【実施例】
【0018】
(システム構成;
図1)
図1に示す自動販売機設定システム2は、自動販売機4と、携帯端末30と、PC60と、サーバ80を備える。自動販売機設定システム2は、自動販売機4に初期情報(例えば、IPアドレス等)を設定するためのシステムである。
【0019】
自動販売機4には、電子マネー決済に対応可能な支払端末10が搭載されている。支払端末10は、操作部12と、表示部14と、制御部16と、無線インターフェース(I/F)18と、NFC(Near Field Communication)インターフェース(I/F)20と、メモリ22を備える。
図1では、自動販売機4を1台のみ図示しているが、実際は、自動販売機4は複数台備えられている。
【0020】
操作部12は、複数のキーを備える。自動販売機4の利用者(例えば、自動販売機4の管理者など)は、操作部12を操作して、支払端末10に様々な情報を入力することができる。表示部14は、様々な情報を表示する。
【0021】
制御部16は、メモリ22内のプログラムに従って様々な処理を実行する。制御部16が実行する処理の内容は後で詳しく説明する。
【0022】
無線I/F18は、インターネット6と無線接続するためのインターフェースである。インターネット6には、サーバ80が接続されている。そのため、支払端末10は、無線I/F18及びインターネット6を介して、サーバ80と無線で通信を行うことができる。
【0023】
NFCI/F20は、電子マネーを利用可能なICカードや携帯端末30等との間でNFC通信(近距離無線通信)を実行するためのインターフェースである。以下では、ICカードや携帯端末30等の、支払端末10との間でNFC通信を実行可能な媒体及び機器のことを「NFC機器」と呼ぶ場合がある。
【0024】
メモリ22は、様々なプログラムを記憶している。また、メモリ22は、支払端末10に固有の識別情報(例えば、MACアドレス)24を記憶している。本実施例では、支払端末10に固有の識別情報24は、支払端末10のMACアドレスである。また、他の例では、識別情報24は、支払端末10の製造番号であってもよい。さらに、メモリ22は、初期情報(例えば、後述のIPアドレス、設置場所情報、ネガデータ等)を記憶するための領域を有している。
【0025】
携帯端末30は、例えば自動販売機の初期設定を行う作業者によって携帯される。携帯端末30は、操作部32と、表示部34と、制御部36と、NFCI/F38と、メモリ40を備える。
図1では、携帯端末30を1台のみ図示しているが、携帯端末30は、複数台備えられていてもよい。
【0026】
操作部32は、複数のキーを備える。携帯端末30の利用者(例えば、作業者)は、操作部32を操作して、携帯端末30に様々な情報を入力することができる。表示部34は、様々な情報(例えば、メモリ40内の識別情報42及び初期情報44など)を表示する。
【0027】
制御部36は、メモリ内のプログラムに従って様々な処理を実行する。制御部36が実行する処理の内容は後で詳しく説明する。
【0028】
NFCI/F38は、支払端末10及びPC60とNFC通信を実行するためのインターフェースである。
【0029】
メモリ40は、様々なプログラムを記憶している。また、メモリ22は、複数の自動販売機4のそれぞれについて、当該自動販売機4の支払端末10に固有の識別情報42と、当該自動販売機4の支払端末10に設定されるべき初期情報44とを対応付けて記憶している。本実施例では、識別情報42は、各支払端末10のMACアドレスである。他の例では、初期情報44は、各支払端末10の製造番号であってもよい。本実施例では、初期情報44は、各支払端末10に設定されるIPアドレス、各自動販売機4の設置場所を示す設置場所情報、ネガデータ等を含む。ネガデータとは、決済処理を許可しないICカード(いわゆるブラックリストに登録されているICカードや、紛失扱いのICカード)のIDデータである。
【0030】
PC60は、携帯端末30のメモリ40に記憶させる識別情報と初期情報を管理する。PC60は、複数の自動販売機4のそれぞれについて、当該自動販売機4の支払端末10に固有の識別情報42と、当該自動販売機4の支払端末10に設定されるべき初期情報44とを対応付けて記憶している。PC60は、携帯端末30とNFC通信を実行することにより、識別情報42と初期情報44とを携帯端末30に送信する。携帯端末30の制御部36は、識別情報42と初期情報44を受信すると、受信した識別情報42と初期情報44をメモリ40に記憶させる。
【0031】
サーバ80は、インターネット6に接続されている。サーバ80は、インターネット6を介して支払端末10と無線通信を行うことにより、支払端末との間で様々な情報(例えば、自動販売機4の販売実績情報等)を送受信することができる。
【0032】
続いて、
図2、
図3を参照して、支払端末10の制御部16が実行する処理(設定処理)、及び、携帯端末30の制御部36が実行する処理(初期情報送信処理、情報表示処理)について説明する。
【0033】
(支払端末10の制御部16が実行する設定処理;
図2)
図2の設定処理は、初期設定が行われていない自動販売機4が新たに設置され、その自動販売機4の電源がONされた場合に行われる。自動販売機4の電源がONされると、支払端末10に電力が供給され、
図2の設定処理が開始される。S10では、制御部16は、NFC機器との間でNFC通信が確立することを監視する。例えば、携帯端末30の使用者(作業者)が携帯端末30を支払端末10に近づけると、携帯端末30のNFCI/F38と支払端末10のNFCI/F20とが互いに通信可能な距離(例えば10cm未満)まで近づく。これによって、支払端末10と携帯端末30との間で、NFCI/F20、38を介してNFC通信が確立する。この場合、制御部16は、S10でYESと判断し、S12に進む。
【0034】
S12では、制御部16は、確立したNFC通信を利用して、メモリ22内の識別情報24(即ち、支払端末10の識別情報)を通信相手のNFC機器に送信する。送信された識別情報24は、後述するように携帯端末30によって受信される。
【0035】
次いで、S14では、制御部16は、所定時間内に支払端末10に設定されるべき初期情報を受信することを監視する。後で説明するように、携帯端末30は、上記の識別情報24を受信すると、メモリ40内から、識別情報24と同一の識別情報に対応付けられている初期情報を支払端末10に送信する(
図3のS36参照)。携帯端末30から送信される初期情報は、支払端末10の制御部16に、NFCI/F20を介して受信される。この場合、制御部16は、S14でYESと判断し、S16に進む。一方、携帯端末30が識別情報24と同一の識別情報に対応付けられている初期情報を特定できない場合、携帯端末30は、エラー情報を支払端末10に送信する(
図3のS38参照)。この場合(すなわち、支払端末10がエラー情報を受信した場合)、制御部16は、S14でNOと判断し、S16をスキップしてS18に進む。また、支払端末10のNFC通信の通信相手が携帯端末30以外のNFC機器(例えば、ICカード)である場合、NFC機器は、支払端末10に対して、初期情報とエラー情報のいずれも送信できない。この場合は、S14の監視処理がタイムアウトとなり、制御部16は、S14でNOと判断し、S18に進む。
【0036】
S16では、制御部16は、受信された初期情報をメモリ22に記憶させる。これによって、支払端末10に初期情報が設定される。この結果、制御部16は、無線I/F18とインターネット6を介して、サーバ80との間で様々な情報を送受信することができる。
【0037】
次いで、S18では、制御部16は、メモリ22に初期情報が記憶されたか否かを表す結果を表示部14に表示させる。S16でメモリ22に初期情報が記憶された場合、S18では、制御部16は、メモリ22に初期情報が記憶されたことを示す結果(設定成功)を表示部14に表示させる。一方、通信相手から初期情報を受信できなかった場合(S14でNO)のように、メモリ22に初期情報が記憶されなかった場合、S18では、制御部16は、メモリ22に初期情報が記憶されなかったことを示す結果(設定失敗)を表示部14に表示させる。従って、本実施例の自動販売機設定システムの利用者は、支払端末10の表示部14を見ることによって、初期情報がメモリ22に記憶されたか否かの結果を知ることができる。
【0038】
次いで、S20では、制御部16は、確立したNFC通信を利用して、メモリ22に初期情報が記憶されたか否かの結果を示す結果情報を、通信相手のNFC機器に送信する。後で説明するように、例えば、通信相手が携帯端末30である場合、携帯端末30は、結果情報を受信する。携帯端末30は、上記の結果情報を受信すると、受信した結果情報に従って、結果(設定成功又は設定失敗)を表示部34に表示させる。S20を終えると、制御部16は、
図2の設定処理を終了する。
【0039】
(携帯端末30の制御部36が実行する初期情報送信処理;
図3)
図3の初期情報送信処理は、携帯端末30の使用者(作業者)が、新たに設置された自動販売機4の初期設定を行う場合に行われる。携帯端末30の使用者が、操作部32を操作して、所定の設定開始操作を入力すると、制御部36は、S30の監視を開始する。
【0040】
S30では、制御部36は、支払端末10との間でNFC通信が確立することを監視する。携帯端末30の使用者が、携帯端末30を支払端末10に近づけると、携帯端末30のNFCI/F38と支払端末10のNFCI/F20とが互いに通信可能な距離(例えば10cm未満)まで近づく。これによって、支払端末10と携帯端末30との間で、NFCI/F20、38を介してNFC通信が確立する。この場合、制御部36は、S30でYESと判断し、S32に進む。
【0041】
S32では、制御部36は、確立したNFC通信を利用して、支払端末10から送信される、支払端末10の識別情報24(
図2のS12参照)を受信する。
【0042】
次いで、S34では、制御部36は、S32で受信された識別情報24に対応する初期情報を特定できたか否かを判断する。具体的には、制御部36は、メモリ40内から、識別情報24と同一の識別情報を特定し、その識別情報と対応付けられている初期情報を特定する。メモリ40内に、識別情報24と同一の識別情報が存在する場合、制御部36は、メモリ40内から、識別情報24に対応する初期情報を特定することができる。この場合、制御部36は、S34でYESと判断し、S36に進む。S36では、制御部36は、特定された初期情報を支払端末10に送信する。S36を終えると、S40に進む。一方、メモリ40内に、識別情報24と同一の識別情報が存在しない場合、制御部36は、メモリ40内から、識別情報24に対応する初期情報を特定できない。この場合、制御部36は、S34でNOと判断し、S38に進む。S38では、制御部36は、エラー情報を支払端末10に送信する。S38を終えると、S40に進む。
【0043】
S40では、制御部36は、支払端末10から、結果情報(
図2のS20参照)を受信する。次いで、制御部36は、結果情報に従って、メモリ22に初期情報が記憶されたか否かの結果(設定成功又は設定失敗)を表示部34に表示させる。自動販売機設定システム2の利用者は、携帯端末30の表示部34を見ることによって、初期情報が支払端末10のメモリ22に記憶されたか否かの結果を知ることができる。S42を終えると、制御部36は、
図3の初期情報送信処理を終了する。
【0044】
(携帯端末30の制御部36が実行する情報表示処理)
図示しないが、情報表示処理は、携帯端末30の使用者(作業者)が、操作部32を操作して、所定の情報表示操作を入力する場合に行われる。情報表示操作が入力されると、制御部36は、メモリ40内に記憶されている複数の識別情報42と複数の初期情報44の内容を表示部34に表示させる。携帯端末30の使用者は、携帯端末30の表示部34を見ることによって、メモリ40に記憶されている複数の識別情報42と複数の初期情報44の内容を確認することができる。
【0045】
(具体例;
図4)
図4を参照して、本実施例の自動販売機設定システム2において、支払端末10に初期情報を設定する場合における各端末の動作について説明する。携帯端末30の使用者が、携帯端末30を支払端末10に近づけると、携帯端末30のNFCI/F38と支払端末10のNFCI/F20とが互いに通信可能な距離(例えば10cm未満)まで近づく。これによって、支払端末10と携帯端末30との間でNFC通信が確立する(
図2のS10でYES、
図3のS30でYES)。
【0046】
NFC通信が確立すると、支払端末10は、NFC通信を利用して、支払端末10の識別情報を携帯端末30に送信する(
図2のS12)。携帯端末30は、支払端末10の識別情報を受信する(
図3のS32)。次いで、携帯端末30は、メモリ40内から、支払端末10の識別情報に対応する初期情報を特定する。
【0047】
携帯端末30は、メモリ40内から、支払端末10の識別情報に対応する初期情報を特定すると(
図3のS34でYES)、特定された初期情報(IPアドレス、設定場所情報、ネガデータ等)を、NFC通信を利用して、支払端末10に送信する(
図3のS36)。
【0048】
支払端末10は、初期情報を受信する(
図2のS14でYES)と、初期情報をメモリ22に記憶させる(
図2のS16)。支払端末10は、初期情報がメモリ22に記憶されたことを示す結果(設定成功)を、表示部14に表示させる(
図2のS18)。その後、支払端末10は、NFC通信を利用して、設定成功を示す結果情報を携帯端末30に送信する(
図2のS20)。
【0049】
携帯端末30は、結果情報を受信する(
図3のS40)と、結果情報に従って、初期情報がメモリ22に記憶されたことを示す結果(設定成功)を表示部34に表示させる(
図3のS42)。
【0050】
一方、携帯端末30が、メモリ40内から、支払端末10から受信した識別情報と同一の識別情報を特定できない場合には、携帯端末30は、支払端末10に設定されるべき初期情報を特定することができない(
図3のS34でNO)。この場合、携帯端末30は、エラー情報を、NFC通信を利用して、支払端末10に送信する(
図3のS38)。
【0051】
支払端末10は、エラー情報を受信する(
図2のS14でNO)と、初期情報がメモリ22に記憶されなかったことを示す結果(設定失敗)を、表示部14に表示させる(
図2のS18)。その後、支払端末10は、NFC通信を利用して、設定失敗を示す結果情報を携帯端末30に送信する(
図2のS20)。
【0052】
携帯端末30は、結果情報を受信する(
図3のS40)と、結果情報に従って、初期情報がメモリ22に記憶されなかったことを示す結果(設定失敗)を表示部34に表示させる(
図3のS42)。
【0053】
以上、本実施例の自動販売機設定システム2について説明した。上記の通り、本実施例では、支払端末10は、携帯端末30との間でNFC通信を確立すると、自身の識別情報を携帯端末30に送信する(
図2のS12)。携帯端末30は、支払端末10から識別情報を受信すると、メモリ40から、その識別情報に対応する初期情報を特定し、特定した初期情報を支払端末10に送信する(
図3のS36)。支払端末10は、携帯端末30から初期情報を受信すると、その受信した初期情報をメモリ22に記憶させる。これによって、支払端末10は、自身の識別情報に対応した初期情報を適切にメモリ22に記憶させることができる。本実施例では、携帯端末30に複数の識別情報42と複数の初期情報44を対応付けて記憶することで、携帯端末30の使用者(作業員)が携帯端末30に情報を入力する必要がなくなり、支払端末10に誤った初期情報が設定されることを抑制することができる。
【0054】
また、本実施例の自動販売機設定システム2では、支払端末10と携帯端末30との間は、NFC通信で接続される。この構成によると、ネットワークを利用してパケット通信を行う方式等の他の通信方式とは異なり、支払端末10と携帯端末30との間の通信に通信費用が必要とならない。また、支払端末10と携帯端末30とが、既存のNFCI/Fを利用してNFC通信を行うことができるため、支払端末10と携帯端末30との間で通信を行うための特別な設備も必要ない。
【0055】
本実施例の構成と請求項の記載との対応関係を記載しておく。支払端末10のメモリ22、携帯端末30のメモリ40が、それぞれ、「第1のメモリ」、「第2のメモリ」の一例である。支払端末の制御部16、携帯端末30の制御部36が、それぞれ、「第1の制御部」、「第2の制御部」の一例である。
【0056】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を含んでもよい。
【0057】
(変形例1) 上記の実施例では、携帯端末30の制御部36は、PC60とNFC通信を行うことにより、PC60から複数の識別情報42と複数の初期情報44とを受信し、受信した複数の識別情報42と複数の初期情報44をメモリ40に記憶させている。メモリ40に複数の識別情報42と複数の初期情報44を記憶させるための手法はこれには限られず、任意とすることができる。例えば、予め複数の識別情報42と複数の初期情報44を記憶させておいた外部記憶媒体を携帯端末30に接続し、携帯端末30の制御部36が外部記憶媒体から複数の識別情報42と複数の初期情報44を読み出してメモリ40に記憶させてもよい。
【0058】
(変形例2) 上記の実施例では、支払端末10と携帯端末30との間は、NFC通信で接続される。これには限られず、支払端末10と携帯端末30は、例えば、有線接続等、任意の通信方法で接続されてもよい。一般的に言うと、自動販売機と携帯端末とが通信可能であればよい。
【0059】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。