特許第6248246号(P6248246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248246冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248246
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-63415(P2014-63415)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-184249(P2015-184249A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 雅宏
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−210281(JP,A)
【文献】 特開2007−327868(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0187358(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪状ステータ(1)に設けられ1個のみの励磁電源(6)に接続された励磁信号線(5)と、前記輪状ステータ(1)に設けられ三相の第1〜第3出力信号線(2,3,4)と、前記輪状ステータ(1)の内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータ(10)とを備え、
前記励磁信号線(5)による励磁状態下で前記ロータ(10)が回転することにより、前記第1〜第3出力信号線(2,3,4)から第1〜第3シンクロ信号(2a,3a,4a)を得るようにしたVRシンクロにおいて、
前記励磁信号線(5)は励磁電源(6)に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部(5a,5b)からなり、
前記第1〜第3出力信号線(2,3,4)の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部(5a,5b)の何れかが断線であると判断すると共に、前記第1〜第3シンクロ信号(2a,3a,4a)の出力電圧は、前記第1、第2励磁信号線部(5a,5b)が断線ではない通常時の半分となり、前記断線の検出と冗長の維持ができることを特徴とする冗長型VRシンクロの断線検出方法。
【請求項2】
輪状ステータ(1)に設けられ1個のみの励磁電源(6)に接続された励磁信号線(5)と、前記輪状ステータ(1)に設けられ三相の第1〜第3出力信号線(2,3,4)と、前記輪状ステータ(1)の内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータ(10)とを備え、
前記励磁信号線(5)による励磁状態下で前記ロータ(10)が回転することにより、前記第1〜第3出力信号線(2,3,4)から第1〜第3シンクロ信号(2a,3a,4a)を得るようにしたVRシンクロにおいて、
前記励磁信号線(5)は励磁電源(6)に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部(5a,5b)からなり、
前記第1〜第3出力信号線(2,3,4)の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部(5a,5b)の何れかが断線であると判断すると共に、前記第1〜第3シンクロ信号(2a,3a,4a)の出力電圧は、前記第1、第2励磁信号線部(5a,5b)が断線ではない通常時の半分となり、前記断線の検出と冗長の維持ができるように構成したことを特徴とする冗長型VRシンクロの断線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置に関し、特に、励磁電源に対して励磁信号線部を並列一対構成とし、各励磁信号線部の一方が断線した場合に出力側の出力レベルが半分となることで、断線検出を可能とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のレゾルバとしては、文献名は挙げていないが、例えば、図3及び図4で示される従来構成を挙げることができる。
すなわち、図3において符号1で示されるものは輪状ステータであり、この輪状ステータ1の周知の突出磁極(図示せず)には、120°毎のスター結線となる出力巻線からなる第1〜第3出力信号線2,3,4が設けられ、前記各出力信号線2,3,4からは第1〜第3シンクロ信号2a,3a,4aが出力されるように構成されている。
【0003】
前記輪状ステータ1の前記突出磁極には、励磁巻線からなる励磁信号線5が設けられ、この励磁信号線5は図示しない周知のS/D変換器の励磁電源6に接続されている。
尚、前記各出力信号線2,3,4のグランド側GNDと前記励磁信号線5のグランド側GNDとは、互いに接続されて接地されている。
前記輪状ステータ1の内側には、VR(バリアブルリラクタンス)型のロータ10が回転自在に設けられている。
【0004】
前述の図3において、前記励磁電源6からの励磁信号6aが前記励磁信号線5に供給されている状態下で、ロータ10が回転すると、ロータ10が真円ではなく所定のギャップパーミアンスが得られるように非円形に構成されているため、前記各出力信号線2,3,4からは前記ギャップパーミアンスに応じた回転角度信号である第1〜第3シンクロ信号2a,3a,4aが出力され、前記各シンクロ信号2a,3a,4aは、図示しない周知のS/D変換器によってデジタル信号化される。
尚、図3の通常時における前述の各出力信号線2,3,4からの出力方程式は、次の数1の第1式で示される通りである。
【0005】
【数1】
【0006】
次に、前述の図3の通常時において、図4で示されるように前記励磁信号線5に断線が発生すると、断線時における出力方程式は、次の数2の第2式で示されるように、出力信号は零となる。
【0007】
【数2】
【0008】
また、他の従来構成を示す文献としては、特許文献1の冗長型回転角検出装置を挙げることができる。
この特許文献1の構成においては、一対のレゾルバを用いて検出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−210281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の冗長型VRシンクロは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、図3及び図4で示される従来構成の場合、励磁巻線である励磁信号線が1個のみであるため、この励磁信号線が断線した場合には、各出力信号線からは出力が零となり、VRシンクロを装着している装置全体に重大な悪影響を与えることになっていた。
また、特許文献1の構成においては、レゾルバを2個用いると共に、各レゾルバの出力信号を処理するためのR/D変換系を二系統設けなくてはならず、コスト上は大きい障害となっていた。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、励磁電源に対して励磁信号線を並列一対構成とし、励磁信号線の一方が断線した場合に出力側の出力レベルが半分となることで、断線検出を可能とする冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法は、輪状ステータに設けられ励磁電源に接続された励磁信号線と、前記輪状ステータに設けられ三相の第1〜第3出力信号線と、前記輪状ステータの内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータとを備え、前記励磁信号線による励磁状態下で前記ロータが回転することにより、前記第1〜第3出力信号線から第1〜第3シンクロ信号を得るようにしたVRシンクロにおいて、前記励磁信号線は励磁電源に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部からなり、前記第1〜第3出力信号線の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部の何れかが断線であると判断すると共に、前記第1〜第3シンクロ信号の出力電圧は、前記第1、第2励磁信号線部が断線ではない通常時の半分となり、前記断線の検出と冗長の維持ができる方法であり、また、本発明による冗長型VRシンクロの断線検出装置は、輪状ステータに設けられ1個のみの励磁電源に接続された励磁信号線と、前記輪状ステータに設けられ三相の第1〜第3出力信号線と、前記輪状ステータの内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータとを備え、前記励磁信号線による励磁状態下で前記ロータが回転することにより、前記第1〜第3出力信号線から第1〜第3シンクロ信号を得るようにしたVRシンクロにおいて、前記励磁信号線は励磁電源に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部からなり、前記第1〜第3出力信号線の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部の何れかが断線であると判断すると共に、前記第1〜第3シンクロ信号の出力電圧は、前記第1、第2励磁信号線部が断線ではない通常時の半分となり、前記断線の検出と冗長の維持ができるように構成したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、輪状ステータに設けられ1個のみの励磁電源に接続された励磁信号線と、前記輪状ステータに設けられ三相の第1〜第3出力信号線と、前記輪状ステータの内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータとを備え、前記励磁信号線による励磁状態下で前記ロータが回転することにより、前記第1〜第3出力信号線から第1〜第3シンクロ信号を得るようにしたVRシンクロにおいて、前記励磁信号線は励磁電源に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部からなり、前記第1〜第3出力信号線の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部の何れかが断線であると判断することにより、励磁側の第1、第2励磁信号線部の何れかが断線した場合、出力側の各シンクロ信号の出力電圧は半分となるが、角度検出信号の出力は維持することができ、冗長を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置を示す構成図である。
図2図1の断線発生状態を示す構成図である。
図3】従来のVRシンクロを示す構成図である。
図4図3の断線発生状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置は、励磁電源に対して励磁信号線を並列一対構成とし、各励磁信号線部を並列一対構成とし、各励磁信号線部の一方が断線した場合に出力側の出力レベルが半分となることで断線検出を可能とすることである。
【実施例】
【0016】
以下、図面と共に本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において符号1で示されるものは、輪状ステータであり、この輪状ステータ1の周知の突出磁極(図示せず)には、120°毎のスター結線となる出力巻線からなる第1〜第3出力信号線2,3,4が設けられ、前記各出力信号線2,3,4からは第1〜第3シンクロ信号2a,3a,4aが出力されるように構成されている。
【0017】
前記輪状ステータ1の前記突出磁極には、励磁巻線からなる励磁信号線5が設けられ、この励磁信号線5の第1、第2励磁信号線部5a,5bは、互いに並列配線となるように構成されていると共に、図示しない周知のS/D変換器の1個のみの励磁電源6に接続されている。
尚、前記各出力信号線2,3,4のグランド側GNDと前記各励磁信号線部5a,5bのグランド側GNDと前記励磁信号線5のグランド側GNDとは、互いに接続されて接地されている。
前記輪状ステータ1の内側には、VR(バリアブルリラクタンス)型のロータ10が回転自在に設けられている。
【0018】
前述の図1において、前記励磁電源6からの励磁信号6aが前記励磁信号線部5a,5bに供給されている状態下で、ロータ10が回転すると、ロータ10が真円ではなく所定のギャップパーミアンスが得られるように非円形に構成されているため、前記各出力信号線2,3,4からは前記ギャップパーミアンスに応じた回転角度信号2a,3a,4aが出力され、前記シンクロ信号2a,3a,4aは図示しない周知のS/D変換器によってデジタル信号化される。
尚、図1の通常時における前述の各出力信号線2,3,4からの出力方程式は、次の数1の第1式で示される通りである。
【0019】
【数3】
【0020】
次に、前述の図1前記第1、第2励磁信号5a,5bが断線ではない通常時において、図2で示されるように前記励磁信号線部5a,5bの何れかに断線が発生すると、各励磁信号線部5a,5bの巻線数は同一で構成されているため、断線した方の第1励磁信号線部5aからの励磁信号6aはなくなり、他方の第2励磁信号線部5bへの励磁信号6aのみによる各出力信号線2〜4からの各シングル信号2a〜4aとなり、この時の出力側の出力方程式は次の数3の第3式で示される通り、前述の第1式で得られる通常時の出力電圧レベルの2分の1となり、断線の検出と冗長の維持が可能で、この状態を断線として装置の稼働を停止させることもできる。さらに、他方の第2励磁信号線5bを断線した場合は出力電圧は零となり、装置の稼働は不能となる。
【0021】
【数4】
【0022】
従って、本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置の要旨とするところは、次の通りである。
輪状ステータ1に設けられ1個のみの励磁電源6に接続された励磁信号線5と、前記輪状ステータ1に設けられ三相の第1〜第3出力信号線2,3,4と、前記輪状ステータ1の内側に回転自在に設けられ磁性体からなるロータ10とを備え、前記励磁信号線5による励磁状態下で前記ロータ10が回転することにより、前記第1〜第3出力信号線2,3,4から第1〜第3シンクロ信号2a,3a,4aを得るようにしたVRシンクロにおいて、前記励磁信号線5は励磁電源6に対して並列に接続された第1、第2励磁信号線部5a,5bからなり、前記第1〜第3出力信号線2,3,4の3相中2相の120°位相差の出力信号から合成したsinθ及びcosθ信号はsinθ+cosθ=Kで一定となり、前記Kが1/Kとなった場合は、前記第1、第2励磁信号線部5a,5bの何れかが断線であると判断すると共に、前記第1〜第3シンクロ信号2a,3a,4aの出力電圧は、前記第1、第2励磁信号線部5a,5bが断線ではない通常時の半分となり、前記断線の検出と冗長の維持ができる方法と構成である。
【0023】
尚、本発明における冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置における前述の第1式及び第2式における周知の演算は、図示しない前述のS/D変換器又は演算部によって行われる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による冗長型VRシンクロの断線検出方法及び装置は、励磁信号線を一対の励磁信号線部として冗長性を持たせているため、何れか一方の励磁信号線部が断線した場合でもシンクロの機能を継続すると共に、断線状態を検出と冗長の維持をすることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 輪状ステータ
2 第1出力信号線
2a 第1シンクロ信号
3 第2出力信号線
3a 第2シンクロ信号
4 第3出力信号線
4a 第3シンクロ信号
5 励磁信号線
5a 第1励磁信号線部
5b 第2励磁信号線部
6 励磁電源
6a 励磁信号
10 ロータ
図1
図2
図3
図4