【実施例1】
【0017】
この発明の実施例1を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、電動ポンプ装置は、ポンプの構成部材が組み込まれるポンプハウジング11を有するポンプ部10と、ポンプを駆動する電動モータの構成部材が組み込まれるモータハウジング31を有するモータ部30とを備える。
【0018】
この実施例1において、ポンプハウジング11と、このポンプハウジング11に一端に取り付けられたポンププレート12との間に形成されたポンプ室15には、ポンプの構成部材としてのアウタギヤ16と、このアウタギヤ16の内歯に噛み合って回転することでポンプ作用をなす外歯を有するインナギヤ17とが組み付けられている。
また、ポンププレート12と反対側のポンプハウジング11の端面の中心部には、円筒状の軸受ハウジング18が突出されており、この軸受ハウジング18内には、転がり軸受20、21を介してモータ軸25が回転可能に支持されている。そして、モータ軸25の一端部に形成されたギヤ軸部26がインナギヤ17の中心部にトルク伝達可能に嵌合されている。
【0019】
モータハウジング31は、熱可塑性樹脂材によって円筒状に形成され、その一端部がポンプハウジング11にOリング29等のシール部材を介して密閉状に組み付けられる。
モータハウジング31内には、モータ軸25他端部のロータ軸部27にロータ40がトルク伝達可能に組み付けられる。
ロータ40は、ロータ軸部27にトルク伝達可能に嵌合される嵌合孔を中心部に有する円盤部40aと、この円盤部40aの外周から軸受ハウジング18の外周に沿って一体に延出された円筒部40bとを有し、円筒部40bの外周面には、複数の永久磁石41が所定間隔を隔てて配設されている。
【0020】
モータハウジング31内には、積層鋼板よりなるステータコア33を有するステータ32が内設され、ステータコア33にはコイル35が絶縁状態で巻回されている。
前記したモータ軸25と、ロータ40と、ステータコア33と、ステータ32と、コイル35とがモータ構成部品をなしている。
モータハウジング31内の他端開口側近傍には基板取付部50が形成され、この基板取付部50にはモータ制御用の制御基板51が取り付けられている。
また、モータハウジング31の他端面には、次に述べる閉止蓋60を固着するための環状溝31aが凹設されている。
【0021】
モータハウジング31の他端開口部は、閉止蓋60によって塞がれる。
閉止蓋60は、モータハウジング31の形成する樹脂材を相溶性を有する熱可塑性樹脂材によって形成され、蓋本体60aと、モータハウジング31内に対する通気用のベント通路70を構成するベントキャップ体71とを一体に備えている。
図2〜
図4に示すように、蓋本体60aは、モータハウジング31の他端開口部を塞ぐ大きさの円板状に形成され、その下面の周縁部には、モータハウジング31他端面の環状溝31aに嵌込まれて環状突輪61が形成されている。
そして、環状溝31aに環状突輪61が嵌込まれた状態で、環状溝31aに対し、環状突輪61がスピン溶着、振動溶着等によって一体に接合されることで、モータハウジング31に閉止蓋60が一体状に固着される。
【0022】
図2〜
図4に示すように、ベントキャップ体71は、その周囲に所定角度間隔を隔てて蓋本体60aと一体に繋がれる複数の繋ぎ部73と、これら複数の繋ぎ部73の間に配設されかつ蓋本体60aの外面(上面)側から内面(下面)側に向けて蓋本体60aの板厚寸法よりも小さい深さ寸法で垂直状に形成され、かつ放射状に配設された複数のベント通路穴72とを有している。
また、蓋本体60aの内面側のベントキャップ体71の内面に位置する部分には、ベント用凹部77が形成され、ベント用凹部77の内周壁面78は、複数のベント通路穴72の奥側をベント用凹部77の内周壁面78に開口部74をもって開口させ、これによってベント通路70を構成する内径寸法をもつ円筒面に形成されている。
【0023】
また、この実施例1において、
図3に示すように、複数のベント通路穴72は、ベントキャップ体71の径方向に長いスリット状に形成されている。
また、
図4に示すように、複数のベント通路穴72の底面は、径方向外端部よりも径方向内端部が高くなるように径方向内端部近傍に傾斜面76が形成されている。
また、ベント用凹部77の内側開口部の周囲には、このベント用凹部77の開口部を塞ぐようにして防水性を有し通気は許容する特性をもつベントフィルタ80が装着されている。
【0024】
上述したように構成されるこの実施例1に係る電動ポンプ装置において、モータハウジング31の他端開口部に取り付けられる閉止蓋60は、蓋本体60aと、モータハウジング31内に対する通気用のベント通路70を構成するベントキャップ体71とを一体に備える。
そして、ベントキャップ体71は、蓋本体60aと一体に繋がれる複数の繋ぎ部73と、これら複数の繋ぎ部73の間に配設されかつ蓋本体60aの外面(上面)側から内面(下面)側に向けて蓋本体60aの板厚寸法よりも小さい深さ寸法で垂直状に形成された複数のベント通路穴72とを有する。
さらに、蓋本体60aの内面側のベントキャップ体71の内面に位置する部分に形成されたベント用凹部77の円筒面をなす内周壁面78に対し、複数のベント通路穴72の奥側が開口部74をもって開口されることでベント通路70が構成される。
このため、蓋本体60aとベントキャップ体71とを一体成形し、ベント通路70を備えた閉止蓋60を構成することができる。
【0025】
すなわち、
図5に示すように、閉止蓋60を射出成形するための第1、第2の成形型90、91のうち、第1の成形型90の型面には、ベント用凹部77を形成するための凸部90aが形成され、第2の成形型91の型面には、複数のベント通路穴72を形成するための複数の柱部91aが突設される。そして、
図5に示すように、第1、第2の成形型90、91が型締めされた状態において、第1の成形型90の凸部90aの外周面と、第2の成形型91の複数の柱部91aの内径側面とが複数のベント通路穴72の奥側の開口部74に相当する分だけ接触して重ね合わされる。これによって、第1、第2の成形型90、91の相互の型面の間には、閉止蓋60の蓋本体60aに対応するキャビティ部92aと、ベントキャップ体71に対応するキャビティ部92bとを連続して有するキャビティ92が形成される。
ここで、第1、第2の成形型90、91間のキャビティ92内に溶融状態の熱可塑性樹脂材が射出されて充填されることで、蓋本体60aとベントキャップ体71とが一体成形された閉止蓋60が容易に製造される。
【0026】
また、この実施例1において、複数のベント通路穴72がベントキャップ体71の径方向に長いスリット状に形成されている。このため、複数のベント通路穴72の開口部に対し、例えば洗車時等の高圧の水が吹き付けられた場合、吹き付けられた水は、複数のベント通路穴72の穴方向に平行して吹き付けられることが少なく、多くの水は複数のベント通路穴72の穴壁面に衝突する。
すなわち、複数のベント通路穴72の開口部に対し吹き付けられた高圧の水は、複数のベント通路穴72の奥側の開口部74に直接的に達することを抑制することができ、高圧の水からベントフィルタ80を保護することができる。
【0027】
また、複数のベント通路穴72の底面が径方向外端部よりも径方向内端部が高く形成されるため、仮に、水が複数のベント通路穴72の底面に達した場合においても、複数のベント通路穴72底面の径方向内端部の傾斜面76で止められ、これ以上奥側に浸入することを抑制することができる。
【0028】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、ベントキャップ体71は、その周囲に所定角度間隔を隔てて蓋本体60aと一体に繋がれる複数の繋ぎ部73と、これら複数の繋ぎ部73の間に配設されかつ蓋本体60aの外面側から内面側に向けて蓋本体60aの板厚寸法よりも小さい深さ寸法で垂直状に形成された複数のベント通路穴72とを有している場合を例示したが、複数の繋ぎ部73や複数のベント通路穴72の配設角度は任意の角度でもよい。また、繋ぎ部73やベント通路穴72は、複数の限らず、少なくとも一つあればこの発明を実施することが可能である。
また、蓋本体60aの内面側のベントキャップ体71の内面に位置する部分に形成されたベント用凹部77の形状は、円筒面でなくてもよく、少なくとも一つのベント通路穴72の奥側をベント用凹部77の内壁面に開口させる形状であればどのような形状でもこの発明を実施することが可能である。