特許第6248501号(P6248501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6248501特定物質の解析方法及び解析用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248501
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】特定物質の解析方法及び解析用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 19/00 20110101AFI20171211BHJP
【FI】
   G06F19/00 110
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-196772(P2013-196772)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64645(P2015-64645A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】小島 隆嗣
【審査官】 宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】 大石 駿介,分子動力学シミュレーション結果解析用可視化ソフトウェアの開発,日本コンピュータ化学会2012年春季年会プログラム ポスター,2012年 5月18日,2P01
【文献】 BERNSTEIN Herbert J.,Manual RasMol 2.7.5,[online],2009年 6月13日,[検索日:平成29年8月7日],URL,http://www.rasmol.org/software/RasMol_2.7.5_Manual.html
【文献】 KOISHI T.,粒子表示プログラム cdview ver.3.09(beta),[online],2012年12月19日,[検索日:平成29年8月7日],URL,https://web.archive.org/web/20121219075047/http://polymer.apphy.u-fukui.ac.jp/~koishi/cdview.php
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いて分子動力学法により解析対象となる特定物質をモデル化する特定物質の解析方法であって、
分子動力学法により解析対象となる特定物質を数値解析する数値解析工程と、
数値解析した特定物質を構成する原子及び粒子の中から可視化する原子及び/又は粒子の選定時間を指定する選定時間指定工程と、
前記選定時間で可視化領域を指定する可視化領域指定工程と、
前記選定時間で前記可視化領域に含まれる前記原子及び/又は前記粒子を抽出する抽出工程と、
抽出された前記原子及び/又は前記粒子を可視化する複数の可視化時間を指定する可視化時間指定工程と、
出された前記原子及び/又は前記粒子を前記複数の可視化時間でそれぞれ可視化する可視化工程と、を含むことを特徴とする、特定物質の解析方法。
【請求項2】
前記特定物質が、前記原子及び前記粒子の相対位置を特定する結合鎖を含んでモデル化されており、更に前記結合鎖を可視化する、請求項1に記載の特定物質の解析方法。
【請求項3】
解析時間における時間毎の前記結合鎖の物理量に基づいて、前記結合鎖を配色する、請求項2に記載の特定物質の解析方法。
【請求項4】
前記特定物質として、少なくとも2種類の物質を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の特定物質の解析方法。
【請求項5】
解析時間における時間毎の前記原子及び前記粒子の物理量に基づいて、前記原子及び前記粒子を配色する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の特定物質の解析方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の特定物質の解析方法をコンピュータに実行させる、特定物質の解析用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析対象となる特定物質をモデル化する特定物質の解析方法及び解析用コンピュータプログラムに関し、特に、特定物質近傍の原子及び粒子の運動を観察できる特定物質の解析方法及び解析用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子動力学計算を用いた高分子材料のシミュレーション方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシミュレーション方法においては、高分子材料を原子、原子の集合体である粒子、及び粒子間の相対位置を特定する結合鎖に分けてモデル化し、得られたモデルの軸方向における変形に伴う配向角の変化を解析する。これにより、当該モデルのエネルギーロスの発生箇所を特定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−107968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィラーとポリマーとを含む複合材料は、フィラーとポリマーとの間の相互作用が複合材料の材料特性に大きな影響を与える。そのため、分子動力学法を用いた分子モデルのシミュレーションにより、フィラー原子、フィラー粒子近傍のポリマー原子及びポリマー粒子の運動を観察することが物性メカニズムの解明に繋がるものと期待される。
【0005】
しかしながら、従来のシミュレーション方法においては、数万〜数百万の粒子をモデル化するので、フィラー近傍などの局所的な原子及び粒子の運動を観察することは困難であった。また、原子及び粒子は、ブラウン運動、原子間及び粒子間の相互作用によって常時運動しているので、特定の原子及び粒子を時間経過と共に追跡することも困難であった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、特定物質近傍の原子及び粒子の運動を可視化できる特定物質の解析方法及び解析用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特定物質の解析方法は、コンピュータを用いて分子動力学法により解析対象となる特定物質をモデル化する特定物質の解析方法であって、分子動力学法により解析対象となる特定物質を数値解析する数値解析工程と、数値解析した特定物質を構成する原子及び粒子の中から可視化する原子及び/又は粒子の選定時間を指定する選定時間指定工程と、前記選定時間で可視化領域を指定する可視化領域指定工程と、前記選定時間で前記可視化領域に含まれる前記原子及び/又は前記粒子を抽出する抽出工程と、抽出された前記原子及び/又は前記粒子を可視化する複数の可視化時間を指定する可視化時間指定工程と、出された前記原子及び/又は前記粒子を前記複数の可視化時間でそれぞれ可視化する可視化工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、分子動力学法によって数値解析された特定物質に含まれる原子及び粒子のうち、全解析時間において、選定時間で指定した可視化領域に含まれる特定物質を構成する原子及び粒子を可視化できるので、当該原子及び粒子近傍の運動を観察することができる。これにより、特定物質を構成する原子及び粒子と他の物質を構成する原子及び粒子との相互作用が特定物質を構成する原子及び粒子の運動に与える影響を観察できるので、物性メカニズムの解明が期待できる。
【0009】
本発明の特定物質の解析方法においては、前記特定物質が、前記原子及び前記粒子の相対位置を特定する結合鎖を含んでモデル化されており、更に前記結合鎖を可視化することが好ましい。この方法により、結合鎖の影響も考慮して特定物質を解析できるので、特定物質を構成する原子及び粒子の解析の精度が向上する。
【0010】
本発明の特定物質の解析方法においては、解析時間における時間毎の前記結合鎖の物理量に基づいて、前記結合鎖を配色することが好ましい。この方法により、結合鎖の運動に伴う結合鎖の物理量の変化及び分布を容易に観察することができる。
【0011】
本発明の特定物質の解析方法においては、前記特定物質として、少なくとも2種類の物質を含むことが好ましい。この方法により、2種類の物質の界面付近の原子及び粒子の運動の可視化が可能となるので、2種類の物質間の相互作用が界面近傍の原子及び粒子に与える影響を解析することができる。
【0012】
本発明の特定物質の解析方法においては、解析時間における時間毎の前記原子及び前記粒子の物理量に基づいて、前記原子及び前記粒子を配色することが好ましい。この方法により、原子及び粒子の運動に伴う原子及び粒子の物理量の変化及び分布を容易に観察することができる。
【0013】
本発明の解析用コンピュータプログラムは、上記特定物質の解析方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定物質近傍の原子及び粒子の運動を可視化できる特定物質の解析方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る特定物質の解析方法に用いられる複合材料の説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る複合材料を構成するフィラー及びポリマーの説明図である。
図3A図3Aは、本発明の実施の形態に係るフィラーとポリマーとの相互作用の説明図である。
図3B図3Bは、本発明の実施の形態に係るフィラーとポリマーとの相互作用の説明図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る特定物質の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る特定物質の解析方法の概略を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更して実施可能である。
【0017】
本実施の形態に係る特定物質の解析方法は、コンピュータを用いて分子動力学法により解析対象となる特定物質をモデル化する特定物質の解析方法である。この特定物質の解析方法は、分子動力学法により解析対象となる特定物質を数値解析する数値解析工程と、数値解析した特定物質を構成する原子及び粒子の中から可視化する原子及び/又は粒子の選定時間を指定する選定時間指定工程と、選定時間で可視化領域を指定する可視化領域指定工程と、選定時間で可視化領域に含まれる原子及び/又は粒子を抽出する抽出工程と、抽出された原子及び/又は粒子を可視化する可視化時間を指定する可視化時間指定工程と、可視化時間内で抽出された原子及び/又は粒子を可視化する可視化工程と、を含む。まず、本実施の形態に係る特定物質の解析方法の概要について説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る特定物質の解析方法に用いられる複合材料の説明図である。図1に示すように、この複合材料10は、例えば、相互に材料特性が異なる母相11及び分散層12を含む。母相11は、例えば、ゴム及び各種樹脂材料などの高分子材料(ポリマー)を含有する。分散層12は、例えば、カーボンブラック又はシリカなどの無機材料のフィラーを含有する。このように2種類の異なる物質であるフィラー及びポリマーを含有する複合材料10を解析することにより、フィラーとポリマーとの界面近傍に存在する原子又は粒子の運動を可視化することが可能となるので、フィラーとポリマーとの間の相互作用が界面近傍の原子又は及び粒子に与える影響を解析することができる。なお、本実施の形態においては、解析対象となる特定物質として2種類以上の物質を含有する複合材料を分子動力学法によりモデル化して数値解析する例について説明するが、本発明は、1種類の物質の解析にも適用可能である。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る複合材料10を構成するフィラー21及びポリマー22の説明図である。図2に示すように、本実施の形態においては、フィラー21は、フィラー原子及び複数のフィラー原子が集合したフィラー粒子を含む。フィラー21は、複数のフィラー原子及び複数のフィラー粒子が集合した略球体としてフィラーモデル化される。
【0020】
フィラー21の周囲には、母相11(図1参照)をとなるポリマー22を形成するポリマー原子及び複数のポリマー原子が集合したポリマー粒子がポリマーモデル化されている。つまり、ポリマー22は、ポリマー原子及び複数のポリマー原子が集合したポリマー粒子が集合した集合体としてポリマーモデル化される。
【0021】
フィラー21は、フィラー原子及びフィラー粒子間の結合鎖23によって各フィラー原子及び各フィラー粒子の相対位置が特定される。この結合鎖23は、フィラー21の各フィラー原子間及び各フィラー粒子間を拘束している。ポリマー22は、フィラー21と同様に、ポリマー原子及びポリマー粒子間の結合鎖24によって各ポリマー原子及び各ポリマー粒子の相対位置が特定される。この結合鎖24は、ポリマー22の各ポリマー原子間及び各ポリマー粒子間を拘束している。また、フィラー21及びポリマー22は、フィラー原子及びフィラー粒子とポリマー原子及びポリマー粒子との間の結合鎖25によって各フィラー原子、各フィラー粒子、各ポリマー原子及び各ポリマー粒子の相対位置が特定される。この結合鎖25は、各フィラー原子、各フィラー粒子、各ポリマー原子及び各ポリマー粒子を拘束している。
【0022】
これらの結合鎖23、24、25は、平衡長とばね定数とが定義されたバネとしての機能を有する。このように、結合鎖23、24、25を含めてモデル化することにより、結合鎖23、24、25の影響も考慮してフィラー21及びポリマー22を解析できるので、複合材料10を形成するフィラー21及びポリマー22のフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子及びポリマー粒子の解析の精度が向上する。なお、本実施の形態では、結合鎖23、24、25をモデル化した例について説明するが、結合鎖23、24、25は必ずしもモデル化する必要はない。
【0023】
本実施の形態においては、例えば、図2に示す状態を初期状態とし、数値解析したフィラー21及びポリマー22を構成するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の中から可視化する可視化領域のフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を所定の選定時間内で抽出することにより、フィラー21及びポリマー22間の相互作用を解析することができる。なお、選定時間とは、数値解析後に可視化するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を選定する時間である。
【0024】
図3A及び図3Bは、本実施の形態に係るフィラー21とポリマー22との相互作用の説明図である。なお、図3A及び図3Bにおいては、図2に示した初期状態から伸張解析を開始して所定時間経過後のフィラー21及びポリマー22の状態を模式的に示している。
【0025】
図3Aに示すように、フィラー21とポリマー22との相互作用が強い場合には、初期状態においてフィラー21近傍に存在していたポリマー22のうち約半数程度がフィラー21近傍の領域からフィラー21から離れた領域に向けて分散している。これに対して、図3Bに示すように、フィラー21とポリマー22との相互作用が弱い場合には、フィラー21から離れた領域に分散したポリマー22が図3Aに示す例より増大している。このように、本実施の形態に係る特定物質の解析方法を用いることにより、例えば、フィラー21の近傍に存在していたポリマー22の所定時間後における位置を特定できるので、フィラー21とポリマー22との相互作用の強度を解析することが可能となる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る特定物質の解析方法について詳細に説明する。図4は、本実施の形態に係る特定物質の解析方法を実行する解析装置の機能ブロック図である。図4に示すように、本実施の形態に係る特定物質の解析方法は、処理部52と記憶部54とを含むコンピュータである解析装置50が実現する。この解析装置50は、入力手段53を備えた入出力装置51と電気的に接続されている。入力手段53は、モデル化の対象であるフィラー21、ポリマー22(図3参照、以下同様)の各種物性値及び解析における境界条件などを解析装置50に入力する。入力手段53としては、例えば、キーボード、マウスなどの入力デバイスが用いられる。
【0027】
処理部52は、例えば、中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)及びメモリを含む。処理部52は、各種処理を実行する際にコンピュータプログラムを記憶部54から読み込んでメモリに展開する。メモリに展開されたコンピュータプログラムは、各種処理を実行する。処理部52は、記憶部54から予め記憶された各種処理に係るデータを必要に応じて適宜メモリ上の自身に割り当てられた領域に展開し、展開したデータに基づいて、複合材料10のモデルの作成及び当該モデルを用いたシミュレーションに関する各種処理を実行する。
【0028】
処理部52は、モデル作成部52aと、条件設定部52bと、解析部52cとを含む。モデル作成部52aは、予め記憶部54に記憶されたデータに基づき、分子動力学法によりモデルを作成する際のフィラー21、ポリマー22の粒子数、分子数、分子量、分岐、形状及び大きさの設定を行う。また、モデル作成部52aは、フィラー21粒子とポリマー22粒子と間の結合鎖23、24、25などの構成要素の配置、設定及び計算ステップ数などの粗視化モデルの設定を行う。さらに、モデル作成部52aは、ポリマー−ポリマー間及びポリマー−フィラー間などの相互作用などの各種計算パラメーターの初期条件の設定を行う。
【0029】
ポリマーとフィラーとの相互作用を調整する計算パラメーターとしては、下記式(1)で表されるレナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを用い、これらが調整される。ポテンシャルを計算する上限距離(カットオフ距離)を大きくすることで、遠距離まで働いた引力、斥力を調整できる。なお、ポリマー−フィラー間相互作用が一定値になるまで順次、ポリマー−フィラー間相互作用パラメーターを小さくすることが好ましい。レナード・ジョーンズポテンシャルのσ、εを大きな値から徐々に本来の値に近づけることにより、分子を不自然な状態に導かない穏やかな速度で粒子の接近を行うことができる。また、カットオフ距離も徐々に小さくすることにより、適正な範囲で引力、斥力を調整できる。
【数1】
【0030】
モデル作成部52aは、初期条件の設定の後、平衡化計算を行う。平衡化計算では、所定の温度、密度及び圧力で、初期条件設定後の各種構成要素が平衡状態に到達する所定の時間、分子動力学計算を行う。さらに、モデル作成部52aは、初期条件の設定及び平衡化を計算した後に、フィラー21及びポリマー22をモデル化したポリマーモデル及びフィラーモデルを作成する。また、モデル作成部52aは、作成したポリマーモデル及びフィラーモデルの初期状態を作成する。
【0031】
条件設定部52bは、モデル作成部52aで作成したポリマーモデル及びフィラーモデルを用いた分子動力学法による運動シミュレーション(解析)を実行するための各種条件を設定する。条件設定部52bは、入力手段53からの入力及び記憶部54に記憶されている情報に基づいて各種条件を設定する。各種条件としては、解析部52cが解析を実行する際のフィラー原子、フィラー原子団、フィラー粒子及びフィラー粒子群の位置並びに数、ポリマー原子、ポリマー原子団、ポリマー粒子及びポリマー粒子群の位置並びに数、結合鎖23、24、25の位置及び数、条件を変更しない固定値などが含まれる。
【0032】
解析部52cは、モデル作成部52aにより作成されたポリマーモデル及びフィラーモデルを用いた分子動力学法による伸張解析などの運動シミュレーションにより数値解析を実行する。また、解析部52cは、数値解析したフィラー21及びポリマー22を形成するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の中から可視化するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を選定する選定時間を指定する。ここでの選定時間としては、例えば、解析開始時間又は解析終了時間が挙げられる。解析開始時間を選定時間とすることにより、伸張解析などによるフィラー22などの変形に伴うフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の移動後の位置を確認できる。また、解析終了時間を選定時間とすることにより、伸張解析などによるフィラー22などの変形に伴うフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の移動元を確認できる。
【0033】
さらに、解析部52cは、選定時間で可視化領域を指定する。可視化領域の指定方法としては、フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化できる範囲であれば特に制限はない。可視化領域の指定方法としては、例えば、特定点を中心として所定半径の球状の領域を指定する指定方法又は複数の特定点を頂点として形成される多面体状の領域を指定する指定方法が挙げられる。また、可視化領域の数としても特に制限はなく、複数の可視化領域を指定することもできる。
【0034】
また、解析部52cは、選定時間で可視化領域に含まれるフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を抽出する。さらに、解析部52cは、抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化する可視化時間を指定する。この可視化時間は、選定時間とは異なる時間である。なお、可視化時間は、選定時間を含む場合もある。解析部52cは、可視化時間を複数指定することも可能である。
【0035】
また、解析部52cは、可視化時間内で抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化する。可視化方法としては、抽出したフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を識別できる可視化方法であれば特に制限はない。フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の可視化方法としては、例えば、抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25にそれぞれ異なる色を着色して可視化する可視化方法が挙げられる。また、可視化方法としては、全てのフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を着色して可視化し、抽出したフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の色を他のフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25とは異ならせる可視化方法が挙げられる。さらに、可視化方法としては、抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25以外のフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を透明にする可視化方法などが挙げられる。
【0036】
また、解析部52cは、複数の解析時間においてフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化し、可視化したフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25をアニメーションのように連続表示してもよい。これにより、フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の動きを連続して確認できるので、物性メカニズムの解明が容易になる。
【0037】
また、解析部52cは、解析時間の時間毎のフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子及びポリマー粒子の物理量に基づいて、フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子及びポリマー粒子を配色することが好ましい。このようにすることで、原子及び粒子の運動に伴う原子及び粒子の物理量の変化並びに分布を容易に観察することができる。フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子及びポリマー粒子の物理量としては、数値解析の結果によって得られる物理量又は当該物理量を演算して得られる物理量であれば特に制限はない。フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子及びポリマー粒子の物理量としては、例えば、速度、加速度、力及び変位などが挙げられる。
【0038】
さらに、解析部52cは、解析時間の時間毎の結合鎖23、24、25の物理量に基づいて、結合鎖23、24、25を配色すること各解析時間における結合鎖23、24、25を、当該時間の結合鎖の物理量に基づいて配色することが好ましい。このようにすることで、結合鎖23、24、25の運動に伴う結合鎖の物理量の変化及び分布を容易に観察することができる。結合鎖23、24、25の物理量としては、数値解析の結果によって得られる物理量又は当該物理量を演算して得られる物理量であれば特に制限はない。結合鎖23、24、25の物理量としては、例えば、伸張力、ねじり力及び曲げ力などが挙げられる。
【0039】
記憶部54は、ハードディスク装置、光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ及びCD−ROMなどの読み出しのみが可能な記録媒体である不揮発性のメモリ並びにRAM(Random Access Memory)のような読み出し及び書き込みが可能な記録媒体である揮発性のメモリが適宜組み合わせられる。
【0040】
記憶部54には、入力手段53を介して解析対象となるポリマーモデル及びフィラーモデルを作成するためのデータであるゴム及び各種樹脂材料などのポリマー22(図3参照)、カーボンブラック又はシリカなどのフィラー21(図3参照)のデータ及び本実施の形態に係る特定物質の解析方法を実現するためのコンピュータプログラムなどが格納されている。このコンピュータプログラムは、コンピュータ又はコンピュータシステムに既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施の形態に係る特定物質の解析方法を実現できるものであってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)及び周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0041】
表示手段55は、例えば、液晶表示装置等の表示用デバイスである。なお、記憶部54は、データベースサーバなどの他の装置内にあってもよい。例えば、解析装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52及び記憶部54にアクセスするものであってもよい。
【0042】
次に、図5を参照して本実施の形態に係る特定物質の解析方法の具体例について説明する。図5は、本実施の形態に係る特定物質の解析方法の概略を示すフロー図である。
【0043】
図5に示すように、開始時には、モデル作成部52aが、入力手段53を介して予め記憶部54に記憶されたモデル化するためのデータであるフィラー21及びポリマー22の粒子数、分子数、分子量、分岐、形状、大きさ、フィラー21及びポリマー22の粒子間を接続する結合鎖23、24、25などの構成要素の配置などのフィラー21及びポリマー22をモデル化するための各種データを読込む。続いて、モデル作成部52aは、各種データに基づいてフィラーモデル及びポリマーモデルを作成する。モデル作成部52aは、ポリマーモデルに対して初期条件の設定及び分子動力学計算により平衡化計算を行う。
【0044】
次に、条件設定部52bは、入力手段53からの入力又は記憶部54に記憶されている情報に基づいて、ポリマーモデルを用いた分子動力学法による運動シミュレーション(解析)の条件を設定する。
【0045】
次に、解析部52cは、条件設定部52bが設定した条件に基づいて、分子動力学法により作成したポリマーモデル及びフィラーモデルを用いて分子動力学法による伸張解析などの運動シミュレーションにより数値解析を実行する(ステップS1)。続いて、解析部52cは、解析開始時間又は解析終了時間などを数値解析したフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の中から可視化するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を選定する選定時間として指定する(ステップS2)。
【0046】
次に、解析部52cは、解析開始時間又は解析終了時間で特定点を中心として所定半径の球状の領域を指定する指定方法及び複数の特定点を頂点として形成される多面体状の領域を可視化領域として指定する(ステップS3)。続いて、解析部52cは、選定時間で可視化領域に含まれるフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を抽出する(ステップS4)。
【0047】
次に、解析部52cは、抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化する可視化時間を指定する(ステップS5)。続いて、解析部52cは、可視化時間内で抽出されたフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を着色する着色方法などにより可視化する(ステップS6)。最後に、解析部52cは、伸張解析などによって得られた解析結果を記憶部54に格納してモデルの解析を終了する。
【0048】
以上説明したように、上記実施の形態に係る特定物質の解析方法によれば、分子動力学法によって数値解析された複合材料10に含まれるフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25のうち、全解析時間において、選定時間で指定した可視化領域に含まれる複合材料10を構成するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25を可視化できる。これにより、当該フィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25近傍の運動を観察することができるので、複合材料10を構成するフィラー21のフィラー原子及びフィラー粒子とポリマー22を構成するポリマー原子及びポリマー粒子との相互作用が、複合材料10を構成するフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、ポリマー粒子及び結合鎖23、24、25の運動に与える影響を観察できるので、物性メカニズムの解明が期待できる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例に基づいて本発明についてより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0050】
本発明者らは、上述した本実施の形態に係る特定物質の解析方法を用いてフィラー及びポリマーを含有する複合材料におけるフィラーとポリマーとの相互作用の強度を調べた。以下、本発明者らが調べた内容について説明する。
【0051】
ポリマーモデル及びフィラーモデルは、ポリマー及びフィラー間のポテンシャルとして上記式(1)に示したレナード・ジョーンズポテンシャルを使用し、カットオフ長を2.5σとし、εを1.3として作成した。
【0052】
次に、作成したポリマーモデル及びフィラーモデルを用いて分子動力学法による運動シミュレーションである伸張解析を実行した。その結果、図3A及び図3Bに示すように、フィラー及びポリマー間の相互作用と可視化したフィラー原子、フィラー粒子、ポリマー原子、及びポリマー粒子の分散性との間に高い関連性が見られた。
【符号の説明】
【0053】
10 複合材料
11 母相
12 分散層
21 フィラー
22 ポリマー
23、24、25 結合鎖
50 解析装置
51 入出力装置
52 処理部
52a モデル作成部
52b 条件設定部
52c 解析部
53 入力手段
54 記憶部
55 表示手段
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5