(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加圧室下面のうち前記幅広部側に位置する加圧室下面の前記吐出口からの高さが、前記幅広部下面の前記吐出口からの高さと同じであり、かつ前記加圧室下面のうち前記幅広部と反対側に位置する加圧室下面の前記吐出口からの高さよりも低い、請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
図1を用いて、第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2を含むカラーインクジェットプリンタ1(以下、プリンタ1と称する)について説明する。
【0011】
プリンタ1は、記録媒体Pを搬送ローラ74aから搬送ローラ74bへと搬送することにより、記録媒体Pを液体吐出ヘッド2に対して相対的に移動させる。制御部76は、画像や文字のデータに基づいて、液体吐出ヘッド2を制御して、記録媒体Pに向けて液体を吐出させ、記録媒体Pに液滴を着弾させて、記録媒体Pに印刷を行なう。
【0012】
本実施形態では、液体吐出ヘッド2はプリンタ1に対して固定されており、プリンタ1はいわゆるラインプリンタとなっている。記録装置の他の実施形態としては、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
【0013】
プリンタ1には、記録媒体Pとほぼ平行になるように平板状のヘッド搭載フレーム70が固定されている。ヘッド搭載フレーム70には20個の孔(不図示)が設けられており、20個の液体吐出ヘッド2がそれぞれの孔に搭載されている。5つの液体吐出ヘッド2は、1つのヘッド群72を構成しており、プリンタ1は、4つのヘッド群72を有している。
【0014】
液体吐出ヘッド2は、
図1(b)に示すように細長い長尺形状をなしている。1つのヘッド群72内において、3つの液体吐出ヘッド2は、記録媒体Pの搬送方向に交差する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ一つずつ並んでいる。隣り合う液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、記録媒体Pの幅方向に繋がるように、あるいは端が重複するように配置されており、記録媒体Pの幅方向に隙間のない印刷が可能になっている。
【0015】
4つのヘッド群72は、記録媒体Pの搬送方向に沿って配置されている。各液体吐出ヘッド2には、図示しない液体タンクからインクが供給される。1つのヘッド群72に属する液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群で4色のインクを印刷している。各ヘッド群72から吐出されるインクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)およびブラック(K)である。
【0016】
なお、プリンタ1に搭載される液体吐出ヘッド2の個数は、単色で、1つの液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲を印刷するのなら1つでもよい。ヘッド群72に含まれる液体吐出ヘッド2の個数、あるいはヘッド群72の個数は、印刷する対象や印刷条件により適宜変更できる。例えば、さらに多色の印刷をするためにヘッド群72の個数を増やしてもよい。また、同色で印刷するヘッド群72を複数配置して、搬送方向に交互に印刷することで、印刷速度、すなわち搬送速度を速くすることができる。また、同色で印刷するヘッド群72を複数準備して、搬送方向と交差する方向にずらして配置して、記録媒体Pの幅方向の解像度を高くしてもよい。
【0017】
さらに、色の付いたインクを印刷する以外に、記録媒体Pの表面処理をするために、コーティング剤などの液体を印刷してもよい。
【0018】
プリンタ1は、記録媒体Pに印刷を行なう。記録媒体Pは、搬送ローラ74aに巻き取られた状態になっており、2つの搬送ローラ74cの間を通った後、ヘッド搭載フレーム70に搭載されている液体吐出ヘッド2の下側を通る。その後2つの搬送ローラ74dの間を通り、最終的に搬送ローラ74bに回収される。
【0019】
記録媒体Pとしては、印刷用紙以外に、布などでもよい。また、プリンタ1を、記録媒体Pの代わりに搬送ベルトを搬送する形態にし、記録媒体は、ロール状のもの以外に、搬送ベルト上に置かれた、枚葉紙、裁断された布、木材、あるいはタイルなどであってもよい。さらに、液体吐出ヘッド2から導電性の粒子を含む液体を吐出するようにして、電子機器の配線パターンなどを印刷してもよい。またさらに、液体吐出ヘッド2から反応容器などに向けて所定量の液体の化学薬剤や、化学薬剤を含んだ液体を吐出させて、反応させるなどして、化学薬品を作製してもよい。
【0020】
また、プリンタ1に、位置センサ、速度センサ、温度センサなどを取り付け、制御部76が、各センサからの情報から分かるプリンタ1各部の状態に応じて、プリンタ1の各部を制御してもよい。特に、液体吐出ヘッド2から吐出される液体の吐出特性(吐出量や吐出速度など)が外部の影響を受けるようであれば、液体吐出ヘッド2の温度や液体タンクの液体の温度、液体タンクの液体が液体吐出ヘッド2に加えている圧力に応じて、液体吐出ヘッド2において液体を吐出させる駆動信号を変えるようにしてもよい。
【0021】
次に、
図2〜10を用いて第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2について説明する。なお、
図5〜10では図面を分かりやすくするために、他の部材の下方にあって破線で描くべき流路などを実線で描いている。また、
図5(a)では、第2流路部材6の一部を透過して示しており、
図5(b)では、第2流路部材6の全部を透過して示している。また、
図8では、第2個別流路のみ実線で示しており、
図10,11においても同様である。
図9では第2個別流路を破線で示している。
【0022】
なお、図面には、第1方向D1、第2方向D2、第3方向D3、第4方向D4、第5方向D5、および第6方向D6を図示している。第1方向D1は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の一方側であり、第4方向D4は、第1共通流路20および第2共通流路24の延びる方向の他方側である。第2方向D2は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の一方側であり、第5方向D5は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向の他方側である。第3方向D3は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の一方側であり、第6方向D6は、第1統合流路22および第2統合流路26の延びる方向に直交する方向の他方側である。
【0023】
液体吐出ヘッド2においては、第1流路は第1個別流路12、第2流路は第1共通流路20、第3流路は第2個別流路14、第4流路は第2共通流路24を用いて説明する。
【0024】
図2に示すように、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aと、筐体50と、放熱板52と、配線基板54と、押圧部材56と、弾性部材58と、信号伝達部60と、ドライバIC62とを備えている。なお、液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aを備えていればよく、筐体50、放熱板52、配線基板54、押圧部材56、弾性部材58、信号伝達部60、およびドライバIC62は必ずしも備えていなくてもよい。
【0025】
液体吐出ヘッド2は、ヘッド本体2aから信号伝達部60が引き出されており、信号伝達部60は、配線基板54に電気的に接続されている。信号伝達部60には、液体吐出ヘッド2の駆動を制御するドライバIC62が設けられている。ドライバIC62は、弾性部材58を介して押圧部材56により放熱板52に押圧されている。なお、配線基板54を支持する支持部材の図示は省略している。
【0026】
放熱板52は、金属あるいは合金により形成することができ、ドライバIC62の熱を外部に放熱するために設けられている。放熱板52は、螺子あるいは接着剤により筐体50に接合されている。
【0027】
筐体50は、ヘッド本体2a上に載置されており、筐体50と放熱板52とにより、液体吐出ヘッド2を構成する各部材を覆っている。筐体50は、開口50a,50b,50cと、断熱部50dとを備えている。開口50aは、第3方向D3および第6方向D6に対向するようにそれぞれ設けられており、第1開口50aには、放熱板52が配置される。第2開口50bは、下方に向けて開口しており、第2開口50bを介して配線基板54および押圧部材56が筐体50の内部に配置される。第3開口50cは、上方に向けて開口しており、配線基板54に設けられたコネクタ(不図示)が収容される。
【0028】
断熱部50dは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように設けられており、放熱板52とヘッド本体2aとの間に配置されている。それにより、放熱板52に放熱された熱が、ヘッド本体2aに伝熱する可能性を低減することができる。筐体50は、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。
【0029】
図4(a)に示すように、ヘッド本体2aは、第2方向D2から第5方向D5に向けて長い平板形状をなしており、第1流路部材4と、第2流路部材6と、圧電アクチュエータ基板40とを有している。ヘッド本体2aは、第1流路部材4上に、圧電アクチュエータ基板40と第2流路部材6とが設けられている。圧電アクチュエータ基板40は、
図4(a)に示す破線の領域に載置される。圧電アクチュエータ基板40は、第1流路部材4に設けられた複数の加圧室10(
図7(b)参照)を加圧するために設けられており、複数の変位素子48(
図7(b)参照)を有している。
【0030】
第1流路部材4は、内部に流路が形成されており、第2流路部材6から供給された液体を吐出孔8まで導いている。第1流路部材4は、一方の主面が加圧室面4−1を形成しており、加圧室面4−1に開口20a,24aが形成されている。開口20aは、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されており、加圧室面4−1の第3方向D3における端部に配置されている。開口24aは、第2方向D2から第5方向D5に沿って配列されており、加圧室面4−1の第6方向D6における端部に配置されている。
【0031】
第2流路部材6は、内部に流路が形成されており、液体タンクから供給された液体を第1流路部材4まで導いている。第2流路部材6は、第1流路部材4の加圧室面4a−1の外周部上に設けられており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域の外側にて、接着剤(不図示)を介して、第1流路部材4と接合されている。
【0032】
第2流路部材6は、
図4,5に示すように、貫通孔6aと、開口6b,6c,6d,22a,26aとが形成されている。貫通孔6aは、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、圧電アクチュエータ基板40の載置領域よりも外側に配置されている。貫通孔6aには、信号伝達部60が挿通されている。
【0033】
開口6bは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材6の第2方向D2における端部に配置されている。開口6bは、液体タンクから第2流路部材6に液体を供給している。開口6cは、第2流路部材6の上面に設けられており、第2流路部材6の第5方向D5における端部に配置されている。開口6cは、第2流路部材6から液体タンクに液体を回収している。開口6dは、第2流路部材6の下面に設けられており、開口6dにより形成された空間に圧電アクチュエータ基板40が配置されている。
【0034】
開口22aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口22aは、第2流路部材6の第3方向D3における端部に形成され、貫通孔6aよりも第3方向D3側に設けられている。
【0035】
開口22aは、開口6bと連通しており、開口22aが第1流路部材4により封止されることにより、第1統合流路22を形成している。第1統合流路22は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口20aに液体を供給する。
【0036】
開口26aは、第2流路部材6の下面に設けられており、第2方向D2から第5方向D5に向けて延びるように設けられている。開口26aは、第2流路部材6の第6方向D6における端部に形成され、貫通孔6aよりも第6方向D6側に設けられている。
【0037】
開口26aは、開口6bと連通しており、開口26aが第1流路部材4により封止されることにより、第2統合流路26を形成している。第2統合流路26は、第2方向D2から第5方向D5に延びるように形成されており、第1流路部材4の開口24aから液体を回収する。
【0038】
以上の構成により、第2流路部材6においては、液体タンクから開口6bに供給された液体は、第1統合流路22に供給され、開口22aを介して第1共通流路20に流れ込み第1流路部材4に液体が供給される。そして、第2共通流路24により回収された液体は、開口26aを介して第2統合流路26に流れ込み、開口6cを介して外部へ液体が回収される。なお、第2流路部材6は、必ずしも設けなくてもよい。
【0039】
図5〜7に示すように、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4gが積層されて形成されており、加圧室面4−1と、吐出孔面4−2を有している。加圧室面4−1上には、圧電アクチュエータ基板40が裁置されており、吐出孔面4−2に開口した吐出口8cを有する吐出孔8から、液体が吐出される。複数のプレート4a〜4gは、金属、合金、あるいは樹脂により形成することができる。なお、第1流路部材4は、複数のプレート4a〜4gを積層せずに、樹脂により一体形成してもよい。
【0040】
第1流路部材4は、複数の第1共通流路20と、複数の第2共通流路24と、複数の個別ユニット15とが形成されており、加圧室面4−1に開口20a,24aが形成されている。
【0041】
第1共通流路20は、第1方向D1から第4方向D4に延びるように設けられており、開口20aと連通するように形成されている。また、第1共通流路20は、第2方向D2から第5方向D5に向けて、複数配列されている。
【0042】
第2共通流路24は、第4方向D4から第1方向D1に延びるように設けられており、開口24aと連通するように形成されている。また、第2共通流路24は、第2方向D2から第5方向D5に向けて、複数配列されており、隣り合う第1共通流路20同士の間に配置されている。そのため、第1共通流路20および第2共通流路24は、互いに一方向に延びるとともに、一方向に交差する他の方向に向けて、交互に並んで配置されている。
【0043】
吐出ユニット15は、
図7(a)に示すように、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路12と、第2個別流路14とを有している。吐出ユニット15は、隣り合う第1共通流路20と第2共通流路24との間に設けられており、第1流路部材4の平面方向にマトリクス状に形成されている。吐出ユニット15は、吐出ユニット列15aと、吐出ユニット行15bとを有している。吐出ユニット列15aは、第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されており、吐出ユニット行15bは、第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。また、吐出ユニット列15aと同様に、加圧室列10cと吐出孔列8aも第1方向D1から第4方向D4に向けて配列されている。また、吐出ユニット行15bと同様に、加圧室行10dと吐出孔行8bも第2方向D2から第5方向D5に向けて配列されている。
【0044】
第1方向D1および第4方向D4と、第2方向D2および第5方向D5とが成す角度は直角からずれている。このため、第1方向D1から第4方向D4に沿って配置されている吐出孔列8aに属する吐出孔8同士は、その直角からのずれた分だけ、第2方向D2にずれて配置される。吐出孔列8aは、第2方向D2に並んで配置されるので、異なる吐出孔列8aに属する吐出孔8は、その分、第2方向D2にずれて配置される。これらが合わさって、第1流路部材4の吐出孔8は、第2方向D2に一定間隔で並んで配置されている。これにより、吐出した液体により形成される画素で所定の範囲を埋めるように印刷ができる。
【0045】
図6において、吐出孔8を第3方向D3および第6方向D6に投影すると、仮想直線Rの範囲に32個の吐出孔8が投影され、仮想直線R内で各吐出孔8は360dpiの間隔に並ぶ。これにより、仮想直線Rに直交する方向に記録媒体Pを搬送して印刷すれば、360dpiの解像度で印刷できる。
【0046】
吐出ユニット15は、
図7に示すように、吐出孔8と、加圧室10と、第1個別流路12と、第2個別流路14とを有している。なお、液体吐出ヘッド2では、第1個別流路12から加圧室10へ液体を供給し、第2個別流路14が加圧室10から液体を回収している。
【0047】
加圧室10は、加圧室本体10aと部分流路10bとを有している。加圧室本体10aは、平面視して、円形状をなしており、加圧室本体10aの中心から下方に向けて部分流路10bが延びている。加圧室本体10aは、加圧室本体10a上に設けられた変位素子48から圧力を受けることにより、部分流路10b中の液体に圧力を加えるように構成されている。
【0048】
加圧室本体10aは、直円柱形状であり、平面形状は円形状をなしている。平面形状が円形状であることにより、変位量、および変位により生じる加圧室10の体積変化を大きくすることができる。
【0049】
部分流路10bは、直径が加圧室本体10aより小さい直円柱形状であり、平面形状は円形状である。部分流路10bは、加圧室下面10b1と側面10b2とを有しており、加圧室面4−1から見たときに、加圧室本体10a内に納まる位置に配置されている。部分流路10bは、加圧室本体10aと吐出孔8とを接続している。
【0050】
なお、部分流路10bは、吐出孔8側に向かって断面積の小さくなる円錐形状あるいは台形円錐形状であってもよい。それにより、第1共通流路20および第2共通流路24の流路抵抗を高くすることができ、圧力損失の差を小さくできる。
【0051】
加圧室10は、第1共通流路20の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第1共通流路20とその両側に並んでいる加圧室10とは、第1個別流路12を介して接続されている。
【0052】
また、加圧室10は、第2共通流路24の両側に沿って配置されており、片側1列ずつ、合計2列の加圧室列10cを構成している。第2共通流路24とその両側に並んでいる加圧室10とは、第2個別流路14を介して接続されている。
【0053】
第1個別流路12は、第1共通流路20と加圧室本体10aとを接続している。第1個別流路12は、第1共通流路20の上面から上方へ向けて延びた後、加圧室本体10aの下面に接続されている。
【0054】
第2個別流路14は、第2共通流路24と部分流路10bとを接続している。第2個別流路14は、第2共通流路24の下面から第2方向D2または第5方向D5へ向けて延び、第1方向D1または第4方向D4に向けて延びた後、部分流路10bの側面10b2に接続されている。
【0055】
以上のような構成により、第1流路部材4においては、開口20aを介して第1共通流路20に供給された液体は、第1個別流路12を介して加圧室本体10aに流れ込み、部分流路10bに供給され、一部の液体は吐出孔8から吐出される。そして、残りの液体は、部分流路10bから、第2個別流路14を介して第2共通流路24に回収され、開口24aを介して、第1流路部材4から第2流路部材6に回収される。
【0056】
第1流路部材4の上面には、変位素子48を含む圧電アクチュエータ基板40が接合されており、各変位素子48が加圧室10上に位置するように配置されている。圧電アクチュエータ基板40は、加圧室10によって形成された加圧室群と略同一の形状の領域を占有している。また、各加圧室10の開口は、第1流路部材4の加圧室面4−1に圧電アクチュエータ基板40が接合されることで閉塞される。
【0057】
圧電アクチュエータ基板40は、圧電体である2枚の圧電セラミック層40a,40bからなる積層構造を有している。これらの圧電セラミック層40a,40bはそれぞれ20μm程度の厚さを有している。圧電セラミック層40a,40bのいずれの層も複数の加圧室10を跨ぐように延在している。
【0058】
これらの圧電セラミック層40a、40bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO
3系、BaTiO
3系、(BiNa)NbO
3系、BiNaNb
5O
15系などのセラミックス材料からなる。なお、圧電セラミック層40bは、振動板として働いており、必ずしも圧電体である必要はなく、代わりに、圧電体でない他のセラミック層や金属板を用いてもよい。
【0059】
圧電アクチュエータ基板40には、共通電極42と、個別電極44と、接続電極46とが形成されている。共通電極42は、圧電セラミック層40aと圧電セラミック層40bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。そして、個別電極44は、圧電アクチュエータ基板40の上面における加圧室10と対向する位置に配置されている。
【0060】
圧電セラミック層40aの個別電極44と共通電極42とに挟まれている部分は、厚さ方向に分極されており、個別電極44に電圧を印加すると変位する、ユニモルフ構造の変位素子48となっている。そのため、圧電アクチュエータ基板40は、複数の変位素子48を有している。
【0061】
共通電極42は、Ag−Pd系などの金属材料により形成することができ、共通電極42の厚さは2μm程度とすることができる。共通電極42は、圧電セラミック層40a上に共通電極用表面電極(不図示)を有しており、共通電極用表面電極が、圧電セラミック層40aを貫通して形成されたビアホールを介して共通電極42と繋がっており、接地され、グランド電位に保持されている。
【0062】
個別電極44は、Au系などの金属材料により形成されており、個別電極本体44aと、引出電極44bとを有している。
図7(c)に示すように、個別電極本体44aは、平面視して、ほぼ円形状に形成されており、加圧室本体10aよりも小さく形成されている。引出電極44bは、個別電極本体44aから引き出されており、引き出された引出電極44b上に接続電極46が形成されている。
【0063】
接続電極46は、例えばガラスフリットを含む銀−パラジウムからなり、厚さが15μm程度で凸状に形成されている。接続電極46は、信号伝達部60に設けられた電極と電気的に接合されている。
【0064】
続いて、液体の吐出動作について、説明する。制御部76からの制御でドライバIC62などを介して、個別電極44に供給される駆動信号により、変位素子48が変位する。駆動方法としては、いわゆる引き打ち駆動を用いることができる。
【0065】
図8,9を用いて、液体吐出ヘッド2の第2個別流路14について詳細に説明する。
図8は、第2個別流路14を拡大して示しており、(a)は第1領域E1を示しており、(b)は第2領域E2を示している。なお、第1領域E1および第2領域E2については後述する。
図8においては、第2個別流路14以外の部材は破線にて示している。
図9は、第2個別流路14および部分流路10bを流れる液体の流線を示しており、(a)は従来の液体吐出ヘッドの流線を示し、(b)は第1の実施形態に係る液体吐出ヘッド2の流線を示している。
【0066】
なお、第2個別流路14および部分流路10bを流れる液体の流線は、実際は、部分流路10bから第2個別流路14に流れる方向であるが、液体の流線は対称性を有しているため、第2個別流路14から部分流路10bに流れる方向について説明する。
【0067】
第2個別流路14は、幅広部14aと幅狭部14bと接続部14cとを有している。幅広部14aは、部分流路10bに接続されており、幅狭部14bに比べて幅広く形成されている。幅広部14bの幅は、部分流路10bに向かうにつれて大きくなっており、第4方向D4に進むにつれて漸次大きくなっている。
【0068】
幅狭部14bは、接続部14cを介して、幅広部14aと第2共通流路24とを接続しており、幅広部14aよりも幅が狭く形成されている。幅狭部14bは、湾曲した湾曲部14b1が途中に形成されている。幅狭部14bは、略一定の幅を有しており、幅広部14aから第1方向D1に引き出された後、湾曲部14b1にて湾曲し、第1方向D1および第4方向D4に直交する方向に引き出され、第2共通流路24の下面と接続されている。
【0069】
接続部14cは、幅広部14aと幅狭部14bとを接続している。接続部14cを構成する壁は、平面視したときに、湾曲している。すなわち、接続部14cは、第1方向D1および第4方向D4に沿って部分流路10bに向けて延びながら、徐々に第1方向D1および第4方向D4に直交する方向に湾曲している。
【0070】
加圧室10は、幅広部14aに接続された接続領域10eを有している。接続領域10eは、部分流路10bの
外周の一部の円弧
状の領域である。
図8(a)に示すように、加圧室10は、接続領域10eの一端と他端とを結ぶ仮想線10fを有しており、平面視して、接続領域10eと仮想線10fとにより囲まれた第1領域E1を有している。また、
図8(b)に示すように、加圧室10は、幅狭部14bを第4方向D4に延ばした領域と重畳する第2領域E2を有している。
【0071】
ここで、第2個別流路14が幅広部14aを有さずに、幅狭部14bが部分流路10bに接続されている場合、第2個別流路14を流れた液体は、
図9(a)に示すように、部分流路10bに供給される。この際、幅の狭い幅狭部14bを流れた液体は、幅の広い部分流路10bの内部にて部分流路10bの内部を広がるように拡散する。
【0072】
しかしながら、
図9(a)に示すように、第2個別流路14を流れた液体は、部分流路10bの内部に十分に拡散することができず、第2個別流路14と部分流路10bとの接続部近傍に、液体の滞留する領域80が生じる可能性がある。それにより、吐出孔8に沈降した顔料等が流れていき、吐出孔8につまりが生じる可能性があった。
【0073】
これに対して、液体吐出ヘッド2は、幅広部14aが部分流路10bの吐出孔8側に配置されているため、
図9(b)に示すように、液体吐出ヘッド2を流れる液体は、部分流路10bの内部に広がるように流れることとなる。それにより、部分流路10bの内部に滞留する領域80(
図9(a)参照)が生じる可能性を低減することができる。そして、部分流路10bの吐出孔8側の液体の流れをよどむことなく流すことができ、その結果、液体に含まれる顔料等の沈降を抑え、吐出孔8につまりが生じる可能性を低減することができる。
【0074】
また、第2個別流路14が、幅広部14aと幅狭部14bとを有することから、幅広部14aにより部分流路10bの内部に液体の滞留する領域が生じる可能性を低減することができるとともに、幅狭部14bにより各吐出ユニット15の圧力損失のばらつきを低減することができる。
【0075】
なお、部分流路10bの吐出孔8側とは、幅広部14aが、部分流路10bの側面10b2のうち、加圧室下面10b1から部分流路10bの高さの0.5倍までの領域に接続されていることを意味する。なお、幅広部14aが加圧室下面10b1から部分流路10bの高さの0.2倍までの領域に接続されていることが好ましい。
【0076】
また、幅広部14aの断面積が、幅狭部14bの断面積よりも2〜8倍であることが好ましい。例えば、平面視したときに、幅広部14aの幅が、幅狭部14bの幅よりも2〜8倍とすることにより、第2個別流路14を流れる液体を、幅広部14aによって広い範囲を流れる状態にした後に、部分流路10bに供給することができる。その結果、部分流路10bの内部に滞留する領域80が生じる可能性を低減することができる。
【0077】
幅広部14aの幅とは、第1方向D1および第4方向D4に直交する長さを意味しており、特に説明しない場合は、接続領域10eに接続された幅広部14aの幅を意味している。幅狭部14bの幅とは、第1方向D1および第4方向D4に直交する長さを意味し意味しており、特に説明しない場合は、接続部14cの近傍における幅狭部14bの幅を示している。なお、幅広部14aの深さを深くすることにより、幅広部14aの断面積を大きくしてもよい。
【0078】
また、平面視したときに、幅広部14aは、部分流路10bに向かうにつれて幅が広くなっている。そのため、第2個別流路14を流れる液体は、幅広部14aの側面に沿って流れるうちに、広い範囲を流れるようになる。その結果、部分流路10bの内部の広い範囲に液体を流すことができ、部分流路10bの内部に滞留する領域80が生じる可能性を低減することができる。
【0079】
さらに、幅広部14aは、平面視したときに、ほぼ円形状をなしている。そのため、幅狭部14bから供給された液体は、幅広部14aの側面に沿って広がることとなり、幅広部14aに、液体の滞留する領域が生じる可能性を低減することができる。
【0080】
また、第2個別流路14は接続部14cを有しており、平面視したときに接続部14cを構成する壁が湾曲している。それにより、幅狭部14bを流れた液体を、よどみなく幅広部14aに流すことができる。すなわち、接続部14cの近傍で流れに滞留する領域80が生じる可能性を低減することができる。
【0081】
また、平面視したときに、接続領域10eにおける幅広部14aの幅は、部分流路10bの幅と略同じになっている。それにより、幅広部14aによって広がる液体の範囲を、部分流路10bの幅に近づけることができる。その結果、部分流路10bの内部に滞留する領域80が生じる可能性を低減することができる。
【0082】
また、
図8(a)に示すように、平面視したときに、吐出孔8が第1領域E1に配置されている。それにより、吐出孔8の周囲に滞留する領域が生じる可能性を低減することができる。すなわち、幅広部14aが設けられたことにより、第1領域E1においては、液体が広い範囲にわたって流れている。そして、第1領域E1に吐出孔8を配置することにより、吐出孔8の近くに滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0083】
なお、液体吐出ヘッド2では、吐出孔8の一部が、第1領域E1に配置される例を示したが、吐出孔8の全体が、第1領域E1内に配置されることが好ましい。
【0084】
また、
図8(b)に示すように、平面視したときに、吐出孔8が第2領域E2に配置されている。それにより、吐出孔8の周囲に滞留する領域が生じる可能性をさらに低減することができる。すなわち、幅狭部14bの幅は、部分流路10bの幅に比べて狭いため、幅狭部14bを流れる液体の流速は、部分流路10bを流れる流速に比べて速くなっている。
【0085】
幅狭部14bを流れた液体には慣性力が働いており、幅狭部14bを第4方向D4に伸ばした領域を流れる液体の流速も速くなっている。そのため、第2領域E2を流れる液体の流速は他の領域よりも速くなっており、第2領域E2に吐出孔8を配置したことにより、吐出孔8近傍を流れる液体の流速を速めることができる。その結果、吐出孔8につまりが生じる可能性を低減することができる。
【0086】
また、加圧室10が第1共通流路20と第2共通流路24との間に配置されており、第2個別流路14は、加圧室10から第1方向D1に引き出されている。それにより、加圧室10を高密度に配置するとともに、第1流路部材4の各プレート4e〜4gの接着代を確保することができる。また、第2個別流路14が、加圧室10から第1方向D1に引き出されていることにより、第2個別流路14の長さを確保することができ、第2個別流路14の流路抵抗を小さくすることができる。
【0087】
また、幅狭部14bは、第2共通流路24側に曲がる湾曲部14b1を有しており、湾曲部14b1の曲率半径が、第1共通流路20と第2共通流路24との間隔の半分以上となっている。それゆえ、流れる液体の流量が大きくなり、流路抵抗が高くなった場合においても、湾曲部14b1を流れる液体の流路抵抗が高くなりすぎることを抑制することができる。
【0088】
また、加圧室10が加圧室本体10aと部分流路10bとを備えており、幅広部14aが部分流路10bの吐出孔8側に配置されている。部分流路10bは、加圧室本体10aと第2個別流路14bとに接続されており、加圧室本体10aから液体が供給されることによって、内部に液体が滞留する領域が生じやすい。これに対して、液体吐出ヘッド2は、部分流路10bの吐出孔8側の液体の流れをよどむことなく流すことができ、その結果、液体に含まれる顔料等の沈降を抑え、吐出孔8につまりが生じる可能性を低減することができる。
【0089】
図7(b)に示すように、加圧室10は、加圧室下面10b1を有しており、幅広部14aは、幅広部下面14dを有している。そして、幅広部下面14dの吐出口8cからの高さが、加圧室下面10b1の吐出口8cからの高さと同じになっている。それにより、加圧室下面10b1と幅広部下面14dとが面一に形成されることとなる。そのため、加圧室下面10b1に形成された吐出孔8の近傍における液体の流速を速くすることができる。その結果、吐出孔8につまりが生じる可能性を低減することができる。なお、本明細書において、高さが同じとは、幅広部下面14dの吐出口8cからの高さと、加圧室下面10b1の吐出口8cからの高さとが全く同じ高さであることに限定されるものではなく、製造誤差等により高さの差が生じた場合であっても、含み得る意味である。つまり、高さが同じとは、実質的に高さが同じという意味である。
【0090】
なお、幅広部下面14dの吐出口8cからの高さが、加圧室下面10b1の吐出口8cからの高さよりも低くてもよい。その場合、加圧室下面10b1に形成された吐出口8cの近傍における液体の流速をさらに速くすることができる。
【0091】
液体吐出ヘッド2は、第1個別流路12を介して第1共通流路20から複数の加圧室10に液体を供給し、第2個別流路14を介して第2共通流路24から複数の加圧室10の液体を回収している。それにより、液体は、部分流路10bの内部を吐出孔8側から加圧室本体10a側に向けて流れることとなる。その結果、吐出口8cから気泡が部分流路の内部に侵入した場合に、気泡の浮力に加えて、液体の流動により、気泡を上方へ向けて流すことができる。その結果、気泡は、加圧室本体10aを介して、第1共通流路20を流れることにより、気泡を外部へ排出することができる。
【0092】
なお、液体吐出ヘッド2では、加圧室10が加圧室本体10aと、部分流路10bとを有した例を示したが、加圧室本体10aの形状を下方に延びるようにし、部分流路10bを設けなくてもよい。
【0093】
その場合、加圧室10の吐出孔8側とは、幅広部14aが、加圧室本体10aの側面10b2のうち、加圧室下面10b1から加圧室本体10aの高さの0.5倍までの領域に接続されていることを意味する。なお、幅広部14aが加圧室下面10b1から、加圧室本体10aの高さの0.2倍までの領域に接続されていることが好ましい。
【0094】
また、第1個別流路12は、第2個別流路14よりも上方に設けられることが好ましい。それにより、第1個別流路12を流れる液体が、加圧室10全域にわたって流れやすくなり、加圧室10の内部に、液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。また、第1個別流路12に幅広部14aを設けてもよい。
【0095】
<第1の実施形態の変形例1>
図10(a)を用いて、第1の実施形態の変形例1に係る液体吐出ヘッド102について説明する。液体吐出ヘッド102は、第2個別流路114が液体吐出ヘッド2と異なっており、その他の点は液体吐出ヘッド2と同様である。なお、同一の部材については同一の符号を付している。
【0096】
第2個別電極114は、幅広部114aと幅狭部114bと接続部114cとを有している。幅広部114aは、平面視して、直線により形成されており、部分流路10bに向かうにつれて幅が広くなっている。幅広部114aは部分流路10bと接続領域10eにて接続されている。
【0097】
このような場合においても、幅広部114aを流れた液体が、部分流路10bの内部の全域を渡るように流れることとなる。すなわち、幅広部114aにて液体の流れる範囲が広がり、その結果、部分流路10bの内部に、液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0098】
なお、
図8(a)に示す液体吐出ヘッド2のように、仮想線10fが部分流路10bの直径となるように接続領域10eを設けることが好ましい。それにより、第1領域E1の面積を大きくすることができるとともに、幅広部14に液体の滞留する領域が生じる可能性を低減することができる。
【0099】
<第1の実施形態の変形例2>
図10(b)を用いて、第1の実施形態の変形例2に係る液体吐出ヘッド202について説明する。液体吐出ヘッド202は、第2個別流路214が液体吐出ヘッド2と異なっており、その他の点は同様である。なお、同一の部材については同一の符号を付している。
【0100】
第2個別電極214は、幅広部214aと幅狭部214bと接続部214cとを有している。幅広部214aは、平面視して、直線により形成されており、部分流路10bと略同等な一定の幅を有している。
【0101】
このような場合においても、幅広部114aを流れた液体が、部分流路10bの内部を広がるように流れることとなる。すなわち、幅広部114aにて液体の流れる範囲が広がり、その結果、部分流路10bの内部に、液体が滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0102】
なお、
図8(a)に示す液体吐出ヘッド2のように、幅広部14aの幅が、部分流路19bに向かうにつれて広くなっていることが好ましい。それにより、幅広部14に液体の滞留する領域が生じる可能性を低減することができる。
【0103】
<第2の実施形態>
図11を用いて第2の実施形態に係る液体吐出ヘッド302について説明する。なお、液体吐出ヘッド302は、第1流路部材304に形成されている各種流路、および液体の流れ方向が液体吐出ヘッド2と異なっており、その他の点は同様であり説明を省略する。
【0104】
液体吐出ヘッド302は、第1流路部材304が、第1共通流路320および第2共通流路324を備えている。第1共通流路320には第1個別流路312が接続されており、第2共通流路324には第2個別流路314が接続されている。第1共通流路320は、開口20a(
図4参照)を介して、第2流路部材6(
図4参照)の第1統合流路22(
図4参照)に接続されている。第2共通流路324は、開口24a(
図4参照)を介して、第2流路部材6の第2統合流路26(
図4参照)に接続されている。
【0105】
そして、液体吐出ヘッド302は、液体吐出ヘッド2とは逆向きに液体が供給されている。すなわち、第2統合流路26に供給された液体は、開口24aを介して、第2共通流路324に供給される。第2共通流路324に供給された液体は、第2個別流路314を介して部分流路310bに供給される。部分流路310bに供給された液体は、一部が吐出孔308により吐出され、残りの一部が加圧室本体310aに供給される。加圧室本体310aに供給された液体は、第1個別流路312を介して、第1共通流路320に回収される。第1共通流路320に回収された液体は、開口20aを介して、第1統合流路22に回収される。このようにして、液体吐出ヘッド302は、第1流路部材304および第2流路部材6により循環構造が形成されている。
【0106】
加圧室310は、加圧室本体310aと、加圧室本体310aよりも断面積の小さな部分流路310bとを有している。加圧室本体310aと部分流路310bとの断面の形状は円形状であり、加圧室本体310aの面積重心と、部分流路310bの面積重心とは、一致しておらず、部分流路310bの面積重心が、加圧室本体310aの面積重心よりも第1方向D1側に配置されている。そして、図示していないが、加圧室本体310aの第4方向側に第1個別流路312が接続されている。
【0107】
加圧室310は、第1領域E1と第2領域E2とを有している。吐出孔308は、第1領域E1および第2領域E2に配置されている。つまり、吐出孔308は、第1領域E1と第2領域E2とが重なる領域に配置されている。
【0108】
第2個別流路314は、幅広部314aと、幅狭部314bと、接続部314cとを有しており、部分流路310bと接続領域310eにて接続されている。
【0109】
部分流路310bから加圧室本体310aに供給された液体は、第1個別流路312により回収される。ここで、加圧室本体310aの面積重心と、部分流路310bの面積重心とが一致しており、加圧室本体310aの第4方向D4に第1個別流路312が接続されていると、部分流路310bから加圧室本体310aに供給された液体は、第4方向D4に向けて流れることとなり、加圧室本体310aの第1方向D1側に、液体の滞留が生じる可能性がある。
【0110】
これに対して、液体吐出ヘッド302は、部分流路310bの面積重心が、加圧室本体310aの面積重心よりも幅広部314a側(第1方向D1側)に配置されており、第1個別流路312が加圧室本体310aの幅広部314aと反対側(第4方向D4側)に接続されている。そのため、部分流路310bから加圧室本体310aに供給された液体は、加圧室本体310aの第1方向D1から第4方向D4に向けて流れることとなる。その結果、液体は、加圧室本体310aの内部に液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0111】
また、平面視したときに、部分流路310bの外周と、加圧室本体310aの外周とが重なりあうことが好ましい。それにより、加圧室本体310aの内部に、液体の滞留が生じる可能性をさらに低減することができる。
【0112】
また、液体吐出ヘッド302は、第2個別流路314を介して第2共通流路324から複数の加圧室310に液体を供給し、第1個別流路312を介して第1共通流路320から複数の加圧室310の液体を回収している。それにより、吐出孔8の周囲に位置する液体の流動を向上させ、加圧室下面310b3,310b4における液体の流速を向上させることができる。
【0113】
<第2の実施形態の変形例>
図12を用いて、第2の実施形態の変形例に係る液体吐出ヘッド402について説明する。液体吐出ヘッド402は、加圧室410および第2個別流路412が、液体吐出ヘッド302と異なっている。
【0114】
加圧室410は、加圧室本体410aと、部分流路410bとを有している。部分流路410bは、側面410b2を有しており、第1方向D1側に位置する加圧室下面410b4と、第4方向D4側に位置する加圧室下面410b3とを有している。そして、第1方向D1側に位置する加圧室下面410b4の吐出口308cからの高さが、第4方向D4側に位置する加圧室下面410b3の吐出口308cからの高さよりも低くなっている。
【0115】
液体吐出ヘッド402は、幅広部414a側(第1方向D1側)に位置する加圧室下面410b4と吐出口308cとの距離が、幅広部414aと反対側(第4方向D4側)に位置する加圧室下面410b3と吐出口308cとの距離よりも短くなっていることから、部分流路410bの内部に液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0116】
すなわち、
図11(a)に示す部分流路310bのうち、第2領域の第4方向D4側は、液体が流れにくく滞留が生じる可能性がある。しかしながら、液体吐出ヘッド402は、
図12に示すように、液体の流れにくい領域に部分流路410bを形成していない。それゆえ、部分流路410bの内部に、液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。
【0117】
なお、第2個別流路414の幅広部下面414dと、第1方向D1側に位置する加圧室下面410b4とが、面一に形成されていることが好ましい。それにより、幅広部414aと部分流路410bとの接続領域(不図示)に、液体の滞留が生じる可能性を低減することができる。さらに、吐出孔308の近傍の液体の流速を早くすることができ、吐出孔308につまりが生じる可能性を低減することができる。
【0118】
以上、第1〜4の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0119】
例えば、加圧部として、加圧室10を圧電アクチュエータの圧電変形によりを加圧する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、加圧室10ごとに発熱部を設け、発熱部の熱により加圧室10の内部の液体を加熱し、液体の熱膨張により加圧する加圧部としてもよい。