特許第6248511号(P6248511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6248511増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにパーソナルケア製品用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248511
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにパーソナルケア製品用組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20171211BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20171211BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20171211BHJP
   A61L 2/16 20060101ALI20171211BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20171211BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20171211BHJP
   C08B 15/04 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   A01N25/10
   A61Q19/00
   A61K8/19
   A61K8/73
   A61L2/16
   A01N59/16 A
   A01P3/00
   !C08B15/04
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-203273(P2013-203273)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67573(P2015-67573A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 拓也
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0233245(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0220560(US,A1)
【文献】 特開2008−001961(JP,A)
【文献】 特開2011−219807(JP,A)
【文献】 特開2010−037199(JP,A)
【文献】 特開2012−087256(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/095574(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/061266(WO,A1)
【文献】 特開2012−007247(JP,A)
【文献】 特開2012−126786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/10
A01N 59/16
A01P 3/00
A61K 8/19
A61K 8/73
A61L 2/16
A61Q 19/00
C08B 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を含有する増粘発色抗菌剤であって、
前記増粘発色抗菌剤に含まれる金属微粒子の形状が平板状であり、この平板状の金属微粒子の内部に前記セルロースナノファイバーが入り込んでいることを特徴とする増粘発色抗菌剤。
【請求項2】
前記増粘発色抗菌剤に含まれる銀の量が、セルロースナノファイバー1gに対して0.001mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項3】
前記平板状の金属微粒子の厚みが5nm以上20nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項4】
前記平板状の金属微粒子の平面方向の粒径が10nm以上300nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項5】
前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が40nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項6】
前記セルロースナノファイバーは、繊維表面にカルボキシル基が導入されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項7】
波長400nmから2500nmの領域に、分光透過スペクトルにおける吸収ピークを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項8】
前記セルロースナノファイバーが、前記平板状の金属微粒子に取り込まれて不可分な複合体を形成していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
【請求項9】
前記セルロースナノファイバーを水中に分散させてセルロースナノファイバー水分散体を得る工程と、該セルロースナノファイバー水分散体と少なくとも銀イオンを含む1種類以上の金属イオン含有水溶液とを混合することで混合溶液を得る工程と、該混合溶液中の金属イオンを還元して金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を作製する工程と、を具備することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤を含有することを特徴とするパーソナルケア製品用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにパーソナルケア製品用組成物に関し、詳しくは、増粘性、抗菌性、発色性を有し、工程管理および品質管理が容易である増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにカーボンニュートラルな環境配慮型の該複合体を用いてなるパーソナルケア製品用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアやメークアップなどを目的としたパーソナルケア製品には、水、アルコールあるいはオイル等を任意の配合で組み合わせた分散溶媒分に対し、様々な分子、粒子が添加された組成物が用いられている。これらの添加剤は、例えば増粘性、保湿性、分散安定性、皮膚などに塗布後の保形性、パーソナルケア製品の品質劣化を防ぐための防腐性および肌表面での悪臭の元となる雑菌の増殖を防ぐための抗菌性、さらには使用部位に好ましい色味を与えるための意匠性といった各種要求特性を満たすために使用される。
【0003】
増粘性、保湿性、分散安定性を付与するための添加剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースといった水溶性セルロース誘導体、ヒアルロン酸、ペクチン、カラギナン、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、キサンタンガム、カードランといった天然多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸などの合成高分子などが用いられている。しかしながら、これら水溶性高分子類は、水溶性であるがゆえに、発汗などによって塗布部の保形成が損なわれるという問題があった。さらに親水性の増粘剤はカビなどの影響を受けやすく保存安定性に問題があるため、多量の防腐剤や抗菌剤をさらに添加しなければならないという問題もある。また、これらの増粘剤は化石資源由来のものが多く、COの排出量を増加させるなど環境の面からも好ましい材料とはいえない。
【0004】
防腐剤または抗菌剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、2−フェノキシエタノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、アルカンジオール等が従来から使用されている。これらは様々な菌種に対し優れた抗菌効果を有している。その反面、これらの抗菌成分は、皮膚・粘膜などに対し一時的な刺激性を有するものが少なくない。
【0005】
近年では皮膚への刺激性を低下させる目的で、イチョウエキス、クマザサエキス、ウスバサイシンエキス、オウバクエキス、ヒノキチオール、等の天然由来成分を用いる試みも行われている。しかし、これら天然由来の抗菌成分は、充分な防菌効果を発揮するためには添加量が多くなってしまう傾向にあるため、コストの問題が生じる。さらには意図しない、発色や臭気の原因ともなるため、快適な使用感を損なうという問題があった。
【0006】
また、パーソナルケア製品、とりわけメークアップ用組成物は、一般的に所望の色調を付与する発色料、例えば顔料または染料を含有している。汎用的に用いられる発色料としては有機合成色素(タール色素)が知られているが、これらはアレルギー性を有するものがあると指摘されている。
【0007】
低刺激性の発色成分としてもアスタキサンチン、カカオ色素、カプサンチン、カロチン、クロシン、クロロフィル、コチニール、雲母、カオリンなどの天然成分も用いられているが、これらの成分はUVに暴露された際に分解し、色味が劣化する、あるいはコストが嵩むなどの問題がある。
【0008】
このように、パーソナルケア製品において従来用いられている添加剤成分には様々な課題があるだけではなく、各種添加剤を要求特性に応じていくつもの添加剤を混合して用いる必要があるため、各成分の相互作用を考慮した煩雑な工程管理・品質管理が必要となってしまうという問題があった。
【0009】
一方、近年、化石資源の枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料であるバイオマスを用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。その中でも木材の主成分であるセルロースは、地球上に最も大量に蓄積された天然高分子材料であることから、資源循環型社会への移行に向けたキーマテリアルとして期待が寄せられている。
木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性でナノメートルオーダーの繊維径をもつ微細繊維(ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。
このように安定な構造を有することから、木材に含まれる天然のセルロース繊維は、特殊な溶媒以外には不溶であり、成形性にも乏しく、機能性材料としては扱いにくい面があった。そこで、木材中のセルロース繊維を、繊維径がナノメートルオーダーになるまで微細化(ナノファイバー化)して利用しようとする試みが活発に行われている。
【0010】
木材中のセルロース繊維をナノファイバー化する手法の1つとして、セルロース繊維を、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(TEMPO)を触媒として用いて酸化(TEMPO酸化)する手法が報告されている(例えば特許文献1)。TEMPO酸化反応は、水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能で、例えば木材パルプに適用した場合、結晶構造内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つ−CHOHのみを選択的に酸化しカルボキシ基へと変換することができる。結晶表面に導入されたカルボキシ基間には静電的な反発力が働くため、TEMPO酸化後の木材パルプを水中に分散させた状態で軽微な機械処理を施すと、セルロース繊維が微細繊維単位まで微細化されたセルロースシングルナノファイバー(以下CSNFと称する)の水分散液を得ることができる。このようにして得られるCSNFは、短軸径が4nm前後と微細で、長軸径500nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有している。また、幅が4nmと可視光の波長に比べて十分小さいため、CSNFを含む分散液とその乾燥物は高透明性を有する。CSNFはその繊維表面に親水性のカルボキシル基が導入されていることから生体親和性および生体安全性が高く、また、水中ではアスペクト比の高いCSNF同士が排除体積効果によるネットワーク構造を形成するためチキソトロピック性を有することから高い増粘効果を有する。
【0011】
CSNFは前記のような特性を有し、かつカーボンニュートラルな新規バイオナノファイバーであることから、環境配慮型の新規材料としてパーソナルケアの分野で応用展開が期待される。例えば特許文献2においてCSNFを含有する化粧料組成物に関する発明が開示されている。しかしながら当該文献においてCSNFは増粘性および保形性を改善する目的のみで使用されており、発色等の意匠性に関する記述は一切ない。また、CSNFは植物性繊維であることからカビなどの雑菌が繁殖しやすく、防腐剤および抗菌剤の添加が別途必要となり、コストが嵩むという問題がある。
【0012】
一方、特許文献3において金属/CSNF複合体のナノ粒子の担持用材、およびそれを触媒として用いる例が開示されている。しかしながら当該文献には金属/CSNF複合体をパーソナルケア製品用組成物として利用すること、あるいはその可能性に関して、一切の記述も示唆も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−1728号公報
【特許文献2】特開2010−37199号公報
【特許文献3】国際公開WO2010−0395574号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、優れた増粘性、抗菌性、発色性を有し、工程管理および品質管理が容易である増粘発色抗菌剤およびその製造方法並びにカーボンニュートラルな環境配慮型の該複合体を用いてなるパーソナルケア製品用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題の解決のため鋭意検討を重ねたところ、特定の条件で銀を含む金属微粒子をCSNF水分散液中で還元析出すると、金属微粒子が平板状に成長しながらCSNFと複合体を形成し、金属微粒子の表面プラズモン共鳴のピーク波長を制御できることが判明した。この現象を利用することで、可視光領域において該複合体が任意の波長光を吸収し鮮やかな色調を呈することを突き止め、本発明に至った。すなわち、CSNFおよび銀イオンを含む水分散液中で銀イオンを還元し、銀ナノ粒子として析出させる際に、析出条件と銀イオン濃度を制御することによって、増粘性、発色性、抗菌性を有する有機無機複合体を得ることに成功した。
【0016】
すなわち、本発明は以下の項目によって規定されるものである。
【0017】
請求項1に記載の発明は、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を含有する増粘発色抗菌剤であって、前記増粘発色抗菌剤に含まれる金属微粒子の形状が平板状であり、この平板状の金属微粒子の内部に前記セルロースナノファイバーが入り込んでいることを特徴とする増粘発色抗菌剤である。
請求項2に記載の発明は、前記増粘発色抗菌剤に含まれる銀の量が、セルロースナノファイバー1gに対して0.001mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項3に記載の発明は、前記平板状の金属微粒子の厚みが5nm以上20nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項4に記載の発明は、前記平板状の金属微粒子の平面方向の粒径が10nm以上300nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項5に記載の発明は、前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が40nm以上であり、かつ数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤。
請求項6に記載の発明は、前記セルロースナノファイバーが、N−オキシル化合物を用いた酸化反応により繊維表面にカルボキシル基が導入されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項7に記載の発明は、 波長400nmから2500nmの領域に、分光透過スペクトルにおける吸収ピークを有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項8に記載の発明は、前記セルロースナノファイバーが、前記平板状の金属微粒子に取り込まれて不可分な複合体を形成していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤である。
請求項9に記載の発明は、前記セルロースナノファイバーを水中に分散させてセルロースナノファイバー水分散体を得る工程と、該セルロースナノファイバー水分散体と少なくとも銀イオンを含む1種類以上の金属イオン含有水溶液とを混合することで混合溶液を得る工程と、該混合溶液中の金属イオンを還元して金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を作製する工程と、を具備することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤の製造方法である。
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれかに記載の増粘発色抗菌剤を含有することを特徴とするパーソナルケア製品用組成物である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の増粘発色抗菌剤は、少なくとも銀を含む1種類以上の金属またはそれらの化合物からなる金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を含有しているので、優れた増粘性、抗菌性、発色性を有する。また、本発明の増粘発色抗菌剤はセルロースナノファイバーおよび銀イオンを含む混合溶液中において前記金属微粒子を還元析出することで、前記複合体を1段階反応で作成することができ、工程管理が容易である。さらに、本発明の増粘発色抗菌剤は、数多くの添加剤を必要としないので、品質管理が容易となる。また、本発明で用いられるセルロースナノファイバーはカーボンニュートラル材料であることから、環境調和型のパーソナルケア製品用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1にて作製した平板状銀/CSNF複合体のSEM観察写真である。
図2】実施例1にて作製した平板状銀/CSNF複合体のTEM観察写真である。
図3】実施例1〜4および比較例1にて作製した平板状銀/CSNF複合体あるいはCSNFの分光透過スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0021】
〔セルロースナノファイバーおよびその製造方法〕
本発明において用いるセルロースナノファイバー(以下CNFとも表記する。)は、その繊維径が以下に示す範囲内にあればよく、その調製方法については特に限定されない。すなわち短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下、より好ましくは3nm以上20nm以下である。数平均短軸径が1nm未満では高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることが出来ず、例えば皮膚上に塗布するパーソナルケア製品用組成物に添加した際に十分な増粘効果が得られない。一方、100nmを超えると、皮膚に塗布した際にざらつきを生じ滑らかな使用感が失われてしまう。また、長軸径においては、数平均長軸径は20nm以上が好ましく、40nm以上がより好ましい。数平均長軸径が20nm未満では繊維の絡み合い効果が不足し、十分な増粘効果が得られない。また、本発明の効果の向上という観点から、数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることがさらに好ましい。
【0022】
CNFの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(CNF)の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、CNFの数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維(CNF)の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
【0023】
セルロースナノファイバーの原料として用いることが出来るセルロースの種類も特に限定されず、例えば木材系天然セルロースに加えて、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロース、さらにはレーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースを用いることが出来る。材料調達の容易さから木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。
【0024】
セルロースナノファイバーの製造方法もとくに限定されないが、例えばグラインダーによる機械処理の他、TEMPOなどのN−オキシル化合物を用いた酸化処理、希酸加水分解処理、酵素処理などを機械処理と併用してセルロースナノファイバーを得る方法が知られている。また、バクテリアセルロースもセルロースナノファイバーとして用いることが出来る。さらには各種天然セルロースを各種セルロース溶剤に溶解させたのち、電解紡糸することによって得られる再生セルロースナノファイバーを用いてもよい。特に特許文献1の方法に示されるように、TEMPOをはじめとするN−オキシル化合物を用いた酸化反応では、結晶表面のセルロース分子鎖が持つグルコピラノース単位の第6位の−CHOHが高い選択性で酸化され、アルデヒド基を経てカルボキシ基に変換される。このように結晶表面に導入されたカルボキシ基を有するCNF間には静電的な反発力が働くため、水性媒体中でミクロフィブリル単位にまで分散したCSNFを得ることができる。N−オキシル化合物を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。このCSNFを用いれば十分に金属微粒子の形状を制御できることに加えて、CSNFの短軸径が4nm程度とカーボンナノチューブ並みに極細のため、分散液の透明性が高い、塗布した際の肌触りがよい、といった特徴があることから、本発明においては木材由来のCSNFを用いることが好ましい。
【0025】
前記CSNF中のカルボキシ基の含有量は、該CSNF1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下の範囲内であることが好ましく、0.5mmol以上3.0mmol以下であることがより好ましい。カルボキシ基量が0.1mmol/g以上であると、分散安定性が良好である。5.0mmol/g以下であると、CSNFの結晶構造が充分に保持され、増粘性が良好である。
【0026】
以下、木材系天然セルロースから、N−オキシル化合物を用いた酸化反応により導入されたカルボキシ基を有するCSNFの分散液を調製する方法の一例を説明する。この例の調製方法は、木材系天然セルロースを、N−オキシル化合物を用いて酸化して酸化セルロースを得る工程(酸化工程)と、該酸化セルロースを水性媒体中で微細化してCSNF分散液を調製する工程(微細化工程)とを含む。
【0027】
(酸化工程)
木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプ、など、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。その中でも、TEMPOが好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して0.01〜5.0質量%程度である。
【0028】
N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。このとき、N−オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。前記共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。前記共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。
【0029】
前記N−オキシル化合物および共酸化剤とともに、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を改善することができる。該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜50質量%程度である。
【0030】
前記酸化反応の反応温度は、4〜50℃が好ましく、10〜40℃がより好ましい。
4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。50℃を超えると副反応が促進して試料が低分子化し、増粘性の低下を引き起こす。前記酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、1〜5時間程度である。
【0031】
前記酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率よく進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。前記酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0032】
前記N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは前記の範囲内に保つことが好ましい。 添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
【0033】
酸化処理後の反応液は、そのまま微細化工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロースを回収し、洗浄液で洗浄することが好ましい。酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径のナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては蒸留水が好ましい。
【0034】
(微細化工程)
酸化セルロースを微細化する方法としてはまず、酸化セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。水性媒体としては、前記と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。必要に応じて、酸化セルロースや生成するCSNFの分散性を上げるために、懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、前記酸化工程の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。
【0035】
続いて該懸濁液に物理的解繊処理を施して、酸化セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、ボールミル、ロールミル、カッターミル、遊星ミル、ジェットミル、アトライター、グラインダー、ジューサーミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、ナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。このような物理的解繊処理を行うことで、懸濁液中の酸化セルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCNFの分散液を得ることができる。このときの物理的解繊処理の時間や回数により、得られるCSNF分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。
【0036】
上記のようにして、カルボキシル基が導入されたCSNF分散体が得られる。得られた分散体は、そのまま、または希釈、濃縮等を行って、金属微粒子を還元析出させる反応場として用いることができる。
【0037】
前記CSNF分散体は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有してもよい。該他の成分としては、特に限定されず、該木材CSNFの用途等に応じて、公知の添加剤のなかから適宜選択できる。具体的には、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物、無機層状化合物、無機針状鉱物、消泡剤、無機系粒子、有機系粒子、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉、等が挙げられる。
【0038】
続いて、金属微粒子とセルロースナノファイバーとの複合体を作製する工程について説明する。なお、下記の説明では金属微粒子として銀を用い、平板状の銀微粒子(平板状銀ナノ粒子)とセルロースナノファイバーとの複合体を作製する形態を説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0039】
(平板状銀ナノ粒子とCSNFを複合化する工程)
平板状銀ナノ粒子は形状制御により可視光線から近赤外光線にわたる任意の波長光を吸収することが可能であり、各種組成物の用途に合わせて所望の色調を容易に付与することができる。また、銀そのものが多菌種に対し抗菌性を有しながらも人体に対し不活性であることから、保存性、安全性の良好な組成物を得ることができる。析出した平板状銀ナノ粒子の周りを、銀より貴な金属あるいは金属酸化物で被覆して、平板状銀ナノ粒子の安定性を向上させても良い。銀以外の金属種としては特に限定しないが、例えば、白金やパラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、金、銀、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、金属塩、金属錯体およびこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が挙げられる。もちろん、銀を単独で用いてもよい。前記CSNF分散液中に金属微粒子を析出させ複合体を製造する方法としては、特に限定しないが、少なくとも銀を含む前記金属またはその合金、酸化物、複酸化物等の溶液とCSNF分散液を混合した状態で、還元剤を添加すれば容易に平板状銀ナノ粒子を析出させることができる。銀の場合、還元を行う際に用いる銀イオンを含む水溶液の種類には特に制限は無いが、入手の容易さと取り扱い易さの点から硝酸銀水溶液が好ましい。用いる還元剤に関しても特に限定しない。例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、ヒドラジン、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸、クエン酸、ヒドロキノン等が用いられる。安全性や汎用性の点から水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。
【0040】
平板状銀ナノ粒子とCSNFを複合化する工程に用いる溶媒は、50質量%以上の水を含み、水以外の溶媒としては親水性溶媒が好ましい。水の割合が50質量%未満になるとCSNFの分散が阻害され、平板状銀ナノ粒子とCSNFの均一な複合体形成が難しくなる。親水性溶媒については特に制限は無いが、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が好ましい。
【0041】
調製に用いるCSNFの分散液の濃度は特に限定しないが、0.1質量%以上5質量%未満が好ましい。0.1質量%未満では増粘性などの各種要求特性を満たすための組成物としては溶媒過多となってしまう上に金属ナノ粒子の形状制御効果が不十分となり、5質量%以上ではCSNF同士の絡み合いで粘度が上昇し、均一な攪拌が難しくなる。同様に前記CSNF分散液に添加する銀イオン濃度も限定しないが、分散液中の銀イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシル基量未満となるように調製することが好ましい。分散液中の銀イオン量がCSNF表面に存在するカルボキシル基量を上回ってしまうとCSNFが凝集してしまうためである。銀イオンの濃度は析出する平板状銀とCSNFとの複合体(平板状銀/CSNF複合体)の厚みや平板方向の粒径に影響する。該平板状銀/CSNF複合体が有する光学特性は厚みと粒径の比によって決定するため、発色剤としての用途に用いる場合、所望の色調を付与するためには、銀イオン濃度条件を適宜設定する必要がある。銀イオン濃度と析出する金属ナノ粒子の形状との関係について、理論的なメカニズムは不明だが、一般的に数nmから数十nmの球状銀ナノ粒子は表面プラズモン効果により400nm付近に分光スペクトルの吸収ピークを有するが、ナノ粒子が平板状に成長した場合、厚みに対する平板方向の粒径の比が大きくなるほど、吸収ピークが長波長領域にシフトすることが知られている。平板状の銀/CSNF複合体の具体的な作製法については実施例にて詳細を記した。
【0042】
なお一般的に、良好な発色性、例えば波長400nmから2500nmの領域に分光透過スペクトルにおける吸収ピークを有するように、平板状銀ナノ粒子を析出させるためには、製造される増粘発色抗菌剤における銀の量が、セルロースナノファイバー1gに対して0.0005mmol以上0.4mmol以下の範囲にあることが好ましく、0.001mmol以上0.2mmol以下の範囲にあることがさらに好ましく、0.002mmol以上0.1mmol以下の範囲にあることがとくに好ましい。
【0043】
こうして得られた前記平板状銀/CSNF複合体の分散液は増粘性、保形成、抗菌性、意匠性に優れており、該複合体を添加剤として用いれば、工程管理および品質管理が容易な、カーボンニュートラル環境配慮型パーソナルケア製品として産業上の利用が可能となる。
なお、パーソナルケア製品としては、シャンプー、リンス、コンディショナー、セッケン、浴用製品、消臭剤、ボディクリーム、ボディソープなどのボディケア製品、フェースケア製品、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどのフレグランス製品、ならびに衛生および美容製品などの化粧品が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。
【0045】
<実施例1>
(木材セルロースのTEMPO酸化)
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。セルロースの質量に対して、水酸化ナトリウムが3.00mmol/gになった時点で、過剰量のエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。
【0046】
(酸化パルプのカルボキシル基量測定)
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシル基量(mmol/g)を求めた。結果は1.6mmol/gであった。
【0047】
(酸化パルプの解繊処理)
前記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF水分散液を得た。該CSNF水分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は4nm、数平均長軸径は1110nmであった。また、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行ったところ、該CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。
【0048】
(硝酸銀水溶液の調製)
硝酸銀50mgを蒸留水10mLに溶解させ、硝酸銀水溶液を調製した。
【0049】
(水素化ホウ素ナトリウム水溶液の調製)
水素化ホウ素ナトリウム50mgを蒸留水10mLに溶解させ、水素化ホウ素ナトリウム水溶液を調製した。
【0050】
(平板状銀/CSNF複合体の作製)
前記1%CSNF水分散液50gに対し、前記硝酸銀水溶液0.6gを室温(25℃)で攪拌しながら添加した。30分攪拌を続けたのち、前記水素化ホウ素ナトリウム水溶液を添加して平板状銀/CSNF複合体を作製した。
【0051】
(平板状銀/CSNF複合体の形状観察)
前記平板状銀/CSNF複合体をシリコンウェハ板上にキャストし、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク社製、S−4800)を用いて垂直方向から観察した結果を図1に示す。画像中の平板状銀ナノ粒子を、円で近似した際の径を、平面方向の粒径として算出した。
【0052】
前記平板状銀/CSNF複合体をPETフィルム上にキャストし、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM2100F)を用いて断面方向から観察した結果を図2に示す。画像から厚みを算出した。
【0053】
〔銀/木材CSNF複合体を含む積層体の分光吸収スペクトル測定〕
前記平板状銀/CSNF複合体を含む分散液を石英セルに入れ、分光光度計(島津製作所社製、UV−3600)を用いて分光スペクトルの測定を行った結果を表1および図3に示した。
【0054】
(抗菌性の評価)
クロコウジカビ(Aspergillus niger)、アオカビ(Penicillium citrinum)、クロカビ(Cladosporium cladosporioides)の混合菌10 個を、前記銀/木材CSNF複合体の分散液に植菌して37℃ にて培養した。10日後の時点で生菌数を測定し、菌数がゼロとなったものを「〇」、ゼロとならなかったものを「×」とした。試験結果は表1に示した。
【0055】
<実施例2>
実施例1において、前記硝酸銀水溶液の添加量を0.4gとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/CSNF複合体を作成し、得られた該平板状銀/CSNF複合体の電子顕微鏡観察、分光吸収スペクトル測定および抗菌性の評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0056】
<実施例3>
実施例1において、前記硝酸銀水溶液の添加量を0.2gとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/CSNF複合体を作成し、得られた該銀/CSNF複合体の電子顕微鏡観察、分光吸収スペクトル測定および抗菌性の評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0057】
<実施例4>
実施例1において、前記硝酸銀水溶液の添加量を0.8gとした以外は、実施例1と同様の条件で平板状銀/CSNF複合体を作成し、得られた該平板状銀/CSNF複合体の電子顕微鏡観察、分光吸収スペクトル測定および抗菌性の評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0058】
<比較例1>
実施例1において、前記硝酸銀水溶液の添加を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で処理を行い、得られたCSNF分散体の電子顕微鏡観察、分光吸収スペクトル測定および抗菌性の評価を実施例1と同様の方法で行った。
【0059】
【表1】
【0060】
図1の結果から、平板状銀ナノ粒子にCSNFが結合していることが確認された。平板状銀ナノ粒子部分の元素分析を行ったところ、相当量のカーボンに由来するシグナルが得られたことから、CSNFは平板状銀ナノ粒子の内部にまで入り込んで複合体を形成しており、平板状銀ナノ粒子とCSNFは不可分であることが示された。また、図2の結果から、断面方向から見た平板状銀の形状は長方形で、短軸方向の長さは約10nmであったことから、該平板状銀は厚さ10nm程度の平板状粒子であることが判明した。また、厚みに関しては実施例1〜4のどの試料においても約10nm程度であったが、平面方向の粒径は実施例ごとに違い、実施例1が60〜100nm程度、実施例2および実施例4が40〜60nm程度、実施例3が20〜30nm程度であった。以上をまとめると、本発明において作製された平板状銀/CSNF複合体は、厚さ10nm程度の平板状銀ナノ粒子の内部にCSNFが入り込んで複合化している新規物質であることが確認された。
【0061】
図3の結果から、硝酸銀水溶液の添加量によって平板状銀/CSNF複合体の平面方向の粒径が変化し、平面方向の粒径が大きくなるほど共振ピーク波長は長波長側にシフトする傾向が見られた。また、比較例1の結果から、銀との複合化を行わない場合に発色は見られず、抗菌性も得られなかった。また、実施例1から4で得られた平板状銀/CSNF複合体および比較例1で得られたCSNF分散液に対し、レオメーターを用いて定常粘弾性測定行ったところ、各試料ともチキソトロピック性を示し、粘弾性特性についての差異は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によればカーボンニュートラル材料を用いた低環境負荷且つ簡便なプロセスにより平板状銀/CSNF複合体の形成が可能となる。さらに、該複合体は調製工程において銀イオン濃度を変化させることによって、様々な発色と抗菌性を同時に達成するチキソトロピック性分散体であり、増粘発色抗菌剤として好適に用いることができる。該増粘発色抗菌剤を用いれば、例えば工程管理および品質管理がしやすく、カーボンニュートラルな環境配慮型パーソナルケア製品用組成物を提供するこが可能となり、さらには衣服材料、光学材料、医療用部材などへの応用も考えられ、様々な分野への波及効果が期待できる。
図1
図2
図3