(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、壁面緑化で用いられる植物は、風や強い日射しに晒されることになる。常時、風に晒された場合、植物は、葉や茎等が揺れることによる擦れや、水分の蒸発による乾燥に起因したストレスを受ける。また、強い日射しに晒された場合にも、高温や乾燥に起因したストレスを受ける。このように、風や日射しによるストレスは、植物における生育不良の原因になる。
【0005】
ここで、これらのストレス軽減のため、風や日射しの一部を遮る保護部材を設けることが考えられる。しかしながら、単に保護部材を設けた場合には、植物による冷却や景観向上等の壁面緑化の目的を達成できないことがある。また、バルコニー等に設けられた壁面緑化に、配慮なく保護板を設置した場合には、景観の妨げとなる場合がある。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、風や日射しに起因のストレスを軽減して植物の生育不良を抑制しながら、植物による景観を向上させるための垂直面緑化構造体及び垂直面緑化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する垂直面緑化構造体は、植物を垂直面上に配置して緑化を行なう垂直面緑化構造体であって、前記植物を支持する植物支持部材と、前記植物支持部材によって支持された植物の配置面の前面と後面に、間隔を空けて配置された複数の保護板とを備え、
前記植物支持部材に支持された植物を前面及び後面の何れかで覆う位置で、前記前面の保護板と、前記後面の保護板とを、前記配置面に対して非対称に配置したこと要旨とする。
【0008】
この構成によれば、植物の前面の保護板と後面の保護板とを非対称に配置するので、植物の前後において、風や日射しに起因するストレスを軽減することができるとともに、植物を前後から見ることができる。
【0009】
上記垂直面緑化構造体について、前記前面の保護板と前記後面の保護板とを、交互に配置することが好ましい。この構成によれば、前後の保護板を交互に配置することにより、風の流通を更に妨げることができるので、風の通り抜けによる植物同士の摩擦や乾燥に起因したストレスを低減することができる。
【0010】
上記垂直面緑化構造体について、前記植物はつる植物であり、前記植物支持部材は、前記植物のつるを支持する第1支持部と、前記植物の根を支持する第2支持部とを備え、前記第2支持部として、屋上緑化のための植栽基盤を用いることが好ましい。この構成によれば、植物は、プランターに植えられた場合に比べて、多量の土壌基盤の中で根を張ることができるので、よい生育状態を保つことが期待できる。
【0011】
上記垂直面緑化構造体について、前記植物を照らす照明器具を、前記保護板と前記植物の配置面との間に設けることが好ましい。この構成によれば、照明器具により植物を照らすことができるので、景観向上、特に夜間の景観向上を図れる。
【0012】
上記垂直面緑化構造体について、前記保護板は、取付角度又は取付位置を変更できる調整機構を用いて設置されていることが好ましい。この構成によれば、風の向きや日射しの角度等に応じて、保護板の取付角度や取付位置を変更することができるので、風や日射しの状況に応じて、保護板を有効に配置することができる。
【0013】
上記垂直面緑化構造体について、前記保護板の少なくとも一部を、有孔折板によって構成することが好ましい。この構成によれば、有孔折板の孔が、空気の対流混合を促進し、熱を空気に伝えて逃がし易くするため、有孔折板自身の温度を下げることができる。従って、有孔折板の近傍に配置された植物周囲の温度を下げることができ、植物の日射しによるストレスを更に軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、風や日射しに起因のストレスを軽減して植物の生育不良を抑制しながら、植物による景観を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、
図1〜
図3に従って、本発明を具体化した第1の実施形態を説明する。本実施形態では、建物の屋上に設置されている機械設備の目隠し(パーティション)として、垂直面緑化構造体を設ける場合を想定する。また、本実施形態では、つる植物による登攀法により緑化を行なう。
図1は、機械設備11の周囲を囲むパーティションの斜視図である。
図1に示すように、機械設備11を取り囲むパーティションとして垂直面緑化構造体20を用いている。この垂直面緑化構造体20は、基礎30上に設置されたフレームによって支持されている。
【0017】
図2(a)及び
図2(b)は、それぞれ垂直面緑化構造体20の要部の正面図及び要部の断面側面図である。垂直面緑化構造体20は、つる植物25のつるを用いて緑化を行なう。本実施形態では、プランター26に育成されたつる植物25を用いる。そして、垂直面緑化構造体20は、このつる植物25のつるが絡み付き、つる植物25の配置面を規定するワイヤ23を備える。本実施形態では、ワイヤ23及びプランター26が、つる植物25を支持する植物支持部材として機能する。なお、ワイヤ23がつる植物25のつるを支持する第1支持部、プランター26がつる植物の根を支持する第2支持部に対応する。
【0018】
更に、垂直面緑化構造体20は、第1保護板21と第2保護板22とを備えている。この第1保護板21は、機械設備11側(内側)に配置され、第2保護板22は、機械設備11側とは反対側(外側)に配置されている。各保護板(21,22)は、つる植物25が受ける風及び日射の一部を遮るための板部材である。
【0019】
各保護板(21,22)は、横長となるように垂直方向に並んで配置される。この場合、各保護板(21,22)の板長方向は水平方向に、各保護板(21,22)の板幅方向は垂直方向に向けられて配置される。
【0020】
図1に示すように、機械設備11の周囲を囲むように基礎30が配置されている。各基礎30には、第1保護板21、第2保護板22及びワイヤ23を支持するためのフレームが立てられている。このフレームは、基礎フレーム31、下部フレーム33、上部フレーム34及び縦フレーム35から構成されている。基礎フレーム31は、基礎30に、垂直方向に延在するように固定されている。この各基礎フレーム31間には、下部フレーム33及び上部フレーム34が水平方向に架け渡されており、下部フレーム33の端部及び上部フレーム34の端部がボルト止め等で固定されている。
下部フレーム33及び上部フレーム34には、縦フレーム35の端部が、ボルト止め等で固定されている。下部フレーム33は、基礎フレーム31の内側、外側に、分離して並べられた2本の鉄骨からなる。また、上部フレーム34は、基礎フレーム31の内側、外側に、密着して並べられた2本の鉄骨からなる。
【0021】
図2(a)に示すように、各縦フレーム35は、下部フレーム33及び上部フレーム34に、垂直に架け渡されてボルト止め等で固定されている。そして、下部フレーム33の下方に、基礎30間にプランター26を設置する。
図2(b)に示すように、下部フレーム33及び上部フレーム34に対して、内側と外側とに縦フレーム35が設けられている。本実施形態では、内側と外側の縦フレーム35間は所定間隔D1で離間して配置される。この所定間隔D1は、プランター26の幅よりも狭く、プランター26上方に下部フレーム33を配置できるようにしている。そして、この所定間隔D1において、つる植物25を育成できる幅に設定されている。なお、内側、外側の各上部フレーム34は、所定間隔D1の約半分の幅で構成されている。
【0022】
図2(b)に示すように、そして、内側と外側の縦フレーム35の間には、格子状のワイヤ23が配置されている。このワイヤ23は、内側及び外側の上部フレーム34によって挟持されており、地面よりも所定位置H1まで垂下するように配置されている。本実施形態では、この所定位置H1は、プランター26の上面部よりも高い位置とする。
【0023】
更に、内側の縦フレーム35には、第1保護板21が取り付けられている。また、外側の縦フレーム35には、第2保護板22が取り付けられている。第1保護板21と第2保護板22とは、ワイヤ23が設けられた面(配置面)に対して非対称となるように、交互に配置されている。本実施形態では、第1保護板21の上端(又は下端)の高さ位置と、隣接する第2保護板22の下端(又は上端)が配置された高さとが、上下方向において所定間隔G(例えば数cm)となるように配置する。この隙間の所定間隔Gを、例えば30mm〜保護板(21,22)の板幅(板幅方向の寸法)程度の範囲から選択することができる。
【0024】
図3に示すように、本実施形態では、各保護板(21,22)として有孔折板50を用いる。この有孔折板50は、溶融亜鉛メッキ鋼板によって構成されている。有孔折板50は、板長方向に同じ断面形状をした長尺物である。
【0025】
有孔折板50は、上縁部51及び下縁部52を有し、中央部55が外側に張り出す台形形状をした断面山型形状をしている。中央部55は、頂部55p、斜面部分55kからなる山型形状をしていることで、有孔折板50の断面二次モーメントが向上する。これにより、板面の法線方向から作用する風に対するための曲げ剛性を高めることができる。
【0026】
更に、本実施形態における有孔折板50の全面には、円形状の孔50hが、複数、形成されている。各孔50hは、それぞれ板厚方向に貫通して形成されている。具体的には、有孔折板50の上縁部51及び下縁部52には、複数の孔50hが、板長方向に一列に並んで形成されている。また、中央部55の頂部55pにも、複数の孔50hが、板長方向に一列に並んで形成されている。更に、中央部55の各斜面部分55kにも、それぞれ孔50hが形成されている。このような構成をした本実施形態の有孔折板50においては、開孔率(有孔折板50の板面積に対する全孔の開口面積の割合)として、25〜50%を用いることができる。
【0027】
そして、
図2に示すように、下部フレーム33の下方に配置したプランター26には、つる植物25を植える。このつる植物25として、ヘデラやテイカカズラ等を用いる。この場合、プランター26には、生育が異なる複数のつる植物25を混合して植えておくことが好ましい。
【0028】
次に、上記のように構成された垂直面緑化構造体20の設置方法について説明する。
まず、垂直面緑化構造体20を設ける位置に、屋上の機械設備の周辺に基礎30を設置する。次に、基礎30の上に基礎フレーム31を固定する。更に、この基礎フレーム31の内側及び外側のそれぞれに下部フレーム33を固定する。更に、基礎フレーム31の上部に、ワイヤ23を挟持させた上部フレーム34を固定する。
【0029】
次に、ワイヤ23が挟み込まれた上部フレーム34を基礎フレーム31の上部に固定する。この場合、ワイヤ23は、プランター26の上部近傍まで垂下した状態になる。そして、下部フレーム33及び上部フレーム34に各縦フレーム35を固定する。
次に、機械設備側の縦フレーム35の所定位置に、第1保護板21(有孔折板50)を取り付ける。更に、機械設備側とは反対側の縦フレーム35の所定位置に、第2保護板22(有孔折板50)を取り付ける。そして、下部フレーム33の下方の基礎30間に、つる植物25が植えられたプランター26を一列に配置する。この状態で、プランター26のつる植物25を生育することにより、垂直面緑化構造体20において、つる植物25による緑化が行われる。
【0030】
次に、この垂直面緑化構造体20の作用について説明する。
昼間においては、垂直面緑化構造体20に配置されているつる植物25に対しても日光が照射される。この場合、つる植物25の外側に配置されている第2保護板22によって、直接的な日射しを部分的に遮るとともに、第1保護板21によって、反射光を含めた天日による明るさを調整する。これにより、つる植物25における日射しに起因するストレスを軽減することができる。
【0031】
また、風が吹いている場合、この風の一部が、垂直面緑化構造体20の第1及び第2保護板21,22によって遮られる。この場合、つる植物25の両側に保護板(21,22)が配置されているため、片側にのみ保護板を設けた場合に比べて、風の通り抜けが規制される。その結果、植物の葉からの蒸発産量を抑える等、風に起因するストレスを軽減することができる。
【0032】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の垂直面緑化構造体20は、緑化に用いるつる植物25を支持するワイヤ23の前後に、風及び日射しの一部を遮る第1及び第2保護板21,22を交互に配置する。これにより、つる植物25の前後において、風や日射しに起因するストレスを軽減することができるとともに、つる植物25を前後から見ることができる。更に、第1及び第2保護板21,22を交互に配置することにより、風の流通断面積を小さくすることができるため、風の通り抜けによる植物同士の摩擦や乾燥に起因したストレスを低減することができる。
【0033】
(2)本実施形態の垂直面緑化構造体20の第1及び第2保護板21,22は、所定間隔Gの隙間をおいて配置されている。この隙間を介して、垂直面緑化構造体20の向こう側を見ることができ、開放感等の景観向上を図ることができる。
【0034】
(3)本実施形態の第1及び第2保護板21,22は、有孔折板50で構成されている。これにより、有孔折板50の孔50hが、空気の対流混合を促進し、熱を空気に伝えて逃がし易くするため、有孔折板50自身の温度を下げることができる。従って、有孔折板50の近傍に配置されたつる植物25周囲の温度を下げることができ、つる植物25の日射しによるストレスを更に軽減することができる。また、有孔折板50の孔50hを介しても、垂直面緑化構造体20の向こう側を見ることができるので、景観をいっそう確保することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、
図4に従って、本発明を具体化した第2の実施形態を説明する。本実施形態においては、第1及び第2保護板21,22を縦長に配置するとともに、つる植物25をプランター26の代わりに屋上緑化の植栽基盤に植えるように変更した構成であり、同様の部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、本実施形態では、屋上に設置されたフェンスとして、垂直面緑化構造体20を用いる場合について説明する。
【0036】
図4(a)及び
図4(b)は、それぞれ本実施形態における垂直面緑化構造体20の要部の上面図及び正面図である。
本実施形態においては、建物の屋上に、植栽基盤15を敷き詰める。そして、屋上の周縁には、
図4(b)に示す基礎30を配置する。そして、基礎30の上には、上記実施形態と同様にフレームが設けられている。基礎30の内側には、植栽基盤15が配置されている。
【0037】
上記第1実施形態と同様に、フレームは、基礎フレーム31、下部フレーム33及び上部フレーム34を備えている。また、本実施形態では、第1実施形態と異なり、下部フレーム33及び上部フレーム34の間には、縦フレーム35は設けられていない。
【0038】
また、上記第1実施形態と同様に、つる植物25のつるを支持するワイヤ23が、上部フレーム34間において挟持されており、地面の近傍まで垂下するように配置されている。本実施形態では、ワイヤ23及び植栽基盤15が、つる植物25を支持する植物支持部材として機能する。なお、ワイヤ23がつる植物25のつるを支持する第1支持部、植栽基盤15がつる植物の根を支持する第2支持部に対応する。
【0039】
本実施形態では、各保護板(21,22)は、上端部及び下端部が、下部フレーム33及び上部フレーム34にそれぞれ固定されている。本実施形態では、第1及び第2保護板21,22は、上から見て、ワイヤ23に対して非対称となるように、2枚連続して配置されている部分がある。本実施形態においても、第1保護板21と第2保護板22とは、横方向において所定間隔(例えば数cm)の隙間をおいて配置されている。また、本実施形態における各保護板(21,22)は、上記実施形態と同様に、
図3に示す有孔折板50を用いている。
【0040】
次に、本実施形態における垂直面緑化構造体20の設置方法について説明する。
本実施形態では、屋上の周縁部に所定間隔をおいて複数の基礎30を設置する。そして、垂直面緑化構造体20を行なう基礎30の近傍につる植物25を植えておく。
【0041】
次に、基礎30に基礎フレーム31を立てて固定する。更に、この基礎フレーム31の内側及び外側のそれぞれに下部フレーム33を固定する。次に、ワイヤ23が挟み込まれた上部フレーム34を基礎フレーム31の上部に固定する。そして、下部フレーム33及び上部フレーム34の所定位置に、第1保護板21及び第2保護板22を取り付ける。
【0042】
また、本実施形態における垂直面緑化構造体20の作用は、上記実施形態と同様である。ここで、この構成における垂直面緑化構造体20を用いて、風速の低減効果について測定した結果を表1、表2に示す。ここでは、各保護板(21,22)には、開孔率が約27%の有孔折板を用いた。表1は、風速等級別の平均風速(単位m/s)を示し、表2は、風速等級別平均風速比(保護板(21,22)を設置しなかった場合に対する比率)を示す。ここで、(北)又は(南)とは、保護板(21,22)である有孔折板50が開口している方角を示している。
【0045】
表2に示すように、風速が高くなるにつれて風速比が小さくなっており、風速は有孔折板50の効果によって、27〜44%低減していることがわかる。
【0046】
また、この構成における垂直面緑化構造体20を用いて、日積算日射量の低減効果について測定した結果(単位はWh/m
2・日)を表3に示す。この測定は、2013年の5月の連続する3日(A日、B日及びC日)で測定を行なった。
【0048】
この表3に示すように、保護板(21,22)によって、日射量は64〜66%に低減している。通常、垂直面緑化構造体20に用いられるつる植物25においては、日射量を65%程度に低下させた環境においても、生育が良好であることが確認されている。従って、上述の垂直面緑化構造体20の日射量が適切になっていることがわかる。
【0049】
本実施形態によれば、上記(1)〜(3)と同様な効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(4)本実施形態においては、屋上には、植栽基盤15が配置されている。そして、緑化を行なうために用いるつる植物25は、この植栽基盤15に植えられている。これにより、つる植物25は、プランター26に植えられた場合に比べて、多量の土壌基盤の中で根を張ることができるので、よい生育状態を保つことが期待できる。
【0050】
(5)本実施形態においては、第1及び第2保護板21,22は、下部フレーム33及び上部フレーム34に架け渡すように配置される。これにより、第1及び第2保護板21,22を架け渡すための縦フレーム35を省略できるので、垂直面緑化構造体20をより簡素化することができる。
【0051】
また、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ 上記各実施形態においては、垂直面緑化構造体20は、ワイヤ23と、このワイヤ23の前後にそれぞれ配置された第1保護板21及び第2保護板22とを備えている。垂直面緑化構造体20に、更に、つる植物25に対して光を照射する照明器具を設けてもよい。例えば、
図5に示すように、第1保護板21及び第2保護板22として用いた有孔折板50において、断面山型形状の部分に照明器具60を配置してもよい。また、プランター26の上面部に照明器具60を配置して、つる植物25全体に対して光を照射してもよい。ここで、垂直面緑化構造体20が主に外側から眺められる場合には、外側となる第2保護板22に照明器具60を設けると、つる植物25を綺麗にライトアップすることができる。なお、
図5において、垂直方向に並ぶ各有孔折板50に照明器具60を設けているが、照明器具の配置位置や数はこれに限定されることなく、例えば複数おきに設けてもよい。
【0052】
更に、垂直面緑化構造体20にミストノズルや保水材を設けてもよい。ミストノズルに水を供給し、植物に対してミストを噴霧することができる。また、保水材において水を循環させることにより、植物の周囲温度を冷却することができる。
【0053】
・ 上記各実施形態においては、垂直面緑化構造体20は、つる植物25を支持する格子状のワイヤ23を設けた。ワイヤ23の形状は、格子状に限定されず、様々な形状を用いることができる。更に、つる植物25を支持する部材は、ワイヤ23に限られず、可撓性がある網(ネット)等を用いてもよい。
【0054】
・ 上記各実施形態の垂直面緑化構造体20は、つる植物25を用いた登攀法によって緑化を行なう場合について説明したが、緑化方法はこれに限定されるものではない。例えば「垂下法」等の他の方法によっても適用可能である。
図6に示すように、建物の上部から植物75を垂下させる。具体的には、小屋の上部にプランター76を配置し、プランター76内に植えられた植物75を垂下させる。この場合、植物75の内側に第1保護板21を配置し、外側に第2保護板22を配置する。そして、第1保護板21及び第2保護板22を交互となるように非対称に配置する。
更に、下部フレーム33、上部フレーム34間に、水平方向に、植栽ポットを載置させる板や土壌保持部を設けた構成(いわゆる植栽基盤型ルーバー)を用いることも可能である。この場合には、ルーバー毎に植物を配置できる。
【0055】
・ 上記各実施形態の垂直面緑化構造体20の第1及び第2保護板21,22として、同じ有孔折板50を用いた。有孔折板50の形状は、上述した断面山型形状に限定されない。例えば、板幅方向に、複数の山型形状を設けた形状の有孔折板を用いることが可能である。また、第1保護板21及び第2保護板22が配置される方向に、有孔折板及び有孔平板を重ね合わせた構造の板でもよい。また、縦フレーム35の表裏に有孔折板50を設け、第1保護板21及び第2保護板22が配置される方向に、有孔折板を、所定間隔をおいて複数設けた構成にしてもよい。更に、有孔折板50の孔の形状、孔の配置パターンや開口率等も、上記各実施形態に限定されない。また、第1保護板21及び第2保護板22において、それぞれ、異なる開口率の有孔折板50を併用してもよい。更に、有孔折板50の材質は、溶融亜鉛メッキ鋼板に限定されるものではなく、鋼やアルミニウム等の金属や木、樹脂等を用いることが可能である。
【0056】
更に、垂直面緑化構造体20の第1保護板21及び第2保護板22として、有孔折板50の代わりに、無孔折板、有孔平板及び無孔平板等を用いてもよい。ここで、無孔折板とは、板厚方向に貫通する孔を有さない山型形状板である。有孔平板とは、板厚方向に貫通する孔を有した平板である。無孔平板とは、板厚方向に貫通する孔を有しない平板である。また、これらを組み合わせて、第1保護板21及び第2保護板22として用いることも可能である。
【0057】
・ 上記第1実施形態の垂直面緑化構造体20は、第1保護板21及び第2保護板22を交互に設けた。上記第2実施形態の垂直面緑化構造体20は、第1保護板21及び第2保護板22の連続配置枚数を変更して設けた。第1保護板21及び第2保護板22の配置は、植物が配置された面に対して非対称であれば、多様な配置パターンを用いることができる。
【0058】
また、上記各実施形態では、第1保護板21及び第2保護板22の間は、所定間隔Gで配置したが、この間隔は任意に設定することができる。例えば、この隙間をなくした配置や、第1保護板21と第2保護板22との端部が重なり合う配置を用いることが可能である。
【0059】
・ 上記各実施形態の垂直面緑化構造体20は、屋上に設置される機械設備11のパーティションやフェンスを、つる植物25によって緑化するために用いた。垂直面緑化構造体20を用いる場所は、屋上に限定されず、例えば、ベランダ等であってもよい。
【0060】
この場合には、
図7に示すように、ベランダ80の手すり80aに第2保護板82を設ける。そして、ベランダ80の内側にプランター86に植えられた植物85を配置し、この植物85の内側に第1保護板81を配置する。
【0061】
・ 上記第1実施形態の垂直面緑化構造体20は、第1保護板21及び第2保護板22を、縦フレーム35に固定した。更に、上記第2実施形態の垂直面緑化構造体20は、第1保護板21及び第2保護板22を、下部フレーム33及び上部フレーム34に固定した。垂直面緑化構造体20に、第1保護板21及び第2保護板22の取付角度を変更できる角度調整機構や取付位置を変更できる位置調整機構を設けてもよい。これにより、垂直面緑化構造体20の配置場所の日射方向や風向きによって、第1保護板21及び第2保護板22の配置を調整することできる。
【0062】
また、第1保護板21及び第2保護板22の配置を、状況に応じて変更できるようにしてもよい。このために、垂直面緑化構造体20に日射方向や風向きを検知するセンサを設ける。そして、このセンサを角度調整機構や位置調整機構に接続する。そして、このセンサによる日射方向や風向きの検出値に応じて、角度調整機構や位置調整機構は、第1保護板21及び第2保護板22の配置(角度や取付位置)を変更する。この場合、角度調整機構や位置調整機構は、日射量が適切になるような制御や、風力を低減する方向に制御する。