【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、独立特許請求項1によるオプトエレクトロニクス半導体ボディによってと、独立特許請求項18によるオプトエレクトロニクス半導体ボディの製造方法とによって、達成される。
【0005】
オプトエレクトロニクス半導体ボディおよびオプトエレクトロニクス部品と、オプトエレクトロニクス半導体ボディの製造方法の修正形態および有利な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0006】
例示的な実施形態
オプトエレクトロニクス半導体ボディのさまざまな実施形態は、最初のエピタキシステップにおいて基板に堆積される被張力(tensioned)層を有する。被張力層は、被張力層に垂直に形成された少なくとも1つの凹部を有する。第2のエピタキシステップにおいて、さらなる層が被張力層に堆積され、さらなる層は少なくとも1つの凹部を満たし、少なくとも部分的に被張力層を覆う。この配置構造では、基板とエピタキシャル積層体との間の張力、もしくはエピタキシャル積層体におけるクラック、またはその両方が減少する。
【0007】
張力が発生するのは、基板の「自然な」格子定数と被張力層の「自然な」格子定数とが互いに異なるためである。「自然な」とは、本文書においては、格子定数の値それぞれが、個片化されたシステムにおいて決まっていることを意味する。言い換えれば、格子定数の値は、張力のかかっていない層、すなわち互いに接触していない層に適用される。用語「格子定数」は、以下ではつねに「自然な格子定数」を意味する。さらに、この場合における用語「格子定数」は、エピタキシャル層の成長面に平行な格子定数の値を表す。互いに直接的にエピタキシャルに成長している層の格子定数の差異が大きいほど、一般にはこれらの層の間の張力が大きい。
【0008】
さらに、基板と被張力層は、互いに異なる熱膨張係数を有することがある。このことも、被張力層と基板との間の張力につながることがある。
【0009】
好ましい一実施形態においては、基板の格子定数(a
s)からのさらなる層の格子定数(a
w)の逸脱は、基板の格子定数(a
s)からの被張力層の格子定数(a
v)の逸脱よりも小さい。格子定数の上記の条件は次のように表すことができる。
a
w<a
sかつa
v<a
sかつa
v<a
w
【0010】
上記の条件によると、被張力層およびさらなる層は、基板に対して引張による張力がかかっている。さらなる層の結晶構造は、被張力層の結晶構造よりも基板の結晶構造に良好に適合している。これは特に有利であり、なぜなら、基板と、(1つまたは複数の)凹部を有する被張力層と、(1つまたは複数の)凹部を満たしているさらなる層から構成されるシステムの張力が、基板と、凹部のない被張力層から構成されるシステムの公知の張力よりも小さいためである。
【0011】
被張力層が端面発光型半導体レーザのシェル層であり、さらなる層が、この端面発光型半導体レーザの導波路層である場合、所望の全反射の理由で、被張力層の屈折率ができる限り小さくなければならない。これは、アルミニウム含有量を最大限に高くすることによって達成される。アルミニウム含有量が高いほど、被張力層の格子定数(a
v)が小さく、被張力層と基板との間の張力が強い。
【0012】
代替の好ましい一実施形態においては、被張力層には引張による張力がかかっており、さらなる層には圧縮による張力がかかっている。言い換えれば、対向する張力が組み合わされる。これは、格子定数の間の以下の関係によって達成される。
a
w>a
sかつa
v<a
s
【0013】
さらなる層の格子定数(a
w)は基板の格子定数(a
s)よりも大きく、これと同時に、被張力層の格子定数(a
v)は基板の格子定数(a
s)より小さい。これは特に有利であり、なぜなら、基板と、(1つまたは複数の)凹部を有する被張力層と、さらなる層とから構成されるシステムの張力を減少させることができるためである。
【0014】
代替の好ましい一実施形態においては、被張力層には圧縮による張力がかかっており、さらなる層には引張による張力がかかっている。言い換えれば、対向する張力が組み合わされる。これは、格子定数の間の以下の関係によって達成される。
a
w<a
sかつa
v>a
s
【0015】
さらなる層の格子定数(a
w)が基板の格子定数(a
s)より大きく、これと同時に、被張力層の格子定数(a
v)が基板の格子定数(a
s)より小さい。これは特に有利であり、なぜなら、基板と、(1つまたは複数の)凹部を有する被張力層と、さらなる層とから構成されるシステムの張力を減少させることができるためである。
【0016】
基板の上に被張力層をいわゆるシュードモルフィック成長させる特殊な場合には、被張力層の格子定数と、基板と被張力層の界面に平行な基板の格子定数は、ほぼ同じである。しかしながら、被張力層の格子定数と、基板と被張力層の界面に垂直な基板の格子定数は、異なる。
【0017】
好ましい一実施形態においては、被張力層は、凹部において薄くされている。言い換えれば、被張力層が構造化されている。これは有利であり、なぜなら、基板と被張力層の間の張力が減少するためである。被張力層は、凹部において歪みを緩和させることができる。凹部は、基板に垂直に延在している。
【0018】
好ましい一実施形態においては、被張力層を凹部において全体的に分断することができる。これにより、被張力層が凹部において薄くされているのみである場合よりも、被張力層における張力がさらに減少する。
【0019】
好ましい一実施形態においては、凹部は、被張力層全体と基板の一部の両方に、基板に垂直に延在することができる。
【0020】
好ましい一実施形態においては、さらなる層は、被張力層を完全に覆っている。これは有利であり、なぜならこれにより平面が形成され、平面の上にさらなるエピタキシャル層を成長させることができるためである。
【0021】
好ましい一実施形態においては、被張力層の厚さは、0.5μm〜5μmの範囲内、好ましくは1μm〜3μmの範囲内とすることができる。公知の配置構造と比較してのこの大きな厚さは有利であり、なぜなら、エピタキシャル積層体の光学特性が基板から切り離されるためである。例えば、端面発光型半導体レーザのシェル層が被張力層と想定される場合、大きな厚さによって干渉基板モード(interfering substrate mode)を抑制し、放出特性を改善することができる。干渉基板モードは、透明な基板において発生しうる。基板は、活性ゾーンにおいて生成される電磁放射に対して吸収性ではない。例えば、GaNを含んだ基板は、青色スペクトル領域における電磁放射に対して透過性とすることができる。導波路およびシェル層内を導かれる青色光の一部は、GaNを含んだ基板内に侵入することができる。レーザ放出のための光成分が失われる。しかしながら、特に、放出特性が干渉される。
【0022】
好ましい一実施形態においては、オプトエレクトロニクス半導体ボディは、第1のタイプの少なくとも1つの凹部、もしくは第2のタイプの少なくとも1つの凹部、またはその両方を有することができる。
【0023】
好ましい一実施形態においては、第1のタイプの少なくとも1つの凹部は、5μm〜100μmの幅を有することができる。この凹部は、被張力層における機械的張力を減少させる目的にのみ使用される。5μm以上の幅が有利であり、なぜなら、クラックを形成することなく歪みを緩和させるための十分な空間が、凹部において被張力層に与えられるためである。オプトエレクトロニクス半導体ボディは、第1のタイプの複数の凹部を有することができる。特に、オプトエレクトロニクス半導体ボディは、第1のタイプの凹部のみを有することができる。
【0024】
好ましい一実施形態においては、第2のタイプの少なくとも1つの凹部は、0.1μm〜5μmの幅を有することができる。これは特に有利であり、なぜなら、被張力層の後ろに配置される層への電流注入を、第2のタイプの凹部を通じて行うことができるためである。幅を最大で5μmに制限することによって、部品内で伝搬する電磁波が第2のタイプの凹部によって干渉されない。さらに、被張力層における張力も、第2のタイプの凹部によって減少する。オプトエレクトロニクス半導体ボディは、第2のタイプの複数の凹部を有することができる。特に、オプトエレクトロニクス半導体ボディは、第2のタイプの凹部のみを有することができる。
【0025】
好ましい一実施形態においては、基板はGaNを含んでいることができる。被張力層は、In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦0.1、0≦y≦1)からなるシェル層とすることができる。インジウム含有量xは、0%〜10%原子濃度の範囲内とすることができる。以下において説明を単純にするためAlGaNシェル層と記載するとき、このシェル層には無視できないインジウム含有量が含まれることがある。アルミニウム含有量は、0.1%〜100%原子濃度、好ましくは4%〜30%原子濃度の範囲内の値をとることができる。シェル層のアルミニウム含有量が高いほど、シェル層の屈折率が低い。シェル層の屈折率が低いほど、シェル層と、その上に配置されているより高い屈折率を有する導波路との界面において、より多くの光を全反射させることができる。しかしながら、アルミニウム含有量が増大するにつれて導電率が減少する。後に続くエピタキシャル層にAlGaNシェル層を介して通電する場合、AlGaNシェル層におけるアルミニウム含有量の上限は、約30%原子濃度である。AlGaNシェル層は、n型導電性を有することができる。この目的のため、AlGaNシェル層は、ケイ素、酸素、またはゲルマニウムを使用してドープされている。
【0026】
AlGaNシェル層における張力と基板のたわみは、AlGaNシェル層の厚さが増大するにつれて、およびAlGaNシェル層におけるアルミニウム含有量が増大するにつれて、大きくなる。
【0027】
これに代えて、基板はシリコンまたはサファイアを含んでいることができ、シリコンまたはサファイアの格子定数は、GaNの格子定数とは大きく異なっている。基板の上にAlGaNシェル層をエピタキシャル成長させる目的で、最初に、薄いGaN層をシード層として基板に堆積させることができる。これは擬似基板または加工基板(engineered substrate)と称される。
【0028】
好ましい一実施形態においては、AlGaNシェル層と、GaNを含んだ基板との間に、中間層(特にIn
xGa
1−xN(0≦x≦0.5)からなる)を堆積することができる。中間層は、圧縮による張力をかけることができる。引張による張力がかかるAlGaNシェル層と、圧縮による張力がかかるInGaN中間層とを結合することにより、基板のたわみと、AlGaNシェル層にクラックが発生する危険性とが減少する。中間層は、導電性とすることができる。中間層は、圧縮による張力をかけることができ、それと同時に導電性とすることができる。
【0029】
導電性の中間層を配置することは、基板が導電性の低い導体である、または非導体である(例えばサファイア)である場合に、特に有利である。
【0030】
好ましい一実施形態においては、さらなる層は、第1の導電型(特にn型導電性)を有する導波路である。成長方向において、さらなる層の上には、活性ゾーンと、第2の導電型を有する(特にp型導電性を有する)導波路層と、第2の導電型を有する(特にp型導電性を有する)シェル層とが配置されている。これらのエピタキシャル層は、端面発光型レーザダイオードを形成することができる。
【0031】
活性ゾーンは、pn接合部、ダブルヘテロ構造、多重量子井戸構造(MQW)、または単一量子井戸構造(SQW)とすることができる。量子井戸構造は、量子井戸(3次元)、量子細線(2次元)、および量子ドット(1次元)を意味する。
【0032】
好ましい一実施形態においては、基板はGaNを含んでいることができ、被張力層は、InGaNおよびAlGaNの交互層からなるブラッグミラーとすることができ、交互層の組成はIn
xGa
1−xN(0≦x≦0.2)およびAl
yGa
1−yN(0≦y≦1)である。ブラッグミラーは、n型導電性とすることができる。n型導電性のブラッグミラーの上に活性ゾーンを配置することができ、活性ゾーンの上にp型導電性のブラッグミラーを配置することができる。これらの層の全体は、垂直発光型レーザ(VCSEL)を形成する。
【0033】
好ましい一実施形態においては、第2のエピタキシャルステップにおいて成長させるさらなる層は、第1の導電型(特にn型導電性)を有することができる。例えば、端面発光型半導体レーザの場合、さらなる層は、n型導電性の導波路の機能を有することができる。導波路層は、その屈折率がシェル層の屈折率より大きいものとして定義される。n型導波路の組成は、In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦0.1、0≦y≦0.3)を有することができる。InAlGaNからなるn型導波路は、成長面に垂直な延在方向にわたり均一なインジウム含有量(x)および均一なアルミニウム含有量(y)を有することができる。これに代えて、成長面に垂直な延在方向において、インジウム含有量(x)およびアルミニウム含有量(y)を変化させることができる。
【0034】
好ましい一実施形態においては、上述したオプトエレクトロニクス半導体ボディからオプトエレクトロニクス部品を個片化することができる。
【0035】
好ましい一実施形態においては、張力のかかったAlGaNシェル層を、導電性(特にn型導電性の)層によって横方向に過成長させることができる。これは、被張力層に続くさらなる層に電流を供給する目的において有利である。GaN系の部品の場合、これは、被張力層が極めて厚い(特に1μmより厚い)場合、もしくは、被張力層が高い(特に30%原子濃度より高い)アルミニウム含有量を有する場合、またはその両方である場合に、特に関連する。このように形成された被張力層は、極めて低い導電率を有する。したがって、n型導電性層による被張力層の横方向の過成長は、絶対的に必要である。
【0036】
さまざまな実施形態は、オプトエレクトロニクス半導体ボディを製造する方法を備えている。最初に、基板を形成する。この基板の上に被張力層をエピタキシャルに成長させる。被張力層に少なくとも1つの垂直凹部を形成する目的で、被張力層を構造化する。構造化を行った後、さらなる層をエピタキシャルに成長させる。このさらなる層は、少なくとも1つの凹部を満たし、少なくとも部分的に被張力層を覆う。
【0037】
オプトエレクトロニクス半導体ボディから、例えばレーザソーイングによってオプトエレクトロニクス部品を個片化することができる。
【0038】
好ましい一実施形態においては、GaNを含んだ基板の上に、In
xAl
yGa
1−x−yN(0≦x≦0.1、0≦y≦1)からなる被張力層を成長させる前に、中間層(特にIn
xGa
1−xN(0≦x≦0.5)からなる)をエピタキシャルに堆積させる。InGaN中間層は、圧縮による張力がかかっている、もしくは導電性とする、またはその両方とすることができる。圧縮による張力が有利であり、なぜなら、張力のかかったAlGaNシェル層における引張による張力が、少なくとも部分的に補正されるためである。
【0039】
以下では、本発明による解決策のさまざまな例示的な実施形態について、図面に基づいてさらに詳しく説明する。同じ要素、類似する要素、または機能が同じ要素には、図面において同じ参照数字を付してある。図面と、図面に示した要素の互いのサイズの比率は、正しい縮尺ではないものとみなされたい。むしろ、便宜上、および深く理解できるようにする目的で、個々の要素を誇張して大きく、または小さく示してある。