(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音響レンズは被検体に接触した方が超音波を伝播し易い。そして、音響レンズの位置は操作者が制御するので、音響レンズは被検体に押圧されることがある。特許文献1では音響レンズの周囲がメタルパッケージに支持されている。従って、被検体から音響レンズに応力が加わるとき、音響レンズは外周で保持されているので変形し易くなっている。音響レンズが変形するとき超音波が収束する場所が移動し、収束する場所の超音波の音圧が低下する。そこで、音響レンズの変形を抑制して効率良く超音波を受発信することができる超音波デバイスが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる超音波デバイスであって、超音波の発信および受信の少なくとも一方を行う複数の超音波素子を有する超音波素子アレイ基板と、前記超音波を収束させる音響レンズと、前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとの間に配置され樹脂で形成された音響整合部と、前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとの間に配置され前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとに接触する複数の球状の間隔維持部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、超音波素子アレイ基板には複数の超音波素子が設置されている。超音波素子は超音波の発信または受信を行う。もしくは、超音波素子は超音波の発信及び受信を行う。超音波素子が発信する超音波は音響整合部及び音響レンズを通過して被検体に射出される。音響整合部は超音波素子と音響レンズとの間の音響インピーダンスを調整する。これにより、超音波素子と音響整合部との間の界面で超音波が反射し難くなり、音響整合部と音響レンズとの間の界面で超音波が反射し難くなる。従って、超音波は効率良く被検体に射出される。
【0009】
音響レンズは被検体と接触させて使用される。このとき、音響レンズは被検体から押圧され、音響レンズの内部には応力が発生する。音響整合部の樹脂は変形し易いので音響レンズの応力により変形する。一方、間隔維持部材は音響レンズと超音波素子アレイ基板と接触し、音響レンズの応力を超音波素子アレイ基板に伝える。そして、間隔維持部材により音響整合部の厚みが一定に維持される為、音響レンズの変形を抑制し超音波を精度良く収束させることができる。さらに、被検体にて反射した超音波も音響レンズの変形が抑制されている為精度良く超音波素子に収束させることができる。その結果、超音波デバイスは効率良く超音波を受発信することができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる超音波デバイスにおいて、前記超音波素子アレイ基板の厚み方向からみた平面視において、前記球状の間隔維持部材は前記超音波素子を囲むように配置されることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、間隔維持部材は超音波素子を囲むように配置されている。従って、間隔維持部材は音響整合部の厚みを確実に維持することができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる超音波デバイスにおいて、前記超音波素子アレイ基板には電極と前記電極を絶縁する絶縁膜とが設置され、前記間隔維持部材が前記電極上に位置することを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、超音波素子アレイ基板には電極とこの電極を覆って絶縁する絶縁膜とが設置されている。そして、間隔維持部材が電極上に位置している。電極は間隔維持部材から応力を受けても影響を受け難いので超音波デバイスは品質良く動作することができる。そして、静電気を帯びた間隔維持部材と電圧が印加された電極とに静電力の引力を作用させることにより、容易に間隔維持部材を電極に誘導させることができる。そして、間隔維持部材と電極との間には絶縁膜が設置されているので、間隔維持部材は静電気を帯びた状態を維持したまま電極上に静止する。従って、間隔維持部材を電極のある場所に容易に配置させることができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる超音波デバイスにおいて、前記超音波素子アレイ基板は前記超音波素子が設置された基板を備え、前記超音波素子の前記基板表面からの高さは前記電極の前記基板表面からの高さより高いことを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、超音波素子の基板表面からの高さは電極の基板表面からの高さより高くなっている。基板に間隔維持部材を設置した後で音響整合部を設置する。音響整合部が設置される前では間隔維持部材は基板上を移動し易い状態となっている。そして、超音波素子上に位置する間隔維持部材には重力が作用するので間隔維持部材は突出した超音波素子上から基板上に移動し易くなっている。基板上に位置する間隔維持部材は基板上から突出した超音波素子上に移動し難くなっている。従って、間隔維持部材を超音波素子上に位置し難くすることができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかる超音波デバイスにおいて、前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとを挟んで固定する固定枠を備え、前記超音波素子アレイ基板の厚み方向からみた平面視で前記固定枠に挟まれた場所の前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとの間には前記間隔維持部材が配置されることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、固定枠が超音波素子アレイ基板と音響レンズとを挟んで固定する。超音波素子アレイ基板と音響レンズとの間には音響整合部に混じって間隔維持部材が設置されている。固定枠は超音波素子アレイ基板と音響レンズとの間に間隔維持部材を挟む為、間隔維持部材は確実に音響整合部の厚みを一定に保持することができる。
【0018】
[適用例6]
本適用例にかかる超音波プローブヘッドであって、上記に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスを支持する筐体と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、超音波プローブヘッドは上記に記載の超音波デバイスと、この超音波デバイスを支持する筐体と、を備えている。本適用例の超音波プローブヘッドは、音響整合部の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイスを備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波プローブヘッドを提供できる。
【0020】
[適用例7]
本適用例にかかる超音波プローブであって、上記に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスを駆動する駆動回路と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、超音波プローブは上記に記載の超音波デバイスと、この超音波デバイスを駆動する駆動回路を備えている。本適用例の超音波プローブは、音響整合部の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイスを備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波プローブを提供できる。
【0022】
[適用例8]
本適用例にかかる電子機器であって、上記に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続され、前記超音波デバイスの出力を用いて画像を生成する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、電子機器は上記に記載の超音波デバイス及び処理部を備えている。処理部は超音波デバイスの出力を用いて画像データの生成を行う。本適用例の電子機器は、音響整合部の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイスを備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う電子機器を提供できる。
【0024】
[適用例9]
本適用例にかかる超音波画像装置であって、上記に記載の超音波デバイスと、前記超音波デバイスに接続され、前記超音波デバイスの出力を用いて画像を生成する処理を行う処理部と、前記画像を表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、超音波画像装置は上記の超音波デバイスと、処理部及び表示部を備えている。処理部は超音波デバイスの出力を用いて画像データの生成を行う。表示部は、処理部が生成した画像を表示する。本適用例の超音波画像装置は、音響整合部の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイスを備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波画像装置を提供できる。
【0026】
[適用例10]
本適用例にかかる超音波デバイスの製造方法であって、超音波素子アレイ基板に設置された電極に第1極性の電圧を印加し、前記第1極性と異なる第2極性に帯電させた球状の複数の間隔維持部材を前記超音波素子アレイ基板に散布し、前記間隔維持部材に重ねて音響レンズを設置し、前記超音波素子アレイ基板に樹脂を含む音響整合部の材料を設置し、前記音響整合部の材料を固化することを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、基板に設置された電極に第1極性の電圧を印加する。そして、第1極性と異なる第2極性に帯電させた球状の複数の間隔維持部材を基板に散布する。従って、電極と間隔維持部材との間には静電力の引力が作用する。そして、間隔維持部材は電極に向かって移動するので、電極には間隔維持部材が集結する。間隔維持部材は球体状となっている。従って、間隔維持部材は超音波素子アレイ基板上を転がり易くなる為、間隔維持部材を電極上に配置させ易くすることができる。そして、音響レンズと超音波素子アレイ基板との間で音響整合部が固化される。
【0028】
間隔維持部材は電極のある場所に集結するので、間隔維持部材は超音波の発信と受信に影響を与えない。そして、間隔維持部材は音響レンズが被検体から受ける応力を超音波素子アレイ基板に伝える為、音響レンズ及び音響整合部の形状を維持することができる。音響整合部の厚みが一定に保持される為、音響レンズの変形を抑制し超音波を精度良く収束させることができる。さらに、被検体にて反射した超音波も音響レンズの変形が抑制されている為精度良く超音波素子に収束させることができる。その結果、超音波デバイスは効率良く超音波を受発信することができる。
【0029】
[適用例11]
上記適用例にかかる超音波デバイスの製造方法において、前記超音波素子アレイ基板上には超音波素子が設置され、前記超音波素子は前記超音波素子アレイ基板と反対側の面に上側電極を備え、複数の前記間隔維持部材を散布する前に、前記上側電極に第1極性の電圧を印加することを特徴とする。
【0030】
本適用例によれば、超音波素子は超音波素子アレイ基板と反対側の面に上側電極を備えている。そして、間隔維持部材を散布する前に、上側電極に第1極性の電圧を印加する。これにより、間隔維持部材と上側電極とは同じ極性に帯電する。従って、間隔維持部材と上側電極との間には斥けあう静電力が作用する為、間隔維持部材は上側電極と離れた場所に移動する。従って、超音波素子の上に間隔維持部材が付着することを防止することができる。その結果、超音波デバイスは品質良く超音波を受発信することができる。
【0031】
[適用例12]
上記適用例にかかる超音波デバイスの製造方法において、前記音響整合部の材料を設置する前に前記間隔維持部材を前記超音波素子アレイ基板に固定することを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、音響整合部を設置するとき、間隔維持部材は基板に固定されている。従って、音響整合部により間隔維持部材が移動することが生じ難くなる為、間隔維持部材が超音波素子上の一部の場所に偏ることを抑制することができる。
【0033】
[適用例13]
上記適用例にかかる超音波デバイスの製造方法において、前記超音波素子アレイ基板に前記間隔維持部材を散布して前記音響レンズを設置した後で、前記超音波素子アレイ基板と前記音響レンズとの間に前記音響整合部の材料を流動させて前記音響整合部を設置することを特徴とする。
【0034】
本適用例によれば、間隔維持部材を散布した後で音響レンズが設置される。従って、間隔維持部材は超音波素子アレイ基板と音響レンズとに挟まれる。この状態で超音波素子アレイ基板と音響レンズとの間に音響整合部の材料を流動させる。このとき、間隔維持部材は大きさにバラツキがあり、小さな間隔維持部材の中には超音波素子アレイ基板と音響レンズとに挟まれていない間隔維持部材がある。そして、小さな間隔維持部材は音響整合部の材料と共に流動されて超音波素子アレイ基板の周囲に移動される。従って、超音波素子アレイ基板の周囲に間隔維持部材を集結させている為、固定枠で挟まれた場所の
超音波素子アレイ基板及び音響レンズの間に間隔維持部材を配置させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本実施形態では、超音波デバイスとこの超音波デバイスが設置された超音波画像装置の特徴的な例について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0037】
(第1の実施形態)
本実施形態では電子機器の一例として、例えば人体の内部を検査する超音波画像装置について
図1〜
図11に従って説明する。
図1は、超音波画像装置の構成を示す概略斜視図である。
図2は、超音波プローブの構造を示す部分模式側断面図であり、
図3は、超音波プローブの構造を示す要部模式断面図である。
【0038】
図1に示すように、電子機器としての超音波画像装置1は装置本体2と超音波プローブ3とを備えている。装置本体2と超音波プローブ3とはケーブル4で接続され、装置本体2と超音波プローブ3とはケーブル4を通じて電気信号のやり取りをすることができる。そして、装置本体2にはディスプレイパネル等の表示部5が組み込まれている。表示部5はタッチパネル型のディスプレイであり、操作者が装置本体2に情報を入力するユーザーインターフェイス部を兼ねている。以下、ユーザーインターフェイス部をUI部と称す。
【0039】
装置本体2では、超音波プローブ3で検出された超音波に基づき画像が生成され、画像化された検出結果が表示部5の画面に表示される。超音波プローブ3は、直方体状の筐体6を備え、筐体6の長手方向の一端にケーブル4が接続されている。そして、その反対側に超音波の受発信を行うヘッド部7を有している。尚、本実施形態の超音波画像装置1は、装置本体2と超音波プローブ3とをケーブル4で接続する形態であるが、ケーブル4を用いず、無線により装置本体2と超音波プローブ3との間で信号のやり取りを行う形態であっても良い。
【0040】
図2に示すように、超音波プローブ3は、支持部材8に固定された超音波デバイス9が筐体6内に収容されている。超音波デバイス9は筐体6のヘッド部7から露出し、超音波デバイス9から対象物に対して超音波を出力する。さらに、対象物からの超音波の反射波を超音波デバイス9が受信する。反射波をエコー波とも称す。筐体6は筒状の形態をしており操作者が握り易い形状となっている。筐体6の一端に超音波デバイス9が設置され、他端にケーブル4が設置されている。超音波デバイス9からケーブル4に向かう方向をZ方向とする。Z方向と直交する2方向をX方向及びY方向とする。超音波デバイス9は略板状の形状をしており、X方向及びY方向に延在する。超音波デバイス9はY方向に比べてX方向に長い形状となっている。
【0041】
図3に示すように、超音波デバイス9と筐体6のヘッド部7との間には隙間があり、その隙間にはシリコーン系のシール材が充填されたシール部10が設けられている。このシール部10は、超音波プローブ3の筐体6の超音波デバイス9に水分等が侵入するのを防止する。支持部材8は超音波デバイス9のZ方向側に位置し、支持部材8とヘッド部7との間にはシール構造物が設置されている。このシール構造物は接着部材11及び接着部材12を備えている。接着部材11は超音波デバイス9の支持部材8の外周部に貼り付けられ、弾性を有する両面テープ等部材である。接着部材12は筐体6に貼り付けられ、弾性を有する両面テープ等の部材である。
【0042】
また、このシール構造物の一部には超音波デバイス9と処理回路とを接続するFPC13(Flexible Printed Circuits)が介在する。FPC13は接着部材11と接着部材12とで挟まれて固定されている。FPC13はフレキシブル印刷配線基板とも称される。接着部材11及び接着部材12としては、例えば、ポリエチレンまたはウレタン等の単泡体にアクリル系の接着材が塗布された両面テープを用いることができる。このように、超音波プローブ3には2重のシール構造が採用され、シール部10、接着部材11及び接着部材12は筐体6内に水分等が侵入するのを防止している。
【0043】
超音波デバイス9は、超音波素子アレイ基板14、音響整合部15、音響レンズ16、FPC13及び固定枠としての枠体17を備えている。超音波素子アレイ基板14は、素子基板18とバックプレート21とを有している。素子基板18は複数の超音波素子がアレイ状に配置された基板であり、Z方向から見た平面視でX方向に長い長方形の形状をしている。この素子基板18はシリコン基板を用いて形成され、厚みがおよそ150μm〜200μmである。そして、−Z方向を向く素子基板18の素子形成面とは反対の面に、素子基板18と同じ平板状のバックプレート21が接着されている。バックプレート21は素子基板18の余分な振動を抑える役目を果たし、厚みが500μm〜600μmのシリコン基板が用いられている。このバックプレート21はシリコン基板の他に金属板を用いてもよい。尚、素子基板18からZ方向に進行する超音波の影響が小さいときにはバックプレート21を用いずに超音波デバイス9を構成してもよい。
【0044】
素子基板18の超音波素子が形成されている面には、平面視でX方向に延びる長辺に沿って複数の超音波素子に接続された複数の端子が設置されている。この端子とFPC13の端子とが接続され電気的接続が果たされている。
【0045】
素子基板18の超音波素子が形成されている面の上には、−Z方向から見た平面形状が超音波素子アレイ基板14と同じである音響レンズ16が配置されている。音響レンズ16の一方の面には所定の曲率で厚み方向に凸となるレンズ部22が設けられている。そして、その反対の面には音響レンズ16の外縁部に形成された厚み方向に突出する壁部23が設けられている。音響レンズ16はシリコーン樹脂等の樹脂で形成されている。このシリコーン樹脂にシリカ等を添加して比重を変えることでシリコーン樹脂の音響インピーダンスを調整することができる。
【0046】
超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16の間には音響整合部15が形成されている。音響整合部15はシリコーン系の接着材が用いられ、接着材が硬化することで超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とを固着(接着)させ、硬化した接着材(樹脂)が音響整合部15として機能する。音響整合部15と並列に球体状の間隔維持部材24が複数設置され、間隔維持部材24は超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に配置され超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とに接触する。そして、間隔維持部材24は音響整合部15の厚みを一定に維持している。そして、音響レンズ16が対象物に押圧されるとき、間隔維持部材24は音響レンズ16に加わる力を超音波素子アレイ基板14に伝達する。そして、超音波素子アレイ基板14から受ける反力により音響レンズ16が変形することを抑制する。
【0047】
音響レンズ16は、素子基板18の超音波素子から発信される超音波を効率よく対象物に導き、また、対象物から反射して戻ってくるエコー波を効率よく超音波素子に導く役割を果たす。音響整合部15は超音波素子と音響レンズ16の間の音響インピーダンスの不整合を緩和する役割を果たす。超音波デバイス9はバックプレート21において支持部材8と接着材25によって固定されている。
【0048】
図4は、超音波画像装置の制御ブロック図である。
図4に示すように、超音波画像装置は、装置本体2と超音波プローブ3とを備える。超音波プローブ3は超音波デバイス9と駆動回路としての処理回路26とを備えている。処理回路26は選択回路27、送信回路28、受信回路29、制御部30を有する。処理回路26は、超音波デバイス9の送信処理及び受信処理を行う。
【0049】
送信回路28は、送信期間において、選択回路27を介して超音波デバイス9に対して送信信号VTを出力する。具体的には、送信回路28は、制御部30の制御に基づいて送信信号VTを生成し、選択回路27に出力する。そして選択回路27は、制御部30の制御に基づいて、送信回路28からの送信信号VTを出力する。送信信号VTの周波数及び振幅電圧は、制御部30により設定される。
【0050】
受信回路29は超音波デバイス9から受信信号VRを受信する受信処理を行う。具体的には、受信回路29は、受信期間において選択回路27を介して超音波デバイス9からの受信信号VRを受け取る。そして、受信回路29は受信信号の増幅、ゲイン設定、周波数設定、A/D変換(アナログ/デジタル変換)等の受信処理を行う。受信回路29は受信処理を行った結果を検出データ(検出情報)として装置本体2に出力する。受信回路29は、例えば低雑音増幅器、電圧制御アッテネーター、プログラマブルゲインアンプ、ローパスフィルター、A/Dコンバーター等で構成することができる。
【0051】
制御部30は、送信回路28及び受信回路29を制御する。具体的には、制御部30は、送信回路28に対して送信信号VTの生成及び出力処理の制御を行い、受信回路29に対して受信信号VRの周波数設定やゲイン等の制御を行う。選択回路27は、制御部30の制御に基づいて、選択された送信信号VTを超音波デバイス9に出力する。
【0052】
装置本体2は、表示部5、主制御部31、処理部32、UI部33(ユーザーインターフェイス部)、を備えている。主制御部31は、超音波プローブ3に対して超音波の送受信制御を行い、処理部32に対して検出データの画像処理等の制御を行う。処理部32は、受信回路29からの検出データを受けて、ノイズを除去する画像処理や表示用画像データの生成等を行う。UI部33は、ユーザーの行う操作(例えばタッチパネル操作等)に基づいて主制御部31に必要な命令(コマンド)を出力する。表示部5は、例えば液晶ディスプレイ等であって、処理部32からの表示用画像データを表示する。尚、主制御部31が行う制御の一部を処理回路26の制御部30が行ってもよいし、制御部30が行う制御の一部を主制御部31が行ってもよい。
【0053】
図5は超音波デバイスの構造を示す模式平面図であり、
図3において超音波プローブ3の矢印H方向から見た図である。
図6(a)は、超音波デバイスの構造を示す模式側断面図であり、
図5のA−A断線に沿う断面図である。
図6(b)は、超音波デバイスの構造を示す模式側面図であり、Y方向から見た図である。
図6(c)は、超音波デバイスの構造を示す模式側断面図であり、
図5のB−B断線に沿う断面図である。
図6(d)は、超音波デバイスの構造を示す模式側面図であり、−X方向から見た図である。
【0054】
図5及び
図6に示すように、超音波デバイス9はX方向に長い直方体の形状となっている。−Z方向から超音波デバイス9をみたとき枠体17には中央に長方形の第1孔部17aが形成され、第1孔部17aからレンズ部22が露出している。Z方向から超音波デバイス9をみたとき枠体17は中央に長方形の第2孔部17bが形成され、第2孔部17bからバックプレート21が露出している。
【0055】
枠体17は内側に位置する内枠34と外側に位置する外枠35により構成されている。内枠34は音響レンズ16を−Z方向から押さえている。外枠35は超音波素子アレイ基板14をZ方向側から押さえている。そして、内枠34と外枠35とは接着され固着されている。従って、枠体17は超音波素子アレイ基板14、音響整合部15及び音響レンズ16をZ方向にて挟んで固定している。
【0056】
音響整合部15の並列に間隔維持部材24が設置されている。そして、枠体17に挟まれた超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間には間隔維持部材24が配置されている。枠体17は間隔維持部材24を挟んで超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とを挟んで確実に固定する。従って、間隔維持部材24は音響整合部15の厚みを一定に保持することができる。
【0057】
壁部23のX方向には第1凹部23cが形成され、及び−X方向には第3凹部23eが形成されている。そして、第1凹部23c及び第3凹部23eは音響整合部15と繋がっている。枠体17のX方向側には第1側孔17cが設置され、枠体17の−X方向側には第3側孔17eが設置されている。第1側孔17cは第1凹部23cと繋がっており、第3側孔17eは第3凹部23eと繋がっている。そして、第1側孔17cは第1凹部23cを介して音響整合部15と繋がっており、第3側孔17eは第3凹部23eを介して音響整合部15と繋がっている。そして、音響整合部15は第1凹部23c、第1側孔17c、第3凹部23e及び第3側孔17eの中にも位置している。
【0058】
壁部23のY方向には第2凹部23dが形成され、及び−Y方向には第4凹部23fが形成されている。そして、第2凹部23d及び第4凹部23fは音響整合部15と繋がっている。枠体17のY方向側には第2側孔17dが4個設置され、枠体17の−Y方向側には第4側孔17fが4個設置されている。第2側孔17dは第2凹部23dと繋がっており、第4側孔17fは第4凹部23fと繋がっている。そして、第2側孔17dは第2凹部23dを介して音響整合部15と繋がっており、第4側孔17fは第4凹部23fを介して音響整合部15と繋がっている。そして、音響整合部15は第2凹部23d、第2側孔17d、第4凹部23f及び第4側孔17fの中にも位置している。
【0059】
間隔維持部材24は第1凹部23c、第2凹部23d、第3凹部23e及び第4凹部23fに位置する。さらに、間隔維持部材24は第1側孔17c、第2側孔17d、第3側孔17e及び第4側孔17fにも位置している。−Z方向から見た平面視で枠体17に挟まれた場所の超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間には間隔維持部材24が配置される。枠体17は超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に間隔維持部材24を挟む為、間隔維持部材24は確実に音響整合部15の厚みを一定に保持することができる。
【0060】
音響レンズ16のY方向及び−Y方向側ではFPC13が超音波素子アレイ基板14と壁部23とに挟まれている。そして、枠体17が超音波素子アレイ基板14と壁部23とを挟んで抑えこむことにより、超音波素子アレイ基板14とFPC13とが接続する場所でFPC13が浮きあがることを防止することができる。そして、FPC13は確実に固定される。
【0061】
音響整合部15の厚みは利用する超音波の波長λとして、例えば1/4λの奇数倍に設定されている。そして、間隔維持部材24の直径は音響整合部15の厚みと同じ長さとなっている。音響整合部15は音響レンズ16と超音波素子アレイ基板14との間に加えて第1側孔17cから第4側孔17fの中にも設置されている。そして、間隔維持部材24も音響レンズ16と超音波素子アレイ基板14との間に加えて第1側孔17cから第4側孔17fの中にも設置されている。
【0062】
図7(a)は、超音波素子の構成を示す模式平面図であり、音響レンズ16が除かれて間隔維持部材24が設置された図となっている。
図7(b)は、超音波素子の構成を示す模式側断面図であり、音響レンズ16及び音響整合部15が設置された図となっている。
図7に示すように、素子基板18には超音波素子36が複数設置されている。超音波素子36は基板としてのベース基板37、ベース基板37に形成された振動膜38(メンブレン)及び振動膜38上に設けられた圧電体部41を有する。そして圧電体部41は電極としての第1電極42、圧電体層43及び上側電極としての第2電極44を有する。
【0063】
超音波素子36はシリコン基板等からなるベース基板37に開口部37aを有し、開口部37aを覆って閉塞する振動膜38を備えている。振動膜38は、例えば、SiO
2層とZrO
2層との2層構造により構成される。ベース基板37がシリコン基板である場合にはSiO
2層は基板表面を熱酸化処理することで成膜することができる。また、ZrO
2層はSiO
2層上に例えばスパッタリング等の手法により成膜される。ここで、ZrO
2層は、圧電体層43として例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)を用いる場合に、PZTを構成するPbがSiO
2層に拡散することを防止するための層である。また、ZrO
2層は、圧電体層の歪みに対する撓み効率を向上させる等の効果もある。
【0064】
振動膜38の上には第1電極42が形成され、第1電極42の上に圧電体層43が形成され、さらに圧電体層43の上に第2電極44が形成されている。つまり、圧電体部41は第1電極42と第2電極44との間に圧電体層43が挟まれている構造となっている。
【0065】
第1電極42は金属薄膜で形成されY方向に延在する。第1電極42は複数の圧電体部41に渡って配置されており配線の機能も兼ねている。圧電体層43は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)薄膜により形成され、第1電極42の一部を覆うように設けられる。尚、圧電体層43の材料は、PZTに限定されるものではなく、例えばチタン酸鉛(PbTiO
3)、ジルコン酸鉛(PbZrO
3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO
3)等を用いてもよい。第2電極44は、金属薄膜で形成され、圧電体層43を覆うように設けられる。この第2電極44はY方向に延在する。第2電極44は複数の圧電体部41に渡って配置されており配線の機能も兼ねている。
【0066】
−Z方向から素子基板18を見たとき第1電極42は第2電極44と重ならない部分がある。この場所には間隔維持部材24が配置される。間隔維持部材24は素子基板18と音響レンズ16とに接触して複数設置される。尚、第1電極42は第2電極44と重ならない部分の総てに間隔維持部材24が配置される必要はなく、一部の場所には間隔維持部材24が配置されなくても良い。間隔維持部材24は音響整合部15の厚みが一定に維持可能な程度に配置されていればよい。図示しないが、間隔維持部材24は第2電極44上にも配置される。そして、−Z方向からみた平面視において、球状の間隔維持部材24は圧電体部41を囲むように配置される。
【0067】
外部からの透湿を防止し、間隔維持部材24と第1電極42及び第2電極44との間を絶縁する絶縁膜45が超音波素子36を覆って備えられている。この絶縁膜45はアルミナ等の材料で形成され、超音波素子36の全面あるいは一部に設けられている。さらに、絶縁膜45は第1電極42及び第2電極44を覆って配置される。第1電極42において超音波素子36に覆われていない場所は絶縁膜45に覆われている。間隔維持部材24が第1電極42上に位置するとき、間隔維持部材24と第1電極42との間には絶縁膜45が設置されている。静電気を帯びた間隔維持部材24が第1電極42に接近しても、間隔維持部材24は帯電状態を維持する。従って、間隔維持部材24は第1電極42に誘導されて静電気を帯びた状態を維持したまま第1電極42上に静止する。従って、間隔維持部材24を第1電極42上に容易に配置させることができる。
【0068】
超音波素子36のベース基板37からの高さは第1電極42のベース基板37からの高さより高くなっている。つまり、超音波素子36はベース基板37に対して−Z方向に突出している。超音波素子36上に位置する間隔維持部材24には重力が作用するので間隔維持部材24は突出した超音波素子36上からベース基板37上に移動し易くなっている。ベース基板37上に位置する間隔維持部材24はベース基板37上から突出した超音波素子36上に移動し難くなっている。
【0069】
圧電体層43は、第1電極42と第2電極44との
間に電圧が印加されることで、面内方向に伸縮する。従って、圧電体層43に電圧を印加すると、開口部37a側に凸となる撓みが生じ、振動膜38を撓ませる。圧電体層43に交流電圧を印加することで、振動膜38が膜厚方向に対して振動し、この振動膜38の振動により超音波が開口部37aから放射される。圧電体層43に印加される電圧(駆動電圧)は、例えばピークからピークで10〜30Vであり、周波数は例えば1〜10MHzである。
【0070】
超音波素子36は、射出された超音波が対象物で反射されて戻ってくる超音波エコーを受信する受信素子としても動作する。超音波エコーにより振動膜38が振動し、この振動によって圧電体層43に応力が加わり、第1電極42と第2電極44との間に電圧が発生する。この電圧を受信信号として取り出すことができる。
【0071】
図8は、超音波素子アレイ基板の構成を示す模式平面図である。
図8に示すように、超音波素子アレイ基板14にはマトリックス状に配置された複数の超音波素子36、第1電極42、第2電極44を含む。図を見やすくするために超音波素子36は、17行8列に配置されているが、行数及び列数は特に限定されない。
【0072】
超音波を射出する送信期間では処理回路26が出力する送信信号VTが第2電極44を介して各超音波素子36に供給される。また、超音波エコー信号を受信する受信期間には、超音波素子36からの受信信号VRが第2電極44を介して処理回路26に出力される。第1電極42には、コモン電圧VCOMが供給される。このコモン電圧は一定の電圧であればよく、0V即ちグランド電位(接地電位)でなくてもよい。送信期間では、送信信号電圧とコモン電圧との差の電圧が各超音波素子36に印加され、所定の周波数の超音波が放射される。
【0073】
素子基板18のX方向側には辺に沿って第1模擬電極46が設置され、素子基板18の−X方向側には辺に沿って第2模擬電極47が設置されている。第1模擬電極46及び第2模擬電極47は絶縁膜45に覆われている。帯電した間隔維持部材24が第1模擬電極46及び第2模擬電極47に接近しても、間隔維持部材24は放電しないようになっている。第1模擬電極46は音響レンズ16の第1凹部23cと対向する場所であり、第2模擬電極47は音響レンズ16の第3凹部23eと対向する場所である。そして、第1模擬電極46及び第2模擬電極47に沿って間隔維持部材24が配置されている。
【0074】
素子基板18のY方向側及び−Y方向側の端では辺に沿って間隔維持部材24が集中して配置されている。つまり、素子基板18の周囲には間隔維持部材24が多く配置されている。枠体17が音響レンズ16と超音波素子アレイ基板14とを挟むとき、枠体17に近い場所で間隔維持部材24が荷重を受ける為、音響整合部15は厚みが一定に維持することが可能になっている。
【0075】
次に上述した超音波デバイス9の製造方法について
図9〜
図11にて説明する。
図9は、超音波デバイスの製造方法のフローチャートであり、
図10及び
図11は超音波デバイスの製造方法を説明するための模式図である。
図9のフローチャートにおいて、ステップS1は基板接合工程に相当する。この工程は、素子基板18とバックプレート21とを接合して超音波素子アレイ基板14を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、配線設置工程に相当する。この工程は、超音波素子アレイ基板14にFPC13を接合する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、間隔維持部設置工程に相当する。この工程は、超音波素子アレイ基板14に複数の間隔維持部材24を設置する工程である。次にステップS4に移行する。
【0076】
ステップS4は、レンズ設置工程に相当する。この工程は、超音波素子アレイ基板14に重ねて音響レンズ16を設置する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、枠体設置工程に相当する。この工程は、超音波素子アレイ基板14及び音響レンズ16を挟んで枠体17を設置する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は、音響整合部材注入工程に相当する。この工程は、超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に音響整合部材を注入する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7は、音響整合部材固化工程に相当する。この工程は、音響整合部材を固化する工程である。以上の工程により超音波デバイス9が完成する。
【0077】
次に、
図10〜
図11を用いて、
図9に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。
図10(a)はステップS1の基板接合工程及びステップS2の配線設置工程に対応する図である。
図10(a)に示すように、ステップS1では素子基板18及びバックプレート21を用意する。素子基板18には圧電体部41が形成されている。圧電体部41の製造方法は公知であり説明を省略する。素子基板18またはバックプレート21に接着材を塗布して素子基板18とバックプレート21とを重ね合わせる。次に、加熱乾燥することにより接着材を固化して超音波素子アレイ基板14が完成する。
【0078】
次に、ステップS2ではFPC13を用意する。FPC13は配線の端に半田めっきが施されている。そして、素子基板18にはFPC13の配線のピッチと同じ間隔に端子が形成されている。FPC13の配線と素子基板18の端子とを合わせて加熱することにより、FPC13が超音波素子アレイ基板14に実装される。他にも異方性導電膜を介在させてFPC13を超音波素子アレイ基板14に実装しても良く、樹脂コアバンプを介して実装しても良い。
【0079】
図10(b)〜
図10(d)はステップS3の間隔維持部設置工程に対応する図である。まず、素子基板18の−Z方向側の面に接着材を塗布する。接着材は特に限定されないが1成分室温硬化型のシリコーンゴム系の接着材を好適に用いることができる。硬化後のシリコーンゴムは耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れており、音響インピーダンスとしても問題なく適用することができる。さらに、空気中の水分を制御することにより硬化させることができる。他にも光硬化型の接着材を用いることができる。短時間で硬化させることができるので生産性良く間隔維持部材24を素子基板18に接着させることができる。
【0080】
図10(b)に示すように、散布装置48を用意する。散布装置48はチャンバー49を備えている。チャンバー49内には移動テーブル50及び粒子散布部51が設置されている。粒子散布部51は間隔維持部材24を空気の流れにのせて散布させるファンを備えている。他にも、粒子散布部51は間隔維持部材24に静電気を帯電させる電極を備えている。移動テーブル50上には超音波素子アレイ基板14が設置される。移動テーブル50は超音波素子アレイ基板14の位置を移動させることにより、超音波素子アレイ基板14上に均等に複数の間隔維持部材24を着地させる。チャンバー49の外には帯電量制御装置52が設置され、帯電量制御装置52は超音波素子アレイ基板14と散布される間隔維持部材24との帯電量を制御する。
【0081】
粒子散布部51は+極に帯電した間隔維持部材24を超音波素子アレイ基板14に向かって放出する。移動テーブル50は超音波素子アレイ基板14を移動させることにより超音波素子アレイ基板14に散布される間隔維持部材24の分布を均一にする。
【0082】
図10(c)に示すように、帯電量制御装置52は第2電極44及び間隔維持部材24を+極に帯電させる。そして、帯電量制御装置52は第1電極42、第1模擬電極46及び第2模擬電極47を−極に帯電させる。そして、間隔維持部材24が超音波素子アレイ基板14に接近するとき、間隔維持部材24は第2電極44に対して斥力が働き、第1電極42、第1模擬電極46及び第2模擬電極47に対して引力が働く。これにより、間隔維持部材24は第1電極42、第1模擬電極46及び第2模擬電極47に付着する。この状態でチャンバー49内の湿度を高くすることにより、超音波素子アレイ基板14に塗布された接着材が固化する。そして、間隔維持部材24は超音波素子アレイ基板14に接着させられる。その結果、
図10(d)に示すように、間隔維持部材24が接着された超音波素子アレイ基板14が形成される。
【0083】
図11(a)はステップS4のレンズ設置工程に対応する図である。
図11(a)に示すように、ステップS4において、超音波素子アレイ基板14に重ねて音響レンズ16を設置する。超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とはZ方向からみたときの外形形状が同じ形状となっている。従って、外形を合わせることにより超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との位置合わせをすることができる。
【0084】
図11(b)はステップS5の枠体設置工程に対応する図である。
図11(b)に示すように、ステップS5において、内枠34の外側の側面に接着材を塗布する。次に、超音波素子アレイ基板14及び音響レンズ16に−Z方向側から内枠34を挿入する。次に、Z方向側から内枠34に外枠35を挿入する。次に、内枠34と外枠35との間の接着材を固化して内枠34と外枠35とを接着する。このとき、内枠34と外枠35とで超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とを挟むように負荷を加えるのが好ましい。これにより、超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間隔を精度良く固定することができる。
【0085】
図11(c)及び
図11(d)はステップS6の音響整合部材注入工程に対応する図である。
図11(c)及び
図11(d)に示すように、ステップS6において、超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に音響整合部15の材料としての音響整合部材53を注入する。音響整合部材53は粘性のある液体であり固化したときに音響整合部15になる材料である。音響整合部材53は配管54から供給される。配管54の供給口54aを第1側孔17c及び第3側孔17eに合わせる。そして、配管54から超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に音響整合部材53を注入する。音響整合部材53は第1側孔17c及び第3側孔17eから入り、第2側孔17d及び第4側孔17fに向かって流動する。
【0086】
直径の大きい間隔維持部材24は超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とに挟まれているので、音響整合部材53が流動しても移動しない。直径の小さい間隔維持部材24は音響整合部材53の流れに流されて移動する。そのため、第2側孔17d及び第4側孔17fの近くには間隔維持部材24が多く分布する。従って、間隔維持部材24の分布は超音波素子アレイ基板14のY方向側と−Y方向側の密度が高くなる。
【0087】
図11(e)はステップS7の音響整合部材固化工程に対応する図である。
図11(e)に示すように、ステップS7において、音響整合部材53を加熱乾燥して音響整合部15とする。音響整合部材53には光に反応して固化する材料にしても良く、水分に反応して固化する材料にしても良い。製造し易い形態の材料を選択することができる。以上の工程により超音波デバイス9が完成する。
【0088】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、音響レンズ16は被検体と接触させて使用される。このとき、音響レンズ16は被検体から押圧される。音響レンズ16の内部には応力が発生する。音響整合部15は樹脂であり変形し易いので音響レンズ16の応力により変形する。一方、間隔維持部材24は音響レンズ16と超音波素子アレイ基板14と接触し、音響レンズ16の応力を超音波素子アレイ基板14に伝える。そして、音響整合部15の厚みが一定に維持される為、音響レンズ16の変形を抑制し超音波を精度良く収束させることができる。さらに、被検体にて反射した超音波も音響レンズ16の変形が抑制されている為精度良く超音波素子36に収束させることができる。その結果、超音波デバイス9は効率良く超音波を受発信することができる。
【0089】
(2)本実施形態によれば、枠体17が超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とを挟んで固定する。超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間には音響整合部15に混じって間隔維持部材24が設置されている。枠体17は超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間で間隔維持部材24を挟む為、間隔維持部材24は確実に音響整合部15の厚みを一定に保持することができる。
【0090】
(3)本実施形態によれば、間隔維持部材24と第1電極42との間には絶縁膜45が設置されているので、間隔維持部材24は静電気を帯びた状態を維持したまま第1電極42上に静止する。従って、間隔維持部材24を第1電極42に容易に配置させることができる。
【0091】
(4)本実施形態によれば、超音波素子36はベース基板37に対して突出している。間隔維持部材24には重力が作用するので間隔維持部材24は突出した超音波素子36上からベース基板37上に移動し易くなっている。ベース基板37上に位置する間隔維持部材24はベース基板37上から突出した超音波素子36上に移動し難くなっている。従って、間隔維持部材24を超音波素子36上に配置し難くすることができる。
【0092】
(5)本実施形態によれば、超音波プローブ3は超音波デバイス9と、この超音波デバイス9を駆動する処理回路26を備えている。超音波プローブ3は、音響整合部15の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイス9を備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波プローブ3を提供できる。
【0093】
(6)本実施形態によれば、超音波画像装置1は超音波デバイス9、処理部32及び表示部5を備えている。処理部32は超音波デバイス9の出力を用いて画像データの生成を行う。表示部5は、処理部32が生成した画像を表示する。超音波画像装置1は、音響整合部15の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイス9を備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波画像装置1を提供できる。
【0094】
(7)本実施形態によれば、第1電極42に−極の電圧を印加する。そして、+極に帯電させた間隔維持部材24を超音波素子アレイ基板14に散布する。従って、第1電極42と間隔維持部材24との間には静電力の引力が作用する。そして、間隔維持部材24は第1電極42に向かって移動するので、第1電極42に間隔維持部材24を集結させることができる。そして、間隔維持部材24は第1電極42のある場所に集結するので、間隔維持部材24が超音波の発信と受信に影響を与えないようにすることができる。その結果、超音波デバイス9は効率良く超音波を受発信することができる。
【0095】
(8)本実施形態によれば、超音波素子36はベース基板37と反対側の面に第2電極44を備えている。そして、間隔維持部材24を散布する前に、第2電極44に+極の電圧を印加する。従って、間隔維持部材24と第2電極44との間には静電力の斥力が作用する為、間隔維持部材24は第2電極44と離れた場所に移動する。従って、超音波素子36に間隔維持部材24が付着することを防止することができる。その結果、超音波デバイス9は品質良く超音波を受発信することができる。
【0096】
(9)本実施形態によれば、音響整合部15を設置するとき、間隔維持部材24はベース基板37に固定されている。従って、音響整合部15により間隔維持部材24が移動することが生じ難くなる為、間隔維持部材24が超音波素子36上に設置されることを抑制することができる。
【0097】
(10)本実施形態によれば、間隔維持部材24は球体状である。従って、間隔維持部材24は超音波素子アレイ基板14上を転がり易くなる為、間隔維持部材24を第1電極42上に配置させ易くすることができる。
【0098】
(11)本実施形態によれば、間隔維持部材24を散布した後で音響レンズ16が設置される。従って、間隔維持部材24は超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とに挟まれる。この状態で超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間に音響整合部材53を流動させる。このとき、間隔維持部材24は大きさにバラツキがあり、小さな間隔維持部材24の中には超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16とに挟まれていない間隔維持部材24がある。そして、小さな間隔維持部材24は音響整合部材53と共に流動されて超音波素子アレイ基板14の周囲に移動される。従って、超音波素子アレイ基板14の周囲に間隔維持部材24を集結させている為、間隔維持部材24、超音波素子アレイ基板14及び音響レンズ16を枠体17で容易に挟んで固定することができる。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、超音波デバイスの一実施形態について
図12の超音波素子の構成を示す模式平面図を用いて説明する。
図12は、音響レンズ16が除かれて間隔維持部材24が設置された図となっている。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、
図7に示した第1電極42及び第2電極44の配置が異なる点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0100】
すなわち、本実施形態では、
図12に示すように、超音波デバイス57は素子基板58を備えている。素子基板58は振動膜38が設置されたベース基板37を備えている。振動膜38上には第1電極59が設置されている。第1電極59は第1の実施形態における第2電極44と同じ形状となっている。つまり、第1電極59はY方向に延在する配線部59aと配線部59aから−X方向に突出する矩形の下電極部59bとを備えている。
【0101】
下電極部59b上には圧電体層43が設置され、圧電体層43の上には第2電極60が設置されている。第2電極60はY方向に延在し第2電極60は第1の実施形態における第1電極42と同じ形状となっている。第1電極59及び第2電極60を覆って絶縁膜45が設置されている。第1電極59、圧電体層43、第2電極60等により圧電体部61が構成されている。
【0102】
次に、超音波デバイス57の製造方法を説明する。尚、ステップS3を除くステップは第1の実施形態と同じであり、説明を省略する。ステップS3の間隔維持部設置工程では間隔維持部材24が+極に帯電される。第1電極59は−極に帯電され、第2電極60は+極に帯電される。素子基板58上に間隔維持部材24が散布されるとき、間隔維持部材24には静電力が作用する。間隔維持部材24は第1電極59との間で引力が作用し、第2電極60との間で斥力が作用する。これにより、間隔維持部材24は第1電極59上に移動して静止する。従って、圧電体層43から離れた第1電極59上に間隔維持部材24を配置させることができる。
【0103】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、間隔維持部材24は静電気を帯びた状態を維持したまま第1電極59上に静止する。従って、間隔維持部材24を第1電極59に容易に配置させることができる。そして、間隔維持部材24は第1電極59上に集結するので、間隔維持部材24が超音波の発信と受信に影響を与えないようにすることができる。その結果、超音波デバイス57は効率良く超音波を受発信することができる。
【0104】
(第3の実施形態)
次に、超音波プローブの一実施形態について
図13(a)及び
図13(b)の超音波プローブの構成を示す模式側面図を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、超音波プローブが本体部と超音波プローブヘッドとに分離可能である点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0105】
図13(a)に示すように、超音波プローブ63はプローブ本体64及びプローブヘッド65を備えている。プローブ本体64は本体用筐体66を備え、本体用筐体66の内部には処理回路26が設置されている。処理回路26はケーブル4を介して装置本体2と接続されている。本体用筐体66には第1コネクター67が設置され、第1コネクター67は処理回路26と接続されている。
【0106】
プローブヘッド65は筐体としてのヘッド用筐体68を備え、ヘッド用筐体68には超音波デバイス9が内蔵されている。超音波デバイス9の音響レンズ16はヘッド用筐体68から露出している。ヘッド用筐体68には第1コネクター67と接続する第2コネクター69が設置され、処理回路26と超音波デバイス9とは第1コネクター67及び第2コネクター69を介して電気的に接続されている。
【0107】
図13(b)に示すように、プローブ本体64とプローブヘッド65とは分離可能になっている。第1コネクター67と第2コネクター69とは切断と接続とが行える。超音波デバイス9が送受信する超音波の周波数の異なるプローブヘッド65が複数用意されている。そして、被検体の特性や、被検体の検査する場所の深さに合わせて適切なプローブヘッド65をプローブ本体64に接続することが可能になっている。
【0108】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、プローブヘッド65は超音波デバイス9と、この超音波デバイス9を支持するヘッド用筐体68と、を備えている。超音波プローブ63は、音響整合部15の厚みを適正に維持し効率良く超音波の受発信を行う超音波デバイス9を備えている。従って、効率良く超音波の受発信を行う超音波プローブ63を提供できる。
【0109】
(2)本実施形態によれば、超音波プローブ63はプローブヘッド65を交換することができる。従って、被検体の音響インピーダンスや検査する場所に合わせて適切な超音波デバイス9に交換することができる。
【0110】
(第4の実施形態)
次に、超音波画像装置の一実施形態について
図14の超音波画像装置の構成を示す概略斜視図を用いて説明する。本実施形態の超音波画像装置は第1の実施形態の超音波プローブが設置されている。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0111】
図14に示すように、超音波画像装置72は据置型の超音波画像装置である。超音波画像装置72は、装置本体73(電子機器本体)、表示用画像データを表示する表示部74、UI部75(ユーザーインターフェイス部)、超音波プローブ76、ケーブル77を有している。超音波画像装置72は、生体の脂肪厚み、筋肉厚み、血流、骨密度等の測定に利用することができる。超音波画像装置72が備える超音波デバイス9は効率良く超音波を受発信する。従って、超音波画像装置72は効率良く超音波を受発信する超音波デバイス9を備えた装置であるといえる。
【0112】
本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の実施の際の具体的な構造及び手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更することができる。そして、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有するものにより可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、間隔維持部材24は球体状であったが、間隔維持部材24の形状はこれに限らない。回転楕円体、立方体、直方体、多面体の各種の形状にすることができる。間隔維持部材24の形状は製造し易い形状にすることができる。
【0113】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、ステップS3の間隔維持部設置工程において、間隔維持部材24を+極に帯電させた。間隔維持部材24を−極に帯電させても良い。このとき、第1電極42を+極に帯電させて第2電極44を−極に帯電させる。これにより、間隔維持部材24を第1電極42に誘導することができる。
【0114】
前記第2の実施形態では、ステップS3の間隔維持部設置工程において、間隔維持部材24を+極に帯電させた。間隔維持部材24を−極に帯電させても良い。このとき、第1電極59を+極に帯電させて第2電極60を−極に帯電させる。これにより、間隔維持部材24を第1電極59に誘導することができる。
【0115】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS3の間隔維持部設置工程において、第2電極44を+極に帯電させた。第2電極44を帯電させなくても間隔維持部材24が第1電極42に誘導されるときには第2電極44を帯電させなくても良い。第2電極44を帯電させる配線を減らすことができる。
【0116】
前記第2の実施形態では、ステップS3の間隔維持部設置工程において、第2電極60を+極に帯電させた。第2電極60を帯電させなくても間隔維持部材24が第1電極59に誘導されるときには第2電極60を帯電させなくても良い。第2電極60を帯電させる配線を減らすことができる。
【0117】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、枠体17に挟まれた場所の超音波素子アレイ基板14と音響レンズ16との間には間隔維持部材24を多く配置させた。音響レンズ16が変形し難いときには、特に枠体17に挟まれた場所に間隔維持部材24を多く配置しなくても良い。そして、第1模擬電極46及び第2模擬電極47を除去してもよい。電極数が少ない方が素子基板18を製造し易くすることができる。
【0118】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、超音波素子36は超音波の発信と受信との両方を行った。超音波の発信を行う素子と、超音波の受信を行う素子と、を別の素子にしても良い。さらに、超音波の発信を行う素子と、超音波の受信を行う素子と、超音波の発信と受信とを行う素子とを配置しても良い。超音波の受発信を行う精度の要求に応じて組み合わせても良い。
【0119】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、圧電体層43はフォトリソ法を用いて形成された薄膜であった。圧電体層43は厚みのあるバルクタイプでも良い。このときにも間隔維持部材24が音響整合部15の厚みを一定に維持するので、音響レンズ16が押圧されても音響レンズ16を変形し難くすることができる。
【0120】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、ステップS6の音響整合部材注入工程において、第1側孔17c及び第3側孔17eから音響整合部材53を注入した。これに限らず、第2側孔17d及び第4側孔17fから吸引して音響整合部材53を音響レンズ16と素子基板18との間に充填しても良い。さらに、第1側孔17c及び第3側孔17eからの音響整合部材53の注入と第2側孔17d及び第4側孔17fからの吸引とを並行して行っても良い。短時間で充填できるので、生産性良く超音波デバイス9を製造することができる。