特許第6248440号(P6248440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248440
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20171211BHJP
   H01H 50/16 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01H50/02 B
   H01H50/16 Y
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-147054(P2013-147054)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18779(P2015-18779A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高谷 幸悦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健司
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−067681(JP,A)
【文献】 実開昭50−144517(JP,U)
【文献】 特開2012−199108(JP,A)
【文献】 実開昭57−082823(JP,U)
【文献】 国際公開第2006/104080(WO,A1)
【文献】 特開2007−113914(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/080555(WO,A1)
【文献】 特開昭60−206006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/02
H01H 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子に対して可動接触子が接離可能に配置された接点装置と、
該接点装置の可動接触子を可動する電磁石ユニットと、
少なくとも前記電磁石ユニットを収納保持する外装ケースとを備え、
前記電磁石ユニットは、電磁石を構成する励磁コイルを囲む底板部と一対の側板部とを有する磁気ヨークを有し、
前記一対の側板部は、下端側に形成された幅狭部と上端側に形成された幅広部とを有し、前記幅狭部および前記幅広部の少なくとも一方に前記外装ケースの嵌入部に嵌合する嵌合凸部を形成した
ことを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記嵌合凸部は、前記幅狭部に前記嵌合凸部が形成され、前記外装ケースの四隅に前記嵌合凸部が嵌合する嵌入用突出部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記嵌合凸部は鋸歯形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記外装ケースは、前記電磁石ユニットを収容する下部ケースと、前記接点装置を収容する上部ケースとを備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記上部ケースは、前記外装ケースの上端を外方から挟持するように係合する係合板部を備えていることを特徴とする請求項に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定接触子に対して可動接触子が接離可能に配置された接点装置と、この接点装置の可動接触子を可動する電磁石ユニットとを備えた電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流路の開閉を行う電磁接触器では、可動接触子を電磁石ユニットの励磁コイル及び可動プランジャで駆動するようにしている。すなわち、励磁コイルが非励磁状態であるときに、可動プランジャが復帰スプリングによって付勢されて、可動接触子が所定間隔を保って配置された一対の固定接触子から離間している釈放状態となる。この釈放状態から、励磁コイルを励磁することにより、可動プランジャが復帰スプリングに抗して可動されて、可動接触子が一対の固定接触子に接触して投入状態となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3107288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、封止接点部および駆動部を覆うハウジングを設け、このハウジングが駆動部を覆う上端を開放した箱状の下側ハウジングと、この下側ハウジングの上端に接合する封止接点部を覆う上側ハウジングとで構成されている。
ここで、駆動部は励磁コイルを囲むように例えば前後端面を開放した方形枠状のヨークを有し、この方形枠状のヨークの両側板部を下側ハウジングに収容され、封止接点部が上側ハウジングに固定接触子を上面から突出させて収容されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、ハウジング内に封止接点部および駆動部が収容されているが、ハウジングに大きな衝撃が加わった際に、上下のハウジングの接合部に全ての応力が生じ、接合が外れて封止接点部および駆動部が飛散してしまう可能性があるという未解決の課題がある。
また、ある周波数帯で振動がハウジングに加わると、封止接点部および駆動部や上側ハウジングおよび下側ハウジングの接合部で共振が発生し、この共振によって接合が外れて封止接点部および駆動部が飛散してしまう可能性があるという未解決の課題がある。
【0006】
この未解決の課題を解決するために、少なくとも駆動部を収容する下側ハウジング内に接着剤や樹脂を封入することにより、駆動部と下側ハウジングとを一体化させることが考えられる。しかしながら、この場合には駆動部と下側ハウジングとの間に接着剤や樹脂を封入するので、製品重量が重くなると共に,製造コストが嵩み、さらに組み立て作業性が悪い等の新たな課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、外装ケースと駆動部となる電磁石ユニットとの結合を重量増となることなく確実に行うことができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電磁接触器の態様は、固定接触子に対して可動接触子が接離可能に配置された接点装置と、該接点装置の可動接触子を可動する電磁石ユニットと、少なくとも前記電磁石ユニットを収納保持する外装ケースとを備えている。前記電磁石ユニットは、電磁石を構成する励磁コイルを囲む底板部と一対の側板部とを有する磁気ヨークを有し、前記一対の側板部は、下端側に形成された幅狭部と上端側に形成された幅広部とを有し、前記幅狭部および前記幅広部の少なくとも一方に前記外装ケースの嵌入部に嵌合する嵌合凸部を形成ている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも比較的重量がある電磁石ユニットを外装ケースに嵌合保持させたので、外装ケースに大きな衝撃が加わった際や、共振が発生した場合でも電磁石ユニットが外装ケースから離脱することなく確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る電磁接触器の一例を示す斜視図である。
図2】本発明に係る電磁接触器の外装ケースを取り外した状態の斜視図である。
図3】下側ケース部を上面側から見た状態の斜視図である。
図4図1のA−A線状の断面図である。
図5】接点装置及び電磁石ユニットを一体化させた下部ケースとこれに装着する上部ケースとを示す断面図である。
図6】電磁石ユニットを樹脂封止によって下部ケース部に一体化させる場合を示す参考図である。
図7】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態の接点装置および電磁石ユニットを一体化させた下部ケースとこれに装着する上部ケースとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を伴って説明する。
図1は本発明に係る電磁接触器の第1の実施形態を示す斜視図、図2は外装ケースを取り外した状態の斜視図、図3は下部ケースを上方から見た状態の斜視図、図4図1のA−A線上の断面図である。
図中、10は電磁接触器であり、この電磁接触器10は図2に示すように接点機構を配置した接点装置100と、この接点装置100を駆動する電磁石ユニット200とが一体化された電磁接触器本体300と、この電磁接触器本体300を覆う外装ケース400とで構成されている。
【0012】
電磁接触器本体300を構成する接点装置100の具体的構成は、図4に示すように、下端面を開放した接点収納ケース101を有する。この接点収納ケース101は、上下端面を開放した金属製の角筒体102と、この角筒体102の上端面を閉塞する例えばセラミックス製の天板103と、角筒体102の内周面に配設された上端を開放した有底角筒体104とで構成されている。
【0013】
接点収納ケース101内には接点機構105が収納されている。この接点機構105は、左右一対の固定接触子106aおよび106bと、これら固定接触子106aおよび106bの接点に接離可能に配置された可動接触子120とを備えている。
左右一対の固定接触子106aおよび106bのそれぞれは、所定間隔を保って左右対象に配置された断面U字状に形成された接点部107aおよび107bと、これら接点部107aおよび107bの上端に接合された外部接続端子108aおよび108bとで構成されている。接点部107aの下板部を除く側板部および上板部の内周面が絶縁カバー109aおよび109bで覆われている。
【0014】
可動接触子120は、後述する電磁石ユニット200の可動プランジャ215に固定された連結軸131に支持された接点板部121を有し、この接点板部121の左右端部が固定接触子106aおよび106bの接点部107aおよび107bの上板部および下板部間に挿入されている。連結軸131は、上端に外方に突出するフランジ部131aが形成されている。この連結軸131に下端側から接触スプリング132を挿通し、次いで可動接触子120の貫通孔133を挿通して、接触スプリング132の上端をフランジ部131aに当接させこの接触スプリング132で所定の付勢力を得るように可動接触子120を例えばCリング134によって位置決めする。
【0015】
この可動接触子120は、釈放状態で、両端の接点部120aと固定接触子106aおよび106bの接点部107aおよび107bとが所定間隔を保って離間した状態となる。また、可動接触子120は、投入位置で、両端下面に形成された接点部120aが固定接触子106a及び106bの接点部107aおよび107bの下板部118にある接点110aに、接触スプリング132による所定の接触圧で接触するように設定されている。
【0016】
電磁石ユニット200は、図4に示すように、側面から見て扁平なU字形状の磁気ヨーク201を有し、この磁気ヨーク201の底板部201aの中央部に円筒状補助ヨーク203が固定されている。この円筒状補助ヨーク203の外側にスプール204が配置されている。
このスプール204は、円筒状補助ヨーク203を挿通する中央円筒部205と、この中央円筒部205の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部206と、中央円筒部205の上端から半径方向外方に突出する上フランジ部207とで構成されている。そして、中央円筒部205、下フランジ部206及び上フランジ部207で構成される収納空間に励磁コイル208が巻装されている。
【0017】
そして、磁気ヨーク201の開放端となる上端間に上部磁気ヨーク210が固定されている。この上部磁気ヨーク210は、中央部にスプール204の中央円筒部205に対向する貫通孔210aが形成されている。
そして、スプール204の中央円筒部205内に、底部と後述するキャップの底部との間に復帰スプリング214を配設した可動プランジャ215が上下に摺動可能に配設されている。この可動プランジャ215には、上部磁気ヨーク210から上方に突出する上端部に半径方向外方に突出する周鍔部216が形成されている。
【0018】
また、上部磁気ヨーク210の上面に、例えば外形が方形で円形の貫通孔220aを有して環状に形成された永久磁石220が可動プランジャ215の周鍔部216を囲むように固定されている。この永久磁石220は上下方向すなわち厚み方向に上端側を例えばN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。
そして、永久磁石220の上端面に、永久磁石220と同一外形で可動プランジャ215の周鍔部216の外径より小さい内径の貫通孔224を有する補助ヨーク225が固定されている。この補助ヨーク225の下面に可動プランジャ215の周鍔部216が当接されている。
なお、永久磁石220の形状は上記に限定されるものではなく、円環状に形成することもでき、要は内周面が周鍔部216の形状に合わせた形状であれば外形は円形、多角形等の任意形状とすることができる。
また、可動プランジャ215の上端面には上述した可動接触子120を支持する連結軸131が螺着されている。
【0019】
そして、可動プランジャ215が非磁性体製で有底筒状に形成されたキャップ230で覆われ、このキャップ230の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部231が上部磁気ヨーク210の下面にシール接合されている。また、接点収納ケース101の角筒体102の底面が上部磁気ヨーク210の上面にシール接合されている。これによって、接点装置100と電磁石ユニット200とが一体化されているとともに、接点収納ケース101及びキャップ230が上部磁気ヨーク210の貫通孔210aを介して連通される気密室240が形成されている。そして、接点収納ケース101及びキャップ230で形成される気密室240内に水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF等のガスが封入されている。
【0020】
また、磁気ヨーク201は、底板部201aと、この底板部201aの前後端部から上方に直角に折り曲げられた側板部201bおよび201cとで扁平なU状に形成されている。側板部201bおよび201cは、図2に示すように、底板部201aに連接する幅狭部201dとこの幅狭部201dの上端に連接する幅狭部201dより幅広に形成された幅広部201eとで構成されている。そして、幅狭部201dの左右端面にそれぞれ外方に突出する嵌合凸部201fが形成されている。この嵌合凸部201fは、鋸歯形状に形成され、下端側の端面から斜め外方に傾斜する傾斜部201gとこの傾斜部201gの頂点から内方に端面まで端面に対して略直角に延長する折り返し部201hとが上方に連続して形成されている。
【0021】
一方、外装ケース400は、図3図5に示すように、電磁石ユニット200を収容する上端を開放した下部ケース400aと、この下部ケース400aの上端に係止される上部ケース400bとで構成されている。
下部ケース400aは、上端面を開放した有底角筒状に形成されている。この下部ケース400aには、少なくとも外面の前端面下部に図1に示すようにネジ挿通孔が下部ケース400aの長手方向に形成された取付用板部401が形成され、内周面には図3に示すように四隅に電磁石ユニット200の嵌合凸部を嵌合する嵌入部としての断面L字状の嵌入用角筒部402が形成されている。また、図5に示すように、左右側板部404aおよび404bの上端側における前後端部寄り位置に4つの係合孔405が形成されている。
【0022】
そして、下部ケース400aの上方側から接点装置100を一体化した電磁石ユニット200を挿入して、前後の左右一対の嵌入用角筒部402間に電磁石ユニット200を嵌合させる。このとき、図5に示すように、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の側板部201bおよび201cにおける幅狭部201dの左右端面に形成された嵌合凸部201fを嵌入用角筒部402の壁面に嵌合される。このため、電磁石ユニット200の下部ケース400aから上方への移動が確実に規制される。
【0023】
一方、上部ケース400bは、図5に示すように、下端面を開放した角筒状に形成され、上板部411aには、接点装置100の外部接続端子108aおよび108bを外部に望ませる貫通孔412が形成され、左右側板部411bおよび411cには前後端部寄り位置にそれぞれ下方に突出する係合板部413が突出形成されている。この係合板部413は、図5に示すように、下端側の外面に外方に突出するフック部414が形成されている。
【0024】
そして、上部ケース400bを、図5に示すように、接点装置100を一体化させた電磁石ユニット200を嵌合固定した下部ケース400aに上方から装着する。このとき、接点装置100の外部接続端子108aおよび108bを、貫通孔412を通じて外部に突出させるとともに、係合板部413のフック部414を下部ケース400aの係合孔405に係合させることにより、上部ケース400bを下部ケース400aに固定することができる。
【0025】
次に、上記第1の実施形態の動作を説明する。
今、固定接触子106aの接点部107aに接続された外部接続端子108aが例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、固定接触子106bの接点部107bに接続された外部接続端子108bが負荷に接続されているものとする。
この状態で、電磁石ユニット200における励磁コイル208が非励磁状態にあって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。この釈放状態では、可動プランジャ215が復帰スプリング214によって、上部磁気ヨーク210から離れる上方向に付勢される。これと同時に、永久磁石220の磁力による吸引力が補助ヨーク225に作用されて、可動プランジャ215の周鍔部216が吸引される。このため、可動プランジャ215の周鍔部216の上面が補助ヨーク225の下面に当接している。
【0026】
この釈放状態から、電磁石ユニット200の励磁コイル208を励磁すると、この電磁石ユニット200で励磁力を発生させて、可動プランジャ215を復帰スプリング214の付勢力及び環状永久磁石220の吸引力に抗して下降させる。この可動プランジャ215の下降が、周鍔部216の下面が上部磁気ヨーク210の上面に当接することにより停止される。
このように、可動プランジャ215が下降することにより、可動プランジャ215に連結軸131を介して連結されている可動接触子120も下降し、その接点部120aが固定接触子106a及び106bの接点110aに接触スプリング132の接触圧で接触する。
【0027】
このため、外部電力供給源の大電流が固定接触子106a、可動接触子120、及び固定接触子106bを通じて負荷に供給される閉極状態となる。
この接点機構の閉極状態から、負荷への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット200の励磁コイル208の励磁を停止する。
これによって、電磁石ユニット200で可動プランジャ215を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ215が復帰スプリング214の付勢力によって上昇し、周鍔部216が補助ヨーク225に近づくに従って環状永久磁石220の吸引力が増加する。
【0028】
この可動プランジャ215が上昇することにより、連結軸131を介して連結された可動接触子120が上昇する。これに応じて接触スプリング132で接触圧を与えている間は可動接触子120が固定接触子106a及び106bに接触している。その後、接触スプリング132の接触圧がなくなった時点で可動接触子120が固定接触子106a及び106bから上方に離間する開極状態となる。
【0029】
この開極開始状態となると、固定接触子106a及び106bの接点110aと可動接触子120の接点120aとの間にアークが発生し、このアークによって電流の通電状態が継続される。このとき、固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部を覆う絶縁カバー109a及び109bが装着されているので、アークを固定接触子106a及び106bの接点110aと可動接触子120の接点120aとの間のみに発生させることができる。このため、アークが固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部上を動くことを確実に防止してアークの発生状態を安定させることができ、消弧性能を向上させることができる。しかも、固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの上板部及び側板部の両側面も絶縁カバー109a及び109bで覆うことにより、アークの先端が短絡することも確実に防止することができる。
アークは固定接触子106a及び106bの接点部107a及び107bの左右両側に引き伸ばされて消弧される。
【0030】
以上が電磁接触器10の動作であるが、電磁接触器10に外部から衝撃力が作用されたり、共振が発生したりして、電磁石ユニット200に対して下部ケース400aから上方に抜け出す力が作用したものとする。
このとき、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の側板部201b及び201cにおける幅狭部201dに形成された鋸歯状の嵌合凸部201fが下部ケース400aの内周面四隅に形成された嵌入用角筒部402に食い込んで嵌合される。したがって、電磁石ユニット200と下部ケース400aとが強固に連結された状態となっている。このため、電磁石ユニット200が下部ケース400aから上方に抜け出すことが確実を防止することができる。
【0031】
しかも、この電磁石ユニット200の下部ケース400aからの抜け出しを、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201に形成した鋸歯状の嵌合凸部201fと、下部ケース400aの四隅に設けた嵌入用角筒部402とを嵌合させるだけで確実に防止することができる。したがって、抜け出し防止のために新たな部品を追加したり重量増となったりすることがなく、全体を小型且つ軽量化することができる。
さらに、有底角筒状の下部ケース400aの底部側で嵌合凸部201fと嵌入用角筒部402とを嵌合させるので、嵌合凸部201fを嵌入用角筒部402に嵌合させる際に、下部ケース400aが外方に開くことがなく、嵌合凸部201fと嵌入用角筒部402との嵌合を確実に行うことができる。
【0032】
ちなみに、嵌合凸部201fを設けない場合には、電磁石ユニット200と下部ケース400aとを連結するために、図6に示すように、電磁石ユニット200と下部ケース400aとの連結部に合成樹脂材や接着剤等の充填材450を充填する必要があり、この充填材450の充填に手間が掛かり、組み立て作業を効率良く行うことができないとともに、重量も増加することになり、小型化・軽量化を図ることができない。
しかしながら、本実施形態では、上述したように、電磁石ユニット200に形成した嵌合凸部201fを下部ケース400aの嵌入用角筒部402に嵌合させるだけでよく、簡易な構成で電磁石ユニット200と下部ケース400aとを強固に一体化することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態について図7及び図8を伴って説明する。
この第2の実施形態では、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の幅狭部に嵌合凸部を形成する場合に代えて幅広部に嵌合凸部を形成するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図8に示すように、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の側板部201b及び201cの幅狭部201dに鋸歯状の嵌合凸部201fを形成する場合に代えて、側板部201b及び201cの幅広部201eの左右両端部面に鋸歯状の嵌合凸部250を形成するようにしたものである。
【0034】
また、上部ケース400bの係合板部413が下部ケース400aの外側から係合孔405に係止されるようにフック部414が内側に形成されている。
その他の構成については前述した第1の実施形態と同様の構成を有し、図5との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第2の実施形態によると、図8に示すように、下部ケース400aに電磁石ユニット200を挿入することにより、電磁石ユニット200の磁気ヨーク201の側板部201b及び201cにおける幅広部201eの左右両端面に形成した鋸歯状の嵌合凸部250が下部ケース400aの左右側板部404a及び404bの内周面に嵌合される。
【0035】
この状態で、上部ケース400bを下部ケース400aにその上方から装着すると、係合板部413のフック部414が下部ケース400aの外表面に接触して係合板部413が外側に撓み、その後、フック部414が下部ケース400aの係合孔405に係合することにより、上部ケース400bが下部ケース400aに一体化される。
この第2の実施形態においても、下部ケース400aに電磁石ユニット200の磁気ヨーク201における側板部201b及び201cに形成された鋸歯状の嵌合凸部250が下部ケース400aの内周面に嵌合している。このため、電磁石ユニット200に下部ケース400aから上方に抜け出す力が作用したときに、嵌合凸部250の嵌合によって電磁石ユニット200の抜け出しを阻止することができる。
【0036】
このとき、嵌合凸部250が下部ケース400aの開放端部側に嵌合しているので、下部ケース400aが外側に撓み易く、嵌合凸部250の下部ケース400aへの嵌合力が低下する可能性がある。しかしながら、本実施形態では、上部ケース400bの係合板部413が下部ケース400aの外表面に接触しているので、係合板部413によって上部ケース400bの外側への撓みを抑制することができ、嵌合凸部250の嵌合状態を維持することができる。
【0037】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、接点装置100及び電磁石ユニット200について一例を説明したに過ぎず、接点装置100及び電磁石ユニット200の内部構成は任意の構成とすることができる。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、下部ケース400aの前後方向の下部側に取付用板部401が形成されて下部ケースが取付面に対して直角な方向に延長する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ネジ挿通孔が下部ケース400aの長手方向と直行する方向となるように形成するようにしてもよい。
【0038】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、嵌合凸部201f及び250が鋸歯状に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、波形に形成したり、三角波形に形成したりすることができ、要は下部ケース体400aに食い込むように嵌合して、大きな嵌合保持力を発生できれば良いものである。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、磁気ヨーク201の側板部201b及び201cの双方に嵌合凸部201f及び250を形成した場合について説明したが、何れか一方の側板部に嵌合凸部201f及び250を形成するようにしてもよく、さらには、磁気ヨーク201の底板部201aの外側端面又は外側端面に形成した嵌合片に嵌合凸部201f及び250を形成するようにしてもよい。
【0039】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、接点収納ケース101及びキャップ230で気密室240を構成し、この気密室240内にガスを封入する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、遮断する電流が低い場合にはガス封入を省略するようにしてもよい。
また、上記第1及び第2の実施形態においては、外装ケース400を下部ケース400a及び上部ケース400bで分割構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、下部ケース400aと上部ケース400bとを一体化して、上端面又は下端面を開放した角筒状に形成し、上端面又は下端面を閉塞する閉塞板部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…電磁接触器、100…接点装置、101…接点収納ケース、106a,106b…固定接触子、107a,107b…接点部、120…可動接触子、200…電磁石ユニット、201…磁気ヨーク、201f…嵌合凸部、203…円筒状補助ヨーク、204…スプール、208…励磁コイル、210…上部磁気ヨーク、214…復帰スプリング、215…可動プランジャ、220…永久磁石、225…補助ヨーク、250…嵌合凸部、400…外装ケース、400a…下部ケース、400b…上部ケース、401…取付用板部、402…嵌入用角筒部、413…係合板部
図1
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図5
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図7
図8