(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248410
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】波長変換素子の温度制御装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
G02F1/37
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-94154(P2013-94154)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-215528(P2014-215528A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】井上 和哉
(72)【発明者】
【氏名】徳田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】久光 守
(72)【発明者】
【氏名】門倉 一智
【審査官】
右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−048165(JP,A)
【文献】
特開2001−242499(JP,A)
【文献】
特開2005−128184(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/050802(WO,A1)
【文献】
特開2004−053781(JP,A)
【文献】
特開2003−270467(JP,A)
【文献】
特開2011−113073(JP,A)
【文献】
特開2013−050640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 − 1/125
G02F 1/21 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波を高調波に変換するとともに、前記基本波が入射される入射面及び前記高調波が出射される出射面とを有する波長変換素子と、
前記波長変換素子を保持し且つ熱伝導が良好な平板状の保持部材と、
前記保持部材を加熱冷却することにより前記波長変換素子の温度を調整する温度調整素子とを備え、
前記波長変換素子は、前記保持部材と前記波長変換素子とが接触する接触面の熱抵抗が前記入射面から前記出射面までの少なくとも一部で変動分布するように構成されていることを特徴とする波長変換素子の温度制御装置。
【請求項2】
前記波長変換素子は、前記出射面の熱抵抗に対して前記入射面の熱抵抗が大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の波長変換素子の温度制御装置。
【請求項3】
前記保持部材と前記波長変換素子との少なくとも一方には、前記接触面の内の前記入射面側に凹凸が形成されていることを特徴とする請求項2記載の波長変換素子の温度制御装置。
【請求項4】
前記波長変換素子は、、前記入射面側の熱抵抗と前記出射面側の熱抵抗とが連続的に変化するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の波長変換素子の温度制御装置。
【請求項5】
前記波長変換素子は、前記波長変換素子と接触する接触面の入射側から出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の波長変換素子の温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子の温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の波長変換素子としては、所望の波長のレーザ光を得るために、強誘電体結晶基板内部で分極方向が周期的に反転する周期分極反転構造を形成したものが用いられている。この波長変換素子は、入射する基本波のレーザ光と擬似位相整合することによって高調波のレーザ光を出力する。
【0003】
波長変換素子を使用する場合には、位相整合条件を満たすように波長変換素子の温度を位相整合温度(一定温度)に保持する必要がある。一般的には、ペルチェ素子を熱容量が大きく且つ熱伝導も良好な金属平板と接触させ、金属平板を介してペルチェ素子により波長変換素子の温度を制御している。
【0004】
波長変換素子内部の温度T(z)は、波長変換素子内部での発熱量をQ(z)、波長変換素子の熱抵抗をRLT、金属平板の熱抵抗をRM、金属平板と波長変換素子間の熱抵抗をRI、金属平板のペルチェ素子と接触している面の温度をTBとすると、
T(z)=Q(z)×(RLT+RM+RI)+TBで表される。
【0005】
波長変換素子を低出力で使用する場合のように、波長変換素子内部での発熱量Q(z)が小さい場合には、図
5(a)に示すように、波長変換素子2の温度T(z)を均一に保持でき、位相整合温度と略同じとすることできる。即ち、低出力の波長変換では、基本波や第2高調波の吸収量が小さく内部発熱が小さいため、波長変換素子2の温度を均一に保つことができる。
【0006】
しかし、波長変換素子2を高出力で使用する場合には、発熱量Q(z)がZ方向に大きな分布を持ち、波長変換素子2の温度が不均一になる。一般に、第2高調波の吸収量が大きいため、入射側よりも出射側の発熱が大きくなる。具体的には、光が波長変換素子2の入射側から出射側に進むにつれて第2高調波の出力が増加するので、入射側に比較して出射側の発熱が大きくなる。このため、図
6(a)に示すように、入射側よりも出射側の波長変換素子2の温度が高くなる。
【0007】
この場合、図
6(a)に示すように位相整合温度と波長変換素子2の温度とは乖離しており、不均一な温度分布により位相整合条件を満足できなくなり、第2高調波出力が飽和したり、第2高調波を安定して出力できない。
【0008】
また、波長変換素子2と金属平板1Aとが一様に接触している場合(RIがZ方向に分布を持たない場合)、波長変換素子2の発熱量Q(z)に応じた不均一な温度分布が発生する。この不均一な温度分布を抑制する方法として、金属平板1Aと波長変換素子2との間の熱抵抗RIを接触面の全体に亙り、可能な限り小さくする方法もある。これによれば、波長変換素子2から金属平板1Aへの吸熱が大きくなり、不均一な温度分布も多少抑制されるが、不均一な温度分布の抑制効果は十分ではなかった。
【0009】
そこで、発熱が大きく温度が高い出射側と、発熱が小さく温度が低い入射側との温度差をより小さくするためには、温度の低い入射側の吸熱に対して、温度の高い出射側の吸熱を良くすれば良い。これを実現するために、例えば、図
7(b)に示すように、金属平板1Aとペルチェ素子3aで構成される入射側用の温度調整装置と、金属平板1Bとペルチェ素子3bで構成される出射側の温度調整装置とを設けた装置が知られている(特許文献1)。
【0010】
これによれば、出射側のペルチェ素子3bの温度を、入射側のペルチェ素子3aの温度よりも低くすることにより、入射側に対して出射側の吸熱が大きくなるので、波長変換素子2の温度分布が抑制されて、波長変換素子2の温度が位相整合温度に近づくようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開2008−050802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載された装置では、複数の温度調整装置を設けなれればならず、装置の構成が複雑化していた。
【0013】
本発明の課題は、高出力の波長変換素子において第2高調波出力の飽和を抑制し第2高調波出力を安定して出力でき、簡単な構成からなる波長変換素子の温度制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る温度制御装置は、上記課題を解決するために、基本波を高調波に変換するとともに、前記基本波が入射される入射面及び前記高調波が出射される出射面とを有する波長変換素子と、前記波長変換素子を保持し且つ熱伝導が良好な
平板状の保持部材と、前記保持部材を加熱冷却することにより前記波長変換素子の温度を調整する温度調整素子とを備え、前記保持部材と前記波長変換素子との少なくとも一方は、前記保持部材と前記波長変換素子とが接触する接触面の熱抵抗が前記入射面から前記出射面までの少なくとも一部で変動分布するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
平板状の保持部材と波長変換素子との少なくとも一方は、保持部材と波長変換素子とが接触する接触面の熱抵抗が入射面から出射面までの少なくとも一部で変動分布するように構成されているので、高出力の波長変換素子において、波長変換素子内部に不均一な発熱がある場合でも、不均一な温度分布を抑制でき、第2高調波出力の飽和を抑制し第2高調波出力を安定して出力でき、簡単な構成からなる波長変換素子の温度制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図2】実施例2の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図3】実施例3の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図4】実施例4の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図5】従来例1の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図6】従来例2の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【
図7】従来例3の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の波長変換素子の温度制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明は、1つの温度調整装置で、波長変換素子の高出力時に生ずる波長変換素子の温度分布を抑制するために、金属平板と波長変換素子とが接触する面の熱抵抗を入射側と出射側とで変化分布させることを特徴とする。この方法として、本実施例では、以下の3つの方法を採用している。
【0019】
第1の手法は、金属平板の表面性状を変化させることにより、金属平板と波長変換素子との接触の熱抵抗を変化させる。第2の手法は、金属平板の材質を変化させる。第3の手法は、波長変換素子の金属平板と接触する面の表面性状を変化させる。
【実施例1】
【0020】
まず、第1の手法の具体例を説明する。
図1は、実施例1の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。
図1(b)に示す波長変換素子の温度制御装置において、波長変換素子2は、基本波を高調波に変換するとともに、基本波が入射される入射面及び高調波が出射される出射面とを有する。
【0021】
金属平板(保持部材)1は、波長変換素子2を保持し且つ熱伝導が良好であり、金属平板1と波長変換素子2とが接触する接触面の熱抵抗が入射面から出射面まで変動分布するように構成されている。この例では、金属平板(保持部材)1には、波長変換素子2と接触する接触面の内の入射側Iから略中央部Mに亙って、凹凸からなる一定長さの固定長溝部4が形成されている。
【0022】
ペルチェ素子(温度調整素子)3は、金属平板1を加熱冷却することにより波長変換素子2の温度を調整する。
【0023】
このように、
図1に示す実施例1の波長変換素子の温度制御装置によれば、金属平板1には、波長変換素子2と接触する接触面の内の入射側Iから略中央部Mに亙って固定長溝部4が形成されているので、この固定長溝部4により熱抵抗が大きくなる。
【0024】
このため、
図1(a)に示すように、入射側Iから略中央部Mまでは、波長変換素子2の温度は急激に上昇する。一方、略中央部Mから出射側までは、波長変換素子2の温度は緩やかに上昇する。このため、
図1(a)に示すように、波長変換素子2の温度は位相整合温度に近づくようになるので、位相整合条件を満たすことができる。
【0025】
即ち、高出力の波長変換素子2において、波長変換素子内部に不均一な発熱がある場合でも、不均一な温度分布を抑制でき、第2高調波出力の飽和を抑制し第2高調波出力を安定して出力できる。また、
図8に示す複数の温度調整装置を用いることなく、1つの金属平板1を用いているので、簡単な構成からなる波長変換素子の温度制御装置を提供できる。
【0026】
なお、熱抵抗を入射側Iと出射側とで変える方法としては、実施例1で説明した入射側に凹凸を形成する方法以外の方法を用いても良い。例えば、出射側の面よりも入射側の面を粗くする。あるいは、入射側よりも出射側の接触圧力を大きくする。あるいは、金属平板の出射側表面に金属膜、導電膜のように熱伝達をより高める膜を形成する。金属膜や導電膜としては、一様な膜を形成しても良く、例えば、ドット状、帯状になるようにパターニングをしても良い。あるいは、熱伝達を高める膜と波長変換素子との接する面積を入射側から出射側に進むに連れて大きくする。あるいは、金属平板の入射側表面に熱伝達が低くなるように膜を形成する。
【実施例2】
【0027】
図2は、実施例2の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。実施例2では、第1の手法を採用している。
図2(b)に示す実施例2の波長変換素子の温度制御装置において、金属平板1aは、入射面側の熱抵抗と出射面側の熱抵抗とが連続的に変化するように構成されている。この例では、金属平板1aには、波長変換素子2と接触する接触面の入射側Iから出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部が形成されている。
【0028】
このように、
図2に示す実施例2の波長変換素子の温度制御装置によれば、金属平板1aには、波長変換素子2と接触する接触面の入射側Iから出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部が形成されているので、熱抵抗も入射側Iから出射面側に亙って連続的に変化していく。
【0029】
このため、
図2(a)に示すように、波長変換素子の温度が均一で滑らかになる。波長変換素子の温度が位相整合温度と略同一となるので、実施例1の効果と同様な効果が得られ
る。
【実施例4】
【0035】
図
3は、実施例
3の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。実施例
3では、第
2の手法を採用している。
図1に示す実施例1では、金属平板1に、波長変換素子2と接触する接触面の内の入射側Iから略中央部Mに亙って、凹凸からなる一定長さの固定長溝部4を形成したが、図
3に示す実施例4では、波長変換素子2aに、金属平板1と接触する接触面の内の入射側Iから略中央部Mに亙って、凹凸からなる一定長さの固定長溝部4aを形成したことを特徴とする。
【0036】
このように波長変換素子2aに、金属平板1と接触する接触面の内の入射側Iから略中央部Mに亙って固定長溝部4aを形成しても、実施例1と同様に動作し同様な効果が得られる。
【0037】
なお、熱抵抗を入射側Iと出射側とで変える方法としては、実施例1で説明した入射側に凹凸を形成する方法以外の方法を用いても良い。例えば、出射側の面よも入射側の面を粗くする。あるいは、入射側よりも出射側の接触圧力を大きくする。あるいは、波長変換素子の出射側表面に金属膜、導電膜のように熱伝達をより高める膜を形成する。金属膜や導電膜としては、一様な膜を形成しても良く、例えば、ドット状、帯状になるようにパターニングをしても良い。あるいは、熱伝達を高める膜と波長変換素子との接する面積を入射側から出射側に進むに連れて大きくする。あるいは、波長変換素子の入射側表面に熱伝達が低くなるように膜を形成する。
(実施例
4)
【実施例5】
【0038】
図
4は、実施例
4の波長変換素子の温度制御装置を示す図である。実施例
4では、第3の手法を採用している。
図2に示す実施例2では、金属平板1aに、波長変換素子2と接触する接触面の入射側Iから出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部を形成したが、図
4に示す実施例
4では、波長変換素子2bに、金属平板1と接触する接触面の入射側Iから出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部を形成したことを特徴とする。
【0039】
このように波長変換素子2bに、金属平板1と接触する接触面の入射側Iから出射面側に亙って溝の幅が徐々に狭くなっていく凹凸部を形成しても、実施例2と同様に動作し同様な効果が得られる。
【0040】
なお、本発明は、上述した実施例1乃至実施例
4の波長変換素子の温度制御装置に限定されるものではない。即ち、金属平板1と波長変換素子2との少なくとも一方が、金属平板1と波長変換素子2とが接触する接触面の熱抵抗が入射面から出射面までの少なくとも一部で変動分布するように構成されていれば、上述した実施例の効果と同様な効果が得られる。
【0041】
また、実施例1乃至実施例
4の波長変換素子の温度制御装置のいずれか2つ以上の波長変換素子の温度制御装置を組み合わせて用いても良い。このようすれば、さらにその効果が大となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る波長変換素子の温度制御装置は、ガス濃度分析装置、固定レーザ装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1,1a,10 金属平板
2,2a,2b 波長変換素子
3 ペルチェ素子
4,4a 固定長溝部
5,5a 可変長溝部