特許第6248263号(P6248263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248263バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248263
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20171211BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   C12N1/00 G
   C12P7/06
   !C12N1/16 F
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-532719(P2015-532719)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2014053948
(87)【国際公開番号】WO2015025538
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-170798(P2013-170798)
(32)【優先日】2013年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】永松泰成
(72)【発明者】
【氏名】宮田努
【審査官】 鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−075378(JP,A)
【文献】 特開2009−108430(JP,A)
【文献】 特開2009−185413(JP,A)
【文献】 特開平04−059834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12P 7/06
C12N 1/14−1/16
C07C 43/04
C07C 43/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質原料及びでんぷん原料からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料とするバイオエタノール発酵工程に用いる添加剤であって、
グリフィンのHLB値が0〜6の範囲であるポリオキシアルキレン化合物(A)と、ポリオキシアルキレンポリオール(B)とを含有してなり、

ポリオキシアルキレン化合物(A)が、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)及び一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の混合物であり、

ポリオキシアルキレンポリオール(B)が、一般式(3)で表されるポリオキシプロピレンポリオール(B1)、一般式(4)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B2)、一般式(5)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B3)、一般式(6)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B4)及び一般式(7)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、

ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、ポリオキシアルキレン化合物(A)の含有量が10〜99.9重量%、ポリオキシアルキレンポリオール(B)の含有量が0.1〜90重量%であって、

ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量に基づいて、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)の含有量が0.1〜90重量%、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の含有量が10〜99.9重量%であることを特徴とするバイオエタノール発酵工程用添加剤。

O-(AO)-R (1)

O-(AO)-(EO)−R (2)

及びRは炭素数4〜28のアルキル基又はアルケニル基、R及びRは水素原子又は炭素数1〜24の1価の有機基、AOは炭素数3〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜21のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基、EOはオキシエチレン基を表し、m及びnは1〜100の整数、pは3〜10の整数である。

-[-(PO)-H] (3)

-[-(EO)-(PO)−H] (4)

-[-(PO)-(EO)−H] (5)

-[-(EO)-(PO)-(EO)−H] (6)

-[-(PO)-(EO)-(PO)−H] (7)

、R、R、R及びRは水酸基又は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、q、s、t及びzは1〜100の整数、rは1〜10の整数である。一般式(4)、(5)、(6)及び(7)中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基とはブロック状に結合している。
【請求項2】
糖質原料及びでんぷん原からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料としてバイオエタノールを製造する方法において、
請求項に記載された添加剤を発酵液に添加して発酵する発酵工程を含むことを特徴とするバイオエタノールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオエタノール発酵工程用添加剤及びバイオエタノールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオエタノールは、サトウキビ、とうもろこし、リグノセルロースなどを原料として、アルコール発酵により製造される(特許文献1、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−297229号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「微生物による化学反応」(指導資料、理科第240号−中,高等学校,盲・聾・養護学校対象−平成15年11月、鹿児島県総合教育センター発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載された方法では、商業規模で製造した場合、生産効率が低いという問題がある。また、特許文献1に記載された方法(又は装置)でも生産効率の面で十分でないという問題がある。
本発明の目的は、上記のような問題を解決できる(すなわち、生産効率を向上できる)添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明の到達した。
すなわち、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤の特徴は、糖質原料及びでんぷん原料からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料とするバイオエタノール発酵工程に用いる添加剤であって、
グリフィンのHLB値が0〜6の範囲であるポリオキシアルキレン化合物(A)と、ポリオキシアルキレンポリオール(B)とを含有してなり、

ポリオキシアルキレン化合物(A)が、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)及び一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の混合物であり、

ポリオキシアルキレンポリオール(B)が、一般式(3)で表されるポリオキシプロピレンポリオール(B1)、一般式(4)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B2)、一般式(5)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B3)、一般式(6)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B4)及び一般式(7)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、

ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、ポリオキシアルキレン化合物(A)の含有量が10〜99.9重量%、ポリオキシアルキレンポリオール(B)の含有量が0.1〜90重量%であって、

ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量に基づいて、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)の含有量が0.1〜90重量%、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の含有量が10〜99.9重量%である点を要旨とする。

O-(AO)-R (1)

O-(AO)-(EO)−R (2)

及びRは炭素数4〜28のアルキル基又はアルケニル基、R及びRは水素原子又は炭素数1〜24の1価の有機基、AOは炭素数3〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜21のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基、EOはオキシエチレン基を表し、m及びnは1〜100の整数、pは3〜10の整数である。

-[-(PO)-H] (3)

-[-(EO)-(PO)−H] (4)

-[-(PO)-(EO)−H] (5)

-[-(EO)-(PO)-(EO)−H] (6)

-[-(PO)-(EO)-(PO)−H] (7)

、R、R、R及びRは水酸基又は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、q、s、t及びzは1〜100の整数、rは1〜10の整数である。一般式(4)、(5)、(6)及び(7)中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基とはブロック状に結合している。
【0007】
本発明のバイオエタノールの製造方法の特徴は、糖質原料及びでんぷん原からなる群より選ばれる少なくとも1種を原料としてバイオエタノールを製造する方法において、
上記のバイオエタノール発酵工程用添加剤を発酵液に添加して発酵する発酵工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、バイオエタノール発酵工程において、著しく優れた生産効率を発揮する。
【0009】
本発明のバイオエタノールの製造方法を提供すると、高い生産効率でバイオエタノールを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
グリフィンのHLB値が0〜6の範囲であるポリオキシアルキレン化合物(A)としては、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)及びこれらの混合物が例示できる。
【0011】

O-(AO)-R (1)

O-(AO)-(EO)−R (2)
【0012】
グリフィンのHLB値はグリフィン法(例えば、藤本武彦著「新・界面活性剤入門」三洋化成工業株式会社発行、128〜131頁、昭和56年、対応する英語版;New Introduction to Surface Active Agents, T.Fujimoto, Sanyo Chemical Industries, Ltd., P128-131)によって算出される値である。なお、オキシエチレン基のみを親水基とし、これ以外の部分を疎水基として計算するものとする。また、ポリオキシアルキレン化合物(A)が複数種類のポリオキシアルキレン化合物からなる混合物である場合、HLBは複数種類のポリオキシアルキレン化合物の平均値ではなく、ポリオキシアルキレン化合物のそれぞれの値を意味する。
【0013】
及びRは炭素数4〜28のアルキル基又はアルケニル基、R及びRは水素原子又は炭素数1〜24の1価の有機基、AOは炭素数3〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基、EOはオキシエチレン基を表し、m及びnは1〜100の整数、pは3〜10の整数である。
【0014】
炭素数4〜28のアルキル基又はアルケニル基(R、R)としては、アルキル基(R)及びアルケニル基(R’)が含まれる。
【0015】
アルキル基(R)としては、ブチル、t−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシル等が挙げられる。
【0016】
アルケニル基(R’)としては、ブテニル、オクテニル、イソオクテニル、ドデセニル及びオクタデセニル等が挙げられる。
【0017】
これらのうち、生産効率の観点からアルキル基(R)が好ましい。
【0018】
水素原子又は炭素数1〜24の1価の有機基(R、R)のうち、炭素数1〜24の1価の有機基としては、アルキル基(R)、アルケニル基(R’)、アシル基(−COR)、アロイル基(−COR’)、N−アルキルカルバモイル基(−CONHR)、N−アルケニルカルバモイル基(−CONHR’)、アルキルカルボニルアミノ基(−NHCOR)、アルケニルカルボニルアミノ基(−NHCOR’)、アルキルカルボキシアミノ基(アルキルカーバメート基、−NHCOOR)及びアルケニルカルボキシアミノ基(アルケニルカーバメート基、−NHCOOR’)が含まれる。括弧内に表記した化学式の内、R、R’はそれぞれ上記のアルキル基(R)及びアルケニル基(R’)に対応する。
【0019】
水素原子又は炭素数1〜24の1価の有機基(R、R)のうち、生産効率の観点から水素原子又はアルキル基(R)が好ましい。
【0020】
炭素数3〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基(AO)のうち、炭素数3〜18のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレン、オキシ−1,2−デシレン、オキシ−1,12−ドデシレン、オキシ−1,2−ドデシレン及びオキシ−1,2−オクタデシレン等が挙げられる。
【0021】
また、(AO)のうち、炭素数4〜21のアルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル及びオクタデシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0022】
また、(AO)のうち、炭素数5〜21のアルケニルグリシジルエーテルとしては、ビニルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル及びオクタデセニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
m及びnは、1〜100の整数であり、好ましくは2〜75の整数、さらに好ましくは3〜60の整数である。
【0024】
pは3〜10の整数であり、好ましくは4〜8の整数、さらに好ましくは4〜6の整数である。
【0025】
ポリオキシアルキレン化合物(A)が一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)及び一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の混合物である場合、一般式(1)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A1)の含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量に基づいて、0.1〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜85重量%、特に好ましくは5〜80重量%である。この場合、一般式(2)で表されるポリオキシアルキレンアルキル化合物(A2)の含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(A)の重量に基づいて、10〜99.9重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜99重量%、特に好ましくは20〜95重量%である。
【0026】
ポリオキシアルキレンポリオール(B)としては、一般式(3)で表されるポリオキシプロピレンポリオール(B1)、一般式(4)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B2)、一般式(5)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B3)、一般式(6)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B4)及び一般式(7)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく例示できる。
【0027】

-[-(PO)-H] (3)

-[-(EO)-(PO)−H] (4)

-[-(PO)-(EO)−H] (5)

-[-(EO)-(PO)-(EO)−H] (6)

-[-(PO)-(EO)-(PO)−H] (7)
【0028】
、R、R、R及びRは水酸基又は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基、q、s、t及びzは1〜100の整数、rは1〜10の整数である。一般式(4)、(5)、(6)及び(7)中のオキシエチレン基とオキシプロピレン基とはブロック状に結合している。
【0029】
、R、R、R及びRのうち、炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基は、炭素数1〜25の活性水素化合物から活性水素を除いた反応残基を意味する。
炭素数1〜25の活性水素含有化合物としては、水酸基(−OH)、イミノ基(−NH−)、アミノ基(−NH)及び/又はカルボキシル基(−COOH)を少なくとも1個含む化合物が含まれ、アルコール、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が含まれる。
【0030】
アルコールとしては、モノオール(メタノール、ブタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコール等)及びポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシアセトン、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース及びトレハロース等)等が挙げられる。
【0031】
アミドとしては、モノアミド(ギ酸アミド、プロピオン酸アミド及びステアリルアミド等)及びポリアミド(マロン酸ジアミド及びエチレンビスオクチルアミド等)等が挙げられる。
【0032】
アミンとしては、モノアミン(ジメチルアミン、エチルアミン、アニリン及びステアリルアミン等)及びポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。
【0033】
カルボン酸としては、モノカルボン酸(酢酸、ステアリン酸、オレイン酸及び安息香酸等)及びポリカルボン酸(マレイン酸及びヘキサン二酸等)等が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸及び12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0035】
アミノカルボン酸としては、グリシン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノラウリン酸等が挙げられる。
【0036】
q、s、t及びzは1〜100の整数であり、好ましくは2〜75の整数、さらに好ましくは3〜60の整数である。
【0037】
rは1〜10の整数であり、好ましくは1〜7の整数、さらに好ましくは1〜5の整数である。
【0038】
これらのうち、生産効率の観点から、一般式(3)で表されるポリオキシプロピレンポリオール(B1)及び一般式(6)で表されるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール(B4)が好ましい。
【0039】
ポリオキシアルキレン化合物(A)の含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、10〜99.9重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜90重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。ポリオキシアルキレンポリオール(B)の含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)の合計重量に基づいて、0.1〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜85重量%、特に好ましくは20〜80重量%である。
【0040】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、公知の製造方法を適用して得ることができる。
ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)は、公知のアルキレンオキシド付加反応及びエーテル化反応で製造できる。そして、ポリオキシアルキレン化合物(A)及びポリオキシアルキレンポリオール(B)を均一混合して、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤が得られる。
【0041】
均一混合する温度及び時間は、均一に混合できれば特に制限されないが、5〜60℃及び10分〜5時間が好ましい。また均一混合するための混合装置についても特に制限はないが、羽根型撹拌機、ラインミキサー等が使用できる。
【0042】
本発明のバイオエタノールの製造方法において使用できる原料としては、糖質原料、でんぷん原料及び木質(又はセルロース)原料からなる群より選ばれる少なくとも1種が使用できる。
糖質原料としては、糖質を多く含む食物資源であり、さとうきび、モラセス及び甜菜等が挙げられる。
【0043】
でんぷん原料としては、でんぷん質を多く含む食物資源であり、トウモロコシ、ソルガム、ジャガイモ、サツマイモ及び麦等が挙げられる。
【0044】
木質(又はセルロース)原料としては、セルロースを多く含む非食用の食物資源であり、木材及び廃建材等が挙げられる。木材としては、針葉樹(マツ、モミ、ツガ、トウヒ、カラマツ及びラジアタパイン等)及び広葉樹(ユーカリ、ポプラ、ブナ、カエデ及びカバ等)の他にケナフ、ミツマタ、コウゾ、ガンピ、桑、マニラ麻、アシ及びタケ等が含まれる。これらの木材は間伐材、製材屑、流木及び剪定材であってもよく、木材の枝、根及び葉が含まれていてもよい。廃建材としては、廃棄木質建材、廃棄木質パレット及び廃棄木質梱包材等が含まれる。
【0045】
本発明のバイオエタノールの製造方法としては、公知の方法が適用でき、糖化前処理工程、糖化工程及びエタノール発酵工程が含まれる。
エタノール発酵工程において、発酵液に上記のバイオエタノール発酵工程用添加剤を添加してから発酵させる。
バイオエタノール発酵工程用添加剤の添加量は特に限定されないが発酵液の重量に基づいて0.0001〜5重量%程度が好ましい。
【0046】
エタノール発酵工程を経た発酵液は、生成したエタノールを分離する分離工程に供される。エタノールを分離する方法は、蒸留法及び浸透気化膜法等の公知の方法を用いることができる。分離して得られたエタノールはそのまま用いてもよく、蒸留等の公知の方法で精製して用いてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0048】
公知の方法で合成したポリオキシアルキレン化合物(a11〜a16、a21〜a27)及びポリオキシアルキレンポリオール(b31〜b37、b41〜b43、b51〜b53、b61〜b67及びb71〜b73)を表1〜3に示した。表中、POはオキシエチレン、BOはオキシブチレンを表す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
<実施例1>
ポリオキシアルキレン化合物a11[9部]及びポリオキシアルキレン化合物a21[1部]を羽根型撹拌機にて30℃で30分間撹拌して均一混合した後、この混合物にポリオキシアルキレンポリオールb31[90部]を加えて30℃1時間撹拌し均一混合して、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤1を得た。
【0053】
<実施例2〜27>
ポリオキシアルキレン化合物a11[9部]、ポリオキシアルキレン化合物a21[1部]及びポリオキシアルキレンポリオールb31[90部]を、表4に示すポリオキシアルキレン化合物及びポリオキシアルキレンポリオール(種類及び部数)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤2〜27を得た。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例1〜27で得たバイオエタノール発酵工程用添加剤を用いて、以下のようにして生産効率試験を行い、その結果を表5に示す。ブランクとして、バイオエタノール発酵工程用添加剤を用いずに試験した結果も表5に示す。
【0056】
<生産効率試験>
ラボレベルのバイオエタノール発酵では生産効率が比較できないことから、下記の促進試験を実施した。
市販のさとうきび糖みつ(株式会社丸協農産より購入した。)200部をイオン交換水800部で希釈して作成したバイオエタノール発酵液100mLを内径50mm×高さ350mmのガラス製メスシリンダーに入れ、測定試料(バイオエタノール発酵工程用添加剤)17μLをマイクロシリンジで添加し、デフューザーストーンを液の底部まで挿入して炭酸ガスを500mL/分で通気し、10分後のバイオエタノール発酵液体積(mL)を読み取り、次式から生産効率(%)を算出した。この値が小さいほど、生産で使用される発酵槽が小さくでき、生産効率が良好となる。
【0057】

生産効率(%)=(10分後のバイオエタノール発酵液体積)÷100
【0058】
【表5】
【0059】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、バイオエタノール発酵工程用添加剤を使用しないもの(ブランク)に比べて、生産効率が極めて良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のバイオエタノール発酵工程用添加剤は、バイオエタノールの生産効率を向上させるための添加剤として好適である。