特許第6248534号(P6248534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248534
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】過給機付自動二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62M 7/02 20060101AFI20171211BHJP
   B62K 11/04 20060101ALI20171211BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20171211BHJP
   F02B 29/04 20060101ALI20171211BHJP
   F02D 9/10 20060101ALI20171211BHJP
   F02D 9/02 20060101ALI20171211BHJP
   F02M 35/16 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B62M7/02 C
   B62M7/02 D
   B62M7/02 H
   B62M7/02 W
   B62M7/02 X
   B62K11/04 E
   B62J99/00 L
   F02B29/04 K
   F02D9/10 H
   F02D9/02 C
   F02M35/16 L
   B62J99/00 G
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-219526(P2013-219526)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-81006(P2015-81006A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎哉
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−345585(JP,A)
【文献】 特開2000−280964(JP,A)
【文献】 実開平05−034092(JP,U)
【文献】 実開昭61−039627(JP,U)
【文献】 特開2013−212736(JP,A)
【文献】 特開平01−175585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 7/02
B62J 99/00
B62K 11/04,11/06
F02B 29/04
F02D 9/02, 9/10
F02M 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの前側にエキゾーストパイプが接続されると共に、前記シリンダヘッドの後側にスロットルボディが接続され、車体フレームによって支持されるエンジンと、
吸入した燃焼用空気を圧縮する過給機と、
前記過給機によって圧縮された燃焼用空気を冷却して前記スロットルボディに供給するインタークーラと、を有する過給機付自動二輪車であって、
前記車体フレームは、
ステアリングヘッドパイプから車体後側かつ下側に向かって延出する左右一対のボディフレーム部と、
前記ボディフレーム部の後端から屈曲され、ピボット軸に向かって下側に延出する一本の中空状のフレームレッグ部と、を有し、
前記インタークーラは、前記スロットルボディの後側であって、前記左右一対のボディフレーム部の間、かつ前記フレームレッグ部の上壁に対向した位置に、傾斜して配置されることを特徴とする過給機付自動二輪車。
【請求項2】
前記インタークーラによって冷却された燃焼用空気を一時的に蓄えて前記スロットルボディに供給するサージタンクを有し、
前記サージタンクは、一部が前記左右一対のボディフレーム部の間で、前記インタークーラと上下方向に重なり合って配置されることを特徴とする請求項に記載の過給機付自動二輪車。
【請求項3】
前記車体フレームは、前記左右一対のボディフレーム部の下端に結合され、前記エンジンを懸架する左右一対の懸架プレート部を有し、
前記左右一対の懸架プレート部には、前記インタークーラを冷却するための走行風を導くダクトホース部が挿通または接続される貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項またはに記載の過給機付自動二輪車。
【請求項4】
シリンダヘッドの前側にエキゾーストパイプが接続されると共に、前記シリンダヘッドの後側にスロットルボディが接続され、車体フレームによって支持されるエンジンと、
吸入した燃焼用空気を圧縮する過給機と、
前記過給機によって圧縮された燃焼用空気を冷却して前記スロットルボディに供給するインタークーラと、を有する過給機付自動二輪車であって、
前記車体フレームは、
ステアリングヘッドパイプから車体後側かつ下側に向かって延出する左右一対のボディフレーム部と、
前記ボディフレーム部の後端から屈曲され、ピボット軸に向かって下側に延出する一本の中空状のフレームレッグ部と、を有し、
前記過給機は、燃焼用空気が前記エンジンの後側に配置された吸気ダクトの吸入口からエアクリーナを介して供給され、
前記フレームレッグ部は、中空内部に前記吸気ダクトが配置され、
前記フレームレッグ部の前壁には、前記吸入口を前記エンジンに対向させて位置させるための第1の開口が形成され、
前記フレームレッグ部の下壁には、前記吸気ダクトを挿通させて前記エアクリーナに接続させるための第2の開口が形成されていることを特徴とする過給機付自動二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼用空気を圧縮してエンジンに供給する過給機を備えた過給機付自動二輪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関であるエンジンの燃費改善と出力向上を図るために、エンジンの排気量ダウンおよび過給機の組合せを用いた過給機付自動二輪車が知られている。
【0003】
特許文献1には、エンジンのシリンダヘッドに隣接する位置に過給機が取り付けられた自動二輪車が開示されている。過給機はエアクリーナボックスから導入した外気をコンプレッサにより圧縮した後、インタークーラで冷却してエンジンに供給する。このように過給機により圧縮された外気をエンジンで燃焼させることで燃焼効率が向上するために、燃費改善と出力向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−173259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような過給機を有する自動二輪車では、向上された出力に応じた車体剛性の向上が要求される。一方、車体剛性を向上させるために車体を重量化させたのでは燃費改善が損なわれてしまう。このように過給機付自動二輪車では、車体剛性の向上と車体の軽量化という、相反する要求を達成することが求められる。
【0006】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、車体剛性の向上を図ると共に車体を軽量化ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の過給機付自動二輪車は、シリンダヘッドの前側にエキゾーストパイプが接続されると共に、前記シリンダヘッドの後側にスロットルボディが接続され、車体フレームによって支持されるエンジンと、吸入した燃焼用空気を圧縮する過給機と、前記過給機によって圧縮された燃焼用空気を冷却して前記スロットルボディに供給するインタークーラと、を有する過給機付自動二輪車であって、前記車体フレームは、ステアリングヘッドパイプから車体後側かつ下側に向かって延出する左右一対のボディフレーム部と、前記ボディフレーム部の後端から屈曲され、ピボット軸に向かって下側に延出する一本の中空状のフレームレッグ部と、を有し、前記インタークーラは、前記スロットルボディの後側であって、前記左右一対のボディフレーム部の間、かつ前記フレームレッグ部の上壁に対向した位置に、傾斜して配置されることを特徴とする。
本発明の過給機付自動二輪車は、シリンダヘッドの前側にエキゾーストパイプが接続されると共に、前記シリンダヘッドの後側にスロットルボディが接続され、車体フレームによって支持されるエンジンと、吸入した燃焼用空気を圧縮する過給機と、前記過給機によって圧縮された燃焼用空気を冷却して前記スロットルボディに供給するインタークーラと、を有する過給機付自動二輪車であって、前記車体フレームは、ステアリングヘッドパイプから車体後側かつ下側に向かって延出する左右一対のボディフレーム部と、前記ボディフレーム部の後端から屈曲され、ピボット軸に向かって下側に延出する一本の中空状のフレームレッグ部と、を有し、前記過給機は、燃焼用空気が前記エンジンの後側に配置された吸気ダクトの吸入口からエアクリーナを介して供給され、前記フレームレッグ部は、中空内部に前記吸気ダクトが配置され、前記フレームレッグ部の前壁には、前記吸入口を前記エンジンに対向させて位置させるための第1の開口が形成され、前記フレームレッグ部の下壁には、前記吸気ダクトを挿通させて前記エアクリーナに接続させるための第2の開口が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車体フレームがボディフレーム部の後端から屈曲され、ピボット軸に向かって下側に延出する一本の中空状のフレームレッグ部を有することにより、車体フレームの剛性を向上させることができる。また、フレームレッグ部が1本の中空状であるために薄肉に形成することができ、車体フレームを軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の自動二輪車の左側面図である。
図2】本実施形態の自動二輪車の外装を取り外した状態の左側面図である。
図3】本実施形態の自動二輪車の上面図である。
図4】本実施形態のエンジンユニットの周辺の構成を示す斜視図である。
図5】本実施形態のエンジンユニットの周辺の構成を示す上面図である。
図6】本実施形態のエンジンユニットの周辺の構成を示す底面図である。
図7】本実施形態の自動二輪車の前部下側からの斜視図である。
図8】本実施形態のエンジンユニットにおけるエアクリーナの周辺を示す下側からの斜視図である。
図9】本実施形態のフレームレッグ部の後側からの図である。
図10図9のI−I線に沿う断面図である。
図11図10のII−II線に沿う断面図である。
図12】本実施形態のフレームレッグ部の前側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明に係る過給機付自動二輪車について好適な実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の過給機付自動二輪車としての自動二輪車100の左側面図である。図2は、フロントカウリング118を取り外した状態の左側面図である。図3は、自動二輪車100の上面図である。まず、これらの図を用いて、自動二輪車100の全体構成について説明する。なお、図1図3を含め、以下の説明で用いる図には、必要に応じて車体の前側を矢印Frにより、車体の後側を矢印Rrにより示し、また、車体の右側を矢印Rにより、車体の左側を矢印Lにより示す。
【0011】
図1および図2において鋼製あるいはアルミニウム合金材でなる車体フレーム101の前部には、ステアリングヘッドパイプ102によって左右に回動可能に支持された左右2本のフロントフォーク103が設けられる。フロントフォーク103の上端にはステアリングブラケット105を介してハンドルバー104が固定される。フロントフォーク103の下部には前輪106が回転可能に支持されると共に、前輪106の上側から覆うようにフロントフェンダ107が固定される。
【0012】
車体フレーム101はステアリングヘッドパイプ102の後部に一体的に結合され、後側に向けて左右一対で二又状に分岐し、ステアリングヘッドパイプ102から車体後側かつ下側に向かって拡幅しながら延出されるボディフレーム部101Aを有している。ここでは高速性能を要求される車両等に好適なものとして採用される所謂、ツインスパーフレームであってよい。ボディフレーム部101Aは主に、乗員が着座するシート108および燃料タンク120を支持する。
【0013】
また、車体フレーム101は、ボディフレーム部101Aの後端に結合され、この後端からピボット軸109に向かって下側に延出するフレームレッグ部101Bを有している。フレームレッグ部101Bは、上下方向の略中央でピボット軸109を介して、スイングアーム110を上下方向に揺動可能に結合される。本実施形態のフレームレッグ部101Bは、一本の中空状に形成されており、車体剛性の向上と車体の軽量化を図ることができる。フレームレッグ部101Bの詳細な構成については後述する。
【0014】
また、車体フレーム101は左右一対のボディフレーム部101Aの下端に一体的に結合される懸架プレート部101Cを有している(図2を参照)。懸架プレート部101Cはボディフレーム部101Aと同様に、後側に向けて左右一対で二又状に分岐し、ステアリングヘッドパイプ102から車体後側かつ下側に向かって拡幅しながら延出される。懸架プレート部101Cは、ボディフレーム部101Aの前後方向の長さよりも短く形成され、主にエンジンユニット10を支持する。
【0015】
スイングアーム110の後端には後輪111が回転可能に支持される。後輪111はスイングアーム110の後部側で片持ち式に支持される。フレームレッグ部101Bとスイングアーム110の間にはリヤショックアブソーバ112が装架される。また、フレームレッグ部101Bおよびスイングアーム110の双方はリンク機構113を介して連結される。後輪111には、エンジン11の動力を伝達するチェーン115が巻回されるドリブンスプロケット114が軸着し、後輪111はドリブンスプロケット114を介して回転駆動される。後輪111の周囲には、前側かつ上側から覆うインナフェンダ116と、後側かつ上側から覆うリヤフェンダ117とが設けられる。
【0016】
車両前部はフロントカウリング118によって覆われる。フロントカウリング118は前輪106の上側かつステアリングヘッドパイプ102の前側で懸架プレート部101C等を介して取り付けられる。
車体左右両側および後側はテールカウリング119によって覆われる。テールカウリング119はボディフレーム部101A等を介して取り付けられる。テールカウリング119は、車体後側に向かうにしたがって上側に傾斜するように形成される。
シート108の前側には車体フレーム101を介して燃料タンク120が搭載される。
【0017】
自動二輪車100の略車両中央部においてエンジンユニット10が搭載される。エンジンユニット10はエンジン11を有している。本実施形態のエンジン11は、水冷式多気筒の4サイクルガソリンエンジンであって、♯1気筒および♯2気筒が左右(車幅方向)に並設された並列2気筒エンジンを用いている。
図4は、エンジンユニット10の周辺の構成を示す斜視図である。図5は、燃料タンク120を取り除いた状態のエンジンユニット10の周辺の構成を示す上面図である。図6は、エンジンユニット10の周辺の構成を示す底面図である。図7は、自動二輪車の前部下側からの斜視図である。図8は、エアクリーナ26の周辺の下側からの斜視図である。
【0018】
図2および図4に示すように、エンジン11は左右に水平支持されるクランクシャフトを収容するクランクケース12の上側にシリンダ13、シリンダヘッド14およびシリンダヘッドカバー15が順次重なるように一体的に結合される。図2に示すように、クランクケース12の最下部にはオイルパン16が左側に偏倚した状態で付設される。
また、エンジン11はシリンダ軸線が前側に適度に傾斜した状態で、フレームレッグ部101Bおよび懸架プレート部101Cによって懸架される。エンジン11は車体フレーム101の内側で一体的に結合支持され、それ自体で車体フレーム101の剛性部材として作用する。
【0019】
クランクケース12の後部にはトランスミッションケース17が結合される。トランスミッションケース17内には図示しないカウンタシャフトや複数のトランスミッションギアが配設される。エンジンユニット10の動力はクランクシャフトからトランスミッションを経て最終的に、その出力端であるドライブスプロケット18に伝達される。ドライブスプロケット18に伝達された動力はチェーン115(図1を参照)からドリブンスプロケット114を介して後輪111を回転駆動する。
【0020】
なお、クランクケース12とトランスミッションケース17は相互に一体的に結合し、全体としてエンジンユニット10のケーシングアセンブリを構成する。このケーシングアセンブリの適所にはエンジン始動用のスタータモータやクラッチ装置等を始めとする複数の補機類が搭載もしくは結合し、これらを含めたエンジンユニット10全体が車体フレーム101によって支持される。
【0021】
エンジン11には更に、エアクリーナ26からの空気(燃焼用空気)と燃料供給装置からの燃料とが混合された混合気を供給する吸気系、燃焼後の排気ガスをエンジン11から排出する排気系、エンジン11を冷却する冷却系およびエンジン11の可動部を潤滑する潤滑系、更にはそれらを作動制御する制御系(ECU;Engine Control Unit)を有する。制御系の制御によりエンジンユニット10が全体として円滑作動する。
【0022】
まず、吸気系について説明する。
♯1気筒および♯2気筒ともにシリンダヘッド14の後部にインテークポート19が開口する(図5を参照)。各インテークポート19にはインテークパイプ21を介してスロットルボディ20が接続される。スロットルボディ20内には、アクセル開度に応じてスロットルボディ20内の吸気通路を開閉する図示しないスロットルバルブが装着される。スロットルバルブは後述するエアクリーナ26から送給される空気の流量を制御する。ここでは、♯1気筒および♯2気筒のスロットルバルブのスロットルバルブ軸が車幅方向に沿って同軸に配置される。図4に示すように、各スロットルボディ20の間には電気もしくは電磁式に駆動するバルブ駆動機構22が配置される。一方、各スロットルボディ20のスロットルバルブよりも下流側には、それぞれ燃料噴射用のインジェクタ23が配置されている。各インジェクタ23は車幅方向に横架されたデリバリパイプ24と接続され、デリバリパイプ24から燃料タンク120内の燃料が燃料ポンプによって圧送される。各インジェクタ23は制御系の制御により所定タイミングでスロットルボディ20内の吸気流路に燃料を噴射し、これにより♯1気筒および♯2気筒のシリンダ13に所定空燃比の混合気が供給される。
【0023】
図4および図6に示すように、エンジン11の下部、より具体的にはクランクケース12の左側に設けられたマグネト室25の下側かつオイルパン16の左側に、クランクケース12から所定の間隔をあけてエアクリーナ26が配置される。図7に示すように、エアクリーナ26は左側面が下方に向けて内側へ傾斜する箱型に形成される。エアクリーナ26ではケーシング内に取り込んだ空気をエアフィルタで清浄化する。図6に示すように、エアクリーナ26のケーシングの後面部には空気を取り込むための流入口26aが形成され、吸気ダクト55が接続される。一方、エアクリーナ26のケーシングの前面部には清浄化された空気の流出口26bが形成され、流出口26bに送給パイプ27Aが接続される。
図4に示すように、送給パイプ27Aはエアクリーナ26から前側に延出されクランクケース12の前側に回り込んで過給機30(ターボチャージャ)に接続される。
【0024】
過給機30はエンジン11の前側、具体的にはクランクケース12の前側に配置される。過給機30は、コンプレッサが配置され、エアクリーナ26から吸入され送給パイプ27Aを通って送給された空気を強制的に圧縮する。過給機30の上側には送給パイプ27Bが接続され、シリンダ13の左側を通って空冷式のインタークーラ28に接続される。過給機30によって圧縮された空気は送給パイプ27Bを通ってインタークーラ28に送給される。
過給機30によって圧縮された空気は発熱するため、そのままではエンジン11の吸気効率が低下し、燃焼効率が低下する。そのため、インタークーラ28は送給パイプ27Bから供給された空気を冷却する。インタークーラ28は、スロットルボディ20の後側に位置し、図5に示すように左右一対のボディフレーム部101Aの間で、ボディフレーム部101Aのブラケット123に形成された複数の固定孔を介してネジによって固定される。インタークーラ28は中空の略薄箱型を呈し、その長手方向が車体前後方向に延出され、図2に示すように車体側面視で後側に向かうにしたがって上側に適度に傾斜して配置される。インタークーラ28によって冷却された空気はパイプを介してサージタンク29に送給される。
【0025】
サージタンク29は、シリンダヘッド14の後側であって、燃料タンク120の下側に配置される。また、サージタンク29は、図2および図5に示すように左右一対のボディフレーム部101Aの間で、インタークーラ28の一部(前部付近)が上下方向に重なって配置される。サージタンク29は、インタークーラ28によって冷却された空気を一時的に蓄えることでエンジン11に過不足なく空気を供給する。サージタンク29により一時的に蓄えられた空気は前端に接続されたスロットルボディ20に供給される。
【0026】
次に、排気系について説明する。
♯1および♯2気筒ともシリンダヘッド14の前部にエキゾーストポート31が開口する(図4を参照)。各エキゾーストポート31にはエキゾーストパイプ32Aが接続される。各エキゾーストパイプ32Aはエキゾーストポート31から一旦下側へ延出して、シリンダ13の前側で合流して一体化して過給機30に接続される。過給機30の右側にはエキゾーストパイプ32Bが接続され、過給機30の右側からクランクケース12の右側に回り込んで、更に後側へ延出する。エキゾーストパイプ32Bの後端には図示しないマフラが取り付けられる。
過給機30は、タービンが配置され、エンジン11の排気流を利用してタービンが回転することで、上述したコンプレッサが駆動して送給パイプ27Aを通って送給された空気を強制的に圧縮する。
【0027】
次に、冷却系について説明する。
シリンダ13を含むシリンダブロックの周囲には冷却水が循環するように形成したウォータジャケットが構成されるとともに、該ウォータジャケットに送給される冷却水を冷却するラジエータ33を装備する(図2を参照)。ラジエータ33はエンジンユニット10の前部にて車体フレーム101等を利用して、それらの適所に支持される。
【0028】
次に、潤滑系について説明する。
エンジンユニット10の可動部に潤滑油を供給して、それらを潤滑するための潤滑系が構成される。この潤滑系には、クランクシャフトやシリンダヘッド14内に構成される動弁装置、そしてそれらを連結するカムチェーン、トランスミッション等が含まれる。本実施形態の潤滑系にはオイルポンプが使用され、このオイルポンプによりオイルパン16から吸い上げたオイルを可動部に圧送する。
【0029】
なお、上述の吸気系に付随し、走行風をインタークーラ28の上面に導いて冷却するダクトホース部34を有している。ダクトホース部34は、導入ダクト部35と、導出ダクト部37とを有している(図2を参照)。
導入ダクト部35は、導入ダクト36a、36bの左右一対で形成される。図3に示すように、各導入ダクト36a、36bは、フロントカウリング118の内周に沿って、フロントカウリング118の前部から懸架プレート部101Cに亘って配置される。各導入ダクト36a、36bの前側開口は、走行風が高圧となるフロントカウリング118の前端部の左右両側に形成された導入孔121a、121bに連通される。また、各導入ダクト36a、36bの後端は、懸架プレート部101Cに形成された各貫通孔122a、122b(図5図7を参照)に連通した状態で懸架プレート部101Cに接続される。なお、各導入ダクト36a、36bの後端は貫通孔122a、122bに挿通されることで、懸架プレート部101Cに接続されていてもよい。
【0030】
図5に示すように、導出ダクト部37は上面視で略T字状に形成され、上流側導出ダクト38aと、下流側導出ダクト38bとで形成される。上流側導出ダクト38aは、左右一対の懸架プレート部101Cの内側で車体幅方向に配置され、貫通孔122aと貫通孔122bとに連通した状態で懸架プレート部101Cに接続される。なお、上流側導出ダクト38aは貫通孔122aと貫通孔122bに挿通されることで、懸架プレート部101Cに接続されていてもよい。
下流側導出ダクト38bは、上流側導出ダクト38aの車体幅方向の中央から略水平に車体後側に向かって延出され、インタークーラ28まで到っている。図2に示すように下流側導出ダクト38bは、燃料タンク120の下側、シリンダヘッドカバー15の上側およびサージタンク29の上側を経由して、インタークーラ28の上側まで到っている。下流側導出ダクト38bの後端は、インタークーラ28の上面に向かって屈曲して形成される。
【0031】
したがって、フロントカウリング118の導入孔121a、121bを通して導入ダクト部35の導入ダクト36a、36bに流入された走行風は、上流側導出ダクト38aを経由して、下流側導出ダクト38bからインタークーラ28に向かって流出される。走行風はインタークーラ28を取り囲むように、インタークーラ28の上面、側面および下面を冷却して、車体後側に排出される。具体的には、走行風は図1に示すテールカウリング119と後輪111と間の空間であってフレームレッグ部101Bの後側、すなわちインナフェンダ116に向かって排出される。
【0032】
ここで、本発明における基本的な作用等について説明する。先ず、過給機30を備えることによりエンジン11の実質的な排気量ダウンと吸気効率の向上を同時に図ることができる。この場合、インタークーラ28によって、過給機30により圧縮された空気を冷却することで、吸気効率の低下を防ぎ、燃費改善と出力向上を実現する。
また、インタークーラ28とサージタンク29とを上下方向に重なり合うように配置することで、両者が隣接され、両者間の空気経路を短縮できてスロットルレスポンスが向上する。また、配管類を減らすことができるため軽量化、部品点数減にも繋がる。また、インタークーラ28をエンジン11の後側に配置することでラジエータ33やエキゾーストパイプ32Aおよび過給機30が配置されるエンジン11の前側のレイアウトを容易化できる。
【0033】
また、過給機30をインタークーラ28の前側に配置することで、過給機30がエンジン11付近に配置されることになり、吸気系部品を集約できるため配管を短縮、簡略化できる。また、部品重量が車体中央部に集中するため、車両の操作性が向上する。過給機30は、シリンダ13の前側から延びるエキゾーストパイプ32Aに隣接してエンジン11の前側に配置する一方、インタークーラ28を後側に配置したことでエンジン11の前側のレイアウトを容易にしている。
【0034】
また、インタークーラ28をボディフレーム部101Aの間に位置させ、側面視で車体フレーム101と重ね合わせるようにしたことで、インタークーラ28をより前側に配置できる。したがって、インタークーラ28をエンジンユニット10に近接させることができ、マスの集中化が図られ、車両の操縦性および安定性が向上する。また、インタークーラ28を前側に配置することで、インタークーラ28を冷却した走行風を排出させる位置をフレームレッグ部101Bの後側の直近にすることができる。フレームレッグ部101Bの後側の直近は、後述するようにフレームレッグ部101Bによって前側から覆われ低圧(負圧)になるために、インタークーラ28を冷却した走行風が吸い出され、効率的にインタークーラ28が冷却される。
【0035】
また、インタークーラ28はシート108の下側に位置し、少なくともその一部がシート108の前端に対して後側に位置する。インタークーラ28をシート108の下側(真下もしくは後側)に配置することで、シート108の前側に配置する場合に較べて、インタークーラ28を冷却した高温の走行風が乗員に当り難くなり、乗員における快適性が向上する。
【0036】
また、インタークーラ28において詳細図示は省略するが、空気の流入口と流出口とが一方側(車体前半部)に位置し、内部の空気流路が略U字形状となる。これにより空気の流路をインタークーラ28の内部で折り返す構成とすることで、折返し型のU字配管を設けた場合に較べてインタークーラ28を、従来のU字配管の占有分広く設定できる。これによりシート108下側の限られた空間もしくはスペースを最大限に活用できるため冷却効率が向上する上、部品点数も減らすことが可能になる。
【0037】
次に、上述したフレームレッグ部101Bについて詳細に説明する。フレームレッグ部101Bは、ボディフレーム部101Aの後端から屈曲され、下側に向かって延出して形成される。
図9は、フレームレッグ部101Bを後側から見た図である。図10は、フレームレッグ部101Bの断面図であって、図9に示すI−I線の断面図である。図11は、図10に示すII−II線の断面図である。図12は、フレームレッグ部101Bを前側から見た斜視図である。
フレームレッグ部101Bは、左右一対の側壁41a、41bと、後壁45と、前壁47と、上壁50と、下壁51とを有し、上下方向に延出する一本の中空状に形成される。
【0038】
側壁41a、41bは、左右一対のボディフレーム部101Aから連続して下側に延出して形成されることで、いわゆるツインスパーフレームの一部を構成する。図10に示すように、側壁41a、41bの上下方向の略中央には挿通孔42がそれぞれ形成され、挿通孔42をピボット軸109が車体幅方向に挿通される。なお、図9に示すように、ピボット軸109は、側壁41a、41bの下端に結合され側壁41a、41bから外側にそれぞれ離れて配置されるピボット支持部43a、43bによって支持される。また、側壁41a、41bの上下部には前壁47よりも前側に突出させて、エンジン懸架部44が形成される(図12を参照)。
【0039】
図11に示すように、後壁45は側壁41a、41bの後端を所定の間隔をあけて相互に結合する。後壁45は側壁41a、41bの上端から下端に到るまで隙間なく形成される。したがって、フレームレッグ部101Bの後側の直近は、後壁45によって前側から完全に覆われるために、走行時には低圧となる。また、後壁45の下部には後側に突出させ、リンク機構113を接続する接続部46が形成される。
前壁47は側壁41a、41bの前端を所定の間隔をあけて相互に結合する。前壁47は、トランスミッションケース17の後面17Aとの間に適度のギャップ48が形成される。前壁47にはピボット軸109よりも高い位置に矩形状の第1の開口49が形成される。第1の開口49は、後述する吸気ダクト55の吸入口58が挿通される。
【0040】
図10に示すように、上壁50は側壁41a、41b、後壁45および前壁47により形成される空間を上側から覆うように、側壁41a、41b、後壁45の上端および前壁47の上端を相互に結合する。上壁50は後側に向かうにしたがって上側に傾斜して形成される。上壁50の傾斜角度とインタークーラ28の傾斜角度とが同一または略同一であり、上壁50とインタークーラ28の前端とが対向している。本実施形態では、上壁50とインタークーラ28とが接しており、上壁50がインタークーラ28を下側から支持している。
下壁51は側壁41a、41b、後壁45および前壁47により形成される空間を下側から覆うように、側壁41a、41b、後壁45の下端および前壁47の下端を相互に結合する。下壁51には略中央に矩形状の第2の開口52が形成される。第2の開口52は、後述する吸気ダクト55が挿通される。
【0041】
本実施形態では、フレームレッグ部101Bの中空内部に吸気ダクト55が配置されている。
図8および図10に示すように、吸気ダクト55は、エアクリーナ26の流入口26aから後側に略水平に延出する延出部56と、延出部56の後端から屈曲して上側に延出する吸入部57とを有している。吸気ダクト55は、延出部56と吸入部57とにより側面視で略L字状を呈する。
図6および図8に示すように、延出部56は、車体幅方向の左側に偏倚して配置されたエアクリーナ26から、右斜め後側に向かって延出され、フレームレッグ部101Bの下側、すなわち車幅方向の中央に到っている。
【0042】
吸入部57は、上端が前側に屈曲され、その先端に空気を取り込むための吸入口58が形成される。吸入口58はエンジン11、具体的にはトランスミッションケース17の後面17Aに対向して配置される。また、吸入部57の前面には、ピボット軸109との干渉を避けるための凹部59が形成される。
【0043】
図10図12に示すように、吸気ダクト55がフレームレッグ部101Bの中空内部に配置された状態では、吸入部57の屈曲した先端はフレームレッグ部101Bの前壁47の第1の開口49を挿通して、吸入口58がギャップ48に位置する。また、吸入部57の下側は、フレームレッグ部101Bの下壁51の第2の開口52を挿通して、延出部56に接続される。
【0044】
このように、フレームレッグ部101Bが側壁41a、41b、後壁45、前壁47によって断面矩形状の1本で構成されることから、左右一対のみのフレームに較べて車体剛性の向上を図ることができる。また、フレームレッグ部101Bを1本で構成して車体剛性が向上することから、側壁41a、41b、後壁45、前壁47の各厚みを薄肉にすることができ、左右一対のみにより厚肉で形成されるフレームに較べて車体の軽量化を図ることができる。
【0045】
また、フレームレッグ部101B内に吸気ダクト55を配置することによりフレームレッグ部101Bの中空内部を有効に利用することができる。特にフレームレッグ部101B内は比較的、広く形成されるために、吸入口58からエアクリーナ26までの距離が適切な長さになるように吸気ダクト55を自由に設計することができる。また、フレームレッグ部101Bは吸気ダクト55の吸入部57を囲んでいるために、吸気ダクト55から発生する吸気音を軽減することができると共に、飛石等による損傷を防止することができる。更に、フレームレッグ部101Bに形成された第1の開口49および第2の開口52により吸気ダクト55の吸入部57を支持することから、別途にブラケット部材などを用いて支持する必要がなく、部品点数の削減および軽量化を図ることができる。
【0046】
また、吸気ダクト55の吸入口58は、ピボット軸109よりも高い位置に配置されることで、水や泥等の異物の混入を抑制させることができる。したがって、エアクリーナ26が低部に配置されているにも拘わらず、エアクリーナ26に水分等が誘導されるのを防止することができる。
また、吸気ダクト55の吸入口58はエンジン11、具体的にはトランスミッションケース17の後面17Aに対向し、ギャップ48内に配置されることから、ギャップ48を介して空気を取り込む。したがって、吸入口58からの異物の混入を抑制させることができる。
【0047】
なお、上述したフレームレッグ部101Bを含む車体フレーム101は、例えばアルミダイカストの鋳造によって製造することができる。この場合、フレームレッグ部101Bの中空内部の形状に合致した中子を用いて鋳造される。このとき、フレームレッグ部101Bの上下方向の略中央に形成された第1の開口49を介して中子を支持することで、フレームレッグ部101Bを容易に製造することができる。
【0048】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上述した実施形態ではエンジン11として水冷式の並列2気筒エンジンを用いる場合について説明したが、エンジン11の気筒数や冷却方式等は適宜選択可能であり、例えば3気筒以上の空冷エンジンに対しても適用可能である。
【0049】
また、上述した実施形態ではインタークーラ28から冷却された空気を一時的に蓄えるサージタンク29を有する場合について説明したが、サージタンク29は省略してもよい。サージタンク29を省略した場合には、インタークーラ28から直接スロットルボディ20に空気を供給する構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:エンジンユニット 11:エンジン 12:クランクケース 13:シリンダ 14:シリンダヘッド 20:スロットルボディ 26:エアクリーナ 28:インタークーラ 29:サージタンク 30:過給機 34:ダクトホース部 47:前壁 49:第1の開口 50:上壁 51:下壁 52:第2の開口 55:吸気ダクト 58:吸入口 100:自動二輪車 101:車体フレーム 101A:ボディフレーム部 101B:フレームレッグ部 101C:懸架プレート部 109:ピボット軸 122a、122b:貫通孔
図1
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図12