(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記津波判断部は、算出された前記水流の速度および方向のいずれか一方が、前記潮汐情報から予測される水流と異なる場合、津波が発生したと判断する、請求項1に記載の津波警戒装置。
前記接近検出部が、前記水流センサが前記水門を通過したことを検出した場合、前記警戒制御部は、前記水門の上流にある水門を少なくとも一つ以上閉鎖する、請求項1に記載の津波警戒装置。
前記接近検出部は、前記水流センサからの無線信号がアンテナにより受信されたか否かに基づいて、前記水流センサの水門への接近を検出する、請求項4または5に記載の津波警戒装置。
前記接近検出部は、前記水流センサより前記水流センサの位置情報を取得し、前記位置情報から、前記水流センサの前記水門への接近を検出する、請求項4または5に記載の津波警戒装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<1.第1の実施形態>
[1.1.第1の実施形態に係る津波警戒装置の概略]
まず、
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置の概略について説明を行う。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1の概略を説明する説明図である。
【0025】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1は、海洋および河川に設置された少なくとも一つ以上の水流センサ3からの信号を受信する。
【0026】
津波警戒装置1は、水流センサ3より取得した情報に基づいて水流の状態を算出し、該水流の状態が通常発生し得ない水流の状態であった場合、津波を検知したとして警戒処理を行う。具体的には、津波警戒装置1は、水流センサ3から取得した情報により算出された水流の方向および速度と、潮汐情報から予測される通常の水流の方向および速度とを比較し、少なくともいずれか一方が異なる場合、津波発生と判断する。さらに津波警戒装置1は、津波発生と判断した場合、津波に対する警戒処理として、例えば、津波警報の発令、避難の呼びかけ、水門の閉鎖等を行う。
【0027】
水流センサ3は、海洋および河川に設置され、設置場所の水流の状態を算出するための情報を津波警戒装置1へ送信する。例えば、水流センサ3は、ロッド等で海底および岸壁に固定されていない浮遊式の水流センサである。水流センサ3は、例えば、GPS(Global Positioning System)により、該水流センサ3の位置情報を取得し、該位置情報を水流センサ3の識別IDと共に津波警戒装置1に送信する。また、水流センサ3は、所定のタイミング(例えば、1〜10秒間隔など)で繰り返し該水流センサ3の位置情報および識別IDを津波警戒装置1へ送信する。よって、津波警戒装置1は、水流センサ3の位置情報から該水流センサ3の単位時間当たりの移動方向および移動量を算出することにより、水流の方向および速度を算出することができる。
【0028】
なお、以下では、水流センサ3は、上記で説明した固定されていない浮遊式の水流センサとして説明を行う。しかしながら、本発明は係る例示に限定されない。例えば、水流センサ3は、ロッド等で海底および岸壁に固定された浮遊式の水流センサであってもよく、また海底等に設置された固定式の水流センサであってもよい。また、水流センサ3がロッド等で海底および岸壁に固定された浮遊式の水流センサまたは固定式の水流センサである場合、水流センサ3は、水流の方向および速度を測定し、該水流の方向および速度を水流センサ3の識別IDと共に津波警戒装置1に送信してもよい。ここで、係る水流センサ3が水流の方向および速度を測定する方法については、公知の様々な方法を用いることができる。
【0029】
また、
図1においては、水流センサ3は、河口および海洋に設置されているが、本発明の第1の実施形態は、上記の例示に限定されない。例えば、水流センサ3は、河川の中流に設置されていてもよい。しかしながら、海洋で発生した津波の前兆を早期に検知し、かつ津波警戒装置1と迅速に通信を行うためには、水流センサ3は、河口および海岸付近に設置されることがより好ましい。
【0030】
さらに、水流センサ3は、より高精度で津波を検知するために、複数個設置されていることが好ましい。津波は、風や船舶の航行で発生する波浪と異なり、海底地盤の上下による海水全体の動きであるため、津波が発生した地域付近の水流は一斉に同様の方向および速度となる。したがって、水流センサ3を複数個設置することにより、各水流センサ3を設置したポイントの水流が同様の方向および速度となっているかを比較することができるため、より精度の高い津波検知を行うことができる。
【0031】
以上、
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1の概略について説明を行った。本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1は、水流センサ3から取得した情報により算出された水流の状態と、潮汐情報から予測される水流の状態とを比較する。したがって、津波警戒装置1は、通常発生し得ない異常な水流の状態を早期に検知することができるため、前兆である異常な水流の段階で津波を早期に高精度で検知することが可能である。
【0032】
[1.2.第1の実施形態に係る津波警戒装置の内部構成]
続いて、
図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1および水流センサ3の内部構成について具体的に説明を行う。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1および水流センサ3の内部構成を示したブロック図である。
【0033】
(1.2.1.水流センサの内部構成)
まず、水流センサ3の内部構成について説明を行う。
図2に示すように水流センサ3は、GPS信号受信部300と、センサ制御部310と、センサ通信部320と、を備える。
【0034】
GPS信号受信部300は、複数のGPS衛星から電波を受信し、水流センサ3の位置情報を算出する。具体的には、GPS信号受信部300は、複数のGPS衛星から電波を受信し、それぞれのGPS衛星との距離を算出することで水流センサ3の位置情報を決定する。また、GPS信号受信部300は、位置情報を補正して精度を向上させるため、例えば、正確な位置座標が判明している固定局からの電波信号をさらに受信するディファレンシャルGPS(Differential GPS)を行ってもよい。
【0035】
センサ制御部310は、GPS信号受信部300およびセンサ通信部320を制御することで水流センサ3の全体動作を制御する。具体的には、センサ制御部310は、GPS信号受信部300が算出した水流センサ3の位置情報に、該水流センサ3を識別する識別IDを付与して、センサ通信部320を介して津波警戒装置1へ送信する。ここで、センサ制御部310は、水流の状態変化を把握するために好ましい所定のタイミング(例えば、1〜10秒間隔)で繰り返し該水流センサ3の位置情報および識別IDを津波警戒装置1へ送信する。また、センサ制御部310は、上記の位置情報を送信する信号以外の他の信号をセンサ通信部320から送信してもよい。なお、センサ制御部310は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等であってもよい。
【0036】
センサ通信部320は、津波警戒装置1へ信号を送信する。例えば、センサ通信部320は、津波警戒装置1へ無線アドホックネットワークによるマルチホップ通信を行い、無線信号を送信してもよい。また、センサ通信部320が有するアンテナの形状等は、公知の様々な技術を用いることができる。
【0037】
(1.2.2.津波警戒装置の内部構成)
次に、津波警戒装置1の内部構成について説明を行う。
図2に示すように津波警戒装置1は、装置通信部100と、水流状態算出部110と、潮汐情報記憶部120と、津波判断部130と、警戒制御部140と、を備える。
【0038】
装置通信部100は、水流センサ3からの信号を受信する。例えば、装置通信部100は、水流センサ3からの無線信号を受信するアンテナである。装置通信部100は、水流センサ3のセンサ通信部320から無線信号を受信できれば、いかなるアンテナの形状であってもよい。
【0039】
水流状態算出部110は、水流センサ3から取得した情報に基づいて、水流の状態を算出する。具体的には、水流状態算出部110は、水流センサ3から該水流センサ3の位置情報および識別IDを取得し、位置情報の変動量から水流センサ3の単位時間当たりの移動方向および移動量を算出する。さらに、水流状態算出部110は、水流センサ3の単位時間当たりの移動方向および移動量から、該水流センサ3が存在する位置における水流の方向および速度を算出する。ここで、水流センサ3が複数存在する場合、水流状態算出部110は、水流センサ3のそれぞれについて、該水流センサ3が存在する位置における水流の方向および速度の算出を行う。
【0040】
なお、水流センサ3がロッド等で海底および岸壁に固定され、水流の方向および速度を測定可能な水流センサである場合、水流状態算出部110は、該水流センサ3の測定結果をそのまま該水流センサ3が設置された地点の水流の方向および速度としてもよい。
【0041】
潮汐情報記憶部120は、水流センサ3が設置された河口および海洋の潮汐情報を記憶する記憶装置である。具体的には、潮汐情報記憶部120は、水流センサ3が設置された河口および海洋の潮汐による水位の変動予測を、各日時における水位、および水位の変動量として記憶する。潮汐情報記憶部120は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等のデータ格納用の記憶装置などによって実現されてもよい。
【0042】
津波判断部130は、水流状態算出部110により算出された水流状態、および潮汐情報記憶部120が記憶する潮汐情報に基づいて、津波が発生したか否かを判断する。具体的には、まず、津波判断部130は、水流状態算出部110により算出された水流状態を取得する。次に、水流状態算出部110により算出された水流状態と同じ時刻における通常の水流を潮汐情報記憶部120が記憶する潮汐情報に基づいて予測する。さらに、津波判断部130は、水流状態算出部110により算出された水流状態と、潮汐情報から予測される通常の水流とを比較する。ここで、算出された水流状態の方向および速度が、所定の時間幅で潮汐情報から予測される通常の水流の方向および速度と少なくともいずれか一方が異なる場合、津波判断部130は、津波が発生したと判断する。
【0043】
ここで、潮汐情報から予測される通常の水流の情報は、潮汐情報の各日時における水位情報とともに、あらかじめ速度等を記憶しておくものとする。あるいは、当該地点において水位毎に流量情報を記憶しておき、予測される水位の変動前と変動後の流量の差分を元に、当該地点に海洋から流れ込む(あるいは流れ出す)水の量を計算し、当該地点の平均的な流速に減算(あるいは加算)することで計算することも可能である。
【0044】
より具体的には、例えば、津波判断部130は、算出された水流状態の方向が潮汐情報から予測される通常の水流の方向と所定の時間幅で異なる場合、津波が発生したと判断してもよい。また、例えば、津波判断部130は、算出された水流状態の水流の速度が潮汐情報から予測される通常の水流の速度と所定の時間幅で異なる場合、津波が発生したと判断してもよい。さらに、例えば、津波判断部130は、所定の時間幅で複数の場所において、潮汐情報から予測される通常の水流に対して、算出された水流状態がすべて一方向を向いていた場合に、津波が発生したと判断してもよい。
【0045】
特に、水流の速度が潮汐情報による予測値より速く、しかも上流方向を向いている場合は津波である可能性が高いと判断してもよい。さらに、係る場合に、合わせて水位が予測値より高いか否かを参照し、水位が予測値より高い場合は津波と判断するようにしてもよい。
【0046】
また、水流の速度が潮汐情報による予測値より速く、また下流方向を向いており、さらに、水位が予測値より低い場合に津波の前兆であると判断してもよい。係る場合、単に増水により流速が速くなっている場合を除外することが可能である。なお、水流の速度や水位の変動の値は、誤差を考慮し所定の幅を持った値としてもよい。
【0047】
警戒制御部140は、津波判断部130の判断に基づいて、警戒処理を制御する。具体的には、警戒制御部140は、津波判断部130により津波発生と判断された場合、警戒処理として、例えば、警報の発令、避難の呼びかけ、および水門の閉鎖等を行い、津波に対する警戒と対策を実行する。なお、警戒制御部140は、接続された外部装置に対して津波への警戒および対策のための警戒処理を行ってもよい。例えば、警戒制御部140は、スピーカ等の音声出力装置に対して警報の発令および避難の呼びかけを指示してもよく、電光掲示板などの表示装置に対して警報の発令および避難の呼びかけを指示してもよい。
【0048】
ここで、上記の水流状態算出部110、津波判断部130および警戒制御部140は、例えば、演算処理装置であるCPU、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)などによって実現されてもよい。
【0049】
[1.3.第1の実施形態に係る津波警戒装置の動作]
以上で本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1の内部構成について説明を行った。以下では、
図3を参照して、上述した本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1が行う動作について説明を行う。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1の動作を説明するフローチャート図である。
【0050】
図3に示すように、まず、装置通信部100は、水流センサ3から水流状態を算出するために必要な情報を取得する(S100)。ここで、水流状態を算出するために必要な情報とは、例えば、水流センサ3の位置情報および識別IDなどである。次に、水流状態算出部110は、水流センサ3より取得した情報から、単位時間当たりの水流センサ3の移動方向および移動量を算出し、該水流センサ3が存在する位置における水流状態を算出する(S110)。続いて、津波判断部130は、潮汐情報記憶部120に記憶された潮汐情報に基づいて予測される通常の水流状態を算出する(S120)。
【0051】
また、津波判断部130は、水流センサ3の情報から算出した水流状態と潮汐情報から予測した通常の水流状態とが異なるか否かを比較する(S130)。ここで、水流センサ3の情報から算出した水流状態と潮汐情報から予測した通常の水流状態とが同じであった場合(S130/No)、津波判断部130は、津波が発生していないと判断する。係る場合、津波警戒装置1は、所定のタイミング(例えば、1〜10秒間隔など)で水流センサ3から発信される水流センサ3の位置情報等を再度取得し、S100以降の動作を繰り返す。
【0052】
一方、水流センサ3の情報から算出した水流状態と潮汐情報から予測した通常の水流状態とが異なった場合(S130/Yes)、津波判断部130は、津波が発生したと判断する(S140)。係る場合、警戒制御部140は、津波判断部130の判断に基づいて、警戒処理を行う(S150)。警戒制御部140が行う警戒処理の具体的内容は、上述したように、例えば、警報の発令、避難の呼びかけ、および水門の閉鎖等である。
【0053】
[1.4.第1の実施形態のまとめ]
以上において、本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1の構成および動作について説明を行った。本発明の第1の実施形態に係る津波警戒装置1によれば、潮汐情報から予測される通常の水流と異なる水流状態を検出することが可能である。例えば、津波警戒装置1は、津波の前兆として発生した異常な速度での海側への水流を検出することにより津波発生を早期に検出することができる。
【0054】
したがって、津波警戒装置1は、津波の前兆である異常な水流状態を検出することができるため、津波を前兆の段階で早期に検知し、警報を発する等の警戒処理を行うことが可能である。
【0055】
<2.第2の実施形態>
[2.1.第2の実施形態に係る津波警戒装置の概略]
次に、
図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置の概略について説明を行う。
図4は、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の概略を説明する説明図である。
【0056】
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、河川に設置された水門7と接続され、さらに水門7の近傍に設置され、水流センサ4が発信する信号を受信可能な無線信号受信装置5と接続されている。水流センサ4は、浮遊式の水流センサであり、水門7が設置された河川を津波等により河口から上流に向かって遡上している。
【0057】
ここで、津波等が河川を遡上している場合、水門7を閉鎖し津波等の遡上を阻止することにより、津波等の被害を減少させることができる。本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、津波等の水門7への接近を、津波等と共に河川を遡上する水流センサ4の水門7への接近により検知し、自動的に水門7を閉鎖する。係る構成により、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、津波等の被害を減少させることができる。
【0058】
また、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、水門7の閉鎖判断を行うにあたって、複数の水門の制御を行い、水門7とは異なる場所に設置される水門制御システム(図示せず)の判断を仰ぐ必要がない。よって、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、水門制御システムと、津波警戒装置2および水門7との通信が切断されても自動的に水門7を閉鎖することが可能である。
【0059】
津波警戒装置2は、水門7への水流センサ4の接近を検知した場合、水門7の閉鎖制御を行う。具体的には、津波警戒装置2は、水門7の近傍に設置された無線信号受信装置5が水流センサ4からの信号を受信した場合に、水流センサ4が水門7に接近したと判断し、水門7を閉鎖する制御を行う。また、津波警戒装置2は、水流センサ4が水門7を通過したことを検知した場合には、水門7の上流に存在する水門に対して閉鎖指示を行ってもよい。なお、津波警戒装置2および水門7は、地震や津波等の災害により容易に接続が切断されないように有線で直接接続されていることが望ましい。
【0060】
水流センサ4は、例えば、第1の実施形態において説明した水流センサ3と同様の固定されていない浮遊式の水流センサであり、無線信号を発信することが可能な水流センサである。水流センサ4が発信する無線信号は、専用無線信号であってもよいし、第1の実施形態において説明した水流センサ4の位置情報を送信するための信号であってもよい。
【0061】
しかしながら、無線信号は発信強度により受信可能な距離が変わるため、水流センサ4が発信する無線信号は、適切な発信強度を有する専用無線信号とすることが好ましい。具体的には、水流センサ4が発信する無線信号の発信強度は、津波警戒装置2が水流センサ4の水門7への接近を検知してから水門7の閉鎖を完了するまでの時間が、水門7へ津波が到達するまでの時間よりも短くなるように設定されることが望ましい。
【0062】
なお、以下では、水流センサ4は、上記で説明した固定されていない浮遊式の水流センサとして説明を行う。しかしながら、本発明は係る例示に限定されない。例えば、水流センサ4は、ロッド等で海底および岸壁に固定された浮遊式の水流センサまたは海底等に設置された固定式の水流センサ等が放出した、無線信号を発信するブイまたは浮標であってもよい。
【0063】
無線信号受信装置5は、水流センサ4からの無線信号を受信することが可能なアンテナであり、水門7の近傍に設置される。例えば、無線信号受信装置5は、水門7に付属して設置されていてもよい。また、無線信号受信装置5は、水流センサ4からの無線信号を受信できれば、いかなるアンテナ形状および発信方式であってもよい。
【0064】
ここで、無線信号受信装置5は、水門7に対して下流側に設置されてもよい。水流センサ4は、津波と共に下流から遡上するため、水流センサ4からの無線信号をより早期に受信するためには、無線信号受信装置5は、水門7より下流に設置されることが好ましい。
【0065】
また、無線信号受信装置5は、水門7の上流および下流の両方に設置されてもよい。係る場合、津波警戒装置2は、下流および上流に設置された無線信号受信装置のどちらが先に無線信号を受信したかによって、水流センサ4が上流または下流のどちらから水門7に接近したかを判断することができる。したがって、例えば、津波ではなく河川の氾濫により上流の水流センサ4が流出し、下流の水門7に接近した場合や、津波が収まった後に遡上していた水流センサ4が下流へ流された場合に、津波警戒装置2が津波の遡上を阻止する目的以外で水門7を閉鎖し、河川の流れを遮ることを防止することができる。また、無線信号受信装置5は、水門7の上流および下流の両方に設置されることにより、津波警戒装置2は、水流センサ4が水門7を上流に通過したか否かを判断することも可能になる。
【0066】
[2.2.第2の実施形態に係る津波警戒装置の内部構成]
続いて、
図5を参照して、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の内部構成について具体的に説明を行う。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の内部構成を示したブロック図である。
【0067】
図5に示すように、津波警戒装置2は、装置通信部100と、水流状態算出部110と、潮汐情報記憶部120と、津波判断部130と、警戒制御部140と、センサ放流部150と、接近検出部160と、を備える。ここで、水流センサ4Aは、海洋または河口に設置され、津波を早期に検知するための水流センサであり、水流センサ4Bは、固定されていない浮遊式の水流センサであり、津波等が河川を遡上していることを津波警戒装置2に知らせるための水流センサである。
【0068】
なお、装置通信部100、水流状態算出部110、潮汐情報記憶部120、および津波判断部130については、
図2を参照して、第1の実施形態で説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
警戒制御部140は、津波判断部130の判断および接近検出部160の指示に基づいて、警戒処理を制御する。具体的には、警戒制御部140は、津波判断部130が津波発生と判断した場合、警戒処理として、例えば、警報の発令、避難の呼びかけを行う。また、警戒制御部140は、接近検出部160が水門閉鎖を指示した場合、水門7の閉鎖を行う。また、警戒制御部140は、接近検出部160の指示により、水門7の上流に存在する少なくとも一つ以上の水門に対して閉鎖指示を行ってもよい。
【0070】
センサ放流部150は、津波判断部130の判断に基づき、浮遊式の水流センサ4Bを放流する。例えば、海洋または河口に設置された水流センサ4Aがロッド等で海底および岸壁に固定された浮遊式の水流センサ、または海底等に設置された固定式の水流センサであった場合、水流センサ4Aが津波等と共に河川を遡上しない場合があり得る。係る場合であっても、センサ放流部150が浮遊式の水流センサ4Bを放流することにより、津波警戒装置2は、津波等が水門7に接近していることを浮遊式の水流センサ4Bの水門7への接近により検出することができる。
【0071】
具体的には、センサ放流部150は、津波判断部130が津波発生と判断した場合に浮遊式の水流センサ4Bを放流する。また、センサ放流部150は、津波の前兆である水位の急激な上昇または下降、水流の方向異常、および水流の速度異常により、浮遊式の水流センサ4Bを放流してもよい。ここで、津波等が海洋から上流に向かって河川をどのように遡上しているのかをより詳細に把握するためには、センサ放流部150が浮遊式の水流センサ4Bを放流する場所は、河口または海洋とすることが好ましい。
【0072】
接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7へ接近したか否かを判断する。具体的には、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bからの無線信号を無線信号受信装置5が受信した場合に、水流センサ4Aまたは4Bが水門7へ接近したと判断し、警戒制御部140に、水門7の閉鎖を指示する。
【0073】
また、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7を上流側へ通過したと判断した場合に、水門7の上流に存在する水門に対して閉鎖指示を行ってもよい。例えば、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7へ接近した後に、無線信号受信装置5が水流センサ4Aまたは4Bからの無線信号を受信できなくなり、水流センサ4Aまたは4Bが水門7から遠ざかったことが検知された場合、水流センサ4Aまたは4Bが水門7を上流側へ通過したと判断してもよい。
【0074】
なお、上述したように無線信号受信装置5が水門7の上流および下流の両方に設置されている場合、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7の上流または下流のどちらから水門7に接近したかを判断することが可能である。係る場合、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが上流から水門7に接近した場合、水門7の閉鎖を指示せず、下流から水門7に接近した場合にのみ、水門7の閉鎖を指示してもよい。また、接近検出部160は、水門7の上流および下流の両方に設置された無線信号受信装置5が水流センサ4Aまたは4Bからの無線信号を受信可能か否かにより、水流センサ4が水門7を上流に通過したか否かを判断してもよい。
【0075】
さらに、水流センサ4Aまたは4Bが位置情報を送信している場合、接近検出部160は、装置通信部100から該水流センサ4Aまたは4Bの位置情報を取得してもよい。係る場合、接近検出部160は、無線信号受信装置5からの通知に替えて、該水流センサ4Aまたは4Bの位置情報に基づいて、水流センサ4Aまたは4Bが水門7に接近したか否かを判断することが可能である。水流センサ4Aまたは4Bの位置情報を参照した場合でも上記と同様に、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが上流または下流のどちらから水門7に接近したかを判断することが可能である。また、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7を通過したか否かを判断することも可能である。
【0076】
ここで、上記実施形態では、センサ放流部150は、津波警戒装置2が備えるとして説明を行ったが、本発明は、上記例示に限定されない。例えば、センサ放流部150は、水流センサ4Aが備えていてもよい。係る場合、具体的には、水流センサ4Aは、海洋または河口に設置された水流センサ4Aがロッド等で海底および岸壁に固定された浮遊式の水流センサである。水流センサ4Aは、例えば、津波の前兆である水位の急激な上昇または下降、水流の方向異常、および水流の速度異常により、浮遊式の水流センサ、ブイまたは浮標等を放流してもよい。
【0077】
なお、上記の接近検出部160は、例えば、演算処理装置であるCPU、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAMなどによって実現されてもよい。
【0078】
[2.3.第2の実施形態に係る津波警戒装置が行う水門閉鎖の具体例]
上記で説明したように、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2は、水流センサ4が水門7に接近した場合、水門7を閉鎖することが可能である。また、津波警戒装置2は、水流センサ4が水門7を通過したことを検知した場合、水門7の上流に存在する少なくとも一つ以上の水門に対して、閉鎖指示を出してもよい。以下では、
図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2が水門7の上流に存在する少なくとも一つ以上の水門に対して、閉鎖指示を行う場合の具体例について、説明を行う。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2が水門7の上流に存在する水門に対して、閉鎖指示を行う場合の具体例を説明する説明図である。
【0079】
図6に示すように、複数の支流に分かれた河川に水門710〜770が設置されている。ここで、水流センサ(水流センサ41)が水門710に接近した場合、津波警戒装置2は、水門710を閉鎖する。また、水流センサ(水流センサ43)が水門710を通過した場合、津波警戒装置2は、水門710の一つ上流に存在する水門に対して閉鎖指示を行う。
【0080】
具体的には、水流センサ(水流センサ43)が水門710を通過した場合、津波警戒装置2は、水門720および740に対して閉鎖指示を行う。同様に、水流センサ(水流センサ45)が水門720を通過した場合、津波警戒装置2は、水門730に対して閉鎖指示を行う。また、水流センサ(水流センサ47)が水門740を通過した場合、津波警戒装置2は、水門750および770に対して閉鎖指示を行う。さらに、水流センサ(水流センサ49)が水門750を通過した場合、津波警戒装置2は、水門760に対して閉鎖指示を行う。
【0081】
ここで、例えば、水流センサ(水流センサ43)が水門710を通過した場合、津波警戒装置2は、水門720〜770に対して閉鎖指示を行ってもよい。しかしながら、津波等と無関係の水門についても一括で閉鎖した場合、場合によっては河川の氾濫が発生する可能性もある。したがって、津波警戒装置2は、上記のように水流センサが通過した水門の一つ上流に存在し、津波等が到達する可能性がある水門についてのみ、閉鎖指示を行う方が好ましい。
【0082】
[2.4.第2の実施形態に係る津波警戒装置の動作]
以上で本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の構成について説明を行った。以下では、
図7を参照して、上述した本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2が行う水門閉鎖に関する動作について説明を行う。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の水門閉鎖に関する動作を説明するフローチャート図である。なお、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2が行う津波発生の検知に関する動作については、第1の実施形態における説明と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0083】
図7に示すように、まず、津波判断部130により津波発生の判断がされ、警戒制御部140により警報の発令等の警戒処理が行われる(S200)。ここで、センサ放流部150は、津波判断部130による津波発生の判断に基づき、水流センサ4Bの放流を行ってもよい。次に、接近検出部160は、水門7に水流センサ4Aまたは4Bが接近したか否かを判断する(S210)。接近検出部160により水門7に水流センサ4Aまたは4Bが接近していないと判断された場合(S210/No)、津波警戒装置2は、水門7への水流センサ4Aまたは4Bの接近が検知されるまで待機を行う。
【0084】
また、接近検出部160により水門7に水流センサ4Aまたは4Bが接近したと判断された場合(S210/Yes)、警戒制御部140は、水流センサ4Aまたは4Bが接近した水門7を閉鎖するよう制御を行う(S220)。次に、接近検出部160は、水流センサ4Aまたは4Bが水門7を通過したか否かを判断する(S230)。接近検出部160により水流センサ4Aまたは4Bが水門7を通過していないと判断された場合(S230/No)、津波警戒装置2は、津波の遡上を阻止できたと判断し、警戒処理を終了する。また、接近検出部160により水流センサ4Aまたは4Bが水門7を通過したと判断された場合(S230/Yes)、警戒制御部140は、津波の遡上を阻止できなかったと判断し、水門7の上流に存在する水門に対して閉鎖指示を行う。
【0085】
[2.5.第2の実施形態のまとめ]
以上において、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2の構成および動作について説明を行った。本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2によれば、津波等が河川を遡上した場合に、自動的に水門を閉鎖することにより津波等の遡上を阻止し、津波の被害を減少させることが可能である。また、本発明の第2の実施形態に係る津波警戒装置2によれば、水門の遠隔地に設置された水門制御システムとの通信および指示がなくとも、自動的に水門7を閉鎖することが可能である。
【0086】
<3.まとめ>
以上において、本発明に係る津波警戒装置について説明を行った。本発明に係る津波警戒装置によれば、津波発生を早期に高精度で検知することが可能である。また、本発明に係る津波警戒装置によれば、津波が発生した場合においても、自動的に水門の閉鎖を行い、津波等の河川の遡上を阻止することにより津波等の被害を減少させることが可能である。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。