特許第6248461号(P6248461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248461
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】積層型コモンモードフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-164815(P2013-164815)
(22)【出願日】2013年8月8日
(65)【公開番号】特開2015-35464(P2015-35464A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】服部 琢生
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−065190(JP,A)
【文献】 特開2009−212255(JP,A)
【文献】 特開2008−300432(JP,A)
【文献】 特開2007−227566(JP,A)
【文献】 特開2005−159223(JP,A)
【文献】 特開2010−123876(JP,A)
【文献】 特開2007−150209(JP,A)
【文献】 特開2006−237080(JP,A)
【文献】 特開2006−060057(JP,A)
【文献】 特開平05−041322(JP,A)
【文献】 特開平11−273950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層が積層された素体と、
前記素体の外表面に配置された第一、第二、第三、及び第四端子電極と、
渦巻き状の第一コイル部と、前記第一コイル部の外側端と前記第一端子電極とを接続する第一引出部と、を有する第一コイル導体と、
前記複数の絶縁体層の積層方向で前記第一コイル部と対向する渦巻き状の第二コイル部と、前記第二コイル部の外側端と前記第二端子電極とを接続する第二引出部と、を有する第二コイル導体と、
一端が前記第一コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が前記第三端子電極に接続される第一引出導体と、
一端が前記第二コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が前記第四端子電極に接続される第二引出導体と、を備え、
前記素体は、焼結体であり、前記第一コイル導体、前記第二コイル導体、前記第一引出導体、及び前記第二引出導体は、前記素体内に配置されていると共に焼結体であり、
前記第一引出部と前記第二引出部とは、前記積層方向から見て、互いに重なる領域を有しておらず、
前記第一及び第二引出導体は、前記第一及び第二引出部よりも幅広であることを特徴とする積層型コモンモードフィルタ。
【請求項2】
前記第一引出部と前記第二引出部とは、その長さが同等であることを特徴とする請求項1に記載の積層型コモンモードフィルタ。
【請求項3】
前記第一引出部は、前記第一コイル部の前記外側端から前記第一コイル部の外側に向けて延びる第一部分と、前記第一部分から前記第一コイル部の巻回方向に対し後側に向けて延びる第二部分と、を含み、
前記第二引出部は、前記第二コイル部の前記外側端から前記第二コイル部の外側に向けて延びる第三部分と、前記第三部分から前記第二コイル部の巻回方向に対し前側に向けて延びる第四部分と、を含み、
前記第一部分が、前記積層方向から見て、前記第一端子電極と前記第二端子電極との間の中点を通り且つ前記第一端子電極と前記第二端子電極とが並ぶ方向に直交する方向に延びる直線上に位置していることを特徴とする請求項2に記載の積層型コモンモードフィルタ。
【請求項4】
前記素体は、前記第一及び第二コイル導体が配置され且つ前記複数の絶縁体層として複数の非磁性体層が積層された非磁性体部と、前記非磁性体部を前記積層方向で挟むよう配置され且つ磁性材料からなる一対の磁性体部と、前記積層方向から見て前記第一及び第二コイル導体の内側に位置するように前記非磁性体部内に配置され且つ磁性材料からなる磁性芯部と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型コモンモードフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コモンモードフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型コモンモードフィルタとして、複数の絶縁体層が積層された素体と、素体の外表面に配置された第一、第二、第三、及び第四端子電極と、渦巻き状の第一コイル部と、第一コイル部の外側端と第一端子電極とを接続する第一引出部と、を有する第一コイル導体と、複数の絶縁体層の積層方向で第一コイル部と対向する渦巻き状の第二コイル部と、第二コイル部の外側端と第二端子電極とを接続する第二引出部と、を有する第二コイル導体と、一端が第一コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が第三端子電極に接続される第一引出導体と、一端が第二コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が第四端子電極に接続される第二引出導体と、を備えるものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−114627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、素体にクラックが発生するのを抑制すると共に、直流抵抗を低減することが可能な積層型コモンモードフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る積層型コモンモードフィルタは、複数の絶縁体層が積層された素体と、素体の外表面に配置された第一、第二、第三、及び第四端子電極と、渦巻き状の第一コイル部と、第一コイル部の外側端と第一端子電極とを接続する第一引出部と、を有する第一コイル導体と、複数の絶縁体層の積層方向で第一コイル部と対向する渦巻き状の第二コイル部と、第二コイル部の外側端と第二端子電極とを接続する第二引出部と、を有する第二コイル導体と、一端が第一コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が第三端子電極に接続される第一引出導体と、一端が第二コイル導体の内側端とスルーホール導体を通して接続され、他端が第四端子電極に接続される第二引出導体と、を備え、第一引出部と第二引出部とは、積層方向から見て、互いに重なる領域を有しておらず、第一及び第二引出導体は、第一及び第二引出部よりも幅広であることを特徴とする。
【0006】
素体にクラックが発生する原因として、素体内に生じる応力が挙げられる。積層型コモンモードフィルタは、通常、焼成過程を経ることにより得られる。焼成過程では、素体が焼結して収縮していくタイミングと、素体内に配置される導体(第一及び第二コイル導体並びに第一及び第二引出導体など)が焼結して収縮していくタイミングが異なるため、素体に応力が生じることとなる。特に、複数の導体が互いに近づいて配置されている場合、素体には、各導体に引っ張られる方向に大きな応力が発生するため、素体にクラックが生じやすい。特に、導体同士が上記積層方向で互いに重なり合っている場合、素体同士間の距離が短くなり、より大きな応力が発生し易い。
【0007】
本発明に係る積層型コモンモードフィルタでは、第一引出部と第二引出部とは、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していない。このため、第一引出部と第二引出部とが離れて位置することとなり、素体における第一引出部と第二引出部との間に位置する領域に発生する応力が小さくなる。この結果、素体にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0008】
本発明では、第一及び第二引出導体が、第一及び第二引出部よりも幅広であるため、直流抵抗を低減することができる。
【0009】
第一引出導体は、第一コイル導体の内側端に対応する位置から素体の外表面まで伸び、第二引出導体は、第二コイル導体の内側端に対応する位置から素体の外表面まで伸びている。第一及び第二引出導体が幅広であることにより、焼成過程において、収縮する量が大きくなり素体に大きな応力が生じる可能性がある。しかしながら、第一及び第二引出導体は、対応するコイル導体の内側端に対応する位置から素体の外表面までの比較的広い範囲にわたって配置されるため、生じる応力が分散され、応力が集中するのを抑制することができる。この結果、クラックが素体に発生し難い。
【0010】
第一及び第二引出部は、対応するコイル部の外側端から素体の外表面までの比較的狭い範囲にわたって配置されるため、第一及び第二引出部が幅広とされた場合、応力が集中し、素体にクラックが発生する懼れがある。しかしながら、本発明では、第一及び第二引出導体が第一及び第二引出部よりも幅広である、すなわち、第一及び第二引出部が第一及び第二引出導体よりも幅狭であることから、生じる応力が小さく、また、上述したように、第一引出部と第二引出部とが離れて位置していることから、クラックが素体に発生し難い。
【0011】
本発明では、第一引出部と第二引出部とは、その長さが同等であってもよい。この場合、第一コイル導体と第二コイル導体とで、その線路長にばらつきが生じ難い。したがって、第一コイル導体と第二コイル導体との特性バラつき(たとえば、インピーダンスのばらつきなど)が生じるのを抑制することができる。
【0012】
本発明では、第一引出部は、第一コイル部の外側端から第一コイル部の外側に向けて延びる第一部分と、第一部分から第一コイル部の巻回方向に対し後側に向けて延びる第二部分と、を含み、第二引出部は、第二コイル部の外側端から第二コイル部の外側に向けて延びる第三部分と、第三部分から第二コイル部の巻回方向に対し前側に向けて延びる第四部分と、を含み、第一部分が、積層方向から見て、第一端子電極と第二端子電極との間の中点を通り且つ第一端子電極と第二端子電極とが並ぶ方向に直交する方向に延びる直線上に位置していてもよい。この場合、第一及び第二引出部のパターン(形状)を複雑にすることなく、第一引出部と第二引出部との長さを確実に同等に設定できる。
【0013】
本発明では、素体は、第一及び第二コイル導体が配置され且つ複数の絶縁体層として複数の非磁性体層が積層された非磁性体部と、非磁性体部を積層方向で挟むよう配置され且つ磁性材料からなる一対の磁性体部と、積層方向から見て第一及び第二コイル導体の内側に位置するように非磁性体部に配置され且つ磁性材料からなる磁性芯部と、を有していてもよい。この場合、第一コイル導体と第二コイル導体との間の磁気結合をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、素体にクラックが発生するのを抑制すると共に、直流抵抗を低減することが可能な積層型コモンモードフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る積層型コモンモードフィルタを示す斜視図である。
図2】素体の構成を示す分解斜視図である。
図3】素体の断面構成を説明するための図である。
図4】第一コイル導体を示す平面図である。
図5】第二コイル導体を示す平面図である。
図6】第一引出導体を示す平面図である。
図7】第一引出導体を示す平面図である。
図8】第一及び第二コイル導体並びに第一及び第二引出導体を重ねて示した図である。
図9】第一コイル導体の変形例を示す平面図である。
図10】第二コイル導体の変形例を示す平面図である。
図11】第一及び第二コイル導体の変形例を重ねて示した図である。
図12】本実施形態の変形例に係る積層型コモンモードフィルタアレイを示す斜視図である。
図13】素体の構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1図3を参照して、本実施形態に係る積層型コモンモードフィルタCF1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る積層型コモンモードフィルタを示す斜視図である。図2は、素体の構成を示す分解斜視図である。図3は、素体の断面構成を説明するための図である。図3に示された断面構成は、図8における二点鎖線に沿った断面構成に対応している。
【0018】
積層型コモンモードフィルタCF1は、図1図3に示されるように、素体1と、素体1の外表面に配置される第一〜第四端子電極11〜14と、を備えている。素体1は、非磁性体部3と、素体1の高さ方向で非磁性体部3を挟むように配置された一対の磁性体部5と、を有している。
【0019】
素体1は、略直方体形状を呈している。素体1は、その外表面として、互いに対向する略長方形状の第一及び第二主面1a,1bと、互いに対向する第一及び第二側面1c,1dと、互いに対向する第三及び第四側面1e,1fと、を有している。素体1の長手方向は、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向である。素体1の幅方向は、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向である。素体1の高さ方向は、第一主面1aと第二主面1bとの対向方向である。
【0020】
第一及び第二側面1c,1dは、第一及び第二主面1a,1bの間を連結するように第一主面1aと第二主面1bとの対向方向に延びている。第一及び第二側面1c,1dは、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向(第一及び第二主面1a,1bの短辺方向)にも延びている。第三及び第四側面1e,1fは、第一及び第二主面1a,1bの間を連結するように第一主面1aと第二主面1bとの対向方向に延びている。第三及び第四側面1e,1fは、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向(第一及び第二主面1a,1bの長辺方向)にも延びている。
【0021】
非磁性体部3では、図2にも示されるように、複数の非磁性体層4が積層されている。すなわち、非磁性体部3は、積層された複数の非磁性体層4により構成されている。本実施形態では、非磁性体部3は、5層の非磁性体層4により構成されている。各磁性体部5では、図2にも示されるように、複数の磁性体層6が積層されている。すなわち、磁性体部5は、積層された複数の磁性体層6により構成されている。
【0022】
各非磁性体層4は、絶縁体層であり、たとえば非磁性材料(Cu−Zn系フェライト材料、誘電体材料、又はガラスセラミック材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。各磁性体層6は、絶縁体層であり、たとえば磁性材料(Ni−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、又はNi−Cu系フェライト材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体1では、各非磁性体層4及び各磁性体層6は、層間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体1の高さ方向、すなわち第一主面1aと第二主面1bとの対向方向は、複数の非磁性体層4の積層方向及び複数の磁性体層6の積層方向(以下、単に「積層方向」と称する。)と一致する。
【0023】
第一端子電極11及び第二端子電極12は、素体1の第一側面1c側に配置されている。第一端子電極11及び第二端子電極12は、第一側面1cの一部を第一及び第二主面1a,1bの対向方向に沿って覆うように、第一及び第二主面1a,1bにわたって形成されている。第一端子電極11は、第三側面1e側に位置し、第二端子電極12は、第四側面1f側に位置している。
【0024】
第三端子電極13及び第四端子電極14は、素体1の第二側面1d側に配置されている。第三端子電極13及び第四端子電極14は、第二側面1dの一部を第一及び第二主面1a,1bの対向方向に沿って覆うように、第一及び第二主面1a,1bにわたって形成されている。第三端子電極13は、第三側面1e側に位置し、第四端子電極14は、第四側面1f側に位置している。
【0025】
各端子電極11〜14は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各端子電極11〜14は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各端子電極11〜14の表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、たとえば電気めっきにより形成される。電気めっきには、Cu,Ni,Sn又はNi,Snなどが用いられる。
【0026】
積層型コモンモードフィルタCF1は、図2及び図3に示されるように、第一コイル導体21、第二コイル導体23、第一引出導体31、及び第二引出導体33を、非磁性体部3内に備えている。第一及び第二コイル導体21,23並びに第一及び第二引出導体31,33は、積層方向において、第一引出導体31、第一コイル導体21、第二コイル導体23、第二引出導体33の順に配置されている。各導体21,23,31,33は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。各導体21,23,31,33は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0027】
第一コイル導体21は、図4にも示されるように、第一コイル部21aと、第一引出部21bと、第一パッド部21cと、有している。第一コイル導体21は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第一コイル導体21と第二コイル導体23とは、互いに磁気結合する。
【0028】
第一コイル部21aは、渦巻き状であり、所定の方向に巻回された形状を呈している。第一引出部21bは、一端が第一コイル部21aの外側端に接続され、他端が第一側面1cに露出している。第一引出部21bは、第一側面1cに露出している他端で第一端子電極11に接続されている。すなわち、第一引出部21bは、第一コイル部21aの外側端と第一端子電極11とを接続している。
【0029】
第一引出部21bは、第一部分21bと、第二部分21bと、を含んでいる。第一部分21bは、第一コイル部21aの外側端から第一コイル部21aの外側に向けて延びている。本実施形態では、第一部分21bは、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に延びている。第二部分21bは、第一部分21bの端から第一コイル部21aの巻回方向に対し後側に向けて延びている。本実施形態では、第二部分21bは、第一部分21bの端から、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向のうち第四側面1fから第三側面1eに向かう方向に延びている。第一引出部21bは、更に部分21bを含んでいる。部分21bは、第二部分21bの端から第一側面1cに向けて延びており、第一側面1cに露出している。
【0030】
第一パッド部21cは、第一コイル部21aの内側に位置している。第一パッド部21cは、第一コイル部21a及び第一引出部21bの幅よりも大きい直径を有する円形状を呈している。第一コイル導体21は、第一コイル部21aの内側端と第一パッド部21cとを接続する第一接続部21dを有している。すなわち、第一コイル部21aと第一パッド部21cとは、第一接続部21dを通して接続されている。第一接続部21dは、第一コイル部21aの内側端から第三側面1eと第四側面1fとの対向方向に延びている。本実施形態では、第一パッド部21cが、第一コイル導体21の内側端を構成している。
【0031】
第二コイル導体23は、図5にも示されるように、第二コイル部23aと、第二引出部23bと、第二パッド部23cと、有している。第二コイル導体23は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第一コイル導体21と第二コイル導体23とは、積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。
【0032】
第二コイル部23aは、渦巻き状であり、所定の方向に巻回された形状を呈している。第二コイル部23aは、積層方向で第一コイル部21aと対向している。第二引出部23bは、一端が第二コイル部23aの外側端に接続され、他端が第一側面1cに露出している。第二引出部23bは、第一側面1cに露出している他端で第二端子電極12に接続されている。すなわち、第二引出部23bは、第二コイル部23aの外側端と第二端子電極12とを接続している。
【0033】
第二引出部23bは、第三部分23bと、第四部分23bと、を含んでいる。第三部分23bは、第二コイル部23aの外側端から第二コイル部23aの外側に向けて延びている。第四部分23bは、第三部分23bの端から第二コイル部23aの巻回方向に対し前側に向けて延びている。本実施形態では、第四部分23bは、第三部分23bの端から、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向のうち第三側面1eから第四側面1fに向かう方向に延びている。第二引出部23bは、更に部分23bを含んでいる。部分23bは、第四部分23bの端から第一側面1cに向けて延びており、第一側面1cに露出している。
【0034】
第二パッド部23cは、第二コイル部23aの内側に位置している。第二パッド部23cは、第二コイル部23a及び第二引出部23bの幅よりも大きい直径を有する円形状を呈している。第二コイル導体23は、第二コイル部23aの内側端と第二パッド部23cとを接続する第二接続部23dを有している。すなわち、第二コイル部23aと第二パッド部23cとは、第二接続部23dを通して接続されている。本実施形態では、第二パッド部23cが、第二コイル導体23の内側端を構成している。
【0035】
第二接続部23dは、部分23dと部分23dとを含んでいる。部分23dは、第一コイル部21aの内側端から第三側面1eと第四側面1fとの対向方向に延びている。すなわち、部分23dは、第一接続部21dに平行な方向に延びている。部分23dは、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向で見て、第一接続部21dよりも、第一側面1c寄りに位置している。部分23dは、部分23dの端から、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向と交差する方向に延びている。すなわち、部分23dは、部分23dが延びる方向と交差する方向に延びている。部分23dは、部分23dと第二パッド部23cとを接続している。本実施形態では、部分23dは、部分23dの端から第二パッド部23cに近づくにつれて、第二側面1dに近づくように延びている。
【0036】
第一引出導体31は、図6にも示されるように、第三パッド部31aと、第三引出部31bと、有している。第一引出導体31は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第一コイル導体21と第一引出導体31とは、積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。
【0037】
第三パッド部31aは、積層方向から見て、第一パッド部21cと重なり合うように位置している。すなわち、第三パッド部31aと第一パッド部21cとが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。第三パッド部31aは、第一パッド部21cと略同じ大きさを有する円形状を呈している。第一パッド部21cと第三パッド部31aとは、第一スルーホール導体41を介して接続されている。第一スルーホール導体41は、第一パッド部21cと第三パッド部31aとの間に位置する非磁性体層4を貫通している。
【0038】
第三引出部31bは、一端が第三パッド部31aに接続され、他端が第二側面1dに露出している。第三引出部31bは、第二側面1dに露出している他端で第三端子電極13に接続されている。すなわち、第三引出部31bは、第三パッド部31aと第三端子電極13とを接続している。これにより、第一端子電極11と第三端子電極13とが、第一コイル導体21、第一スルーホール導体41、及び第一引出導体31を通して電気的に接続される。第三パッド部31aは、第一引出導体31の一端を構成している。
【0039】
第三引出部31bは、第一引出部分31bと、第二引出部分31bと、第三引出部分31bと、を含んでいる。第一引出部分31bは、第三パッド部31aから第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に延びている。第二引出部分31bは、第一引出部分31bの端から、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向のうち第四側面1fから第三側面1eに向かう方向に延びている。第三引出部分31bは、第二引出部分31bの端から第二側面1dに向けて延びており、第二側面1dに露出している。本実施形態では、第三引出部分31bは、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に延びている。第三引出部31bの第三引出部分31bは、第一引出導体31の他端を構成している。
【0040】
第二引出導体33は、図7にも示されるように、第四パッド部33aと、第四引出部33bと、有している。第二引出導体33は、積層方向に隣り合う一対の非磁性体層4の間に配置されている。第二コイル導体23と第二引出導体33とは、積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。
【0041】
第四パッド部33aは、積層方向から見て、第二パッド部23cと重なり合うように位置している。すなわち、第四パッド部33aと第二パッド部23cとが積層方向で非磁性体層4を介して互いに隣り合っている。第四パッド部33aは、第二パッド部23cと略同じ大きさを有する円形状を呈している。第二パッド部23cと第四パッド部33aとは、第二スルーホール導体43を介して接続されている。第二スルーホール導体43は、第二パッド部23cと第四パッド部33aとの間に位置する非磁性体層4を貫通している。
【0042】
第四引出部33bは、一端が第四パッド部33aに接続され、他端が第二側面1dに露出している。第四引出部33bは、第二側面1dに露出している他端で第四端子電極14に接続されている。すなわち、第四引出部33bは、第四パッド部33aと第四端子電極14とを接続している。これにより、第二端子電極12と第四端子電極14とが、第二コイル導体23、第二スルーホール導体43、及び第二引出導体33を通して電気的に接続される。第四パッド部33aは、第二引出導体33の一端を構成している。
【0043】
第四引出部33bは、第四引出部分33bと、第五引出部分33bと、第六引出部分33bと、を含んでいる。第四引出部分33bは、第四パッド部33aから第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に延びている。第五引出部分33bは、第四引出部分33bの端から、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向のうち第三側面1eから第四側面1fに向かう方向に延びている。第六引出部分33bは、第五引出部分33bの端から第二側面1dに向けて延びており、第二側面1dに露出している。本実施形態では、第六引出部分33bは、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に延びている。第四引出部33bの第六引出部分33bは、第二引出導体33の他端を構成している。
【0044】
第一及び第二スルーホール導体41,43は、導電材(たとえば、Ag又はPdなど)を含んでいる。第一及び第二スルーホール導体41,43は、導電性材料(たとえば、Ag粉末又はPd粉末など)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。第一及び第二スルーホール導体41,43は、対応する非磁性体層4を構成することとなるセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
【0045】
積層型コモンモードフィルタCF1は、図2及び図4図7に示されるように、磁性芯部51を備えている。磁性芯部51は、積層方向から見て、第一コイル導体21と第二コイル導体23との内側に位置するように非磁性体部3に配置されている。磁性芯部51は、非磁性体部3を貫通しており、積層方向での端面それぞれが磁性体部5に接している。磁性芯部51は、柱形状(本実施形態では、円柱形状)を呈している。磁性芯部51は、たとえば磁性材料(Ni−Cu−Zn系フェライト材料、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト材料、又はNi−Cu系フェライト材料など)を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
【0046】
第二コイル導体23の第二接続部23dは、図8にも示されるように、積層方向から見て、第一コイル導体21の第一パッド部21c及び第一接続部21dと、磁性芯部51と、の間に位置している。第一及び第三パッド部21c,31aと、第二及び第四パッド部23c,33aと、は、積層方向から見て、第三側面1eと第四側面1fとの対向方向に並んでいる。第一及び第三パッド部21c,31aと、磁性芯部51と、は、積層方向から見て、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に並んでいる。第二及び第四パッド部23c,33aと、磁性芯部51と、も、積層方向から見て、第一側面1cと第二側面1dとの対向方向に並んでいる。したがって、第一及び第三パッド部21c,31aと第二及び第四パッド部23c,33aとが並ぶ方向と、第一及び第三パッド部21c,31aと磁性芯部51とが並ぶ方向とは互いに交差しており、第一及び第三パッド部21c,31aと第二及び第四パッド部23c,33aとが並ぶ方向と、第二及び第四パッド部23c,33aと磁性芯部51とが並ぶ方向とも互いに交差している。
【0047】
第一コイル導体21の第一引出部21bと第二コイル導体23の第二引出部23bとは、図8に示されるように、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していない。すなわち、第一引出部21bと第二引出部23bとは、積層方向で互いに重なり合っていない。第一引出導体31と第二引出導体33とは、図8に示されるように、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していない。すなわち、第一引出導体31と第二引出導体33とは、積層方向で互いに重なり合っていない。第一引出導体31と第二引出導体33とは、第一及び第二引出部21b,23bよりも幅広である。
【0048】
積層型コモンモードフィルタCF1は、通常、焼成過程を経ることにより得られる。このとき、素体1内に生じる応力に起因して、素体1にクラックが発生する懼れがある。焼成過程では、素体1(非磁性材料及び磁性材料)が焼結して収縮していくタイミングと、素体1内に配置される導体、すなわち第一及び第二コイル導体21,23並びに第一及び第二引出導体31,33(金属材料)が焼結して収縮していくタイミングが異なるため、素体1に応力が生じる。特に、複数の導体が互いに近づいて配置されている場合、素体1には、各導体に引っ張られる方向に大きな応力が発生するため、素体1にクラックが生じやすい。特に、導体同士が積層方向で互いに重なり合っている場合、素体1同士間の距離が最も短くなり、より大きな応力が発生し易い。
【0049】
本実施形態では、第一引出部21bと第二引出部23bとは、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していない。このため、第一引出部21bと第二引出部23bとが離れて位置することとなり、素体1における第一引出部21bと第二引出部23bとの間に位置する領域に発生する応力が小さくなる。この結果、積層型コモンモードフィルタCF1では、素体1にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、第一及び第二引出導体31,33が、第一及び第二引出部21b,23bよりも幅広であるため、積層型コモンモードフィルタCF1の直流抵抗を低減することができる。
【0051】
第一引出導体31は、第一コイル導体21の内側端に対応する位置から第二側面1dまで伸び、第二引出導体33は、第二コイル導体23の内側端に対応する位置から第二側面1dまで伸びている。第一及び第二引出導体31,33が幅広であることにより、焼成過程において、収縮する量が大きくなり素体1に大きな応力が生じる可能性がある。しかしながら、第一及び第二引出導体31,33は、対応するコイル導体21,23の内側端に対応する位置から第二側面1dまでの比較的広い範囲にわたって配置されるため、生じる応力が分散され、応力が集中するのを抑制することができる。この結果、クラックが素体1に発生し難い。
【0052】
第一及び第二引出部21b,23bは、対応するコイル部21a,23aの外側端から第一側面1cまでの比較的狭い範囲にわたって配置されるため、第一及び第二引出部21b,23bが幅広とされた場合、応力が集中し、素体1にクラックが発生する懼れがある。しかしながら、積層型コモンモードフィルタCF1では、第一及び第二引出導体31,33が第一及び第二引出部21b,23bよりも幅広である、すなわち、第一及び第二引出部21b,23bが第一及び第二引出導体31,33よりも幅狭であることから、生じる応力が小さく、また、上述したように、第一引出部21bと第二引出部23bとが離れて位置していることから、クラックが素体1に発生し難い。
【0053】
本実施形態では、素体1は、非磁性体部3と、非磁性体部3を積層方向で挟むよう配置される一対の磁性体部5と、積層方向から見て第一及び第二コイル導体21,23の内側に位置するように非磁性体部3に配置される磁性芯部51と、を有している。これにより、積層型コモンモードフィルタCF1では、第一コイル導体21と第二コイル導体23との間の磁気結合をより一層高めることができる。
【0054】
本実施形態では、上述したように、第一引出部21bと第二引出部23bとは、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していない。このため、第一コイル導体21と第二コイル導体23との間に発生する浮遊容量が小さく、積層型コモンモードフィルタCF1の高周波特性を向上することができる。
【0055】
本実施形態では、上述したように、第一引出導体31と第二引出導体33とは、積層方向から見て、互いに重なる領域を有していないと共に、積層方向から見て、互いに離れて位置している。これらにより、第一引出導体31と第二引出導体33とは幅広とされているものの、第一引出導体31と第二引出導体33との間に発生する浮遊容量が小さい。したがって、積層型コモンモードフィルタCF1の高周波特性を向上することができる。
【0056】
本実施形態では、第一引出導体31と第二引出導体33とは、積層方向に見て、互いに離れて位置している。このことによっても、素体1における第一引出導体31と第二引出導体33との間に位置する領域に発生する応力が小さくなる。この結果、積層型コモンモードフィルタCF1では、素体1にクラックが発生するのを抑制することができる。
【0057】
第一コイル導体21と第二コイル導体23との間の磁気結合を高めるために、たとえば、第一引出部21bの第一部分21bと第二引出部23bの第一部分23bとを積層方向で重なり合わせる構成を採用することが考えられる。しかしながら、第一部分21bと第一部分23bとは、磁性芯部51からの磁束に沿う方向に延びているので、第一部分21bと第一部分23bとが積層方向で重なり合わせる構成は、第一コイル導体21と第二コイル導体23との間の磁気結合を高めることには寄与し難い。
【0058】
続いて、図9図11を参照して、第一及び第二コイル導体21,23の変形例の構成を説明する。図9は、第一コイル導体の変形例を示す平面図である。図10は、第二コイル導体の変形例を示す平面図である。図11は、第一コイル導体の変形例と第二コイル導体の変形例とを重ねて示した図である。本変形例では、第一コイル導体21の第一引出部21bの長さと、第二コイル導体23の第二引出部23bの長さと、が同等に設定されている。
【0059】
本変形例では、第一引出部21bの第一部分21bが、積層方向から見て、第一端子電極11と第二端子電極12との間の中点を通り且つ第一端子電極11と第二端子電極12とが並ぶ方向に直交する方向に延びる直線l上に位置している。これにより、第一及び第二引出部21b,23bのパターン(形状)を複雑にすることなく、第一引出部21bの長さと第二引出部23bとの長さを確実に同等に設定できる。
【0060】
第一コイル導体21の第一引出部21bの長さと、第二コイル導体23の第二引出部23bの長さと、が同等に設定されていると、第一コイル導体21と第二コイル導体23とで、その線路長にばらつきが生じ難い。これにより、第一コイル導体21と第二コイル導体23との特性バラつき(たとえば、インピーダンスのばらつきなど)が生じるのを抑制することができる。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0062】
第一及び第二コイル導体21,23並びに第一及び第二引出導体31,33の形状は、上述した実施形態及び変形例にて示された形状に限られない。磁性芯部51は、非磁性体部3を貫通していなくてもよい。
【0063】
本発明は、図12及び図13に示されるように、複数対の第一及び第二コイル導体21,23を備える積層型コモンモードフィルタ、いわゆる積層型コモンモードフィルタアレイCF2にも適用できる。積層型コモンモードフィルタアレイCF2においても、素体1にクラックが発生するのを抑制することができると共に、直流抵抗を低減することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…素体、3…非磁性体部、5…磁性体部、11…第一端子電極、12…第二端子電極、13…第三端子電極、14…第四端子電極、21…第一コイル導体、21a…第一コイル部、21b…第一引出部、21b…第一部分、21b…第二部分、23…第二コイル導体、23a…第二コイル部、23b…第二引出部、23b…第三部分、23b…第四部分、31…第一引出導体、33…第二引出導体、41…第一スルーホール導体、43…第二スルーホール導体、51…磁性芯部、CF1…積層型コモンモードフィルタ、CF2…積層型コモンモードフィルタアレイ。
図1
図2
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図5
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