(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプロジェクターの場合、リフレッシュ点灯モードでは定格電力値を超えるランプ電力が供給される。この場合、通常点灯時に形成された突起が溶融され過ぎ、突起の形状が維持できないことが考えられる。その結果、ランプは、安定した放電を維持できず、フリッカーが発生する。また、発光管への負荷が大きく、石英ガラスの結晶化現象、いわゆる失透などの不具合が生じる虞がある。
【0006】
本発明の一つの態様は、上記の課題を解決するためになされたものであって、安定した放電を維持することができる放電灯駆動装置、光源装置、プロジェクターおよび放電灯駆動方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの態様の放電灯駆動装置は、放電灯に駆動電力を供給する放電灯駆動部と、前記駆動電力の波形に従って前記放電灯駆動部を制御する制御部と、を備え、前記波形は、n個(n:2以上の自然数)の立上期間と、低電力モード点灯期間と、を有し、前記n個の立上期間は、駆動電力が低電力モード時電力以上、定格電力以下のリフレッシュ電力に向けて増加する第1番目の立上期間と、駆動電力が前記リフレッシュ電力に維持される(n−1)個の立上期間と、を含み、第x−1番目(x:2以上、n以下の自然数)の立上期間における駆動電力周波数をf
x−1、第x番目の立上期間における駆動電力周波数をf
xと表したときに、f
x−1≧f
xの関係を満たし、前記制御部は、前記放電灯の劣化の程度に応じて、複数の前記駆動電力周波数のうちの少なくとも一部の前記駆動電力周波数を調整することを特徴とする。
【0008】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置は、放電灯の定格電力よりも低い低電力モード時電力で放電灯を駆動する低電力モードを有している。低電力モードで駆動したときの放電灯の電極先端の突起は、放電灯の定格電力で駆動したときの突起と比べて細くなっている。したがって、放電灯の点灯直後にいきなり溶融力が高い駆動を行うと、突起の形状が崩れる虞がある。これに対し、本発明の一つの態様の放電灯駆動装置では、駆動電力が低電力モード時電力以上、定格電力以下のリフレッシュ電力に向けて増加する第1番目の立上期間の後の立上期間では、駆動電力周波数が維持されるか、もしくは駆動電力周波数が徐々に低下する。この場合、立上期間の経過に伴って突起の溶融効果が徐々に高まるため、突起の形状を維持しつつ、突起を適度に溶融させることができる。
【0009】
また、本発明の一つの態様の放電灯駆動装置は、放電灯の劣化の程度に応じて、複数の立上期間に対応する複数の駆動電力周波数のうちの少なくとも一部の駆動電力周波数を調整するため、放電灯の劣化の程度が変化しても、その劣化の程度に応じて電極先端の突起の溶融状態を常に安定して制御できる。その結果、放電が安定し、放電灯の照度変化が抑えられるとともに、放電灯の寿命を長く維持することができる。
【0010】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記立上期間における前記駆動電力の波形は、個々の立上期間における駆動電力の基本波形パターンである第1波形パターンに比べて前記放電灯への負荷が相対的に強い第2波形パターンが間欠的に挿入されていてもよい。
この構成によれば、基本波形パターンである第1波形パターン中に、放電灯への負荷が相対的に強い第2波形パターンが間欠的に挿入されることにより、突起の溶融効果を効果的に高めることができる。
【0011】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記制御部は、前記第2波形パターンの挿入時間、前記第2波形パターンの挿入間隔、前記第2波形パターンの挿入回数、および前記第2波形パターンの構成のうちの少なくとも一つを、前記放電灯の劣化の程度に応じて調整してもよい。
第2波形パターンは突起の溶融効果の向上に寄与するものの、第2波形パターンを過度に入れると、突起が溶融し過ぎ、突起の形状が維持できなくなる。その点、上記の構成によれば、第2波形パターンの挿入時間、挿入間隔、挿入回数、構成等が放電灯の劣化の程度に応じて調整されるため、突起が溶融し過ぎることがなく、突起の形状が良好に維持できる。
【0012】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記第2波形パターンは、前記駆動電力周波数が500Hz以下の交流駆動波形パターン、もしくは直流駆動と交流駆動とを組み合わせた駆動波形パターンを含んでいてもよい。
このように、比較的低い周波数の交流駆動、もしくは直流成分を含む駆動を採用することにより、高い溶融効果を実現することができる。
【0013】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記制御部は、低電力モード時の前記放電灯の電極間電圧を参照することにより前記放電灯の劣化の程度を検出する構成であってもよい。
放電灯の電極先端の突起が損耗、縮小すると、電極間距離が大きくなり、それに伴って電極間電圧が大きくなる。したがって、放電灯の電極間電圧を参照することにより、放電灯の劣化の程度が直接的に把握でき、最適な駆動電力周波数を設定することができる。
【0014】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記制御部は、前記第1番目の立上期間内の任意の時点における電極間電圧を参照し、前記電極間電圧の参照結果から低電力モード時の電極間電圧を推定する構成であってもよい。
この構成によれば、1回の点灯毎に第1立上期間での電極間電圧を参照するため、低電力モード時の電極間電圧を精度良く推定でき、放電灯の劣化の程度を的確に検出することができる。
【0015】
もしくは、本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記制御部は、前回の放電灯点灯時に参照して記憶しておいた電極間電圧を次回の放電灯点灯時に読み出し、前記電極間電圧の読み出し結果から低電力モード時の電極間電圧を推定する構成であってもよい。
この構成によれば、前回の点灯時に記憶済みの電極間電圧を次回の点灯時に参照するため、低電力モード時の電極間電圧を容易に推定でき、放電灯の劣化の程度を的確に検出することができる。
【0016】
本発明の一つの態様の放電灯駆動装置において、前記第1番目の立上期間における前記駆動電力周波数は500Hz以上の交流駆動電力であってもよい。
この構成によれば、電極の突起を過度に溶融させることがなく、電極物質の無駄な蒸散を防ぐことができる。
【0017】
本発明の一つの態様の光源装置は、光を射出する放電灯と、本発明の一つの態様の放電灯駆動装置と、を備えることを特徴とする。
本発明の一つの態様によれば、安定した照度が得られ、放電灯の寿命が長い光源装置を実現することができる。
【0018】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置から射出される光を映像信号に応じて変調する光変調素子と、前記光変調素子により変調された光を被投射面上に投射する投射光学系と、を備えることを特徴とする。
本発明の一つの態様によれば、表示品位に優れ、信頼性の高いプロジェクターを実現することができる。
【0019】
本発明の一つの態様の放電灯駆動方法は、放電灯の駆動電力波形が、n個(n:2以上の自然数)の立上期間と、低電力モード点灯期間と、を有し、前記n個の立上期間は、駆動電力が低電力モード時電力以上、定格電力以下のリフレッシュ電力に向けて増加する第1番目の立上期間と、駆動電力が前記リフレッシュ電力に維持される(n−1)個の立上期間と、を含み、第x−1番目(x:2以上、n以下の自然数)の立上期間における駆動電力周波数をf
x−1、第x番目の立上期間における駆動電力周波数をf
xと表したときに、f
x−1≧f
xの関係を満たし、前記放電灯の劣化の程度に応じて複数の前記駆動電力周波数のうちの少なくとも一部の前記駆動電力周波数を調整することを特徴とする。
本発明の一つの態様の放電灯駆動方法によれば、安定した放電が得られることで放電灯の照度変化が抑えられ、放電灯の寿命を長く維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るプロジェクターについて説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0022】
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ330R,330G,330B(光変調素子)と、クロスダイクロイックプリズム340と、投射光学系350と、を備えている。
【0023】
光源装置200から射出された光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。平行化レンズ305は、光源装置200からの光を平行化する機能を有する。
【0024】
照明光学系310は、光源装置200から射出される光の照度を、液晶ライトバルブ330R,330G,330B上において均一化するように調整する機能を有する。さらに、照明光学系310は、光源装置200から射出される光の偏光方向を一方向に揃える機能を有する。その理由は、光源装置200から射出される光を液晶ライトバルブ330R,330G,330Bで有効に利用するためである。
【0025】
照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を赤色光(R)、緑色光(G)、青色光(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色光に対応付けられた液晶ライトバルブ330R,330G,330Bによりそれぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R,330G,330Bは、後述する液晶パネル560R,560G,560Bと、偏光板(図示せず)と、を備えている。偏光板は、液晶パネル560R,560G,560Bのそれぞれの光入射側および光射出側に配置される。
【0026】
変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340により合成される。合成光は投射光学系350に入射する。投射光学系350は、入射光をスクリーン700(
図3参照)に投射する。これにより、スクリーン700上に映像が表示される。なお、平行化レンズ305、照明光学系310、色分離光学系320、クロスダイクロイックプリズム340、投射光学系350の各々の構成としては、周知の構成を採用することができる。
【0027】
図2は、光源装置200の構成を示す断面図である。光源装置200は、光源ユニット210と、放電灯点灯装置(放電灯駆動装置)10と、を備えている。
図2には、光源ユニット210の断面図が示されている。光源ユニット210は、主反射鏡112と、放電灯90と、副反射鏡50と、を備えている。
【0028】
放電灯点灯装置10は、放電灯90に駆動電力(駆動電流)を供給して放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から放出された光を照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、放電灯90の光軸AXと平行である。
【0029】
放電灯90の形状は、照射方向Dに沿って延びる棒状である。放電灯90の一方の端部を第1端部90e1とし、放電灯90の他方の端部を第2端部90e2とする。放電灯90の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。放電灯90の中央部は球状に膨らんでおり、その内部は放電空間91である。放電空間91には、希ガス、金属ハロゲン化合物等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
【0030】
放電空間91には、第1電極92および第2電極93の先端が突出している。第1電極92は、放電空間91の第1端部90e1側に配置されている。第2電極93は、放電空間91の第2端部90e2側に配置されている。第1電極92および第2電極93の形状は、光軸AXに沿って延びる棒状である。放電空間91には、第1電極92および第2電極93の電極先端部が、所定距離だけ離れて対向するように配置されている。第1電極92および第2電極93の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
【0031】
放電灯90の第1端部90e1に、第1端子536が設けられている。第1端子536と第1電極92とは、放電灯90の内部を貫通する導電性部材534により電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2に、第2端子546が設けられている。第2端子546と第2電極93とは、放電灯90の内部を貫通する導電性部材544により電気的に接続されている。第1端子536および第2端子546の材料は、例えば、タングステン等の金属である。導電性部材534,544の材料としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
【0032】
第1端子536および第2端子546は、放電灯点灯装置10に接続されている。放電灯点灯装置10は、第1端子536および第2端子546に、放電灯90を駆動するための駆動電力を供給する。その結果、第1電極92および第2電極93の間でアーク放電が起きる。アーク放電により発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
【0033】
主反射鏡112は、固定部材114により、放電灯90の第1端部90e1に固定されている。主反射鏡112は、放電光のうち、照射方向Dと反対側に向かって進む光を照射方向Dに向かって反射する。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電光を照射方向Dに向かって反射できる範囲内において、特に限定されず、例えば、回転楕円形状であっても、回転放物線形状であってもよい。例えば、主反射鏡112の反射面の形状を回転放物線形状とした場合、主反射鏡112は、放電光を光軸AXに略平行な光に変換することができる。これにより、平行化レンズ305を省略することができる。
【0034】
副反射鏡50は、固定部材522により、放電灯90の第2端部90e2側に固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間91の第2端部90e2側の部分を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光のうち、主反射鏡112が配置された側と反対側に向かって進む光を主反射鏡112に向かって反射する。これにより、放電空間91から放射される光の利用効率を高めることができる。
【0035】
固定部材114,522の材料は、放電灯90からの発熱に耐え得る耐熱材料である範囲内において、特に限定されず、例えば、無機接着剤である。主反射鏡112および副反射鏡50と放電灯90との配置を固定する方法としては、主反射鏡112および副反射鏡50を放電灯90に固定する方法に限らず、任意の方法を採用できる。例えば、放電灯90と主反射鏡112とを、独立にプロジェクターの筐体(図示せず)に固定してもよい。副反射鏡50についても同様である。
【0036】
以下、プロジェクター500の回路構成について説明する。
図3は、本実施形態のプロジェクター500の回路構成の一例を示す図である。プロジェクター500は、
図1に示した光学系の他、画像信号変換部510と、直流電源装置80と、液晶パネル560R,560G,560Bと、画像処理装置570と、CPU(Central Processing Unit)580と、を備えている。
【0037】
画像信号変換部510は、外部から入力された画像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R,512G,512Bを生成し、画像処理装置570に供給する。
【0038】
画像処理装置570は、3つの画像信号512R,512G,512Bに対してそれぞれ画像処理を行う。画像処理装置570は、液晶パネル560R,560G,560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R,572G,572Bを液晶パネル560R,560G,560Bに供給する。
【0039】
直流電源装置80は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換する。直流電源装置80は、トランス(図示しないが、直流電源装置80に含まれる)の2次側にある画像信号変換部510、画像処理装置570およびトランスの1次側にある放電灯点灯装置10に直流電圧を供給する。
【0040】
放電灯点灯装置10は、起動時に放電灯90の電極間に高電圧を発生し、絶縁破壊を生じさせて放電路を形成する。以後、放電灯点灯装置10は、放電灯90が放電を維持するための駆動電流Iを供給する。
【0041】
液晶パネル560R,560G,560Bは、前述した液晶ライトバルブ330R,330G,330Bにそれぞれ備えられている。液晶パネル560R,560G,560Bは、それぞれ駆動信号572R,572G,572Bに基づいて、前述した光学系を介して各液晶パネル560R,560G,560Bに入射される色光の透過率(輝度)を変調する。
【0042】
CPU580は、プロジェクター500の点灯開始から消灯に至るまでの各種の動作を制御する。例えば、
図3の例では、通信信号582を介して点灯命令や消灯命令を放電灯点灯装置10に出力する。CPU580は、放電灯点灯装置10から通信信号584を介して放電灯90の点灯情報を受け取る。
【0043】
以下、放電灯点灯装置10の構成について説明する。
図4は、放電灯点灯装置10の回路構成の一例を示す図である。
放電灯点灯装置10は、
図4に示すように、電力制御回路20と、極性反転回路30と、制御部40と、動作検出部60と、イグナイター回路70と、を備えている。
【0044】
電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を生成する。本実施形態においては、電力制御回路20は、直流電源装置80からの電圧を入力とし、入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
【0045】
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23およびコンデンサー24を含んで構成される。スイッチ素子21は、例えば、トランジスターで構成される。本実施形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源装置80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子およびコイル23の一端に接続されている。
【0046】
コイル23の他端にコンデンサー24の一端が接続され、コンデンサー24の他端はダイオード22のアノード端子および直流電源装置80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には、後述する制御部40から電流制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電流制御信号には、例えば、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号が用いられてもよい。
【0047】
スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサー24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
【0048】
極性反転回路30は、電力制御回路20から入力される直流電流Idを所定のタイミングで極性反転させる。これにより、極性反転回路30は、制御された時間だけ継続する直流である駆動電流I、もしくは、任意の周波数を持つ交流である駆動電流Iを生成し、出力する。本実施形態において、極性反転回路30は、インバーターブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
【0049】
極性反転回路30は、例えば、トランジスターなどで構成される第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33、および第4のスイッチ素子34を含んでいる。極性反転回路30は、直列接続された第1のスイッチ素子31および第2のスイッチ素子32と、直列接続された第3のスイッチ素子33および第4のスイッチ素子34と、が互いに並列接続された構成を有する。第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33、および第4のスイッチ素子34の制御端子には、それぞれ制御部40から極性反転制御信号が入力される。この極性反転制御信号に基づいて、第1のスイッチ素子31、第2のスイッチ素子32、第3のスイッチ素子33および第4のスイッチ素子34のON/OFF動作が制御される。
【0050】
極性反転回路30においては、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34と、第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33と、を交互にON/OFFさせる動作が繰り返される。これにより、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性が交互に反転する。第1のスイッチ素子31と第2のスイッチ素子32との共通接続点、および第3のスイッチ素子33と第4のスイッチ素子34との共通接続点から、制御された時間だけ同一極性状態を継続する直流である駆動電流I、もしくは制御された周波数をもつ交流である駆動電流Iを生成し、出力する。
【0051】
すなわち、極性反転回路30では、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がONのときには第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がOFFであり、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がOFFのときには第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がONであるように制御される。したがって、第1のスイッチ素子31および第4のスイッチ素子34がONのときには、コンデンサー24の一端から第1のスイッチ素子31、放電灯90、第4のスイッチ素子34の順に流れる駆動電流Iが発生する。第2のスイッチ素子32および第3のスイッチ素子33がONのときには、コンデンサー24の一端から第3のスイッチ素子33、放電灯90、第2のスイッチ素子32の順に流れる駆動電流Iが発生する。
【0052】
本実施形態において、電力制御回路20と極性反転回路30とを合わせた部分が放電灯駆動部230に対応する。すなわち、放電灯駆動部230は、放電灯90を駆動する駆動電流I(駆動電力)を放電灯90に供給する。
【0053】
制御部40は、放電灯駆動部230を制御する。
図4の例では、制御部40は、電力制御回路20および極性反転回路30を制御することにより、駆動電流Iが同一極性を継続する保持時間、駆動電流Iの電流値(駆動電力の電力値)、周波数等のパラメーターを制御する。制御部40は、極性反転回路30に対して、駆動電流Iの極性反転タイミングにより、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの周波数等を制御する極性反転制御を行う。制御部40は、電力制御回路20に対して、出力される直流電流Idの電流値を制御する電流制御を行う。
【0054】
制御部40の構成は、特に限定されない。本実施形態においては、制御部40は、システムコントローラー41、電力制御回路コントローラー42、および極性反転回路コントローラー43を含んで構成されている。なお、制御部40は、その一部または全てを半導体集積回路で構成してもよい。
【0055】
システムコントローラー41は、電力制御回路コントローラー42および極性反転回路コントローラー43を制御することにより、電力制御回路20および極性反転回路30を制御する。システムコントローラー41は、動作検出部60が検出したランプ電圧Vlaおよび駆動電流Iに基づき、電力制御回路コントローラー42および極性反転回路コントローラー43を制御してもよい。
【0056】
本実施形態においては、システムコントローラー41は、記憶部44を含んで構成されている。記憶部44は、システムコントローラー41とは独立に設けられてもよい。
【0057】
システムコントローラー41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20および極性反転回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば、駆動電流Iが同一極性で継続する保持時間、駆動電流Iの電流値、周波数、波形、変調パターン等の駆動パラメーターに関する情報が格納されていてもよい。
【0058】
電力制御回路コントローラー42は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電流制御信号を出力することにより、電力制御回路20を制御する。
【0059】
極性反転回路コントローラー43は、システムコントローラー41からの制御信号に基づき、極性反転回路30へ極性反転制御信号を出力することにより、極性反転回路30を制御する。
【0060】
制御部40は、専用回路を用いて実現され、上述した制御や後述する処理の各種制御を行うようにすることができる。これに対して、制御部40は、例えば、CPUが記憶部44に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、これらの処理の各種制御を行うようにすることもできる。
【0061】
図5は、制御部40の他の構成例について説明するための図である。
図5に示すように、制御部40は、制御プログラムにより、電力制御回路20を制御する電流制御手段40−1、極性反転回路30を制御する極性反転制御手段40−2として機能するように構成されてもよい。
【0062】
図4に示した例では、制御部40は、放電灯点灯装置10の一部として構成されている。これに対して、制御部40の機能の一部をCPU580が担うように構成されていてもよい。
【0063】
動作検出部60は、例えば、放電灯90のランプ電圧を検出して制御部40にランプ電圧情報を出力する電圧検出部、駆動電流Iを検出して制御部40に駆動電流情報を出力する電流検出部、などを含んでいてもよい。本実施形態においては、動作検出部60は、第1の抵抗61、第2の抵抗62および第3の抵抗63を含んで構成されている。なお、放電灯90のランプ電圧は、放電灯90の電極間電圧を意味する。
【0064】
本実施形態において、電圧検出部は、放電灯90と並列に、互いに直列接続された第1の抵抗61および第2の抵抗62で分圧した電圧によりランプ電圧Vlaを検出する。また、本実施形態において、電流検出部は、放電灯90に直列に接続された第3の抵抗63に発生する電圧により駆動電流Iを検出する。
【0065】
イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作する。イグナイター回路70は、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間(第1電極92と第2電極93との間)を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(放電灯90の通常点灯時よりも高い電圧)を、放電灯90の電極間(第1電極92と第2電極93との間)に供給する。本実施形態においては、イグナイター回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
【0066】
図6(a),(b)には、第1電極92および第2電極93の先端部分が示されている。第1電極92および第2電極93の先端にはそれぞれ突起552p,562pが形成されている。第1電極92と第2電極93の間で生じる放電は、主として突起552pと突起562pとの間で生じる。本実施形態のように突起552p,562pがある場合には、突起が無い場合と比べて、第1電極92および第2電極93における放電位置(アーク位置)の移動を抑えることができる。
【0067】
図6(a)は、第1電極92が陽極として動作し、第2電極93が陰極として動作する第1極性状態を示している。第1極性状態では、放電により、第2電極93(陰極)から第1電極92(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極93)からは電子が放出される。陰極(第2電極93)から放出された電子は陽極(第1電極92)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、陽極(第1電極92)の先端(突起552p)の温度が上昇する。
【0068】
図6(b)は、第1電極92が陰極として動作し、第2電極93が陽極として動作する第2極性状態を示している。第2極性状態では、第1極性状態とは逆に、第1電極92から第2電極93へ電子が移動する。その結果、第2電極93の先端(突起562p)の温度が上昇する。
【0069】
このように、電子が衝突する陽極の温度は、電子を放出する陰極の温度と比べて高くなりやすい。ここで、一方の電極の温度が他方の電極と比べて高い状態が続くことは、種々の不具合を引き起こす虞がある。例えば、高温となる電極の先端が過剰に溶けた場合には、意図しない電極の変形が生じ得る。その結果、電極間距離(アーク長)が適正値からずれ、照度が安定しない虞がある。逆に、低温となる電極の先端の溶融が不十分な場合には、先端に生じた微小な凹凸が溶けずに残る虞がある。その結果、いわゆるアークジャンプが生じる(アーク位置が安定せずに移動する)場合がある。
【0070】
本実施形態では、電極先端の突起を適度に溶融させるために、制御部40は、放電灯90に供給する駆動電力を、
図7に示すように制御する。
図7は駆動電力の波形を示す図である。
図7の横軸は時間(秒)であり、
図7の縦軸は駆動電力(W)である。
【0071】
放電灯90の点灯を開始すると、駆動電力は徐々に上昇した後、所定の目標電力に到達する。放電灯90の点灯直後、放電灯90の内部のプラズマ密度は小さく、温度は低く、駆動電力は不安定な状態である。その後、放電灯90の内部のプラズマ密度が大きく、温度が上昇するにつれて、駆動電力は安定な状態となる。放電灯90の点灯開始から駆動電力が安定するまでの期間を立上期間と定義する。立上期間が過ぎた後は継続的に放電灯90を点灯させる期間に入る。この期間を定常点灯期間と定義する。
【0072】
本実施形態の駆動電力波形においては、
図7に示すように、立上期間は、第1立上期間T1、第2立上期間T2、第3立上期間T3、の3つの立上期間に分割されている。一例として、立上期間を100秒とすると、第1立上期間T1が40秒、第2立上期間T2が30秒、第3立上期間T3が30秒に設定されている。ここでは、立上期間を3つに分割したが、分割数は3に限ることはなく、n個(n:2以上の自然数)に分割してもよい。分割した各立上期間の時間も、特に限定されることなく、適宜設定が可能である。
【0073】
第1立上期間T1は、駆動電力が低電力モード時電力以上、定格電力以下のリフレッシュ電力に向けて直線的に増加する期間である。これに対して、第2立上期間T2および第3立上期間T3は、駆動電力がリフレッシュ電力に維持される期間である。ただし、第2立上期間T2から第3立上期間T3にわたって、第2立上期間T2、第3立上期間T3のそれぞれの駆動電力の基本波形パターンに比べて放電灯90への負荷が相対的に強い強負荷駆動波形パターンが間欠的に挿入されている。強負荷駆動波形パターンについては、後で詳しく説明する。立上期間が終了した後、低電力モード時電力を供給する定常点灯期間(低電力モード点灯期間)が設けられている。
本実施形態の「基本波形パターン」は、特許請求の範囲の「第1波形パターン」に対応する。本実施形態の「強負荷駆動波形パターン」は、特許請求の範囲の「第2波形パターン」に対応する。
【0074】
駆動電力の具体的な一例として、放電灯90の定格電力Wtが200Wであり、リフレッシュ電力Wrが170Wであり、低電力モード時電力Wlが170Wである。すなわち、この例は、リフレッシュ電力Wrと低電力モード時電力Wlとが等しい例である。0秒〜40秒の第1立上期間T1では、駆動電力は0Vから170Wに向けて直線的に増加する。40秒〜70秒の第2立上期間T2では、駆動電力は170Wで一定に維持される。70秒〜100秒の第3立上期間T3では、駆動電力は170Wで一定に維持される。100秒以降の定常点灯期間では、駆動電力は170Wで一定に維持される。
【0075】
第1立上期間T1の駆動電力周波数をf
1、第2立上期間T2の駆動電力周波数をf
2、第3立上期間T3の駆動電力周波数をf
3とすると、f
1≧f
2≧f
3の関係を満たすように各駆動電力周波数が設定されている。一例として、駆動電力周波数f
1が600Hz、駆動電力周波数f
2が400Hz、駆動電力周波数f
3が400Hzに設定されている。すなわち、第x−1番目(x:2以上、n以下の自然数)の立上期間における駆動電力周波数をf
x−1、第x番目の立上期間における駆動電力周波数をf
xと表したときに、f
x−1≧f
xの関係を満たす。定常点灯期間の駆動電力周波数は任意でよい。
【0076】
言い換えると、放電灯90の点灯直後の第1立上期間T1に対して、第2立上期間T2以降では、駆動電力周波数を維持するか、もしくは駆動電力周波数を徐々に低くする。その理由は、低電力モードで駆動した場合は定格電力で駆動した場合よりも電極先端の突起が成長せず、細くなっている。そのため、放電灯90の点灯直後にいきなり溶融効果の高い駆動を行うと、電極先端の細い突起がつぶれる虞があるからである。
【0077】
したがって、第1立上期間T1では、500Hz以上といった比較的高い駆動電力周波数の交流駆動を行うことにより、突起の形状を維持しつつ、緩やかに突起を溶融させることができる。その後、第2立上期間T2以降では、駆動電力周波数を維持もしくは徐々に低くすることにより、突起の溶融効果を徐々に高めていき、突起を太く成長させる。その場合であっても、突起を溶融させ過ぎないような駆動電力周波数を設定することが望ましい。
【0078】
上記の例では、駆動電力周波数f
1を600Hz、駆動電力周波数f
2を400Hz、駆動電力周波数f
3を400Hzとしたが、これらの駆動電力周波数は常にこの値に固定されているわけではない。
図4に示す制御部40は、ランプ電圧(電極間電圧)を参照することにより放電灯90の劣化の程度を検出し、放電灯90の劣化の程度に応じて第1立上期間、第2立上期間、第3立上期間の各々の駆動電力周波数の値を適宜調整する。
【0079】
すなわち、放電灯90の劣化(損耗)が進行している程、電極間距離が増大し、電極間距離の増大に伴ってランプ電圧が高くなる。このとき、現在の立上期間から次の立上期間に移行する際の駆動電力周波数の下げ幅を大きくし、電極先端の突起をより溶融させ、突起を成長させる必要がある。したがって、プロジェクターの設計者は、参照したランプ電圧と、そのランプ電圧に対して最適な駆動電力周波数の組み合わせを予め求めておく。ランプ電圧と駆動電力周波数の組み合わせの一例を[表1]に示す。[表1]からわかるように、第3立上期間の駆動電力周波数f
3は、第2立上期間の駆動電力周波数f
2より低くてもよいし、第2立上期間の駆動電力周波数f
2と同じでもよい。
【0081】
ここで、ランプ電圧(電極間電圧)を参照してから各立上期間の駆動電力周波数を決定するまでの第1の手順について、
図11を用いて説明する。
放電灯90が点灯(
図11のステップS1)した後、第1立上期間T1内においてランプ電圧を参照するまでの時間(
図7のtaに相当)を予め設定しておく。時間taを例えば20秒とする。制御部40は、放電灯90の点灯が開始してから時間ta(20秒)が経過したか否かを判断する(
図11のステップS2)。
【0082】
時間ta(20秒)が経過したら、制御部40はランプ電圧を参照する(
図11のステップS3)。第1立上期間T1中は駆動電力の増大に伴ってランプ電圧が徐々に上昇する。したがって、時間taで参照したランプ電圧は、定常点灯期間におけるランプ電圧とは異なる。そこで、プロジェクターの設計者は、時間taでのランプ電圧値から定常点灯期間でのランプ電圧を求める換算式、もしくは複数の放電灯を実測して得られた電圧推移の統計値に基づく換算テーブルを予め用意しておく。換算テーブルの一例を[表2]に示す。なお、[表2]では、後で説明する[表3]の強負荷駆動の挿入パターンも合わせて示している。
【0084】
制御部40は、[表2]に基づいて、定常点灯期間におけるランプ電圧を推定し(
図11のステップS4)、[表1]に基づいて、各立上期間の駆動電力周波数を決定する(
図11のステップS5)。例えば、時間taで参照したランプ電圧が30Vであったとすると、[表2]から、定常点灯期間におけるランプ電圧の推定値は81〜90Vとなる。定常点灯期間におけるランプ電圧の推定値が81〜90Vであると、[表1]から、各立上期間の駆動電力周波数は、駆動電力周波数f
1が600Hz、駆動電力周波数f
2が400Hz、駆動電力周波数f
3が400Hzとなる。
【0085】
ところで、上述したように、第1立上期間T1では突起を緩やかに溶融させることが望ましく、第2立上期間T2以降の立上期間では、突起の溶融効果を適度に高め、突起の成長を促進することが望ましい。これを実現するために、第2立上期間T2以降の立上期間では、基本波形パターンとしての駆動電力周波数を立上期間毎に低下させる、もしくは維持することに加え、放電灯90の電極に対して基本波形パターンよりも強い負荷を与える強負荷駆動波形パターンを挿入する。
【0086】
強負荷駆動波形パターンは、例えば、駆動電力周波数が500Hz以下の交流駆動波形パターン、もしくは直流駆動と交流駆動とを組み合わせた駆動波形パターンで構成される。本実施形態では、一例として、直流駆動と交流駆動とを含む駆動波形パターンを採用する。
【0087】
図10は、強負荷駆動波形パターンの一例を示す図である。
本実施形態では、
図10に示すように、一方の極性の直流駆動を8ミリ秒行った後、駆動電力周波数が1.1kHzの交流波形の1周期分を5サイクル組み合わせた単位パターンを10サイクル繰り返し、その後、直流駆動の極性を反転させて同様の駆動を繰り返すパターンを採用する。この例では、同一極性の直流駆動を繰り返し10サイクル挿入することにより、一方の電極の突起の溶融を促進している。直流駆動時間は、特に限定されないが、突起の溶融効果を高めるためには直流駆動間に挟む交流駆動時間よりも長くすることが望ましい。また、双方の電極の突起を均等に溶融させるためには、強負荷駆動波形パターンの挿入期間を全体で見たときに、一方の極性の直流駆動時間と他方の極性の直流駆動時間とが等しいことが望ましい。
【0088】
図8は、第2立上期間T2の基本波形パターンである駆動電力周波数400Hzで、放電灯90を駆動したときの電極の温度変化を示している。
図9は、第2立上期間T2の基本波形パターン中に、
図10で示した強負荷駆動波形パターンを挿入した駆動電力波形で、放電灯90を駆動したときの電極の温度変化を示している。
図8および
図9において、横軸は時間[相対値]、縦軸は温度[℃]を示している。
【0089】
図8、
図9から明らかなように、強負荷駆動波形パターンを挿入すると、強負荷駆動波形パターンを挿入しない場合に比べて電極の温度変動幅が大きくなる。電極の温度変動幅が大きいことは、言い換えると、電極への負荷が強いことであり、突起の溶融効果が大きいことを意味する。すなわち、
図9に示すような電極への負荷が強い駆動は、突起の溶融を促進し、変形、損耗した突起を再成長させる作用を有する。一方、
図8に示すような基本波形パターンによる駆動は、溶融した突起の形状を安定させ、突起を緩やかに成長させる作用を有する。このように、電極への負荷が弱く、突起を緩やかに成長させる基本的な駆動に、電極への負荷が強く、突起の溶融効果が高い駆動を間欠的に挿入することにより、低電力モードでは得にくい太い突起の成長が促進される。
【0090】
本実施形態では、制御部40は、ランプ電圧(電極間電圧)を参照することにより放電灯90の劣化の程度を検出し、放電灯90の劣化の程度に応じて強負荷駆動波形パターンの挿入の程度を適宜調整する(
図11のステップS6)。具体的に、制御部40は、放電灯90の劣化の程度に応じて、強負荷駆動波形パターンの挿入時間、挿入間隔、および挿入回数の組み合わせを適宜調整する。プロジェクターの設計者は、定常点灯期間におけるランプ電圧と、そのランプ電圧に対して最適な強負荷駆動波形パターンの挿入時間、挿入間隔、および挿入回数の組み合わせを予め求めておく。ランプ電圧と強負荷駆動波形パターンの挿入時間、挿入間隔、および挿入回数の組み合わせの一例を[表3]に示す。
【0092】
例えば、第1立上期間の時間taで参照したランプ電圧が30Vであったとすると、[表2]から、定常点灯期間におけるランプ電圧の推定値は81〜90Vとなる。定常点灯期間におけるランプ電圧の推定値が81〜90Vであると、強負荷駆動の挿入パターンはパターンDとなる。[表3]から、パターンDの場合、強負荷駆動波形パターンの挿入時間は1秒、挿入回数は5回、挿入間隔は5秒となり、
図7に示すように、強負荷駆動波形パターンKを挿入することになる。
【0093】
なお、本実施形態では、放電灯90の劣化の程度に応じて、強負荷駆動波形パターンの挿入時間、挿入間隔、および挿入回数の3つのパラメーターを調整する例を示したが、これら3つのパラメーターに加えて、強負荷駆動波形パターンの構成そのものを調整してもよい。すなわち、
図10に示した強負荷駆動波形パターン以外にも強負荷駆動波形パターンを複数種類用意しておき、放電灯90の劣化の程度に応じて複数種類の中から最適なパターンを選択するようにしてもよい。さらに、必ずしも上記4つのパラメーターを全て変化させる必要はなく、いずれかのパラメーターを固定し、残りのパラメーターのみを変化させる構成としてもよい。
【0094】
上述したように、本実施形態の放電灯点灯装置10において、放電灯90の立上期間は、第1立上期間T1から第2立上期間T2、第3立上期間T3と進むにつれて駆動電力周波数が徐々に低下しており、第2立上期間T2以降に強負荷駆動波形パターンが挿入されている。さらに、制御部40は、放電灯90の劣化の程度に応じて各立上期間の駆動電力周波数、強負荷駆動波形パターンの挿入の程度、の双方を調整する。そのため、放電灯90の劣化の程度に係わらず、電極先端の突起を常に適度に溶融させることができ、突起の形状を良好に維持することができる。その結果、放電が安定することにより、照度変化が少なく、寿命の長い光源装置200を実現できる。これにより、表示品位に優れ、信頼性の高いプロジェクター500を実現できる。
【0095】
また、本実施形態において、制御部40は、第1立上期間T1内の任意の時間taにおけるランプ電圧を参照し、ランプ電圧の参照結果から定常点灯期間のランプ電圧を推定する構成となっている。この構成によれば、1回の点灯毎に第1立上期間T1でのランプ電圧を参照するため、定常点灯期間のランプ電圧を精度良く推定でき、放電灯90の劣化の程度を的確に検出することができる。
【0096】
ただし、ランプ電圧の参照から駆動電力周波数および強負荷駆動波形パターンの挿入の程度の決定までの手順として、上記の第1の手順に代えて、以下の第2の手順を採用してもよい。第2の手順において、制御部40は、前回の放電灯点灯時に参照したランプ電圧を例えば記憶部44に記憶させておく。その後、次回の放電灯点灯時に、制御部40は、記憶部44からランプ電圧を読み出し、その読み出し結果から定常点灯期間のランプ電圧を推定する。
【0097】
第2の手順を採用した場合、前回の点灯時に記憶済みの電極間電圧を次回の点灯時に参照するため、立上期間内でランプ電圧を参照することなく、定常点灯期間のランプ電圧を容易に推定でき、放電灯90の劣化の程度を的確に検出することができる。
【0098】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態では、リフレッシュ電力Wrが低電力モード時電力Wlと等しい例を示した。この構成に代えて、リフレッシュ電力Wrは、低電力モード時電力Wlよりも高く、定格電力Wtよりも低い電力であってもよい。あるいは、リフレッシュ電力Wrは、定格電力Wtと等しくてもよい。すなわち、リフレッシュ電力Wrは、低電力モード時電力Wl以上、定格電力Wt以下の電力(Wl≦Wr≦Wt)であればよい。
【0099】
上記実施形態では、ランプ電圧を参照することにより放電灯の劣化の程度を検出したが、この構成に代えて、例えばランプ電圧を参照することなく、放電灯の累積点灯時間を参照して放電灯の劣化の程度を検出してもよい。この場合、放電灯の累積点灯時間と駆動電力周波数との関係を示すテーブル、累積点灯時間と強負荷駆動の挿入パターンとの関係を示すテーブル等を用意しておけばよい。また、強負荷駆動波形パターンは必ずしも挿入しなくてもよい。その他、放電灯駆動装置、光源装置、プロジェクターの具体的な構成については、上記実施形態の例に限らず、適宜変更が可能である。