(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態による溶接装置100について説明する。
【0010】
図1に示すように、溶接装置100は、二つの熱電対用線材10,20の先端部分の絶縁被覆11,21を除去して露出させた金属線12,22同士を溶接して熱電対を製造する装置である。
【0011】
図2に示すように、熱電対は、異なる二つの線材10,20から構成され、温度センサとして使用される。線材10はアルメル等の金属線12を絶縁被覆11で被覆したワイヤであり、線材20はクロメル等の金属線22を絶縁被覆21で被覆したワイヤである。溶接装置100によって溶接された金属線12,22の溶接部分が温度測定部位として機能する。なお、金属線12,22は、極細線であって、その直径(線径)は数百ミクロン程度に設定されている。
【0012】
図1に示すように、溶接装置100は、本体部30と、本体部30に設けられ線材10,20の金属線12,22同士を溶接する溶接部40と、溶接部40の溶接位置に金属線12,22を位置決めするように線材10,20を保持する保持部材50と、を備える。
【0013】
本体部30は、水平方向に貫通形成された挿入孔31と、上下方向に貫通形成され挿入孔31と外部を連通する縦孔32と、を有している。
【0014】
溶接部40は、縦孔32内に設けられる正電極41と、挿入孔31内に設けられる負電極42と、正電極41の初期位置を調整可能な調整ねじ43と、を備える。
【0015】
負電極42は、本体部30の下部位置において挿入孔31内に固定されている。負電極42の上端は平坦面として形成されている。負電極42には、通電ケーブル42Aが接続されている。本実施形態では、負電極42を、負電極42の上端が挿入孔31の内周面から突出するように配置しているが、負電極42の上端が挿入孔31の内周面と面一となるように配置してもよい。
【0016】
正電極41は、その下端が負電極42の上端に対向するように、縦孔32内に収容されている。正電極41の下端は平坦面として形成されている。正電極41は、縦孔32の軸方向(上下方向)に伸縮可能な伸縮部材44を介して、調整ねじ43に取り付けられている。正電極41には、通電ケーブル41Aが接続されている。
【0017】
調整ねじ43は、縦孔32の内周面に形成されたねじ溝に螺合し、本体部30の上部に固定される。調整ねじ43の高さ位置を調整して正電極41の初期位置を調整することで、正電極41と負電極42の間隔が変更可能となっている。非溶接状態での正電極41と負電極42の間隔は、線材10,20の金属線12,22の線径に応じて調整され、金属線12,22の線径が小さくなるほど狭くなるように設定される。なお、溶接時には、伸縮部材44が伸長して正電極41が下降し、正電極41と負電極42との間に挟まれた線材10,20の金属線12,22の先端部同士が溶接される。このように正電極41と負電極42の間が溶接部40の溶接位置となる。
【0018】
保持部材50は、溶接位置に金属線12,22を位置決めするように線材10,20を保持するホルダであって、本体部30に対して着脱自在に構成されている。
【0019】
図3(A)及び
図3(B)に示すように、保持部材50は、上板部51及び下板部52から構成される上下二分割構造の板状部材である。上板部51の下端面及び下板部52の上端面には半円状の複数の溝が長手方向に沿って設けられており、上板部51と下板部52が重ね合わされた状態において、これら溝が大径孔53、小径孔54、及び誘導孔55を形成する。なお、上板部51と下板部52を組み付けるため、下板部52の上面には円柱状の突起52A(
図7(B)参照)が形成されており、上板部51には突起52Aが挿入される係合孔51Aが形成されている。
【0020】
上記の通り、保持部材50の内部には、線材10,20がそれぞれ挿入される二つの大径孔53と、各大径孔53に連通する小径孔54と、各小径孔54を通過した金属線12,22を溶接位置に誘導する誘導孔55と、が設けられている。
【0021】
大径孔53は水平に延設された直線状通路であって、二つの大径孔53は平行に設けられている。大径孔53の一端は保持部材50の基端側に開口しており、大径孔53の他端は小径孔54に接続している。大径孔53の内径は、絶縁被覆11,21を含む線材10,20の線径よりも僅かに大きく設定されている。
【0022】
小径孔54は、水平に延設された直線状通路であって、大径孔53に対して連接されている。小径孔54の内径は、絶縁被覆11,21を含む線材10,20の線径よりも小さく、かつ線材10,20の金属線の12,22の線径よりも大きく設定されている。つまり、小径孔54は、絶縁被覆11,21の進入が規制されて金属線12,22のみが通過するように構成されている。
【0023】
誘導孔55は、保持部材50の先端側に向かって幅方向内側に傾斜する直線状通路である。誘導孔55は、小径孔54を通過した金属線12,22が挿入される通路であり、当該誘導孔55を通過して保持部材50の先端から外側に導出された金属線12,22の先端部を溶接位置に誘導する。誘導孔55の内径は、線材10,20の金属線12,22の線径よりも大きく設定されている。
【0024】
次に、
図4〜
図7を参照して、上述した溶接装置100による熱電対用線材10,20の溶接方法について説明する。
【0025】
図4に示すように、熱電対用の線材10,20の先端部分の絶縁被覆11,21を除去することで、予め定められた所定長さ(数mm〜数十mm)の金属線12,22を露出させる。露出させる金属線12,22の長さは、実験等により予め定められている。
【0026】
その後、
図5(A)に示すように、先端部分の絶縁被覆11,21が除去された線材10,20を、保持部材50の基端側から各大径孔53に挿入する。保持部材50の小径孔54は絶縁被覆11,21を含む線材10,20の進入を規制する内径となっているので、
図5(B)に示すように線材10,20は、先端寄りの絶縁被覆11,21が小径孔54の端部に当接する位置(進入規制位置)まで挿入される。
【0027】
線材10,20が進入規制位置まで挿入された状態では、線材10,20の先端部分の金属線12,22は、小径孔54及び誘導孔55を通じて、保持部材50の先端から外側に導出される。金属線12,22が誘導孔55によって誘導されることで、保持部材50の外側に位置する当該金属線12,22の先端部同士はV字状に交差する。
【0028】
線材10,20が挿入された保持部材50は、
図6(A)及び
図6(B)に示すように、溶接装置100の側方から挿入孔31内に挿入され、溶接装置100の本体部30に固定される。保持部材50の基端部には当該保持部材50の幅方向に延在するフランジ部56が形成されており、フランジ部56の一部が溶接装置100の本体部30の側面に当接することで保持部材50の先端側の挿入位置が規定される。
【0029】
図6(B)に示すように、保持部材50が本体部30に設置された状態では、V字状に交差した金属線12,22の先端部が正電極41と負電極42の間の溶接位置に位置決めされる。このように、保持部材50は、線材10,20の金属線12,22の先端部同士を溶接可能な状態で配置するための部材として機能する。
【0030】
金属線12,22は、先端部同士が交差した状態で正電極41及び負電極42により挟まれて、抵抗溶接により溶接される。
【0031】
図7(A)に示すように、保持部材50は、溶接後に溶接装置100の本体部30の挿入孔31から取り出される。そして、
図7(B)に示すように、下板部52の突起52Aを上板部51の係合孔51Aから引き抜いて保持部材50を分解することで、溶接後の線材10,20、つまり
図2に示したようなV形状の熱電対が取り出される。
【0032】
上記した第1実施形態による溶接装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0033】
溶接装置100の保持部材50において、大径孔53は絶縁被覆11,21を含む線材10,20の通過を許容するように構成されており、小径孔54は線材10,20の金属線12,22のみの通過を許容するように構成されている。そのため、線材10,20の先端部分の絶縁被覆11,21を除去して金属線12,22を所定長さだけ露出させ、絶縁被覆11,21が小径孔54の端部に当接する進入規制位置まで線材10,20を大径孔53に挿入することで、保持部材50の外側に導出される金属線12,22の長さを常時一定とすることができる。したがって、線材10,20の金属線12,22の先端部を溶接部40の溶接位置において毎回一定位置に位置決めすることができ、金属線12,22の溶接部分の溶接品質を安定させることが可能となる。
【0034】
また、保持部材50は、金属線12,22の先端部同士が溶接位置においてV字状に交差するように当該金属線12,22を誘導する誘導孔55を備えるので、
図2に示すようなV形状の熱電対を容易に製造することができる。線形状の熱電対を折り曲げてV形状とする場合には、折り曲げた部分において断線してしまうことがあるが、溶接装置100では最初からV形状の熱電対を製造することができるので、断線等の問題を回避できる。
【0035】
保持部材50は、溶接装置100の本体部30に対して着脱自在に構成されるとともに、本体部30から取り外した状態では線材10,20を取り出し可能な二分割構造として形成されている。したがって、線材10,20を溶接して製造された熱電対を傷つけることなく、容易に取り出すことが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
図8及び
図9を参照して、本発明の第2実施形態による溶接装置100について説明する。第2実施形態による溶接装置100は、第1実施形態とほぼ同様の溶接装置であるが、保持部材50の構成において相違する。
【0037】
第1実施形態による溶接装置100はV形状の熱電対を製造するためのものであるが、第2実施形態による溶接装置100は線形状の熱電対を制御するためのものである。したがって、
図8に示すように、第2実施形態による溶接装置100の保持部材50では、熱電対用線材10,20が直線状に保持されるように二つの大径孔53及び小径孔54が同一線上に配置されている。
【0038】
一方の大径孔53の一端は保持部材50の基端側に開口しており、当該大径孔53の他端は基端側の小径孔54に接続している。これに対して、他方の大径孔53の一端は保持部材50の先端側に開口しており、当該大径孔53の他端は先端側の小径孔54に接続している。
【0039】
保持部材50の中央位置には、上下方向に貫通する開口部57が形成されている。つまり、保持部材50の上板部51及び下板部52には開口部57を構成する貫通孔51B,52Bが設けられている。基端側及び先端側の小径孔54の端部は、開口部57に臨むように開口している。
【0040】
なお、第2実施形態による溶接装置100の保持部材50には、第1実施形態における誘導孔に相当する孔は設けられていない。
【0041】
次に、
図9(A)〜
図9(D)を参照して、第2実施形態の溶接装置100による熱電対用線材10,20の溶接方法について説明する。
【0042】
まず、線材10,20の先端部分の絶縁被覆11,21を除去し、所定長さの金属線12,22を露出させる。その後、
図9(A)に示すように、先端部分の絶縁被覆11が除去された線材10を保持部材50の基端側の大径孔53に挿入し、先端部分の絶縁被覆21が除去された線材20を保持部材50の先端側の大径孔53に挿入する。線材10,20は、先端寄りの絶縁被覆11,21が小径孔54の端部に当接する進入規制位置まで挿入される。線材10,20が進入規制位置まで挿入された状態では、金属線12,22は小径孔54を通じて開口部57に導出され、当該開口部57において金属線12,22の先端部同士は突き合わされる。
【0043】
図9(B)に示すように、線材10,20が挿入された保持部材50は、溶接装置100の本体部30の側方から挿入孔31内に挿入され、溶接装置100の本体部30に固定される。保持部材50が本体部30に設置された状態では、突き合わせ状態の金属線12,22の先端部は、開口部57を介して露出しており、正電極41と負電極42の間の溶接位置に位置決めされる。金属線12,22は、このように位置決めされた状態で正電極41及び負電極42により挟まれて、抵抗溶接により溶接される。第2実施形態による溶接装置100では、溶接部40の正電極41及び負電極42は、保持部材50の開口部57を通じて金属線12,22を溶接するように構成されている。
【0044】
保持部材50は、溶接後に溶接装置100の本体部30の挿入孔31から取り出される。そして、
図9(C)に示すように下板部52の突起52Aを上板部51の係合孔51Aから引き抜いて保持部材50を分解することで、
図9(D)に示すように溶接後の線材10,20、つまり線形状の熱電対が取り出される。
【0045】
上記した第2実施形態による溶接装置100によれば、線形状の熱電対を製造する場合であっても、線材10,20の金属線12,22の先端部を溶接部40の溶接位置において毎回一定位置に位置決めすることができ、金属線12,22の溶接部分の溶接品質を安定させることが可能となる。
【0046】
本発明は、上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなし得ることは明白である。
【0047】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、線材10の金属線12と線材20の金属線22の組み合わせがアルメルとクロメルの組み合わせであるとしたが、金属線12と金属線22の組み合わせはこれに限られるものではない。線材10の金属線12と線材20の金属線22の組み合わせは、白金と白金ロジウムの組み合わせや銅とコンスタンタンの組み合わせ等、熱電対を構成可能な組み合わせが採用される。