏名】阪井 祐紀
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/156532(WO,A1)
【文献】 特開2000−120604(JP,A)
【文献】 特開2010−230133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象を駆動する駆動アクチュエータに制御弁を通じて作動流体を供給するポンプ装置であって、
前記駆動アクチュエータに作動流体を供給し斜板の傾転角度に応じて吐出容量が変化する可変容量型の第1ポンプと、
供給される制御圧に応じて前記第1ポンプにおける前記斜板の傾転角度を制御する傾転アクチュエータと、
前記制御弁の上流側の圧力と下流側の圧力との前後差圧に応じて移動する制御スプールによって前記制御圧を調整するレギュレータと、
前記第1ポンプと共通の駆動源によって駆動される定容量型の第2ポンプと、
前記第2ポンプから吐出される作動流体が導かれるポンプ通路に設けられる抵抗器と、
前記抵抗器の前後差圧の上昇に応じて前記制御圧を低下させるように前記レギュレータを駆動する制御アクチュエータと、
前記抵抗器の上流側圧力及び下流側圧力の一方に抗するように前記制御アクチュエータに作用する補助圧を前記制御アクチュエータへ導く補助通路と、
前記補助通路を通じた前記制御アクチュエータへの前記補助圧の供給と遮断とを切り換える切換弁と、
前記切換弁を切り換えると共に前記駆動源の回転数を第1回転数と当該第1回転数よりも小さい第2回転数との間で切り換えるコントローラと、を備え、
前記制御アクチュエータは、前記抵抗器の前後差圧を受けることにより生じる差圧駆動力と前記補助圧を受けることにより生じる補助駆動力とが釣り合うように移動する制御ピストンを有し、
前記補助圧が作用する前記制御ピストンの受圧面積は、前記駆動源の回転数が前記第1回転数と前記第2回転数との間で切り換えられるのに伴う前記差圧駆動力の変化量に前記補助駆動力が相当するように設定されることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記レギュレータは、前記制御スプールを収容するハウジングをさらに備え、
前記ハウジングには、
前記制御スプールが軸方向に移動自在に挿入されるスプール孔と、
径方向から前記スプール孔に開口し前記スプール孔に作動流体を導く導入通路と、
前記スプール孔の中心を挟んで前記導入通路の開口と対向する位置に開口する対向孔と、が形成されることを特徴とする請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記制御スプールは、前記導入通路からの作動流体を導く環状溝を有し、
前記対向孔は、前記制御スプールの位置によらず前記環状溝に臨むように形成されることを特徴とする請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記レギュレータの前記制御スプールを収容するハウジングに着脱可能に取り付けられ前記切換弁を収容するバルブハウジングをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記制御スプールにおいて、前記制御弁の前記上流側の圧力が作用する受圧面積と前記下流側の圧力が作用する受圧面積とは、互いに等しくなるように設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のポンプ装置。
【請求項6】
前記補助圧は、前記抵抗器の前記上流側圧力に抗するように前記制御ピストンに作用し、
前記補助圧が作用する前記制御ピストンの受圧面積は、前記駆動源の回転数が前記第1回転数から前記第2回転数へと切り換えられることに伴う前記差圧駆動力の低下量に前記補助駆動力が相当するように設定されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、斜板の傾転角度に応じて油圧回路に供給されるポンプ吐出量が可変となる第1のポンプと、供給される制御圧力の上昇に応じて斜板の傾転角度を減少させる傾転アクチュエータと、油圧回路の負荷圧に応じて制御圧力を調整するレギュレータと、第1のポンプと連動する第2のポンプと、第2のポンプの吐出回路に介装したオリフィスと、オリフィスの前後差圧の上昇に応じてレギュレータにより調整される制御圧を減じるように駆動するアクチュエータと、を備えるポンプ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−291731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるようなロードセンシング制御されるポンプ装置では、第1、第2ポンプを駆動する駆動源の回転数が低下すると、第2ポンプの吐出流量が減少し、オリフィス(抵抗器)の前後差圧が低下する。これにより、アクチュエータ(制御アクチュエータ)は、制御圧が上昇するようにレギュレータを駆動するため、傾転アクチュエータは斜板の傾転角度を減少させ、第1ポンプの吐出量は減少する。このように、特許文献1のポンプ吐出量制御装置では、駆動源の回転数が低下すると第1ポンプの吐出流量が減少して、駆動対象を駆動する駆動アクチュエータの速度は低下する。
【0005】
ここで、例えば作業者が異なる場合など、駆動源の回転数に対して求められる駆動アクチュエータの駆動速度が異なる場合がある。つまり、ポンプ装置には、回転数の低下に応じて駆動速度を低下させる場合と、回転数が低下するにも関わらず駆動速度をほとんど低下させずに維持させる場合と、の両方の機能が求められることがある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、駆動対象を駆動する駆動アクチュエータに制御弁を通じて作動流体を供給するポンプ装置であって、駆動アクチュエータに作動流体を供給し斜板の傾転角度に応じて吐出容量が変化する可変容量型の第1ポンプと、供給される制御圧に応じて第1ポンプにおける斜板の傾転角度を制御する傾転アクチュエータと、制御弁の上流側の圧力と下流側の圧力との前後差圧に応じて移動する制御スプールによって制御圧を調整するレギュレータと、第1ポンプと共通の駆動源によって駆動される定容量型の第2ポンプと、第2ポンプから吐出される作動流体が導かれるポンプ通路に設けられる抵抗器と、抵抗器の前後差圧の上昇に応じて制御圧を低下させるようにレギュレータを駆動する制御アクチュエータと、抵抗器の上流側圧力及び下流側圧力の一方に抗するように制御アクチュエータに作用する補助圧を制御アクチュエータへ導く補助通路と、補助通路を通じた制御アクチュエータへの補助圧の供給と遮断とを切り換える切換弁と、切換弁を切り換えると共に駆動源の回転数を第1回転数と当該第1回転数よりも小さい第2回転数との間で切り換えるコントローラと、を備え、制御アクチュエータは、抵抗器の前後差圧を受けることにより生じる差圧駆動力と補助圧を受けることにより生じる補助駆動力とが釣り合うように移動する制御ピストンを有し、補助圧が作用する制御ピストンの受圧面積は、駆動源の回転数が第1回転数と第2回転数との間で切り換えられるのに伴う差圧駆動力の変化量に補助駆動力が相当するように設定されることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、駆動源の回転数が変化すると、第2ポンプの吐出流量が変化して、抵抗器の前後差圧が発揮する差圧駆動力が変化する。一方、制御アクチュエータへの補助圧の供給と遮断とを切り換えると、制御アクチュエータに補助駆動力を作用させるか否かが切り換えられる。また、制御ピストンにおける補助圧の受圧面積は、駆動源の回転数の変化による差圧駆動力の変化量に相当する補助駆動力を発揮するように設定される。このため、駆動源の回転数の変化時に補助圧の供給と遮断とを切り換えることで、駆動源の回転数の変化に伴い、制御アクチュエータの駆動力を変化させるか、または、維持させるかを切り換えることができる。
【0009】
第2の発明は、レギュレータが、制御スプールを収容するハウジングをさらに備え、ハウジングには、制御スプールが軸方向に移動自在に挿入されるスプール孔と、径方向からスプール孔に開口しスプール孔に作動流体を導く導入通路と、スプール孔の中心を挟んで導入通路の開口と対向する位置に開口する対向孔と、が形成されることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、制御スプールが、導入通路からの作動流体を導く環状溝を有し、対向孔は、制御スプールの位置によらず環状溝に臨むように形成されることを特徴とする。
【0011】
第2及び第3の発明では、制御スプールに作用する作動流体の圧力バランスが良好に保たれる。したがって、制御スプールの摺動性を良好にすることができる。
【0012】
第4の発明は、レギュレータの制御スプールを収容するハウジングに着脱可能に取り付けられ切換弁を収容するバルブハウジングをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、切換弁のレイアウトの自由度が向上するため、切換弁の駆動方向が鉛直方向と一致することを防止することができる。
【0014】
第5の発明は、制御スプールにおいて、制御弁の上流側の圧力が作用する受圧面積と下流側の圧力が作用する受圧面積とは、互いに等しくなるように設定されることを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、補助圧が、抵抗器の上流側圧力に抗するように制御アクチュエータに作用し、補助圧が作用する制御ピストンの受圧面積は、駆動源の回転数が第1回転数から第2回転数へと切り換えられることに伴う差圧駆動力の低下量に補助駆動力が相当するように設定されることを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、駆動源の回転数の低下による第2ポンプの吐出流量の低下によって、抵抗器の前後差圧が発揮する差圧駆動力が低下する。駆動源の回転数の低下に伴って制御アクチュエータへの補助圧の供給を遮断するように切換弁を切り換えると、駆動源の回転数の低下により差圧駆動力が低下すると共に、差圧駆動力に抗するように作用する補助駆動力が作用しなくなる。よって、切換弁の切り換えの前後にわたって制御アクチュエータによるレギュレータの駆動量には変化が生じず、斜板の傾転角度は変化しない。このため、駆動源の回転数が変化しても第1ポンプの吐出流量はほとんど変化しない。また、駆動源の回転数の低下に伴い制御アクチュエータへ補助圧を供給するように切換弁を切り換えると、駆動源の回転数の低下に基づく差圧駆動力の低下により、制御アクチュエータは制御圧が上昇するようにレギュレータを駆動し、斜板の傾転角度が小さくなる。このように、ポンプ装置では、駆動源の回転数の低下に伴い、制御アクチュエータの駆動力を維持するか、または、低下させるかを切り換えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプ装置において、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るポンプ装置を備える油圧駆動装置の油圧回路図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るポンプ装置の断面図であり、レギュレータが第1ポジションである状態を示す。
図3図2におけるA部の拡大図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るポンプ装置の断面図であり、レギュレータが第2ポジションである状態を示す。
図5】本発明の第1実施形態に係るポンプ装置の側面からみた断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係るポンプ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るポンプ装置100及びこれを備える油圧駆動装置1について説明する。
【0020】
油圧駆動装置1は、例えば油圧ショベルに搭載され、駆動対象(ブーム,アーム,又はバケット等)を駆動する。油圧駆動装置1は、図1に示すように、作動流体としての作動油が給排されることにより駆動対象を駆動する駆動アクチュエータとしての油圧シリンダ2と、油圧シリンダ2に給排される作動油の流れを制御する制御弁3と、制御弁3を通じて油圧シリンダ2に作動油を供給する駆動油圧源としてのポンプ装置100と、を備える。
【0021】
油圧シリンダ2は、制御弁3を通じてポンプ装置100から導かれる作動油によって伸縮作動して、駆動対象を駆動する。制御弁3は、作業者の操作に応じて開度が調整され、油圧シリンダ2に供給される作動油の流量を調整する。図1では、単一の油圧シリンダ2及びこれを制御する制御弁3のみを図示し、その他の駆動アクチュエータ及び制御弁は図示を省略する。
【0022】
ポンプ装置100から吐出される作動油は、吐出通路21を通じてポンプポート31に送られ、ポンプポート31に接続する制御弁3によって油圧シリンダ2に導かれる。
【0023】
ポンプ装置100は、油圧シリンダ2に作動油を供給し斜板11の傾転角度に応じて吐出容量が変化する可変容量型の第1ポンプ10と、供給される制御圧Pcgに応じて第1ポンプ10における斜板11の傾転角度を制御する傾転アクチュエータ15と、傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgを制御弁3の前後差圧に応じて調整するレギュレータ(ロードセンシングレギュレータ)60と、レギュレータ60に導かれる制御元圧Pcを第1ポンプ10の吐出圧P1に応じて調整する馬力制御レギュレータ40と、を備える。
【0024】
第1ポンプ10は、例えば斜板式ピストンポンプが用いられ、斜板11の傾転角度に応じて吐出容量(ポンプ押しのけ容積)が調整される。なお、「吐出容量」とは、第1ポンプ10の1回転当たりの作動油の吐出量のことをいう。また、後述する「吐出流量」とは、第1ポンプ10や後述の第2ポンプ16における単位時間当たりの作動油の吐出量のことをいう。
【0025】
第1ポンプ10は、駆動源としてのエンジン4によって駆動される。第1ポンプ10は、タンク(図示省略)に接続するタンクポート30から吸込通路20を通じて作動油を吸込み、斜板11に追従して往復動するピストン(図示省略)によって加圧した作動油を吐出通路21に吐出する。第1ポンプ10から吐出された作動油は、制御弁3を通じて油圧シリンダ2に供給される。また、第1ポンプ10から吐出された作動油の一部は、吐出通路21から分岐する分岐通路50に導かれる。分岐通路50は、第1〜第3吐出圧通路51,52,53に分岐して、それぞれに第1ポンプ10の吐出圧P1を導く。
【0026】
第1ポンプ10は、エンジン4によって回転駆動されるシリンダブロック(図示省略)と、シリンダブロックのシリンダ内を往復動して吸い込んだ作動油を吐出するピストンと、ピストンが追従する斜板11と、斜板11を傾転角度が大きくなる方向に付勢する馬力制御スプリング48,49と、を備える。
【0027】
傾転アクチュエータ15は、第1ポンプ10の馬力制御スプリング48,49の付勢力に抗して斜板11を駆動する。傾転アクチュエータ15の作動によって斜板11の傾転角度が変えられると、斜板11に追従して往復動するピストンのストローク長さが変わり、第1ポンプ10の吐出容量が変化する。傾転アクチュエータ15は、第1ポンプ10のシリンダブロックに内蔵されるものでもよいし、シリンダブロックの外部に設けられるものでもよい。
【0028】
傾転アクチュエータ15は、馬力制御レギュレータ40及びレギュレータ60によって調整される制御圧Pcgが上昇すると伸長作動して斜板11の傾転角度を小さくし、第1ポンプ10の吐出容量を減少させる。
【0029】
馬力制御レギュレータ40は、3ポート2位置の切換弁である。馬力制御レギュレータ40の一方側のポートには、レギュレータ60に接続される第1制御圧通路55が接続される。馬力制御レギュレータ40の他方側の2つのポートには、第1ポンプ10の吐出圧P1が導かれる第1吐出圧通路51と、タンクに接続される低圧通路59と、がそれぞれ接続される。
【0030】
馬力制御レギュレータ40は、第1制御圧通路55と第1吐出圧通路51とを連通する高圧ポジション40Aと、第1制御圧通路55と低圧通路59とを連通する低圧ポジション40Bと、の間で連続的に移動するスプール(図示省略)を備える。馬力制御レギュレータ40のスプールの一端には、馬力制御スプリング48,49の付勢力が付与される。このスプールの他端には、第2吐出圧通路52を通じて導かれる第1ポンプ10の吐出圧P1が作用する。馬力制御レギュレータ40のスプールは、吐出圧P1と馬力制御スプリング48,49の付勢力とが釣り合う位置に移動し、高圧ポジション40A及び低圧ポジション40Bの開度を変化させる。
【0031】
馬力制御スプリング48,49は、一端が馬力制御レギュレータ40のスプールに連結され、他端が第1ポンプ10の斜板11に連係する。馬力制御スプリング49の長さは馬力制御スプリング48より短く形成される。馬力制御スプリング48,49による付勢力は、斜板11の傾転角及び馬力制御レギュレータ40のスプールの位置に応じて変化する。よって、馬力制御スプリング48、49から斜板11に作用する付勢力は、斜板11の傾転角度及び馬力制御レギュレータ40のスプールのストロークに応じて段階的に高められる。
【0032】
馬力制御レギュレータ40には、馬力制御アクチュエータ41が設けられる。馬力制御アクチュエータ41は馬力制御信号圧ポート36から馬力制御信号圧通路46を通じて導かれる馬力制御信号圧Ppwに応動する。
【0033】
油圧ショベルの制御系は、高負荷モードと、低負荷モードと、に切り換えられる。馬力制御信号圧Ppwは、高負荷モードで低くされる一方、低負荷モードで高められる。低負荷モードで馬力制御信号圧Ppwが高められると、馬力制御レギュレータ40のスプールは高圧ポジション40Aに切り換わる方向に移動する。このため、制御元圧Pcが上昇し、第1ポンプ10の負荷が低くなる。
【0034】
レギュレータ60は、3ポート2位置の切換弁である。レギュレータ60の一方側の2つのポートには、それぞれ第1ポンプ10の吐出圧P1が導かれる第3吐出圧通路53と、馬力制御レギュレータ40に接続される第1制御圧通路55と、が接続される。レギュレータ60の他方側のポートには、傾転アクチュエータ15に制御圧Pcgを導く第2制御圧通路56が接続される。第2制御圧通路56には、絞り57が介装され、絞り57によって、傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgの圧力変動が緩和される。また、第3吐出圧通路53には、絞り54が介装され、絞り54によって、レギュレータ60に導かれる吐出圧P1の圧力変動が緩和される。
【0035】
レギュレータ60は、第1制御圧通路55と第2制御圧通路56とを連通する第1ポジション60Aと、第3吐出圧通路53と第2制御圧通路56とを連通する第2ポジション60Bと、の間で連続的に移動する制御スプール61(図2参照)を備える。
【0036】
レギュレータ60の制御スプール61の一端には、第1ポンプ10の吐出圧P1に基づいて制御弁3の上流側に生じる上流信号圧Ppsが信号ポート33から第1信号通路43を通じて導かれる。レギュレータ60のスプールの他端には、油圧シリンダ2の負荷圧に基づいて制御弁3の下流側に生じる下流信号圧Plsが信号ポート34から第2信号通路44を通じて導かれる。また、レギュレータ60の制御スプール61の他端には、レギュレータ60を第1ポジション60Aに切り換える方向に付勢するLSスプリング14の付勢力が与えられる。レギュレータ60の具体的構成については、後に詳しく説明する。
【0037】
ポンプ装置100は、第1ポンプ10と共通の駆動源によって駆動される定容量型の第2ポンプ16と、第2ポンプ16から吐出される作動油を導くポンプ通路24に介装される抵抗器65と、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)に応じてレギュレータ60を駆動して制御圧Pcgを調整する制御アクチュエータ70と、抵抗器65の上流側の圧力P3に抗するように作用する補助圧Poを制御アクチュエータ70に導く補助通路83と、補助通路83に設けられ補助通路83の連通と遮断とを選択的に切り換える切換弁80と、作業者の操作入力に応じて切換弁80を切り換えると共にエンジン回転数を変更可能なコントローラ90と、をさらに備える。
【0038】
第2ポンプ16は、第1ポンプ10と並んで設けられ、第1ポンプ10と共にエンジン4によって駆動される。第2ポンプ16には、例えば、ギアポンプが用いられる。
【0039】
第2ポンプ16は、吸込通路20から分岐した分岐吸込通路23を通じて作動油を吸込み、加圧した作動油をポンプ通路24に吐出する。第2ポンプ16から吐出される作動油は、ポンプ通路24を通じてポンプポート32に送られ、ポンプポート32に接続する通路(図示省略)を通じて制御弁3を切り換える油圧駆動部等に供給される。
【0040】
抵抗器65は、ポンプ通路24に介装される固定絞りである。抵抗器65は、固定絞りに加え、並列に設けられるリリーフ弁やチェック弁を有していてもよい。
【0041】
制御アクチュエータ70は、抵抗器65の上流側の圧力(以下、「上流圧」と称する。)P3及び下流側の圧力(以下、「下流圧」と称する。)P4と補助圧Poとが釣り合う位置に移動する制御ピストン71を有し、これらの圧力に応じてレギュレータ60を駆動する。制御アクチュエータ70の具体的な構成は、後に詳しく説明する。
【0042】
補助通路83は、ポンプ装置100の外部から供給される補助圧Poを制御アクチュエータ70に導く。補助圧Poは、例えば、第2ポンプ16から吐出される作動油をポンプ装置100の外部にある調整機構によって圧力調整することで生成される。
【0043】
切換弁80は、2ポート2位置の電磁切換弁(ON−OFF弁)である。切換弁80は、補助通路83を連通して制御アクチュエータ70に補助圧Poを供給する連通ポジション80Aと、補助通路83を通じた制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給を遮断する遮断ポジション80Bと、を有する。
【0044】
コントローラ90からソレノイド82に電流が供給されると、切換弁80は、連通ポジション80Aとなり、補助通路83を開放する。これにより、補助圧Poが補助通路83を通じて制御アクチュエータ70に導かれる。
【0045】
反対に、コントローラ90からソレノイド82への通電が遮断された状態では、切換弁80は、付勢ばね81の付勢力によって遮断ポジション80Bとなり、補助通路83を遮断する。これにより、制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給が遮断され、後述する制御アクチュエータ70の第3圧力室79はタンクに連通してタンク圧となる。
【0046】
制御アクチュエータ70は、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)に加えて補助通路83から導かれる補助圧Poが選択的に導かれ、制御ピストン71が抵抗器65の前後差圧(P3−P4)と補助圧Poとが釣り合う位置に移動することにより、レギュレータ60に駆動力を付与する。言い換えれば、レギュレータ60の制御スプール61には、制御弁3の前後に生じるLS差圧(Pps−Pls)及び制御スプール61の他端に作用するLSスプリング14の付勢力に加え、制御アクチュエータ70から付与される駆動力として、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)及び補助圧Poが作用する。よって、レギュレータ60の制御スプール61は、これらのLS差圧(Pps−Pls)、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)、補助圧Po、LSスプリング14の付勢力が釣り合う位置に移動して、レギュレータ60の第1ポジション60A及び第2ポジション60Bの開度を変化させる。
【0047】
以下、図2から図5を参照して、レギュレータ60、制御アクチュエータ70、切換弁80の具体的構成について、詳細に説明する。
【0048】
図2及び図3に示すように、レギュレータ60、制御アクチュエータ70、及び切換弁80は、共通のハウジング101内にそれぞれ設けられる。
【0049】
ハウジング101には、レギュレータ60の制御スプール61を収容するスプール孔102と、制御アクチュエータ70の制御ピストン71が摺動自在に挿入されるシリンダ孔103と、が同軸上に形成される。また、ハウジング101には、制御弁3の上流信号圧Ppsが導かれる第1パイロット室107と、制御弁3の下流信号圧Plsが導かれる第2パイロット室108と、がさらに形成される。第2パイロット室108、シリンダ孔103、スプール孔102、第1パイロット室107は、この順で軸方向に並んで設けられる。
【0050】
レギュレータ60の制御スプール61と制御アクチュエータ70の制御ピストン71とは、同軸上に並んで一体的に形成される。これに限らず、制御スプール61と制御ピストン71とは別体に形成され、互いに連係するものでもよい。
【0051】
レギュレータ60の制御スプール61は、軸方向へ移動自在にスプール孔102に挿入される。制御スプール61は、互いに軸方向に並びスプール孔102に摺動する第1,第2,第3ランド部62,63,64を有する。第1,第2,第3ランド部62,63,64は、それぞれ同軸上に形成される。第1ランド部62と第2ランド部63との間には、制御スプール61の外周面に開口する第1環状溝62Aが形成される。第2ランド部63と第3ランド部64との間には、制御スプール61の外周面に開口する第2環状溝63Aが形成される。また、第2ランド部63には、制御スプール61の位置によらず第2制御圧通路56と後述する対向孔115とを連通する第3環状溝63Bが外周に形成される。
【0052】
シリンダ孔103は、図2及び図3に示すように、スプール孔102の内径よりも大きな内径を有する第1シリンダ孔104と、第1シリンダ孔104の内径よりも大きな内径を有する第2シリンダ孔105と、を有する。第1シリンダ孔104と第2シリンダ孔105との間には、環状の段部である第1シリンダ段部106Aが形成される。第1シリンダ孔104とスプール孔102との間には、環状の段部である第2シリンダ段部106Bが形成される。
【0053】
制御ピストン71は、制御スプール61に接続され第1シリンダ孔104に摺動自在に挿入される第1ピストン部72と、第1ピストン部72に接続され第2シリンダ孔105に摺動自在に挿入される第2ピストン部73と、第2ピストン部73における第1ピストン部72とは軸方向の反対側において第2ピストン部73に接続され第2ピストン部73よりも小さい外径で形成される第3ピストン部74と、第1ピストン部72と第2ピストン部73との間に形成される環状の段部であるピストン段部75(図3参照)と、を有する。第3ピストン部74は、第2パイロット室108に収容される後述のガイドスリーブ125に摺動自在に支持される。
【0054】
シリンダ孔103の内部は、図3に示すように、制御ピストン71により、第1ピストン部72と第2シリンダ段部106Bとの間に形成される第1圧力室77と、第2パイロット室108に設けられるガイドスリーブ125と第2ピストン部73との間に形成される第2圧力室78と、第2ピストン部73と第1シリンダ段部106Aとの間に形成される第3圧力室79と、に仕切られる。
【0055】
第1パイロット室107は、図2に示すように、スプール孔102に連通すると共にハウジング101の表面に開口する。第2パイロット室108は、シリンダ孔103に連通すると共にハウジング101の表面に開口する。
【0056】
第1パイロット室107は、ハウジング101の表面への開口部が第1プラグ110によって封止される。第1プラグ110には、制御弁3の上流信号圧Ppsを第1パイロット室107に導く信号ポート33及び第1信号通路43が形成される。
【0057】
第2パイロット室108には、LSスプリング14と、LSスプリング14の付勢力を調整するアジャスタ120と、シリンダ孔103に臨むガイドスリーブ125と、第2パイロット室108の開口部を封止する第2プラグ126と、が収容される。
【0058】
アジャスタ120は、第2プラグ126に螺合するアジャスタロッド121と、制御ピストン71の第3ピストン部74に取り付けられるスプリング受け123と、第2プラグ126の内部に摺動自在に収容されるスプリング受け124と、を備える。コイル状のLSスプリング14は、スプリング受け123とスプリング受け124の間に圧縮して介装される。アジャスタロッド121の螺合位置を変えることにより、LSスプリング14の付勢力が調節される。
【0059】
ハウジング101には、制御弁3の下流信号圧Plsが導かれる下流側の信号ポート34及び第2信号通路44と、補助圧Poが導かれる補助通路83と、がさらに形成される。第2パイロット室108には、下流側の信号ポート34及び第2信号通路44を通じて下流信号圧Plsが導かれる。
【0060】
また、ハウジング101には、径方向からスプール孔102に開口しスプール孔102に作動油を導く導入通路として、第1ポンプ10の吐出圧が導かれる第3吐出圧通路53と、傾転アクチュエータ15に供給される制御圧Pcgが導かれる第2制御圧通路56と、馬力制御レギュレータ40に連通する第1制御圧通路55と、抵抗器65の下流圧P4が導かれる下流圧通路95と、がさらに形成される。以下、これらの通路をまとめて単に「導入通路」とも称する。
【0061】
また、スプール孔102の中心を挟んで各導入通路53,55,56,95の開口に対向する位置には、各導入通路53,55,56,95に対応する対向孔115が形成される。対向孔115が形成されることにより、制御スプール61に作用する作動油の圧力バランスが良好となり、制御スプール61の摺動性が良好となる。
【0062】
上流信号圧Ppsは、制御スプール61の第1ランド部62の軸方向端面に作用して、制御スプール61及び制御ピストン71を図2中左方向へ移動させる駆動力を発揮する。下流信号圧Plsは、制御アクチュエータ70における制御ピストン71の第3ピストン部74の軸方向端面に直接またはスプリング受け123を介して作用し、制御ピストン71及び制御スプール61を図2中右方向へ移動させる駆動力を発揮する。
【0063】
上流信号圧Ppsの受圧面積と下流信号圧Plsの受圧面積とは、互いに等しくなるように構成される。上流信号圧Ppsの受圧面積は、上流信号圧Ppsが作用する制御スプール61の第1ランド部62の断面積に相当する。下流信号圧Plsの受圧面積は、下流信号圧Plsが作用する制御ピストン71の第3ピストン部74の断面積に相当する。つまり、制御スプール61の第1ランド部62の断面積と第3ピストン部74の断面積とは、互いに等しくなるように形成される。
【0064】
上流信号圧Ppsと下流信号圧PlsとのLS差圧(Pps−Pls)が小さく、LSスプリング14が伸長した状態では、図2に示すように、第2制御圧通路56は、第2環状溝63Aを通じて第1制御圧通路55に連通すると共に、第3吐出圧通路53との連通が第2ランド部63によって遮断される(第1ポジション60A)。LS差圧(Pps−Pls)が大きく、LSスプリング14が収縮した状態では、図4に示すように、第2制御圧通路56は、第1環状溝62Aを通じて第3吐出圧通路53に連通すると共に、第1制御圧通路55との連通が第2ランド部63によって遮断される(第2ポジション60B)。
【0065】
第1圧力室77には、図3に示すように、下流圧通路95が接続される。第1圧力室77には、下流圧通路95を通じて抵抗器65の下流圧P4が導かれる。第1圧力室77に導かれる下流圧P4は、制御ピストン71の第1ピストン部72に作用して、レギュレータ60が第2ポジション60Bに切り換わる方向(図1中左方向、図3中左方向)へ制御ピストン71を移動させる駆動力を発揮する。
【0066】
第2圧力室78には、上流圧通路94が接続される。第2圧力室78には、上流圧通路94を通じて抵抗器65の上流圧P3が導かれる。第2圧力室78に導かれる上流圧P3は、制御ピストン71の第2ピストン部73に作用して、レギュレータ60が第1ポジション60Aに切り換わる方向(図1中右方向、図3中右方向)へ制御ピストン71を移動させる駆動力を発揮する。
【0067】
第3圧力室79には、補助通路83が接続される。第3圧力室79には、補助通路83を通じて補助圧Poが選択的に導かれる。切換弁80が連通ポジション80Aにある際には、第3圧力室79には補助通路83を通じて補助圧Poが供給される。切換弁80が遮断ポジション80Bにある際には、補助通路83を通じた第3圧力室79への補助圧Poの供給が遮断され、第3圧力室79はタンクに連通する。
【0068】
第3圧力室79に導かれる補助圧Poは、ピストン段部75に作用して、レギュレータ60が第2ポジション60Bに切り換わる方向へ制御ピストン71を移動させる駆動力(以下、「補助駆動力」と称する。)を発揮する。つまり、補助駆動力は、抵抗器65の下流圧P4により生じる制御ピストン71の駆動力を補って、抵抗器65の上流圧P3により生じる制御ピストン71の駆動力に抗するように作用する駆動力である。よって、補助圧Poは、見掛け上、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)によって生じる駆動力(以下、「差圧駆動力」と称する。)が小さくなるように制御ピストン71に作用する。
【0069】
切換弁80は、図5に示すように、連通ポジション80Aと遮断ポジション80Bとを選択的に切り換える切換スプール85と、遮断ポジション80Bをとるように切換スプール85を付勢する付勢ばね81と、通電によって付勢ばね81の付勢力に抗する駆動力を発揮するソレノイド82と、を有する。
【0070】
ハウジング101には、切換弁80の切換スプール85が摺動自在に挿入される切換スプール孔109と、切換スプール孔109に連通しポンプ装置100の外部から補助圧Poを導く第1連通路83Aと、切換スプール孔109に連通し第3圧力室79に連通する第2連通路83Bと、切換スプール孔109に連通し作動油をタンクポート30(図1参照)に導く排出通路84と、がさらに形成される。第1連通路83A及び第2連通路83Bは、補助通路83の一部を構成する。
【0071】
切換弁80の切換スプール85は、切換スプール孔109に摺動する第1,第2切換ランド部86,87を有する。切換スプール85には、外周面に開口し第1切換ランド部86と第2切換ランド部87との間に形成される環状溝88が設けられる。
【0072】
付勢ばね81は、切換スプール孔109の底部と切換スプール85との間に圧縮状態で介装される。
【0073】
ソレノイド82に電流が供給されていない状態では、図5に示すように、切換スプール85は、付勢ばね81の付勢力によって付勢され、第1連通路83Aと第2連通路83Bとの連通が第1切換ランド部86によって遮断される(遮断ポジション80B)。
【0074】
ソレノイド82に電流が供給されると、ソレノイド82の駆動力によって切換スプール85は、付勢ばね81の付勢力に抗して移動する。これにより、環状溝88を通じて第1連通路83Aと第2連通路83Bとが連通し、第3圧力室79に補助圧が導かれる(連通ポジション80A)。
【0075】
次に、主に図1を参照して、ポンプ装置100の作用について説明する。
【0076】
ポンプ装置100では、馬力制御レギュレータ40によって第1ポンプ10の吐出圧P1を一定に保つように第1ポンプ10の吐出容量を制御する馬力制御と、レギュレータ60によって制御弁3の前後差圧(LS差圧)を一定に保つように第1ポンプ10の吐出容量を制御する負荷制御(LS制御)と、ポンプ回転数(エンジン回転数)に応じて第1ポンプ10の吐出容量を制御する吐出流量制御と、が行われる。
【0077】
ポンプ装置100では、レギュレータ60が、馬力制御レギュレータ40によって調整される制御元圧Pcに応じて制御圧Pcgを調整する。これにより、第1ポンプ10の吐出圧P1が一定範囲内に保たれた状態では、馬力制御されず負荷制御によって第1ポンプ10の吐出容量が制御される。吐出圧P1が一定範囲を超えた場合には、馬力制御によって第1ポンプ10の吐出容量が制御される。よって、馬力制御によって第1ポンプ10の吐出圧P1を一定範囲内に保つように第1ポンプ10の吐出容量を制御しつつ、負荷制御によって制御弁3のLS差圧を一定に保つように第1ポンプ10の吐出容量も制御することができる。
【0078】
以下、各制御について具体的に説明する。
【0079】
まず、馬力制御レギュレータ40による馬力制御について説明する。
【0080】
ポンプ回転数の上昇に伴い第1ポンプ10の吐出圧P1が上昇し、馬力制御レギュレータ40のスプールが受ける吐出圧P1による駆動力が馬力制御スプリング48,49の付勢力より大きくなると、スプールは、高圧ポジション40Aに切り換わる方向(図1中右方向)に移動する。これにより、第1制御圧通路55と第1吐出圧通路51との連通開度(連通流路面積)が増加するため、第1吐出圧通路51を通じて導かれる第1ポンプ10の吐出圧P1によって第1制御圧通路55の制御元圧Pcが上昇する。レギュレータ60に導かれる制御元圧Pcの上昇に伴い、レギュレータ60によって調整される制御圧Pcgが上昇するため、傾転アクチュエータ15は第1ポンプ10の斜板11を傾転角度が小さくなるように駆動する。したがって、第1ポンプ10の吐出圧P1が上昇すると、第1ポンプ10の吐出容量が減少する。
【0081】
反対に、ポンプ回転数の低下に伴い第1ポンプ10の吐出圧P1が低下して、馬力制御レギュレータ40のスプールが受ける吐出圧P1による駆動力が馬力制御スプリング48,49の付勢力より小さくなると、スプールは、低圧ポジション40Bに切り換わる方向(図1中左方向)に移動する。これにより、第1制御圧通路55と低圧通路59との連通開度が増加するため、タンクに連通する低圧通路59の圧力によって第1制御圧通路55の制御元圧Pcが低下する。よって、レギュレータ60によって調整される制御圧Pcgも低下し、馬力制御スプリング48,49の付勢力によって斜板11の傾転角度が大きくなる。したがって、第1ポンプ10の吐出圧P1が低下すると、第1ポンプ10の吐出容量が増加する。
【0082】
以上のように、馬力制御レギュレータ40は、吐出圧P1による駆動力と馬力制御スプリング48,49の付勢力とが釣り合うように、レギュレータ60に導かれる制御元圧Pcを調整する。馬力制御レギュレータ40は、ポンプ回転数の上昇による吐出圧P1の上昇に伴い制御元圧Pcを上昇させて、制御圧Pcgを上昇させるように作動し、第1ポンプ10の吐出容量を減少させる。また、馬力制御レギュレータ40は、ポンプ回転数の低下による吐出圧P1の低下に伴い制御元圧Pcを低下させて、制御圧Pcgを低下させるように作動し、第1ポンプ10の吐出容量を増加させる。つまり、馬力制御レギュレータ40は、ポンプ回転数が変化した場合であっても、ポンプ回転数の変化に伴う第1ポンプ10の吐出流量(供給流量)の変化を打ち消すように第1ポンプ10の吐出容量を増減させる。よって、第1ポンプ10の負荷(仕事率)が、ポンプ回転数に関わらず、略一定となるように調整される。
【0083】
次に、レギュレータ60による負荷制御について説明する。
【0084】
油圧シリンダ2の負荷が大きい場合には、制御弁3の下流側(負荷側)から信号ポート34に導かれる下流信号圧(負荷圧)Plsが上昇する。下流信号圧Plsが上昇したことによりLS差圧(Pps−Pls)が小さくなると、レギュレータ60の制御スプール61はLSスプリング14の付勢力によって第1ポジション60Aに切り換わる方向へ移動する。
【0085】
図2に示すように、レギュレータ60の制御スプール61が第1ポジション60Aに切り換わる方向へ移動すると、第1制御圧通路55と第2制御圧通路56との連通開度が増加する。このため、制御圧Pcgは、馬力制御レギュレータ40によって調整され第1ポンプ10の吐出圧よりも低い制御元圧Pcに基づき低下する。よって、傾転アクチュエータ15は、斜板11の傾転角度が大きくなる方向(図1中左方向)へ移動し、第1ポンプ10の吐出容量は増加する。第1ポンプ10の吐出容量が増加すると、制御弁3のLS差圧(Pps−Pls)が大きくなる。
【0086】
反対に、油圧シリンダ2の負荷が小さい場合には、下流信号圧(負荷圧)Plsが低くなる。下流信号圧Plsが低くなることによりLS差圧(Pps−Pls)が大きくなると、レギュレータ60の制御スプール61はLSスプリング14の付勢力に抗して第2ポジション60Bに切り換わる方向に移動する。
【0087】
図4に示すように、レギュレータ60の制御スプール61が第2ポジション60Bに切り換わる方向へ移動すると、第3吐出圧通路53と第2制御圧通路56との連通開度が増加する。このため、傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgは、第3吐出圧通路53を通じて導かれる第1ポンプ10の吐出圧P1に基づき上昇する。よって、傾転アクチュエータ15は、斜板11の傾転角度が小さくなる方向(図1中右方向)へ移動し、第1ポンプ10の吐出容量は減少する。第1ポンプ10の吐出容量が減少すると、制御弁3のLS差圧(Pps−Pls)が小さくなる。
【0088】
このようにレギュレータ60は、LS差圧(Pps−Pls)とLSスプリング14の付勢力とが釣り合うように傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgを調整する。レギュレータ60は、LS差圧(Pps−Pls)が小さくなると、制御圧Pcgを低下させることで第1ポンプ10の吐出容量を増加させて、LS差圧(Pps−Pls)が大きくなるように作動する。また、レギュレータ60は、LS差圧(Pps−Pls)が大きくなると、制御圧Pcgを上昇させて第1ポンプ10の吐出容量を低下させ、LS差圧(Pps−Pls)が小さくなるように作動する。つまり、レギュレータ60によって、油圧シリンダ2の負荷が増減してもLS差圧(Pps−Pls)が略一定になるように第1ポンプ10の吐出容量が制御される。
【0089】
したがって、制御弁3の開度(ポジション)が同一であれば、作業負荷によらず同一の速度で油圧シリンダ2を駆動することができ、油圧シリンダ2の制御性を向上させることができる。言い換えれば、油圧シリンダ2の駆動速度(供給流量)は、制御弁3の開度(ポジション)のみによって制御することができ、作業負荷の変動による油圧シリンダ2の速度変化を防止することができる。
【0090】
次に、ポンプ回転数に基づく吐出流量制御について説明する。
【0091】
吐出流量制御は、第2ポンプ16から吐出される作動油が導かれる抵抗器65の前後差圧(P3−P4)に応じて制御アクチュエータ70によりレギュレータ60を駆動することによって行われる。
【0092】
ポンプ回転数(エンジン回転数)が低下すると、第2ポンプ16の吐出流量が減少して、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が低下する。ポンプ回転数の低下によって、制御アクチュエータ70に作用する力が釣り合った状態から抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が低下すると、つまり抵抗器65の下流圧P4が相対的に大きくなると、制御アクチュエータ70は、レギュレータ60が第2ポジション60Bに切り換わる方向(図1中左方向)へ移動する。これにより、第3吐出圧通路53と第2制御圧通路56との連通開度が増加するため、第3吐出圧通路53を通じて導かれる第1ポンプ10の吐出圧P1に基づき制御圧Pcgは上昇する。したがって、傾転アクチュエータ15は、傾転角度が減少するように第1ポンプ10の斜板11を駆動し、第1ポンプ10の吐出容量が減少する。
【0093】
反対に、ポンプ回転数の上昇に伴い第2ポンプ16の吐出流量が増加すると、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が上昇する。制御アクチュエータ70に作用する力が釣り合った状態から抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が上昇すると、つまり上流圧P3が相対的に大きくなると、制御アクチュエータ70は、第1ポジション60Aに切り換わる方向(図1中右方向)へレギュレータ60の制御スプール61を駆動する。これにより、第1制御圧通路55と第2制御圧通路56との連通開度が増加するため、傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgは、馬力制御レギュレータ40によって調整される制御元圧Pcに基づき低下する。したがって、傾転アクチュエータ15は、傾転角度が増加するように第1ポンプ10の斜板11を駆動し、第1ポンプ10の吐出容量が増加する。
【0094】
以上のように、第1ポンプ10の吐出流量は、エンジン4回転数の上昇に比例して増加するように制御される。
【0095】
次に、補助通路83及び切換弁80の作用について説明する。以下の説明では、切換弁80が連通ポジション80Aであって補助通路83を通じて制御アクチュエータ70の第3圧力室79に補助圧Poが導かれている状態を「補助圧供給状態」、反対に切換弁80が遮断ポジション80Bであって第3圧力室79に補助圧Poが導かれていない状態を「補助圧遮断状態」と称する。
【0096】
補助通路83を通じて導かれる補助圧Poは、制御アクチュエータ70の第3圧力室79に供給され、抵抗器65の上流圧P3に抗するような補助駆動力を制御アクチュエータ70のピストン段部75に対して作用させる。つまり、補助圧Poは、抵抗器65の下流圧P4を補うように制御アクチュエータ70の制御ピストン71に作用し、見掛け上、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が小さくなるように作用する。
【0097】
このため、補助圧供給状態では、傾転アクチュエータ15に導かれる制御圧Pcgが上昇し、ポンプ回転数が同じである時の補助圧遮断状態と比較して、第1ポンプ10の吐出流量は小さくなる。反対に、補助圧遮断状態では、補助圧供給状態よりも制御圧Pcgが低下するため、第1ポンプ10の吐出流量が大きくなる。
【0098】
ポンプ装置100では、作業者の操作入力に応じて、コントローラ90により切換弁80のポジションを切り換えると共にエンジン4の回転数が変更される。
【0099】
具体的に説明すると、コントローラ90は、作業者の操作入力に基づき、切換弁80の切り換えに合わせてエンジン回転数を変化させることで、ポンプ装置100の作動を「通常モード」と「省エネモード」の2つの制御状態の間で切り換える。
【0100】
通常モードは、エンジン回転数を相対的に高い第1回転数で維持するものであり、切換弁80が連通ポジション80Aに切り換えられる。通常モードでは、補助圧Poが制御アクチュエータ70に導かれ、第1ポンプ10の吐出容量は、相対的に小さい状態にされる。
【0101】
省エネモードは、コントローラ90によってエンジン回転数が第1回転数よりも低い第2回転数に維持されると共に、切換弁80が遮断ポジション80Bに切り換えられて制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給が遮断される。
【0102】
ポンプ装置100では、補助圧Poの受圧面積であるピストン段部75の面積は、補助駆動力がエンジン回転数の切り換えに伴う差圧駆動力の低下分に相当するように設定される。詳細に説明すると、エンジン回転数が第1回転数から第2回転数に切り換えられると、第2ポンプ16の吐出流量が低下し、差圧駆動力が低下する。補助駆動力は、差圧駆動力に抗する方向へ作用する駆動力である。よって、エンジン回転数を第1回転数から第2回転数に切り換えるのと同時に、補助圧Poの供給を遮断することにより、差圧駆動力の低下と共に補助駆動力も作用しなくなるため、制御スプール61の位置の変化はほとんど生じない。これにより、省エネモードにおいて、油圧シリンダ2への供給流量は、通常モードと同程度の流量を維持することができる。
【0103】
よって、省エネモードでは、通常モードよりも低いエンジン回転数にもかかわらず通常モードと同じ吐出流量(供給流量)を確保することができ、通常モードと同等の駆動速度を実現できる。したがって、ポンプ装置100の消費エネルギーを抑制することができる。
【0104】
反対に、通常モードでは、ポンプ回転数に対する吐出流量の変化の割合が、省エネモードと比較して小さいため、エンジン回転数を変更することによる吐出流量の調整を容易に行うことができる。よって、通常モードでは、油圧シリンダ2への供給流量を精度良く調整することができる。
【0105】
また、切換弁80が連通ポジション80Aに維持されたまま(通常モードのまま)エンジン回転数が低下すると、エンジン回転数の低下により第2ポンプ16の吐出流量が減少して抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が低下する。制御アクチュエータ70に作用する力が釣り合った状態から抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が低下すると、制御アクチュエータ70は、レギュレータ60が第2ポジション60Bに切り換わる方向(図1中左方向)へ移動する。よって、第3吐出圧通路53を通じて導かれる第1ポンプ10の吐出圧P1に基づき制御圧Pcgが上昇して、傾転アクチュエータ15は、傾転角度が減少するように第1ポンプ10の斜板11を駆動する。したがって、エンジン回転数の低下により第1ポンプ10の吐出容量が減少するため、油圧シリンダ2の駆動速度は、エンジン回転数に応じて低下する。
【0106】
このように、ポンプ装置100では、作業者の操作入力に応じて、エンジン回転数の低下に伴い、制御アクチュエータ70の駆動力を維持するか、または、低下させるかを切り換えることができる。したがって、ポンプ装置100において、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できる。
【0107】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0108】
上記実施形態では、補助圧Poは、抵抗器65の上流圧P3に抗するように作用して、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)を見掛け上小さくするように作用するものである。これに対し、補助圧Pоは、抵抗器65の下流圧P4に抗するように作用して、言い換えれば、上流圧P3を補うように作用して、前後差圧(P3−P4)を見掛け上大きくするように作用させてもよい。この場合であっても、補助圧Poの供給と遮断とを切換弁80によって切り換えることにより、レギュレータ60によって調整される制御圧Pcgを変化させて、同一負荷であっても第1ポンプ10の吐出流量を変化させることができる。
【0109】
また、上記実施形態では、省エネモードにおいて、エンジン4の回転数を低下させると共に抵抗器65の上流圧P3に抗する補助圧Poの供給を遮断する。これに対し、作業者の操作入力に基づいて、エンジン4の回転数を上昇させるか低下させるか、補助圧Poが抵抗器65の上流圧P3に抗するものであるか下流圧P4に抗するものであるか、及びエンジン4の回転数の変化(上昇または低下)時に補助圧Poを供給するか遮断するか、は、任意の組み合わせとすることができる。例えば、ポンプ装置100は、エンジン4の回転数低下時に、抵抗器65の下流圧P4に抗する補助圧Poを供給するように構成してもよい。この場合には、上記の省エネモードと同等の作用効果を生じる。このように、エンジン4の回転数変化、補助圧Pоの切り換え、補助圧Poの作用方向は、ニーズに合わせて任意の構成とすることができる。
【0110】
また、上記実施形態では、切換弁80は、補助通路83の連通と遮断を選択的に切り換えるON−OFF弁である。これに対し、切換弁80は、ソレノイド82への通電量に応じた連通開度(連通流路面積)で補助通路83を開口し、制御アクチュエータ70に導かれる補助圧Poの大きさを制御する電磁比例弁であってもよい。この場合、例えば、コントローラ90が、エンジン回転数を取得してエンジン回転数に応じた通電量で切換弁80のソレノイド82に通電してもよい。このようにポンプ装置100を構成することにより、エンジン回転数の変化に対応させて油圧シリンダ2の速度を制御することができる。
【0111】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0112】
ポンプ装置100では、エンジン回転数の低下に伴って制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給を遮断するように切換弁80を切り換えると、エンジン回転数の低下により差圧駆動力が低下すると共に、差圧駆動力に抗するように作用する補助駆動力が作用しなくなる。よって、切換弁80の切り換えの前後にわたって制御アクチュエータ70によるレギュレータ60の駆動量には変化が生じず、斜板11の傾転角度は変化しない。このため、エンジン回転数が変化しても第1ポンプ10の吐出流量はほとんど変化しない。また、エンジン回転数の低下に伴い制御アクチュエータ70へ補助圧Poを供給するように切換弁80を切り換えると、エンジン回転数の低下に基づく差圧駆動力の低下により、制御アクチュエータ70は制御圧Pcgが上昇するようにレギュレータ60を駆動し、斜板11の傾転角度が小さくなる。このように、ポンプ装置100では、エンジン回転数の低下に伴い、制御アクチュエータ70の駆動力を維持するか、または、低下させるかを切り換えることができる。したがって、ポンプ装置100において、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できる。
【0113】
また、ポンプ装置100では、各導入通路53,55,56,95の開口と対向する位置に対向孔115が形成されるため、制御スプール61に作用する作動油の圧力バランスが保たれ、制御スプール61の摺動性を良好にすることができる。
【0114】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るポンプ装置200について説明する。
【0115】
上記実施形態では、レギュレータ60、制御アクチュエータ70、及び切換弁80は、共通のハウジング101内にそれぞれ設けられる。これに対し、ポンプ装置200では、図6に示すように、切換弁80が、レギュレータ60の制御スプール61を収容するハウジング101に着脱可能に取り付けられるバルブハウジング201に収容される。
【0116】
ポンプ装置200は、レギュレータ60の制御スプール61を収容するハウジング101に着脱可能に取り付けられ切換弁80を収容するバルブハウジング201をさらに備える。バルブハウジング201は、ボルト(図示省略)によってハウジング101に着脱可能に取り付けられる。ソレノイド82は、バルブハウジング201に取り付けられる。
【0117】
バルブハウジング201には、切換スプール孔109と、バルブハウジング201の表面に開口すると共に切換スプール孔109に連通しポンプ装置200の外部から補助圧Poを導く第1連通路183Aと、切換スプール孔109に連通し第3圧力室79に補助圧を導く第2連通路183Bと、切換スプール孔109に連通すると共にタンクに連通する排出通路189と、が形成される。
【0118】
ハウジング101には、バルブハウジング201の第1連通路183Aと第3圧力室79とを接続する接続通路83Cと、排出通路189とタンクポート30とを接続するタンク接続通路83Dと、がさらに形成される。切換弁80が図6に示す連通ポジション80Aにある場合には、補助圧Poは、第1連通路183A、切換スプール孔109、第2連通路183B、接続通路83Cを通じて第3圧力室79に導かれる。切換弁80が遮断ポジション80Bにある場合には、補助圧Poは、第1連通路183A、切換スプール孔109、排出通路189、及びタンク接続通路83Dを通じてタンクポート30に導かれる。
【0119】
このように、切換弁80を収容するバルブハウジング201が、ハウジング101とは別体として設けられることにより、レギュレータ60に対する切換弁80、第1連通路183A、第2連通路183B、補助通路83のレイアウトの自由度を向上させることができる。例えば、形成される切換スプール孔109等のレイアウトが異なるバルブハウジング201を用いることにより、ポンプ装置200が搭載される油圧ショベルに応じてソレノイド82の向きを任意に設定することができる。これにより、切換スプール85の中心軸が鉛直方向に沿って配置されることでソレノイド82による切換スプール85の駆動力が重力の影響で低下することを防止することができる。
【0120】
また、ソレノイド82を任意の位置に配置できることに加え、バルブハウジング201に形成される第1連通路183Aや第2連通路183Bを任意の位置にレイアウトできるため、ポンプ装置200の外部から補助圧Poを導く油圧配管や、制御弁3の上流信号圧Pps及び下流信号圧Plsをそれぞれ導く信号ポート33,34に接続される油圧配管も任意のレイアウトとすることができる。これにより、エンジンルーム内など設置スペースが限られた場所へのポンプ装置200の設置を容易に行うことができる。
【0121】
以上の第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、以下に示す効果を奏する。
【0122】
ポンプ装置200では、ハウジング101とは別体のバルブハウジング201に切換弁80が設けられるため、ソレノイド82や補助圧Poを導く補助通路83、第1連通路183A、第2連通路183Bのレイアウトの自由度が向上する。よって、ソレノイド82の駆動方向が鉛直方向を向くことが防止できると共に、油圧配管のレイアウトの自由度が向上して油圧ショベル等へのポンプ装置200の搭載性を向上させることができる。
【0123】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0124】
駆動対象を駆動する油圧シリンダ2に制御弁3を通じて作動油を供給するポンプ装置100,200は、油圧シリンダ2に作動油を供給し斜板11の傾転角度に応じて吐出容量が変化する可変容量型の第1ポンプ10と、供給される制御圧Pcgに応じて第1ポンプ10における斜板11の傾転角度を制御する傾転アクチュエータ15と、制御弁3の上流側の圧力Ppsと下流側の圧力Plsとの前後差圧(LS差圧)に応じて移動する制御スプール61によって制御圧Pcgを調整するレギュレータ60と、第1ポンプ10と共通の駆動源(エンジン4)によって駆動される定容量型の第2ポンプ16と、第2ポンプ16から吐出される作動油が導かれるポンプ通路24に設けられる抵抗器65と、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)に応じて作動し抵抗器65の前後差圧(P3−P4)の上昇に応じて制御圧Pcgを低下させるようにレギュレータ60を駆動する制御アクチュエータ70と、抵抗器65の上流圧P3及び下流圧P4の一方に抗するように制御アクチュエータ70に作用する補助圧Poを制御アクチュエータ70へ導く補助通路83と、補助通路83を通じた制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給と遮断とを切り換える切換弁80と、切換弁80を切り換えると共に駆動源(エンジン4)の回転数を第1回転数と当該第1回転数よりも小さい第2回転数との間で切り換えるコントローラ90と、を備え、制御アクチュエータ70は、抵抗器65の前後差圧を受けることにより生じる差圧駆動力と補助圧Poを受けることにより生じる補助駆動力とが釣り合うように移動する制御ピストン71を有し、補助圧Poが作用する制御ピストン71の受圧面積は、駆動源(エンジン4)の回転数が第1回転数と第2回転数との間で切り換えられるのに伴う差圧駆動力の変化量に補助駆動力が相当するように設定される。
【0125】
この構成では、駆動源(エンジン4)の回転数が変化すると、第2ポンプ16の吐出流量が変化して、抵抗器65の前後差圧(P3−P4)が発揮する差圧駆動力が変化する。一方、制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給と遮断とを切り換えると、制御アクチュエータ70に補助駆動力を作用させるか否かが切り換えられる。また、制御ピストン71における補助圧Poの受圧面積は、駆動源(エンジン4)の回転数の変化による差圧駆動力の変化量に相当する補助駆動力を発揮するように設定される。このため、駆動源(エンジン4)の回転数の変化時に補助圧Poの供給と遮断とを切り換えることで、駆動源(エンジン4)の回転数の低下に伴い、制御アクチュエータ70の駆動力を変化させるか、または、維持させるかを切り換えることができる。したがって、ポンプ装置100,200において、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できる。
【0126】
また、ポンプ装置100,200では、レギュレータ60は、制御スプール61を収容するハウジング101をさらに備え、ハウジング101には、制御スプール61が軸方向に移動自在に挿入されるスプール孔102と、径方向からスプール孔102に開口しスプール孔102に作動流体を導く導入通路(第3吐出圧通路53,第1制御圧通路55,第2制御圧通路56,下流圧通路95)と、スプール孔102の中心を挟んで導入通路(第3吐出圧通路53,第1制御圧通路55,第2制御圧通路56,下流圧通路95)の開口と対向する位置に開口する対向孔115と、が形成される。
【0127】
また、ポンプ装置100,200では、制御スプール61は、導入通路(第3吐出圧通路53,第1制御圧通路55,第2制御圧通路56,下流圧通路95)からの作動油を導く環状溝(第1環状溝62A,第2環状溝63A,第3環状溝63B)を有し、対向孔115は、制御スプール61の位置によらず環状溝(第1環状溝62A,第2環状溝63A,第3環状溝63B)に臨むように形成される。
【0128】
この構成では、制御スプール61に作用する作動油の圧力バランスが良好に保たれる。したがって、制御スプール61の摺動性を良好にすることができる。
【0129】
また、ポンプ装置200は、レギュレータ60の制御スプール61を収容するハウジング101に着脱可能に取り付けられ切換弁80を収容するバルブハウジング201をさらに備える。
【0130】
この構成では、切換弁80のレイアウトの自由度が向上するため、切換弁80の駆動方向が鉛直方向と一致することを防止することができる。
【0131】
また、ポンプ装置100,200では、制御スプール61において、制御弁3の上流側の圧力Ppsが作用する受圧面積と下流側の圧力Plsが作用する受圧面積とは、互いに等しくなるように設定される。
【0132】
また、ポンプ装置100,200では、補助圧Poが、抵抗器65の上流圧P3に抗するように制御アクチュエータ70に作用し、補助圧Poが作用する制御ピストン71の受圧面積は、駆動源(エンジン4)の回転数が第1回転数から第2回転数へと切り換えられることに伴う差圧駆動力の低下量に補助駆動力が相当するように設定される。
【0133】
この構成では、駆動源(エンジン4)の回転数の低下による第2ポンプ16の吐出流量の低下によって、抵抗器65の前後差圧が発揮する差圧駆動力が低下する。駆動源(エンジン4)の回転数の低下に伴って制御アクチュエータ70への補助圧Poの供給を遮断するように切換弁80を切り換えると、駆動源(エンジン4)の回転数の低下により差圧駆動力が低下すると共に、差圧駆動力に抗するように作用する補助駆動力が作用しなくなる。よって、切換弁80の切り換えの前後にわたって制御アクチュエータ70によるレギュレータ60の駆動量には変化が生じず、斜板11の傾転角度は変化しない。このため、駆動源(エンジン4)の回転数が変化しても第1ポンプ10の吐出流量はほとんど変化しない。また、駆動源(エンジン4)の回転数の低下に伴い制御アクチュエータ70へ補助圧Poを供給するように切換弁80を切り換えると、駆動源(エンジン4)の回転数の低下に基づく差圧駆動力の低下により、制御アクチュエータ70は制御圧Pcgが上昇するようにレギュレータ60を駆動し、斜板11の傾転角度が小さくなる。このように、ポンプ装置100では、駆動源(エンジン4)の回転数の低下に伴い、制御アクチュエータ70の駆動力を維持するか、または、低下させるかを切り換えることができる。したがって、ポンプ装置100,200において、回転数の変化に対する吐出流量の変化割合を変更できる。
【0134】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したのに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0135】
2…油圧シリンダ(駆動アクチュエータ)、3…制御弁、4…エンジン(駆動源)、10…第1ポンプ、11…斜板、15…傾転アクチュエータ、16…第2ポンプ、40…馬力制御レギュレータ、53…第3吐出圧通路(導入通路)、55…第1制御圧通路(導入通路)、56…第2制御圧通路(導入通路)、60…レギュレータ、61…制御スプール、65…抵抗器、70…制御アクチュエータ、71…制御ピストン、80…切換弁、83…補助通路、90…コントローラ、95…下流圧通路(導入通路)、100,200…ポンプ装置、101…ハウジング、102…スプール孔、115…対向孔、201…バルブハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6