特許第6248350号(P6248350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248350
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】精密傾斜ステージ
(51)【国際特許分類】
   G12B 5/00 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G12B5/00 A
   H01L41/09
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-255505(P2015-255505)
(22)【出願日】2015年12月26日
(65)【公開番号】特開2017-116514(P2017-116514A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2016年1月12日
【審判番号】不服-18969(P-18969/J1)
【審判請求日】2016年12月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】久郷 智之
(72)【発明者】
【氏名】中村 元一
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 清水 稔
【審判官】 関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許出願公開第2497995(FR,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103995542(CN,A)
【文献】 特開平9−265348(JP,A)
【文献】 特開平4−348834(JP,A)
【文献】 特表2002−501222(JP,A)
【文献】 特開平5−304323(JP,A)
【文献】 特開昭61−045304(JP,A)
【文献】 特開平11−304459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G12B 5/00, H01L 41/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージ中央部に直立して設けた支柱の側面に、角部を直角に形成した横方向の角溝を切り欠いて当該方向に対応した単一のヒンジを構成し、センサ素子を前記ヒンジ部に設けた精密傾斜ステージ。
【請求項2】
前記角溝を異なる高さに直交して設けた、請求項1記載の精密傾斜ステージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステージを支柱により支持し、当該支柱を別途設けた駆動部材によって屈曲させる精密傾斜ステージに関する。
【0002】
現在、3次元測定等の精密測定分野に於いては被測定物を載せたステージ側を傾斜させる構造が用いられており、測定の自由度増加や測定精度の向上といった効果を付与している。当該構造の多くはヒンジを備えた支柱に圧電素子等の伸縮する駆動部材を組み合わせて構成されており、従来技術のうち代表的なものとして特開平05−304323(以下特許文献1として記載)及び特開平09−285146(以下特許文献2として記載)がそれぞれ出願、公開されている。
【0003】
これら2件のうち、特許文献1記載の構造はステージ中央に支柱を設けた変位拡大機構をその技術的特徴としており、変位調整部の太さを変えることによって角度変位させる際の剛性値を選択可能にしている。また、特許文献2記載の構造では固定部とステージとを2軸方向に変形可能な円筒型圧電素子とヒンジ付剛性支柱部材とで連結した事で走査型プローブ顕微鏡での使用に際して信頼性の向上という効果を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−304323
【特許文献2】特開平09−285146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した効果を有している一方で近年、精密プレス等の分野に於いて、加圧対象に対し微細角度を付与した状態での加圧、成型が要求されている。この様な加工に用いる角度調整機構として用いる際に、特許文献1記載の変位拡大機構はその構造上、単独で3次元方向の角度調整を行うことができないという課題を有しており、支柱の構造についても図面に記載されたヒンジの形状から、当該加工に伴う耐久性及び加工精度を維持することが困難となっている。また、特許文献2記載の構造は剛性支柱材を複数設けている為、前記角度を保った状態での加工時に、特定の支柱に応力が集中し続けてしまうという課題を有しており、耐久性の向上と小型化とを同時に行うことができない。
【0006】
上記課題に対して本願記載の発明では、小型、高耐荷重でありながら高負荷時に際しても高精度での稼働が可能な精密傾斜ステージの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的のために本願に於ける第1の態様は、ステージ中央部に設けた支柱の側面に横方向の角溝を切り欠いたことを特徴としている。より具体的には、前述した精密傾斜ステージの基本構造として、ステージ中央に設けた支柱側面にステージの変位方向に対して直交する溝を設け、当該溝の底面を対向する反対側の面と平行でかつ前記ステージ表面に垂直に形成した事をその技術的特徴としている。
【0008】
更に、本願に於ける第2の態様では、前記角溝を異なる高さで直交して設けたことをその技術的特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上述した技術的特徴によって本願記載の発明は、小型、高耐荷重でありながら高負荷時に際しても高精度での稼働が可能な精密傾斜ステージを提供することが可能となる。また、当該効果は前記角溝を切り欠いた構造によって付与される。より詳しくは、加工時の応力が集中するステージ中央の支柱に角溝を切り欠いたことで、表裏が平行な一対の壁面を形成し、当該壁面の伸縮によって高精度な傾き測定を行うと共に、5μm以下となる数μm単位での微細な傾きを維持しつつ、前記高負荷での加工を可能にしている。
【0010】
即ち、本発明では前記角形の溝部をヒンジ部として機能させている。この為、圧電素子等のアクチュエータによってステージを傾けた際、厚さが均一となる板状のヒンジ部に溝方向に沿った曲げ応力が生じ、前記微細な傾きを高精度で維持することが可能となる。また、前記精密プレス等の加工に際し、前記板状のヒンジ部が荷重を受けることで、当該プレス加工によって支柱にかかる垂直方向の荷重は当該ヒンジ部全体に分散される。これにより、本発明記載の構造は当該荷重による応力の集中を抑えると共に、繰り返し応力を高負荷で加えられる前記加工に際しても、高い耐久性を維持することが可能となる。加えて、ステージ中央部に当該支柱を設けることで前記支柱に沿った垂直方向で作用する高負荷の繰り返し応力のうち、大部分を支柱単体が受け止める構造となり、補助的な支柱を設ける必要のない、小型の構造とすることができる。
【0011】
更に、本発明では前記支柱にヒンジ部を設ける事で、平行壁面によって形成される板状のヒンジ部が均一に曲がる構造とすることができる。より具体的には、SUS材等の剛性材料によって構成される支柱について、前記ヒンジ部を設けることで当該支柱の一部のみを変形可能な状態にすると共に、当該ヒンジ部を板状に構成する事で、アクチュエータによる曲げ応力を均一に作用させる事を可能にしている。これにより、本発明記載の精密傾斜ステージは支柱の曲げ応力を溝方向に揃え、前記傾けた際の変形方向を高い精度で維持することができる。
【0012】
また、本発明では剛性材料によって支柱を構成することで、ステージの傾きに対して常にヒンジ部が変形する構造となっている。この為、前記一対の壁面に歪みゲージ等のセンサ素子をそれぞれ取り付けることで、前記一部のみ変形可能となったヒンジ部の変位出力により高い精度での傾き制御を可能にしている。加えて、当該センサ素子を各ヒンジ部に設けることでセンサを内蔵した構成となり、省スペース化という効果をも得ている。
【0013】
また、本願第2の態様を用いることで本発明記載の精密傾斜ステージは、XY方向での傾きについて上記効果を付与することができる。即ち、本態様では前記ヒンジ部を直交して設けたことで、各ヒンジ部に於いて捻り方向の変形を抑えている。より具体的には、直交方向に各ヒンジ部を設けることで、それぞれの板状ヒンジ部が各ヒンジ部に対応して設けられたアクチュエータから相互に生じる応力は互いの変形方向と直交する。この為、本態様を用いることで回転方向の捻り応力を生じることなく、任意の方向へと前記ステージを傾斜させることが可能となる。尚、本発明記載の精密傾斜ステージは当該支柱を中央に設けている。この為、本態様を用いることで低下する支柱の剛性は、支柱のみの断面積拡大等によって容易に補うことができる。加えて、前記変形方向を揃えたことによってXY方向の各ヒンジ部に設けたセンサは常に一方向の変位のみを検出する構造となり、当該軸の独立性向上による制御の簡易化という効果もまた、付与することができる。
【0014】
以上述べたように、本願請求項記載の構造を用いることによって小型、高耐荷重でありながら高負荷時に際しても高精度での稼働が可能な精密傾斜ステージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の最良の実施形態に於いて用いる精密傾斜ステージの全体斜視図
図2】本発明の最良の実施形態に於いて用いる精密傾斜ステージの分解斜視図
図3】本発明の最良の実施形態に於いて用いる精密傾斜ステージの動作説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図1図2、及び図3を用いて、本発明に於ける最良の実施形態を示す。尚、図中の記号及び部品番号について、同じ部品として機能するものには共通の記号又は番号を付与している。
【0017】
図1に本実施形態に於いて用いる精密傾斜ステージの全体斜視図を、図2に同分解斜視図を、そして図3図1の動作説明図を、それぞれ示す。尚、図2中の歪みゲージ、図1図2及び図3に於けるアクチュエータ及び歪みゲージの配線並びに制御機構については、図中での記載を省略している。
【0018】
図1及び図2から解るように、本実施形態ではステージ1、支柱T、台座BをSUS材にて一体に成形しており、ステージ中央に設けた角柱形状の支柱側面Hに対して、ステージ表面に平行となる横方向の角溝Dを2箇所ずつ、異なる高さに直交して形成している。また、本実施形態ではステージ表面Sを50mm角の平面に構成しており、圧電素子2によって駆動される梃子型構造の変位拡大機構2から出力される縦方向の伸縮力によってステージ表面Sを傾ける構造となっている。尚、当該傾けた際の変位は溝部Dによって形成したヒンジ部Wに固着され、垂直方向の変位を計測する歪みゲージ4の測定値を元に制御される。この様な基本構造を用いたことで本実施形態記載の精密傾斜ステージは、XY軸での各可動範囲3μm、耐荷重500Nでのステージ表面Sを用いた精密プレス加工が可能となった。
【0019】
即ち、図3に示すように、本実施形態では前記角形の溝部Dを設けることで前記ヒンジ部Wのみの変形を可能にしている。この為、アクチュエータによってステージ表面Sを傾けた際、厚さ均一となる板状のヒンジ部Wに対し、溝方向dに並んだ曲げ応力Fが生じ、前記微細な傾きを高精度で維持することが可能となる。また、前記精密プレス加工に際し、前記板状のヒンジ部Wが荷重を受けることで、支柱にかかる垂直方向の荷重は当該ヒンジ部全体に分散される。ここで、本実施形態ではヒンジ部Wを角溝により構成したことで、丸溝により構成した際に生じる曲げ応力の偏りを防いでいる。この為、本発明記載の構造は当該荷重による応力の集中を抑えると共に、繰り返し応力を高負荷で加えられる前記加工に際しても、高い耐久性を維持することが可能となる。加えて、ステージ中央部にて当該支柱を一体化させたことで、前記支柱Tに沿った垂直方向で作用する高負荷の繰り返し応力のうち、大部分を支柱単体が受け止める構造となり、小型、高耐久での使用が可能な構造とすることができた。
【0020】
更に、本実施形態では前記支柱に設けたヒンジ部Wに関し、平行壁面によって形成される板状のヒンジ部Wが均一に曲がる構造となっている。より具体的には、支柱Tに溝部Dを設けたことにより支柱の一部となるヒンジ部Wのみを変形可能な状態にすると共に、前記微細な傾きを加えた際、アクチュエータによる曲げ応力Fをヒンジ部Wに対して均一に作用させる事が可能となった。これに伴い、本実施形態の精密傾斜ステージは支柱の曲げ応力Fを溝方向dに揃え、前記応力下に於いても、傾けた変位を高い精度で維持することができる。また、前述した様に本実施形態ではSUS材によりステージ1に支柱Tと台座Bとを一体に形成したことで、ステージ1の傾きに対して常にヒンジ部Wが変形する構造となっている。この為、当該一対の壁面からなるヒンジ部Wに歪みゲージ4を取り付けることで、前記一部のみ変形可能となったヒンジ部Wの変位出力による高い精度での傾き制御が可能となった。加えて、歪みゲージ4を各ヒンジ部Dに設けたことでセンサを内蔵した構成となり、全体的な省スペース化という効果をも得ている。
【0021】
また、本実施形態記載の精密傾斜ステージでは、XY方向での傾きについて上記効果を付与している。即ち、前記溝部Dを直交して設けたことで、それぞれの溝部Dにより形成されたヒンジ部Wが各アクチュエータから受ける応力Fは、互いの変形方向に対して直交する。この為、本実施形態記載の支柱はヒンジ部Wについて回転方向の捻り応力を生じることなく、任意の方向へとステージ1を傾斜させることが可能となる。尚、本実施形態では当該支柱Tをステージ中央に設けている。この為、更なる高負荷での使用が必要とされた際には、支柱Tの断面積拡大等によって容易に耐荷重性を向上することができる。加えて、前記変形方向を揃えたことによってXY方向の各溝部に設けた歪みゲージ4は常に一方向の変位のみを検出する構造となり、当該軸の独立性向上による制御の簡易化が可能となった。
【0022】
以上述べたように、本願実施形態記載の構造を用いることによって、小型、高耐荷重でありながら高負荷時に際しても高精度での稼働が可能な精密傾斜ステージを提供することができた。
【符号の説明】
【0023】
1 ステージ
2 変位拡大機構
3 圧電素子
4 歪みゲージ
B 台座
H 支柱壁面
T 支柱
S ステージ表面
D 溝部
d 溝方向
W ヒンジ部
F 曲げ応力
図1
図2
図3