特許第6248499号(P6248499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248499
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】エジェクタ式冷凍サイクル
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   F25B 41/04 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F25B1/00 389A
   F25B41/04 H
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-196310(P2013-196310)
(22)【出願日】2013年9月23日
(65)【公開番号】特開2015-61990(P2015-61990A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 悦久
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 春幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】横山 佳之
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−022295(JP,A)
【文献】 特開2004−044849(JP,A)
【文献】 特開2004−101141(JP,A)
【文献】 特開2013−177879(JP,A)
【文献】 特開昭61−076800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機(11)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(12)と、
前記放熱器(12)から流出した冷媒を減圧させるノズル部(13a)から噴射される高速度の噴射冷媒の吸引作用によって冷媒吸引口(31b)から冷媒を吸引し、前記噴射冷媒と前記冷媒吸引口(31b)から吸引された吸引冷媒との混合冷媒を昇圧部(13c)にて昇圧させるエジェクタ(25)と、
前記昇圧部(13c)から流出した冷媒の気液を分離して、分離された気相冷媒を前記圧縮機(11)の吸入口側へ流出させる気液分離手段(30f)と、
前記気液分離手段(30f)の液相冷媒流出口と前記冷媒吸引口(31b)とを接続する冷媒通路に配置されて、内部を流通する冷媒を蒸発させる蒸発器(16)と、
サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(35b、36a、36b)とを備え、
前記冷媒流路切替手段(35b…36b)は、前記噴射冷媒を前記昇圧部(13c)から流出させる第1冷媒流路と、前記噴射冷媒を前記冷媒吸引口(31b)から流出させる第2冷媒流路とを切替可能に構成されており、
前記エジェクタ(25)は、前記ノズル部(13a)の通路断面積を変化させる通路形成部材(35、35a)を有し、
前記冷媒流路切替手段は、前記昇圧部を形成する冷媒通路(13c)に配置されて当該冷媒通路(13c)を開閉する開閉手段(35b、36b)を有し、
前記開閉手段(35b、36b)が前記昇圧部を形成する冷媒通路(13c)を冷媒通路を開くことによって、前記第1冷媒流路に切り替えられ、さらに、前記開閉手段(35b、36b)が前記昇圧部を形成する冷媒通路(13c)を閉じることによって、第2冷媒流路に切り替えられることを特徴とするエジェクタ式冷凍サイクル。
【請求項2】
前記通路形成部材(35、35a)が変位する方向と前記開閉手段(35b、36b)が変位する方向が、同一方向であることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
【請求項3】
さらに、前記通路形成部材(35a)、および開閉手段(35b)の双方を変位させる駆動手段(36c)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
【請求項4】
前記エジェクタ(25)および前記気液分離手段(30f)は一体的に構成されており、
前記昇圧部(13c)の冷媒流出口が、前記気液分離手段(30f)内に開口していることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
【請求項5】
前記開閉手段(14…36c)の作動を制御する冷媒流路制御手段(21b)を備え、
前記冷媒流路制御手段(21b)は、サイクルの熱負荷が予め定めた基準熱負荷以下となった際に、前記第1冷媒流路から前記第2冷媒流路へ切り替わるように前記開閉手段(14…36c)の作動を制御することを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
【請求項6】
前記ノズル部(13a)は、冷媒通路面積を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒減圧手段としてエジェクタを備えるエジェクタ式冷凍サイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷媒減圧手段としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクルであるエジェクタ式冷凍サイクルが知られている。例えば、特許文献1には、エジェクタから流出した冷媒の気液を分離する気液分離器を備え、この気液分離器にて分離された液相冷媒を蒸発器へ流入させるとともに、気液分離器にて分離された気相冷媒を圧縮機へ吸入させるエジェクタ式冷凍サイクルが開示されている。
【0003】
より詳細には、この特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルでは、エジェクタのノズル部から噴射された高速度の噴射冷媒の吸引作用(ポンプ作用)によってエジェクタの冷媒吸引口から蒸発器下流側の冷媒を吸引し、エジェクタのディフューザ部(昇圧部)にて噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒を昇圧させて気液分離器へ流入させている。
【0004】
これにより、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルでは、圧縮機の吸入冷媒圧力に相当する気液分離器内の冷媒圧力を、蒸発器における冷媒蒸発圧力よりも上昇させることができる。従って、圧縮機の吸入冷媒圧力と蒸発器における冷媒蒸発圧力が略同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−149652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルのように、エジェクタのノズル部から噴射される噴射冷媒の吸引作用によって蒸発器下流側の冷媒を吸引する構成では、噴射冷媒の流量を低下させた際に、噴射冷媒の流量の低下度合に対して、冷媒吸引口から蒸発器下流側の冷媒を吸引する吸引能力の低下度合が大きくなってしまいやすい。
【0007】
このため、サイクルの熱負荷が低下した低負荷運転時のように、噴射冷媒の流量が低下してしまうと、エジェクタの吸引能力が大きく低下して、冷媒を蒸発器へ流入させることができなくなってしまうことがある。従って、低負荷運転時には、蒸発器にて冷却対象流体を充分に冷却することができなくなってしまう。
【0008】
本発明は、上記点に鑑み、負荷変動によらず冷却対象流体を充分に冷却可能なエジェクタ式冷凍サイクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明では、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、圧縮機(11)から吐出された冷媒を放熱させる放熱器(12)と、放熱器(12)から流出した冷媒を減圧させるノズル部(13a)から噴射される高速度の噴射冷媒の吸引作用によって冷媒吸引口(31b)から冷媒を吸引し、噴射冷媒と冷媒吸引口(31b)から吸引された吸引冷媒との混合冷媒を昇圧部(13c)にて昇圧させるエジェクタ(25)と、昇圧部(13c)から流出した冷媒の気液を分離して、分離された気相冷媒を圧縮機(11)の吸入口側へ流出させる気液分離手段(30f)と、気液分離手段(30f)の液相冷媒流出口と冷媒吸引口(31b)とを接続する冷媒通路に配置されて、内部を流通する冷媒を蒸発させる蒸発器(16)と、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(35b、36a、36b)とを備え、
冷媒流路切替手段(35b…36b)は、噴射冷媒を昇圧部(13c)から流出させる第1冷媒流路と、噴射冷媒を冷媒吸引口(31b)から流出させる第2冷媒流路とを切替可能に構成されており、
エジェクタ(25)は、ノズル部(13a)の通路断面積を変化させる通路形成部材(35、35a)を有し、冷媒流路切替手段は、昇圧部を形成する冷媒通路(13c)を開閉する開閉手段(35b、36b)を有し、
開閉手段(35b、36b)が昇圧部を形成する冷媒通路(13c)を冷媒通路を開くことによって、第1冷媒流路に切り替えられ、さらに、開閉手段(35b、36b)が昇圧部を形成する冷媒通路(13c)を閉じることによって、第2冷媒流路に切り替えられるエジェクタ式冷凍サイクルを特徴としている。
【0010】
これによれば、冷媒流路切替手段(14…36c)が、第1冷媒流路に切り替えた際には、圧縮機(11)→放熱器(12)→エジェクタのノズル部(20a、13a)→エジェクタの昇圧部(20d、13c)→気液分離手段(15、30f)→圧縮機(11)の順で冷媒を循環させるとともに、気液分離手段(15、30f)→蒸発器(16)→エジェクタ(20、25)の冷媒吸引口(20c、31b)の順に冷媒を循環させるエジェクタ式冷凍サイクルを構成することができる。
【0011】
また、冷媒流路切替手段(14…36c)が、第2冷媒流路に切り替えた際には、圧縮機(11)→放熱器(12)→エジェクタ(20、25)のノズル部(20a、13a)→蒸発器(16)→圧縮機(11)の順に冷媒を循環させる冷凍サイクルを構成することができる。
【0012】
従って、エジェクタ(20、25)の吸引能力が大きく低下してしまうおそれがある低負荷運転時であっても、冷媒流路切替手段(14…36c)が第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替えることで、圧縮機(11)の冷媒吐出能力によって、エジェクタ(20、25)のノズル部(20a、13a)にて減圧された冷媒を蒸発器(16)へ確実に供給することができる。
【0013】
つまり、本請求項に記載に発明によれば、低負荷運転時に蒸発器(16)へ冷媒を供給できなくなってしまうことを抑制でき、負荷変動によらず冷却対象流体を充分に冷却可能なエジェクタ式冷凍サイクルを提供することができる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。
図2】第2実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。
図3】第2実施形態のエジェクタが第1冷媒流路に切り替えられている際の軸方向断面図である。
図4】第2実施形態のエジェクタが第2冷媒流路に切り替えられている際の軸方向断面図である。
図5】第2実施形態のエジェクタの各冷媒通路の機能を説明するための模式的な断面図である。
図6】第3実施形態のエジェクタが第1冷媒流路に切り替えられている際の軸方向断面図である。
図7】第3実施形態のエジェクタが第2冷媒流路に切り替えられている際の軸方向断面図である。
図8】第4実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態のうち、第2、第3実施形態が特許請求の範囲に記載した発明の実施形態であり、第1実施形態は本発明の前提となる形態であり、第4実施形態は参考としての形態である。
(第1実施形態)
以下、図面を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。図1の全体構成図に示す本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置に適用されており、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。このエジェクタ式冷凍サイクル10は、冷媒流路を切替可能に構成されており、後述する通常運転モード時の冷媒流路(第1冷媒流路)と低負荷運転モード時の冷媒流路(第2冷媒流路)とを切り替えることができる。
【0021】
さらに、このエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(具体的には、R1234yf)等を採用してもよい。また、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0022】
エジェクタ式冷凍サイクル10において、圧縮機11は、冷媒を吸入して高圧冷媒となるまで昇圧して吐出するものである。具体的には、本実施形態の圧縮機11は、1つのハウジング内に固定容量型の圧縮機構、および圧縮機構を駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機である。
【0023】
この圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。また、電動モータは、後述する空調制御装置21から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。
【0024】
また、圧縮機11は、プーリ、ベルト等を介して車両走行用エンジンから伝達される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機であってもよい。この種のエンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整することのできる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機を採用することができる。
【0025】
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の凝縮部12aの冷媒入口側が接続されている。放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン12dにより送風される車室外空気(外気)を熱交換させることによって、高圧冷媒を放熱させて冷却する放熱用熱交換器である。
【0026】
より具体的には、この放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧気相冷媒と冷却ファン12dから送風された外気とを熱交換させ、高圧気相冷媒を放熱させて凝縮させる凝縮部12a、凝縮部12aから流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える高圧側気液分離手段であるレシーバ部12b、およびレシーバ部12bから流出した液相冷媒と冷却ファン12dから送風される外気とを熱交換させ、液相冷媒を過冷却する過冷却部12cを有して構成される、いわゆるサブクール型の凝縮器である。
【0027】
冷却ファン12dは、空調制御装置21から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0028】
放熱器12の過冷却部12cの冷媒出口には、エジェクタ20のノズル部20aの冷媒流入口側が接続されている。エジェクタ20は、放熱器12から流出した過冷却状態の高圧液相冷媒を減圧させて下流側へ流出させる冷媒減圧手段としての機能を果たすとともに、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって後述する蒸発器16から流出した冷媒を吸引(輸送)して循環させる冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能を果たす。
【0029】
より具体的には、エジェクタ20は、ノズル部20aおよびボデー部20bを有して構成されている。ノズル部20aは、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る略円筒状の金属(例えば、ステンレス合金)等で形成されており、その内部に形成された冷媒通路(絞り通路)にて冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるものである。
【0030】
ノズル部20aの内部に形成された冷媒通路には、冷媒通路面積が最も縮小した喉部(最小通路面積部)、冷媒流入口側から喉部へ向かって冷媒通路面積が徐々に縮小する先細部、および喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かって冷媒通路面積が徐々に拡大する末広部が設けられている。つまり、本実施形態のノズル部20aは、ラバールノズルとして構成されている。
【0031】
また、本実施形態では、ノズル部20aとして、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、冷媒噴射口から噴射される噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、ノズル部20aを先細ノズルで構成してもよい。
【0032】
ボデー部20bは、略円筒状の金属(例えば、アルミニウム)あるいは樹脂で形成されており、内部にノズル部20aを支持固定する固定部材として機能するとともに、エジェクタ20の外殻を形成するものである。より具体的には、ノズル部20aは、ボデー部20bの長手方向一端側の内部に収容されるように圧入にて固定されている。従って、ノズル部20aとボデー部20bとの固定部(圧入部)から冷媒が漏れることはない。
【0033】
また、ボデー部20bの外周面のうち、ノズル部20aの外周側に対応する部位には、その内外を貫通してノズル部20aの冷媒噴射口と連通するように設けられた冷媒吸引口20cが形成されている。この冷媒吸引口20cは、ノズル部20aから噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、後述する蒸発器16から流出した冷媒をエジェクタ20の内部へ吸引する貫通穴である。
【0034】
さらに、ボデー部20bの内部には、冷媒吸引口20cから吸引された吸引冷媒をノズル部20aの冷媒噴射口側へ導く吸引通路、および冷媒吸引口20cから吸引通路を介してエジェクタ20の内部へ流入した吸引冷媒と噴射冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部としてのディフューザ部20dが形成されている。
【0035】
吸引通路は、ノズル部20aの先細り形状の先端部周辺の外周側とボデー部20bの内周側との間の空間によって形成されており、吸引通路の冷媒通路面積は、冷媒流れ方向に向かって徐々に縮小している。これにより、吸引通路を流通する吸引冷媒の流速を徐々に増加させて、ディフューザ部20dにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(混合損失)を減少させている。
【0036】
ディフューザ部20dは、吸引通路の出口に連続するように配置されて、冷媒通路面積を徐々に拡大させる空間によって形成されている。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させながら、その流速を減速させて噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力を上昇させる機能、すなわち、混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する機能を果たす。
【0037】
より具体的には、本実施形態のディフューザ部20dを形成するボデー部20bの内周壁面の軸方向断面における断面形状は、複数の曲線を組み合わせて形成されている。そして、ディフューザ部20dの冷媒通路断面積の広がり度合が冷媒流れ方向に向かって徐々に大きくなった後に再び小さくなっていることで、冷媒を等エントロピ的に昇圧させることができる。
【0038】
エジェクタ20のディフューザ部20dの冷媒出口には、開閉弁14を介して、気液分離器15の入口側が接続されている。
【0039】
気液分離器15は、エジェクタ20のディフューザ部20dから流出した冷媒の気液を分離する気液分離手段である。なお、本実施形態では、気液分離器15として、分離された液相冷媒を殆ど蓄えることなく液相冷媒流出口から流出させるように比較的内容積の小さいものを採用しているが、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える貯液手段としての機能を有するものを採用してもよい。
【0040】
開閉弁14は、エジェクタ20のディフューザ部20dの出口側と気液分離器15の入口側とを接続する冷媒通路に配置されて、この冷媒通路を開閉する開閉手段である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、開閉弁14が、エジェクタ20のディフューザ部20dの出口側と気液分離器15の入口側とを接続する冷媒通路を開閉することによって、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替えることができる。
【0041】
つまり、本実施形態の開閉弁14は、冷媒流路切替手段を構成している。より詳細には、本実施形態では、後述する通常運転モード時に開閉弁14を開くことによって、エジェクタ20のノズル部20aから噴射された噴射冷媒がディフューザ部20dから流出する第1冷媒流路に切り替えられ、低負荷運転モード時に開閉弁14を閉じることによって、噴射冷媒が冷媒吸引口20cから流出する第2冷媒流路に切り替えられる。
【0042】
また、本実施形態の開閉弁14は、非通電時開口型(いわゆるノーマルオープン型)の電磁弁で構成されており、空調制御装置21から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0043】
気液分離器15の気相冷媒流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。一方、気液分離器15の液相冷媒流出口には、エジェクタ20の冷媒吸引口20c側が接続されている。
【0044】
さらに、気液分離器15の液相冷媒流出口とエジェクタ20の冷媒吸引口20cとを接続する冷媒通路には、気液分離器15側からエジェクタ20の冷媒吸引口20c側へ向かって順に固定絞り15aおよび蒸発器16が配置されている。固定絞り15aは、冷媒を減圧させる減圧手段であり、具体的には、オリフィス、キャピラリチューブあるいはノズル等を採用することができる。
【0045】
蒸発器16は、内部へ流入した低圧冷媒と送風ファン16aから車室内へ向けて送風される送風空気とを熱交換させることによって、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器である。送風ファン16aは、空調制御装置21から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。
【0046】
次に、空調制御装置21は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。この空調制御装置21は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行って、上述の各種電気式のアクチュエータ11、12d、14、16a等の作動を制御する。
【0047】
また、空調制御装置21には、車室内温度Trを検出する内気温センサ、外気温Tamを検出する外気温センサ、車室内の日射量Asを検出する日射センサ、蒸発器16の吹出空気温度(具体的には、蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度センサ、放熱器12出口側冷媒の温度Tdを検出する出口側温度センサおよび放熱器12出口側冷媒の圧力Pdを検出する出口側圧力センサ等の空調制御用のセンサ群が接続され、これらのセンサ群の検出値が入力される。
【0048】
さらに、空調制御装置21の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が空調制御装置21へ入力される。操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、車室内空調を行うことを要求する空調作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
【0049】
なお、本実施形態の空調制御装置21は、その出力側に接続された各種の制御対象機器の作動を制御する制御手段が一体的に構成されたものであるが、空調制御装置21のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、本実施形態では、圧縮機11の作動を制御する構成が吐出能力制御手段21aを構成しており、開閉弁14の作動を制御する構成が冷媒流路制御手段21bを構成している。
【0050】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、通常運転モードでの運転と低負荷運転モードでの運転とを切り替えることができる。
【0051】
通常運転モードは、エジェクタ20が充分な吸引能力を発揮可能な通常時に実行される運転モードである。また、低負荷運転モードは、通常時よりもサイクルの熱負荷が低下してエジェクタ20のノズル部20aから噴射される噴射冷媒の流量が低下し、エジェクタ20の吸引能力が大きく低下してしまうおそれがある低負荷運転時に実行される運転モードである。
【0052】
さらに、通常運転モードと低負荷運転モードとの切り替えは、予め空調制御装置21の記憶回路に記憶された空調制御プログラムが実行されることによって行われる。なお、この空調制御プログラムは、操作パネルの空調作動スイッチが投入(ON)された際に実行される。
【0053】
空調制御プログラムの制御ルーチンでは、上述した空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込み、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。
【0054】
さらに、算出された目標吹出温度TAOおよび検出信号に基づいて、圧縮機11、冷却ファン12d、開閉弁14等の各種電気式のアクチュエータの制御状態を決定し、決定した制御状態が得られるように各種電気式のアクチュエータに制御信号を出力する。そして、車室内空調の停止が要求されるまで、再び、検出信号および操作信号の読込み→目標吹出温度TAOの算出→新たな制御状態の決定→制御信号の出力といったルーチンを繰り返す。
【0055】
また、各種電気式のアクチュエータの制御状態の決定については、例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力(圧縮機11の回転数Nc、具体的には、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号)については、以下のように決定される。なお、圧縮機11の冷媒吐出能力とは、圧縮機11の吐出圧力と吐出流量(質量流量)との積算値と定義することができる。
【0056】
まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置21の記憶回路に記憶された制御マップを参照して、蒸発器16の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。具体的には、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器吹出温度TEOが低下するように決定される。
【0057】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された蒸発器温度Tefinとの偏差(Tefin−TEO)に基づいて、フィードバック制御手法を用いて蒸発器温度Tefinが目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
【0058】
送風ファン16aの送風能力(具体的には、送風ファン16aへ出力される制御電圧)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置21の記憶回路に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で電動モータへ出力する制御電圧を最大として送風空気量を最大量付近に制御し、目標吹出温度TAOが中間温度域に近づくに伴って送風空気量を減少させる。
【0059】
開閉弁14の開閉状態(具体的には、開閉弁14へ出力される制御電圧)については、上記の如く決定された圧縮機11の回転数Ncが予め定めた基準回転数KNc以下となった際に、開閉弁14を閉じるように決定される。つまり、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、圧縮機11の回転数Ncが予め定めた基準回転数KNc以下となった際に、第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替えられる。
【0060】
この基準回転数KNcは、エジェクタ式冷凍サイクル10が第1冷媒流路に切り替えられている際に、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNcより高くなっていれば、ノズル部20aから噴射される噴射冷媒の流量が低下してしまうことがなく、冷媒吸引口20cから蒸発器16下流側の冷媒を充分に吸引できる値に決定されている。
【0061】
ここで、上述した目標吹出温度TAOは、車室内温度を、乗員の所望の温度に相当する車室内設定温度Tsetに保つために決定される値であるから、本実施形態のように蒸発器16にて送風空気を冷却するエジェクタ式冷凍サイクル10では、目標吹出温度TAOの低下に伴って、サイクルの熱負荷が増加することになる。
【0062】
また、蒸発器温度Tefinは、蒸発器16自体の温度であるから、実質的に、蒸発器16における冷媒蒸発温度と同等の値となる。さらに、蒸発器温度Tefinは、圧縮機11の回転数Nc(冷媒吐出能力)を増加させることによって低下する。
【0063】
つまり、空調制御装置21が、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器吹出温度TEOを低下させるように決定することは、サイクルの熱負荷が増加するに伴って、圧縮機11の冷媒吐出能力(圧縮機11の回転数Nc)を増加させるように決定することを意味している。
【0064】
従って、本実施形態の如く、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下となった際に、開閉弁14を閉じることは、サイクルの熱負荷が予め定めた基準熱負荷以下となった際に、第1冷媒流路(通常運転モード)から第2冷媒流路(低負荷運転モード)へ切り替わるように開閉弁14の作動を制御することを意味している。
【0065】
そこで、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、サイクルの熱負荷が基準熱負荷より高くなって、エジェクタ20が充分な吸引能力を発揮できる際には、第1冷媒流路(通常運転モード)に切り替え、サイクルの熱負荷が基準熱負荷以下となって、エジェクタ20の吸引能力が大きく低下してしまうおそれのある低負荷運転時には、第2冷媒流路(低負荷運転モード)に切り替えるようにしている。
【0066】
次に、各運転モードにおける作動について説明する。
【0067】
(a)通常運転モード
通常運転モードは、開閉弁14が開いて第1冷媒流路に切り替えられている際に実行される運転モードである。
【0068】
第1冷媒流路に切り替えられているエジェクタ式冷凍サイクル10では、図1の実線矢印で示すように、圧縮機11→放熱器12→エジェクタ20のノズル部20a→エジェクタ20の昇圧部13d(→開閉弁14)→気液分離器15→圧縮機11の順で冷媒が循環するとともに、気液分離器15→固定絞り15a→蒸発器16→エジェクタ20の冷媒吸引口20cの順で冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
【0069】
このサイクル構成では、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒が、放熱器12の凝縮部12aへ流入し、冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。凝縮部12aにて放熱した冷媒は、レシーバ部12bにて気液分離される。レシーバ部12bにて気液分離された液相冷媒は、過冷却部12cにて冷却ファン12dから送風された外気と熱交換し、さらに放熱して過冷却液相冷媒となる。
【0070】
放熱器12の過冷却部12cから流出した過冷却液相冷媒は、エジェクタ20のノズル部20aへ流入し、等エンタルピ的に減圧されて噴射される。さらに、通常運転モードでは、開閉弁14が開いているとともにサイクルの熱負荷が基準熱負荷より高くなっているので、噴射冷媒の吸引作用によって、蒸発器16から流出した冷媒がエジェクタ20の冷媒吸引口20cから吸引される。
【0071】
冷媒吸引口20cから吸引された吸引冷媒は、噴射冷媒とともにエジェクタ20のディフューザ部20dへ流入する。ディフューザ部20dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の運動エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒が混合されながら混合冷媒の圧力が上昇する。ディフューザ部20dの出口部から流出した冷媒は、気液分離器15へ流入して気液分離される。
【0072】
気液分離器15の液相冷媒流出口から流出した液相冷媒は、固定絞り15aにて等エンタルピ的に減圧されて、蒸発器16へ流入する。蒸発器16へ流入した冷媒は、送風ファン16aから送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が冷却される。さらに、蒸発器16から流出した冷媒は、エジェクタ20の冷媒吸引口20cから吸引される。一方、気液分離器15から流出した気相冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0073】
通常運転モードでは、以上の如く作動して、蒸発器16にて車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。この際、サイクルの熱負荷が基準熱負荷より高くなっているので、エジェクタ20の吸引能力が低下してしまうことがなく、気液分離器15にて分離された低圧冷媒を確実に蒸発器16へ流入させることができる。
【0074】
さらに、エジェクタ20のディフューザ部20dにて昇圧された冷媒を、圧縮機11に吸入させて、圧縮機11の駆動動力を低減させることができるので、サイクル効率(COP)を向上させることができる。
【0075】
(b)低負荷運転モード
低負荷運転モードは、開閉弁14が閉じて第2冷媒流路に切り替えられている際に実行される運転モードである。
【0076】
第2冷媒流路に切り替えられているエジェクタ式冷凍サイクル10では、図1の破線矢印で示すように、圧縮機11→放熱器12→エジェクタ20のノズル部20a→エジェクタ20の冷媒吸引口20c→蒸発器16→固定絞り15a→気液分離器15→圧縮機11の順で冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
【0077】
このサイクル構成では、圧縮機11から吐出された高温高圧冷媒が、第1冷媒流路に切り替えられている際と同様に、放熱器12にて冷却されてエジェクタ20のノズル部20aにて減圧されて噴射される。さらに、第2冷媒流路に切り替えられている際には、開閉弁14が閉じているので、噴射冷媒はディフューザ部20dから流出することなく、冷媒吸引口20cから蒸発器16側へ流出する。
【0078】
蒸発器16へ流入した冷媒は、第1冷媒流路に切り替えられている際と同様に、送風ファン16aから送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が冷却される。さらに、蒸発器16から流出した冷媒は、第1冷媒流路に切り替えられている場合とは逆に流れて、固定絞り15aを介して気液分離器15へ流入する。気液分離器15にて分離された気相冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
【0079】
低負荷運転モードでは、以上の如く作動して、蒸発器16にて車室内へ送風される送風空気を冷却することができる。この際、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっていても、エジェクタ20のノズル部20aから噴射された噴射冷媒を冷媒吸引口13cを介して蒸発器16へ流入させるので、圧縮機11の冷媒吐出能力によって、低圧冷媒を確実に蒸発器16へ流入させることができる。
【0080】
ここで、第1冷媒流路に切り替えられているエジェクタ式冷凍サイクル10のように、エジェクタ20のノズル部20aから噴射される噴射冷媒の吸引作用によって蒸発器16下流側の冷媒を吸引するサイクル構成では、噴射冷媒の流量を低下させると、噴射冷媒の流量の低下度合に対して、エジェクタ20の冷媒吸引口20cから蒸発器16の下流側の冷媒を吸引する吸引能力の低下度合が大きくなってしまいやすい。
【0081】
このため、サイクルの熱負荷が低下して、噴射冷媒の流量が低下してしまうと、エジェクタ20の吸引能力が大きく低下し、気液分離器15にて分離された液相冷媒を固定絞り15aを介して蒸発器16へ流入させることができなくなってしまうことがある。従って、サイクルの低負荷時には、蒸発器16にて冷却対象流体を充分に冷却することができなくなってしまうおそれがある。
【0082】
これに対して、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、噴射冷媒の流量が低下してエジェクタ20の冷媒吸引能力が大きく低下してしまうおそれがある低負荷運転時に、第1冷媒流路(通常運転モード)から第2冷媒流路(低負荷運転モード)へ切り替えている。従って、サイクルの負荷変動によらず、蒸発器16へ冷媒を流入させることができ、送風空気を充分に冷却することができる。
【0083】
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、いずれの冷媒流路に切り替えた際にも、エジェクタ20のノズル部20aにて減圧させた冷媒を蒸発器16へ流入させることができるので、第2冷媒流路に切り替えられた際のみに用いられる専用の冷媒減圧手段を追加する必要もない。
【0084】
また、本実施形態では、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下となった際に、空調制御装置21が開閉弁14を閉じるので、低負荷運転時に、確実に第1冷媒流路(通常運転モード)から第2冷媒流路(低負荷運転モード)へ切り替えることができる。従って、低負荷運転時であっても、確実に冷却対象流体を冷却することができる。
【0085】
(第2実施形態)
第1実施形態では、エジェクタ20のディフューザ部20dの出口側と気液分離器15の入口側とを接続する冷媒通路に配置された開閉弁14によって、冷媒流路切替手段を構成した例を説明したが、冷媒流路切替手段は、これに限定されない。例えば、冷媒流路切替手段としては、ディフューザ部20dの入口側から気液分離器15の入口側へ至る冷媒通路を開閉する開閉手段を採用することができる。
【0086】
そこで、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図2の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、エジェクタ20、開閉弁14および気液分離器15を廃止して、気液分離手段一体型のエジェクタ25を採用した例を説明する。
【0087】
換言すると、本実施形態のエジェクタ25は、冷媒減圧手段および冷媒循環手段(冷媒輸送手段)としての機能を有するだけでなく、ディフューザ部20dの入口側から気液分離器15の入口側へ至る冷媒通路を開閉する開閉手段(冷媒流路切替手段)および減圧させた冷媒の気液を分離する気液分離手段としての機能を有する。つまり、本実施形態のエジェクタ25は、第1実施形態で説明したエジェクタ20、開閉弁14および気液分離器15を一体的に構成したものである。
【0088】
なお、図2では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。また、図2では、図示の明確化のため空調制御装置21、並びに、空調制御装置21と各種電気式のアクチュエータとを接続する電気信号線等の図示を省略している。このことは、以下の図面においても同様である。
【0089】
エジェクタ25の具体的構成については、図3図5を用いて説明する。なお、図3に、図4おける上下の各矢印は、エジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に搭載した状態における上下の各方向を示している。また、図5は、エジェクタ25の各冷媒通路の機能を説明するための模式的な断面図であって、図3図4と同一の機能を果たす部分には同一の符号を付している。
【0090】
まず、本実施形態のエジェクタ25は、図3図4に示すように、複数の構成部材を組み合わせることによって構成されたボデー30を備えている。具体的には、このボデー30は、角柱状あるいは円柱状の金属もしくは樹脂等にて形成されてエジェクタ25の外殻を形成するハウジングボデー31を有し、このハウジングボデー31の内部に、ノズルボデー32、ミドルボデー33、ロワーボデー34等を固定して構成されたものである。
【0091】
ハウジングボデー31には、放熱器12から流出した冷媒を内部へ流入させる冷媒流入口31a、第1冷媒流路に切り替えられている際に蒸発器16から流出した冷媒を吸引する冷媒吸引口31b、第1冷媒流路に切り替えられている際に後述する気液分離空間30fにて分離された液相冷媒を蒸発器16側へ流出させる液相冷媒流出口31c、および気液分離空間30fにて分離された気相冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる気相冷媒流出口31d等が形成されている。
【0092】
ノズルボデー32は、冷媒流れ方向に先細る略円錐形状の金属部材等で形成されており、軸方向が鉛直方向(図3図4の上下方向)と平行になるように、ハウジングボデー31の内部に圧入等の手段によって固定されている。ノズルボデー32の上方側とハウジングボデー31との間には、冷媒流入口31aから流入した冷媒を旋回させる旋回空間30aが形成されている。
【0093】
旋回空間30aは、回転体形状に形成され、図3図4の一点鎖線で示す中心軸が鉛直方向に延びている。なお、回転体形状とは、平面図形を同一平面上の1つの直線(中心軸)の周りに回転させた際に形成される立体形状である。より具体的には、本実施形態の旋回空間30aは、略円柱状に形成されている。もちろん、円錐あるいは円錐台と円柱とを結合させた形状等に形成されていてもよい。
【0094】
さらに、冷媒流入口31aと旋回空間30aとを接続する冷媒流入通路31eは、旋回空間30aの中心軸方向から見たときに旋回空間30aの内壁面の接線方向に延びている。これにより、冷媒流入通路31eから旋回空間30aへ流入した冷媒は、旋回空間30aの内壁面に沿って流れ、旋回空間30a内を旋回する。
【0095】
なお、冷媒流入通路31eは、旋回空間30aの中心軸方向から見たときに、旋回空間30aの接線方向と完全に一致するように形成されている必要はなく、少なくとも旋回空間30aの接線方向の成分を含んでいれば、その他の方向の成分(例えば、旋回空間30aの軸方向の成分)を含んで形成されていてもよい。
【0096】
ここで、旋回空間30a内で旋回する冷媒には遠心力が作用するので、旋回空間30a内では中心軸側の冷媒圧力が外周側の冷媒圧力よりも低下する。そこで、本実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常運転時に、旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力を、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させるようにしている。
【0097】
このような旋回空間30a内の中心軸側の冷媒圧力の調整は、旋回空間30a内で旋回する冷媒の旋回流速を調整することによって実現することができる。さらに、旋回流速の調整は、例えば、冷媒流入通路31eの通路断面積と旋回空間30aの軸方向垂直断面積との面積比を調整すること等によって行うことができる。なお、本実施形態の旋回流速とは、旋回空間30aの最外周部近傍における冷媒の旋回方向の流速を意味している。
【0098】
また、ノズルボデー32の内部には、旋回空間30aから流出した冷媒を減圧させて下流側へ流出させる減圧用空間30bが形成されている。この減圧用空間30bは、円柱状空間とこの円柱状空間の下方側から連続して冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる円錐台形状空間とを結合させた回転体形状に形成されており、減圧用空間30bの中心軸は旋回空間30aの中心軸と同軸上に配置されている。
【0099】
さらに、減圧用空間30bの内部には、減圧用空間30b内に冷媒通路面積が最も縮小した最小通路面積部30mを形成するとともに、最小通路面積部30mの通路面積を変化させる通路形成部材35が配置されている。この通路形成部材35は、冷媒流れ下流側に向かって徐々に広がる略円錐形状に形成されており、その中心軸が減圧用空間30bの中心軸と同軸上に配置されている。換言すると、通路形成部材35は、減圧用空間30bから離れるに伴って断面積が拡大する円錐状に形成されている。
【0100】
そして、ノズルボデー32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面と通路形成部材35の上方側の外周面との間に形成される冷媒通路としては、図5に示すように、最小通路面積部30mよりも冷媒流れ上流側に形成されて最小通路面積部30mに至るまでの冷媒通路面積が徐々に縮小する先細部131、および最小通路面積部30mから冷媒流れ下流側に形成されて冷媒通路面積が徐々に拡大する末広部132が形成される。
【0101】
先細部131の下流側および末広部132では、径方向から見たときに減圧用空間30bと通路形成部材35が重合(オーバーラップ)しているので、冷媒通路の軸方向垂直断面の形状が円環状(大径の円形状から同軸上に配置された小径の円形状を除いたドーナツ形状)となる。
【0102】
さらに、本実施形態では、末広部132における冷媒通路面積が、冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大するように、ノズルボデー32の減圧用空間30bを形成する部位の内周面および通路形成部材35の外周面が形成されている。
【0103】
本実施形態では、この通路形状によって、図5に示すように、減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の頂部側の外周面との間に形成される冷媒通路を、第1実施形態で説明したノズル部20aに形成された冷媒通路と同様に機能するノズル通路13aとしている。さらに、このノズル通路13aでは、冷媒を減圧させて、気液二相状態の冷媒の流速を二相音速より高い値となるように増速させて噴射している。
【0104】
なお、本実施形態における減圧用空間30bの内周面と通路形成部材35の頂部側の外周面との間に形成される冷媒通路とは、図5に示すように、通路形成部材35の外周面から法線方向に延びる線分がノズルボデー32のうち減圧用空間30bを形成する部位と交わる範囲を含んで形成される冷媒通路である。
【0105】
また、ノズル通路13aへ流入する冷媒は旋回空間30aにて旋回しているので、ノズル通路13aを流通する冷媒およびノズル通路13aから噴射される噴射冷媒も、旋回空間30aにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。
【0106】
次に、図3図4に示すミドルボデー33は、その中心部に表裏を貫通する回転体形状の貫通穴が設けられているとともに、この貫通穴の外周側に通路形成部材35を変位させる駆動手段37を収容した金属製円板状部材で形成されている。なお、ミドルボデー33の貫通穴の中心軸は旋回空間30aおよび減圧用空間30bの中心軸と同軸上に配置されている。また、ミドルボデー33は、ハウジングボデー31の内部であって、かつ、ノズルボデー32の下方側に圧入等の手段によって固定されている。
【0107】
さらに、ミドルボデー33の上面とこれに対向するハウジングボデー31の内壁面との間には、冷媒吸引口31bから流入した冷媒を滞留させる流入空間30cが形成されている。本実施形態では、ノズルボデー32の下方側の先細先端部がミドルボデー33の貫通穴の内部に位置付けられるため、流入空間30cは、旋回空間30aおよび減圧用空間30bの中心軸方向からみたときに、断面円環状に形成される。
【0108】
また、冷媒吸引口31bと流入空間30cとを接続する吸引冷媒流入通路は、流入空間30cの中心軸方向から見たときに、流入空間30cの内周壁面の接線方向に延びている。これにより、本実施形態では、冷媒吸引口31bから吸引冷媒流入通路を介して流入空間30c内へ流入した冷媒を、旋回空間30a内の冷媒と同方向に旋回させるようにしている。
【0109】
さらに、ミドルボデー33の貫通穴のうち、ノズルボデー32の下方側が挿入される範囲、すなわち軸線に垂直な径方向から見たときにミドルボデー33とノズルボデー32が重合する範囲では、ノズルボデー32の先細先端部の外周形状に適合するように冷媒通路面積が冷媒流れ方向に向かって徐々に縮小している。
【0110】
これにより、貫通穴の内周面とノズルボデー32の下方側の先細先端部の外周面との間には、流入空間30cと減圧用空間30bの冷媒流れ下流側とを連通させる吸引通路30dが形成される。つまり、本実施形態では、冷媒吸引口31bと流入空間30cとを接続する吸引冷媒流入通路、流入空間30cおよび吸引通路30dによって、外部から冷媒を吸引する吸引用通路13bが形成されている。
【0111】
この吸引通路30dの中心軸垂直断面も円環状に形成されており、吸引通路30dを流れる冷媒も、旋回空間30aにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。さらに、吸引用通路13bの冷媒出口(具体的には、吸引通路30dの冷媒出口)は、ノズル通路13aの冷媒出口(冷媒噴射口)の外周側に、円環状に開口している。
【0112】
また、ミドルボデー33の貫通穴のうち、吸引通路30dの冷媒流れ下流側には、冷媒流れ方向に向かって徐々に広がる略円錐台形状に形成された昇圧用空間30eが形成されている。昇圧用空間30eは、減圧用空間30b(具体的には、ノズル通路13a)から噴射された噴射冷媒と吸引用通路13bから吸引された吸引冷媒とを流入させる空間である。
【0113】
昇圧用空間30eの内部には、前述した通路形成部材35の下方部が配置されている。さらに、昇圧用空間30e内の通路形成部材35の円錐状側面の広がり角度は、昇圧用空間30eの円錐台形状空間の広がり角度よりも小さくなっているので、この冷媒通路の冷媒通路面積は冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大する。
【0114】
本実施形態では、このように冷媒通路面積を拡大させることによって、図5に示すように、昇圧用空間30eを形成するミドルボデー33の内周面と通路形成部材35の下方側の外周面との間に形成される冷媒通路を、第1実施形態で説明したディフューザ部20dと同様に機能するディフューザ通路13cとしている。そして、ディフューザ通路13cにて、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換している。
【0115】
また、図3図4に示すように、通路形成部材35の円錐状側面には溝部が形成されており、この溝部には、リング状部材36aが配置されている。より具体的には、溝部は、通路形成部材35を軸方向上方側から見たときに円環状に形成されており、リング状部材36aは、リング状(円筒状)に形成されて、溝部に軸方向に摺動変位可能に嵌め込まれている。なお、このリング状部材36aの中心軸も、旋回空間30aや通路形成部材35等の中心軸と同軸上に配置されている。
【0116】
さらに、リング状部材36aには、連結棒36bを介して、エジェクタ25の下方側に配置された電動式の駆動装置36cが連結されている。この駆動装置36cは、リング状部材36aを軸方向に変位させるもので、具体的には、リニアソレノイド、ステッピングモータ等を採用できる。また、駆動装置36cは、空調制御装置21から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0117】
より具体的には、駆動装置36cがリング状部材36aを軸方向下方側へ変位させることによって、図3に示すように、ディフューザ通路13cの入口側と出口側が連通する。また、駆動装置36cがリング状部材36aを軸方向上方側へ変位させて、リング状部材36aの上端部をミドルボデー33のうち昇圧用空間30eを形成する部位の内周面に当接させると、図4に示すように、ディフューザ通路13cが遮断される。
【0118】
つまり、本実施形態では、駆動装置36cがリング状部材36aを変位させることによって、冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態のリング状部材36a、連結棒36bおよび駆動装置36cは、冷媒流路切替手段を構成している。
【0119】
そして、図3に示すように、リング状部材36aがディフューザ通路13cを開くことによって、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒がディフューザ通路13cから流出する第1冷媒流路に切り替えられ、図4に示すように、リング状部材36aがディフューザ通路13cを閉じることによって、噴射冷媒が冷媒吸引口31bから流出する第2冷媒流路に切り替えられる。
【0120】
また、図3図5から明らかなように、リング状部材36aの上端面は、駆動装置36cがリング状部材36aを軸方向下方側へ変位させた際にも、ディフューザ通路13c内に露出している。
【0121】
従って、駆動装置36cがリング状部材36aを軸方向下方側へ変位させた際に、リング状部材36aの上端面と通路形成部材35の円錐状側面との境界部分に段差等が形成されることなく、リング状部材36aの上端面が通路形成部材35の円錐状側面の一部を形成する形状となっていることが望ましい。
【0122】
次に、ミドルボデー33の内部に配置されて、通路形成部材35を変位させる駆動手段37について説明する。この駆動手段37は、圧力応動部材である円形薄板状のダイヤフラム37aを有して構成されている。より具体的には、図3に示すように、ダイヤフラム37aはミドルボデー33の外周側に形成された円柱状の空間を上下の2つの空間に仕切るように、溶接等の手段によって固定されている。
【0123】
ダイヤフラム37aによって仕切られた2つの空間のうち上方側(流入空間30c側)の空間は、蒸発器16流出冷媒の温度に応じて圧力変化する感温媒体が封入される封入空間37bを構成している。この封入空間37bには、エジェクタ式冷凍サイクル10を循環する冷媒と同一組成の感温媒体が予め定めた密度となるように封入されている。従って、本実施形態における感温媒体は、R134aを主成分とする媒体となる。
【0124】
一方、ダイヤフラム37aによって仕切られた2つの空間のうち下方側の空間は、図示しない連通路を介して、蒸発器16流出冷媒を導入させる導入空間37cを構成している。従って、封入空間37bに封入された感温媒体には、流入空間30cと封入空間37bとを仕切る蓋部材37dおよびダイヤフラム37a等を介して、蒸発器16流出冷媒の温度が伝達される。
【0125】
ここで、図3図5から明らかなように、本実施形態のミドルボデー33の上方側には吸引用通路13bが配置され、ミドルボデー33の下方側にはディフューザ通路13cが配置されている。従って、駆動手段37の少なくとも一部は、中心軸の径方向から見たときに吸引用通路13bおよびディフューザ通路13cによって上下方向から挟まれる位置に配置されることになる。
【0126】
より詳細には、駆動手段37の封入空間37bは、旋回空間30aや通路形成部材35等の中心軸方向から見たときに、吸引用通路13bおよびディフューザ通路13cと重合する位置であって、吸引用通路13bおよびディフューザ通路13cによって囲まれる位置に配置されている。これにより、封入空間37bに蒸発器16流出冷媒の温度が伝達され、封入空間37bの内圧は、蒸発器16流出冷媒の温度に応じた圧力となる。
【0127】
さらに、ダイヤフラム37aは、封入空間37bの内圧と導入空間37cへ流入した蒸発器16流出冷媒の圧力との差圧に応じて変形する。このため、ダイヤフラム37aは弾性に富み、かつ熱伝導が良好で、強靱な材質にて形成することが好ましく、例えば、ステンレス(SUS304)等の金属薄板にて形成されることが望ましい。
【0128】
また、ダイヤフラム37aの中心部には、円柱状の作動棒37eの上端側が溶接等の手段によって接合され、作動棒37eの下端側には通路形成部材35の最下方側(底部)の外周側が固定されている。これにより、ダイヤフラム37aと通路形成部材35が連結され、ダイヤフラム37aの変位に伴って通路形成部材35が変位し、ノズル通路13aの冷媒通路面積(最小通路面積部30mにおける通路断面積)が調整される。
【0129】
具体的には、蒸発器16流出冷媒の温度(過熱度)が上昇すると、封入空間37bに封入された感温媒体の飽和圧力が上昇し、封入空間37bの内圧から導入空間37cの圧力を差し引いた差圧が大きくなる。これにより、ダイヤフラム37aは、最小通路面積部30mにおける通路断面積を拡大させる方向(鉛直方向下方側)に通路形成部材35を変位させる。
【0130】
一方、蒸発器16流出冷媒の温度(過熱度)が低下すると、封入空間37bに封入された感温媒体の飽和圧力が低下して、封入空間37bの内圧から導入空間37cの圧力を差し引いた差圧が小さくなる。これにより、ダイヤフラム37aは、最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小させる方向(鉛直方向上方側)に通路形成部材35を変位させる。
【0131】
このように蒸発器16流出冷媒の過熱度に応じてダイヤフラム37aが、通路形成部材35を上下方向に変位させることによって、蒸発器16流出冷媒の過熱度が予め定めた所定値に近づくように、最小通路面積部30mにおける通路断面積を調整することができる。なお、作動棒37eとミドルボデー33との隙間は、図示しないO−リング等のシール部材によってシールされており、作動棒37eが変位してもこの隙間から冷媒が漏れることはない。
【0132】
また、通路形成部材35の底面は、ロワーボデー34に固定されたコイルバネ40の荷重を受けている。コイルバネ40は、通路形成部材35に対して、最小通路面積部30mにおける通路断面積を縮小する側(図3では、上方側)に付勢する荷重をかけており、この荷重を調整することで、通路形成部材35の開弁圧を変更して、狙いの過熱度を変更することもできる。
【0133】
さらに、本実施形態では、ミドルボデー33の外周側に複数(具体的には、2つ)の円柱状の空間を設け、この空間の内部にそれぞれ円形薄板状のダイヤフラム37aを固定して2つの駆動手段37を構成しているが、駆動手段37の数はこれに限定されない。なお、駆動手段37を複数箇所に設ける場合は、それぞれ中心軸に対して等角度間隔で配置されていることが望ましい。
【0134】
また、軸方向からみたときに円環状に形成される空間内に、円環状の薄板で形成されたダイヤフラムを固定し、複数の作動棒でこのダイヤフラムと通路形成部材35とを連結する構成としてもよい。
【0135】
次に、ロワーボデー34は、円柱状の金属部材等で形成されており、ハウジングボデー31の底面側を閉塞するように、圧入あるいはネジ止め等の手段によって固定されている。そして、ハウジングボデー31の内部空間のうち、ロワーボデー34の上面側とミドルボデー33の底面側との間には、ディフューザ通路13cから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30fが形成されている。
【0136】
従って、本実施形態のディフューザ通路13cの最下流部(冷媒流出口)は、気液分離空間30f内に開口している。また、気液分離空間30fは、略円柱状の回転体形状の空間として形成されており、第1実施形態で説明した気液分離器15と同様の機能を果たす気液分離手段を構成している。また、気液分離空間30fの中心軸も、旋回空間30a、減圧用空間30b、および通路形成部材35等の中心軸と同軸上に配置されている。
【0137】
さらに、ディフューザ通路13cから流出して気液分離空間30fへ流入する冷媒は、旋回空間30aにて旋回する冷媒と同方向に旋回する方向の速度成分を有している。従って、この気液分離空間30fは、遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する遠心分離方式の気液分離手段として機能する。
【0138】
また、気液分離空間30fの内容積は、第1実施形態で説明した気液分離器15と同程度の内容積に形成されている。従って、気液分離空間30fでは、分離された液相冷媒を殆ど蓄えることなく液相冷媒流出口31cから流出させる。
【0139】
ロワーボデー34の中心部には、気液分離空間30fに同軸上に配置されて、上方側へ向かって延びる円筒状のパイプ34aが設けられている。従って、気液分離空間30fにて分離された液相冷媒は、パイプ34aの外周側に一時的に貯留されることになる。
【0140】
また、パイプ34aの内部には、気液分離空間30fにて分離された気相冷媒をハウジングボデー31の気相冷媒流出口31dへ導く気相冷媒流出通路34bが形成されている。なお、前述したリング状部材36aと駆動装置36cとを連結させる連結棒36bは、気相冷媒流出通路34bの一部を上下方向に貫通するように配置されて、リング状部材36aと駆動装置36cとを連結している。
【0141】
さらに、パイプ34aの上端部には、前述したコイルバネ40が固定されている。なお、このコイルバネ40は、冷媒が減圧される際の圧力脈動に起因する通路形成部材35の振動を減衰させる振動緩衝部材としての機能も果たしている。また、パイプ34aの根本部(最下方部)には、液相冷媒中の冷凍機油を気相冷媒流出通路34bを介して圧縮機11内へ戻すオイル戻し穴34cが形成されている。
【0142】
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。前述の如く、本実施形態のエジェクタ25は、第1実施形態で説明したエジェクタ20、開閉弁14および気液分離器15を一体的に構成したものと同等の機能を発揮するので、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10を作動させると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0143】
より詳細には、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNcより高くなっている際には、リング状部材36aがディフューザ通路13cを開くことによって、第1冷媒流路(通常運転モード)に切り替えられるので、図2図5の実線矢印で示すように、第1実施形態の通常運転モード時と同様に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
【0144】
また、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっている際には、リング状部材36aがディフューザ通路13cを閉じることによって、第2冷媒流路(低負荷運転モード)に切り替えられるので、図2図5の破線矢印で示すように、第1実施形態の低負荷運転モード時と同様に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
【0145】
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に、サイクルの負荷変動によらず、蒸発器16へ冷媒を流入させることができ、送風空気を充分に冷却することができる。
【0146】
また、本実施形態のエジェクタ25によれば、旋回空間30aにて冷媒を旋回させることで、旋回空間30a内の旋回中心側の冷媒圧力を、飽和液相冷媒となる圧力、あるいは、冷媒が減圧沸騰する(キャビテーションを生じる)圧力まで低下させることができる。これにより、旋回中心軸の外周側よりも内周側に気相冷媒が多く存在するようにして、旋回空間30a内の旋回中心線近傍はガス単相、その周りは液単相の二相分離状態とすることができる。
【0147】
このように二相分離状態となった冷媒がノズル通路13aへ流入することで、ノズル通路13aの先細部131では、円環状の冷媒通路の外周側壁面から冷媒が剥離する際に生じる壁面沸騰および円環状の冷媒通路の中心軸側の冷媒のキャビテーションによって生じた沸騰核による界面沸騰によって冷媒の沸騰が促進される。これにより、ノズル通路13aの最小通路面積部30mへ流入する冷媒が、気相と液相が均質に混合した気液混合状態に近づく。
【0148】
そして、最小通路面積部30mの近傍で気液混合状態の冷媒の流れに閉塞(チョーキング)が生じ、このチョーキングによって音速に到達した気液混合状態の冷媒が末広部132にて加速されて噴射される。このように、壁面沸騰および界面沸騰の双方による沸騰促進によって、気液混合状態の冷媒を音速となるまで効率よく加速できることで、ノズル通路13aにおけるエネルギ変換効率(従来技術のノズル効率に相当)を向上させることができる。
【0149】
また、本実施形態のエジェクタ25のボデー30には、ディフューザ通路13cから流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間30fが形成されているので、エジェクタ25とは別に気液分離手段を設ける場合に対して、気液分離空間30fの容積を効果的に小さくすることができる。
【0150】
つまり、本実施形態の気液分離空間30fでは、断面円環状に形成されたディフューザ通路13cから流出する冷媒が既に旋回方向の速度成分を有しているので気液分離空間30f内で冷媒の旋回流れを発生させるための空間を設ける必要がない。従って、エジェクタ25とは別に気液分離手段を設ける場合に対して、気液分離空間30fの容積を効果的に小さくすることができる。
【0151】
また、本実施形態のエジェクタ25によれば、駆動手段37を備えているので、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じて通路形成部材35を変位させ、ノズル通路13aおよびディフューザ通路13cの冷媒通路面積を変更することができる。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の負荷変動に応じてエジェクタ25を適切に作動させることができる。
【0152】
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態に対して、エジェクタ25の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態のエジェクタ25では、図6図7に示すように、通路形成部材35を、互いに別部材で形成されたサブ弁体部35aおよび本体部35bによって構成し、サブ弁体部35aと本体部35bとの間に、コイルバネ35cを配置している。
【0153】
サブ弁体部35aは略円錐状に形成されて、本体部35bの上方側に配置されている。さらに、本体部35bは略円錐台状に形成されており、図6に示すように、コイルバネ35cを圧縮してサブ弁体部35aの底面と本体部35bの上面とを当接させると、サブ弁体部35aの外周面と本体部35bの外周面が滑らかに連続して、第1実施形態と同様の略円錐形状の通路形成部材35が形成される。
【0154】
また、サブ弁体部35aの底面には、連結棒36bを介して、駆動装置36cが連結されている。従って、本実施形態の駆動装置36cは、サブ弁体部35aを軸方向に変位させる機能を果たす。
【0155】
そして、駆動装置36cがサブ弁体部35aを軸方向下方側へ変位させると、図6に示すように、コイルバネ35cが圧縮されて、サブ弁体部35aの底面と本体部35bの上面が当接する。これにより、本体部35bは、その上方側に配置されたコイルバネ35cから鉛直方向下方側へ付勢する荷重を受けるとともに、その下方側に配置されたコイルバネ40から鉛直方向上方側へ付勢する荷重を受ける。
【0156】
この際、本実施形態では、本体部35bがコイルバネ35cから受ける荷重とコイルバネ40から受ける荷重が概ね相殺されるように、コイルバネ35cおよびコイルバネ40の諸元を決定している。従って、駆動装置36cがサブ弁体部35aを軸方向下方側へ変位させると、サブ弁体部35aおよび本体部35bは、第2実施形態の通路形成部材35と同様に、駆動手段37から受ける荷重によって変位することになる。
【0157】
つまり、本実施形態では、駆動装置36cがサブ弁体部35aを軸方向下方側へ変位させると、ディフューザ通路13cの入口側と気液分離空間30fの入口側が連通した状態で、サブ弁体部35aと本体部35bが一体となって、第2実施形態の通路形成部材35と同様に変位する。
【0158】
一方、駆動装置36cがサブ弁体部35aを軸方向上方側へ変位させると、図7に示すように、サブ弁体部35aの底面と本体部35bの上面が離れる。これにより、本体部35bがコイルバネ35cから受ける荷重が低下するので、本体部35bは、コイルバネ40から受ける鉛直方向上方側へ付勢する荷重によって上方側へ変位する。
【0159】
これにより、略円錐台状に形成された本体部35cの最下方側(底部)の外周側が、ミドルボデー33の底面に当接し、ディフューザ通路13cの出口側が閉塞される。
【0160】
つまり、本実施形態では、駆動装置36cがサブ弁体部35aを変位させることによって、冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態のサブ弁体部35a、本体部35b、連結棒36bおよび駆動装置36cは、冷媒流路切替手段を構成している。
【0161】
そして、図6に示すように、サブ弁体部35aと本体部35bが一体となって変位して本体部35bがディフューザ通路13cを開くことによって、ノズル通路13aから噴射された噴射冷媒がディフューザ通路13cから流出する第1冷媒流路に切り替えられ、図7に示すように、本体部35bがディフューザ通路13cを閉じることによって、噴射冷媒が冷媒吸引口31bから流出する第2冷媒流路に切り替えられる。
【0162】
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第2実施形態と同様に、サイクルの負荷変動によらず、蒸発器16へ冷媒を流入させることができ、送風空気を充分に冷却することができる。
【0163】
(第4実施形態)
本実施形態では、上述の実施形態に対して、冷媒流路切替手段の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10には、図8に示すように、第2実施形態に対して、蒸発器16の冷媒出口側と圧縮機11の吸入口側とを接続するバイパス通路17が追加されている。そして、このバイパス通路17を開閉する開閉弁14a(開閉手段)によって冷媒流路切替手段を構成している。
【0164】
このため、本実施形態のエジェクタ25では、冷媒流路切替手段を構成するリング状部材36a、連結棒36b、駆動装置36c等が廃止されている。また、本実施形態の開閉弁14aは、非通電時閉塞型(いわゆるノーマルクローズ型)の電磁弁で構成されており、空調制御装置21から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は、第2実施形態と同様である。
【0165】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態では、空調制御装置21(冷媒流路制御手段21b)が、開閉弁14aへ出力させる制御電圧を決定する際に、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下となった際に、開閉弁14を開くように決定される。
【0166】
ここで、第1実施形態で説明したように、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNcよりも高くなっている際には、エジェクタ25が蒸発器16から流出した冷媒を充分に吸引できるので、蒸発器16の入口側冷媒圧力(エジェクタ25の液相冷媒流出口31c側の冷媒圧力)から蒸発器16の出口側冷媒圧力(エジェクタ25の冷媒吸引口31b側の冷媒圧力)を減算した圧力差は充分に大きくなっている。
【0167】
従って、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNcよりも高くなっている際に、開閉弁14aがバイパス通路17を閉じることによって、蒸発器16から流出した冷媒を冷媒吸引口31b側へ流出させる第1冷媒流路(通常運転モード)に切り替えることができる。
【0168】
一方、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっている際には、エジェクタ25の吸引能力が低下しているので、蒸発器16の入口側冷媒圧力(エジェクタ25の液相冷媒流出口31c側の冷媒圧力)から蒸発器16の出口側冷媒圧力(エジェクタ25の冷媒吸引口31b側の冷媒圧力)を減算した圧力差は極めて小さくなっている。
【0169】
従って、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっている際に、開閉弁14aがバイパス通路17を開くことによって、圧縮機11の吸入負圧によって蒸発器16から流出した冷媒を圧縮機11の吸入口側へ流出させる第2冷媒流路(低負荷運転モード)に切り替えることができる。その他の作動は、第1実施形態と同様である。以下に、各運転モードについて説明する。
【0170】
(a)通常運転モード
通常運転モードは、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNcより高くなっており、すなわち、サイクルの熱負荷が基準熱負荷よりも高くなっており、開閉弁14aが閉じて第1冷媒流路に切り替えられている際に実行される運転モードである。
【0171】
第1冷媒流路に切り替えられているエジェクタ式冷凍サイクル10では、図8の実線矢印で示すように、圧縮機11→放熱器12→エジェクタ25のノズル通路→エジェクタ20のディフューザ通路→エジェクタ25の気液分離空間30f→圧縮機11の順で冷媒が循環するとともに、エジェクタ25の気液分離空間30f→固定絞り15a→蒸発器16→エジェクタ25の冷媒吸引口31bの順で冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
【0172】
つまり、第1実施形態で説明した通常運転モードと同様のエジェクタ式冷凍サイクルを構成して、同様に作動させることができる。
【0173】
(b)低負荷運転モード
低負荷運転モードは、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっており、すなわち、サイクルの熱負荷が基準熱負荷以下になっており、開閉弁14aが開いて第2冷媒流路に切り替えられている際に実行される運転モードである。
【0174】
第2冷媒流路に切り替えられているエジェクタ式冷凍サイクル10では、図8の破線矢印で示すように、圧縮機11→放熱器12→エジェクタ25のノズル通路→エジェクタ20のディフューザ通路→エジェクタ25の気液分離空間30f→固定絞り15a→蒸発器16→バイパス通路17→圧縮機11の順で冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。従って、第1実施形態で説明した低負荷運転モードと同様通常運転モードと同様に作動させることができる。
【0175】
つまり、第1実施形態で説明した通常運転モードと同様の冷凍サイクルを構成して、同様に作動させることができる。
【0176】
従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第2実施形態と同様に、サイクルの負荷変動によらず、蒸発器16へ冷媒を流入させることができ、送風空気を充分に冷却することができる。
【0177】
なお、開閉弁14aが第2冷媒流路に切り替える低負荷運転モード時には、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下になっており、エジェクタ25の液相冷媒流出口31c側の冷媒圧力とエジェクタ25の冷媒吸引口31b側の冷媒圧力が同等となるだけでなく、エジェクタ25の冷媒吸引口31b側の冷媒圧力とエジェクタ25の気相冷媒流出口31d側の冷媒圧力も同等となる。
【0178】
このため、低負荷運転モード時には、圧縮機11の吸入負圧によって気相冷媒流出口31dから流出した気相冷媒も圧縮機11の吸入口側へ流出してしまうので、蒸発器16から流出する冷媒流量が低下してしまうおそれがある。そこで、エジェクタ25の気相冷媒流出口31dを開閉する開閉手段を設け、低負荷運転モード時に気相冷媒流出口31dを閉塞させるようにしてもよい。
【0179】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0180】
(1)上述の実施形態では、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下となった際に、サイクルの熱負荷が基準熱負荷以下となったものとして、第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替える例を説明したが、サイクルの熱負荷の判定はこれに限定されない。
【0181】
例えば、ディフューザ部20d(ディフューザ通路13c)出口側の冷媒圧力から冷媒吸引口20c(冷媒吸引口31b)側の冷媒圧力を減算した圧力差が、予め定めた基準圧力差以下となった際に、第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替えるようにしてもよい。
【0182】
また、圧縮機11の冷媒吐出圧力が予め定めた基準吐出圧力以下となった際、あるいは、圧縮機11の冷媒吐出温度が予め定めた基準吐出温度以下となった際に、第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替えるようにしてもよい。さらに、外気温が予め定めた基準外気温以下となった際に、第1冷媒流路から第2冷媒流路へ切り替えるようにしてもよい。
【0183】
(2)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
【0184】
具体的には、上述の実施形態では、冷媒流路切替手段として開閉弁14、14aを採用した例を説明したが、冷媒流路切替手段はこれに限定されない。例えば、ディフューザ部20d(ディフューザ通路13c)出口側の冷媒圧力から冷媒吸引口20c(冷媒吸引口31b)側の冷媒圧力を減算した圧力差が、予め定めた基準圧力差以下となった際に開く機械的機構で構成された差圧弁等を用いて、冷媒流路切替手段を構成してもよい。
【0185】
さらに、第4実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10においては、開閉弁14aに替えて、バイパス通路の入口部に、蒸発器16から流出した冷媒を冷媒吸引口31b側へ導く冷媒流路と圧縮機11の吸入口側へ導く冷媒流路とを切り替える三方弁を採用してもよい。
【0186】
また、上述の実施形態では、放熱器12として、サブクール型の熱交換器を採用した例を説明したが、凝縮部12aのみからなる通常の放熱器を採用してもよい。さらに、通常の放熱器とともに、この放熱器にて放熱した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を蓄える受液器(レシーバ)を採用してもよい。
【0187】
また、上述の実施形態では、エジェクタ20のノズル部20aおよびボデー部20bといった構成部材、並びに、エジェクタ25のボデー30および通路形成部材35といった構成部材を金属で形成した例を説明したが、それぞれの構成部材の機能を発揮可能であれば材質は限定されない。従って、これらの構成部材を樹脂等にて形成してもよい。
【0188】
また、上述の第1実施形態のエジェクタ20には、ノズル部20aへ流入する冷媒に旋回流れを生じさせる旋回空間が形成されていないが、第2〜第4実施形態のエジェクタ25と同様に、旋回空間を形成する旋回空間形成部材を設けてもよい。
【0189】
また、上述の第1実施形態では、エジェクタ20として、最小通路面積部の冷媒通路面積が変化しない固定ノズル部を有するものを採用した例を説明したが、最小通路面積部の冷媒通路面積を変更可能に構成された可変ノズル部を有するものを採用してもよい。このような可変ノズル部としては、可変ノズル部の通路内にニードル状あるいは円錐状の弁体を配置し、この弁体を電気式アクチュエータ等によって変位させて、冷媒通路面積を調整するもの等を採用することができる。
【0190】
また、上述の第2〜第4実施形態では、通路形成部材35を変位させる駆動手段37として、温度変化に伴って圧力変化する感温媒体が封入された封入空間37bおよび封入空間37b内の感温媒体の圧力に応じて変位するダイヤフラム37aを有して構成されたものを採用した例を説明したが、駆動手段はこれに限定されない。
【0191】
例えば、感温媒体として温度によって体積変化するサーモワックスを採用してもよいし、駆動手段として形状記憶合金性の弾性部材を有して構成されたものを採用してもよいし、さらに、駆動手段として電動モータやソレノイド等の電気的機構によって通路形成部材35を変位させるものを採用してもよい。
【0192】
また、上述の各実施形態では、気液分離器15の液相冷媒流出口と蒸発器16との間、並びに、エジェクタ25の液相冷媒流出口31cと蒸発器16との間に固定絞り15aを配置した例を説明したが、固定絞り15aを廃止してもよい。また、気液分離器15の液相冷媒流出口、あるいは、エジェクタ25の液相冷媒流出口31cに冷媒を減圧させる減圧手段(例えば、オリフィス等)を配置してもよい。
【0193】
(3)第4実施形態では、第2、第3実施形態と同様に、気液分離手段一体型のエジェクタ25を採用した例を説明したが、第1実施形態と同様に、別部材として構成されたエジェクタ20および気液分離器15を採用してもよい。
【0194】
(4)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
【0195】
また、上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10の放熱器12を冷媒と外気とを熱交換させる室外側熱交換器とし、蒸発器16を送風空気を冷却する利用側熱交換器として用いているが、逆に、蒸発器16を外気等の熱源から吸熱する室外側熱交換器として用い、放熱器12を空気あるいは水等の被加熱流体を加熱する室内側熱交換器として用いるヒートポンプサイクルを構成してもよい。
【0196】
(5)上述の実施形態では、冷媒としてR134aあるいはR1234yf等を採用可能であることを説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R600a、R410A、R404A、R32、R1234yfxf、R407C等を採用することができる。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0197】
10 エジェクタ式冷凍サイクル
20、25 エジェクタ
20a、13a ノズル部、ノズル通路
20c、31b 冷媒吸引口
20d、13c ディフューザ部、ディフューザ通路(昇圧部)
15、30f 気液分離器、気液分離手段
14、14a 開閉弁
35a、36a サブ弁体部、リング状部材
36b 連結棒
36c 駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8