【文献】
片田喜章,進化ロボティクスにおける多目的GAに関する一考察,第54回システム制御情報学会研究発表講演会講演論文集[CD−ROM],システム制御情報学会,2010年 5月19日,pp.609−610
【文献】
山地秀美 外2名,2目的GAにおけるパレート解進化の視覚化システム,(社)日本経営工学会平成17年度春季大会予稿集,社団法人日本経営工学会,2005年 5月12日,pp.56−57
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定められた少なくとも1つのパラメータと、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値として定められた少なくとも1つのパラメータとの2種類のデータを対象としたデータの表示方法であって、
コンピュータが、前記設計変数と前記特性値との間の非線形応答関係を定める第1の工程と、
前記設計変数の定義域を定め、前記第1の工程で定めた非線形応答関係を用いて、特性値を目的関数とする最適化を実施しパレート解を算出する第2の工程と、
前記パレート解を目的関数空間で散布図として表示する際、前記設計変数の値に応じ、前記散布図で前記設計変数の値を表すシンボルを、その色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変えて表示する第3の工程を実行し、
前記コンピュータが、更に特性値として定められたパラメータを追加し、前記設計変数と前記パラメータが追加された特性値との間の非線形応答関係を定め、前記設計変数の定義域を定め、その非線形応答関係を用いて、特性値を目的関数とする最適化を実施して、拡張パレート解を算出する工程を実行し、
前記第3の工程において、前記コンピュータが、前記拡張パレート解を前記パレート解とともに前記目的関数空間で散布図として表示することを特徴とするデータの表示方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のデータの表示方法を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態の表示方法に利用される表示処理装置を示す模式図である。
図2は本発明の実施形態の表示方法の第1の例を工程順に示すフローチャートである。
【0015】
図1に示す表示処理装置10は、本発明の実施形態の表示方法を実施に用いられる装置の一例である。表示処理装置10は、コンピュータ等のハードウェアを用いて構成されるものである。
表示処理装置10は、処理部12と、入力部14と、表示部16とを有する。処理部12は、条件設定部20、モデル生成部22、演算部24、パレート解探索部26、メモリ28、表示制御部30および制御部32を有する。この他に図示はしないがROM等を有する。
処理部12は、制御部32により制御される。また、処理部12において条件設定部20、モデル生成部22、演算部24およびパレート解探索部26はメモリ28に接続されており、条件設定部20、モデル生成部22、演算部24およびパレート解探索部26のデータがメモリ28に記憶される。
【0016】
入力部14は、マウスおよびキーボード等の各種情報をオペレータの指示により入力するための各種の入力デバイスである。表示部16は、例えば、本発明の表示方法で得られた図を表示するものであり、公知の各種のディスプレイが用いられる。また、表示部16には各種情報を出力媒体に表示するためのプリンタ等のデバイスも含まれる。
【0017】
表示処理装置10は、ROM等に記憶されたプログラム(コンピュータソフトウェア)を、制御部26で実行することにより、条件設定部20、モデル生成部22、演算部24、パレート解探索部26の各部を機能的に形成する。表示処理装置10は、上述のように、プログラムが実行されることで各部位が機能するコンピュータによって構成されてもよいし、各部位が専用回路で構成された専用装置であってもよい。
【0018】
条件設定部20は、本実施形態の表示方法により、パレート解を目的関数空間で散布図として表示する際に必要な各種の条件、情報が入力され、設定する。各種の条件、情報は、入力部12を介して入力される。条件設定部20で設定する各種の条件、情報はメモリ28に記憶される。
【0019】
条件設定部20には、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち設計変数として定めた少なくとも1つのパラメータが設定される。なお、設計変数のパラメータには、荷重、境界条件などのばらつき因子を設定してもよい。
また、構造体および構造体を構成する材料を規定するパラメータのうち特性値(目的関数)として定めた少なくとも1つのパラメータが設定される。特性値には、コスト等の物理的および化学的な特性値以外の、構造体および構造体を構成する材料を評価する指標を用いてもよい。
構造体および構造体を構成する材料は、構造体単体ではなく、構造体を構成するパーツ、構造体のアッセンブリ形態等の構造体を含むシステム全体、またはその一部を対象としてもよい。
【0020】
条件設定部20に設定される特性値は、評価しようとする物理量である。目的関数は、評価しようとする物理量を求めるための関数である。
構造体がタイヤである場合、特性値はタイヤの特性値である。この場合、特性値としては、タイヤ性能として評価しようとする物理量であり、例えば、操縦安定性の指標となるスリップ角1度における横力であるCP(コーナリングパワー)、乗心地性の指標となるタイヤの1次固有振動数、転動抵抗の指標となる転がり抵抗、操縦安定性の指標となる横ばね定数、耐摩耗性の指標となるタイヤトレッド部材の摩耗エネルギ等が挙げられる。目的関数は、それらを求めるための関数である。目的関数は、性能として好ましい方向があり、値が大きくなる、小さくなる、または所定の値に近づく等がある。
【0021】
設計変数は、構造体の形状、構造体の内部構造および材料特性等を規定するものである。タイヤの場合、設計変数は、タイヤの材料挙動、タイヤの形状およびタイヤの構造のうち、少なくとも1つのパラメータである。設計変数としては、例えば、タイヤのトレッド部におけるクラウン形状を規定する曲率半径、タイヤ内部構造を規定するタイヤのベルト幅寸法等が挙げられる。これ以外にも、例えば、トレッド部における材料特性を規定するフィラー分散形状、フィラー体積率等が挙げられる。
制約条件は、目的関数の値を所定の範囲に制約したり、設計変数の値を所定の範囲に制約するための条件である。
また、構造体がタイヤである場合、タイヤの負荷荷重、タイヤの転動速度を初めとする走行条件、タイヤが走行する路面条件、例えば、凹凸形状、摩擦係数等、車両の走行シミュレーションに用いるための車両諸元の情報等が設定される。
【0022】
また、条件設定部20に、設計変数のパラメータと特性値のパラメータとの間の非線形応答関係を定めるための情報が設定される。この非線形応答関係には、例えば、FEM等の数値シミュレーション、理論式および近似式等が含まれる。
条件設定部20では、非線形応答関係により生成するモデル、そのモデルの境界条件、FEM等の数値シミュレーションする場合には、そのシミュレーション条件、シミュレーションにおける制約条件を設定する。更には、パレート解を得るための最適化条件、例えば、パレート解探索のための条件等を設定する。
【0023】
パレート解探索のための条件は、パレート解を探索するための手法、パレート解探索における各種条件である。本実施形態では、例えば、パレート解を探索するための手法として、遺伝的アルゴリズムを用いることができる。一般に、目的関数の増大と共に、遺伝的アルゴリズムの探査能力が低下することが知られている。それを解決する方法の一つが、個体数を増加させる方法である。一方、個体数を増加させ、パレート解を探査すると、多くのパレート解が算出される。したがって、多くの特性値データと設計パラメータとの因果関係を視認性良く表示する方法が設計探査の一つの課題となっているが、本発明ではこれを解決することができる。
これ以外に、条件設定部20で、設計変数の定義域を設定する。また、条件設定部20では後述するようにパレート解を縮約する際に用いられる離散値を設定する。
【0024】
モデル生成部22は、設定された非線形応答関係に基づいて、各種の計算モデルを作成するものである。非線形応答関係は、上述のようにFEM等の数値シミュレーションが含まれており、この場合、モデル生成部22で、設計変数を表わす設計パラメータ、特性値を表わす特性値パラメータに応じたメッシュモデルが生成される。また、理論式および近似式等の場合にも、設計パラメータ、特性値パラメータに応じた理論式および近似式等が作成される。なお、構造体がタイヤの場合には、タイヤモデルが作成される。演算部24でタイヤモデルを用いてシミュレーション演算がなされる。
【0025】
なお、モデル生成部22で作成されるタイヤモデルは、条件設定部20で設定された各種類の設計パラメータを用いて作成されるが、タイヤモデルの作成には公知の作成方法を用いることができる。なお、タイヤモデルは、少なくとも、このタイヤモデルを転動させる対象である路面モデルも併せて生成する。また、タイヤが装着されるリム、ホイール、およびタイヤ回転軸を再現するものをタイヤモデルとしてもよい。また、必要に応じて、タイヤが装着される車両を再現するモデルをタイヤモデルに組み込んでもよい。この際、タイヤモデル、リムモデル、ホイールモデル、およびタイヤ回転軸モデルを、予め設定された境界条件に基づいて一体化したモデルを作成することもできる。
【0026】
これら各モデルは数値計算可能な離散化モデルであればよく、例えば、公知の有限要素法(FEM)に用いるための有限要素モデル等であればよい。なお、タイヤモデルを用いて、例えば、タイヤウエット性能を初めとするタイヤ性能を最適化するタイヤ設計案を求める場合など、路面モデルとタイヤモデルの他に、路面上に存在する介在物を再現するモデルを生成しておけばよい。例えば、介在物モデルとして、路面上の水、雪、泥、砂、砂利、氷等を再現する各種モデルを、数値計算可能な離散化モデルで生成しておけばよい。なお、路面モデルも、表面が平坦な路面を再現するモデルに限らず、必要に応じて、表面に凹凸を有する路面形状を再現するモデルであってもよい。
【0027】
演算部25は、モデル生成部22で作成された各種のモデルを用いて特性値を算出するものである。これにより、設定変数に対する特性値が得られる。この特性値の中に、パレート解が存在する。得られた特性値は、メモリ28に記憶される。
演算部25では、例えば、路面上を転動するタイヤの転動を再現するシミュレーション条件を、モデル生成部22で生成したタイヤモデル、または路面モデル等に与えたときの、タイヤモデルの挙動、またはタイヤモデルに作用する力などの物理量を時系列に求める。演算部25は、例えば、公知の有限要素ソルバーによるサブルーチンを実行することで機能するものである。
また、演算部25では、モデル生成部22で理論式および近似式等を作成した場合には、理論式および近似式等を解き、特性値を算出する。
【0028】
パレート解探索部26は、条件設定部20で設定されたパレート解探索の条件に応じて、演算部25で得られた特性値の中から、パレート解を探索し、パレート解を算出するものである。得られたパレート解は、メモリ28に記憶される。
【0029】
ここで、パレート解は、トレードオフの関係にある複数の目的関数において、他の任意の解よりも優位にあるとはいえないが、より優れた解が他に存在しない解をいう。一般にパレート解は集合として複数個存在する。
パレート解探索部26は、例えば、遺伝的アルゴリズムを用いてパレート解を探索する。
遺伝的アルゴリズムとしては、例えば、解集合を目的関数に沿って複数の領域に分割し、この分割した解集合毎に多目的GAを行うDRMOGA(Divided Range Multi-Objective GA)、NCGA(Neighborhood Cultivation GA),DCMOGA(Distributed Cooperation model of MOGA and SOGA)、NSGA(Non-dominated Sorting GA)、NSGA2(Non-dominated Sorting GA-II)、SPEAII(Strength Pareto Evolutionary Algorithm-II)法等の公知の方法を用いることができる。その際、解集合が解空間に幅広く分布し、精度の高いパレート解の集合を求める必要がある。このため、パレート解探索部26では、例えば、ベクトル評価遺伝的アルゴリズム(Vector Evaluated Generic Algorithms:VEGA)、パレートランキング法、またはトーナメント法を用いた選択が行われる。
【0030】
本発明では、設計変数と特性値との間で定める非線形応答関係、すなわち、設計変数を用いて特性値を求める場合に利用されるものは、FEM等のシミュレーションに限定されるものではなく、上述のように理論式および近似式等を用いることもできる。例えば、シミュレーションモデルを用いた演算ではなく、シミュレーション近似式を用いて目的関数の値を算出してもよい。この場合、実験計画法に基づいて得られる実験結果から設計変数と目的関数との間の近似式、例えば、シミュレーション近似式を用いてパレート解を得ることができる。このシミュレーション近似式としては、多項式またはニューラルネットワーク等により得られる公知の非線形関数を用いることができる。
【0031】
表示制御部30は、得られたパレート解について、設計変数のパラメータの値に応じて、設計変数のパラメータの値を表すシンボルの色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変えるものである。表示形態を変更したパレート解の情報はメモリ28に記憶される。得られたパレート解は、表示制御部30で表示形態が変えられて表示部16で表示される。また、表示制御部30では、設計変数のパラメータの値毎に、そのパレート解を結んだ線を表示させる機能も有する。
【0032】
次に、本実施形態の表示方法について説明する。
本実施形態の表示方法は、
図1に示す表示処理装置10を用いられるが、表示方法をコンピュータ等のハードウェアおよびソフトウェアを用いて実行することができれば、表示処理装置10に限定されるものではない。
まず、対象となる構造体について設計変数および特性値を設定する。本実施形態では、構造体を、例えば、タイヤとした。なお、タイヤのサイズは195/65R15である。
タイヤに対して、設計変数として、タイヤの形状パラメータを設定する。そして、特性値として、ころがり抵抗、横ばね定数の2つを設定する。本実施形態では、入力がタイヤの形状パラメータであり、出力がころがり抵抗と横ばね定数となる。タイヤの形状パラメータの値により、ころがり抵抗と横ばね定数がどのように変化するかを表示する。タイヤの形状パラメータ、ころがり抵抗と横ばね定数が条件設定部20に設定される。
【0033】
次に、
図2に示すように、設計変数から特性値を求める際に用いる非線形応答を定める(ステップS10)。すなわち、設計変数と特性値との関係を定める。この非線形応答の種類は、例えば、メモリ28に記憶される。具体的には、タイヤの形状パラメータと、ころがり抵抗と横ばね定数との関係を設定する。タイヤの形状パラメータを入力とし、ころがり抵抗または横ばね定数を出力とした場合、設定する関係は、例えば、ころがり抵抗がタイヤの形状パラメータを変数とする二次多項式等の非線形関数を用いて表わされるものである。また、横ばね定数がタイヤの形状パラメータを変数とする二次多項式等の非線形関数を用いて表わされるものである。
【0034】
次に、設計変数の定義域を設定する(ステップS12)。この場合、設計変数のパラメータに対して、上限値と下限値を設定し、下限値〜上限値の間が連続であるとする。例えば、タイヤの形状パラメータであれば、サイズの上限と下限を、下限値〜上限値の間が連続であるとして、設計変数の定義域として設定する。また、タイヤのゴム組成であれば、弾性率の上限と下限を設計変数の定義域として設定する。この設計変数の定義域の設定は、条件設定部20でなされ、例えば、メモリ28に記憶される。本実施形態では、タイヤの形状パラメータについて上限値と下限値を設定する。
【0035】
次に、非線形応答関係に基づいてモデル作成部22でモデル作成を実施し、演算部24にてステップS10で設定した非線形応答関係に基づいて特性値を算出する(ステップS14)。このとき、設定した設計変数の定義域がメモリ28から読み出されて特性値が算出される。特性値の算出結果は、例えば、メモリ28に記憶される。FEM等のシミュレーションであれば、メッシュモデルがモデル作成部22で作成され、演算部24にて、FEM等により入力に対する応答をシミュレーションが実施される。具体的には、タイヤの形状パラメータに対するころがり抵抗と横ばね定数が算出される。
【0036】
次に、パレード解探索部26にて特性値の演算結果に対して、特性値を目的関数とする最適化を実施し、パレート解を得る(ステップS16)。このパレート解の算出には、例えば、遺伝的アルゴリズムが用いられる。得られたパレート解は、メモリ28に記憶される。
【0037】
次に、表示制御部30にて、設計変数の値に応じて、設計変数の値を表すシンボルの色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変える。具体的には、設計変数X1、X2について、例えば、シンボルの種類を◇、+、△、×、□、○とする。なお、シンボルの色、種類および大きさについては、特に限定されるものではない。
そして、
図3(a)に示すように、縦軸に目的関数(特性値)Y1をとり、横軸に目的関数(特性値)Y2をとって設計変数X1の値を表すシンボルの種類(◇、+、△、×、□、○)と色を変えてパレート解を、目的関数空間で散布図として表示部16に示す(ステップS18)。例えば、
図3(a)では、領域Dにあるパレート解の方が好ましい。
なお、
図3(a)において、目的関数(特性値)Y1がタイヤの横ばね定数、目的関数(特性値)Y2がタイヤの転がり抵抗、設計変数X1がタイヤの形状パラメータである。
【0038】
本実施形態では、
図3(a)に示すように、パレート解を設計変数に対して層別化することができる。これにより、設計変数と特性値との関係を認識しやすくなる。設計変数X1の値毎に、パレート解は散布図上での位置が変わることが分かる。このように、タイヤの形状パラメータの変化による特性値の変化を容易に認識することができ、ひいては設計方針の指標を得ることができる。
【0039】
なお、
図3(a)以外にも、設計変数X1のタイヤの形状パラメータに代えて、他のタイヤの形状パラメータである設計変数X2と、特性値としてころがり抵抗(目的関数(特性値)Y2)と横ばね定数(目的関数(特性値)Y1)を用いて、上述のステップS10〜ステップS18を実施することにより、
図3(b)に示すようにパレート解を表示することができる。
図3(b)に示すパレート解も、設計変数X2の値を表すシンボルの種類(◇、+、△、×、□、○)と色を変えて目的関数空間で散布図として表示部16に示すこともできる。
【0040】
本発明において、表示方法は、
図3(a)、(b)に限定されるものに限定されるものではない。例えば、設計変数の値のうち、ある特定の値のものだけを、シンボルの色、種類および大きさのうち、少なくとも1つを変えて表示してもよい。この場合、
図4(a)、(b)に示す散布図が表示部16に表示される。表示方法としては、得られたパレート解に対して、設計変数の値のうち、特定の値のものの色と大きさを変える。そして、表示部16に表示する。これにより、設計変数の値のうち、特定の値のものが、散布図上のどこにあるかを明確に認識させることができる。
なお、
図4(a)では、
図3(a)のシンボル○を特定の値のものとして表示形態を●に変え、
図4(b)では、
図3(b)のシンボル◇を特定の値のものとして表示形態を●に変えて表示したものである。
【0041】
次に、本発明の表示方法の第2の例について説明する。
図5は、本発明の実施形態の表示方法の第2の例を工程順に示すフローチャートである。
図6は、(a)は、設計変数の定義域を説明する模式図であり、(b)は、設計変数の定義域の離散値の一例を説明する模式図であり、(c)は、設計変数の定義域の離散値の他の例を説明する模式図である。
図7は、(a)は、タイヤの設計変数とタイヤの特性値とについて得られたパレート解を示す散布図であり、(b)は、
図7(a)に示すパレート解を設計変数の定義域の離散値に応じて縮約した例を示す散布図である。
図7(a)は、
図3(a)と同じである。
図8は、(a)は、タイヤの設計変数とタイヤの特性値とについて得られたパレート解を示す散布図であり、(b)は、
図8(a)に示すパレート解を設計変数の定義域の離散値に応じて縮約した例を示す散布図である。
図8(a)は、
図3(b)と同じである。
【0042】
表示方法の第2の例は、
図2に示す表示方法の第1の例に比して、パレート解を縮約した後に、パレート解を表示する点以外は、第1の例と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0043】
第2の例の表示方法では、表示処理装置10において、パレート解探索部26でパレート解を算出した後、このパレート解を演算部24にて、後述する設計変数の離散値に基づいてパレート解を離散的に縮約する。結果としてパレート解が間引かれる。間引かれたパレート解が表示部16に上述の第1の例と同様にして表示される。なお、縮約されたパレート解について表示制御部30で表示形態が変更され、メモリ28に記憶されるとともに、表示部16に表示される。
図5に示すステップS20〜26は、
図2に示すステップS10〜S16と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。第2の例では、ステップS28のパレート解の縮約工程から説明する。
【0044】
ここで、設計変数の定義域を設定する場合、第1の例では、
図6(a)に示すように設計変数の定義域Xiに対して下限値α〜上限値βまでの間を連続として設定する。すなわち、設計変数の定義域は、α≦Xi≦βで連続である。
これに対して、
図6(b)に示すように、定義域α〜βに対して、例えば、等間隔に5つの離散値を設定する。パレート解のうち、この離散値に該当するものを演算部24にて抽出して、パレート解を縮約し、縮約されたパレート解はメモリ28に記憶される。
【0045】
次に、縮約されたパレート解は、表示制御部30で表示形態が変更されてパレート解を表示部16に表示する。なお、パレート解の表示方法は、上述のように
図3、
図4に示すように表示することができる。
図7(a)は、ステップS26で得られたパレート解を示す散布図であり、パレート解を縮約することにより、
図7(b)に示すようなパレート解の散布図が得られる。
これ以外にも、
図8(a)は、ステップS26で得られたパレート解を示す散布図であり、パレート解を縮約することにより、
図8(b)に示すパレート解の分布を示す散布図が得られる。
【0046】
このように、パレート解を離散的に縮約することにより効果的にパレート解のデータ数を軽減することができるため、散布図において目的関数と設計変数との因果関係を見出しやすくなる。なお、離散値は、等間隔にすると変化率を見積もりやすくなるため更に好ましい。
なお、離散値については、
図6(b)に示す離散値に限定されるものではなく、
図6(c)に示すように、各離散値が1つの値ではなく、各離散値が所定の範囲tを有するものとしてもよい。
【0047】
表示方法の第2の例は、パレート解を算出した後に縮約したが、これに限定されるものではなく、縮約したパレート解を算出するようにしてもよい。例えば、表示方法の第1の例において、設計変数の定義域を設定する際(ステップS12)、
図6(b)、(c)に示す離散値として、特性値の算出(ステップS14)、パレート解の算出(ステップS16)、およびパレート解の表示(ステップS18)をすることができる。この場合、第2の例の同様の
図7(b)に示すようなパレート解の散布図を得ることができる。
【0048】
さらには、表示方法として、設計変数毎に、特性がよいとされる領域にあるパレート解のうち、最も特性がよいパレート解のシンボルをそれぞれ線で結んで表示することもできる。
図9(a)は、タイヤの設計変数とタイヤの特性値とについて得られたパレート解を示す散布図であり、(b)は、
図9(a)に示すパレート解にパレートフロントを明確にした例を示す散布図である。
図9(a)は、
図8(b)と同じであり、特性が良好な領域は領域Dである。
図9(a)において、設計変数毎のパレート解のうち、領域Dに最も近いシンボルをそれぞれ結ぶことにより、
図9(b)に示すように、ラインE
1〜E
4が得られる。このラインE
1〜E
4は、設計変数の値毎のパレートフロントを示すものである。これにより、設計変数の値の変化によるパレートフロントの変化を明確にすることができる。
【0049】
なお、パレート解探索部26で得られたパレート解について、パレートフロントを求める。パレートフロントを求めるための公知の方法を用いることができる。パレートフロントの情報をメモリ28に記憶させる。
次に、表示制御部30において、パレートフロントの情報をメモリ28から読み出し、この情報に基づいて、設計変数の値毎に、パレートフロントにあるパレート解を表わすシンボルを結ぶ線の情報を作成する。その線の情報をメモリ28に記憶させる。
表示制御部30により表示部16に、パレート解とともに線の情報に基づいて、ラインE
1〜E
4を表示させる。
【0050】
また、パレート解探索部26で得られたパレート解について、設計変数の値毎に、
図9(a)に示すように目的関数(特性値)Y2の各値において目的関数(特性値)Y1が最も大きな値のパレート解を抽出する。抽出したパレート解の情報をメモリ28に記憶させる。
そして、表示制御部30において、抽出したパレート解を表わすシンボルを結ぶ線の情報を作成する。その線の情報をメモリ28に記憶させる。
そして、表示制御部30により、表示部16に、パレート解とともに線の情報に基づいて、ラインE
1〜E
4を表示させる。このようにしても
図9(b)に示すように、パレートフロントを示すラインE
1〜E
4を得ることができる。
【0051】
次に、表示方法の第3の例について説明する。
図10は、本発明の実施形態の表示方法の第3の例を工程順に示すフローチャートである。
図11(a)は、タイヤの設計変数とタイヤの特性値とについて得られたパレート解を示す散布図であり、(b)は、
図11(a)に示すパレート解にパレート解探索過程の特性値データを追加した例を示す散布図である。
【0052】
表示方法の第3の例は、
図2に示す表示方法の第1の例に比して、表示データ数が所定の数未満であるとき、パレート解探索過程で得られる特性値を目的関数データとして保持おき、この目的関数データをパレート解とともに表示する点以外は、第1の例と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0053】
第3の例の表示方法において、
図10に示すステップS30〜36は、
図2に示すステップS10〜S16と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。第3の例では、ステップS38のパレート解の数の判定工程から説明する。
演算部24で特性値を算出した後、メモリ28に記憶させる。その後、パレート解探索部26でパレート解を算出した後、パレート解探索部26からパレート解が移動されてメモリ28に記憶されるとともに、パレート解探索部26でパレート解の数をカウントする。このパレート解の数が制御部32に出力され、制御部32において表示データ数が所定の数を超えていれば(ステップS38)、パレート解が表示部16表示される(ステップS40)。この場合、例えば、
図11(a)に示すように表示される。なお、表示方法としては、上述の表示方法を用いることができる。
【0054】
一方、ステップS38において、表示データ数が所定の数未満であるとき、メモリ28からステップS34で算出された特性値のうち、パレート解ではない特性値が目的関数データとして、パレート解とともに呼び出され、パレート解に目的関数データが追加される(ステップS42)。
そして、表示部16にパレート解とともに特性値が目的関数データとして表示される。この場合、例えば、
図11(b)に示すように表示される。なお、表示方法としては、上述の表示方法を用いることができる。
このように、パレート解とパレート解以外のもの、例えば、パレート解検索過程でパレート解ではなかった特性値を目的関数データとして同時に表示することにより、パレート解とパレート解近傍のデータとの関係を可視化することができる。
図11(b)に示す表示方法は、特に、特性値が2つの場合に有効である。
【0055】
次に、表示方法の第4の例について説明する。
図12は、本発明の実施形態の表示方法の第4の例を工程順に示すフローチャートである。
図13(a)は、タイヤの設計変数とタイヤの特性値とについて得られたパレート解を示す散布図であり、(b)は、
図13(a)に示すパレート解に、他の特性値を考慮したパレート解を追加した例を示す散布図である。
表示方法の第4の例は、
図2に示す表示方法の第1の例に比して、表示データ数が所定の数未満であるとき、特性値の種類を追加したパレート解を別途算出し、この別途算出したパレート解(以下、拡張パレート解という)と、既に算出されたパレート解をまとめて表示する点以外は、第1の例と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。
【0056】
第4の例の表示方法において、
図12に示すステップS30〜36は、
図2に示すステップS10〜S16と同様の工程であるため、その詳細な説明は省略する。第3の例では、ステップS38のパレート解の数の判定工程から説明する。
演算部24で特性値を算出した後、メモリ28に記憶させる。その後、パレート解探索部26でパレート解を算出した後、パレート解探索部26からパレート解が移動されてメモリ28に記憶されるとともに、パレート解探索部26でパレート解の数をカウントする。このパレート解の数が制御部32に出力され、制御部32において表示データ数が所定の数を超えていれば(ステップS38)、パレート解が表示部16表示される(ステップS40)。この場合、例えば、
図13(a)に示すように表示される。なお、表示方法としては、上述の表示方法を用いることができる。
【0057】
一方、ステップS38において、表示データ数が所定の数未満であるとき、条件設定部20に設定されている特性値として定められたパラメータを追加し、設計変数と追加された特性値との非線形応答関係、おおび設計変数の定義域を定める。そして、モデル生成部22でモデル生成を行い、演算部24でパラメータ数の異なる特性値を算出する。そして、パレート解探索部26で拡張パレート解を算出し、メモリ28に記憶させる。具体的には、現時点で設定された特性値、例えば、ころがり抵抗と横バネ定数に、更に別の特性値、例えば、トレッド部の摩耗、ロードノイズを加えて、タイヤの形状パラメータ(設計変数)とこれらの4つの特性値との非線形応答関係およびタイヤの形状パラメータの定義域を定める。そして、モデル生成部22にてモデル生成がされ、演算部24にて4つの特性値が算出される。そして、パレート解探索部26で4つの特性値を目的関数とする最適化を実施し、拡張パレート解を算出する(ステップS44)。拡張パレート解をメモリ28に記憶させる。そして、ステップS38において、表示データ数が所定の数を超えるまで、繰り返し拡張パレート解の算出がなされる(ステップS44)。なお、追加する特性値として定められたパラメータ値は、特に限定されるものではない。
【0058】
ステップS38において、表示データ数が所定の数を超えると、パレート解とともに拡張パレート解がメモリ28から呼び出され、表示部16にパレート解とともに拡張パレート解を表示させる。この場合、例えば、
図13(b)に示すように表示される。なお、表示方法としては、上述の表示方法を用いることができる。
このように、パレート解と、特性値の数が異なる拡張パレート解を同時に表示することにより、パレート解とパレート解近傍のデータとの関係を可視化することができる。特に、特性値が2つの場合に有効である。
【0059】
以上のように、タイヤの特性値とタイヤの形状パラメータ(設計変数)との関係を可視化することで、その因果関係を理解でき、得られる設計情報を設計へ生かすことができる。特に設計の初期段階の方向性を定める際にこの情報を用いることで、設計終盤の詳細設計においても大きく修正することのない商品開発を進めることができる。それにより開発コストを削減できるとともに商品のリードタイムを短縮することができる。
本実施形態では、タイヤを例にして説明したが、本発明の表示方法は、これに限定されるものではない。例えば、ゴム製品、家電製品、自動車、および飛行機等の構造設計にも適用することができる。この場合でも、設計変数と特性値(目的関数)との因果関係を理解でき、得られる設計情報を設計へ生かすことができる。更には上述のように、商品開発を進めることができ、開発コストを削減できるとともに開発のリードタイムを短縮することができる。
【0060】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のデータの表示方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。