特許第6248206号(P6248206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248206サイドエアバッグ装置および該装置におけるエアバッグ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248206
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置および該装置におけるエアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20171204BHJP
   B60R 21/237 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   B60R21/207
   B60R21/237
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-545394(P2016-545394)
(86)(22)【出願日】2015年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2015071301
(87)【国際公開番号】WO2016031468
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-171572(P2014-171572)
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【復代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江口 慧太
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−82435(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/193327(US,A1)
【文献】 特開2013−184647(JP,A)
【文献】 特開2007−216821(JP,A)
【文献】 特開平9−272393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の座席に着座した乗員の側方で膨張し車両前方に向けて展開するエアバッグと、該エアバッグの基部から該エアバッグの端部に向けて膨張用ガスを供給するインフレータと、を含むサイドエアバッグ装置における当該エアバッグであって、
膨張展開する前の時点で、
前記端部寄りの部分が蛇腹状に折られもしくは巻かれることによって重畳してなり、または折りと巻きが組み合わされて重畳してなる重畳部と、
該重畳部から前記基部に連なる基部寄りの部分であって、前記重畳部よりも車両幅方向内側の位置において、車両前方に向けて延ばされた後で車両後方に向けて折り返されてなる折返部と、
該折返部のうち、前記重畳部よりも車両前方に突出した部分が、車両幅方向外側に向けて折り曲げられてなり、前記重畳部の車両前方において当該重畳部の少なくとも一部を覆っている折曲部と、
を有する状態になっているエアバッグ。
【請求項2】
前記重畳部は、鉛直方向に所定の長さを有する前記インフレータの長手方向に対して斜め上方から折られまたは巻かれて形成されている、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
前記エアバッグは、鉛直方向上側部分および下側部分が斜めに折り畳まれてから、前記重畳部、前記折返部および前記曲折部が形成された状態となっている、請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
前記エアバッグは、鉛直方向上側部分および下側部分が斜め上方に折り畳まれ、互いに平行な上側縁および下側縁を有する形状となってから、前記重畳部、前記折返部および前記曲折部が形成された状態となっている、請求項3に記載のエアバッグ。
【請求項5】
前記下側部分が、タックインして前記下側縁を境に折り返された状態となっている、請求項4に記載のエアバッグ。
【請求項6】
前記重畳部は、前記端部寄りの部分が巻かれてなるロール部で構成されており、
該ロール部と前記折返部との間に第2の折返部が形成され、該第2の折返部が前記ロール部の車両後方に配置されている、請求項1から5のいずれか一項に記載のエアバッグ。
【請求項7】
前記第2の折返部は、車両幅方向外側に向けて延ばされた後で車両幅方向内側に向けて折り返されてなる、請求項6に記載のエアバッグ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のエアバッグを含む、サイドエアバッグ装置。
【請求項9】
車両の座席に着座した乗員の側方で車両前方に向けて膨張展開するエアバッグと、該エアバッグの基部から該エアバッグの端部に向けて膨張用ガスを供給するインフレータと、を含むサイドエアバッグ装置において、
膨張展開する前の状態の前記エアバッグが、
前記端部寄りの部分が蛇腹折りされてなる重畳部と、
該重畳部から前記基部に連なる基部寄りの部分であって、前記折り畳み部よりも車両幅方向内側において、車両前方に向けて延ばされた後、車両後方に向けて折り返されてなる折返部と、
該折返部のうち、前記重畳部よりも車両前方に突出した部分が、車両外側に向けて折り曲げられ、前記重畳部の車両前方において当該重畳部の少なくとも一部を覆っている折り曲げ部と、
を有する状態となっていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドエアバッグ装置および該装置におけるエアバッグに関する。さらに詳述すると、本発明は、車両に装備されるサイドエアバッグ装置のエアバッグの構成の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時等において、座席に着座した乗員の側方でエアバッグを膨張させて車両前方に向けて展開させるサイドエアバッグ装置が利用されている。
【0003】
このようなサイドエアバッグ装置としては、エアバッグを折り畳む際、ロール状の集合部と、この集合部の両側に沿った案内部とを設けることにより、サイドエアバッグの展開特性の向上を図ったものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、エアバッグの展開時、エアバッグ後部及びエアバッグ前部の展開膨張が適切に行なわれないことを回避するべく、エアバッグを後部チャンバ及び前部チャンバに区画する隔壁に、両チャンバを連通させる連通路を設けるようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−203272号公報
【特許文献2】特開2013−82435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のごとき従来のエアバッグ装置の中には、エアバッグ展開時の挙動が十分ではないものがある。特に、乗員の側部への衝撃を緩和するサイドエアバッグ装置は、ステアリングホイールやダッシュボードに備え付けられたエアバッグ装置に比べ、乗員と車両側部(ドアやピラー等)との間隔が狭いことから迅速かつ確実に展開することが要求されるものである。ところが、実際には、展開する際にエアバッグが乗員の腕の下側に入り込んでしまうことがあり、その結果、肩付近の保護が不十分になることがある。
【0007】
そこで、本発明は、乗員の肩付近などをより確実に保護できるようにしたサイドエアバッグ装置および該装置におけるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、車両の座席に着座した乗員の側方で膨張し車両前方に向けて展開するエアバッグと、該エアバッグの基部から該エアバッグの端部に向けて膨張用ガスを供給するインフレータと、を含むサイドエアバッグ装置における当該エアバッグであって、
膨張展開する前の時点で、
前記端部寄りの部分が蛇腹状に折られもしくは巻かれることによって重畳してなり、または折りと巻きが組み合わされて重畳してなる重畳部と、
該重畳部から前記基部に連なる基部寄りの部分であって、前記重畳部よりも車両幅方向内側の位置において、車両前方に向けて延ばされた後で車両後方に向けて折り返されてなる折返部と、
該折返部のうち、前記重畳部よりも車両前方に突出した部分が、車両幅方向外側に向けて折り曲げられてなり、前記重畳部の車両前方において当該重畳部の少なくとも一部を覆っている折曲部と、
を有する状態になっているというものである。
【0009】
本発明によれば、エアバッグの展開時、折曲部が、折り曲げられた方向とは逆すなわち車両幅方向内側に向けて動く際、重畳部に対して車両外側へ動こうとする力を与えることから、エアバック自体が車両幅方向外側へと展開しやすくなる。したがって、このエアバッグは、乗員の腕の外側に展開するように動作するため肩付近とドアの隙間に入り込みやすく、乗員の肩付近などをより確実に保護できる状態となりやすい。
【0010】
前記エアバッグにおいて、前記重畳部は、鉛直方向に所定の長さを有する前記インフレータの長手方向に対して斜め上方から折られまたは巻かれて形成されていることが好ましい。このようなエアバッグは、斜め上方に向けて膨張しながら展開することから、展開途中に乗員の腕を斜め上方に跳ね上げながら肩付近とドアの隙間に入り込むことができる。
【0011】
前記エアバッグは、鉛直方向上側部分および下側部分が斜めに折り畳まれてから、前記重畳部、前記折返部および前記曲折部が形成された状態となっていてもよい。
【0012】
また、前記エアバッグは、鉛直方向上側部分および下側部分が斜め上方に折り畳まれ、互いに平行な上側縁および下側縁を有する形状となってから、前記重畳部、前記折返部および前記曲折部が形成された状態となっていてもよい。
【0013】
また、前記下側部分が、タックインして前記下側縁を境に折り返された状態となっていてもよい。
【0014】
前記エアバッグにおいて、前記重畳部は、前記端部寄りの部分が巻かれてなるロール部で構成されており、該ロール部と前記折返部との間に第2の折返部が形成され、該第2の折返部が前記ロール部の車両後方に配置されていてもよい。このように形成された第2の折返部は、エアバッグの展開時、ロール部を車両前方に押しながら、下方の早期展開を助勢する。すなわち、第2の折返部によって重畳部が車両前方に押し出されると、下側縁より上方に折り返されているエアバッグの下方部分が、当該下側縁から下方向に展開しやすくなるため、下方部分が早期展開しやすくなる。
【0015】
前記第2の折返部は、車両幅方向外側に向けて延ばされた後で車両幅方向内側に向けて折り返されてなる。
【0016】
また、本発明に係るサイドエアバッグ装置は、上述したエアバッグを含むものである。
【0017】
また、本発明は、車両の座席に着座した乗員の側方で車両前方に向けて膨張展開するエアバッグと、該エアバッグの基部から該エアバッグの端部に向けて膨張用ガスを供給するインフレータと、を含むサイドエアバッグ装置において、
膨張展開する前の状態の前記エアバッグが、
前記端部寄りの部分が蛇腹折りされてなる重畳部と、
該重畳部から前記基部に連なる基部寄りの部分であって、前記折り畳み部よりも車両幅方向内側において、車両前方に向けて延ばされた後、車両後方に向けて折り返されてなる折返部と、
該折返部のうち、前記重畳部よりも車両前方に突出した部分が、車両外側に向けて折り曲げられ、前記重畳部の車両前方において当該重畳部の少なくとも一部を覆っている折り曲げ部と、
を有する状態となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乗員の肩付近などをより確実に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】サイドエアバッグ装置の一例を示す車両の座席付近の平面図である。
図2】折り畳まれる前のエアバッグを示す図である。
図3】下側部分を上方へと折り返した状態のエアバッグを示す図である。
図4】さらに上側部分を下方へと折り返した状態のエアバッグを示す図である。
図5】端部寄りの部分を蛇腹状に折って重畳させた状態のエアバッグを示す図である。
図6図5に示したエアバッグの全体を左右が逆となるようにひっくり返した状態を示す図である。
図7】重畳部を移動させて折返部を形成した状態のエアバッグを示す図である。
図8】重畳部から突出した部分を折り曲げて折曲部を形成した状態のエアバッグを示す図である。
図9A】重畳部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図9B】折返部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図9C】折曲部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図10】膨張展開する際の力の作用と各部の動きを示すエアバッグの平面図である。
図11】膨張展開する途中の力の作用と各部の動きを示すエアバッグの平面図である。
図12】ロール状の重畳部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図13】ロール状の重畳部の次に折返部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図14】ロール状の重畳部と折返部に加えて折曲部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図15】ロール状の重畳部の次に、折返部と第2の折返部とが形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図16図15に示した状態からさらに折曲部が形成された状態のエアバッグを示す平面図である。
図17】サイドエアバッグ装置のエアバッグを膨張展開させる実証実験を行った際の様子を示す画像である。
図18】従来のサイドエアバッグ装置のエアバッグを膨張展開させる実証実験の結果を比較例として示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて説明する。
【0021】
本発明に係るサイドエアバッグ装置1は、エアバッグ10と、インフレータ20とを含むもので、側突時等に乗員Pと車両側部(例えばドア200)との間で膨張展開するよう、自動車の座席100の背部110に設けられている。なお、以下では右座席用のサイドエアバッグ装置1を例示しつつ説明するが(図1等参照)、左座席にも適用できることはいうまでもない。
【0022】
エアバッグ10は、車両の座席100に着座した乗員Pの側方で膨張し車両前方に向けて展開するように設けられている。本実施形態のサイドエアバッグ装置1におけるエアバッグ10は、以下のように折り畳まれて収容された状態となっている。以下、順を追って折り畳み方を示しながら説明する。
【0023】
まず、折り畳まれる前の段階のエアバッグ10において、インフレータ20に取り付けられる側を基部10Aと呼び、この基部10Aと反対側すなわち展開時に車両前方に向かう側を端部10Bと呼ぶ(図2参照)。このエアバッグ10に対しては、基部10Aから端部10Bに向けてインフレータ20から膨張用ガスが供給される。
【0024】
インフレータ20は、エアバッグ10の基部10Aから該エアバッグ10の端部10Bに向けて膨張用ガスを供給する。本実施形態のインフレータ20は例えば所定の長さを有する筒状に形成されており、長手方向を縦にした状態で座席100の背部110内に設置される。
【0025】
また、基部10A側がこのインフレータ20に取り付けられるエアバッグ10は、図2中の上側部分が鉛直方向上方、下側部分が鉛直方向下方に位置するように座席100に設置される。なお、説明の便宜のため、以下、エアバッグ10の上側部分を符号10u、下側部分を符号10dで示す(図2等参照)。
【0026】
本実施形態では、このエアバッグ10の下側部分10dを上方へと折り返し(図3参照)、さらに、上側部分10uを下方へと折り返す(図4参照)。これとは逆に上側部分10uを先に折り返しても構わない。
【0027】
このとき、本実施形態では、上側部分10uおよび下側部分10dを斜めに折り返し、互いに平行な(略平行な場合を含む)上側縁10Hおよび下側縁10Lを有する形状とする。なお、特に図示していないが、下側部分10dをタックインして下側縁10Lを境に折り返すようにしてもがよい。
【0028】
さらにこのとき、端部10Bのほうが基部10Aよりも上方となるように斜めに折り返すことが好適である(図4参照)。こうした場合は、上側部分10uおよび下側部分10dを折り返された後のエアバッグ10が、鉛直方向に所定の長さを有するインフレータ20の長手方向に対して斜め上方へ延びるように傾斜した形となる。
【0029】
続いて、エアバッグ10のうち端部10B寄りの部分を蛇腹状に折って重畳させ、重畳部12を形成する(図5図9A参照)。重畳部12内では、エアバッグ10が右、左、右、…とジグザグ状ないしはアコーディオンのように折り畳まれた状態となっている。
【0030】
このようにエアバッグ10の一部を蛇腹状に折り畳む際は、インフレータ20の長手方向に対して斜め上方から該インフレータ20に向けて折り畳むことが好ましい(図4図5参照)。このように折り畳まれたエアバッグ10は、膨張時、斜め上方に向けて展開することから、展開途中に乗員Pの腕(図1中の符号Pを参照)を斜め上方に跳ね上げながら肩付近とドアの隙間に入り込みやすくなる。
【0031】
次に、重畳部12から基部10Aに連なる部分(エアバッグ10のうち基部10A寄りの部分)を、重畳部12よりも車両幅方向内側となる位置において、車両前方に向けて延ばされた後で車両後方に向けて折り返した状態として折返部14を形成する(図9B参照)。このとき、重畳部12は、折返部14の車両幅方向外側(ドア200寄り)であってインフレータ20よりも車両前方に位置している(図9B参照)。
【0032】
折返部14を形成する折り畳み方の一例を示す。図5に示すエアバッグ10のうち、向かって右側の端部10B寄りの部分を蛇腹状に折って重畳部12を形成したら(図5参照)、左右が逆となるように全体をひっくり返す(図6参照)。次に、重畳部12を摘むように持ち上げ、図6中の一点鎖線の部分が二点鎖線の部分に重なるように移動させる。このとき折り重なった部分が折返部14となる(図9B参照)。また、折返部14の一部は、重畳部12よりも図中左側(すなわち車両前方)へ三角形状に突出した状態となる(図7参照)。この突出した部分10tは、図6中の一点鎖線と二点鎖線とで画定される三角形状部分の相似形あるいはこれに近似した形状となっている。
【0033】
続いて、この三角形状に突出した部分10tを、車両幅方向外側に向けて折り曲げ、折曲部16を形成する(図8図9C参照)。図示するように、折曲部16は、重畳部12の車両前方において当該重畳部12の少なくとも一部を覆った状態となる(図8等参照)。
【0034】
このように畳まれ、膨張展開する前の時点で上記のごとき重畳部12、折返部14、折曲部16などが形成されたエアバッグ10は、以下のように膨張展開する(図10等参照)。
【0035】
すなわち、膨張展開する際、解放された折曲部16は真っ直ぐになろうとして、折り曲げられた方向とは逆の車両幅方向内側に向けて動く。このとき、慣性と勢いを有しながら動く折曲部16は、同じく解放されたばかりの重畳部12に対して、折返部14を通じ、車両幅方向外側への力を作用させる(図11参照)。通常、重畳部12は、膨張展開する際に解(ほど)けながら前方へと押し出されるように動くが、本実施形態のサイドエアバッグ装置1においては、これに外側へ向かう力が加わる。この結果、エアバッグ10の全体が車両幅方向外側へ向け展開しやすくなる。したがって、このエアバッグ10は、乗員Pの腕の外側に展開するように動作することから、乗員Pの腕などに阻害されることなく乗員Pの肩付近とドア200の隙間に入り込むことができる。あるいは、乗員Pの腕に当たったとしても、腕を跳ね上げるようにして乗員Pの肩付近とドア200の隙間に入り込みことができる。このため、乗員Pの肩付近などをより確実に保護できる状態となりやすい(図17参照)。
【0036】
また、このサイドエアバッグ装置1によれば、乗員Pの腕の外側に向け動作させることから、折り畳まれたエアバッグ10をより早くほどけさせることが可能である。したがって、展開の速い段階でエアバッグ10のより先端の方(すなわち端部10B側)にガスを送り込むことが可能である。
【0037】
しかも、このサイドエアバッグ装置1においては、エアバッグ10の一部が蛇腹状にあるいはロール状に重畳された状態で折り畳まれていることから、膨張展開する前の状態が非常にコンパクトである。
【0038】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態ではエアバッグ10の一部を蛇腹状にジグザグに折り畳んで重畳部12を形成する場合について説明したが、これは好適な一例にすぎず、この他、エアバッグ10の端部10B寄りの部分をロール状に巻き込むことによって重畳部12を形成することもできる(図12図14参照)。あるいは、特に図示していないが、折り込みと巻き込みとを組み合わされてエアバッグ10の一部を重畳させて重畳部12を形成することもできる。このようなサイドエアバッグ装置1においては、重畳部12の具体的な形態は異なるものの、膨張展開時における折曲部16の動き、該折曲部16の動きによって重畳部12に作用する力、これらの結果としてエアバッグ10の全体が車両幅方向外側へ向け展開しやすくなるといったことは、上述した実施形態と同様である。
【0039】
また、このようにエアバッグ10の端部10B寄りの部分が巻かれてなるロール部によって重畳部12が形成されている場合、該重畳部(ロール部)12と折返部14との間に追加の折返部として第2の折返部18を形成することも好ましい(図15図16参照)。図示するように、この第2の折返部18は、車両幅方向外側に向けて延ばされた後で車両幅方向内側に向けて折り返されており、重畳部(ロール部)12の車両後方側に配置されている。このように形成された第2の折返部18は、エアバッグ10の膨張展開時、重畳部(ロール部)12を車両前方に押しながら、下方の早期展開を助勢する。すなわち、第2の折返部18によって重畳部(ロール部)12が車両前方に押し出されると、下側縁10L(図3参照)のラインより上方に折り返されているエアバッグ10の下の方の部分が展開しやすくなる(図5に示す状態の下側縁10Lから下方向に展開しやすくなる)。また、特に図示はしていないが、折返部14にタックインされた部分があると、当該折返部14のところから重畳部12をどかしてあげることで折返部14にタックインされた部分が下方に出やすくなる。
【0040】
<実施例>
乗員のダミーを用い、上述した実施形態のごとく構成したサイドエアバッグ装置1による実証実験を行ったので実施例として以下に記す(図17参照)。なお、本実験は左座席において行ったものであるため、上述した実施形態や図面等とは左右逆となっている点に注意されたい。
【0041】
膨張展開時、エアバッグ10は車両幅方向外側(この場合、車両左側)に向け、尚かつ斜め上方に向けて展開し、展開途中に乗員Pの腕(この場合、左腕)を斜め上方に跳ね上げながら肩付近とドアの隙間に入り込んだ。具体的には、展開開始後4ms時に乗員の腕の下方で前方に出るのが早くなり、続いて6ms時に乗員の肩部とドアとの間に入り込むことができた。また、このとき、まず折返部14が膨らんでエアバッグ10全体を車外方向に向けて押し出しながら、折曲部16が前方に膨らみ始め、続いて重畳部12がほどけながら全体が膨張することが確認された。
【0042】
以上から、このサイドエアバッグ装置1によれば、エアバッグ10によって乗員の肩部付近を十分に保護できることが確認できた。
【0043】
<比較例>
従来のサイドエアバッグ装置による実証実験の結果を比較例として記す。実験したところ、展開する際にエアバッグが乗員の腕の下側に入り込んでしまうことがあり、その結果、肩付近の保護が不十分になることがあった(図18参照)。
【符号の説明】
【0044】
1…サイドエアバッグ装置
10…エアバッグ
10A…基部
10B…端部
10u…上側部分
10d…下側部分
10t…(重畳部よりも車両前方に)突出した部分
12…重畳部
14…折返部
16…折曲部
18…第2の折返部
20…インフレータ
100…座席
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18