(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の電磁弁としては、用途に応じて様々に異なる流量特性が要求されることがある。また、使用中にコアの流通口と弁体(緩衝材)との間にゴミなどが詰まった場合に、分解してメンテナンスを行う必要が生ずる。
【0007】
しかしながら、特許文献1の電磁弁では、ヨークと固定カバーとが圧迫固定されるとともに、プランジャの上記他端は上記凸カバー(上記ボビンと一体成形されている。)によって覆われているため、分解するのが困難で、プランジャと弁体を交換するのが難しい。この結果、様々に異なる流量特性を実現するためには、電磁弁全体を変更して機種を増やさざるを得なかった。また、使用中にコアの流通口と弁体との間にゴミなどが詰まった場合は、内部のメンテナンスが困難なため、電磁弁全体を交換せざるを得なかった。
【0008】
そこで、この発明の課題は、プランジャと弁体を容易に交換でき、したがって、電磁弁全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できると共に、内部のメンテナンスが容易な電磁弁を提供することにある。
【0009】
また、この発明の課題は、そのような電磁弁を備えた電子血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の電磁弁は、
流体の流量を可変に制御可能な電磁弁であって、
ケーシングと、
上記ケーシングに収容されたボビン及びこのボビンに巻回されたソレノイドコイルと、
上記ボビンに摺動可能に内挿された棒状のプランジャと、
上記ケーシングのうち上記プランジャの一端が対向する側に配置され、流体が流通する流通口が設けられたコアと、
上記プランジャの上記一端に設けられ、上記流通口に対向して配置された弁体と、
上記プランジャを上記コアから遠ざける方向に付勢する付勢部とを備え、
上記ケーシングは、上記プランジャの上記一端と反対側の他端に相当する側に、上記プランジャを通す貫通孔を有し、
上記ケーシングの外部に、上記貫通孔に面して配置された係止部を備え、
上記ソレノイドコイルが無通電状態にある非作動時には、上記付勢部による付勢力によって、上記プランジャの上記一端に設けられた上記弁体が上記流通口から離れ、かつ、上記プランジャの
上記他端が上記ケーシングから
上記貫通孔を通して外部へ突出して
上記係止部に当接して係止され、
上記ソレノイドコイルが通電状態にある作動時には、上記ソレノイドコイルが発生する磁力によって上記付勢部による付勢力に抗して上記プランジャとともに上記弁体が上記ボビン内で移動されることにより、上記流通口を通して流通する流体の流量が調節され、
上記係止部は、上記プランジャおよび上記弁体の上記ケーシングからの離脱を許容するように外力によって弾性変形可能である。
【0011】
本明細書で、「外力」とは、電磁弁の構成要素以外の外的な要素から受ける力を意味する。
【0012】
この発明の電磁弁は、次のような態様で使用される。すなわち、上記ソレノイドコイルが無通電状態にある非作動時には、上記付勢部による付勢力によって、上記プランジャの上記一端に設けられた上記弁体が上記流通口から離れ、かつ、上記プランジャの上記一端と反対側の他端が上記ケーシングから
上記貫通孔を通して外部へ突出して上記ケーシングの外部に配置された係止部に当接して係止される(この係止部の状態を「閉鎖状態」と呼ぶ。)。上記ソレノイドコイルが通電状態にある作動時には、上記ソレノイドコイルが発生する磁力によって上記付勢部による付勢力に抗して上記プランジャとともに上記弁体が上記ボビン内で移動されることにより、上記流通口を通して流通する流体の流量が調節される。
【0013】
様々に異なる流量特性を実現するなどのために分解の必要が生じた場合は、上記ソレノイドコイルが無通電状態にある非作動時に、上記係止部を外力によって弾性変形させて、上記プランジャを通過させ得る状態(これを「開放状態」と呼ぶ。)にする。この開放状態の係止部を通して、上記プランジャおよび上記弁体を上記ケーシング(すなわち上記ボビン)から離脱させる。代わりに、一端に弁体が設けられた新たなプランジャを、その弁体が上記コアの上記流通口に対向する向きで、上記開放状態の係止部、上記貫通孔を通して上記ケーシングの内部(より正確には、上記ボビン)に挿入する。この後、上記係止部に対する外力を取り去れば、上記係止部が元の形状に戻って、新たに挿入されたプランジャの通過を禁止する閉鎖状態になる。すなわち、非作動時には、上記新たに挿入されたプランジャの他端(上記弁体が設けられた上記一端と反対側の端部)が上記ケーシングから貫通孔を通して外部へ突出して上記係止部に当接して係止される。このようにして、この電磁弁では、プランジャと弁体を容易に交換できる。したがって、電磁弁全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0014】
なお、元のプランジャおよび弁体を上記ケーシングから離脱させた後、一旦上記係止部に対する外力を取り去り、新たなプランジャおよび弁体を挿入する直前に、再び上記係止部を外力によって弾性変形させて、開放状態にしてもよい。
【0015】
一実施形態の電磁弁では、
上記ボビンは、
上記ケーシングに収容された本体部分と、
この本体部分と一体に成形され、上記貫通孔を通して上記ケーシングの外部へ延在する第1延在部分とを有し、
この第1延在部分が上記係止部を構成することを特徴とする。
【0016】
この一実施形態の電磁弁では、上記係止部は上記ボビンの前記第1延在部分、すなわち、上記本体部分と一体に成形され、上記貫通孔を通して上記ケーシングの外部へ延在する部分からなる。したがって、上記係止部を設けるために、わざわざ部品点数を増やす必要が無い。この結果、電磁弁の製造コストが上昇するのを避けることができる。
【0017】
一実施形態の電磁弁では、
上記係止部は、
上記貫通孔を通して上記プランジャの移動経路に沿って上記ケーシングの外部へ延在し、先端側が上記外力によって上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓むことができるアーム部と、
上記アーム部の先端から上記プランジャの移動経路へ向かって実質的に垂直に延在する、先端が途切れた爪部とを有し、
この爪部が上記非作動時に上記プランジャの上記他端を係止することを特徴とする。
【0018】
本明細書で、上記プランジャの「移動経路」とは、上記プランジャの長手方向に沿った移動経路を意味し、上記プランジャが作動時に移動する経路だけでなく、上記ケーシングから離脱するときの経路も含む。
【0019】
この一実施形態の電磁弁では、上記係止部はアーム部と爪部とを有する。上記非作動時には、上記爪部によって、上記プランジャの上記他端(上記ケーシングから貫通孔を通して外部へ突出した端部)が係止されている。上記分解の必要が生じた場合は、上記外力による弾性変形として、上記アーム部を上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓ませる。これに伴って、上記爪部が上記プランジャの移動経路から外れて、上記係止部が開放状態になる。これにより、この開放状態の係止部を通して、上記プランジャおよび上記弁体を上記ケーシング(すなわち上記ボビン)から離脱させることができる。また、上記新たなプランジャおよび弁体が上記開放状態の係止部、上記貫通孔を通して上記ケーシングの内部に挿入された後、上記アーム部に対する外力を取り去れば、上記アーム部と上記爪部が元の形状や位置に戻って、閉鎖状態になる。すなわち、非作動時には、上記新たなプランジャの上記他端が上記ケーシングから貫通孔を通して外部へ突出して上記爪部に当接して係止される。
【0020】
なお、特許文献1の電磁弁では、上記プランジャを係止するために上記ボビン本体から上記貫通孔を通して外部へ伸出しているのは、コの字状の凸カバーである。上記凸カバーは、上記ボビン本体とともに、或る程度の機械的強度(変形し難さ)を有するプラスチック材料によって一体成形される。ボビン本体や凸カバーに或る程度の機械的強度が与えられる理由は、ボビン本体に巻かれるソレノイドコイルの形状を安定させるため、ケーシング(ヨークと固定カバー)に対するソレノイドコイルの位置を安定させるため、また、凸カバーによって上記プランジャを確実に係止するためである。このため、上記コの字状の凸カバーでは、弾性変形によって開放状態にするのが困難である。
【0021】
一実施形態の電磁弁では、
上記貫通孔は、上記プランジャの断面と実質的に対応する形状をもつ主領域と、この主領域に連なり上記アーム部を通すために拡張された拡張領域とを含み、
少なくとも上記アーム部が上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに関して、上記アーム部と上記拡張領域の上記アーム部に対向する面との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
【0022】
この一実施形態の電磁弁では、少なくとも上記アーム部が上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに関して、上記アーム部と上記拡張領域の上記アーム部に対向する面との間に隙間が設けられている。したがって、上記外力による弾性変形として、上記アーム部を上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓ませるとき、上記アーム部は、上記ボビンの本体部分に連なる根元から、上記拡張領域の上記アーム部に対向する面に当たることなく、上記隙間を狭める態様で容易に撓む。したがって、より小さい外力によって、上記係止部を開放状態にすることができる。この結果、上記係止部を開放状態にしようとする変形の際に上記アーム部が折れるような事態を防止できる。
【0023】
一実施形態の電磁弁では、上記爪部の上記プランジャに当接する側とは反対の側に、上記ケーシングの外部へ向かって開いたテーパ面が設けられていることを特徴とする。
【0024】
元のプランジャおよび弁体を上記ケーシングから離脱させた後、上記新たなプランジャおよび弁体を挿入しようとする場合に、上記係止部が閉鎖状態にあるものとする。ここで、この一実施形態の電磁弁では、上記爪部の上記プランジャに当接する側とは反対の側に、上記ケーシングの外部へ向かって開いたテーパ面が設けられている。したがって、上記新たなプランジャを上記ケーシングの外部から上記移動経路に沿って内部へ挿入しようとすれば、まず、上記新たなプランジャの一端(弁体が設けられた端部)の縁部が上記爪部の上記テーパ面に当接する。これにより、上記係止部(の爪部)は、上記新たなプランジャの上記一端から、上記外力として、上記アーム部を上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓ませる力を受ける。続いて、上記新たなプランジャを上記ケーシングの内部へ向かって押し込むと、上記アーム部が上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓み、上記爪部が上記プランジャの移動経路から外れて、上記係止部が開放状態になる。上記新たなプランジャを上記ケーシングの内部へ向かってさらに押し込むと、上記爪部が上記新たなプランジャの外周面に接して、その外周面から上記アーム部を上記プランジャの移動経路から遠ざかる向きに撓ませる力を受ける状態になる。したがって、上記係止部は開放状態を維持する。そこで、その開放状態のまま、上記新たなプランジャおよび弁体を、上記開放状態の係止部、上記貫通孔を通して上記ケーシングの内部に挿入する。そして、上記新たなプランジャおよび弁体が上記ケーシングの内部に完全に挿入されれば、上記係止部が元の形状に戻って、新たに挿入されたプランジャの通過を禁止する閉鎖状態になる。このようにして上記新たなプランジャおよび弁体を挿入する場合、上記係止部は、押し込まれる新たなプランジャから外力を受けて開放状態になる。したがって、上記係止部に対して別途の外力を与える必要がなく、便利である。
【0025】
一実施形態の電磁弁では、上記係止部は、上記アーム部と上記爪部とからなる組を複数有することを特徴とする。
【0026】
この一実施形態の電磁弁では、上記係止部は、上記アーム部と上記爪部とからなる組を複数有する。したがって、非作動時に、上記プランジャの上記他端を係止する強度が高まる。また、たとえ上記係止部を開放状態にしようとする変形の際に1本のアーム部が折れ
てしまったとしても、非作動時には、残りの組の上記アーム部と上記爪部とによって、上記プランジャの上記他端を係止することができる。
【0027】
一実施形態の電磁弁では、
上記ケーシングは、コの字状のヨークと、このヨークの開放端を塞ぐ板状のヨーク蓋とを有し、上記ヨーク蓋に上記貫通孔が形成されており、
上記ボビンは、上記本体部分と一体に成形された第2延在部分および第3延在部分を有し、
上記第2延在部分、上記第3延在部分は、上記ヨーク蓋の互いに対向する一対の辺にそれぞれ接しながら上記プランジャの移動経路と平行に上記ケーシングの外部へ延在していることを特徴とする。
【0028】
この一実施形態の電磁弁では、上記ボビンは、上記本体部分と一体に成形された第2延在部分および第3延在部分を有する。上記第2延在部分、上記第3延在部分は、上記ヨーク蓋の互いに対向する一対の辺にそれぞれ接しながら上記プランジャの移動経路と平行に上記ケーシングの外部へ延在している。すなわち、上記ボビンの上記第2延在部分、上記第3延在部分が、上記ヨーク蓋の上記一対の辺が対向する方向に関して、上記ヨーク蓋を挟んでいる。したがって、上記ヨーク蓋の上記一対の辺が対向する方向に関して、上記ボビン(ひいてはソレノイドコイル)と上記ヨーク蓋とが互いに位置決めされる。この結果、上記作動時に、上記ヨーク、上記ヨーク蓋、上記プランジャおよび上記コアを通る磁束が安定して、上記流体の流量調節の精度が高まる。
【0029】
一実施形態の電磁弁では、上記ヨーク蓋の上記一対の辺が対向する方向は、上記プランジャの移動経路の周りで上記係止部が上記外力を受ける方向と実質的に一致していることを特徴とする。
【0030】
ここで、上記係止部が上記「外力を受ける方向」とは、上記プランジャの移動経路に対して垂直な面内での方位を意味する。
【0031】
この一実施形態の電磁弁では、上記ヨーク蓋の上記一対の辺が対向する方向は、上記プランジャの移動経路の周りで上記係止部が上記外力を受ける方向と実質的に一致している。したがって、上記係止部が上記外力を受けたとしても、上記外力を受ける方向に関して上記ボビン(ひいてはソレノイドコイル)と上記ヨーク蓋とが互いに位置決めされている。したがって、上記プランジャおよび上記弁体を交換したとしても、上記外力によって上記ボビン(ひいてはソレノイドコイル)と上記ヨーク蓋とが位置ずれするような不具合が防止される。この結果、上記作動時における上記流体の流量調節の精度が維持される。
【0032】
別の局面では、この発明の電子血圧計は、
被測定部位の血圧を測定する電子血圧計であって、
被測定部位に装着されるカフと、
上記カフに空気を供給するためのポンプと、
上記電磁弁と、
上記ポンプによって上記カフへ空気を供給して上記カフを加圧するとともに、上記カフから上記電磁弁を通して空気を排気させて上記カフを減圧して、上記カフの圧力を制御する制御部とを備える。
【0033】
この発明の電子血圧計は、カフの圧力を制御するために上述の電磁弁を備えている。したがって、上記電磁弁において、プランジャと弁体を容易に交換できる。したがって、電磁弁全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、上記電磁弁内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上より明らかなように、この発明の電磁弁によれば、プランジャと弁体を容易に交換できる。したがって、電磁弁全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0035】
また、この発明の電子血圧計によれば、上記電磁弁において、プランジャと弁体を容易に交換できる。したがって、電磁弁全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、上記電磁弁内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
図1は、この発明の一実施形態の電磁弁(全体を符号2で示す。)の外観を斜めから見たところを示している。また、
図2は、上記電磁弁2を分解状態で示している。理解の容易のために、
図1、
図2および後述の
図3では、XYZ直交座標を併せて示している。以下では、例えばZ方向を上下または上下方向、Y方向を左右または左右方向と呼ぶことがあるが、それは説明の便宜のためにすぎず、Z方向が上下に限定されたり、Y方向が左右に限定されたりするものではない。
【0039】
図2によって良く分かるように、この電磁弁2は、コの字状のヨーク3と、このヨーク3の壁を貫通して取り付けられたコア4と、付勢部としてのコイルスプリング5と、棒状のプランジャ(可動鉄心)6と、コイルユニット7と、ヨーク3の開放端を塞ぐための板状のヨーク蓋90とを備えている。
【0040】
ヨーク3は、中央の側壁3cと、この中央の側壁3cに連なる両側の側壁3a,3bとを含み、全体として略コの字状の形状を有している。側壁3a,3bの先端(開放端)には、ヨーク蓋90の突起90e,90fが嵌合されるべき凹部3e,3fが形成されている。中央の側壁3cに、貫通孔3w(例えば
図4参照)が形成されている。この貫通孔3wに、コア4が嵌合して固定されている。
【0041】
図2中に示すように、コア4は、全体として略円筒状の形状を有している。このコア4は、軸方向(X方向)に関して、ヨーク3の貫通孔3wに嵌合して外部へ突出する突起部4aと、この突起部4aの外径よりも大きい外径をもつ主部4bと、この主部4bの外径よりも小さい外径をもつスプリング受け部4cとを、順に備えている。コア4の内部には、突起部4aからその反対側の端部4eまで軸方向に貫通して、流体を流通させるための流通口4dが形成されている。
【0042】
プランジャ6は、全体として略丸棒状の形状を有している。このプランジャ6は、軸方向(X方向)に関して、上記コア4のスプリング受け部4cと同じ外径をもつスプリング受け部6aと、上記コア4の主部4bの外径と同じ外径をもつ主部6bとを、順に備えている。プランジャ6の一端(コア4の流通口4dに対向する側の端部)6eには、ゴムのような弾性体からなる弁体61が取り付けられている。詳しくは、プランジャ6の一端6eに窪み6c(例えば
図4参照)が設けられ、この窪み6cに弁体61が嵌め込まれている。
【0043】
図2中に示すように、コイルスプリング5は、一方向(X方向)に螺旋状に延びる形状を有している。このコイルスプリング5は、上記コア4のスプリング受け部4cおよび上記プランジャ6のスプリング受け部6aの外径と実質的に等しい内径を有するとともに、上記コア4の主部4bおよび上記プランジャ6の主部6bの外径と実質的に等しい外径を有している。これにより、コイルスプリング5は、2つのスプリング受け部4c,6aに嵌合し、かつ2つの主部4b,6bの間に縮装されて、プランジャ6をコア4から遠ざける方向に付勢するようになっている(例えば
図4参照)。
【0044】
図2中に示すように、コイルユニット7は、非磁性のプラスチック材料からなるボビン8と、このボビン8に巻回されたソレノイドコイル9とを含んでいる。このコイルユニット7、特にボビン8の構成については、後に詳述する。
【0045】
ヨーク蓋90は、ヨーク3の開放端に対応する略矩形板状の形状を有している。ヨーク蓋90の上下(Z方向)に対向する一対の辺90a,90bは、それぞれ平坦に形成されている。一方、左右(Y方向)に対向する一対の辺には、ヨーク3の凹部3e,3fに嵌合すべき突起90e,90fが形成されている。ヨーク蓋90の中央には、略円形の貫通孔90mが形成されている。
【0046】
詳しくは、貫通孔90mは、プランジャ6の断面と実質的に対応する略円形の形状を有している。この貫通孔90mの上下(Z方向)には、ボビン8の係止部84,85(特に、後述するアーム部84a,85a)を通すために拡張された拡張領域90p,90qが形成されている。貫通孔90mの直径(拡張領域90p,90q以外の部分)は、上記プランジャ6の主部6bの外径と実質的に等しく設定されている。
【0047】
図3に詳細に示すように、ボビン8は、円筒状の主部81と、この主部81の軸方向(X方向)に関して一端(−X側端部)と他端(+X側端部)に設けられた平板状のエンドプレート82,83とを備えている。これらのエンドプレート82,83は、それぞれ主部81の中心軸に対して垂直に配置されている。エンドプレート82、83の間の主部81の外周面81aに、ソレノイドコイル9が巻回される。これらの主部81およびエンドプレート82,83は、ボビン8の本体部分(
図1に示す完成状態でヨーク3とヨーク蓋90とが作るケーシングに収容される)を構成している。
【0048】
主部81は、その内部に、軸方向(X方向)に延びる略円形の貫通孔81bを有している。この貫通孔81bには、流体を流通させるために拡張された幾つかの拡張領域81d,81d,…が形成されている。拡張領域81d,81d,…は、貫通孔81bの周方向に関して一定の角度間隔で形成され、それぞれX方向に延在している。貫通孔81bの直径(拡張領域81d,81d,…以外の部分)は、上記プランジャ6が摺動され得るように、上記プランジャ6の外径と実質的に等しい外径をもつ。
【0049】
上記+X側のエンドプレート83は、それぞれ+X側に延在または突出した第1延在部分としての係止部84,85と、第2延在部分としての突起86A,86Bと、第3延在部分としての突起87と、端子カバー88A,88Bとを有している。ボビン8は、これらの要素84,85,86A,86B,87,88A,88Bとともに、非磁性のプラスチック材料を用いて一体に成形されている。したがって、これらの要素84,85,86A,86B,87,88A,88Bを設けるために、わざわざ部品点数を増やす必要が無い。この結果、電磁弁2の製造コストが上昇するのを避けることができる。
【0050】
係止部84は、エンドプレート83の+X側の面内で貫通孔81bの真上に隣接する位置から+X側へ延在するアーム部84aと、このアーム部84aの先端から実質的に垂直に−Z側へ延在する、先端が途切れた爪部84bとを有する。一方、係止部85は、係止部84と上下対称に、エンドプレート83の+X側の面内で貫通孔81bの真下に隣接する位置から+X側へ延在するアーム部85aと、このアーム部85aの先端から実質的に垂直に+Z側へ延在する、先端が途切れた爪部85bとを有する。
【0051】
詳しくは後述するが、係止部84のアーム部84aは、先端側が外力によって+Z側へ撓むことができる。一方、係止部85のアーム部85aは、先端側が外力によって−Z側へ撓むことができる。
【0052】
また、爪部84b,85bの上記プランジャ6に当接する側とは反対の側(+X側)に、外部(+X方向)へ向かって開いたテーパ面84c,85cが設けられている。これらのテーパ面84c,85cは、貫通孔81bの周方向に沿って円弧状に湾曲している。
【0053】
突起86A,86Bは、エンドプレート83の上縁に沿って左右(Y方向)に配置され、それぞれ+X側へ延在している。突起87は、エンドプレート83の下部で左右(Y方向)に関して中央に配置され、+X側へ延在している。突起86A,86Bと突起87との間の上下方向(Z方向)の間隔は、ヨーク蓋90の上下方向の寸法(上下に対向する一対の辺90a,90bの間の距離)と実質的に一致している。これにより、ボビン8の貫通孔81bとヨーク蓋90の貫通孔90mとが一致した状態で、突起86A,86Bと突起87との間にヨーク蓋90が嵌まるようになっている。この例では、端子カバー88A,88Bは、エンドプレート83の下縁に沿って左右(Y方向)に配置され、それぞれ+X側へ延在している。この例では、エンドプレート83の+X側の面内での端子カバー88A,88Bの高さ(Z方向位置)は、突起87の高さよりも若干低く設定されているが、突起87の高さと同じであってもよい。
【0054】
なお、ボビン8にソレノイドコイル9が巻回されてコイルユニット7が構成された段階で、端子カバー88A,88Bのリード孔88b,88bには、それぞれソレノイドコイル9に連なるリード端子89A,89B(
図1参照)が通される。
【0055】
この電磁弁2の組み立ては、
図2中の要素をX方向に関して集約することによって行われる。例えば、ヨーク3に取り付けられたコア4のスプリング受け部4cに、コイルスプリング5の一端(−X側端部)を嵌合する。また、コイルユニット7(予めソレノイドコイル9が巻回されている。)のボビン8の貫通孔81bに、プランジャ6を収容する。その状態のボビン8をヨーク3の内部に収容して、コイルスプリング5の他端(+X側端部)に、プランジャ6のスプリング受け部6aを嵌合する。また、ボビン8のエンドプレート83にヨーク蓋90を接近させて、エンドプレート83の係止部84,85をヨーク蓋90の貫通孔90m(より正確には、拡張領域90p,90q)に通すとともに、エンドプレート83の突起86A,86Bと突起87との間にヨーク蓋90を嵌める。また、ヨーク3の開放端の凹部3e,3fにヨーク蓋90の突起90e,90fを嵌合する。最後にヨーク3にヨーク蓋90をカシメによって固定する。これにより、
図1に示した電磁弁2が完成する。
【0056】
ヨーク3、コア4、プランジャ6、ヨーク蓋90は、磁性材料からなり、作動時に磁気回路を構成することができる。特に、ヨーク3とヨーク蓋90とは、機械的強度を有する冷間圧延鋼板からなり、この電磁弁2のケーシングを構成する(以下では、適宜「ケーシング3,90」と呼ぶ。)。
【0057】
図4は、完成状態の電磁弁2(非作動時)の
図1〜
図3におけるZX面と平行な断面を模式的に示している(後述の
図5〜
図9でも同様。)。完成状態では、ボビン8の主部81内で、コア4の流通口4dとプランジャ6の一端6eに取り付けられた弁体61とが対向する。コア4は、ヨーク3に対して固定され、したがってボビン8の主部81に対して静止している。プランジャ6は、ボビン8の主部81内で軸方向に摺動可能になっている。なお、
図4(および後述の
図5〜
図9)中では、プランジャ6が移動する経路(これを「プランジャ移動経路」と呼ぶ。)6xを、プランジャ6の長手方向(つまり軸方向)に延びる一点鎖線で代表して表している(実際には、プランジャ移動経路6xは、プランジャ6の外径に相当するサイズを有する。)。コイルスプリング5は、コア4の主部4bとプランジャ6の主部6bとの間に縮装された状態で、プランジャ6をコア4から遠ざける方向に付勢する。
【0058】
また、係止部84,85の爪部84b,85bは、それぞれアーム部84a,85aの先端からプランジャ移動経路6xへ向かって延在する状態になる。また、アーム部84a,85aは、貫通孔90mを通してプランジャ移動経路6xに沿ってケーシング3,90の外部へ延在し、先端側が外力によってプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓むことができる状態になる。これにより、係止部84,85は、プランジャ6および弁体61のケーシング3,90からの離脱を許容するように外力によって弾性変形可能になっている。
【0059】
また、完成状態では、少なくともアーム部84a,85aがプランジャ移動経路6xから遠ざかる向き(
図4における上下方向)に関して、アーム部84a,85aと拡張領域90p,90qのアーム部84a,85aに対向する面との間にそれぞれ隙間d1,d2が設けられた状態になる。
【0060】
また、ボビン8のエンドプレート83の上側に設けられた突起86A,86Bと、下側に設けられた突起87が、ヨーク蓋90の互いに対向する一対の辺90a,90bにそれぞれ接しながらプランジャ移動経路6xと平行にケーシング3,90の外部へ延在している状態になる。
【0061】
図4に示すように、ソレノイドコイル9が無通電状態にある非作動時には、コイルスプリング5による付勢力によって、プランジャ6の一端6eに設けられた弁体61が流通口4dから離れる。そして、プランジャ6の他端6fがケーシング3,90から貫通孔90mを通して外部へ突出してケーシング3,90の外部に配置された係止部84,85の爪部84b,85bに当接して係止される(この係止部84,85の状態を「閉鎖状態」と呼ぶ。)。
【0062】
図5に示すように、ソレノイドコイル9が通電状態にある作動時には、ソレノイドコイル9が発生する磁力によってコイルスプリング5による付勢力に抗してプランジャ6とともに弁体61がボビン8内で移動される。これにより、流通口4dを通して流通する流体の流量が調節される。
【0063】
さて、様々に異なる流量特性を実現するなどのために分解の必要が生じた場合は、次のi)離脱、ii)挿入の手順でプランジャ6と弁体61を交換する。
【0064】
i)離脱
図6に示すように、ソレノイドコイル9が無通電状態にある非作動時に、係止部84,85を外力C1,C2によって弾性変形させて、プランジャ6を通過させ得る状態(これを「開放状態」と呼ぶ。)にする。詳しくは、例えば人の指による外力C1,C2によって、アーム部84aを上向きに、アーム部85aを下向きにそれぞれ撓ませる。すなわち、アーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる。これに伴って、爪部84b,85bがプランジャ移動経路6xから外れて、係止部84,85が開放状態になる。
【0065】
ここで、この電磁弁2では、少なくともアーム部84a,85aがプランジャ移動経路6xから遠ざかる向き(上下方向)に関して、アーム部84a,85aと拡張領域90p,90qのアーム部84a,85aに対向する面との間に隙間d1,d2が設けられている。したがって、外力C1,C2によって、アーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませるとき、アーム部84a,85aは、ボビン8のエンドプレート83に連なる根元から、拡張領域90p,90qのアーム部84a,85aに対向する面に当たることなく、隙間d1,d2を狭める態様で容易に撓む。したがって、より小さい外力C1,C2によって、係止部84,85を開放状態にすることができる。この結果、係止部84,85を開放状態にしようとする変形の際にアーム部84a,85aが折れるような事態を防止できる。
【0066】
続いて、
図7中に矢印A1で示す向きに、プランジャ6をプランジャ移動経路6xに沿って引き出すと、爪部84b,85bがプランジャ6の主部6bの外周面に接して、たとえ最初の外力C1,C2を取り去ったとしても、その外周面からアーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる力F1,F2を受ける状態になる。したがって、係止部84,85は開放状態を維持する。そこで、その開放状態のまま、プランジャ6および弁体61を、開放状態の係止部84,85を通してケーシング3,90の外部へ取り出す。
【0067】
このようにして、開放状態の係止部84,85を通して、プランジャ6および弁体61をケーシング3,90(すなわちボビン8)から離脱させることができる。
【0068】
ii)挿入
上述の元のプランジャ6の代わりに、一端6eに新たな弁体61が設けられた新たなプランジャ6(簡単のため、元のプランジャ6におけるのと同じ符号を用いて説明する。)を、次のようにしてケーシング3,90の内部(より正確には、ボビン8)に挿入する。なお、元のプランジャ6および弁体61をケーシング3,90から離脱させた後、一旦係止部84,85に対する外力が取り去られて、係止部84,85が閉鎖状態にあるものとする。
【0069】
まず、
図8中に矢印B1で示す向きに、一端6eに弁体61が設けられた新たなプランジャ6を、プランジャ移動経路6xに沿って係止部84,85に接近させる。
【0070】
ここで、この電磁弁2では、爪部84b,85bに、ケーシング3,90の外部へ向かって開いたテーパ面84c,85cが設けられている。したがって、新たなプランジャ6をケーシング3,90の外部から移動経路6xに沿って内部へ挿入しようとすれば、まず、新たなプランジャ6の一端6e(弁体61が設けられた端部)の縁部6gが爪部84b,85bのテーパ面84c,85cに当接する。これにより、係止部84,85(の爪部84b,85b)は、新たなプランジャ6の一端6eの縁部6gから、外力として、アーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる力F3,F4を受ける。続いて、新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かって押し込むと、アーム部84a,85aがプランジャ移動経路6xから遠ざかる向き(上下方向)に撓み、爪部84b,85bが部分的にプランジャ移動経路6xから外れて、係止部84,85が部分的な開放状態になる。
図9中に矢印B2で示すように、新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かってさらに押し込むと、爪部84b,85bが新たなプランジャ6のスプリング受け部6aの外周面に接して、その外周面からアーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる力F5,F6を受ける状態になる。したがって、係止部84,85は部分的な開放状態を維持する。
【0071】
この
図9の状態から新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かってさらに押し込むと、新たなプランジャ6の主部6bの縁部6hが爪部84b,85bのテーパ面84c,85cに当接する。これにより、係止部84,85(の爪部84b,85b)は、新たなプランジャ6の主部6bの縁部6hから外力として、アーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる力(図示せず)を受ける。続いて、
図7中に矢印B3で示すように、新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かってさらに押し込むと、アーム部84a,85aがプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きにさらに撓み、爪部84b,85bが新たなプランジャ6の主部6bの外周面に接して、その外周面からアーム部84a,85aをプランジャ移動経路6xから遠ざかる向きに撓ませる力F1,F2を受ける状態になる。これにより、係止部84,85は完全な開放状態を維持する。その開放状態のまま、新たなプランジャ6および弁体61を、開放状態の係止部84,85、貫通孔90mを通してケーシング3,90の内部に挿入する。
【0072】
新たなプランジャ6および弁体61がケーシング3,90の内部に完全に挿入されれば、係止部84,85に対する外力F1,F2が取り去られる。その結果、係止部84,85が元の形状に戻って、新たに挿入されたプランジャ6の通過を禁止する閉鎖状態になる。すなわち、非作動時には、新たに挿入されたプランジャ6の他端6f(弁体61が設けられた一端6eと反対側の端部)がケーシング3,90から貫通孔90mを通して外部へ突出して係止部84,85(の爪部84b,85b)に当接して係止される。
【0073】
このようにして新たなプランジャ6および弁体61を挿入する場合、係止部84,85は、押し込まれる新たなプランジャ6から外力Fを受けて開放状態になる。したがって、係止部84,85に対して別途の外力Fを与える必要がなく、便利である。
【0074】
このようにして、この電磁弁2では、プランジャ6と弁体61を容易に交換できる。したがって、新たな弁体61の流通口4dに対向する面の角度や硬度を交換前のものに対して変化させることで、電磁弁2全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、内部のメンテナンスを容易に行うことができる。なお、プランジャ6自体(金属部)を再利用し、弁体61のみを交換してもよい。
【0075】
この電磁弁2では、
図3中に示したように、一対の係止部84,85の爪部84b,85bに、外部(+X方向)へ向かって開いたテーパ面84c,85cが設けられている。これらのテーパ面84c,85cは、貫通孔81bの周方向に沿って円弧状に湾曲している。したがって、
図8から
図9に示すように、新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かって押し込むとき、新たなプランジャ6の一端6eの縁部6gが周方向に関して部分的にテーパ面84c,85cによって取り囲まれる態様になる。この結果、新たなプランジャ6の一端6eが係止部84,85の爪部84b,85bの間から外れにくくなり、新たなプランジャ6をケーシング3,90の内部へ向かって容易に押し込むことができる。
【0076】
また、例えば
図6中に示すように、この電磁弁2では、ボビン8のエンドプレート83の上側に設けられた突起86A,86Bと、下側に設けられた突起87が、ヨーク蓋90の互いに対向する一対の辺90a,90bにそれぞれ接しながらプランジャ移動経路6xと平行にケーシング3,90の外部へ延在している。すなわち、上側に設けられた突起86A,86Bと、下側に設けられた突起87が、ヨーク蓋90の一対の辺90a,90bが対向する方向(
図6における上下方向)に関して、ヨーク蓋90を挟んでいる。したがって、ヨーク蓋90の一対の辺90a,90bが対向する方向に関して、ボビン8(ひいてはソレノイドコイル9)とヨーク蓋90とが互いに位置決めされている。この結果、作動時に、ヨーク3、ヨーク蓋90、プランジャ6およびコア4を通る磁束が安定して、流体の流量調節の精度が高まる。
【0077】
しかも、ヨーク蓋90の一対の辺90a,90bが対向する方向(
図6における上下方向)は、プランジャ移動経路6xの周りで係止部84,85がプランジャ6および弁体61の交換のために外力(C1,C2等)を受ける方向と一致している。したがって、プランジャ6および弁体61を交換したとしても、外力によってボビン8(ひいてはソレノイドコイル9)とヨーク蓋90とが位置ずれするような不具合が防止される。この結果、作動時における流体の流量調節の精度が維持される。
【0078】
この電磁弁2では、係止部は、アーム部84aと爪部84bとからなる組84と、アーム部85aと爪部85bとからなる組85との、2組とした。したがって、係止部が1組のみの場合に比して、非作動時に、プランジャ6の他端6fを係止する強度が高まる。また、たとえ係止部84,85を開放状態にしようとする変形の際に或る組の係止部(例えばアーム部84a)が折れてしまったとしても、非作動時には、残りの組の係止部(この例では85)によって、プランジャ6の他端6fを係止することができる。なお、アーム部と爪部とからなる係止部は、1組のみ設けてもよいし、3組以上設けてもよい。
【0079】
図10は、この発明の一実施形態の電子血圧計(全体を符号1で示す。)の概略的なブロック構成を示している。この血圧計1は、カフ20と、本体10と、この本体10に搭載された、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)100、表示器50、記憶部としてのメモリ51、操作部52、電源部53、ポンプ32、既述の電磁弁2からなる弁33、および圧力センサ31を含む。また、本体10は、この本体10に搭載された、圧力センサ31からの出力を周波数に変換する発振回路310、ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路320、弁33を駆動する弁駆動回路330を有する。
【0080】
上記表示器50は、ディスプレイおよびインジケータ等を含み、CPU100からの制御信号に従って所定の情報を表示する。
【0081】
上記操作部52は、電源部53をON(オン)またはOFF(オフ)するための指示の入力を受け付ける電源スイッチ52Aと、血圧の測定開始の指示を受け付けるための測定スイッチ52Bと、測定停止の指示を受け付けるための停止スイッチ52Cとを有する。これらのスイッチ52A,52B,52Cは、ユーザによる指示に応じた操作信号をCPU100に入力する。
【0082】
上記メモリ51は、血圧計1を制御するためのプログラムのデータ、血圧計1を制御するために用いられるデータ、血圧計1の各種機能を設定するための設定データ、および血圧値の測定結果のデータなどを記憶する。また、メモリ51は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0083】
上記CPU100は、メモリ51に記憶された血圧計1を制御するためのプログラムに従ってカフ圧制御部として働いて、操作部51からの操作信号に応じて、ポンプ32や弁33を駆動する制御を行う。また、CPU100は、圧力センサ31からの信号に基づいて、血圧値を算出し、表示器50およびメモリ51を制御する。
【0084】
上記電源部53は、CPU100、圧力センサ31、ポンプ32、弁33、表示器50、メモリ51、発振回路310、ポンプ駆動回路320、および弁駆動回路330の各部に電力を供給する。
【0085】
上記ポンプ32は、カフ20に内包された流体袋22内の圧力(カフ圧)を加圧するために、流体袋22に空気を供給する。弁33は、流体袋22の空気を排出し、または封入してカフ圧を制御するために開閉される。ポンプ駆動回路320は、ポンプ32をCPU100から与えられる制御信号に基づいて駆動する。弁駆動回路330は、弁33をCPU100から与えられる制御信号に基づいて開閉する。
【0086】
上記圧力センサ31と発振回路310は、カフの圧力を検出する圧力検出部として働く。圧力センサ31は、例えば、ピエゾ抵抗式圧力センサであり、カフ用エアチューブ39を介して、ポンプ32、弁33およびカフ20に内包されている流体袋22に接続されている。この例では、発振回路310は、圧力センサ31からのピエゾ抵抗効果による電気抵抗の変化に基づく電気信号値に基づき発振して、圧力センサ31の電気信号値に応じた周波数を有する周波数信号をCPU100に出力する。
【0087】
一般的なオシロメトリック法に従って血圧を測定する場合、概ね、次のような動作が行なわれる。すなわち、被験者の被測定部位(腕など)に予めカフを巻き付けておき、測定時には、ポンプ・弁を制御して、カフ圧を最高血圧より高く加圧し、その後徐々に減圧していく。この減圧する過程において、カフ圧を圧力センサで検出し、被測定部位の動脈で発生する動脈容積の変動を脈波信号として取り出す。その時のカフ圧の変化に伴う脈波信号の振幅の変化(主に立ち上がりと立ち下がり)に基づいて、最高血圧(収縮期血圧:Systolic Blood Pressure)と最低血圧(拡張期血圧:Diastolic Blood Pressure)とを算出する。
【0088】
この血圧計1では、CPU100によって、
図11のフローに従ってオシロメトリック法により被験者の血圧値が測定される。
【0089】
具体的には、電源スイッチ52AがONされた状態で測定スイッチ52Bが押されると、
図11に示すように、血圧計1は血圧測定を開始する。血圧測定開始に際して、CPU100は、処理用メモリ領域を初期化し、弁駆動回路330に制御信号を出力する。弁駆動回路330は、制御信号に基づいて、弁33を開放してカフ20の流体袋22内の空気を排気する。続いて、圧力センサ31の0mmHgの調整を行う制御を行う。
【0090】
血圧測定を開始すると、まず、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を閉鎖し、その後、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を駆動して、流体袋22に空気を送る制御を行う。これにより、流体袋22を膨張させるとともにカフ圧を徐々に加圧していく(ステップST101)。
【0091】
カフ圧が加圧されて所定の圧力に達すると(ステップST102でYES)、CPU100は、ポンプ駆動回路320を介してポンプ32を停止し、その後、弁駆動回路330を介して弁33を徐々に開放する制御を行う。これにより、流体袋22を収縮させるとともにカフ圧を徐々に減圧していく(ステップST103)。
【0092】
ここで、所定の圧力とは、被験者の収縮期血圧よりも十分高い圧力(例えば、収縮期血圧+30mmHg)であり、予めメモリ51に記憶されているか、カフ圧の加圧中にCPU100が収縮期血圧を所定の算出式により推定して決定する(例えば特開2001−70263号公報参照。)。
【0093】
また、減圧速度については、カフの加圧中に目標となる目標減圧速度を設定し、その目標減圧速度になるようにCPU100が弁33の開口度を制御する(同公報参照。)。
【0094】
上記減圧過程において、カフ20を介して、カフ20の圧力を表すカフ圧信号(符号Pcで表す。)を圧力センサ31が検出する。CPU100は、このカフ圧信号Pcに基づいて、オシロメトリック法により後述のアルゴリズムを適用して血圧値(収縮期血圧と拡張期血圧)を算出する(ステップST104)。なお、血圧値の算出は、減圧過程に限らず、加圧過程において行われてもよい。
【0095】
血圧値を算出して決定すると(ステップST105でYES)、CPU100は、算出した血圧値を表示器50へ表示し(ステップST106)、血圧値をメモリ51へ保存する制御を行う(ステップST107)。
【0096】
次に、停止スイッチ52Cが押されると、CPU100は、弁駆動回路330を介して弁33を開放し、カフ20の流体袋22内の空気を排気する制御を行う(ステップST108)。
【0097】
この後、上記電源スイッチ52Aが押されると、血圧測定を終了する。
【0098】
この電子血圧計1によれば、弁33において、プランジャ6と弁体61を容易に交換できる。したがって、弁33全体を変更することなく様々に異なる流量特性を容易に実現できる。また、弁33内部のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0099】
上述の実施形態は例示に過ぎず、この発明の範囲から逸脱することなく種々の変形が可能である。