【実施例】
【0035】
[不燃性評価]
A)コーンカロリーメーター試験(ASTM−E1354)
タテ・ヨコ約100mmの正方形で厚さ50mmまでの大きさで表面が平坦な供試膜材とし、放射熱50KW/m
2で10分間行う。試験は、供試膜材3枚の最大発熱速度の平均値と各供試膜材の最大発熱速度の差が10%未満であることを確認し、10%未満の場合は当該3枚の供試膜材のデータを採用する。10%以上となる場合には、更に供試膜材3枚の試験を行い、これらの供試膜材6枚のうち、最大発熱速度の最大値と最小値を除く4枚の供試膜材のデータを採用する。燃焼判定は、試験時間中に計測された総発熱量(MJ/m
2)及び最大発熱速度(KW/m
2)並びに着火時間(秒)で行う。着火時間(秒)は、試験片から炎が確認されてから10秒以上炎が存在した場合を着火とみなし、試験開始から最初に着火が確認されるまでの時間とする。
(a)総発熱量:8MJ/m
2以下を適合
(b)発熱速度:10秒以上継続して200kW/m
2を超えないものを適合
(c)外観観察:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がないものを適合
B)鉄道車両用材料燃焼試験:鉄運第81号(昭和44年5月15日)
B5判の供試膜材(182mm×257mm)を45°傾斜に保持し、燃料容器の底の中心が、供試膜材の下面中心の垂直下方25.4mm(1インチ)のところにくるように、コルクのような熱伝導率の低い材質の台にのせ、純エチルアルコール0.5ccを入れて着火し、燃料が燃え尽きるまで放置する。燃焼判定は、アルコールの燃焼中と燃焼後とに分けて、燃焼中は供試膜材への着火、着炎、発煙状態、炎の状態等を観察し、燃焼後は、残炎、残じん、炭化、変形状態を調査し、「不燃性」「極難燃性」「難燃性」「緩燃性」「可燃性」の5段階評価をおこなう。
※「不燃性」の要件 燃焼中:着火(なし)・着炎(なし)・煙(僅少)・火勢(−)
燃焼後:残炎(−)・残じん(−)・炭化(100mm以下の変
色)・変形(100mm以下の表面的変形)・溶融滴下性(なし)
[煤塵除去性評価]
A)屋外曝露
傾斜角30度の屋外暴露台に供試膜材を1ヶ月間展張固定し、表面に付着した煤塵汚れをワイピングクロス(商品名ザヴィーナ:KBセーレン社製)で拭き取り、煤塵の除去性を下記のように判定した。(埼玉県草加市にて平成25年12月に実施)
1: 除去性に優れている(膜材の外観が初期レベルに戻った)
2: 拭き取りを繰り返しても煤塵汚れがうっすらと残ったまま変わらない
3: 拭き取りを繰り返しても煤塵汚れが落ちず、拭いた痕跡が見苦しい
4: 降雨により耐火層が剥離、脱落し、評価不能である
B)ダートチャンバー
直径20cm×高さ25cmの筒状密閉容器内の内壁に供試膜材片を貼付け、複写機用カーボントナー1gと乾燥川砂50gを投入し、筒状密閉容器を横にした状態で1対の回転ロール(互いに反回り)上で、60回/分の回転速度で10分間筒状密閉容器を回転させた後、膜材片を取り出し、表面に付着した煤塵汚れをワイピングクロス(商品名ザヴィーナ:KBセーレン社製)で拭き取り、煤塵の除去性を下記のように判定した。
1: 除去性に優れている(膜材の外観が初期レベルに戻った)
2: 拭き取りを繰り返しても煤塵汚れがうっすらと残ったまま変わらない
3: 拭き取りを繰り返しても煤塵汚れが落ちず、拭いた痕跡が見苦しい
[光源カバーの評価]
実施例及び比較例で作成した膜材を用いて天井埋込型蛍光灯ハウジング(36ワット40型の白色蛍光管2本装着:器幅25cm×器長125cm)全面をフラットに覆い、蛍光管と膜材の距離を3cmとした。蛍光灯点灯状態で膜材光透過外観を膜材表面からの距離50cmの位置で目視観察し、A).蛍光管(光源)の視認性、B).光拡散性の良否を目視評価した。膜材のハウジング装着は含浸被覆層側を外に露出する面とする装着での評価とした。
A)蛍光管(光源)のホットスポット視認性
1:十分な照度を有し、しかも蛍光管(光源)の存在が視認できない
2:十分な照度を有するが、蛍光管(光源)の位置が朧に視認できる
3:十分な照度を有するが、蛍光管(光源)の位置が明確に視認できる
4:蛍光管(光源)の存在が視認できないが、照度が不十分である
B)光拡散性
1:十分な照度を有し、しかも光拡散性に優れる
2:十分な照度を有するが、やや光拡散性に劣りやや陰影濃淡がある
3:十分な照度を有するが、光拡散性に劣り陰影濃淡がある
4:照度が不十分である
[耐水性の評価]
実施例及び比較例で作成した膜材の小片(5cm×5cm)を、20℃の純水100mlを満たしたシャーレ内に60分間浸漬し、小片を引き上げ直後、濡れた状態で膜材の表面を観察した。
1:やや膨潤しているが、耐火層は堅牢に保持されている
2:耐火層が2倍以上に体積膨潤し、指で触ると剥がれ落ちた
3:耐火層が剥離、または溶解し、脱落してアンカー層が露わとなっていた
[耐火層の折曲亀裂の評価]
実施例及び比較例で作成した膜材の小片(2cm×10cm)を5cmの位置で2ツ折り(耐火層側を山折りとする)にし、折り部分に500gの錘を乗せた状態で20℃×60秒静置した後、耐火層を赤インクで着色してデジタル拡大鏡(倍率50倍)で画像観察し、亀裂の有無を判定した。
1:亀裂の発生を認めない
2:亀裂の発生を認める
【0036】
[実施例1]
Eガラスによる直径9μmのフィラメントを400本集束した繊度67.5texのフラットヤーン単糸を経糸及び緯糸として、経糸打ち込み密度44本/インチ、緯糸打ち込み密度33本/インチの織組織による空隙率0%のガラス平織布帛(質量210g/m
2)を基材(1)として、この基材(1)の片面に〈配合1〉によるアンカー層形成用の合成樹脂組成物(I)をナイフコーティング法で均一に塗工し、電気炉内で180℃×3分間の熱処理硬化工程を経て32g/m
2の付着量でアンカー層を設けた。
次にこのアンカー層上に、〈配合2〉による耐火層形成用の合成樹脂組成物(II)をナイフコーティング法で均一に塗工し、電気炉内で180℃×3分間の熱処理硬化工程を経て26g/m
2の付着量で耐火層を設けた。アンカー層と耐火層との構成質量比は2:1.625で、得られた膜材は、厚さ0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が44.3%であった。
〈配合1〉合成樹脂組成物(I)
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
トルエン(希釈剤) 100質量部
〈配合2〉合成樹脂組成物(II)
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:Nanofil9:(モンモリロナイト:平均粒子径8μm:ズードケミー触媒社製)
※無機層状化合物粒子=スメクタイト系粘土鉱物=モンモリロナイト 20質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0037】
[実施例2]
実施例1の耐火層形成用の合成樹脂組成物(II)としての〈配合2〉を下記〈配合3〉に変更した以外は実施例1と同様にして、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が48.5%の膜材を得た。
〈配合3〉合成樹脂組成物(II)
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:ルーセンタイトSAN:親油性合成スメクタイト:コープケミカル社製)
※無機層状化合物粒子=合成スメクタイト 20質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0038】
[実施例3]
実施例1の耐火層形成用の合成樹脂組成物(II)としての〈配合2〉を下記〈配合4〉に変更した以外は実施例1と同様にして、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が48.6%の膜材を得た。
〈配合4〉合成樹脂組成物(II)
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:シマソフMTE:有機処理フッ素雲母:コープケミカル社製)
※無機層状化合物粒子=フッ素雲母:平均粒子径5μm 20質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0039】
[実施例4]
実施例1の耐火層形成用の合成樹脂組成物(II)としての〈配合2〉を下記〈配合5〉に変更した以外は実施例1と同様にして、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が47.7%の膜材を得た。
〈配合5〉合成樹脂組成物(II)
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
50質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 1質量部
商品名:セリサイトパウダー:堀江化工社製)
※無機層状化合物粒子=セリサイト(絹雲母):平均粒子径5〜8μm 20質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 2質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0040】
[実施例5]
実施例1の膜材の耐火層上全面に、下記〈配合6〉による不燃層を形成した。不燃層の形成は80メッシュのグラビアロールを用いたグラビア転写塗工によって実施し、電気炉内で180℃×1分間の熱処理硬化工程を経て4g/m
2の付着量の不燃層として、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.21mm、質量272g/m
2、全光線透過率が41.7%の膜材を得た。
〈配合6〉不燃層形成用組成物
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
10質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
10質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 0.2質量部
商品名:Nanofil9:(モンモリロナイト:平均粒子径8μm:ズードケミー触媒社製)
※無機層状化合物粒子=スメクタイト系粘土鉱物=モンモリロナイト 50質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 5質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
商品名:セルナックスCX−S401M(帯電防止剤:日産化学工業社製)
※有効成分40%、平均粒子径5〜20nmのリン酸ドープ酸化スズゾル 6質量部
酸化銅ドープ酸化タングステン(可視光応答型光触媒)微粒子 1質量部
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0041】
[実施例6]
実施例2の膜材の耐火層上全面に、下記〈配合7〉による不燃層を形成した。不燃層の形成は80メッシュのグラビアロールを用いたグラビア転写塗工によって実施し、電気炉内で180℃×1分間の熱処理硬化工程を経て4g/m
2の付着量の不燃層として、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.21mm、質量272g/m
2、全光線透過率が47.3%の膜材を得た。
〈配合7〉不燃層形成用組成物
商品名:シラスコンRTV4086A
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
10質量部
商品名:シラスコンRTV4086B
(2液付加反応硬化型シリコーン樹脂:有効成分100%:東レ・ダウコーニング社製)
10質量部
商品名:SRX212 CATALYST(東レ・ダウコーニング社製) 0.2質量部
商品名:ルーセンタイトSAN:(親油性合成スメクタイト:コープケミカル社製)
※無機層状化合物粒子=合成スメクタイト 50質量部
商品名:KBM903(シランカップリング剤:信越シリコーン社製) 5質量部
※γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(有効成分100%)
商品名:セルナックスCX−S401M(帯電防止剤:日産化学工業社製)
※有効成分40%、平均粒子径5〜20nmのリン酸ドープ酸化スズゾル 6質量部
酸化銅ドープ酸化タングステン(可視光応答型光触媒)微粒子 1質量部
トルエン(希釈剤) 100質量部
【0042】
[実施例7]
実施例3の膜材の耐火層上全面に、実施例5で使用した〈配合6〉による不燃層を形成した。不燃層の形成は実施例5と同様に実施し、4g/m
2の付着量の不燃層を設け、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.21mm、質量272g/m
2、全光線透過率が45.3%の膜材を得た。
【0043】
[実施例8]
実施例4の膜材の耐火層上全面に、実施例6で使用した〈配合7〉による不燃層を形成した。不燃層の形成は実施例6と同様に実施し、4g/m
2の付着量の不燃層を設け、アンカー層と耐火層との構成質量比が2:1.625で、厚さ0.21mm、質量272g/m
2、全光線透過率が46.5%の膜材を得た。
【0044】
[実施例9〜16]
実施例1〜8に使用した基材(1)を、下記基材(2)に変更した以外は実施例1〜8と同様として、各々実施例9〜16の膜材を得た。実施例1は実施例9、実施例2は実施例10、実施例3は実施例11に対応する扱いとし以下同様である。
基材(2)
基材(1)である、Eガラスによる直径9μmのフィラメントを400本集束した繊度67.5texのフラットヤーン単糸を経糸及び緯糸として、経糸打ち込み密度44本/インチ、緯糸打ち込み密度33本/インチの織組織による空隙率0%のガラス平織布帛(質量210g/m
2)を下記〈配合8〉の層状鉱物含有下処理液浴に浸し、これを引き上げると同時にピックアップ率40質量%にゴムマングル圧搾し、次いで180℃の熱風炉内で2分間乾燥して層状鉱物処理された質量214g/m
2のガラス繊維布帛を得、これを基材(2)として使用した。
〈配合8:層状鉱物含有下処理液〉
商品名:Nanofil9(モンモリロナイト:ズードケミー触媒社製) 25質量部
※平均粒子径8μm、分散粒子径100〜500nmの層状鉱物
商品名:KBM403(信越シリコーン社製) 3質量部
※γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン:有効成分100%
希釈水 72質量部
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
実施例1〜16の膜材は、天井照明や壁照明、鉄道車両やエレベータかごなどの天井照明、照明器具のシェード材、カバー材、及びプロジェクター投影用の映写スクリーンなどに用いた時に十分な照度を有して光拡散性に優れ、また蛍光管(特にLED光源)の存在(ホットスポット)が視認されることのない、光源カバーとして良好なものであり、これらの膜材はコーンカロリーメーター試験(ASTM−E1354)の不燃性に適合し、または鉄道車両用材料燃焼試験(鉄運第81号)の不燃性に適合するものであるため、特に公共施設やオフィスビルなどの天井照明や壁照明、鉄道車両の天井照明に用いる光源カバーとして最適なものであった。特に実施例5〜8の膜材は実施例1〜4の膜材の表面にさらに不燃層を追加したものであるため、実施例1〜4の膜材よりも上記不燃性試験の適合成績の数値において優れていた。また実施例9〜16の膜材はガラス繊維布帛を層状ケイ酸塩化合物で処理したものを使用したことで、実施例1〜8の膜材よりも上記不燃性試験の適合成績の数値において優れ、さらに実施例13〜16の膜材は、実施例9〜12の膜材よりも上記不燃性試験の適合成績の数値において優れていた。つまり不燃特性の大きい順は概ね、実施例13〜16グループ > 実施例5〜12グループ > 実施例1〜4グループの関係となっていた。また、実施例1〜16の膜材は煤塵汚れの除去性に優れたものであったが、特に実施例5〜8、及び実施例13〜16の膜材は不燃層にリン酸ドープ酸化スズゾルを含むことで、膜材表面の帯電防止効果に優れ、1.0E+9Ω〜10Ωの帯電防止効果を有し、その結果、煤塵汚れの付着が抑止されたことで、実施例1〜4、及び実施例9〜12の膜材よりも煤塵汚れの除去性に優れていた。これは同時に実施例5〜8、及び実施例13〜16の膜材の不燃層に含まれる酸化銅ドープ酸化タングステン(可視光応答型光触媒)による油性煤塵汚れ(揮発調理油やタバコのヤニ)の分解効果が作用することで、より煤塵汚れの除去性に優れていたものと考察される。また酸化銅ドープ酸化タングステンの光触媒作用により照明カバー(または光天井用膜材)に接触する臭気(体臭、動物臭、食品臭、煙草臭、化学物質臭など)の臭気濃度低減にも有効であった。酸化銅ドープ酸化タングステンを含まない実施例1〜4、及び実施例9〜12の膜材との対比で、臭気濃度が1/2に減衰するまでの時間が実施例1〜4、実施例9〜12の膜材でおよそ34分に対して、実施例5〜8、実施例13〜16の膜材で要した時間はおよそ22分であった。
【0050】
[比較例1]
実施例1において、耐火層〈配合2〉に含む無機層状化合物粒子20質量部(Nanofil9:平均粒子径8μm)を省略した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量248g/m
2、全光線透過率が68.2%の難燃性膜材を得た。比較例1で得た膜材は耐火層に無機層状化合物粒子を含まないため、煤塵付着汚れの除去性にも劣るものであった。さらに光源カバーに使用した時に光拡散性に劣り、光源位置(ホットスポット)が露わとなるような外観上の見苦しさを呈していた。
【0051】
[比較例2]
実施例1において、耐火層〈配合2〉に含む無機層状化合物粒子20質量部(Nanofil9:平均粒子径8μm)を、水酸化マグネシウム粒子(難燃化剤)20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が46.3%の極難燃性膜材を得た。比較例2で得た膜材は煤塵付着汚れの除去性にも劣るものであった。
【0052】
[比較例3]
実施例1と同様とした。但し耐火層〈配合2〉に含む無機層状化合物粒子20質量部(Nanofil9:平均粒子径8μm)を5質量部に減量変更した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量251g/m
2、全光線透過率が64.3%の難燃膜材を得た。比較例3で得た膜材は耐火層に含む無機層状化合物粒子量が少ないことで煤塵付着汚れの除去性に劣り、しかも光源カバーに使用した時に光拡散性に劣り、光源位置(ホットスポット)が露わとなるような外観上の見苦しさを呈していた。
【0053】
[比較例4]
実施例1と同様とした。但し耐火層〈配合2〉に含む無機層状化合物粒子20質量部(Nanofil9:平均粒子径8μm)を100質量部に増量変更した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量285g/m
2、全光線透過率が12.4%の不燃性膜材を得た。比較例4で得た膜材は耐火層に含む無機層状化合物粒子量が多過ぎることで耐水性に劣り、しかも光源カバーに使用するには全光線透過率が低すぎて、照明を薄暗くするものであった。
【0054】
[比較例5]
実施例1において、耐火層〈配合2〉に含むシランカップリング剤2質量部(KBM903:γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を省略した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量268g/m
2、全光線透過率が44.2%の不燃性膜材を得た。比較例5で得た膜材は耐火層にシランカップリング剤を含まないため、耐火層が耐水性に劣るもので、屋外曝露試験において降雨に晒されたときに、耐火層が膨潤してアンカー層から剥離を起こし、自然脱落していた。また煤塵汚れを水拭きした際には、膨潤した耐火層内に煤塵汚れが浸透、吸着され、かえって汚れてしまい見た目を悪くするものであった。
【0055】
[比較例6]
実施例1において、耐火層〈配合2〉に含むシランカップリング剤2質量部(KBM903:γ−アミノプロピルトリメトキシシラン)を20質量部に増量変更した以外は実施例1と同様にして、厚さが0.2mm、質量261g/m
2、全光線透過率が42.3%の膜材を得た。比較例6で得た膜材は耐火層にシランカップリング剤を余剰に含むため、得られた膜材表面には未反応のまま、または加水分解した状態のシランカップリング剤成分がブリードして、膜材表面が使用開始間もなく濡れた状態となり、煤塵汚れが激しく付着して、拭き取り除去も困難であった。しかも可燃性のシランカップリング剤を余剰に含むため、コーンカロリーメーター試験(ASTM−E1354)の不燃性に不適合となり、また鉄道車両用材料燃焼試験(鉄運第81号)は可燃性となった。
【0056】
【表5】