(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
図7に、一般的なスイッチングアンプの構成を示す。スイッチングアンプは、変調段10、ドライバ段12、出力段14、LCフィルタ(ローパスフィルタ)16を備え、スピーカ(SP)18を駆動する構成である。
【0003】
変調段10は、入力信号を例えばパルス幅変調(PWM)してドライバ段12に出力する。
【0004】
ドライバ段12は、変調段10からのPWM信号を増幅して出力段14に出力する。
【0005】
出力段14は、ドライバ段12からのPWM信号に基づきスピーカ18を駆動するための駆動信号を生成して出力する。
【0006】
図8に、ドライバ段12及び出力段14の回路構成を示す。ドライバ段12は、アンプ12a、12bを備え、それぞれ変調段10からのPWM信号1及びPWM信号2を増幅して出力段14に出力する。
【0007】
出力段14は、互いに直列接続されたスイッチングトランジスタ、具体的にはMOSFET14a、14bを備える。アンプ12aからのPWM信号は、MOSFET14aのゲートに供給され、アンプ12bからのPWM信号は、MOSFET14bのゲートに供給される。一対のMOSFET14a,14bは、交互にオン/オフとなるように制御される。すなわち、MOSFET14aがオンするときにMOSFET14bがオフし、MOSFET14aがオフするときにMOSFET14bgがオンするようにPWM信号1,2により制御される。
【0008】
特許文献1には、D級増幅器において、D級増幅器の増幅回路に供給する電源を与える電源回路を、電源の電圧を可変できるスイッチング電源回路とし、D級増幅器の出力量を小さくしたときに電圧を低くすることにより、残留電圧を低減することが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
スイッチングアンプの出力段14のMOSFET14a,14bをオンするためには、MOSFET14a,14bのゲート・ソース間に電圧を印加する必要があり、この印加電圧により出力可能なドレイン・ソース間の抵抗値(オン抵抗)が決まる。そして、(オン抵抗)×(出力電流)2でMOSFET14a,14bの損失が決まるため、オン抵抗はできるだけ小さくするのが望ましく、このためにはゲート・ソース間電圧(GS間電圧)はできるだけ大きい方が望ましい。
【0011】
しかしながら、GS間電圧を大きくすると、ドライバ段のスイッチングロス(スイッチングに伴う電力損失)増大に起因して消費電力が増加するという問題、及び、不要輻射が増大してしまう問題があり、オン抵抗を抑制しつつ、スイッチングロス及び不要輻射を低減できる技術が求められている。
【0012】
本発明の目的は、MOSFET等のトランジスタのオン抵抗を抑制でき、かつ、スイッチングロス及び不要輻射を抑制できるスイッチングアンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスイッチングアンプは、入力信号をパルス幅変調する変調部と、スイッチング電源により可変の電源電圧が供給される増幅器を備え、前記変調部からの変調信号を増幅してゲート電圧信号として出力するドライバ部と、電源と接地間に互いに直列に接続され、その接続点に負荷が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを備え、前記ドライバ部からの前記ゲート電圧信号を前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタに印加することで前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを交互にオンオフして前記負荷に駆動電流を出力する出力部と、前記入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じた所望の駆動電流
を予測し、予測した駆動電流を流すために必要なゲート電圧を算出し、算出したゲート電圧となるように前記スイッチング電源の電源電圧を増減調整する制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明では、制御部(例えばDSPで構成される)で入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じて必要な駆動電流を予測し、この駆動電流を得るために必要なゲート電圧を算出してスイッチング電源の電源電圧を調整するので、第1トランジスタ及び第2トランジスタのオン抵抗を低減するために常にゲート電圧を増大させておくのではなく、必要な場合のみゲート電圧を増大させることが可能となり、オン抵抗を低減しつつ、電力消費及び不要輻射を低減できる。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記制御部は、前記入力信号のレベル及び前記ボリュームのレベルに応じた前記変調部の変調度を算出し、算出した変調度が閾値を超えて大きいため変調後のパルス幅が閾値より小さい場合に、前記ゲート電圧の立ち上がりタイミングにおいて一定電圧を前記ゲート電圧に印加するように前記スイッチング電源の電源電圧を調整することを特徴とする。変調後のパルス幅が相対的に小さい場合には、ゲート電圧の立ち上がりには一定の時間を要するため、本来であればゲート電圧が第1トランジスタ及び第2トランジスタの閾値電圧に達すべきところ、達しない場合が生じ得る。そこで、このような場合にゲート電圧の立ち上がりタイミングにおいて一定の電圧を印加することで立ち上がりを速くすることで、パルス幅が小さくても確実に第1トランジスタ及び第2トランジスタを制御して駆動電流を出力する。
【0016】
本発明の他の実施形態では、さらに、前記制御部は、前記スイッチング電源の電源電圧を増減調整するのに要する時間に応じて前記入力信号を遅延させて前記変調部に出力する
ことを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、前記制御部は、前記入力信号のレベルと前記ボリュームのレベルと前記所望の駆動電流との関係、及び前記所望の駆動電流と前記ゲート電圧との関係を予め記憶する記憶部を備え、前記関係を用いて前記入力信号のレベル及び前記ボリュームのレベルに応じた所望の駆動電流及び前記ゲート電圧を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スイッチングアンプにおいてMOSFET等のトランジスタのオン抵抗を抑制でき、かつ、スイッチングロス及び不要輻射を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態におけるスイッチングアンプの回路構成を示す。基本構成は、
図7と同様に、変調段10、ドライバ段12、出力段14、LCフィルタ(ローパスフィルタ)16を備える構成であり、ローパスフィルタ16から出力される駆動信号でスピーカ18を駆動する。
【0022】
本実施形態のスイッチングアンプは、さらに、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)2を備え、DSP2によりドライバ段12のスイッチング電源(SW電源)4を制御する構成である。
【0023】
DSP2は、プロセッサ及び遅延部を備える。プロセッサには、入力信号及びユーザ操作可能なボリュームからの操作信号(Vol)が供給される。プロセッサは、入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じて、スピーカ18を駆動するために必要な出力段14の駆動電流、つまりドレイン・ソース電流値(DS電流値)を算出する。また、プロセッサは、算出したDS電流値を通電するために必要な出力段14のゲート電圧、つまりゲート・ソース間電圧(GS間電圧)を算出し、算出したGS間電圧となるようにドライバ段12のSW電源4に制御信号を出力する。遅延部は、入力信号を必要な時間だけ遅延させてドライバ段12に出力する。ここで、必要な時間とは、プロセッサにおいて入力信号とVol信号に基づいて必要なGS間電圧を算出する時間に等しい。すなわち、プロセッサでSW電源4の電圧を設定するのに要する時間だけ、遅延部で入力信号を遅延させて出力段12に供給する。
【0024】
変調段10は、パルス幅変調器を備え、DSP2からの入力信号を三角波等によりパルス幅変調し、PWM信号1及びPWM信号2を生成して出力する。DSP2からの入力信号は、上記のように遅延部で必要時間だけ遅延させた信号である。
【0025】
ドライバ段12は、アンプ12a,12bを備えるとともに、それぞれのアンプ12a,12bに電源電圧を供給するSW電源4を備える。
【0026】
SW電源4は、DSP2からの制御信号により電源電圧が可変する電源であり、DSP2とSW電源4を併せてDSP電源と称する。
【0027】
アンプ12a,12bは、それぞれ変調段10からのPWM信号1,PWM信号2を増幅して出力段14のMOSFET14a,14bのゲートに出力する。アンプ12a,12bが出力するGS間電圧は、SW電源4により制御され、DSP2で算出されたGS間電圧に等しい。
【0028】
出力段14は、電源と接地間で互いに直列に接続された一対のMOSFET14a,14bを備える。MOSFET14aのゲート端子はアンプ12aの出力端に接続され、ドレイン端子は電源に接続され、ソース端子はMOSFET12bに接続される。MOSFET14bのゲート端子はアンプ12bの出力端に接続され、ドレイン端子はMOSFET14aに接続され、ソース端子は接地される。MOSFET14aのソース端子とMOSFET14bのドレイン端子は接続され、その接続節点はLCフィルタ(ローパスフィルタ)16を介してスピーカ18の一方の端子に接続される。MOSFET14a,14bは、互いに位相反転したPWM信号1,2により、交互にオン/オフとなるように制御される。MOSFET14aは、アンプ12aからゲートに出力されるGS間電圧によりオン/オフ制御され、MOSFET14bは、アンプ12bからゲートに出力されるGS間電圧によりオン/オフ制御される。なお、詳細には、出力段14は、一対のMOSFET14a、14bに加え、互いに直列接続された他の一対のMOSFET(図には示していないが、これらをMOSFET14c、14dと便宜上称する)を備え、MOSFET14cのドレイン端子はMOSFET14aと同様に電源に接続され、MOSFET14dのソース端子はMOSFET14bと同様に接地され、MOSFET14cのソース端子とMOSFET14dのドレイン端子は互いに接続され、その接続節点はLCフィルタ(ローパスフィルタ)16を介してスピーカ18の他方の端子に接続される。MOSFET14a,14dは同時にオン/オフし、MOSFET14aがオンするときにはMOSFET14dもオンし、MOSFET14aがオフするときにMOSFET14dもオフする。また、MOSFET14b,14cは同時にオン/オフし、MOSFET14bがオンするときにはMOSFET14cもオンし、MOSFET14bがオフするときにMOSFET14cもオフする。出力段14のかかる構成は、例えば特許文献1にも記載されているように公知である。
【0029】
図2に、本実施形態におけるDSP2の機能ブロック図を示す。DSP2は、
図1に示す遅延部に加え、電流値予測部2a、GS間電圧算出部2b、入力−Vol−電流テーブル2c、及び電流−電圧テーブル2dを備える。
【0030】
電流値予測部2aは、入力信号及びボリュームからの操作信号Volに基づき、スピーカ18を駆動するために必要な出力段14の駆動電流値、すなわちDS間電流値を予測する。具体的には、電流値予測部2aは、入力信号のレベル及びボリュームのレベルとDS間電流値との対応関係を予め規定するテーブル2cを参照し、入力信号のレベル及びボリュームのレベルに対応するDS間電流値をテーブル2cから読み出してDS間電流値を算出する。入力信号のレベル及びボリュームのレベルとDS間電流値との対応関係を予め規定するテーブル2cは、実験で求めて規定することができ、DSP2のメモリに予め記憶しておけばよい。入力信号のレベルが大であるほど予測DS間電流値が増大し、かつ、ボリュームのレベルが大であるほど予測DS間電流値は増大する。電流値予測部2aは、予測したDS間電流値をGS間電圧算出部2bに出力する。
【0031】
GS間電圧算出部2bは、DS間電流値に対応するGS間電圧値を算出する。具体的には、GS間電圧算出部2bは、DS間電流値とGS間電圧値との関係を予め規定するテーブル2dを参照し、DS間電流値に対応するGS間電圧値をテーブル2dから読み出してGS間電圧値を算出する。テーブル2dも、テーブル2cと同様にDSP2のメモリに予め記憶しておく。予測DS間電流値が大であるほどDS間電圧値は増大する。GS間電圧算出部2bは、算出したGS間電圧に応じた制御信号をドライバ段12のSW電源4に出力してSW電源4の電源電圧を増減調整する。
【0032】
なお、本実施形態では、テーブル2c、2dを参照することでDS間電流値を予測し、これに応じたGS間電圧値を算出しているが、テーブルに代えて所定の関数によりDS間電流値を予測し、かつGS間電圧値を算出してもよい。すなわち、入力信号のレベルuとボリュームのレベルvとDS間電流値Idsとの対応関係を2次元関数Fで
Ids=F(u、v)
とし、DS間電流値とGS間電圧Vgsとの対応関係を1次元関数Gで
Vgs=G(Ids)
として、これらの関数を用いて演算により算出してもよい。
【0033】
また、GS間電圧算出部2bは、予測DS電流値を所定の閾値と大小比較し、予測DS電流値が閾値以下である場合に第1のGS間電圧値とし、予測DS間電流値が閾値を超える場合に第2のGS間電圧値(但し、第1GS間電圧値<第2GS間電圧値)と2値的にGS間電圧を変化させることも可能であり、これにより簡易的にGS間電圧を制御できる。
【0034】
以上のように、本実施形態では、入力信号及びVol信号に応じてGS間電圧を増減調整するので、出力段14のMOSFET14a〜14dのオン抵抗を効果的に低減できるとともに、スイッチングロス及び不要輻射を低減することができる。すなわち、一律にGS間電圧を増大してしまうとスイッチングロス及び不要輻射が増大してしまうところ、本実施形態では入力信号とVol信号に基づいて必要な場合のみGS間電圧を増大させるため、オン抵抗を低減しつつ、スイッチングロス及び不要輻射も低減できる。また、本実施形態では、入力信号のレベルとボリュームのレベルに応じた分だけGS間電圧を増大させるので、この意味でも無駄な電力消費を抑制できる。
【0035】
<第2実施形態>
第1実施形態では、入力信号及びVol信号に応じてGS間電圧値を増減調整することでオン抵抗、電力消費、及び不要輻射を抑制しているが、本実施形態では、さらに電力消費と不要輻射を低減し得る構成について説明する。
【0036】
図3に、
図1における各部のタイミングチャートを示す。
図3(a)は変調段10から出力されるPWM信号、
図3(b)は出力段14のGS間電圧信号、
図3(c)は出力段14から出力される駆動信号のタイミングチャートである。
【0037】
PWM変調信号を用いるスイッチングアンプでは、
図3(b)に示すように、出力段14のGS間電圧Vgsには所定の立ち上がり時間(tu)及び所定の立下り時間(td)が存在する。GS間電圧値VgsがMOSFETの閾電圧Vthに達すると特定の方向に駆動電流が流れるとすると、
図3(c)に示すように、Vgsが閾値電圧Vthに達するタイミングで駆動電流が流れ、スピーカ18が駆動される。
【0038】
これに対し、
図4に、変調段10における変調度が相対的に大きい場合のタイミングチャートを示す。
図4(a)〜(c)は、それぞれ
図3(a)〜(c)に対応するものであり、それぞれ変調段10から出力されるPWM信号、出力段14のGS間電圧信号、出力段14から出力される駆動信号のタイミングチャートである。
【0039】
出力段14のGS間電圧Vgsには立ち上がり時間(tu)及び所定の立下り時間(td)が存在するため、変調度が大きいとPWM信号のパルス幅が小さくなり、
図4(b)に示すようにGS間電圧値Vgsが閾値電圧Vthまで達しないため、
図4(c)に示すように出力段14の出力は電源電圧Vccのままで動作しなくなる。このことは、変調度が大きく、パルス幅が小さいパルスを出力できないことを意味し、100%の変調度が確保できないことを意味する。このように電圧使用効率が悪いと、所望パワーを得るには電源電圧Vccに加えて電圧を余分に供給する必要があり、電力素子選定において非効率である。
【0040】
このような事態を防止すべく、GS間電圧値Vgsの立ち上がりを速くすることも考えられるが、消費電力が増大するとともに、不要輻射も増大してしまう。
【0041】
そこで、本実施形態では、変調度が相対的に小さく出力段14が問題なく動作する場合にはGS間電圧を維持するが、他方、変調度が相対的に大きく出力段14が動作しない場合にはGS間電圧を増大してGS間電圧値Vgsの立ち上がりを速くする。具体的には、GS間電圧値Vgsの立ち上がり時においてVgsの値を一時的に増大させる。
【0042】
図5に、変調度が相対的に大きい場合の、本実施形態におけるタイミングチャートを示す。
図5(a)は、GS間電圧値Vgsのタイミングチャートであり、
図5(b)は、出力段14の駆動信号のタイミングチャートである。
【0043】
図5(a)において、破線は従来のGS間電圧値Vgsであり、パルス幅が小さいため閾値電圧Vthに達していないことを示す。これに対し、実線は本実施形態のGS間電圧値Vgsであり、立ち上がりの所定時間(図のa期間)において一定電圧ΔVを印加してVgs+ΔVとしたものである。一定電圧ΔVを印加することにより立ち上がりが速くなり、GS間電圧値Vgsは立ち上がりにおいてMOSFETの閾値電圧Vthに達するようになる。
【0044】
なお、
図5(a)において、立ち上がりのa期間において一定の電圧ΔVが印加さ
れるが、その後のb期間ではゲート電圧は立下り、b期間経過後にはMOSFETの閾
値電圧Vth近傍となる。これにより、PWM信号に応じた駆動信号が得られる。言い換えれば、a期間及びb期間は、a期間後のb期間においてVgsが閾値電圧Vgsまで立下がるよ
うに設定されるといえる。
【0045】
図5(b)において、破線は従来の出力段14の出力信号であり、GS間電圧値VgsがMOSFETの閾値電圧Vthに達しないため電源電圧Vccのまま維持されてしまう(MOSFET14aがオンのまま維持され、MOSFET14bがオフのまま維持されてしまう)が、本実施形態では確実に閾値電圧Vthに達するため実線で示すように駆動電流が流れるようになる。
【0046】
このように、本実施形態では、変調度に応じ、変調度が大きい場合にはGS間電圧値Vgsの立ち上がりタイミングにおいて一定電圧を印加してGS間電圧値Vgsを増大させることにより、電力消費及び不要輻射の増大を抑制しつつ、スピーカ18を確実に駆動することができる。
【0047】
本実施形態のスイッチングアンプの回路構成は、
図1に示す第1実施形態と同様であるが、DSP2は、入力信号とVol信号に応じてDS間電流値を予測してGS間電圧値を算出する処理に加え、入力信号とVol信号に応じて変調度を算出し、変調度に応じてGS間電圧値の立ち上がりタイミングに一定の電圧ΔVを印加して出力すればよい。
【0048】
図6に、本実施形態におけるDSP2の機能ブロック図を示す。
図2に示す構成に加え、変調度算出部2eをさらに備える。
【0049】
変調度算出部2eは、入力信号のレベルとボリュームのレベルに応じて変調段10における信号の変調度を算出する。変調度は、入力信号の正側波形の時間をt1、負側波形の時間をt2とすると、
変調度=(t1−t2)/(t1+t2)
で算出される。変調度算出部2eは、算出された変調度を所定の閾値と大小比較し、比較結果に応じた信号をGS間電圧算出部2bに出力する。一般に、入力信号のレベルが小さいほど変調度は増大し、ボリュームのレベルが小さいほど変調度は増大する。
【0050】
GS間電圧算出部2bは、第1実施形態と同様に予測DS間電流値に対応するGS間電圧値Vgsを算出するが、さらに、変調度算出部2eからの比較結果信号に応じてGS間電圧値Vgsを増減調整する。すなわち、変調度が閾値以下であればGS間電圧算出部2bで算出されたGS間電圧値Vgsに一定の電圧ΔVを印加せず、変調度が閾値を超えればGS間電圧値Vgsの立ち上がりタイミングにおいて一定の電圧ΔVを印加して出力する。閾値は、パルス幅が小さく通常のVgsではスイッチングが不可能な変調度を基準として設定すればよく、一定の電圧ΔVは、Vgsが過大となると不要輻射が増大してしまうことから、不要輻射を一定以下に抑え得る値に設定すればよい。
【0051】
なお、第1実施形態では、DSP2でGS間電圧値Vgsを算出するのに要する時間だけ遅延部で入力信号を遅延させているが、本実施形態では、第1実施形態の処理に加えて変調度を算出し、算出した変調度を閾値と大小比較する処理が付加されるので、この付加処理の分だけ遅延部で入力信号をさらに遅延させてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、DSP2における演算処理に時間を要することを考慮して遅延部で入力信号を遅延させているが、DSP2で十分高速に演算処理が行える場合には、必ずしも遅延部で入力信号を遅延させる必要はない。
【0053】
また、第2実施形態では、変調度算出部2eが入力信号のレベルとボリュームのレベルに応じて変調度を算出しているが、第1実施形態と同様に、入力信号のレベルとボリュームのレベルと変調度との関係を予めテーブルで規定してメモリに記憶しておき、テーブルを参照することで変調度を算出してもよい。
【0054】
さらに、第2実施形態では、第1実施形態の処理との組み合わせ、すなわち入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じてGS間電圧Vgsを増減調整した上で、さらに入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じてVgsの立ち上がりタイミングで一定の電圧を印加しているが、第1実施形態の処理とは独立に、入力信号のレベル及びボリュームのレベルに応じてVgsの立ち上がりタイミングで一定の電圧を印加することもできる。この場合、DSP2は、変調度を算出して閾値と比較する処理に必要な時間だけ、入力信号を遅延させて変調段10に出力すればよい。このような実施態様は、例えば以下のように規定することができる。すなわち、「入力信号をパルス幅変調する変調部と、スイッチング電源により可変の電源電圧が供給される増幅器を備え、前記変調部からの変調信号を増幅してゲート電圧信号として出力するドライバ部と、電源と接地間に互いに直列に接続され、その接続点に負荷が接続された第1トランジスタ及び第2トランジスタを備え、前記ドライバ部からの前記ゲート電圧信号を前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタに印加することで前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを交互にオンオフして前記負荷に駆動電流を出力する出力部と、前記入力信号のレベル及び前記ボリュームのレベルに応じた前記変調部の変調度を算出し、算出した変調度が閾値を超えて大きいため変調後のパルス幅が閾値より小さい場合に、前記ゲート電圧
信号の立ち上がりタイミングにおいて
前記ゲート電圧信号に一定電圧
が印加
されるように、前記スイッチング電源の電源電圧を調整する制御部と、を備えることを特徴とするスイッチングアンプ」である。