特許第6248522号(P6248522)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6248522-有機エレクトロルミネッセンス表示装置 図000002
  • 特許6248522-有機エレクトロルミネッセンス表示装置 図000003
  • 特許6248522-有機エレクトロルミネッセンス表示装置 図000004
  • 特許6248522-有機エレクトロルミネッセンス表示装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248522
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20171211BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171211BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20171211BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20171211BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20171211BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20171211BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   H05B33/28
   H05B33/26 Z
   H05B33/12 E
   H05B33/12 B
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-208476(P2013-208476)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-72827(P2015-72827A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公貴
(72)【発明者】
【氏名】坂田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋
(72)【発明者】
【氏名】古川 正
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−122520(JP,A)
【文献】 特開2010−123450(JP,A)
【文献】 特開2003−282259(JP,A)
【文献】 特開2014−107266(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0124045(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0124044(US,A1)
【文献】 特開2003−234186(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0107314(US,A1)
【文献】 特開2000−089215(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0202613(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0145159(US,A1)
【文献】 特開2009−104969(JP,A)
【文献】 特開2011−053339(JP,A)
【文献】 特開2011−158537(JP,A)
【文献】 特開2013−101234(JP,A)
【文献】 特開平07−181316(JP,A)
【文献】 特開2003−215599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/12
H05B 33/26
H05B 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に、背面電極層、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層、透明電極層および遮光部がこの順で配置された有機エレクトロルミネッセンス素子を有する有機エレクトロルミネッセンス素子基板と、
透明基板上に、複数色の着色層および前記複数色の着色層間に配置された画素間遮光部を有するカラーフィルタ層と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子基板および前記カラーフィルタ層の間に、前記遮光部を覆うように配置される樹脂接着層と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記遮光部が平面視上において、前記画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置され
前記遮光部が、前記有機エレクトロルミネッセンス層からの光を少なくとも反射する反射型遮光部であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
支持基板上に、背面電極層、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス層、透明電極層および遮光部がこの順で配置された有機エレクトロルミネッセンス素子を有する有機エレクトロルミネッセンス素子基板と、
透明基板上に、複数色の着色層および前記複数色の着色層間に配置された画素間遮光部を有するカラーフィルタ層と、
前記有機エレクトロルミネッセンス素子基板および前記カラーフィルタ層の間に、前記遮光部を覆うように配置される樹脂接着層と、
を有する有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記遮光部が平面視上において、前記画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置され
前記遮光部が、前記有機エレクトロルミネッセンス層からの光のうち、隣接する前記画素部における前記着色層の色の波長光以外の光を遮光する波長選択型遮光部であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接画素への光漏れによる視差混色を抑制し、且つ高い光取り出し効率を得ることが可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス表示装置は、自己発色により視認性が高いこと、液晶表示装置と異なり全固体ディスプレイであるため耐衝撃性に優れていること、応答速度が速いこと、温度変化による影響が少ないこと、および視野角が大きいこと等の利点を有することから注目されており、液晶表示装置やプラズマディスプレイに続くフラットパネルディスプレイとして、研究開発、商品化が進められている。なお、以下、エレクトロルミネッセンスをELと略す場合がある。
【0003】
有機EL表示装置のフルカラー化には、大別して、三色塗り分け方式と色変換方式とカラーフィルタ方式とがある。三色塗り分け方式は赤、緑、青の三色の発光層を用いる方法であり、色変換方式は青色発光層を用いて色変換層を組み合わせる方法であり、カラーフィルタ方式は白色発光層を用いてカラーフィルタを組み合わせる方法である。また、三色塗り分け方式では、色純度を高めるためにカラーフィルタを併用する場合がある。
【0004】
カラーフィルタを用いた有機EL表示装置において、カラーフィルタでは画素毎に着色層を配置し、有機EL素子では画素毎に発光層を配置し、画素毎にTFT素子により制御駆動している。このような有機EL表示装置においては、通常、カラーフィルタと有機EL素子との間に間隔を有することから、ある画素領域の発光層からの光が隣接する画素領域の着色層に直接入射する、あるいは、その画素領域の着色層を透過して隣接する画素領域の着色層に入射するというような隣接画素への光漏れが生じ、これが原因で見る方向によって表示画像の色ずれ、いわゆる視差混色が発生していた。これは有機EL素子から放射される光に指向性がないためであり、視野角特性に劣るという問題があった。
ここで、一般にカラーフィルタにおいては、画素を画定するために着色層間に遮光部位(以下、画素間遮光部とする。)が形成されている。そのため、ある画素領域の発光層からの光が、その画素領域の着色層を透過して隣接する画素領域の着色層に入射する場合には、着色層間に位置する画素間遮光部で吸収もしくは反射されるか、あるいは2つの着色層を透過する際に吸収されるので、ほとんどの光が出射されずに吸収される。したがって、特に、ある画素領域の発光層からの光が漏れ光として隣接する画素領域の着色層に直接入射することが、表示画像の視差混色に大きく影響している。
【0005】
上述の隣接画素への光漏れを防止する方法として、例えば、カラーフィルタにおいて、斜め光による混色を防止するために、画素間遮光部としてブラックマトリクスを隣り合うカラーフィルタ間に介在させるとともに、高さをカラーフィルタに比べて高くする方法が開示されている(特許文献1参照)。なお、特許文献1は、液晶表示装置における混色防止方法に関するものである。
ここで、一般に、ブラックマトリクスは十分な遮光性を有するものであり、またフォトリソグラフィ法により形成されるものである。しかしながら、カラーフィルタに比べて高さが高いブラックマトリクスの場合には、遮光性がありしかも厚膜であるために、露光光が膜の深部まで到達することができず、パターニングが非常に困難であった。そのため、上述の方法以外の光漏れの防止方法についての検討が進められてきた。
【0006】
隣接画素への光漏れを防止する他の方法としては、例えば、カラーフィルタの画素間遮光部の線幅を大きくする方法がある。この方法では、上述のように画素間遮光部を厚膜に形成する必要がないため、容易にパターニングが可能となる。しかしこの場合、画素開口率が低下するため有機EL表示装置のエネルギー効率が低下するという問題があった。また、近年ではディスプレイの高精細化、高品質化の要求に伴い、画素サイズの縮小、画素間遮光部の線幅の縮小が進められており、当該方法はこれらの要求に反するものである。
【0007】
一方、有機EL素子側においては、画素領域毎に有機EL素子の線幅を着色層の線幅よりも小さくする方法が検討されている。これは、有機EL素子における発光層の線幅に応じて光の照射範囲も狭くなることから、カラーフィルタ側の画素間遮光部が細幅であっても隣接する画素領域に漏れ光が入射しにくくなり、その結果、視差混色の発生が抑制されるものである。しかしこの場合、有機EL素子の背面電極層において反射した光が隣接する画素領域に入射することで、視野角特性の改善に対して十分な効果が得られないという問題があった。また、有機EL素子の縮小化により発光量が相対的に減少するため輝度の低下が生じ、さらに所望の輝度を確保するために大きな消費電力が必要となることから、有機EL素子の発光寿命が短命化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−72513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、隣接画素への光漏れによる視差混色を抑制し、且つ高い光取り出し効率を得ることが可能な有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、支持基板上に、背面電極層、少なくとも発光層を有する有機EL層、透明電極層および遮光部がこの順で配置された有機EL素子を有する有機EL素子基板と、透明基板上に、複数色の着色層および上記複数色の着色層間に配置された画素間遮光部を有するカラーフィルタ層と、上記有機EL素子基板および上記カラーフィルタ層の間に配置される樹脂接着層と、を有する有機EL表示装置であって、上記遮光部が平面視上において、上記画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置されることを特徴とする有機EL表示装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、透明電極層上に配置される遮光部が、平面視上において画素部の外周の内側に配置されることにより、隣接画素への漏れ光を遮光するだけでなく、有機EL層の上記遮光部と平面視上重なる領域において発光した光を、対応する画素部の発光に利用することができる。これにより、有機EL表示装置の視差混色の発生を防ぎつつ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0012】
上記発明においては、上記遮光部が、上記有機EL層からの光を少なくとも吸収する吸収型遮光部であることが好ましい。隣接画素への漏れ光が吸収型遮光部において十分に吸収され、視差混色の発生を防ぐことができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記遮光部が、上記有機EL層からの光を少なくとも反射する反射型遮光部であることが好ましい。反射型遮光部とすることにより、有機EL層からの光を反射型遮光部の底面または側面において反射し、その反射光を当該有機EL層に対応する画素部の発光に利用できるため、漏れ光の隣接画素への入射および視差混色の発生を防ぐだけでなく、発光量および光取り出し効率をさらに向上させることができるからである。
【0014】
上記発明においては、上記遮光部が、上記有機EL層からの光のうち、隣接する上記画素部における上記着色層の色の波長光以外の光を遮光する波長選択型遮光部であることが好ましい。波長選択型遮光部とすることにより、有機EL層からの光のうち、隣接画素における着色層の色の波長光のみが透過され、それ以外の波長光が遮光されるため、隣接画素領域において視差混色が生じにくくなる上、当該隣接画素領域における光取り出し効率の向上も図ることが可能となるからである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、透明電極層上に配置される遮光部が、平面視上において画素部の外周の内側に少なく配置されることにより、隣接画素への光漏れによる視差混色を抑制すると共に、高い光取り出し効率が得られることから、有機EL素子の低消費電力化および長寿命化が実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の有機EL表示装置の他の例を示す分解斜視図および概略平面図である。
図3】本発明における遮光部の機能を説明するための説明図である。
図4】本発明の有機EL表示装置の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の有機EL表示装置について詳細に説明する。
【0018】
本発明の有機EL表示装置は、支持基板上に、背面電極層、少なくとも発光層を有する有機EL層、透明電極層および遮光部がこの順で配置された有機EL素子を有する有機EL素子基板と、透明基板上に、複数色の着色層および上記複数色の着色層間に配置された画素間遮光部を有するカラーフィルタ層と、上記有機EL素子基板および上記カラーフィルタ層の間に配置される樹脂接着層と、を有するものであって、上記遮光部が平面視上において、上記画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置されることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の有機EL表示装置について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、有機EL表示装置10は、有機EL素子基板1とカラーフィルタ層11とが樹脂接着層21を介して配置されたものである。有機EL素子基板1は支持基板2上に有機EL素子3として、背面電極層4、少なくとも発光層を含む有機EL層5、透明電極層6、および遮光部7を有しており、隣り合う有機EL素子3間には未発光エリア8を有する。未発光エリア8には通常、TFT素子、絶縁層等が設けられる。一方、カラーフィルタ層11は、透明基板12上に赤色着色層14R、緑色着色層14Gおよび青色着色層14Bが配列された着色層14と、各色着色層14間に配置され、画素部Pおよび画素領域Qを画定する画素間遮光部13とを有する。
本発明の有機EL表示装置10において、透明電極層6上の遮光部7は、平面視上において画素部Pの外周の内側に少なくとも配置される。図1においては、画素部Pの外周を覆うようにして遮光部7が配置された態様を示している。
【0020】
図2(a)は、本発明の有機EL表示装置の他の例を示す分解斜視図であり、図2(b)はその概略平面図である。なお、図2の有機EL表示装置においては、有機EL素子基板の有機EL層、未発光エリアおよび遮光部、ならびにカラーフィルタ層の着色層、画素間遮光部、および画素部以外の構成については図示を省略する。図2で示すように、有機EL表示装置10においては、カラーフィルタ層11における各色着色層14R、14Gおよび14Bと、有機EL素子基板1における各有機EL層5a、5bおよび5cとが、それぞれ対応するように配置されており、それぞれ画素間遮光部13により画定された画素部Pおよび画素領域を有する。遮光部7は平面視X上において画素部Pの外周の内側に配置されており、図2においては遮光部7がさらに未発光エリア8の全面も覆っている。
【0021】
なお、本発明において「画素」または「画素部」とは、画像を構成する最小単位である。例えば赤、緑、青の3個の副画素で1個の画素が構成されている場合、本発明においては1個の副画素を「画素」または「画素部」という。具体的には図1に示すように、有機EL表示装置10は赤色着色層14R、緑色着色層14G、青色着色層14Bで構成される着色層14を有しており、着色層14が画素間遮光部13で画定された画素部Pを有している。なお、1個の画素部に隣接する画素部のことを「隣接画素」と称する場合がある。
また、「画素領域」とは、画素部と当該画素部に対応する有機EL素子とが配置される領域をいう。例えば赤、緑、青の3個の副画素で1個の画素が構成されている場合、1個の副画素が配置されている領域を「画素領域」という。具体的には図1に示すように、カラーフィルタ層11は赤色着色層14R、緑色着色層14G、青色着色層14Bで構成される着色層14を有しており、着色層14が画素間遮光部13で画定された画素部Pと、各画素部Pに対応する有機EL素子3とを有する画素領域Qを有している。
【0022】
本発明によれば、透明電極層上に配置される遮光部が、平面視上において画素部の外周の内側に少なくとも配置されることにより、隣接画素への漏れ光を遮光するだけでなく、有機EL層の上記遮光部と平面視上重なる領域において発光した光を、対応する画素部の発光に利用することができる。このため、有機EL表示装置の視差混色の発生を抑制しつつ、高い光取り出し効率を得ることができる。
なお、画素部の外周の内側とは、画素間遮光部により画定された領域の外周よりも着色層側をいう。
【0023】
ここで、本発明における遮光部は、透明電極層上に配置されることを要する。なお、「透明電極層上に遮光部が配置される」とは、透明電極層の表面上に直接遮光部を有する態様の他に、透明電極層と遮光部との間に、保護膜、絶縁膜等の有機EL素子を構成する他の層を介在する態様も含まれる。
以下、遮光部を上記配置態様とする理由について説明する。
図3は、本発明における遮光部の機能を説明するための説明図である。図3において説明しない符号については、図1と同様とする。
遮光部により隣接画素への漏れ光を遮光する方法としては、例えば図3(b)で示すように、遮光部を設けず有機EL素子3の線幅を着色層14の線幅よりも小さくする方法がある。この場合、画素領域Q1にある有機EL層5からの発光光L1の光照射範囲Bは、対応する画素部P1と重複するが隣接する画素部P2とは重複しないため、漏れ光は画素部P2に入射されず、これにより視差混色の発生を防ぐことができる。しかしこの場合、有機EL素子の発光領域が縮小されるため、対応する画素部へ入射する光の量は減少し、発光量および光取り出し効率が低下するという問題がある。また、有機EL素子の発光領域が縮小された分、対応する画素部を所望の輝度で発光させるためには消費電力量を増加させて発光量を確保する必要があり、有機EL素子の短命化に繋がると推量される。
これに対し、本発明では図3(a)で示すように、透明電極層6上に遮光部7を有することで、隣接する画素部P2に入射する漏れ光L2を遮光部7により遮光することができる。また、遮光部7が配置された領域A内の有機EL層5は、透明電極層6と接していることから発光が可能となる。つまり、有機EL素子3の発光領域は縮小されず、領域Aからの発光光L3の一部を、領域A以外からの発光光L1と共に対応する画素部P1に入射させることができ、発光量および光取り出し効率を向上させることが可能となる。
上述のように、本発明は、有機EL表示装置の視差混色の発生の抑制と光取り出し効率の向上との両方を可能とするに至ったのである。
【0024】
なお、遮光部を設けて漏れ光を遮光する方法として、上述した透明電極層上ではなく、平面視上において画素部の外周の内側となるように有機EL層上に直に遮光部を設ける場合、有機EL層の遮光部が設けられた領域においては、透明電極層を上面に有することができないため発光が起こらない。つまり、この場合は、上述した図3(b)と同様に発光領域が縮小されることとなり、画素領域における発光量および光取り出し効率の低下、有機EL素子の短命化等を生じることとなる。そのため、遮光部は透明電極層上に配置される必要がある。
【0025】
以下、本発明の有機EL表示装置における各構成について説明する。
【0026】
1.有機EL素子基板
本発明における有機EL素子基板は、支持基板上に、背面電極層、少なくとも発光層を有する有機EL層、透明電極層および遮光部がこの順で配置された有機EL素子を有するものであり、上記遮光部が平面視上において、画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置されることを特徴とする。
【0027】
(1)有機EL素子
本発明における有機EL素子は、少なくとも背面電極層、有機EL層、透明電極層および遮光部を有するものである。なお、有機EL層は少なくとも発光層を有するものである。
【0028】
有機EL素子は、白色を発光するものであってもよく、赤、緑、青等の各色を発光するものであってもよいが、白色を発光するものであることが好ましい。白色発光タイプの有機EL表示装置は隣接画素への光漏れによる視差混色が生じやすいため、本発明の構成が有用である。
以下、有機EL素子における各構成について説明する。
【0029】
(a)遮光部
遮光部は、透明電極層上にあり、平面視上において画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に少なくとも配置されるものである。
遮光部は、隣接画素へ入射する漏れ光の一部または全てを吸収、反射等することができ、隣接画素において視差混色の発生を防止できるものであれば特に限定されない。
以下、遮光部について、有機EL層からの光を少なくとも吸収する吸収型遮光部、有機EL層からの光を少なくとも反射する反射型遮光部、および有機EL層からの光のうち、隣接する画素部における着色層の色の波長光以外の光を遮光する波長選択型遮光部に分けて説明する。
【0030】
(i)吸収型遮光部
本発明においては、遮光部が、有機EL層からの光を少なくとも吸収する吸収型遮光部であることが好ましい。隣接画素への漏れ光が十分に吸収され、視差混色の発生を防ぐことができるからである。
【0031】
吸収型遮光部としては、隣接画素への漏れ光を十分に吸収可能なものであることが好ましい。中でも、光学濃度(OD)が3.0以上を示すものが好ましい。このような吸収型遮光部としては、例えばバインダ樹脂中に黒色色材を分散させたものが用いられる。なお、光学濃度(OD)は、例えば、分光測色計により測色し、分光のY値から光学濃度を算出することができる。分光測色計としては、OLYMPUS(株)社製、分光測色計を用いることができる。
【0032】
黒色色材としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を混合させて用いても良い。
【0033】
また、黒色色材に他の有色色材を含有させても良い。吸収型遮光部における光透過率特性を調整することができるからである。
他の有色色材としては、例えば、赤、緑、青、黄、橙、紫等の各色の有色色材を挙げることができる。有色色材は顔料および染料のいずれも用いることができる。
有色色材は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。また、有色色材は1色の有色色材を用いてもよく2色以上の有色色材を混合して用いてもよい。
各色の有色色材の具体的な材料については、通常、カラーフィルタの着色層に用いられるものと同様とすることができる。
【0034】
バインダ樹脂については、吸収型遮光部の形成方法に応じて適宜選択される。上記形成方法がフォトリソグラフィ法の場合、バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。また、印刷法やインクジェット法の場合、バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0035】
吸収型遮光部には、必要に応じて光重合開始剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0036】
吸収型遮光部において吸収される光は、有機EL層における発光光の他、背面電極層等における反射光、カラーフィルタ層側から入射される外光等を含んでもよい。
【0037】
(ii)反射型遮光部
本発明においては、遮光部が、上記有機EL層からの光を少なくとも反射する反射型遮光部であることが好ましい。有機EL層からの光を反射型遮光部の底面(透明電極層側の面)または側面において反射することにより、反射光を当該有機EL層に対応する画素部に入射させることができる。このため、隣接画素への漏れ光の入射および視差混色の発生を防ぐだけでなく、反射光の利用により発光量および光取り出し効率をさらに向上させることができる。
なお、反射型遮光部において反射される光は、有機EL層における発光光の他、背面電極層等における反射光を含んでもよい。
【0038】
反射型遮光部は、有機EL層からの光を十分に反射可能な反射率を有することが好ましい。具体的には、反射率が60%以上を示すものを用いることが好ましく、中でも反射率が70%以上を示すものが好ましい。なお、上記反射率は、JIS 8714に記載されている方法により測定される値である。
【0039】
この様な反射率を有する反射型遮光部の材料としては、例えば銀、アルミニウム,クロム、モリブデン、チタン、ニッケル等の金属単体や、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の合金等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよいが、2種類以上の金属間で電池反応が生じる組み合わせは適さない。
【0040】
また、反射型遮光部は、金属膜と金属化合物膜との積層体としてもよい。上記積層体とすることにより、反射型遮光部は有機EL層からの光を反射する機能に加え、外光を吸収する機能を有することができる。
詳しくは、反射型遮光部を金属膜と金属化合物膜との積層体とする場合、側面および底面に金属膜を有し、上面に金属化合物膜を有することにより、側面および底面においては有機EL層からの光を反射して、視差混色の発生の防止および光取り出し効率の向上を図ることができ、上面においてはカラーフィルタ層側からの外光を吸収することで外光反射による表示画像の視認性の低下を抑制することができる。
上記積層体における金属膜としては、上述の金属材料からなる膜が挙げられる。
また、金属化合物膜としては、酸化クロム膜、酸化アルミニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化チタン膜、酸化スズ膜、酸化インジウム合金膜等の金属酸化物膜、窒化クロム膜、窒化アルミニウム膜、窒化チタン膜等の金属窒化物膜が挙げられる。
【0041】
(iii)波長選択型遮光部
本発明においては、上記遮光部が、有機EL層からの光のうち、隣接する画素部における着色層の色の波長光以外の光を遮光する波長選択型遮光部であることが好ましい。波長選択型遮光部とすることにより、有機EL層からの光のうち、隣接画素における着色層の色の波長光のみが透過され、それ以外の波長光は遮光されるため、隣接画素領域において視差混色が生じにくくなる上、当該隣接画素領域における光取り出し効率の向上も図ることが可能となるからである。
【0042】
波長選択型遮光部について、具体的には、画素部に赤色着色層を有する画素領域と画素部に青色着色層を有する画素領域とが隣接する場合、赤色着色層を有する画素領域における波長選択型遮光部は青色の波長光のみを透過するものとし、一方、青色着色層を有する画素領域における波長選択型遮光部は、赤色の波長光のみを透過するものとする。
【0043】
波長選択型遮光部としては、隣接画素における着色層の色の波長光以外の光を遮光可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、バインダ樹脂中に有色色材を分散させたものが用いられる。このような波長選択型遮光部とすることで、隣接画素における着色層の色の波長光以外の光を吸収することができる。
上記有色色材としては、隣接画素の着色層の色と補色関係となる色材が適宜選択され、例えば、赤、緑、青、黄、橙、紫等の各色色材を挙げることができる。有色色材は顔料および染料のいずれも用いることができる。
これらの有色色材は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。また、上記有色色材は1色の有色色材を用いてもよく2色以上の有色色材を混合して用いてもよい。
各種有色色材については、通常、カラーフィルタに使用される有色色材と同様のものを用いることができる。なお、赤、緑、青色の色材については、後述する「3.カラーフィルタ層」の項で説明する着色層の色材と同様のものを用いても良い。
また、有色色材を分散させるバインダ樹脂については、上述した「(i)吸収型遮光部」の項で説明したものと同様とすることができる。
【0044】
また、波長選択型遮光部としてダイクロイックミラーを用いることもできる。ダイクロイックミラーとは、波長選択性を有し、所定の波長は反射し他の波長は透過する性質を有するミラーをいう。ダイクロイックミラーを用いることにより、隣接画素における着色層の色の波長光以外の光は反射されるため、隣接画素だけでなくダイクロイックミラーが配置された画素領域の光取り出し効率も向上させることができる。
ダイクロイックミラーの材料としては、例えば、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。また、ダイクロイックミラーは、蒸着法、IAD(Ion beam Assisted Deposition)法、スパッタリング法、CVD法等により成膜することが可能である。
【0045】
なお、波長選択型遮光部において遮光される光は、隣接画素の着色層の色の波長光以外の光であればよく、有機EL層における発光光の他に、背面電極層等における反射光等のうち隣接画素の着色層の色の波長光以外の光を含んでいても良い。
【0046】
(iv)遮光部
遮光部の幅としては、平面視上において画素間遮光部により画定された画素部の外周の内側に配置可能な大きさであればよく、有機EL素子基板とカラーフィルタ層との間隔、カラーフィルタ層における画素間遮光部の幅、遮光部の配置態様等に応じて調整することができる。
遮光部が画素部の外周の内側のみに配置される場合、その幅としては、4μm〜9μmの範囲内が好ましく、中でも4μm〜7μmの範囲内が好ましく、特に4μm〜6μmの範囲内が好ましい。遮光部の幅が上記範囲よりも小さいと、漏れ光を十分に遮光することができず本発明の効果を発揮できない場合がある。一方、上記範囲よりも大きいと、漏れ光以外の光も遮光されるため、本来、所望の画素部に入射されるべき光の量が減少し、発光量および光取出し効率が低下する場合がある。
また、上記配置態様における遮光部の幅は、有機EL素子とカラーフィルタ層との間隔の1.7倍〜2倍程度の長さから未発光エリアの幅を引いた値以上であることが好ましい。ここで、有機EL素子とカラーフィルタ層との間隔とは、後述する樹脂接着層の膜厚と同等である。また未発光エリアの幅とは、パターン状に形成された背面電極層の開口部の幅に相当する。視差混色を生じるときの有機EL素子からの漏れ光の入射角度は約60度であることから、隣接画素に影響を及ぼす漏れ光、すなわち隣接画素を発光させるのに十分な量の漏れ光を遮光するための幅に関しては、三角関数の定理により遮光層の幅が上述の関係を有する必要がある。なお、上述の関係は、遮光部の配置態様が上記の場合のみならず、後述するように有機EL素子基板の未発光エリアの一部または全面を覆う態様においても、同様に成り立つことが好ましい。
【0047】
また、遮光部の断面形状としては特に限定されるものではなく、例えば三角形、四角形、五角形等の多角形状、半円形状等が挙げられる。
【0048】
遮光部の膜厚としては、隣接画素への漏れ光を十分に遮光することが可能な厚さであれば特に限定されるものではないが、例えば遮光部を樹脂で形成する場合、その膜厚は1.0μm〜1.5μmの範囲内が好ましく、中でも1.1μm〜1.4μmの範囲内が好ましく、特に1.2μm〜1.3μmの範囲内が好ましい。これにより光学濃度(OD)を3.0以上で確保できるためである。遮光部の膜厚が上記範囲よりも大きいと、遮光部が後述する樹脂接着層上に露出したり、樹脂接着層表面に段差を生じさせる場合があり、一方上記範囲よりも小さいと、要求される光学濃度(OD)を得られない場合がある。
また、遮光部を金属で形成する場合、その膜厚は0.1μm〜0.2μmの範囲内が好ましい。金属の場合は樹脂と比べて薄い膜厚で要求される光学濃度(OD)を得ることができる。
【0049】
遮光部は、画素部の外周の内側に配置されるものであるが、一部の外周の内側に配置されてもよく、全外周の内側に配置されてもよい。中でも全外周の内側に配置されることが好ましい。
さらに、遮光部は画素部の外周の内側に加え、有機EL素子基板の未発光エリアの一部を覆うように配置されてもよく、未発光エリアの全面を覆うように配置してもよい。
【0050】
遮光部は、同一の材料で形成されたものであってもよく、外周の場所に応じて異なる材料で形成されていてもよい。遮光部が同一の材料から形成される場合、画素部の形状に合わせて一括で形成することができる。一方、遮光部が波長選択型遮光部である場合は、上述したように、隣接画素における着色層の色の波長光以外の光を遮光する必要があることから、隣接画素に応じて対応する外周部分に配置される波長選択型遮光部の材料を変えることが好ましい。
【0051】
また、遮光部は、少なくとも画素部の外周の内側に位置するように透明電極層上に配置されるものであるが、図4で示すように、有機EL素子3において透明電極層6上に保護膜または絶縁膜9を有する場合は、上記保護膜または絶縁膜9上に配置されてもよい。遮光部の形成をウェットプロセスで行う場合に、水分が電極へ悪影響を及ぼすことなく所望の位置に遮光部を配置することが出来るからである。図4は本発明の有機EL表示装置の他の例を示す概略断面図であり、遮光部7は非発光エリア8の全面を含めて覆うように配置される態様を示すものである。図4で説明しない符号については、図1と同様とする。
なお、遮光部の形成をドライプロセスで行う場合は、漏れ光をより効果的に遮光できるという点から、遮光部は透明電極層上に直接配置されることが好ましい。
【0052】
遮光部の形成方法としては、平面視上において少なくとも画素部の外周の内側に形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、遮光部の種類およびその材料に応じて適宜選択することができる。当該方法としては、例えば印刷法、フォトリソグラフィ等を用いることができるが、中でも、フォトリソグラフィが好ましい。
具体的には、遮光部の各種材料の薄膜を形成し、フォトリソグラフィを利用してパターニングする方法、フォトリソグラフィでレジストを形成し、遮光部の各種材料の薄膜を成膜する方法等を用いることができる。上記薄膜の成膜方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0053】
(b)有機EL層
有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層を有するものである。発光層以外の有機EL層を構成する有機層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等を挙げることができる。正孔輸送層は、正孔注入層に正孔輸送の機能を付与することにより、正孔注入層と一体化される場合が多い。また、有機EL層を構成する有機層としては、正孔ブロック層や電子ブロック層のような正孔もしくは電子の突き抜けを防止し、さらに励起子の拡散を防止して発光層内に励起子を閉じ込めることにより、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。有機EL層の構成としては、一般的な構成であればよく、発光層のみ、正孔注入層/発光層、正孔注入層/発光層/電子注入層、正孔注入層/正孔ブロック層/発光層/電子注入層、正孔注入層/発光層/電子輸送層等を例示することができる。
【0054】
(i)発光層
発光層は白色発光層であってもよく、複数色の発光層を有していてもよいが、白色発光層であることが好ましい。白色発光タイプの有機EL表示装置は隣接画素への光漏れによる視差混色を生じやすいため、本発明の構成が有用である。白色発光層に用いられる発光材料は単一の化合物で構成されることはほとんどなく、一般的には2つないし3つの色の異なる発光材料が用いられる。この場合、白色発光層の発光スペクトルは、各色の発光材料のスペクトルを併せた形となる。
【0055】
発光層に用いられる発光材料としては、蛍光もしくは燐光を発するものであればよく、例えば、色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料等を挙げることができる。
【0056】
色素系材料としては、例えば、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0057】
金属錯体系材料としては、例えば、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、あるいは、中心金属にAl、Zn、Be等またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)を用いることができる。
【0058】
高分子系材料としては、例えば、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。また、高分子系材料として、上記の色素系材料および金属錯体系材料を高分子化したものも用いることができる。
【0059】
また、燐光材料としては、例えば、イリジウム錯体、プラチナ錯体、あるいは、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au等のスピン軌道相互作用が大きい重金属を中心金属とする金属錯体等を用いることができる。具体的には、フェニルピリジンやチエニルピリジンなどを配位子とするイリジウム錯体、プラチナポルフィリン誘導体等が挙げられる。
【0060】
これらの発光材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
また、発光材料には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的で、蛍光もしくは燐光を発するドーパントを添加してもよい。このようなドーパントとしては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。
【0062】
発光層の膜厚としては、電子および正孔の再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる膜厚であれば特に限定されるものではなく、例えば10nm〜500nm程度とすることができる。
【0063】
通常、発光層は、画素領域における着色層のパターンに対応して形成される。発光層のパターンについては、着色層のパターンに因るが、例えば線状、ストライプ状等が挙げられる。
【0064】
発光層の形成方法としては、印刷法、インクジェット法、真空蒸着法等、一般的な有機EL素子における発光層の形成方法と同様とすることができる。
【0065】
(ii)正孔注入輸送層
上記有機EL層においては、発光層と陽極との間に正孔注入輸送層が形成されていてもよい。
正孔注入輸送層は、正孔注入機能を有する正孔注入層であってもよく、正孔輸送機能を有する正孔輸送層であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有するものであってもよい。
【0066】
正孔注入輸送層の材料としては、発光層への正孔の注入、輸送を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンおよびそれらの誘導体等の導電性高分子等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0067】
正孔注入輸送層の膜厚としては、正孔注入機能や正孔輸送機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0068】
正孔注入輸送層の形成方法としては、印刷法、インクジェット法、真空蒸着法等、一般的な有機EL素子における正孔注入輸送層の形成方法を用いることができ、材料の種類等に応じて適宜選択される。
【0069】
(iii)電子注入輸送層
上記有機EL層においては、発光層と陰極との間に電子注入輸送層が形成されていてもよい。
電子注入輸送層は、電子注入機能を有する電子注入層であってもよく、電子輸送機能を有する電子輸送層であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有するものであってもよい。
【0070】
電子注入層の材料としては、発光層への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、ストロンチウム、カルシウム、リチウム、セシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化セシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属およびアルカリ土類金属の金属、合金、化合物、有機錯体等を用いることができる。
【0071】
電子輸送層の材料としては、陰極から注入された電子を発光層へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、バソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)の誘導体等を挙げることができる。
【0072】
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
【0073】
電子注入輸送層の膜厚としては、電子注入機能や電子輸送機能が十分に発揮される膜厚であれば特に限定されない。
【0074】
電子注入輸送層の形成方法としては、印刷法、インクジェット法、真空蒸着法等、一般的な有機EL素子における電子注入輸送層の形成方法を用いることができ、材料の種類等に応じて適宜選択される。
【0075】
(c)透明電極層および背面電極層
透明電極層および背面電極層は、発光層に電圧を印加し、発光層で発光を起こさせるために設けられるものであり、一方が陽極、他方が陰極である。背面電極層は支持基板および有機EL層の間に形成され、透明電極層は有機EL層上に形成される。
【0076】
(i)透明電極層
透明電極層の材料としては、所望の光透過性を有する導電性材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)等の導電性酸化物を用いることができる。
透明電極層の光透過率としては全光線透過率が60%以上であることが好ましく、中でも70%以上、特に80%以上であることが好ましい。透明電極層にて発光層から出射された光を十分に透過することができるからである。なお、上記全光線透過率は、JIS K 7361に準拠して、ヘイズメーター(NDH2000 日本電色工業株式会社製)を用いて測定した値である。
【0077】
透明電極層は、画素領域における着色層に対応してパターン状に形成される。透明電極層のパターンとしては、着色層のパターンにより設定されるものであるが、例えば、線状、ストライプ状等が挙げられる。
【0078】
透明電極層の膜厚、形成方法等については、一般的な有機EL素子と同様とすることができる。
また、透明電極層は各有機EL素子の有機EL層上に形成されるものであるが、さらに非発光エリア上に形成されていてもよい。
【0079】
(ii)背面電極層
背面電極層の材料としては、光不透過性を有する導電性材料であればよく、例えば、Li、Na、Mg、Al、Ca、Ag、In等の金属、またはこれらの金属の1種以上を含む合金、具体的にはMgAg、AlLi、AlCa、AlMg等の合金が挙げられる。
【0080】
背面電極層の膜厚、形成方法等については、一般的な有機EL素子と同様とすることができる。
【0081】
(2)支持基板
支持基板は、上述した有機EL素子を支持することができるものであればよく、一般的な有機EL素子基板に用いられるものを使用することができる。また、本発明においては、カラーフィルタ層側から光が取り出されるため、支持基板は透明であってもよく不透明であってもよい。
支持基板としては、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のないリジッド材、あるいは樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有するフレキシブル材等を用いることができる。また、樹脂フィルムにバリア層が形成されたものを用いてもよい。
【0082】
(3)未発光エリア
本発明においては、支持基板上にパターン状に形成された背面電極層の開口部が、未発光エリアとなる。上記未発光エリアは、後述するカラーフィルタ層の画素間遮光部と対峙する。
【0083】
未発光エリアには、TFT素子を有していても良い。TFT素子については、有機EL素子に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0084】
また、未発光エリアには、絶縁層が形成されていてもよい。絶縁層は、透明電極層と背面電極層とが直接接触することを防ぐために設けられるものである。
絶縁層としては、有機EL素子に一般的に用いられるものを使用することができる。
【0085】
2.樹脂接着層
本発明における樹脂接着層は、有機EL素子基板およびカラーフィルタ層の間に配置されるものである。すなわち、本発明において有機EL素子基板およびカラーフィルタ層は、樹脂接着層により固体封止される。
ここで、樹脂接着層とは、外部から浸入する水分等と有機EL素子との接触を抑制可能なガスバリア性を有し、有機EL素子基板とカラーフィルタ層との層間界面において光反射が生じないように光屈折率が調整された層をいう。
【0086】
樹脂接着層としては、所望のガスバリア性および光屈折率を示すものであればよく、一般的に有機EL表示装置の封止材料に用いられる透明樹脂膜等と同様とすることができる。
【0087】
樹脂接着層の材料としては、例えば熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が挙げられる。
光硬化性樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。感光性樹脂には、光重合開始剤や、必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等が添加されていてもよい。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物を用いたもの、熱ラジカル発生剤を用いたものが挙げられる。エポキシ化合物としては、カルボン酸やアミン系化合物等により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。熱ラジカル発生剤としては過硫酸塩、ヨウ素等のハロゲン、アゾ化合物、および有機過酸化物からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはアゾ化合物または有機過酸化物である。アゾ化合物としては、1,1´−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2´−アゾビス−[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2´−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、および2,2´−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)などが挙げられ、有機過酸化物としては、ジ(4−メチルゼンゾイル)ペーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルエキサネート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカルボネート、t−ブチル−4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタネート、およびジクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0088】
樹脂接着層の膜厚としては、所望のガスバリア性を示すことが可能な膜厚であればよく、有機EL素子基板とカラーフィルタ層との配置間隔に応じて適宜設定されるものであるが、例えば10μm以下が好ましく、中でも8μm以下が好ましく、特に5μm以下が好ましく、かつ最低でも3μm以上あることが好ましい。樹脂接着層の膜厚が上記範囲よりも大きいと、入射光の散乱を抑制できず視認性が悪化する場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、ガスバリア性が発揮されないため、有機EL素子を外部から浸入する水分等から防ぐことができない場合がある。また、有機EL素子基板とカラーフィルタ層との間への異物混入に起因する表示異常等が発生する場合がある。
【0089】
樹脂接着層の屈折率としては、有機EL素子基板とカラーフィルタ層との層間において光反射を生じなければよく、例えば1.4〜1.6程度とすることが好ましい。なお、上記屈折率は400nm〜700nmの範囲内の波長域の光を用いて測定するものとする。
【0090】
樹脂接着層は、有機EL素子基板における上記透明電極層に直に配置されもよく、透明電極層上に保護膜等を有する場合は上記保護層等を介して配置されてもよい。
【0091】
樹脂接着層の形成方法としては、使用する材料等により適宜選択されるものであるが、一般的な有機EL表示装置において有機EL素子基板とカラーフィルタ層との間に配置される充填材の形成方法と同様とすることができる。例えば、上述した樹脂材料の分散液を塗布し硬化させる方法等を用いることができる。
【0092】
3.カラーフィルタ層
本発明におけるカラーフィルタ層は、透明基板上に、複数色の着色層および上記複数色の着色層間に配置された画素間遮光部を有するものである。
カラーフィルタ層は有機EL素子基板の透明電極層上に樹脂接着層を介して配置されるものであり、透明基板の着色層等が配置された面が有機EL素子基板側となる。
【0093】
(1)着色層
着色層は、透明基板上に形成され、複数色の着色層を有するものである。
【0094】
着色層は、例えば赤、緑、青の3色の着色層を有する。着色層の色としては、赤、緑、青の3色を少なくとも含むものであればよく、例えば、赤、緑、青の3色、赤、緑、青、黄の4色、または、赤、緑、青、黄、シアンの5色等とすることもできる。
【0095】
着色層は、例えば色材をバインダ樹脂中に分散させたものが挙げられる。
色材としては、各色の顔料や染料等を挙げることができる。赤色着色層に用いられる色材としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。緑色着色層に用いられる色材としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。青色着色層に用いられる色材としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料や染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。
着色層には、光重合開始剤や、必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を含有させてもよい。
【0096】
着色層の配列は特に限定されるものではなく、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知の配列とすることができる。
【0097】
また、着色層が形成されている同一平面上には、上記色材を含有せず、上記バインダ樹脂を含有し、有機EL素子からの光を透過する白色層が形成されていてもよい。例えば、赤色着色層、緑色着色層、青色着色層および白色層が形成されている場合、表示時に赤、緑、青の3色の画素のうち少なくとも1色の画素が点灯しないため、隣接画素への光漏れが生じやすい。これに対し本発明においては、隣接画素への光漏れを抑制することができるため、白色層が形成されている場合に特に有用である。
【0098】
着色層の膜厚は、一般的なカラーフィルタにおける着色層の膜厚と同様とすることができ、例えば1μm〜5μmの範囲内で設定することができる。
【0099】
着色層の形成方法としては、複数色の着色層を同一平面上に配列可能な方法であればよく、例えばフォトリソグラフィ法、インクジェット法、印刷法等が挙げられる。白色層の膜厚および形成方法も、着色層と同様の方法を用いることができる。
【0100】
(2)画素間遮光部
画素間遮光部は、複数色の着色層間に配置され画素部および画素領域を画定するものである。画素間遮光部は通常、透明基板上にパターン状に形成される。
【0101】
画素間遮光部としては、例えばバインダ樹脂中に黒色色材を分散させたものが用いられる。また、上記画素間遮光部は黒色色材の他に有色色材を含有していても良い。なお、黒色色材、有色色材、およびバインダ樹脂については、有機EL素子基板における遮光部の材料と同様とすることができる。
さらに、画素間遮光部には、必要に応じて光重合開始剤、増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等が含有されていてもよい。
【0102】
画素間遮光部の膜厚は、一般的なカラーフィルタにおける画素間遮光部の膜厚と同様とすることができ、例えば0.5μm〜2.0μmの範囲内で設定することができる。
【0103】
隣り合う画素間遮光部間には開口部を有しており、当該開口部に各色の着色層が配置される。開口部の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばストライプ形状、くの字形状、デルタ配列等のように着色層の配列を変えたものも挙げられる。
【0104】
画素間遮光部の形成方法としては、透明基板上にパターン状に形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、フォトリソグラフィ法、印刷法、インクジェット法を挙げることができる。
【0105】
(3)透明基板
透明基板は、上述の着色層、画素間遮光部等を支持することができ、可視光に対して透明な基板であれば特に限定されるものではなく、一般的なカラーフィルタに用いられているものとすることができる。透明基板の種類については、例えば、上述した「1.有機EL素子基板 (2)支持基板」の項で挙げたものと同様とすることができるが、中でも無機基板を用いることが好ましく、無機基板の中でもガラス基板を用いることが好ましい。さらには、ガラス基板の中でも無アルカリタイプのガラス基板を用いることが好ましい。無アルカリタイプのガラス基板は寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、かつ、ガラス中にアルカリ成分を含まないことから、表示装置用途として好適に用いることができるからである。
【0106】
(4)その他の構成
カラーフィルタ層は、少なくとも上述の構成を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有していてもよい。以下、想定される他の構成について説明する。
【0107】
(a)保護層
カラーフィルタ層は、着色層の表面のうち透明基板と対向する面上に保護層を有していてもよい。保護層により着色層の表面の平坦化を図ることができる。
保護層の材料としては、一般的なカラーフィルタにおける保護層と同様の有機材料、無機材料を用いることができる。保護層が無機材料から構成される場合には、バリア性能を確保できる。
保護層の膜厚および形成方法としては、一般的なカラーフィルタに用いられる保護層と同様とすることができる。
【0108】
(b)光吸収層
カラーフィルタ層は、光吸収層を有していても良い。光吸収層により、混色防止作用の他に、外光反射の低減に加えて表示輝度の低下防止を達成することができる。
【0109】
光吸収層としては、例えばバインダ樹脂中に色材が分散されたものが挙げられる。
色材としては、例えば黒色色材が挙げられる。また、光吸収層は主な色材と色調整用の色材とを含有していてもよい。主な色材としては黒色色材、色調整用の色材としては青色色材を挙げることができる。
なお、黒色色材、青色色材およびバインダ樹脂については、上述の有機EL素子基板における遮光部、カラーフィルタ層における着色層、または画素間遮光部に用いられるものと同様である。
【0110】
光吸収層の形成位置としては、特に限定されないが、例えば、着色層と透明基板との層間に設けても良く、着色層の表面のうち透明基板と対峙する面に設けても良い。またこのとき、上記光吸収層は画素間遮光部を含む全面に形成されていてもよい。
【0111】
光吸収層の形成方法としては、フォトリソグラフィ法(ダイコート法、スピンコート法)、インクジェット法等が挙げられるが、通常はフォトリソグラフィ法が用いられる。
光吸収層の膜厚は、塗工性や外光反射低減の面から、0.3μm以上であることが好ましい。
【0112】
(c)散乱層
カラーフィルタ層は、着色層上に散乱層が形成されていてもよい。散乱層によって観察者の見る方向による視差を改善できる。光吸収層が形成されている場合には、光吸収層上に散乱層が形成される。
【0113】
4.有機EL表示装置
本発明の有機EL表示装置は、上述の有機EL素子基板、カラーフィルタ層、および樹脂接着層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有していてもよい。
【0114】
5.有機EL表示装置の製造方法
本発明の有機EL表示装置の製造方法は、遮光部が平面視上において、画素部の外周の内側に少なくとも配置されるように透明電極層上に形成することができ、上記遮光部および透明電極層を有する有機EL素子基板、樹脂接着層、およびカラーフィルタ層を積層することができれば、特に限定されるものではなく、一般的な有機EL表示装置の製造方法を用いることができる。
なお、有機EL素子基板、樹脂接着層、およびカラーフィルタ層における各構成の形成方法については、上述した内容と同様であるためここでの説明は省略する。
【0115】
6.用途
本発明の有機EL表示装置の用途としては、高精細なディスプレイに好適であり、例えば、モバイル機種のノートパソコンや多機能端末機器(高機能端末機器ともいう。)等のモバイル電子機器用が挙げられる。
【0116】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0117】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0118】
[製造例]
(ブラックマトリクス材の調製)
まず、重合槽中にメタクリル酸メチル(MMA)を63質量部、アクリル酸(AA)を12質量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6質量部、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を88質量部仕込み、攪拌し溶解させた後、2、2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7質量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。得られた溶液に、さらにメタクリル酸グリシジル(GMA)を7質量部、トリエチルアミンを0.4質量部、およびハイドロキノンを0.2質量部添加し、100℃で5時間攪拌して共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
次に下記の材料を室温で攪拌、混合して硬化性樹脂組成物とした。
<硬化性樹脂組成物の組成>
・上記共重合樹脂溶液(固形分50%) …16質量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399) …24質量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70) …4質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン …4質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル …52質量部
【0119】
次に、下記分量の成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調製した。
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料(三菱化学社製 #2600) …20質量部
・高分子分散材(ビックケミー・ジャパン株式会社 Disperbyk 111) …16質量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル) …64質量部
【0120】
その後、下記分量の成分を十分混合して、ブラックマトリクス材(光学濃度(OD)3.0以上)を得た。
<ブラックマトリクス材の組成>
・黒色顔料分散液 …43質量部
・硬化性樹脂組成物 …19質量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル …38質量部
【0121】
[実施例1]
以下の方法に従い、図1に例示する有機EL表示装置を作製した。
【0122】
(有機EL素子基板の作製)
支持基板として、大きさが1500mm×1850mm、厚さが0.7mmのガラス基板(コーニング社製、1737ガラス)を準備し、上記支持基板に対して定法にしたがって薄膜トランジスタ回路を作製した。この上に、後述するカラーフィルタ層の各色の着色層に対応するようにアルミニウムからなる背面電極層を形成し、これらの背面電極層の間隙にポリイミドからなる絶縁層を形成した。なお、絶縁層の部分が有機EL素子基板の未発光エリアであり、その幅は18μmだった。
次に、絶縁層の間隙に有機EL素子(正孔注入層、白色発光層、電子注入層の積層構成)を形成し、これらの上に酸化インジウム錫(ITO)からなる透明電極層を形成した。
上記透明電極層表面の、後述するカラーフィルタ層を配置した際に画素部の外周の内側に相当する位置に、上述により調製したブラックマトリックス材を用いて、フォトリソグラフィ法により幅8.0μm、厚さ1.5μmとなるように遮光部Aを形成し、有機EL素子基板を得た。なお、実施例1における遮光部Aは吸収型遮光部である。
【0123】
(カラーフィルタ層の作製)
次にカラーフィルタ層を作製した。まず、透明基板としてガラス基板(旭硝子社製、AN材)上に、上述により調製したブラックマトリクス材を用いて隣接画素間遮光部(線幅9μm)を形成した。
次に、隣接画素間遮光部の間隙に、下記組成の赤、緑、青、白の各色の着色層がこの順で一列となるようにそれぞれフォトリソグラフィ法により形成した。なお、各着色層に含まれる硬化性樹脂組成物は、上述により調製したブラックマトリクス材における硬化性樹脂組成物と同じである。
【0124】
<赤色着色層形成用組成物>
・C.I.ピグメントレッド254 …10質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 …8質量部
・上記硬化性樹脂組成物 …15質量部
・酢酸−3−メトキシブチル …67質量部
【0125】
<緑色着色層形成用組成物>
・C.I.ピグメントグリーン58 …10質量部
・C.I.ピグメントイエロー138 …3質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 …8質量部
・上記硬化性樹脂組成物 …12質量部
・酢酸−3−メトキシブチル …67質量部
【0126】
<青色着色層形成用組成物>
・C.I.ピグメントブルー1 …5質量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤 …3質量部
・上記硬化性樹脂組成物 …25質量部
・酢酸−3−メトキシブチル …67質量部
【0127】
<白色層形成用組成物>
・上記硬化性樹脂組成物 …33質量部
・酢酸−3−メトキシブチル …67質量部
【0128】
(有機EL表示装置の作製)
上述により得られた有機EL発光素子基板とカラーフィルタ層とを、上記カラーフィルタ層の着色層側表面と上記有機EL素子基板の透明電極層側表面とが対向するようにして、膜厚10μmの樹脂接着層で貼合して有機EL表示装置を作製した。
【0129】
[実施例2]
下記の方法で遮光部Bを形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0130】
(遮光部Bの形成)
上記透明電極層表面の、カラーフィルタ層を配置した際に画素部の外周の内側に相当する位置に、スパッタリングでチタン成膜を行った後、エッチングレジストをフォトリソグラフィ法にて形成し、エッチング処理により幅8.0μm、厚さ0.15μmとなるように遮光部Bを形成した。なお、実施例2における遮光部Bは反射型遮光部である。
【0131】
[実施例3]
下記の方法で遮光部Cを形成したこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0132】
(遮光部Cの形成)
上記透明電極層表面の、カラーフィルタ層を配置した際に画素部の外周の内側に相当する位置に、隣接画素における着色層の色の波長以外の光を吸収する遮光部Cをフォトリソグラフィ法にて幅8.0μm、厚さ1.5μmとなるようにそれぞれ形成した。なお、実施例3における遮光層Cは波長選択型遮光部である。
このときの隣接する着色層の組合せと、上記組合せにおいて各着色層側に位置する遮光部C1〜6の材料組成について、以下に示す。なお、赤、緑、青、白の各色の着色層形成用組成物の組成は、上述した実施例1のものと同様である。
【0133】
<遮光部C1〜6の組成>
・赤色着色層と緑色着色層との境界において、赤色着色層側に位置する遮光部C1 …赤色着色層形成用組成物、青色着色層形成用組成物、および白色層形成用組成物の混合物。
・赤色着色層と緑色着色層との境界において、緑色着色層側に位置する遮光部C2 …緑色着色層形成用組成物、青色着色層形成用組成物、および白色層形成用組成物の混合物。
・緑色着色層と青色着色層との境界において、緑色着色層側に位置する遮光部C3 …赤色着色層形成用組成物、緑色着色層形成用組成物、および白色層形成用組成物の混合物。
・緑色着色層と青色着色層との境界において、青色着色層側に位置する遮光部C4 …赤色着色層形成用組成物、青色着色層形成用組成物、および白色層形成用組成物の混合物。
・青色着色層と白色層との境界において、青色着色層側に位置する遮光部C5 …赤色着色層形成用組成物、緑色着色層形成用組成物、および青色着色層形成用組成物の混合物。
・青色着色層と白色層との境界において白色層側に位置する遮光部C6 …赤色着色層形成用組成物、緑色着色層形成用組成物、および白色層形成用組成物の混合物。
【0134】
[比較例1]
有機EL素子基板において遮光部を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0135】
[比較例2]
有機EL素子基板において遮光部を設けず、カラーフィルタ層における隣接画素間遮光部の線幅を18μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして有機EL表示装置を作製した。
【0136】
[評価]
実施例1〜3および比較例1〜2で得られた有機EL表示装置を正面、および正面に対して斜め60度方向から見た場合の視差混色の発生および輝度の変化を目視で確認した。
実施例1〜3の有機EL表示装置では、正面に対して斜め60度方向から見た場合であっても視差混色は発生せず、正面視と同一の色調が表示された。
一方、比較例1の有機EL表示装置では、正面に対して斜め60度方向から見た場合に視差混色が発生し、正面視とは異なる色調が表示された。
比較例2の有機EL表示装置では、正面に対して斜め60度方向から見た場合に視差混色は発生しなかったが、正面視の場合および斜め60度方向から見た場合の双方で、視認レベルで実施例1〜3の有機EL表示装置よりも輝度の低下が確認された。
【符号の説明】
【0137】
1 … 有機EL素子基板
2 … 支持基板
3 … 有機EL素子
4 … 背面電極層
5 … 有機EL層
6 … 透明電極層
7 … 遮光部
10 … 有機EL表示装置
11 … カラーフィルタ層
12 … 透明基板
13 … 画素間遮光部
14、14R、14G、14B … 着色層
21 … 樹脂接着層
P、P1、P2 … 画素部
Q、Q1 … 画素領域
図1
図2
図3
図4