特許第6248445号(P6248445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248445
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】LSI設計装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/50 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G06F17/50 666S
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-151333(P2013-151333)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2015-22609(P2015-22609A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091476
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 浩
(72)【発明者】
【氏名】石栗 治郎
(72)【発明者】
【氏名】町谷 雄二
【審査官】 早川 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−132113(JP,A)
【文献】 特開2006−041087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LSIレイアウトパターンを構成する複数の図形をベクタ形式の図形データとして格納するレイアウトデータ格納部と、
オペレータの操作に基づいて、前記レイアウトデータ格納部に新たな図形データを格納し、必要に応じてこれに修正を加える設計作業部と、
オペレータの操作に基づいて、前記LSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率でレイアウト画像として表示するための表示指示を入力する表示指示入力部と、
前記図形データのうち、前記表示指示の対象となる部分を展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データを作成する表示データ展開部と、
前記レイアウト用画像データを格納するメモリ部と、
前記LSIレイアウトパターンを表示するためのディスプレイ装置と、
前記メモリ部に格納された前記レイアウト用画像データに基づく表示信号を前記ディスプレイ装置に与え、画面上に前記レイアウト画像を表示させる表示制御部と、
を備えるLSI設計装置において、
前記メモリ部をアクセスして、前記レイアウト用画像データを構成する各画素の画素値を読み取る画素値読取部と、
読み取った画素値に基づいて、個々の画素が、LSIレイアウトパターンを構成する図形の内部に位置する内部画素か外部に位置する外部画素かを判定する画素判定部と、
前記内部画素の数を計数する画素数計数部と、
計数した内部画素数Kに基づいて、現時点で前記ディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積に関する面積情報を前記ディスプレイ装置の画面上にリアルタイムで表示する面積情報提示部と、
を更に備え、
前記レイアウトデータ格納部が、個々の基本図形の形状および位置を示す図形データと、これら基本図形を組み合わせた合成図形としてLSIレイアウトパターンを定義する合成方法を示す合成方法データと、を格納しており、
前記表示データ展開部が、前記図形データおよび前記合成方法データに基づいて、前記メモリ部にラスタ形式のレイアウト用画像データを作成し、
前記表示データ展開部、前記メモリ部、前記表示制御部を、画像処理用半導体集積回路によって構成し、前記画素値読取部、前記画素判定部、前記画素数計数部、前記面積情報提示部を、コンピュータにプログラムを組み込むことによって構成したことを特徴とするLSI設計装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLSI設計装置において、
面積情報提示部が、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積率Rを、レイアウト画像の全画素数Nと内部画素数Kとを用いたR=K/Nなる演算により求め、求めた面積率Rを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示する機能を有することを特徴とするLSI設計装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のLSI設計装置において、
面積情報提示部が、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の内部領域の実レイアウト上での実面積Sを、表示指示入力部が入力した倍率を考慮した換算演算を行うことにより求め、求めた実面積Sを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示する機能を有することを特徴とするLSI設計装置。
【請求項4】
請求項3に記載のLSI設計装置において、
面積情報提示部が、表示指示に応じた倍率でレイアウト画像を表示するために作成されたレイアウト用画像データについて、1画素に対応する実レイアウト上の単位実面積ΔSを求め、画素数計数部が計数した内部画素数Kと前記単位実面積ΔSとに基づいて、実面積Sを、S=ΔS×Kなる演算により求めることを特徴とするLSI設計装置。
【請求項5】
請求項4に記載のLSI設計装置において、
レイアウトデータ格納部が、個々の図形を定義するために必要な点の情報を、実レイアウト上での実寸を示す座標値としてもつ図形データを格納しており、
面積情報提示部が、前記座標値を参照することにより、1画素の実レイアウト上での横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyを認識し、単位実面積ΔSを、ΔS=Δx・Δyなる演算により求めることを特徴とするLSI設計装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のLSI設計装置において、
メモリ部が、レイアウト用画像データとともに、ラスタ形式の補助情報用画像データを格納し、
表示制御部が、前記レイアウト用画像データおよび前記補助情報用画像データに基づく表示信号をディスプレイ装置に与え、画面上にレイアウト画像および補助情報画像を表示し、
面積情報提示部が、面積情報を示す文字列を前記補助情報用画像データとして展開して前記メモリ部に格納する処理を行い、
表示制御部が、前記面積情報を示す文字列を前記補助情報画像としてディスプレイ装置の画面上に表示させることを特徴とするLSI設計装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSI設計装置に関し、特に、LSIレイアウトパターンを構成する図形について、その面積や面積率といった面積情報を計算して提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIは、微細かつ複雑なレイアウトパターンを半導体基板上に形成することにより構成されるため、その設計には、コンピュータを利用したLSI設計装置が用いられている。一般的なLSI設計装置では、LSIレイアウトパターンを多数の基本図形によって構成し、個々の基本図形をベクタ形式の図形データとして格納している。ベクタ形式の図形データを用いれば、全データ容量を低く抑えることができ、必要に応じて、任意の箇所を任意の倍率でラスタ形式の画像データに展開して表示することが可能である。
【0003】
一方、LSIレイアウトパターンには、部分的に疎密差が生じると好ましくないという特殊な事情が存在する。通常、LSIは、半導体基板上に何層ものレイヤーを重ねた三次元構造を採るため、ある層を構成するレイアウトパターンに部分的な疎密差が生じていると、その上の層に段差が生じ、接続不良などの問題が発生しやすくなる。したがって、設計段階において、個々の層を構成するレイアウトパターンごとに、部分的な疎密差が生じないような調整を行う必要がある。
【0004】
このような事情を踏まえて、たとえば、下記の特許文献1には、レイアウトパターンの密度基準違反を効率的に除去するために、一時的にダミーデータを増減した仮想レイアウトを作成し、この仮想レイアウトに対する密度チェックを行う方法が開示されている。また、特許文献2には、インスタンスに含まれる個々の図形パターンについて、それぞれ面積値を格納したインスタンス面積テーブルを予め用意しておき、当該面積テーブルを利用して、レイアウトパターン各部の密度を検証する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−067441号公報
【特許文献2】特開2011−018105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、LSIレイアウトパターンを設計する上では、部分的な疎密差を生じさせないような調整が必要であり、そのような調整を行う上では、レイアウトパターンを構成する図形について、その面積や面積率といった面積情報を計算する必要がある。しかしながら、通常、レイアウトパターンを構成する複雑な形状をもった図形は、多数の基本図形を組み合わせた合成図形として定義され、個々の基本図形は、ベクタ形式の図形データとして用意される。たとえば、矩形であれば、その2頂点の位置を示す座標値、円であれば、中心点の座標値と半径値、といった数値によって表現される。そのため、レイアウトパターンを構成する複雑な形状をもった図形についての面積情報を求めるには、ベクタ形式で記述された多数の図形データに基づく演算を行う必要がある。
【0007】
ところが、このようなベクタ形式の図形データに基づく演算の負担はかなり重く、面積情報の計算が完了するまでにかなりの時間を要する。このため、オペレータが、コンピュータに対して、レイアウトパターンの特定部分の面積情報を算出させる指示を与えたとしても、実際に計算結果が提示されるまで、ある程度の待ち時間が必要となる。これは、オペレータによる設計作業効率を低下させる要因になる。
【0008】
前掲の特許文献2には、予めインスタンス面積テーブルを用意しておくことにより、演算時間の短縮を図る工夫が開示されているが、多数の基本図形を組み合わせた合成図形の面積を求める際には、やはり複雑な演算処理が必要になるため、十分な時間短縮効果を得ることはできない。
【0009】
そこで本発明は、ベクタ形式の図形データで表現される多数の図形を合成して得られる合成図形について、その面積や面積率といった面積情報を求める処理を、低演算負担で高速に行うことが可能なLSI設計装置を提供することを目的とする。また、一般に、ベクタ形式の図形データで表現された図形についての面積に関する情報を計算して提示する処理を、低演算負担で高速に行うことが可能な図形面積情報の提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、
LSIレイアウトパターンを構成する複数の図形をベクタ形式の図形データとして格納するレイアウトデータ格納部と、
オペレータの操作に基づいて、レイアウトデータ格納部に新たな図形データを格納し、必要に応じてこれに修正を加える設計作業部と、
オペレータの操作に基づいて、LSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率でレイアウト画像として表示するための表示指示を入力する表示指示入力部と、
図形データのうち、表示指示の対象となる部分を展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データを作成する表示データ展開部と、
レイアウト用画像データを格納するメモリ部と、
LSIレイアウトパターンを表示するためのディスプレイ装置と、
メモリ部に格納されたレイアウト用画像データに基づく表示信号をディスプレイ装置に与え、画面上にレイアウト画像を表示させる表示制御部と、
を備えるLSI設計装置において、
メモリ部をアクセスして、レイアウト用画像データを構成する各画素の画素値を読み取る画素値読取部と、
読み取った画素値に基づいて、個々の画素が、LSIレイアウトパターンを構成する図形の内部に位置する内部画素か外部に位置する外部画素かを判定する画素判定部と、
内部画素の数を計数する画素数計数部と、
計数した内部画素数Kに基づいて、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積に関する面積情報をディスプレイ装置の画面上に表示する面積情報提示部と、
を更に設けるようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るLSI設計装置において、
面積情報提示部が、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積率Rを、レイアウト画像の全画素数Nと内部画素数Kとを用いたR=K/Nなる演算により求め、求めた面積率Rを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示するようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係るLSI設計装置において、
面積情報提示部が、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の内部領域の実レイアウト上での実面積Sを、表示指示入力部が入力した倍率を考慮した換算演算を行うことにより求め、求めた実面積Sを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示するようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係るLSI設計装置において、
面積情報提示部が、表示指示に応じた倍率でレイアウト画像を表示するために作成されたレイアウト用画像データについて、1画素に対応する実レイアウト上の単位実面積ΔSを求め、画素数計数部が計数した内部画素数Kと単位実面積ΔSとに基づいて、実面積Sを、S=ΔS×Kなる演算により求めるようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係るLSI設計装置において、
レイアウトデータ格納部が、個々の図形を定義するために必要な点の情報を、実レイアウト上での実寸を示す座標値としてもつ図形データを格納しており、
面積情報提示部が、この座標値を参照することにより、1画素の実レイアウト上での横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyを認識し、単位実面積ΔSを、ΔS=Δx・Δyなる演算により求めるようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係るLSI設計装置において、
レイアウトデータ格納部が、個々の基本図形の形状および位置を示す図形データと、これら基本図形を組み合わせた合成図形としてLSIレイアウトパターンを定義する合成方法を示す合成方法データと、を格納しており、
表示データ展開部が、この図形データおよび合成方法データに基づいて、メモリ部にラスタ形式のレイアウト用画像データを作成するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係るLSI設計装置において、
メモリ部が、レイアウト用画像データとともに、ラスタ形式の補助情報用画像データを格納し、
表示制御部が、レイアウト用画像データおよび補助情報用画像データに基づく表示信号をディスプレイ装置に与え、画面上にレイアウト画像および補助情報画像を表示し、
面積情報提示部が、面積情報を示す文字列を補助情報用画像データとして展開してメモリ部に格納する処理を行い、
表示制御部が、面積情報を示す文字列を補助情報画像としてディスプレイ装置の画面上に表示させるようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係るLSI設計装置において、
表示データ展開部、メモリ部、表示制御部を、画像処理用半導体集積回路によって構成したものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第7の態様に係るLSI設計装置において、
レイアウトデータ格納部、設計作業部、表示指示入力部、画素値読取部、画素判定部、画素数計数部、面積情報提示部を、コンピュータにプログラムを組み込むことにより構成したものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、ベクタ形式の図形データで表現された図形についての面積に関する情報を計算して提示する図形面積情報の提示方法において、
ベクタ形式の図形データをメモリ上に展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データを作成する画像データ作成段階と、
レイアウト用画像データに基づいて、ディスプレイ装置の画面上に図形を表示させる図形表示段階と、
メモリ部をアクセスして、レイアウト用画像データを構成する各画素の画素値を読み取る画素値読取段階と、
読み取った画素値に基づいて、個々の画素が、図形の内部に位置する内部画素か外部に位置する外部画素かを判定する画素判定段階と、
内部画素の数を計数する画素数計数段階と、
計数した内部画素数Kに基づいて、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されている図形の面積に関する面積情報を提示する面積情報提示段階と、
をコンピュータによって実行させるようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る図形面積情報の提示方法において、
面積情報提示段階で、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されている図形の面積率Rを、レイアウト用画像データを構成する二次元画素配列の全画素数Nと内部画素数Kとを用いたR=K/Nなる演算により求め、求めた面積率Rを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示するようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10の態様に係る図形面積情報の提示方法において、
レイアウト用画像データを構成する二次元画素配列上の1画素に対応する単位参考面積ΔSを、図形の表示倍率mを用いて、ΔS=f(m)なる関数として予め定義しておき、
画像データ作成段階で、指定された表示倍率mに応じた大きさで図形が表示されるように図形データをメモリ上に展開してレイアウト用画像データを作成し、
面積情報提示段階で、現時点でディスプレイ装置の画面上に表示されている図形の参考面積Sを、S=ΔS×Kなる演算により求め、求めた参考面積Sを面積情報としてディスプレイ装置の画面上に表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るLSI設計装置もしくは図形面積情報の提示方法によれば、メモリ部に展開されたラスタ形式の画像データを構成する個々の画素の画素値に基づいて内部画素数Kが計数され、この計数値Kに基づいて面積率Rや実面積Sの算出が行われる。このため、ベクタ形式の図形データに基づく面積算出演算は不要になり、低演算負担で高速に図形の面積に関する情報を計算して提示することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来の一般的なLSI設計装置の基本構成を示すブロック図である。
図2】LSIレイアウトパターンの構成例を示す平面図である。
図3図2に示すLSIレイアウトパターンの特定箇所を拡大表示したレイアウト画像を示す平面図である。
図4図1に示すディスプレイ装置40の表示画面の一例を示す平面図である。
図5図4に示す表示画面を得るためにメモリ部32内に用意された画像データの構成を示す図である。
図6図2に示すLSIレイアウトパターンにダミーパターンを追加して各部の密度が均一となるような調整を行った状態を示す平面図である。
図7】複数の基本図形を組み合わせた合成図形としてLSIレイアウトパターンが定義されている例を示す平面図である。
図8】本発明の基本的な実施形態に係るLSI設計装置の構成を示すブロック図である。
図9】2組の基本図形を組み合わせて構成される合成図形の例を示す平面図である。
図10図8に示すメモリ部32上に定義されたレイアウト用画像データDLを収容するための二次元画素配列を示す平面図である。
図11図10に示す二次元画素配列上に、図9に示す基本図形F60を展開した状態を示す平面図である。
図12図10に示す二次元画素配列上に、図9に示す基本図形F60およびF70を重ねて展開した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0025】
<<< §1. 従来の一般的なLSI設計装置 >>>
ここでは、まず、本発明と対比するため、従来の一般的なLSI設計装置における面積情報の算出方法を簡単に説明する。図1は、従来の一般的なLSI設計装置の基本構成を示すブロック図である。この設計装置は、図示のとおり、レイアウトデータ格納部10、設計作業部20、表示指示入力部25、GPU30、ディスプレイ装置40によって構成されている。
【0026】
レイアウトデータ格納部10は、LSIレイアウトパターンを構成する複数の図形をベクタ形式の図形データDFとして格納する構成要素であり、設計作業部20は、オペレータ(LSIレイアウトパターンの設計作業者)の操作に基づいて、レイアウトデータ格納部10に新たな図形データDFを格納し、必要に応じてこれに修正を加える作業を行う構成要素である。オペレータが、設計作業部20に対して様々な指示を与えることにより、レイアウトデータ格納部10内に新たな図形データDFが格納されたり、既存の図形データDFに修正が加えられたりする。なお、実際には後述するように、LSIレイアウトパターンは、複数の基本図形を組み合わせた合成図形として定義されるため、レイアウトデータ格納部10内には、合成方法を定義するための合成方法データDSも格納されている。
【0027】
一方、表示指示入力部25は、オペレータの操作に基づいて、レイアウトデータ格納部10内に格納されているLSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率でレイアウト画像として表示するための表示指示を入力する機能をもった構成要素である。オペレータは、設計対象となるLSIレイアウトパターンの全体像を把握したい場合には、表示画面上に全パターンが収まるような最低の倍率を指定して表示を行わせるようにすればよいし、一部分を拡大して詳細確認を行いたい場合には、マウスクリックなどの操作で特定箇所を指定し、拡大倍率を指定すればよい。
【0028】
図に一点鎖線で囲って示すGPU30は、Graphic Processing Unit の略称として知られている画像処理用半導体集積回路であり、パソコンなどでは、主CPUが装着されたメインボードとは別体のグラフィックボード(ビデオボード)上のチップとして供給されることが多い。ここでは、説明の便宜上、図示のように、このGPU30を、表示データ展開部31、メモリ部32、表示制御部33という3つの構成要素として把握することにする。
【0029】
表示データ展開部31は、レイアウトデータ格納部10内に格納されている図形データDFのうち、表示指示入力部25によって入力された表示指示の対象となる部分をメモリ部32に展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する構成要素であり、メモリ部32は、展開されたレイアウト用画像データDLを格納する構成要素である。実際には、複数の基本図形が合成方法データDSで示される合成方法によって合成されながら展開されることになる。レイアウトデータ格納部10内の図形データDFがベクタ形式のデータであるのに対して、メモリ部32に格納されたレイアウト用画像データDLは、ラスタ形式の画像データであり、二次元状に配列された個々の画素の画素値(ここに示す例の場合、二値画像であるため、「0」もしくは「1」)の集合体からなる。
【0030】
表示制御部33は、メモリ部32に格納されたレイアウト用画像データDLに基づく表示信号をディスプレイ装置40に与え、ディスプレイ装置40の画面上にレイアウト画像を表示させる構成要素である。こうして表示されたレイアウト画像は、レイアウトデータ格納部10内に格納されているLSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率で表示した画像ということになる。
【0031】
メモリ部32に格納されているレイアウト用画像データDLを構成する1つの画素は、ディスプレイ装置40の画面に表示されたレイアウト画像を構成する1つの画素に1対1に対応するものである。別言すれば、メモリ部32に格納されているレイアウト用画像データDLは、ディスプレイ装置40の画面に表示されたレイアウト画像を構成する画素配列と同じ配列をもった画素の集合体によって構成される。
【0032】
なお、ディスプレイ装置40の画面上には、レイアウト画像だけでなく、その他の補助情報(たとえば、オペレータに種々のコマンドを入力させるために必要なコマンドメニューなど)も表示される。図において、設計作業部20から表示データ展開部31に向かって描かれた矢印は、このような補助情報が設計作業部20から表示データ展開部31に与えられることを示すものである。したがって、表示データ展開部31は、ベクタ形式の図形データDFをメモリ部32上に展開してレイアウト用画像データDLを作成するとともに、補助情報を示す文字列などをメモリ部32上に展開して補助情報用画像データDAを作成する。
【0033】
結局、表示制御部33は、メモリ部32に得られたレイアウト用画像データDLおよび補助情報用画像データDAに基づく表示信号をディスプレイ装置40に与える処理を行うことになり、ディスプレイ装置40の画面上には、レイアウト画像とともに補助情報画像が表示されることになる。
【0034】
続いて、この図1に示す従来の一般的なLSI設計装置の動作を、具体的なLSIレイアウトパターンの設計作業を行う場合を例にとって、もう少し詳しく説明する。ここでは、レイアウトデータ格納部10に、図2に示すようなLSIレイアウトパターンを示す図形データDFおよび合成方法データDSが格納されているものとしよう。実際には、図形データDFは、ベクタ形式のデータとして用意されていることになる。前述したように、このような図形データDFおよび合成方法データDSを用意する作業は、オペレータが設計作業部20に対して様々な操作入力を行うことによって行われる。また、オペレータは、表示指示入力部25に対して表示指示を与えることにより、適宜、ディスプレイ装置40の画面上に、設計途中のLSIレイアウトパターンをレイアウト画像として表示させることができる。
【0035】
たとえば、図2に示すLSIレイアウトパターン全体を確認したい場合には、表示指示入力部25に対して、全体表示を行う旨の表示指示を与えればよい。また、所定箇所を所定倍率で表示するための表示指示を与えれば、一部分の拡大表示を行うこともできる。たとえば、図2に示すような全体表示が行われている画面上で、マウスクリックなどの操作で指定点Q1を指定し、所定の拡大倍率を指定すれば、図3(a) に示すように、指定点Q1付近のレイアウト画像が表示されることになる。同様に、指定点Q2を指定し、所定の拡大倍率を指定すれば、図3(b) に示すように、指定点Q2付近のレイアウト画像が表示されることになる。
【0036】
もちろん、必要があれば、図3(a) や図3(b) に示す表示状態から、レイアウト画像を上下左右にスクロールさせて表示箇所を移動させることもできるし、倍率を連続的に変化させてゆき、ズームインやズームアウトの操作を行うこともできる。オペレータは、設計作業中に随時、現時点でのLSIレイアウトパターンの構成をディスプレイ画面上で確認することができ、設計作業部20に指示を与えることにより、LSIレイアウトパターンに対する追加や修正を行うことができる。このような設計作業部20による設計支援機能や表示指示入力部25による表示指示機能は、従来の一般的なLSI設計装置に基本的に備わっている機能であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0037】
実際には、このLSI設計装置は、コンピュータに専用のアプリケーションプログラムを組み込むことによって実現することができる。この場合、図1に示す各構成要素は、コンピュータに備わっているハードウエアとソフトウエア(OSプログラムおよび専用アプリケーションプログラム)との連携動作により実現されることになる。
【0038】
図4は、図1に示すLSI設計装置をパソコンを利用して構成した場合に、ディスプレイ装置40に表示されるディスプレイ画面100の一例を示す平面図である。このディスプレイ画面100の上部には、一般的なアプリケーションプログラム用の表示画面と同様に、タイトルバー110およびコマンドメニュー120が表示され、更に、メインとなる画面には、レイアウト画像130、面積情報140、データファイルリスト150がそれぞれの専用枠内に表示されている。ここで、レイアウト画像130は、図3(a) に示す指定点Q1付近のレイアウト画像である。
【0039】
ここでは、説明の便宜上、図4に示すディスプレイ画面100において、太線で囲って示すレイアウト画像130を除いた部分を補助情報画像と呼ぶことにする。図5は、図4に示す表示画面を得るためにメモリ部32内に必要な画像データDの構成を示す図である。図示のとおり、メモリ部32に格納されている画像データDは、レイアウト用画像データDLと補助情報用画像データDAとによって構成されている。この図5に示されている画像データDはラスタ形式の画像データであり、その画素配列は、図4に示されているディスプレイ画面100に対応することになる。
【0040】
レイアウト用画像データDLは、ディスプレイ画面100上においてレイアウト画像130を表示させるためのデータであり、表示データ展開部31が、表示対象となるレイアウトパターンの図形データDFをラスタ展開することにより得られたデータである。これに対して、補助情報用画像データDAは、ディスプレイ画面100上において補助情報110,120,140,150を表示させるためのデータであり、表示データ展開部31が、設計作業部20および表示指示入力部25(OSプログラムおよび専用アプリケーションプログラム)から与えられた文字コード等をラスタ展開することにより得られたデータである。
【0041】
ここで、データファイルリスト150は、表示対象となるレイアウトデータのファイルを選択するためのリストである。図1に示す例では、レイアウトデータ格納部10内に1つのレイアウトパターンに関するレイアウトデータ(図形データDFおよび合成方法データDS)のみが格納されている状態が示されているが、通常は、複数のレイアウトデータが格納されており、その一覧がデータファイルリスト150として表示される。オペレータが、このリストから所望のレイアウトパターンを選択すれば、選択したパターンが太線枠内にレイアウト画像130として表示される。一方、面積情報140は、現在表示されているレイアウト画像130に関する面積率Rや実面積Sを示す情報である。
【0042】
<<< §2. 従来装置における面積情報の算出方法 >>>
既に述べたとおり、LSIレイアウトパターンには、部分的に疎密差が生じると好ましくないという特殊な事情が存在する。そのため、設計段階において、個々の層を構成するレイアウトパターンごとに、部分的な疎密差が生じないような調整を行う必要がある。たとえば、図2に示すLSIレイアウトパターンの場合、指定点Q1付近と指定点Q2付近とを比較すると、前者の方が後者よりパターンの密度が高く、両者間に疎密差が生じていることがわかる。
【0043】
そこで、通常は、LSIレイアウトパターンの部分ごとに、面積率Rの許容範囲を設定し、各部についての面積率Rが当該許容範囲内に収まるような調整作業が行われる。たとえば、図3(a) ,(b) に示されている部分領域についての面積率Rは、矩形状の全領域の面積に対するパターン内部(ハッチング部分)の面積の比率として定義される。
【0044】
ここで、たとえば、図3(b) に示す部分領域についての面積率Rが許容範囲に達していなかったことが判明した場合には、オペレータは、設計作業部20に対して追加や修正の指示を与えることにより、当該部分領域についての面積率Rを是正するための調整作業を行うことになる。図6は、図2に示すLSIレイアウトパターンにダミーパターンM1,M2を追加して、密度が均一となるような調整を行った状態を示す平面図である。図示のダミーパターンM1,M2は、それ自体は、LSIの動作に何ら関与しないパターンであるが、これらを追加することにより、当該LSIレイアウトパターンの密度均一化を図ることができ、半導体基板上に形成される実際の構造体において、上層に段差が生じることを防止することができる。
【0045】
このような疎密差の有無は、図3(a) や図3(b) に示すレイアウト画像を目視することによってもある程度把握することが可能であるが、実用上は、LSI設計装置に、面積率Rや実面積Sを計算して提示する機能を設けておくのが好ましい。具体的には、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されているレイアウト画像についての面積率Rや実面積Sが即座に提示されれば、オペレータは、LSIレイアウトパターンの個々の部分についての正確な密度を直感的に把握することができる。
【0046】
そこで、ここに例示する装置では、図4に示すとおり、ディスプレイ画面100上に面積情報140の表示を行うようにしている。この面積情報140は、現在表示されているレイアウト画像130についての面積率R(太線枠内の全面積に対するハッチング部分の面積の割合)および実面積S(ハッチング部分を半導体基板上に実際に形成した場合の面積)を示すものであり、設計作業部20が、レイアウトデータ格納部10に格納されている図形データDFおよび合成方法データDSに基づいて算出したものである。
【0047】
たとえば、図3(a) に示すように、指定点Q1付近を検証対象領域としてレイアウト画像を表示させた場合に、当該検証対象領域についての面積率がR=28%と表示され、図3(b) に示すように、指定点Q2付近を検証対象領域としてレイアウト画像を表示させた場合に、当該検証対象領域についての面積率がR=18%と表示されれば、オペレータは、現在表示中のレイアウト画像についての面積率Rを直ちに把握することができる。
【0048】
ここで、たとえば、面積率Rの下限値が25%に設定されていた場合、指定点Q2付近の面積率Rが下限値に達していないことが認識できるので、オペレータは、図6に示すように、ダミーパターンM2を追加する調整作業を行うことができる。もちろん、ダミーパターンM2を追加後に、指定点Q2付近のレイアウト画像を表示させれば、ダミーパターンM2を含むパターンについての面積率Rが新たに表示されるので、オペレータは、面積率Rが許容範囲となるように改善されたことを確認することができる。
【0049】
しかしながら、従来のLSI設計装置では、面積率Rや実面積Sを計算する演算負担が大きいため、リアルタイムで面積情報を提示することが困難である。これは、LSIレイアウトパターンが、複数の基本図形を組み合わせた合成図形として定義されており、しかも個々の基本図形がベクタ形式のデータとして用意されているためである。
【0050】
たとえば、図3(a) には、指定点Q1付近のレイアウト画像が示されているが、実際には、指定点Q1付近のレイアウトパターンは、図7に示すように(図3(a) に示すパターンの上半分の枝の部分のみを示す)、複数の基本図形を組み合わせた合成図形として定義されている。すなわち、図示の例の場合、実線で示す基本図形F10,破線で示す基本図形F20,一点鎖線で示す基本図形F30,一点鎖線で示す基本図形F40,破線で示す基本図形F50の合成図形として、LSIレイアウトパターンの一部(指定点Q1付近の部分)が定義されている。
【0051】
しかも、この例の場合、個々の基本図形F10〜F50はいずれも矩形である。したがって、いずれもベクタ形式の図形データとしては、当該図形が矩形であることを示す情報と、2頂点の位置座標を示す情報とを用意すれば十分である。たとえば、基本図形F10を定義する図形データは、図に黒丸で示す2頂点P11,P12の位置座標と、これら2頂点を対角とする矩形であることを示す情報とによって構成することができる。同様に、基本図形F20は、白丸で示す2頂点P21,P22を対角とする矩形、基本図形F30は、黒三角で示す2頂点P31,P32を対角とする矩形、基本図形F40は、白三角で示す2頂点P41,P42を対角とする矩形、基本図形F50は、黒四角で示す2頂点P51,P52を対角とする矩形として定義される。
【0052】
実際のLSIレイアウトパターン全体を示すレイアウトデータは、このような個々の基本図形の形状および位置を示す図形データと、これら基本図形を組み合わせて合成図形を得るための合成方法を示す合成方法データと、によって構成される。たとえば、図示の例の場合、合成方法データとしては、5組の基本図形F10〜F50の論理和演算を示すデータが用意される。図3(a) に示す指定点Q1付近のレイアウト画像は、このような論理和演算を行うことにより得られた論理和図形の内部の領域にハッチングを施して示したものであり、表示データ展開部31による展開処理とは、このような複数の基本図形を、合成方法データによって定義されている合成方法に基づいて合成しながら、メモリ部32にラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する処理ということになる。
【0053】
従来のLSI設計装置では、面積率Rや実面積Sの計算機能は、設計作業部20内の一機能として設けられており、設計作業部20が、レイアウトデータ格納部10からベクタ形式の図形データDFおよび合成方法データDSを読み出し、これらに基づいて、LSIレイアウトパターンの所望部分についての実面積Sや面積率Rを求める演算を行っている。このような演算はかなり負担の大きな処理になる。たとえば、図7に示す例において、5組の基本図形F10〜F50について論理和演算を行うことにより得られる合成図形の面積を求めるには、基本図形F10の下辺と、基本図形F30,F40,F50の側辺との交点の座標値を求める必要があり、また、平面的に重複する領域がどの部分になるのかを判定する処理も必要になる。
【0054】
図2には、説明の便宜上、LSIレイアウトパターンとしては非常に単純な形状のパターンを示してあるが、それでも、非常に多数の基本図形を組み合わせた合成図形によって構成されていることがわかるであろう。実際のLSIレイアウトパターンの構造は、図示の例よりもはるかに複雑であり、一般に、数万〜数億の基本図形を組み合わせることにより構成される。したがって、これら多数の基本図形を示すベクタ形式の図形データに基づいて特定部分の面積を求める処理は、実際には、きわめて演算負担の大きな処理になる。
【0055】
このため、設計作業部20や表示指示入力部25を、パソコンレベルのコンピュータに専用のアプリケーションプログラムを組み込むことにより構成した場合、実用上、リアルタイムで面積情報を表示させることは困難である。
【0056】
本発明は、このような問題に対処するためのものであり、ベクタ形式の図形データで表現される多数の図形を合成して得られる合成図形について、その面積や面積率といった面積情報を求める処理を、低演算負担で高速に行うことが可能な新たな方法を提案するものである。
【0057】
<<< §3. 本発明に係るLSI設計装置 >>>
続いて、本発明に係るLSI設計装置の構成および動作を説明する。図8は、本発明の基本的な実施形態に係るLSI設計装置の構成を示すブロック図である。この設計装置は、図1に示す従来装置に、更に、画素値読取部51、画素判定部52、画素数計数部53、面積情報提示部54を付加したものであり、その他の構成要素については、基本的には変更はない。
【0058】
すなわち、レイアウトデータ格納部10は、LSIレイアウトパターンを構成する複数の図形をベクタ形式の図形データDFとして格納する構成要素であり、ここに示す実施形態の場合、複数の基本図形の形状および位置を示す図形データ(たとえば、図7に示す例の場合、各基本図形が矩形であることを示すデータと、その対角2頂点の座標位置を示すデータ)と、これら基本図形を組み合わせた合成図形としてLSIレイアウトパターンを定義する合成方法を示す合成方法データ(たとえば、図7に示す例の場合、5組の基本図形の論理和という合成方法を示すデータ)と、を格納している。
【0059】
もちろん、基本図形は、必ずしも矩形に限定されるものではなく、円の場合は、その中心点位置と半径値とを示すデータをベクタ形式の図形データとして用いることができ、扇形の場合は、更に中心角を示すデータを付加すればよい。また、多角形の場合は、各頂点位置とその連結順を示すデータをベクタ形式の図形データとして用いることができる。この他、ベジェ曲線などを利用すれば、任意形状の基本図形を定義することも可能である。
【0060】
また、§1で述べたとおり、設計作業部20は、オペレータの操作に基づいて、レイアウトデータ格納部10に新たな図形データDFおよび合成方法データDSを格納し、必要に応じてこれに修正を加える構成要素であり、表示指示入力部25は、オペレータの操作に基づいて、LSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率でディスプレイ装置40の画面上にレイアウト画像として表示するための表示指示を入力する構成要素である。なお、本発明に係る設計装置では、後述するように、レイアウトパターンの面積に関する演算処理は、新たな構成要素51〜54によって実行されるので、設計作業部20には、図形の面積を計算する機能をもたせておく必要はない。
【0061】
従来の設計装置と同様に、GPU30は、画像処理用半導体集積回路であり、たとえば、パソコン用のグラフィックボード上のチップとして市販されているものを用いて構成することができる。このGPU30には、表示データ展開部31、メモリ部32、表示制御部33が設けられている。
【0062】
表示データ展開部31は、レイアウトデータ格納部10に格納されている図形データDFのうち、表示指示入力部25から与えられた表示指示の対象となる部分をメモリ部32に展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する処理と、設計作業部20や表示指示入力部25からの指示に基づいて、オペレータに対して提示すべき補助情報をメモリ部32に展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式の補助情報用画像データDAを作成する処理と、を行う。図5は、こうしてメモリ部32上に得られたラスタ形式の画像データDを例示するものであり、図4は、この画像データDに応じてディスプレイ装置40上に表示されるディスプレイ画面100を例示するものである。
【0063】
上述したとおり、レイアウトデータ格納部10には、複数の基本図形の形状および位置を示す図形データDFと、これら基本図形を組み合わせた合成図形としてLSIレイアウトパターンを定義する合成方法を示す合成方法データDSとが格納されているので、表示データ展開部31によるレイアウト用画像データDLの作成処理は、この図形データDFおよび合成方法データDSに基づいて、メモリ部32にラスタ形式の画像データを作成する処理ということになる。一方、表示データ展開部31による補助情報用画像データDAの作成処理は、設計作業部20や表示指示入力部25から与えられる補助情報を示すデータ(たとえば、文字コードやフォントデータ)に基づいて、メモリ部32にラスタ形式の画像データを作成する処理ということになる。
【0064】
このように、メモリ部32には、レイアウト用画像データDLおよび補助情報用画像データDAが格納されるので、表示制御部33は、レイアウト用画像データDLおよび補助情報用画像データDAに基づく表示信号をディスプレイ装置40に与え、図4に示すように、ディスプレイ画面100上にレイアウト画像130および補助情報画像110,120,140,150を表示する処理を行うことになる。
【0065】
本発明は、ディスプレイ装置40の画面上に図3(a) ,(b) に示すようなレイアウト画像を表示する際には、必ず、メモリ部32内にラスタ形式のレイアウト用画像データDL(いわゆる、ピクセルマップ)が作成される点に着眼し、外部からメモリ部32をアクセスしてレイアウト用画像データDLを解析し、このレイアウト用画像データDLから必要な面積情報を取得するという方法を採用するものである。そのため、本発明に係るLSI設計装置では、図8に示すとおり、新たな構成要素51〜54が付加されている。
【0066】
まず、画素値読取部51は、メモリ部32をアクセスして、レイアウト用画像データDLを構成する各画素の画素値を読み取る処理を行う。そして、画素判定部52は、画素値読取部51が読み取った画素値に基づいて、個々の画素が、LSIレイアウトパターンを構成する図形の内部に位置する内部画素か外部に位置する外部画素かを判定する処理を行い、画素数計数部53は、内部画素の数を計数する処理を行う。
【0067】
そして最後に、面積情報提示部54が、画素数計数部53によって計数された内部画素数Kに基づいて、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されているレイアウト画像内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積に関する面積情報をディスプレイ装置40の画面上に表示する処理が行われる。ここに示す実施形態の場合、面積情報提示部54は、面積情報を示す文字列を補助情報用画像データDAの一部としてメモリ部32に展開する処理を行う。したがって、表示制御部33により、この面積情報を示す文字列が補助情報画像としてディスプレイ装置40の画面上に表示されることになる。その結果、図4に示すような面積情報140の表示が行われることになる。
【0068】
ここでは、図9に示すような2つの基本図形F60,F70を組み合わせることによって得られる合成図形についての図形データDFおよび合成方法データDSが、レイアウトデータ格納部10に用意されている場合を例にとって、上述した面積情報の取得および表示動作を更に詳しく説明する。
【0069】
図示のとおり、基本図形F60は、白丸で示す2頂点P61,P62を対角位置にもつ矩形として定義される基本図形であり(図では実線で示す)、基本図形F70は、白三角で示す2頂点P71,P72を対角位置にもつ矩形として定義される基本図形である(図では破線で示す)。ここでは、合成方法データDSによって、レイアウトパターンを構成する図形が、これら2つの基本図形F60,F70についての論理和図形として定義されているものとする。
【0070】
各頂点P61,P62,P71,P72の位置は、二次元XY座標系上の座標値として定義される。図示の例の場合、X軸およびY軸は、実レイアウト上(半導体基板上に形成される実際のレイアウト上)での実寸μmを単位とする座標軸になっており、各頂点の座標値も、この実寸μmを単位とするものになっている。たとえば、座標点P61(8,6)は、座標系の原点Oの位置を基準として、X軸正方向に8μm、Y軸正方向に6μmだけ隔たった点として定義されている。
【0071】
結局、図示の例の場合、レイアウトパターンを構成する合成図形を定義するための個々の基本図形の図形データDLとしては、「座標点P61(8,6)と座標点P62(26,22)とを対角とする矩形F60」と「座標点P71(18,12)と座標点P72(36,28)とを対角とする矩形F70」を示すデータが用意され、合成方法データDSとしては、「両者の論理和をとることにより合成する」という合成方法を示すデータが用意される。
【0072】
図10は、図8に示すメモリ部32上に定義されたレイアウト用画像データDLを収容するための二次元画素配列を示す平面図である。したがって、この図10に示す画素配列は、図4に太線で示すディスプレイ画面100上でのレイアウト画像130の画素配列に対応しており、図10に示す1つのセル(画素)は、ディスプレイ画面100上での1画素に対応する。
【0073】
既に述べたとおり、オペレータが、表示指示入力部25に対して、LSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率で表示するための表示指示を入力すると、表示データ展開部31は、この表示指示に応じて、表示に必要なベクタ形式の図形データをメモリ部32に展開して、ラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する処理を行う。
【0074】
この場合、図形データDLが定義されている二次元XY座標系とメモリ部32上に定義された二次元画素配列との相対関係が定義される。すなわち、図10に示すように、オペレータが指定した表示箇所に応じて、二次元画素配列と座標系との相互位置関係(X軸方向およびY軸方向に関するオフセット)が決められ、オペレータが指定した表示倍率に応じて、二次元画素配列と座標系とのスケーリングの関係(二次元画素配列の横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyの寸法値)が決められる。
【0075】
たとえば、図10に示す例の場合、二次元画素配列は、その左下隅点がXY座標系上の座標点P(4,4)の位置にくるように配置され、画素の横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyがそれぞれ2μmとなるようなスケーリングが行われている。もし、オペレータが、レイアウトパターンの更に右の部分を表示箇所として指定する操作を行うと、二次元画素配列は右方向に移動する。また、オペレータが、表示倍率を上げる操作を行うと、Δx,Δyはより小さな値に設定され、表示倍率を下げる操作を行うと、Δx,Δyはより大きな値に設定される。
【0076】
表示データ展開部31は、オペレータが指定した表示箇所および表示倍率に基づき、図10に例示したように、XY座標系と二次元画素配列との相対関係を定め、図9に示すベクタ形式の図形データをメモリ部32の画素配列上に展開する処理を行う。
【0077】
図11は、図10に示す二次元画素配列上に、基本図形F60を展開した状態を示す平面図である。XY座標系と二次元画素配列との相対関係が定まっているため、2頂点P61(8,6),P62(26,22)に対応する画素配列上の位置を認識することができ、基本図形F60をメモリ部32にラスタ形式の画像として展開することができる。図にハッチングを施した画素は、基本図形F60の内部に位置する内部画素、白地の画素は外部に位置する外部画素である。ここでは、内部画素については画素値「1」を与え、外部画素については画素値「0」を与えている。したがって、メモリ部32には、論理値「1」もしくは「0」によって構成される二値画像が格納されることになる。
【0078】
図12は、図11に示す二次元画素配列上に、更に、図9に示す基本図形F70を重ねて展開した状態を示す平面図である。ここに示す例の場合、レイアウトパターンを構成する合成図形は、2つの基本図形F60,F70についての論理和図形として定義されている。したがって、図11に示すように、基本図形F60がラスタ形式画像として展開されている状態に、更に、基本図形F70を重ねて展開する際には、両基本図形の論理和が得られるような処理を行えばよい。
【0079】
こうして得られた図12に示す画像は、レイアウト用画像データDLということになり、表示制御部33によって、ディスプレイ画面100上にレイアウト画像130として表示されることになる。すなわち、図4に示す太枠内には、図12に示す二値画像がレイアウト画像130として表示されることになる。ここで、図12に個々のセルで示す1画素は、表示されているレイアウト画像130上の1画素に対応する。
【0080】
このとき、画素値読取部51は、メモリ部32をアクセスして、レイアウト用画像データDLを構成する各画素の画素値を読み取る処理を行い、画素判定部52は、画素値読取部51が読み取った画素値に基づいて、個々の画素が内部画素(画素値「1」)か外部画素(画素値「0」)かを判定する処理を行う。そして、画素数計数部53が、内部画素の数を計数する。図12に示す例の場合、全画素数N=234に対して、内部画素(画素値「1」をもつハッチングが施された画素)の数K=124という計数結果が得られる。
【0081】
そこで、面積情報提示部54は、画素数計数部53によって計数された内部画素数Kに基づいて、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されているレイアウト画像130内のLSIレイアウトパターンを構成する図形の面積に関する面積情報140をディスプレイ装置40の画面上に表示させる処理を行う。具体的には、面積情報提示部54は、面積情報を示す文字列を補助情報用画像データDAの一部としてメモリ部32に展開する処理を行う。図4に示す例の場合、面積情報140を構成する文字列が補助情報画像としてディスプレイ装置40の画面上に表示される。この例の場合、面積率Rと実面積Sが面積情報140として表示されている。
【0082】
面積率Rは、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されているレイアウト画像130の全面積に対するLSIレイアウトパターンを構成する図形部分(図のハッチング部分)の割合を示すものであり、レイアウト画像130の全画素数をN、画素数計数部53によって計数された内部画素数をKとすれば、R=K/Nなる演算により求めることができる。図4に示す例における面積率R=28%は、このような演算によって求められたものである。一方、図12に示す例の場合は、N=234、K=124であるので、面積率R=53%という結果が得られることになる。
【0083】
一方、実面積Sは、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されているレイアウト画像130内のLSIレイアウトパターンを構成する図形部分(図のハッチング部分)の実レイアウト上での面積、すなわち、半導体基板上に当該レイアウトパターンが形成された場合の実際の面積を示すものであり、表示指示入力部25が入力した倍率を考慮した換算演算を行うことにより求めることができる。すなわち、面積情報提示部54は、表示指示に応じた倍率でレイアウト画像130を表示するために作成されたレイアウト用画像データDLについて、1画素に対応する実レイアウト上の単位実面積ΔSを求め、画素数計数部53が計数した内部画素数Kと単位実面積ΔSとに基づいて、実面積Sを、S=ΔS×Kなる演算により求める処理を行う。
【0084】
ここに示す実施形態の場合、レイアウトデータ格納部10には、図9に例示するように、個々の図形を定義するために必要な点の情報を、実レイアウト上での実寸を示す座標値(単位:μm)としてもつ図形データDFが格納されている。そして、前述したように、表示データ展開部31は、指示された表示箇所および表示倍率に基づき、XY座標系と二次元画素配列との相対関係を定め、図形データDFをメモリ部32の画素配列上に展開する処理を行う。したがって、面積情報提示部54は、これらの座標値を参照することにより、1画素の実レイアウト上での横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyを認識し、単位実面積ΔSを、ΔS=Δx・Δyなる演算により求めることができる。
【0085】
図10に示す例の場合、Δx=Δy=2μmという設定がなされているので、単位実面積ΔS=4μmとなり、これを実面積に換算するためのパラメータとして用い、図12に示す例の場合、実面積S=ΔS×K=4×124=496μmという換算結果が得られることになる。したがって、図12に例示する画像がレイアウト画像130として表示されているときには、面積情報140としては、面積率R=53%、実面積S=496μmという情報が表示されることになる。なお、表示倍率を下げると、表示される図形は小さくなり、内部画素数Kは減少するが、横方向ピッチΔxおよび縦方向ピッチΔyは増加するため、単位実面積ΔSが増加し、換算により得られる実面積Sの値は変わらない。
【0086】
実際には、図8に示すLSI設計装置は、パソコンなどのコンピュータに専用のアプリケーションプログラムを組み込むことによって実現することができる。この場合、図8に示す各構成要素は、コンピュータに備わっているハードウエアとソフトウエア(OSプログラムおよび専用アプリケーションプログラム)との連携動作により実現されることになる。たとえば、レイアウトデータ格納部10は、ハードディスクやメモリなどのコンピュータ用データ記憶装置およびこれを制御するプログラムによって構成され、設計作業部20、表示指示入力部25、画素値読取部51、画素判定部52、画素数計数部53、面積情報提示部54は、当該コンピュータのハードウエアとOSプログラムやアプリケーションプログラムとの協働機能によって実現することができる。
【0087】
また、図8に示す実施形態の場合、表示データ展開部31、メモリ部32、表示制御部33は、図に一点鎖線で囲って示すGPU30(Graphic Processing Unit)、すなわち、画像処理用半導体集積回路によって構成されている。一般的なパソコンでは、メインボードとは別体のグラフィックボード(ビデオボード)上のチップとして、GPU30が供給されることが多い。その場合は、このグラフィックボード上の半導体集積回路によって、表示データ展開部31、メモリ部32、表示制御部33を構成することができる。
【0088】
一般的なGPUに備わっているメモリ(グラフィックメモリ)は、外部からプログラムによってアクセスすることが可能である。画素値読取部51は、このようにGPU上のグラフィックメモリをアクセスして、レイアウト用画像データDLから各画素値を読み出すプログラムによって実現することができる。
【0089】
上述したように、本発明において面積情報を算出する役割を果たす画素値読取部51、画素判定部52、画素数計数部53、面積情報提示部54は、コンピュータに組み込まれたプログラムの機能、すなわち、ソフトウエアによって実現される構成要素ということになるが、これらの構成要素に課された任務は、いずれも負担の軽い作業によって遂行することが可能である。すなわち、画素値読取部51の仕事は、単にグラフィックメモリからビットごとにデータを読み出す処理であり、画素判定部52の仕事は読み出されたデータビットが0か1かを判定する処理であり、画素数計数部53の仕事は、1と判定されたビット数をカウントする処理であり、面積情報提示部54は上記単純な演算式に基づいて面積率Rおよび実面積Sを計算する処理である。
【0090】
図1に示す従来のLSI設計装置でも、図8に示す本発明に係るLSI設計装置でも、ディスプレイ画面100上に、図4に示すようなレイアウト画像130および面積情報140を表示することができる。しかしながら、両者では、面積情報140を求めるための処理方法に大きな違いがある。
【0091】
すなわち、従来のLSI設計装置では、§2で述べたとおり、ソフトウエアとして用意された設計作業部20が、レイアウトデータ格納部10からベクタ形式の図形データDFおよび合成方法データDSを読み出し、これに基づく複雑な演算処理により面積情報を求める処理を行っていた。このようなソフトウエアによる面積情報の演算処理は、パソコンレベルのコンピュータでは、作業負担が極めて重い処理になる。
【0092】
これに対して、本発明に係るLSI設計装置では、ベクタ形式の図形データDFに基づく面積情報の演算処理は不要である。もちろん、表示データ展開部31が、メモリ部32上にベクタ形式の図形データDFを展開して、ラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する処理を行う必要がある。ただ、このようなラスタ展開の処理は、図11および図12に示すような手順で実行され、それほど負担のかかる処理ではない。特に、表示データ展開部31として、GPU30内の集積回路(グラフィックボード上の画像処理用半導体集積回路)を用いるようにすれば、ハードウエアによる高速処理が可能になり、パソコンレベルのコンピュータを利用した場合でも、人間の目から見ると一瞬で終了する処理になる。
【0093】
一方、ここに示す実施形態の場合、画素値読取部51、画素判定部52、画素数計数部53、面積情報提示部54は、ソフトウエアによる処理を利用した構成要素であるが、上述したように、これら各構成要素の演算負担は非常に軽いものであり、パソコンレベルのコンピュータを利用した場合でも、人間の目から見ると一瞬で終了する処理になる。
【0094】
かくして、本発明に係るLSI設計装置では、オペレータが、表示指示入力部25に対して、LSIレイアウトパターンの所定箇所を所定倍率でレイアウト画像として表示するための表示指示を入力すると、図4に例示するようなディスプレイ画面100が直ちに表示されることになる。ここで、レイアウト画像130は、オペレータの表示指示に応じた画像であり、面積情報140は、現時点で表示されているレイアウト画像130についての面積率Rおよび実面積Sを示す情報になる。もちろん、オペレータが表示箇所や表示倍率を変更する指示を入力すれば、当該指示はリアルタイムで反映され、新たなレイアウト画像130およびこれに対応した新たな面積情報140が表示されることになる。
【0095】
このように、本発明によれば、ベクタ形式の図形データで表現される多数の図形を合成して得られる合成図形について、その面積や面積率といった面積情報を求める処理を、低演算負担で高速に行うことが可能になり、パソコンレベルのコンピュータを利用してLSI設計装置を構成したとしても、リアルタイムで面積情報の提示を行うことができるようになる。
【0096】
<<< §4. 図形面積情報の提示方法 >>>
ここでは、本発明を図形面積情報の提示方法として把握し、その基本概念を説明する。本発明に係る図形面積情報の提示方法は、ベクタ形式の図形データで表現された図形についての面積に関する情報を計算して提示する方法であり、次の各段階によって構成される。
【0097】
まず、ベクタ形式の図形データDFをメモリ上に展開して、二次元画素配列によって構成されるラスタ形式のレイアウト用画像データDLを作成する画像データ作成段階。このレイアウト用画像データDLに基づいて、ディスプレイ装置40の画面上に当該図形を表示させる図形表示段階。メモリ部をアクセスして、レイアウト用画像データDLを構成する各画素の画素値を読み取る画素値読取段階(§3で述べた画素値読取部51による処理段階)。読み取った画素値に基づいて、個々の画素が、図形の内部に位置する内部画素か外部に位置する外部画素かを判定する画素判定段階(§3で述べた画素判定部52による処理段階)。内部画素の数を計数する画素数計数段階(§3で述べた画素数計数部53による処理段階)。そして、計数した内部画素数Kに基づいて、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されている図形の面積に関する面積情報を提示する面積情報提示段階(§3で述べた面積情報提示部54による処理段階)である。
【0098】
いずれの段階も、実際にはコンピュータによって実行されることになる。このような方法で、図形面積情報の提示を行うようにすれば、メモリ上に展開されたラスタ形式の画像データを構成する個々の画素の画素値に基づいて内部画素数Kが計数され、この計数値Kに基づいて面積率Rや実面積Sの算出が行われる。このため、ベクタ形式の図形データに基づく面積算出演算は不要になり、低演算負担で高速に図形の面積に関する情報を計算して提示することが可能になる。
【0099】
面積情報として面積率Rの提示を行う場合は、面積情報提示段階で、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されている図形の面積率Rを、レイアウト用画像データDLを構成する二次元画素配列の全画素数Nと内部画素数Kとを用いたR=K/Nなる演算により求め、求めた面積率Rを面積情報としてディスプレイ装置40の画面上に表示すればよい。
【0100】
一方、面積情報として実面積Sの提示を行う場合は、レイアウト用画像データDLを構成する二次元画素配列上の1画素に対応する単位参考面積ΔSを、図形の表示倍率mを用いて、ΔS=f(m)なる関数として予め定義しておき、画像データ作成段階で、指定された表示倍率mに応じた大きさで図形が表示されるように図形データDFをメモリ上に展開してレイアウト用画像データDLを作成し、面積情報提示段階で、現時点でディスプレイ装置40の画面上に表示されている図形の参考面積Sを、S=ΔS×Kなる演算により求め、求めた参考面積Sを面積情報としてディスプレイ装置40の画面上に表示すればよい。なお、参考面積Sは、必ずしも何らかの実体ある構成要素の実面積である必要はなく、任意尺度の面積であってかまわない。
【符号の説明】
【0101】
10:レイアウトデータ格納部
20:設計作業部
25:表示指示入力部
30:GPU
31:表示データ展開部
32:メモリ部
33:表示制御部
40:ディスプレイ装置
51:画素値読取部
52:画素判定部
53:画素数計数部
54:面積情報提示部
100:ディスプレイ画面
110:タイトルバー(補助情報)
120:コマンドメニュー(補助情報)
130:レイアウト画像
140:面積情報(補助情報)
150:データファイルリスト(補助情報)
D:ラスタ形式画像データ
DA:補助情報用画像データ(ラスタ形式)
DF:図形データ(ベクタ形式)
DL:レイアウト用画像データ(ラスタ形式)
DS:合成方法データ
F10〜F70:基本図形
K:内部画素数
M1,M2:ダミーパターン
N:レイアウト画像の全画素数N
O:二次元XY座標系の原点
P11〜P72:座標点
Q1,Q2:指定点
R:面積率
S:実面積
X,Y:二次元XY座標系の座標軸
Δx:1画素の実レイアウト上での横方向ピッチ
Δy:1画素の実レイアウト上での縦方向ピッチ
ΔS:単位実面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12