(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248311
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】エレベータ用ロープ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D07B 1/06 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
D07B1/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-518025(P2017-518025)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(65)【公表番号】特表2017-517655(P2017-517655A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】KR2015006212
(87)【国際公開番号】WO2015194893
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2016年12月13日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0075058
(32)【優先日】2014年6月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515005242
【氏名又は名称】キスワイヤ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KISWIRE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ソン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ペ, ヨン ファン
【審査官】
春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−327381(JP,A)
【文献】
特開2003−268685(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/065276(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01586526(EP,A1)
【文献】
特開平09−137391(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/082666(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0284144(US,A1)
【文献】
特開2001−336075(JP,A)
【文献】
特開平06−287876(JP,A)
【文献】
特開昭51−058555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B1/00−9/00
B66B7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤ1が撚られて形成された中心ストランド10と、
複数のワイヤ1が撚られて形成され、前記中心ストランド10の外周に配置される内層ストランド20と、
複数のワイヤ1が撚られて形成され、前記内層ストランド20の外周に配置される外層ストランド30と
を含み、
前記内層ストランド20及び外層ストランド30は、それぞれ10本が設けられ、
前記中心ストランド10の直径、前記内層ストランド20の直径、及び前記外層ストランド30の直径は、前記外層ストランド30に接する仮想の第1円40の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされ、
断面充填率は64%ないし67%であることを特徴とする、エレベータ用ロープ。
【請求項2】
互いに隣接した前記内層ストランド20が、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド20間のギャップ(NG)とし、前記内層ストランド20に接する仮想の第2円50の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、
0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立し、
互いに隣接した前記外層ストランド30が、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド30間のギャップ(OG)とし、前記外層ストランド30に接する仮想の前記第1円40の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、
0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立することを特徴とする、請求項1に記載のエレベータ用ロープ。
【請求項3】
前記中心ストランド10のピッチは、前記中心ストランド10の直径の6ないし8倍、
前記内層ストランド20のピッチは、前記内層ストランド20の直径の8ないし10倍、
前記外層ストランド30のピッチは、前記外層ストランド30直径の6.5ないし8.5倍であることを特徴とする、請求項1に記載のエレベータ用ロープ。
【請求項4】
複数のワイヤ1を撚って形成した中心ストランド10を配置し、前記中心ストランド10の外周に、複数のワイヤ1を撚って形成した内層ストランド20を10本配置し、前記内層ストランド20の外周に、複数のワイヤ1を撚って形成した外層ストランド30を10本配置するストランドセッティング段階と、
断面充填率は、64%ないし67%になるように、前記中心ストランド10、前記内層ストランド20及び前記外層ストランド30を同時に撚る単一クロージング段階と
を含み、
ここで、前記中心ストランド10の直径、前記内層ストランド20の直径、及び前記外層ストランド30の直径は、前記外層ストランド30に接する仮想の第1円40の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされることを特徴とする、エレベータ用ロープの製造方法。
【請求項5】
前記単一クロージング段階は、
互いに隣接した前記内層ストランド20が、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド20間のギャップ(NG)とし、前記内層ストランド20に接する仮想の第2円50の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立し、
互いに隣接した前記外層ストランド30が、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド30間のギャップ(OG)とし、前記外層ストランド30に接する仮想の前記第1円40の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立するように遂行されることを特徴とする、請求項4に記載のエレベータ用ロープの製造方法。
【請求項6】
前記中心ストランド10のピッチは、前記中心ストランド10の直径の6ないし8倍、
前記内層ストランド20のピッチは、前記内層ストランド20の直径の8ないし10倍、
前記外層ストランド30のピッチは、前記外層ストランド30直径の6.5ないし8.5倍であることを特徴とする、請求項4に記載のエレベータ用ロープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用ロープ及びその製造方法に係り、ストランド数の増大及び高い断面充填率によって構造的に安定化され、円形率及び形態安定性が高く確保され、エレベータの駆動時、振動を最小化させ、乗り心地を向上させるエレベータロープ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中/高層用エレベータロープは、一般的に、8本の外層ストランドと、中心(IWRC(independent wire rope core)またはファイバ)とから構成される。主に、メイントラクション(main traction)用としては、ファイバが適用された製品が使用され、調速機(govener)用としては、IWRCが適用された製品が使用される。
【0003】
しかし、超高層用建物に適用するために、さらに高い安全率を有さなければならないために、従来のファイバ中心のエレベータロープより高い切断力が要求される。高い切断力を確保するために、ワイヤの強度を向上させることができるが、エレベータロープの特性上、メイントラクションロープは、トラクションシーブ(traction sheave)と摩擦してしまうので、エレベータロープを構成するワイヤの強度を高めるのに制限が生じる。すなわち、ワイヤの強度が高ければ、シーブの寿命が低下するので(通常、シーブと接触するワイヤの硬度は、シーブの硬度より低く、ビッカース硬度450±30レベルを維持)、ファイバ中心の代わりに、IWRCが適用される。
【0004】
このように、IWRCを適用した超高層用エレベータロープが適用されているが、外層ストランドが、従来、中/高層用でのように、8本で適用されている実情である。超高層建物において、エレベータの高速運行時、安全な運行のために、エレベータロープは、構造的にさらに安定化されることが要求されている。
【0005】
最近、超高層建物の増加により、超高層用建物に使用されるエレベータロープの需要が増加しており、従来の中/高層用エレベータロープに比べ、さらに長い距離を運行しなければならないので、高い安全率、高い弾性係数及び低い伸率を有することが要求されている。それだけではなく、長い運行距離を高速で運行するとき、運行時及び乗下車時の乗り心地を維持するために、振動最小化が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かような要求を満足させるために創出されたものであり、特に、ストランド数の増大及び高い断面充填率によって、構造的に安定化され、円形率及び形態安定性が高く確保され、エレベータの駆動時、振動を最小化させて乗り心地を向上させるエレベータロープ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の目的を達成するための本発明の一側面によるエレベータ用ロープは、複数のワイヤが撚られて形成された中心ストランドと、複数のワイヤが撚られて形成され、前記中心ストランドの外周に配置される内層ストランドと、複数のワイヤが撚られて形成され、前記内層ストランドの外周に配置される外層ストランドと、を含むが、前記内層ストランド及び外層ストランドは、それぞれ10本が設けられ、前記中心ストランドの直径、前記内層ストランドの直径、及び前記外層ストランドの直径は、前記外層ストランドに接する仮想の第1円の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされ、断面充填率(fill factor)は、64%ないし67%であることを特徴とする。
【0008】
また、互いに隣接した前記内層ストランドが、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド間ギャップ(NG)とし、前記内層ストランドに接する仮想の第2円の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立し、互いに隣接した前記外層ストランドが、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド間ギャップ(OG)とし、前記外層ストランドに接する仮想の前記第1円の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立することが望ましい。
【0009】
また、前記中心ストランドのピッチは、前記中心ストランドの直径の6ないし8倍、前記内層ストランドのピッチは、前記内層ストランドの直径の8ないし10倍、前記外層ストランドのピッチは、前記外層ストランド直径の6.5ないし8.5倍であることが望ましい。
【0010】
一方、本発明の他の側面によるエレベータ用ロープの製造方法は、複数のワイヤを撚って形成した中心ストランドを配置し、前記中心ストランドの外周に、複数のワイヤを撚って形成した内層ストランドを10本配置し、前記内層ストランドの外周に、複数のワイヤを撚って形成した外層ストランドを10本配置するストランドセッティング段階と、断面充填率(fill factor)は、64%ないし67%になるように、前記中心ストランド、前記内層ストランド及び前記外層ストランドを同時に撚る単一クロージング段階と、を含むが、ここで、前記中心ストランドの直径、前記内層ストランドの直径、及び前記外層ストランドの直径は、前記外層ストランドに接する仮想の第1円の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記単一クロージング段階は、互いに隣接した前記内層ストランドが、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド間ギャップ(NG)とし、前記内層ストランドに接する仮想の第2円の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立し、互いに隣接した前記外層ストランドが、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド間ギャップ(OG)とし、前記外層ストランドに接する仮想の前記第1円の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立するように遂行されることが望ましい。
【0012】
ここで、前記中心ストランドのピッチは、前記中心ストランドの直径の6ないし8倍、前記内層ストランドのピッチは、前記内層ストランドの直径の8ないし10倍、前記外層ストランドのピッチは、前記外層ストランド直径の6.5ないし8.5倍であることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるエレベータ用ロープ及びその製造方法は、ストランド数の増大及び高い断面充填率によって構造的に安定化され、円形率及び形態安定性が高く確保され、エレベータの駆動時、振動を最小化させて乗り心地を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態によるエレベータ用ロープの断面図である。
【
図2】
図1を、ストランド観点から概略的に図示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、超高層用建物に使用されるエレベータロープ及びその製造方法に関する。
【0016】
以下、本発明による望ましい実施形態について、添付された
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1に図示されているように、本発明の一側面によるエレベータ用ロープは、中心ストランド10、内層ストランド20及び外層ストランド30を含む。
【0018】
前記中心ストランド10は、エレベータ用ロープの中心に配置されるものであり、複数のワイヤ1が撚られて形成される。前記ワイヤ1は、鋼(steel)からなる。
【0019】
前記内層ストランド20は、前記中心ストランド10の外周に配置され、本実施形態によれば、前記内層ストランド20は、10本が設けられる。前記各内層ストランド20は、複数のワイヤ1が撚られて形成される。
【0020】
前記外層ストランド30は、前記内層ストランド20の外周に配置され、本実施形態によれば、前記内層ストランド20の本数と同様に、10本が設けられる。前記各外層ストランド30も、複数のワイヤ1が撚られて形成される。
【0021】
前記中心ストランド10の直径、前記内層ストランド20の直径、及び前記外層ストランド30の直径は、前記外層ストランド30に接する仮想の第1円40の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされ、断面充填率(fill factor)は、64%ないし67%を有する。
【0022】
内層ストランド20及び外層ストランド30の本数を10本ですることにより、従来のロープよりシーブ(sheave)と接触する面積が増大し、面圧が分散され、ロープが円形率をさらに良好に維持し、ロープの形態安定性も、良好に確保されるという効果を提供する。
【0023】
また、
図1に図示されているように、各ストランドの直径は、中心ストランド10の直径、外層ストランド30の直径、内層ストランド20の直径の順序に小さく形成するが、各ストランドの直径を、前記第1円40の直径に対して、前述の範囲に設定し、断面充填率が、前述のように、64%ないし67%と高く維持される共に、ロープ径がロープ径許容公差範囲(EN12385−5)内に存在するようにする。すなわち、ロープ径の許容公差範囲は、ロープ公称径(normal diameter)対比+2%以内で与えられるが、本発明によるエレベータ用ロープは、前述の範囲に各ストランドの直径を設定することにより、前記許容公差範囲を満足させる。各ストランドの直径が、前記第1円40の直径に対して、前述の範囲を外れる場合、断面充填率が64%未満ないし67%を超え、ロープ径は、ロープ径許容公差範囲を外れるようになる。
【0024】
さらに、本実施形態によるエレベータ用ロープは、前記中心ストランド10、内層ストランド20及び外層ストランド30を単一クロージング(closing)工程で製造し、断面充填率が前述の範囲に高く維持される。前記単一クロージング工程については、本発明によるエレベータ用ロープの製造方法の説明時に具体的に説明する。
【0025】
本発明の実施形態によれば、内層ストランド20のスペーシング(spacing)、及び外層ストランド30のスペーシングは、下記のように設定される。
【0026】
図2に図示されているように、互いに隣接した内層ストランド20が、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド20間のギャップ(NG)とし、前記内層ストランド20に接する仮想の第2円50の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立する。ここで、(NG/NR)×100は、内層ストランド20のスペーシングという。
【0027】
そして、互いに隣接した前記外層ストランド30が、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド30間のギャップ(OG)とし、前記外層ストランド30に接する仮想の前記第1円40の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立する。ここで、(OG/OR)×100は、外層ストランド30のスペーシングという。
【0028】
エレベータ用ロープにおいて、スペーシングは必ず必要な要素であり、構造的伸率、疲労寿命と密接な関係がある。スペーシングが大きい場合、構造的伸率が大きくなり、形態安定性が良好ではない。一方、スペーシングが過度に小さい場合、構造的伸率は、低くなるが、ストランド間の噛み合い圧力が上昇し、柔軟性が落ちて疲労寿命が低くなる。
【0029】
本発明の実施形態によれば、前述のように、内層ストランド20のスペーシングは、0.3%ないし0.6%に設定され、外層ストランド30のスペーシングは、0.5%ないし1.0%に設定され、ロープ使用中の噛み合い圧力が発生せず、過度なスペーシングによる構造的不安定性を解消することができる。
【0030】
従って、前述の範囲で、内層ストランド20及び外層ストランド30のスペーシングが設定されるので、高い断面充填率を有するようになり、切断力が上昇し、ロープの安全率が向上する。同時に、高い弾性係数及び低い伸率を有することになる。高い弾性係数及び低い伸率によって、エレベータの運行中、振動が最小化されて乗り心地が向上する。
【0031】
また、本発明の実施形態によれば、前記中心ストランド10のピッチは、前記中心ストランド10の直径の6ないし8倍、前記内層ストランド20のピッチは、前記内層ストランド20の直径の8ないし10倍、前記外層ストランド30のピッチは、前記外層ストランド30直径の6.5ないし8.5倍に形成される。
【0032】
前述のような範囲でピッチが設定されることにより、ロープに荷重が付加されるとき、ロープを構成する全てのストランドに荷重が印加されることになるので、ロープの構造的な伸率が低下し、さらに荷重分配が均一になる。前述のようなピッチ範囲を外れた場合、中心ストランド10、内層ストランド20または外層ストランド30のうちいずれか一つまたは二つに荷重が相対的に集中し、残りのストランドには荷重が不十分に印加され、荷重分配の不均一をもたらしてしまう。例えば、中心ストレント10には、荷重が集中し、内層ストランド20または外層ストランド30には、荷重が相対的に不十分に印加される結果をもたらす。
【0033】
一方、本発明の他の側面によれば、前述のエレベータ用ロープを製造する方法を提供する。
【0034】
本実施形態によるエレベータ用ロープの製造方法は、ストランドセッティング段階及び単一クロージング段階を含む。
【0035】
前記ストランドセッティング段階は、複数のワイヤ1を撚って形成した中心ストランド10を配置し、前記中心ストランド10の外周に、複数のワイヤ1を撚って形成した内層ストランド20を10本配置し、前記内層ストランド20の外周に、複数のワイヤ1を撚って形成した外層ストランド30を10本配置する段階である。前記各ストランドに使用されるワイヤ1は、鋼(steel)である。
【0036】
ここで、前記中心ストランド10のピッチは、前記中心ストランド10の直径の6ないし8倍に設定され、前記内層ストランド20のピッチは、前記内層ストランド20の直径の8ないし10倍に設定され、前記外層ストランド30のピッチは、前記外層ストランド30直径の6.5ないし8.5倍に設定される。ピッチが前述のように設定された各ストランドをあらかじめ製造した後、前記ストランドセッティング段階が遂行される。
【0037】
また、前記中心ストランド10の直径、前記内層ストランド20の直径、及び前記外層ストランド30の直径は、前記外層ストランド30に接する仮想の第1円40の直径に対して、それぞれ0.33ないし0.35倍、0.13ないし0.15倍、及び0.22ないし0.24倍とされる。各ストランドの直径範囲を、前述のように設定するときの作用及び効果は、前述の通りであり、その具体的な説明は省略する。
【0038】
次に、前記単一クロージング段階が遂行される。クロージング工程は、ロープを撚る工程を意味するものであり、本実施形態において、単一クロージング段階は、前記ストランドセッティング工程によって、中心ストランド10、内層ストランド20及び外層ストランド30を配置した後、それらをいずれも1回で撚ってロープを製造することを意味する。
【0039】
このように、前述の範囲で、各ストランドの直径が設定された状態で、前記中心ストランド10、前記内層ストランド20及び前記外層ストランド30を同時に撚り、断面充填率(fill factor)が64%ないし67%になる。
【0040】
一方、単一クロージング段階は、内層ストランド20のスペーシングと、外層ストランド30のスペーシングとが、下記のような範囲を維持するように遂行される。
【0041】
すなわち、互いに隣接した前記内層ストランド20が、互いに離隔されて形成されたギャップを、内層ストランド20間のギャップ(NG)とし、前記内層ストランド20に接する仮想の第2円50の直径を、内層ロープ径(NR)とするとき、0.3%≦(NG/NR)×100≦0.6%である関係が成立し、互いに隣接した前記外層ストランド30が、互いに離隔されて形成されたギャップを、外層ストランド30間のギャップ(OG)とし、前記外層ストランド30に接する仮想の前記第1円40の直径を、外層ロープ径(OR)とするとき、0.5%≦(OG/OR)×100≦1.0%である関係が成立するように遂行される。かような範囲で、内層ストランド20のスペーシング、及び外層ストランド30のスペーシングが設定されるときの作用及び効果は、前述の通りであり、その具体的な説明は省略する。
【0042】
このように、本発明によるエレベータ用ロープ及びその製造方法は、中心ストランド10の周りに配置される、内層ストランド20及び外層ストランド30を10本ずつ設け、シーブとの接触時の面圧を分散させ、構造的な安定性を高める。
【0043】
また、中心ストランド10、内層ストランド20及び外層ストランド30の直径を、前記第1円の直径に対して、所定範囲に設定し、内層ストランド20のスペーシング及び外層ストランド30のスペーシングを所定範囲になるようにし、断面充填率を高めることにより、ロープの切断力及び弾性係数を向上させ、伸率が低下したロープを提供する。
【0044】
以上、本発明について、望ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を外れない範囲内で、さまざまな多くの変形が提供される。従って、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決められるものである。