(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジン(31)からの排気ガスを導出する排気管(51)と、前記排気管(51)の下流側に接続されて排気音を低減させるとともに前記排気ガスを外部へ排出するマフラ(53)とを備えた排気装置において、
前記マフラ(53)内に複数の室に区画された膨張室(70)が設けられ、前記膨張室(70)のうちの一つの室に前記排気管(51)、又は前記排気管(51)側に連通する入口管部(80)が接続され、前記排気管(51)、前記入口管部(80)、又は前記膨張室(70)の各室を連通する連通管(81,82)の下流端部に、排気ガスを攪拌する攪拌部材(93)が設けられ、前記攪拌部材(93)は、その下流側に向かって先細りとなるコーン部(93a)を備え、前記コーン部(93a)の下流縁に、複数の切り欠き(93c、93cs,93cu)が形成された波状開口部(93d)が設けられることを特徴とする排気装置。
前記波状開口部(93d)の後端部には、前記攪拌部材(93)の軸線(80a)と略平行になるように折り曲げられた折曲部(93f)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気装置。
前記膨張室(70)は、前記攪拌部材(93)からの排気ガスを膨張させる第1膨張室(74)と、前記第1膨張室(74)の後方に配置されて前記1膨張室(74)に連通される第2膨張室(75)と、前記第1膨張室(74)の前方に配置されて前記第2膨張室(75)に連通される第3膨張室(76)とを備え、
前記第1膨張室(74)と前記第2膨張室(75)とは、第1連通管(81)によって連通され、前記第2膨張室(75)と前記第3膨張室(76)とは、第2連通管(82)によって連通され、
前記第3膨張室(76)から第3連通管(83)が延びて前記第1膨張室(74)及び前記第2膨張室(75)を貫通するとともに前記マフラ(53)の外部へ突出することで、前記第3膨張室(76)が前記マフラ(53)の外部へ連通され、
前記攪拌部材(93)の後部と前記第1連通管(81)の前部とは、少なくとも一部が前後方向にオーバーラップする位置に設けられることを特徴とする請求項3又は4に記載の排気装置。
前記第1連通管(81)、前記第2連通管(82)及び前記第3連通管(83)の少なくともいずれかは、前記攪拌部材(93)の前記軸線(80a)の位置から前記切り欠き(93cs)を通って前記攪拌部材(93)の半径方向外側に放射状に延びる直線(111,112,113)上に設けられることを特徴とする請求項5に記載の排気装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、先細ノズル状のパイプとすることや、排気ガス緩衝器の周壁に設けられた多数の流出孔を設けることは、排気ガスを膨張させ且つ攪拌させるという点で消音効果を高めるために望ましい構造である。排気ガスを攪拌させる手法として、排気ガス流の乱れを利用することが考えられるが、このような乱流を用いると、排気管内の振動が大きくなり、排気音も大きくなってしまう。
また、排気管の曲面にパンチングを施す場合、孔の精度(孔周辺のバリ)や排気管の真円形状に微小な凹凸ができるため、排気管の開口面積に誤差が生じやすいため、加工精度が高い構造が望まれる。
本発明の目的は、振動を抑制することで消音効果を高め、部品精度を向上させた排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書には、2015年1月26日に出願された日本国特許出願・特願2015−012116の全ての内容が含まれる。
上述した課題を解決するため、本発明は、エンジン(31)からの排気ガスを導出する排気管(51)と、前記排気管(51)の下流側に接続されて排気音を低減させるとともに前記排気ガスを外部へ排出するマフラ(53)とを備えた排気装置において、前記マフラ(53)内に複数の室に区画された膨張室(70)が設けられ、前記膨張室(70)のうちの一つの室に前記排気管(51)、又は前記排気管(51)側に連通する入口管部(80)が接続され、前記排気管(51)、前記入口管部(80)、又は前記膨張室(70)の各室を連通する連通管(81,82)の下流端部に、排気ガスを攪拌する攪拌部材(93)が設けられ、前記攪拌部材(93)は、その下流側に向かって先細りとなるコーン部(93a)を備え、前記コーン部(93a)の下流縁に、複数の切り欠き(93c、93cs,93cu)が形成された波状開口部(93d)が設けられることを特徴とする。
【0006】
上記構成において、前記切り欠き(93c、93cs,93cu)は、放物線形状に形成されるようにしても良い。
また、上記構成において、前記波状開口部(93d)の後端部には、前記攪拌部材(93)の軸線(80a)と略平行になるように折り曲げられた折曲部(93f)が形成されていても良い。
また、上記構成において、前記攪拌部材(93)は、前記軸線(80a)が水平線(90)に対して傾斜するように前記マフラ(53)内に配置されるようにしても良い。
【0007】
また、上記構成において、前記膨張室(70)は、前記攪拌部材(93)からの排気ガスを膨張させる第1膨張室(74)と、前記第1膨張室(74)の後方に配置されて前記1膨張室(74)に連通される第2膨張室(75)と、前記第1膨張室(74)の前方に配置されて前記第2膨張室(75)に連通される第3膨張室(76)とを備え、前記第1膨張室(74)と前記第2膨張室(75)とは、第1連通管(81)によって連通され、前記第2膨張室(75)と前記第3膨張室(76)とは、第2連通管(82)によって連通され、前記第3膨張室(76)から第3連通管(83)が延びて前記第1膨張室(74)及び前記第2膨張室(75)を貫通するとともに前記マフラ(53)の外部へ突出することで、前記第3膨張室(76)が前記マフラ(53)の外部へ連通され、前記攪拌部材(93)の後部と前記第1連通管(81)の前部とは、少なくとも一部が前後方向にオーバーラップする位置に設けられるようにしても良い。
また、上記構成において、前記第1連通管(81)、前記第2連通管(82)及び前記第3連通管(83)の少なくともいずれかは、前記攪拌部材(93)の前記軸線(80a)の位置から前記切り欠き(93cs)を通って前記攪拌部材(93)の半径方向外側に放射状に延びる直線(111,112,113)上に設けられるようにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、マフラ内に複数の室に区画された膨張室が設けられ、膨張室のうちの一つの室に排気管、又は排気管側に連通する入口管部が接続され、排気管、入口管部、又は膨張室の各室を連通する連通管の下流端部に、排気ガスを攪拌する攪拌部材が設けられ、攪拌部材は、その下流側に向かって先細りとなるコーン部を備え、コーン部の下流縁に、複数の切り欠きが形成された波状開口部が設けられるので、波状開口部の下流側に排気ガスの乱流を発生させ、排気ガスを攪拌することができる。従って、排気音を低減させることができる。攪拌部材には剛性の高いコーン部が形成されているため、コーン部に切り欠きを形成しても剛性を確保することができ、振動を抑えることができる。これにより、排気音を一層低減させることができる。
更に、例えば、排気ガスに乱流を発生させるために孔をパンチングにより形成する場合の孔の縁部の精度に比べて、切り欠きの縁部の精度を高めることができる。
【0009】
また、切り欠きは、放物線形状に形成されるので、例えば、切り欠きを円弧形状に形成した場合には、切り欠きにより出来る開口形状が真円に近い形状となるが、切り欠きを放物線形状に形成した場合には、切り欠きにより出来る開口形状を多角形状に近づけることができるため、排気ガスに乱流を発生させやすい形状とすることができる。従って、排気音を低減させることができる。
【0010】
また、波状開口部の後端部には、攪拌部材の軸線と略平行になるように折り曲げられた折曲部が形成されているので、折曲部を設けることで、波状開口部の剛性を高めることができる。従って、攪拌部材によって発生する乱流による振動を抑えることができる。よって、排気音を低減することができる。
【0011】
また、攪拌部材は、その軸線が水平線に対して傾斜するようにマフラ内に配置されるので、攪拌部材の波状開口部における前後方向の投影面積を、攪拌部材を傾斜させない場合よりも小さくすることができる。従って、折曲部の形状の製造ばらつきがあった場合に、上記の投影面積のばらつきを小さくすることができ、攪拌部材の開口面積の誤差をより小さくすることができる。
【0012】
また、膨張室は、攪拌部材からの排気ガスを膨張させる第1膨張室と、第1膨張室の後方に配置されて第1膨張室に連通される第2膨張室と、第1膨張室の前方に配置されて第2膨張室に連通される第3膨張室とを備え、第1膨張室と第2膨張室とは、第1連通管によって連通され、第2膨張室と第3膨張室とは、第2連通管によって連通され、第3膨張室から第3連通管が延びて第1膨張室及び第2膨張室を貫通するとともにマフラの外部へ突出することで、第3膨張室がマフラの外部へ連通され、攪拌部材の後部と第1連通管の前部とは、少なくとも一部が前後方向にオーバーラップする位置に設けられるので、排気ガスの流路をラビリンス状に形成することができる。従って、排気ガスが拡散されるため、排気音を効果的に低減することができる。
【0013】
また、第1連通管、第2連通管及び第3連通管の少なくともいずれかは、攪拌部材の軸線の位置から切り欠きを通って攪拌部材の半径方向外側に放射状に延びる直線上に設けられるので、攪拌部材から切り欠きを通って放射状に放射された排気ガスが、第1連通管、第2連通管、第3連通管の少なくともいずれかに当たることで、排気ガスを第1膨張室内で攪拌することができ、排気音をより一層低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
図1は、本発明に係る排気装置47を備えた自動二輪車10の右側面図である。
自動二輪車10は、車体フレーム11の前端部にフロントフォーク12を介して前輪13が支持され、車体フレーム11の下部にスイングアーム14を介して後輪16が支持され、車体フレーム11の上部に運転者用のシート17が支持された鞍乗り型車両である。
車体フレーム11は、ヘッドパイプ21、左右一対のメインフレーム22、左右一対のピボットフレーム23、左右一対のシートレール(不図示)、左右一対のサブフレーム26を備える。
【0016】
ヘッドパイプ21は、車体フレーム11の前端部を構成している。メインフレーム22は、ヘッドパイプ21から後方斜め下方に延びている。ピボットフレーム23は、左右のメインフレーム22からそれぞれ下方に延びている。左右のメインフレーム22及び左右のピボットフレーム23には、エンジン31が支持されている。シートレールは、メインフレーム22の中間部から後方斜め上方に延び、運転者用のシート17及びシート17の後方に隣接して配置された同乗者用のリヤシート33を支持している。サブフレーム26は、メインフレーム22の下端部から後方斜め上方に延びて後端部がシートレールに接続される。
フロントフォーク12は、ヘッドパイプ21に操舵可能に支持され、フロントフォーク12の上部に設けられたトップブリッジ35にバーハンドル36が取付けられ、下端部に前車軸37を介して前輪13が支持される。スイングアーム14は、左右のピボットフレーム23に設けられたピボット軸38に前端部が上下揺動可能に支持され、後端部に後車軸39を介して後輪16が支持される。
【0017】
エンジン31は、クランクケース42と、クランクケース42の前部上部から上方斜め前方に延びるシリンダ部43とを備える。シリンダ部43を構成するシリンダヘッド44の後部には吸気装置46が接続され、シリンダヘッド44の前部には排気装置47が接続されている。排気装置47は、シリンダヘッド44に前端部が接続されてその前端部から下方斜め後方に延び、更にクランクケース42の下方を後方に延びる排気管51と、排気管51の後端部に備える集合部52に接続されたマフラ53とを備える。集合部52は、排気管51の一部を構成する。
シート17の前方には、左右のメインフレーム22の上部に取付けられた燃料タンク56が配置されている。
ここで、符号61は前輪13の上方を覆うフロントフェンダ、62はヘッドライト、63はメータバイザ、64はフロントフォーク12の上部の後方と車体フレーム11の前部とを覆う左右一対のシュラウド、66,67は排気装置47の後部を覆うロアカバー、68は後輪16を上方から覆うリヤフェンダである。
【0018】
図2は、マフラ53を示す斜視図であり、マフラ53の外側部分を構成する上下二分割構造のマフラケース71の上部を省いている。
マフラ53は、マフラケース71、前部隔壁72及び後部隔壁73、第1膨張室74、第2膨張室75、第3膨張室76、入口管部80、第1連通管81、第2連通管82、第3連通管83を備える。
マフラケース71は、上部ケース85(
図4参照)と下部ケース86とが上下に合わせられて溶接により接合されたケースである。マフラケース71内は、前部隔壁72と後部隔壁73とで3つの膨張室である第1膨張室74、第2膨張室75及び第3膨張室76に仕切られる。前部隔壁72と後部隔壁73との間は第1膨張室74、前部隔壁72の前方は第2膨張室75、後部隔壁73の後方は第3膨張室76となっている。第1膨張室74、第2膨張室75及び第3膨張室76は、膨張室70を構成する。
【0019】
入口管部80は、集合部52(
図1参照)の後端に接続された前部接続管91と、前部接続管91の後端部に接続されたキャタライザ92と、キャタライザ92の後端部に接続された攪拌部材93とからなり、第3膨張室76及び前部隔壁72を貫通して攪拌部材93が第1膨張室74内に突出している。
攪拌部材93は、第1膨張室74内に排気ガスを排出する際に排気ガスを攪拌して排気ガスに乱流を発生させる部品である。
第1連通管81は、後部隔壁73に貫通するように取付けられて、第1膨張室74と第2膨張室75とを連通させる。第2連通管82は、前部隔壁72及び後部隔壁73に貫通するように取付けられて、第2膨張室75と第3膨張室76とを連通させる。第3連通管83は、前部隔壁72、後部隔壁73及び上部ケース85に貫通するように取付けられて、第3膨張室76とマフラ53の外部とを連通させる。なお、符号98は上部ケース85の第3連通管83が貫通する部分を補強するために上部ケース85に接合された補強プレートである。
【0020】
図3は、マフラ53を第3連通管83の直線部に沿って水平に切断した断面図である。
入口管部80、第1連通管81及び第2連通管82は前後方向に延びている。
入口管部80の攪拌部材93は、その後端部に後方に向かうにつれて先細りとなるテーパー状のコーン部93aを備える。
第1連通管81は、その前端81aが後端81bよりも後部隔壁73に対して突出するように後部隔壁73に取付けられている。第2連通管82は、前端82aが前部隔壁72よりも前方に突出し、後端82bが、後部隔壁73よりも後方に突出するとともに第3連通管83の略左右方向に延びる部分(後で詳述する左右延出部83b)よりも前方に位置する。
第3連通管83は、前後延出部83a、左右延出部83b、後端傾斜部83c、上流側湾曲部83d、下流側湾曲部83eとから一体に構成される。
前後延出部83aは、前後方向に直線状に延び、前端83fが前部隔壁72より前方に突出している。左右延出部83bは、前後延出部83aに対して略直角に延びている、即ち車両の略左右方向(即ち、略車幅方向)に延びている。後端傾斜部83cは、マフラ53の外部で後方斜め右方に延びている。上流側湾曲部83dは、前後延出部83aと左右延出部83bとを略円弧状に一体に繋いでいる。下流側湾曲部83eは、左右延出部83bと後端傾斜部83cとを略円弧状に一体に繋いでいる。
【0021】
図4は、マフラ53を入口管部80に沿うように上下方向に切断した断面図(
図3に示したIV−IV線の位置でマフラ53を切断した断面図)、
図5は、
図4の要部拡大図である。
図4に示すように、マフラ53は、その後部に前部よりも上方に膨出したマフラ上部膨出部53aが形成されている。また、マフラケース71の上部ケース85には、マフラ上部膨出部53aを形成する上方に膨出したケース上部膨出部71aが形成され、ケース上部膨出部71aの内側に第1連通管81が設けられている。
キャタライザ92は、前部接続管91の後端部に溶接により接合された後部接続管95と、後部接続管95の内側に設けられた触媒本体96とからなる、排気ガスを浄化する浄化装置である。
入口管部80は、その軸線80aが地面と平行である水平線90に対して後上りに傾斜している。θは水平線90に対する軸線80aの傾斜角度である。軸線80aは円筒とされた後部接続管95及び攪拌部材93のそれぞれの横断面中心を通る線であり、攪拌部材93の軸線でもある。
【0022】
攪拌部材93は、キャタライザ92の後部接続管95の後端部に溶接により接合された筒部93bと、筒部93bの後縁部に一体に設けられたコーン部93aとからなる。コーン部93aは、後方に先細りとなるテーパー形状に形成され、コーン部93aの後縁部に複数の切り欠き93cが形成されて全体が波状の開口部とされた波状開口部93dが形成されている。切り欠き93cは、後方に開いた放物線状に形成されている。
攪拌部材93を製造するには、例えば、まず、平板を昇降可能なブレード(上刃)と固定されたダイ(下刃)との間に挟んで切断する。このときに攪拌部材93の基になる平板素材に複数の切り欠き93cが形成される。次に、切断された平板素材を筒状に形成し、更に、筒状素材をプレス機で圧縮成形することで、筒部93bの端にコーン部93aが形成され、攪拌部材93が出来る。
このように、平板を切断する際に切り欠き93cを形成するので、切断した際に平板素材を複数製造することができ、パンチングにより複数の孔を形成するのに比べて、簡単に且つ精度の高い攪拌部材93を製造することができ、コストを低減することができる。
【0023】
攪拌部材93にコーン部93aを形成することで、単に筒状に形成するのに比べて剛性を高めることができる。従って、コーン部93aに複数の切り欠き93cを形成しても剛性を確保することができる。
入口管部80と第1連通管81とは、前後方向にオフセットして配置される。符号FSは入口管部80と第1連通管81との前後方向のオフセット長さである。このようなオフセット長さFSを設けることで、攪拌部材93の波状開口部93dから第1連通管81の開口81cまでの排気ガス流路をラビリンス(迷宮)状とすることができる。
ここで、符号71cは、マフラケース71の上部ケース85と下部ケース86との合わせ部、101は集合部52に設けられた酸素センサである。
【0024】
以上に述べた攪拌部材93及び第1連通管81による排気ガスの流れを次に説明する。
入口管部80の攪拌部材93と第1連通管81とは前後方向にオーバーラップしているので、攪拌部材93から第1膨張室74内に流れ込んだ排気ガスは、矢印Hに示すように、攪拌部材93から後方に進んだ後に後部隔壁73に沿って上昇しながらUターンして第1連通管81の開口81c側に至ったり、矢印Jに示すように、攪拌部材93の切り欠き93cを通って放射状に進んだ後に後方に湾曲しながら進み、第1連通管81の開口81c側に至ったりする。そして、矢印Kに示すように、第1膨張室74から第1連通管81内に進み、矢印Lに示すように、第2膨張室75に至る。
このように、排気ガスは、攪拌部材93の波状開口部93dから第1連通管81の開口81cまで大きく回り込んで流れることになるため、排気ガスのエネルギーが拡散して減衰しやすくなり、排気音を低減させることができる。
【0025】
図5に示すように、攪拌部材93の複数の切り欠き93cの間に出来た突部93eには、軸線80aに略平行になるように折り曲げられた折曲部93fを備える。折曲部93fは、先細りとなった突部93eの剛性を高める部分であり、折曲部93fを設けることで、突部93eの振動を抑制して排気音の発生を抑えることができる。なお、符号121は前部隔壁72に一体に設けられた筒部72aと攪拌部材93の筒部93bとの間に設けられた環状のスペーサである。
【0026】
図6は、
図3及び
図4に示したVI−VI線の位置でマフラ53を切断した断面図である。
マフラ53は、その右側部に側方に膨出したマフラ側部膨出部53bが形成されている。また、マフラケース71は、マフラ側部膨出部53bを形成する右側方に膨出したケース側部膨出部71bが上部ケース85及び下部ケース86により形成され、ケース側部膨出部71bの内側に第2連通管82が設けられている。このように、ケース側部膨出部71bの内側に第2連通管82を設けることで、マフラ53を小型・コンパクトに形成することができ、車体スペースの少ない自動二輪車10(
図1参照)に配置しやすくできる。また、ケース側部膨出部71bの上方の空間に他部品を配置して、スペースの有効利用を図ることも可能にしている。
攪拌部材93の波状開口部93dは、前方から見たときに、略多角形の開口を成している。これは、攪拌部材93のコーン部93aに放物線状の複数の切り欠き93cを形成したことによるものである。例えば、コーン部93aに円弧状の切り欠きを形成した場合には、攪拌部材の開口部は、円形に近い形状となり、後述するような排気ガスの乱流が発生しにくくなる。
【0027】
入口管部80の軸線80aを通る水平線105及び延直線106を引いたときに、第3連通管83は、その横断面の中心83gが水平線105と略同一高さに位置し、第2連通管82は、その前端82aの中心82cが水平線105よりも上方に位置する。
また、延直線106は、マフラ53の横幅の中央よりも右側に配置されている。即ち、入口管部80は、マフラ53の横幅の中央より右寄りに配置されている。なお、図中の符号107は、マフラ53を左右のピボットフレーム23(
図1参照)の下端部に取付けるために上部ケース85に接合されたマフラ取付ブラケットである。
【0028】
図7は、
図3及び
図4に示したVII−VII線の位置でマフラ53を切断した断面図である。なお、以下に示す切り欠き93cs,93cuは切り欠き93cと同一のものであるが、識別のために符号を変更している。
第1連通管81は、第3連通管83の前後延出部83aの上方に配置され、また、第2連通管82よりも上方に配置されている。
攪拌部材93は、入口管部80(
図6参照)の軸線80aから複数の切り欠き93cのうちの一部の切り欠き93csを通る直線111,112,113を引いたときに、直線111,112,113上に第1連通管81、第2連通管82、第3連通管83が位置する。また、軸線80aから複数の切り欠き93cのうちの下部の切り欠き93cuを通る直線114,115,116を引いたときに、直線114,115,116は、攪拌部材93に近接する下部ケース86の底壁86aに至る。更に、軸線80aから複数の切り欠き93cを通る直線117,118を引いたときに、直線117,118は、上部ケース85に至る。
【0029】
以上に述べたマフラ53の作用を次に説明する。
図8は、マフラ53の作用を示す第1作用図である。
図8(A)は攪拌部材93の作用を示す作用図、
図8(B)は攪拌部材93の波状開口部92dの作用を示す作用図である。
図1において、エンジン31の燃焼室から排出された排気ガスは、シリンダヘッド44から排気管51を通ってマフラ53に至る。
図3において、マフラ53内では、排気ガスは、順に、入口管部80、第1膨張室74、第1連通管81、第2膨張室75、第2連通管82、第3膨張室76、第3連通管83を通って、マフラ53の外部に排出される。
図8(A)に示すように、排気ガスは、入口管部80の攪拌部材93においては、紙面の表側から裏側の方向への流れに加えて、矢印Aで示すように、攪拌部材93の複数の切り欠き93cを通る半径方向外側への放射状の流れが発生して、第1膨張室74内に至る。
【0030】
コーン部93aには複数の切り欠き93cが形成されているので、攪拌部材93内を流れる排気ガスは、先細りのコーン部93aで圧縮された後に、各切り欠き93cから半径方向外側へ放射状に第1膨張室74内へ流れ出ることが可能になる。これによって、排気ガスが、切り欠き93cから第1膨張室74内へ噴出するように流れ出て、排気ガスに乱流が発生しやすくなる。排気ガスに乱流が発生すれば、排気ガスのエネルギーが拡散して減衰し、排気音を低減させることができる。また、コーン部93aによって排気ガスが圧縮された後に波状開口部93dから排出されるので、コーン部93aのみによっても排気ガスは乱流となりやすい。
【0031】
図8(B)に示すように、攪拌部材93から第1膨張室74内に流れる排気ガスは、矢印B,B1,B2、矢印C,C1,C2、矢印D,D1,D2に示すように、切り欠き93csを通って第1連通管81、第2連通管82、第3連通管83に当たり、周囲に拡散される。また、排気ガスは、矢印E,E1、矢印F,F1,F2、矢印G,G1,G2に示すように、切り欠き93cuを通って下部ケース86の底壁86aに当たり、拡散される。更に、排気ガスは、矢印M,M1,M2、矢印Nに示すように、切り欠き93cを通って上部ケース85に当たり、拡散される。これにより、排気ガスのエネルギーが減衰し、排気音を低減させることができる。
【0032】
上記した
図1、
図2、
図4及び
図7に示したように、エンジン31からの排気ガスを導出する排気管51と、排気管51の下流側に接続されて排気音を低減させるとともに排気ガスを外部へ排出するマフラ53とを備えた排気装置47において、マフラ53内に複数の室に区画された膨張室70が設けられ、膨張室70のうちの一つの室に排気管51、又は排気管51側に連通する入口管部80が接続され、排気管51、入口管部80、又は膨張室70の各室を連通する連通管としての第1連通管81、第2連通管82の下流端部に、排気ガスを攪拌する攪拌部材93が設けられ、攪拌部材93は、その下流側に向かって先細りとなるコーン部93aを備え、コーン部93aの下流縁に、複数の切り欠き93c、93cs,93cuが形成された波状開口部93dが設けられる。
【0033】
この構成によれば、コーン部93a及び複数の切り欠き93c、93cs,93cuによって、波状開口部93dの下流側に排気ガスの乱流を発生させ、排気ガスを攪拌することができる。従って、排気音を低減させることができる。攪拌部材93には剛性の高いコーン部93aが形成されているため、コーン部93aに切り欠き93c、93cs,93cuを形成しても剛性を確保することができ、振動を抑えることができる。これにより、排気音を一層低減させることができる。
更に、例えば、排気ガスに乱流を発生させるために複数の孔をパンチングにより形成する場合の孔の縁部の精度に比べて、切り欠き93c、93cs,93cuを板材を切断することによって形成するために切り欠き93c、93cs,93cuの縁部の精度を高めることができる。切り欠き93c、93cs,93cuの縁部の精度が高まれば、所望の乱流を発生させることができ、排気音を効率良く低減させることができる。
【0034】
また、
図5に示したように、切り欠き93cは、放物線形状に形成されるので、例えば、切り欠きを円弧形状に形成した場合には、切り欠きにより出来る開口形状が真円に近い形状となるが、切り欠き93cを放物線形状に形成した場合には、切り欠き93cにより出来る開口(波状開口部93d)形状を多角形状に近づけることができるため、排気ガスに乱流を発生させやすい形状とすることができ、排気音を低減させることができる。
また、
図5及び
図7に示したように、波状開口部93dの後端部には、攪拌部材93の軸線80aと略平行になるように折り曲げられた折曲部93fが形成されているので、折曲部93fを設けることで、波状開口部93dの剛性を高めることができる。従って、攪拌部材93によって発生する乱流による振動を抑えることができる。よって、排気音を低減することができる。
【0035】
また、
図4及び
図6に示したように、攪拌部材93は、軸線80aが水平線90に対して傾斜するようにマフラ53内に配置されるので、攪拌部材93の波状開口部93dにおける前後方向の投影面積を、攪拌部材93を傾斜させない場合よりも小さくすることができる。従って、折曲部93fの形状の製造ばらつきがあった場合に、上記の投影面積のばらつきを小さくすることができ、攪拌部材93の開口面積の誤差をより小さくすることができる。これにより、排気音の消音特性のばらつきを抑え、マフラ53の品質を向上させることができる。
【0036】
また、
図2、
図3及び
図4に示したように、膨張室70は、攪拌部材93からの排気ガスを膨張させる第1膨張室74と、第1膨張室74の後方に配置されて第1膨張室74に連通される第2膨張室75と、第1膨張室74の前方に配置されて第2膨張室75に連通される第3膨張室76とを備え、第1膨張室74と第2膨張室75とは、第1連通管81によって連通され、第2膨張室75と第3膨張室76とは、第2連通管82によって連通され、第3膨張室76から第3連通管83が延びて第1膨張室74及び第2膨張室75を貫通するとともにマフラ53の外部へ突出することで、第3膨張室76がマフラ53の外部へ連通され、攪拌部材93の後部と第1連通管81の前部とは、少なくとも一部が前後方向にオーバーラップする位置に設けられるので、排気ガスの流路をラビリンス状に形成することができ。排気ガス流路を大きく屈曲させることができる。従って、排気ガスが拡散してそのエネルギーが減衰されるため、排気音を効果的に低減することができる。
【0037】
また、
図7に示したように、第1連通管81、第2連通管82及び第3連通管83の少なくともいずれかは、攪拌部材93の軸線80aの位置から切り欠き93csを通って攪拌部材93の半径方向外側に放射状に延びる直線111,112,113上に設けられるので、攪拌部材93から切り欠き93csを通って放射状に放射された排気ガスが、第1連通管81、第2連通管82、第3連通管83の少なくともいずれかに当たることで、排気ガスを第1膨張室74内で攪拌することができ、排気音をより一層低減することができる。
【0038】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、
図4に示したように、マフラ53の入口管部80の下流縁に攪拌部材93を設けたが、これに限らず、排気管51の後端部を第1膨張室74まで延長して、排気管51の後縁部に攪拌部材93を設けても良い。また、第1連通管81や第2連通管82の後縁部に攪拌部材93を設けても良い。
また、本発明は、自動二輪車10に適用する場合に限らず、自動二輪車10以外も含む鞍乗り型車両にも適用可能である。また、三輪車や四輪車でも良く、更に、車両以外に、発電機等に使用される汎用エンジンに接続される排気装置にも適用が可能である。