【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、経済性に優れなおかつ環境への負荷も小さい地盤改良方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る地盤改良方法は請求項1に記載したように、動植物由来のナノファイバー
のみが
水に添加混合されてなるナノファイバー
含有液を液状化防止の対象地盤に浸透注入するものである。
【0011】
また、本発明に係る地盤改良方法は請求項2に記載したように、地盤支持力向上の対象地盤を攪拌しつつその攪拌領域に動植物由来のナノファイバーを添加し又は該ナノファイバー
のみが
水に添加混合されたナノファイバー
含有液を注入することで前記攪拌領域に拡がる攪拌土と前記ナノファイバー又は前記ナノファイバー
含有液とを混合するものである。
【0012】
また、本発明に係る地盤改良方法は請求項3に記載したように、掘削土、発生土その他の原料土に動植物由来のナノファイバー又は該ナノファイバー
のみが
水に添加混合されたナノファイバー
含有液を添加し、次いでこれらを混合することでナノファイバー混合土を作製し、該ナノファイバー混合土を、埋戻し材、盛土材その他の改良土として施工するものである。
【0013】
また、本発明に係る地盤改良方法は、前記改良土を盛土材として敷設し、ついで該盛土材を転圧するものである。
【0015】
また、本発明に係る地盤改良方法は、前記ナノファイバーをセルロースナノファイバーとするものである。
【0016】
第1の発明に係る地盤改良方法においては、動植物由来のナノファイバー
のみが
水に添加混合されてなるナノファイバー
含有液を液状化防止の対象地盤に浸透注入する。
【0017】
このようにすると、ナノファイバーは、繊維径がnmオーダーであるため、対象となる地盤が十分に締め固められていないこととも相俟って、土粒子の間隙を流路として広く拡散し、その後、浸透注入された範囲内で土粒子と絡み合う。
【0018】
そして、地震時においては、土粒子に絡み付いたナノファイバーが該土粒子のずれや移動に抵抗する繊維補強作用を発揮し、その結果、地盤全体のせん断変形が抑制されるとともに、土粒子間の間隙水圧の上昇、ひいては液状化の発生が未然に防止される。
【0019】
また、セメント系の硬化材を用いないため、浸透注入する際に注入元又はその近傍の地盤に目詰まりが生じて浸透が阻害されるおそれはないし、有害物質が溶出する懸念もない。
【0020】
対象となる地盤としては、主として十分に締め固められていない緩い飽和砂質地盤であり、第1の発明でいう土粒子は主として砂粒子の意味で用いる。
【0021】
第2の発明に係る地盤改良方法においては、地盤支持力向上の対象地盤を攪拌しつつその攪拌領域に動植物由来のナノファイバーを添加し又は該ナノファイバー
のみが
水に添加混合されたナノファイバー
含有液を注入することで、攪拌領域に拡がる攪拌土と上述のナノファイバー又はナノファイバー
含有液とを混合する。
【0022】
このようにすると、ナノファイバーは、繊維径がnmオーダーであるため、攪拌土の土粒子と絡み合って該土粒子のずれや移動に抵抗する繊維補強作用を発揮し、その結果、地盤の支持力が増大する。
【0023】
また、セメント系の硬化材を用いないため、注入する際に注入元又はその近傍の地盤に目詰まりが生じて注入が阻害されるおそれはないし、地盤がアルカリ環境となって有害物質が溶出するといった懸念もない。
【0024】
ナノファイバー又はナノファイバー
含有液を添加混合するにあたっては、中空ロッドの周面に攪拌翼を突設してなる攪拌混合装置で切削及び攪拌混合を行いつつ、該中空ロッドの吐出孔からナノファイバー又はナノファイバー
含有液を噴出させるように構成してもよいし、これらを圧縮空気や水とともに高圧噴射する構成としてもよい。
【0025】
これらのうち、高圧噴射による添加混合は、セメントミルク等の硬化材を用いて地盤に改良体を造成する際に用いられる工法、例えば地盤内に挿入された多重管ロッドを回転させつつ前進又は後退させるとともに、該多重管ロッドに設けられた吐出口から硬化材や水あるいは圧縮空気を地盤内に高圧噴射するジェットグラウト工法あるいは高圧噴射攪拌工法と呼ばれる高圧噴射攪拌工法を用いて行うことが可能であり、高圧噴射される流体の種類や噴射の仕方によって、JSG工法、CJG工法、CCP工法、RJP工法などさまざまな工法が開発されているため、これらから適宜選択すればよい。
【0026】
第3の発明に係る地盤改良方法においては、掘削土、発生土その他の原料土に動植物由来のナノファイバー又は該ナノファイバー
のみが
水に添加混合されたナノファイバー
含有液を添加し、次いでこれらを混合することでナノファイバー混合土を作製し、該ナノファイバー混合土を、埋戻し材、盛土材その他の改良土として施工する。
【0027】
このようにすると、ナノファイバーの繊維径がnmオーダーであるため、ナノファイバー混合土は、ナノファイバーが原料土の土粒子と絡み合った状態で作製される。
【0028】
したがって、ナノファイバー混合土を改良土として施工した場合、ナノファイバーは土粒子のずれや移動に抵抗する繊維補強作用を発揮し、その結果、施工された地盤の支持力が増大する。
【0029】
ここで、改良土を盛土材として敷設し、ついで該盛土材を転圧するようにしたならば、該転圧によって上述の繊維補強作用がさらに高まるため、変形特性に優れた盛土を造成することが可能となる。
【0030】
また、ナノファイバー自体が通水路となり、又はナノファイバーと土粒子との間あるいはナノファイバー同士の間に形成された間隙が通水路となるため、排水性に優れた盛土を造成することが可能となる。
【0031】
第1乃至第3の発明に係る各地盤改良方法は、上述したようにナノファイバーやナノファイバー
含有液を対象地盤や原料土に浸透注入、注入あるいは添加するようにしたものであって、セメント系の硬化材を用いることに起因する諸問題を懸念する必要がなくなるという作用効果を奏するが、これら本発明は、液状化対策あるいは地盤改良のために従来から用いられている硬化材
(セメント系の硬化材は除く)や薬液との併用を排除するものではない。
【0032】
すなわち、ナノファイバーは、化学的に安定した素材であるため、従来公知の硬化材や薬液、例えば
水ガラス系の薬液と併用することが可能である。
【0034】
上述した各発明におけるナノファイバーは、第1の発明においては、浸透注入であるために
含有液の形で用いるが、第2,3の発明においては、
含有液のほか、粉体の形で用いるようにしてもかまわない。
【0035】
また、各発明のナノファイバーは、径をnmオーダー、すなわち1μm未満とすることにより、土粒子と絡み合って繊維補強作用を発揮する限り、その具体的構成は問わないが、径が10〜100nm、長さが1〜10μm程度のナノファイバーとした場合においては、土粒子との良好な絡み合いにより、上述した繊維補強作用がさらに向上する。
【0036】
動植物由来のナノファイバー、すなわちバイオナノファイバーは、甲殻類などの動物由来資源から得られるキチンナノファイバーで構成することも可能であるが、セルロースナノファイバー(セルロースミクロフィブリル)で構成するようにすれば、これを木材、パルプ、紙、布といった地球上に豊富に存在する植物由来資源から取り出すことができるので、経済性に優れた地盤改良方法を実現することが可能となる。
【0037】
特に、上述の植物由来資源を、建設時に発生する廃棄木材や製紙製材工場の残材、稲わらや麦わら、間伐材や流木といった従来であれば焼却処分されていたもので構成すれば、バイオマスとは異なり、植物が光合成の際に吸収した二酸化炭素を大気に戻すことなく固定する形で有効利用することが可能となり、かくして低炭素社会の実現に大きく寄与する。