特許第6248538号(P6248538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6248538巻き線機及び振動発電デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248538
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】巻き線機及び振動発電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20171211BHJP
   H02N 2/18 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   H02K15/04 Z
   H02N2/18
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-222439(P2013-222439)
(22)【出願日】2013年10月25日
(65)【公開番号】特開2015-84623(P2015-84623A)
(43)【公開日】2015年4月30日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091672
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 啓三
(72)【発明者】
【氏名】井上 広章
(72)【発明者】
【氏名】島内 岳明
(72)【発明者】
【氏名】豊田 治
【審査官】 小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6056634(JP,B2)
【文献】 特開2013−123684(JP,A)
【文献】 米国特許第03959751(US,A)
【文献】 国際公開第2011/158473(WO,A1)
【文献】 特開昭64−002978(JP,A)
【文献】 特開昭54−127501(JP,A)
【文献】 特開平06−054493(JP,A)
【文献】 特開平04−094775(JP,A)
【文献】 特開平06−216424(JP,A)
【文献】 特開2015−154681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状の部材の端部を固定するコイル状部材固定部と、
前記コイル状の部材に線材を供給するガイド部材と、
前記ガイド部材から供給される線材を前記コイル状の部材との間に挟んで巻き付け位置を決める抑え治具と、
前記ガイド部材を前記コイル状の部材の周囲に回転させるモータと、
前記コイル状の部材をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させる回転台駆動部
を有することを特徴とする巻き線機。
【請求項2】
前記ガイド部材が取り付けられて前記モータにより回転する回転板を有し、
前記ガイド部材が前記回転板の半径方向に移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の巻き線機。
【請求項3】
ガイド部材から供給される電線を抑え治具によりコイル状の振動子の周面に抑え付ける工程と、
前記ガイド部材を前記振動子の周囲に回転させ、前記振動子をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させて、前記振動子の周囲に前記電線を巻き付ける工程と
を有することを特徴とする振動発電デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記振動子が、制振合金により形成されていることを特徴とする請求項3に記載の振動発電デバイスの製造方法。
【請求項5】
コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有するコイル部材の前記直線部に線材を巻き付ける線材巻き付け部と、
前記直線部に巻き付けられた前記線材を前記コイル部に送る送りロールと、
前記コイル部の内側及び外側の少なくとも一方に配置され、前記送りロールにより前記コイル部の一端側に送られてきた前記線材を前記コイル部の他端側に送る筒状部材
を有することを特徴とする巻き線機。
【請求項6】
コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有する振動子の前記直線部に電線を巻き付ける工程と、
前記直線部に巻き付けた電線を前記コイル部に移動させる工程と
を有することを特徴とする振動発電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き線機及び振動発電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光、風力又は水力発電など、自然エネルギーへの関心が高まる中、身の回りにある小さなエネルギーを回収して電力に変換するエネルギーハーベスティング(Energy Harvesting)技術が注目されている。エネルギーハーベスティング技術は、特に機械や建設物、又は室内環境の状態をモニタリングする自立センサネットワーク等への利用が期待されている。
【0003】
エネルギーハーベスティング技術の一つに、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電デバイスがある。振動発電デバイスでは、エレクトレット、圧電素子又は磁歪素子などの素子を使用する。近年、磁歪素子を用いた数10mWクラスの発電が可能な振動発電デバイスも開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2011/158473
【特許文献2】特開2013−118766号公報
【特許文献3】特開2005−129808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイル状の部材に電線又はその他の線材を巻き付ける巻き線機、及びその巻き線機を使用した振動発電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれば、コイル状の部材の端部を固定するコイル状部材固定部と、前記コイル状の部材に線材を供給するガイド部材と、前記ガイド部材から供給される線材を前記コイル状の部材との間に挟んで巻き付け位置を決める抑え治具と、前記ガイド部材を前記コイル状の部材の周囲に回転させるモータと、前記コイル状の部材をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させる回転台駆動部とを有する巻き線機が提供される。
【0007】
開示の技術の他の一観点によれば、ガイド部材から供給される電線を抑え治具によりコイル状の振動子の周面に抑え付ける工程と、前記ガイド部材を前記振動子の周囲に回転させ、前記振動子をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させて、前記振動子の周囲に前記電線を巻き付ける工程とを有する振動発電デバイスの製造方法が提供される。
【0008】
開示の技術の更に他の一観点によれば、コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有するコイル部材の前記直線部に線材を巻き付ける線材巻き付け部と、前記直線部に巻き付けられた前記線材を前記コイル部に送る送りロールと、前記コイル部の内側及び外側の少なくとも一方に配置され、前記送りロールにより前記コイル部の一端側に送られてきた前記線材を前記コイル部の他端側に送る筒状部材とを有する巻き線機が提供される。
【0009】
開示の技術の更に他の一観点によれば、コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有する振動子の前記直線部に電線を巻き付ける工程と、前記直線部に巻き付けた電線を前記コイル部に移動させる工程とを有する振動発電デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記の一観点に係る巻き線機によれば、コイル状の部材に電線又はその他の線材を自動的に巻き付けることができる。これにより、小さな振動や単発の振動にも反応して比較的大きな電力を出力する振動発電デバイスの量産が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(a),(b)は、振動発電デバイスの一例を示す模式図である。
図2図2は、コイル形状のばねを振動子とした振動発電デバイスの一例を示す側面図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る巻き線機を示す斜視図である。
図4図4は、第1の実施形態の巻き線機の主要部を拡大して示す模式図である。
図5図5は、第1の実施形態の巻き線機の電気系を示すブロック図である。
図6図6は、第1の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図である。
図7図7は、第1の実施形態の巻き線機により電線を巻き付けた振動子を用いた振動発電デバイスの一例を示す模式図である。
図8図8(a)は第2の実施形態に係る巻き線機を示す模式図、図8(b)は図8(a)のI−I線の位置における模式断面図である。
図9図9は、第2の実施形態で使用する振動子の側面図である。
図10図10は、第2の実施形態の巻き線機の電気系を示すブロック図である。
図11図11は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その1)である。
図12図12は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その2)である。
図13図13は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その3)である。
図14図14は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その4)である。
図15図15は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その5)である。
図16図16は、第2の実施形態の巻き線機の動作を説明する模式図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0013】
図1(a),(b)は振動発電デバイスの一例を示す模式図である。この振動発電デバイス10は、磁歪材料よりなる柱状のコア11と、2つの棒状の磁石12a,12bと、鉄等の軟磁性材料よりなる2つの厚板状のヨーク13a,13bとを有する。
【0014】
コア11の周囲には電線14が巻き付けられている。また、磁石12a,12bはコア11を挟んでコア11と平行に配置されている。これらのコア11及び磁石12a,12bの一端側(図1(a)では下側)は、ヨーク13aに接合されている。
【0015】
ヨーク13bは、コア11の他端側(図1(a)では上側)に接合されている。但し、ヨーク13bと磁石12a,12bとの間には、所定の隙間が設けられている。
【0016】
このような構成の振動発電デバイス10では、図1(a)に示すように、磁石12a,12bにより、コア11内にバイアス磁場Hが発生する。ヨーク13bに応力が印加されていないときには、コア11内の磁束密度Bは一定である。
【0017】
図1(b)に模式的に示すように、ヨーク13bに衝撃が加えられるとコア11内に歪みが発生し、コア11内の磁束密度Bが変化する。この磁束密度Bの変化により電線14に誘導電流が流れるので、電線14の両端から電力を取り出すことができる。
【0018】
しかしながら、上述した振動発電デバイス10には、以下に示す問題点がある。すなわち、上述した振動発電デバイス10では、良好な発電効率を得るために、結晶性が高く磁歪量が大きな材料によりコア11を形成している。振動発電デバイスに好適な磁歪材料として、Galfenolと呼ばれるFe(鉄)−Ga(ガリウム)合金が開発されている。
【0019】
しかし、一般的に、結晶性が高い磁歪材料は弾力性が低い。そのため、結晶性が高い磁歪材料で形成されたコア11を有する振動発電デバイス10では、小さな振動や単発の振動(衝撃など)に反応しにくく、利用可能な場所が限定されてしまう。
【0020】
そこで、本願発明者らは、図2に示すように、Fe−Al合金等の加工性のよい磁性材料で形成したコイル形状のばねを振動子21とし、振動子21に電線22を巻き付けた振動発電デバイス20を提案している。
【0021】
このような振動発電デバイス20では、振動子21がコイル状のばねであるため、弾力性が大きく、小さな振動や単発の振動にも反応して、比較的大きな電力を得ることができる。
【0022】
図2に示す発電デバイス20を製造するために、例えば棒状の磁性体の周囲に電線を巻き付け、その後磁性体をコイル状に加工することが考えられる。しかし、磁性体の結晶構造を安定化させるために、磁性体をコイル状に加工した後に熱処理を行うことが必要になることがある。この熱処理により、電線の被覆が劣化してしまう。このような不具合を回避するために、コイル状に加工した磁性体に電線を巻き付ける巻き線機が要望される。
【0023】
以下の実施形態では、コイル状の部材に電線又はその他の線材を巻き付ける巻き線機について説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図3は第1の実施形態に係る巻き線機を示す斜視図、図4は同じくその巻き線機の主要部を拡大して示す模式図である。また、図5は、本実施形態の巻き線機の電気系を示すブロック図である。
【0025】
図3に示すように、本実施形態に係る巻き線機30では、支持板31の上に円筒状の支持部材32がその中心軸を垂直にして配置されている。また、支持部材32の内側には円柱状の回転台33が配置されている。この回転台33は、図5に示す回転台駆動部51により駆動されて、中心軸を中心に回転しながら上下方向に移動する。
【0026】
回転台33の上部には、回転台33よりも小径の円柱状の振動子取付け部34が設けられている。この振動子取付け部34の上に、コイル状に形成された振動子21がその中心軸を垂直にして固定される。
【0027】
振動子取付け部34の側部には、後述するボビン42から引き出された電線22の先端部分を固定する固定部34aが設けられている。固定部34aとして、例えばばねや磁石を利用して、振動子取付け部34との間で電線22を挟み込むものを使用することができる。
【0028】
なお、振動子21はコイル状の部材の一例であり、電線22は線材の一例である。
【0029】
支持部材32の上には支柱35が設けられており、支柱35の上部には棒状の抑え治具36が配置されている。この抑え治具36の一端側は支柱35に支持されており、他端側は振動子21との間で電線22を挟み込む。抑え治具36にはばね(図示せず)が設けられており、一定の圧力で電線22を振動子21の周面に向けて押圧する。以下、抑え治具36と振動子21との間で電線22を挟み込んだ部分を、巻き付け位置という。
【0030】
抑え治具36の他端部にはヒータ52(図4図5参照)が設けられている。このヒータ52により巻き付け位置の電線22が100℃程度に加熱され、振動子21に既に巻き付けられている電線22の被覆と新たに巻き付けられた電線22の被覆とが融着される。
【0031】
なお、本実施形態では、電線22として、絶縁被膜の上に熱可塑性又は熱硬化性の融着層が設けられた被覆を有する自己融着線(又は自己融着銅線)と呼ばれる電線を使用する。絶縁被膜は例えばエナメルにより形成され、融着層はポリアミド系(PA)、ポリビニルブチラール系(PVB)及びエステル系(VT)の樹脂により形成されている。
【0032】
回転台33の上方には、モータ39により回転する回転板40がその面を水平にして配置されている。モータ39は、支持板31の端部に配置された支柱37と、支柱37から水平方向に伸び出したアーム38とにより支持されている。
【0033】
回転板40には、オフセット調整板41が取り付けられている。このオフセット調整板41は回転板40の半径方向に移動可能であり、ねじ等により回転板40に固定される。また、オフセット調整板41の上には、電線22が巻回されたボビン42が配置される。
【0034】
オフセット調整板41の先端部には、下方に向けて突出する棒状のガイド部材43が配置されている。ボビン42から巻き解かれた電線22は、オフセット調整板41及びガイド部材43に配設されたガイドリング44を通ってガイド部材43の下端部まで引き出され、ガイド部材43の下端部から振動子21に供給される。ガイド部材43には張力調整機構(図示せず)が設けられており、ガイド部材43から振動子21に供給する電線22の張力が一定に維持される。
【0035】
モータ39により回転板40が回転すると、ガイド部材43は振動子21の周囲を回転する。ガイド部材43の回転半径は、オフセット調整板41により調整することができる。ガイド部材43の回転にともなって、ガイド部材43の下端部から供給される電線22がコイル状の振動子21に巻き付けられていく。
【0036】
図5に示すように、モータ39、回転台駆動部51、及び抑え治具36の先端部に設けられたヒータ52は、制御部50により制御される。操作部53には、巻き線機30のオン/オフを行うスイッチ等が設けられており、制御部50は操作部53からの信号により動作を開始する。
【0037】
モータ39は第1の回転駆動部の一例であり、回転台駆動部51は第2の回転駆動部の一例である。
【0038】
以下、上述の巻き線機30の動作について、図6(a)〜(c)を参照して説明する。なお、図6(a)〜(c)では、図3に示したボビン42及びガイドリング44等の図示を省略している。また、初期状態では、回転台33はその移動範囲の上限の位置まで移動しているものとする。
【0039】
まず、図6(a)に示すように、コイル状に加工された振動子21を振動子取付け部34の上に接着テープ等により固定する。専用の治具を用いて振動子21を振動子取付け部34の上に固定するようにしてもよい。振動子21は、例えばFe−Al合金又はその他の制振合金により形成されたものを使用する。
【0040】
次に、ボビン42から電線22を引き出して、ガイドリング44に通す。そして、電線22の先端部を振動子取付け部34の側部に数回巻き付け、固定治具34aで固定する。また、抑え治具36の先端部と振動子21の周面との間に電線22を挟み込む。このとき、振動子21に電線を1〜2回程度巻き付けてもよい。
【0041】
その後、操作部53のスイッチをオンにすると、モータ39により回転板40が回転してガイド部材43が振動子21の周囲を移動(回転)する。これにより、図6(b)に示すように、巻き付け位置(抑え治具36と振動子21との間で電線22を挟み込んだ部分)の隣に、電線22が巻き付けられていく。
【0042】
このとき、回転板40が一回転して振動子21に電線22が一巻きされるたびに、制御部40は回転台駆動部51を制御して、回転台33を回転板40の回転方向とは逆の方向に若干回転しつつ、若干下方に移動させる。
【0043】
これにより、抑え治具36の先端部が、振動子21に巻き付けられた直後の電線22を押圧する。そして、抑え治具36の先端部に設けられたヒータ52により、電線22の被覆が100℃程度に加熱され、振動子21に巻き付けられた直後の電線22の被覆が隣の電線22の被覆と融着される。
【0044】
ところで、ガイド部材43の回転によりガイド部材43の下端部と巻き付け位置(抑え治具36と振動子21との間で電線22を挟み込んだ部分)との間の距離が変化する。このため、ガイド部材43の下端部が巻き付け位置から離れる方向に移動するときには、ガイド部材43から余分な電線22が引き出される。
【0045】
しかし、ガイド部材43の下端部が巻き付け位置に近づく方向に移動するときには、ガイド部材43に設けられた張力調整機構により余分な電線22が引き戻される。これにより、ガイド部材43から供給される電線22に弛みが発生することはなく、巻き付け位置の電線22の隣に次の電線22が巻き付けられる。
【0046】
このようにして振動子21に所定の巻き数だけ電線22を巻き付けると、制御部42は回転台駆動部51及びモータ39を停止する。その後、作業者により、巻き終えた電線22を接着剤などで振動子21に固定した後、図6(c)に示すように、電気回路に接続するために必要な長さ分の電線22をガイド部材43から引き出して切断する。このようにして、コイル状の振動子21への電線22の巻き付けが完了する。
【0047】
図7は、上述の巻き線機30により電線22を巻き付けた振動子21を用いた振動発電デバイスの一例を示す模式図である。
【0048】
図7に示す振動発電デバイス60は、電線22が巻き付けられた振動子21と、磁石63と、重り64とを有する。振動子21の一方の側には磁石63が接合されており、他方の側には重り64が接合されている。
【0049】
磁石63により、振動子21内にはバイアス磁場が発生する。図7の例では、磁石63が振動源65に接合されている。
【0050】
重り64には慣性が働くため、振動源65が振動すると振動子21が弾性的に伸縮する。これにより、振動子21内の磁束密度が変化して、電線22に誘導電流が流れる。
【0051】
電線22の両端は、電源回路66に接続されている。電源回路66は、整流回路及びDC(直流)−DC(直流)コンバータ等を含む電源制御部66aと、蓄電素子66bとを含んで構成されている。電源制御部66aは、振動発電デバイス60から出力される電力を所定の電圧に変換し、蓄電素子66bに蓄積する。蓄電素子66bに蓄積された電力は、例えば温度等を検出するセンサデバイス67の駆動に使用される。
【0052】
図7に示す振動発電デバイス60は、振動子21がコイル状に形成されているため、小さな振動や単発の振動にも反応して比較的大きな電力を出力する。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の巻き線機30は、コイル状の振動子21に電線22を自動的に巻き付ける。これにより、図7に例示したような、小さな振動や単発の振動にも反応して比較的大きな電力を出力する振動発電デバイスの量産が可能となる。
【0054】
(第2の実施形態)
図8(a)は第2の実施形態に係る巻き線機を示す模式図、図8(b)は図8(a)のI−I線の位置における模式断面図である。また、図9は、本実施形態で使用する振動子の側面図である。更に、図10は、本実施形態の巻き線機の電気系を示すブロック図である。
【0055】
図8(a)に示すように、本実施形態に係る巻き線機70では、支持板71の上に電線送り部72が設けられている。電線送り部72は、第1の筒状部材72aと、第1の筒状部材72aの内側に配置される第2の筒状部材72bとを有する。これらの円筒状部材72a,72bは中心軸を一致させ、且つ中心軸を垂直にして配置されている。
【0056】
振動子21は、筒状部材72aと筒状部材72bとの間に配置される。なお、本実施形態で使用する振動子21は、図9に示すように、上部に直線状の部分が設けられている。以下、振動子21の直線状の部分を直線部21aと呼び、コイル状の部分をコイル部21bと呼ぶ。
【0057】
筒状部材72a,72bは、図10に示す電線送り駆動部91により同一方向に同一の回転速度で回転する。筒状部材72aの内側及び筒状部材72bの外側には突起73a,73bがそれぞれ複数設けられている。後述するように、これらの突起73a,73bは振動子21に巻き付けられた電線22に接触し、筒状部材72a,72bの回転にともなって電線22を振動子21の下方に送っていく。
【0058】
電線送り部72の上方には、振動子21の直線部21aを挟む位置に一対の送りロール74が配置されている。この送りロール74は、図10に示す送りロール駆動部92により駆動されて回転する。
【0059】
また、送りロール74の上方には、モータ81により回転する巻き線部80が配置されている。巻き線部80は、モータ81の回転軸に接続された上側回転板78と、上側回転板78の下方に配置された下側回転板75と、上側回転板78と下側回転板75とを連結する複数の柱状のスペーサ79とを有する。
【0060】
下側回転板75の中心部には、振動子21の直線部21aが挿通する穴が設けられている。また、下側回転板75の上には、電線22が巻回されたボビン76が配置される。更に、下側回転板75の上には、ボビン76から巻き解かれた電線22を一定の圧力で抑える抑え治具77が配置されている。
【0061】
モータ81は、支持板71の端部に配設された支柱82と、支柱82の上部から水平方向に伸び出したアーム83とにより支持されている。支柱82は上下方向に伸縮可能であり、支柱82の上下方向の伸縮にともなって巻き線部80は上下方向に移動する。
【0062】
図10に示すように、モータ81、電線送り駆動部91、送りロール駆動部92は、制御部90により制御される。操作部93には、巻き線機70のオン/オフを行うスイッチ等が設けられており、制御部90は操作部93からの信号により動作を開始する。
【0063】
なお、巻き線部80は線材巻き付け部の一例であり、送りロール74及び筒状部材72a,72bは電線送り部の一例である。
【0064】
以下、上述の巻き線機70の動作について、図11図16を参照して説明する。初期状態では、支柱82が伸張して、巻き線部80が上方に退避している状態とする。
【0065】
まず、図11に示すように、振動子21を筒状部材72a,72b間に配置し、接着テープ又は専用の治具で支持板71の上に固定する。また、支柱82を縮めて、回転板75の穴に振動子21の直線部21aを通す。
【0066】
次に、ボビン76から電線22を引き出して抑え治具77に通し、更に電線22の先端部を、図12に示す筒状治具84に固定する。筒状治具84の内径は、振動子21を構成するワイヤの径よりも若干大きく設定されており、側部には電線22の先端部を固定するための固定部84aが設けられている。
【0067】
次に、電線22の先端部を固定した円筒治具84を振動子21の直線部21aに通し、回転板75の下に配置する。
【0068】
その後、作業者が操作部93のスイッチをオンにすると、モータ81、送りロール駆動部92及び電線送り駆動部91が駆動を開始して、巻き線部80、送りロール74、筒状部材72a,72bがそれぞれ回転する。
【0069】
巻き線部80が回転することにより、図13に示すように、振動子21の直線部21aに電線22が巻き付けられていく。このとき、押さえ治具77により振動子21の直線部21aに巻き付けられる電線22には一定の張力が与えられるため、振動子21の直線部21aに巻き付けられる電線22に弛みが発生することが回避される。
【0070】
また、送りロール74が回転することにより、円筒治具84が下方に送られ、更に振動子21の直線部21aに巻き付けられた電線22も下方に送られていく。更にまた、筒状部材72a,72bが回転することにより、振動子21の直線部21aから送られてきた筒状部材84及び電線22が、コイル部21bの下側に送られていく。
【0071】
このようにして振動子21の直線部21aに所定の巻き数だけ電線22が巻き付けられると、制御部90からの信号によりモータ81が回転を停止する。そして、図14に示すように、振動子21の直線部21aに巻き付けられた電線22が送りロール74及び筒状部材72a,72bによりコイル部21bに送られると、制御部90からの信号により送りロール駆動部92及び電線送り駆動部91が停止する。
【0072】
その後、作業者は、図15に示すように、支柱82を伸ばして回転部80を上方に移動し、電線22を所定の長さ分だけ引き出して切断する。そして、振動子21を支持板71から取り外し、接着剤等で電線22を振動子21のコイル部21bに固定する。また、作業者により振動子21から円筒状部材84が取り外される。更に、直線部21aがコイル部21bから切り離される。図16は、直線部21aを切り離した状態の振動子21を示している。
【0073】
次いで、100℃〜200℃の温度で熱処理して、振動子21に巻き付けられている電線22の被覆を相互に融着する。このようにして、振動子21への電線22の巻き付けが完了する。
【0074】
本実施形態の巻き線機70も、第1の実施形態の巻き線機30と同様に、コイル状の振動子21に電線22を自動的に巻き付ける。これにより、図7に例示したような、小さな振動や単発の振動にも反応して比較的大きな電力を出力する振動発電デバイスの量産が可能となる。
【0075】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0076】
(付記1)コイル状の部材の端部を固定するコイル状部材固定部と、
前記コイル状の部材に線材を供給するガイド部材と、
前記ガイド部材から供給される線材を前記コイル状の部材との間に挟んで巻き付け位置を決める抑え治具と、
前記ガイド部材を前記コイル状の部材の周囲に回転させる第1の回転駆動部と、
前記コイル状の部材をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させる第2の回転駆動部と
を有することを特徴とする巻き線機。
【0077】
(付記2)前記ガイド部材が取り付けられて前記第1の回転駆動部により回転する回転板を有し、
前記ガイド部材が前記回転板の半径方向に移動可能であることを特徴とする付記1に記載の巻き線機。
【0078】
(付記3)前記抑え治具の前記線材に接触する側にヒータが設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載の巻き線機。
【0079】
(付記4)ガイド部材から供給される電線を抑え治具によりコイル状の振動子の周面に抑え付ける工程と、
前記ガイド部材を前記振動子の周囲に回転させ、前記振動子をその中心軸を中心に回転させながら前記中心軸方向に移動させて、前記振動子の周囲に前記電線を巻き付ける工程と
を有することを特徴とする振動発電デバイスの製造方法。
【0080】
(付記5)前記振動子が、制振合金により形成されていることを特徴とする付記4に記載の振動発電デバイスの製造方法。
【0081】
(付記6)コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有するコイル部材の前記直線部に線材を巻き付ける線材巻き付け部と、
前記直線部に巻き付けられた前記線材を前記コイル部に移動させる線材送り部と
を有することを特徴とする巻き線機。
【0082】
(付記7)前記線材送り部は、前記直線部に巻き付けられた前記線材を前記コイル部に送る第1の送り部と、
前記コイル部の内側及び外側の少なくとも一方に配置され、前記第1の送り部により前記コイル部の一端側に送られてきた前記線材を前記コイル部の他端側に送る第2の送り部と
を有することを特徴とする付記6に記載の巻き線機。
【0083】
(付記8)コイル状に形成されたコイル部と前記コイル部の一端側に配置されて直線状に伸びる直線部とを有する振動子の前記直線部に電線を巻き付ける工程と、
前記直線部に巻き付けた電線を前記コイル部に移動させる工程と
を有することを特徴とする振動発電デバイスの製造方法。
【0084】
(付記9)前記振動子が、制振合金により形成されていることを特徴とする付記8に記載の振動発電デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0085】
10…振動発電デバイス、11…コア、12a,12b…磁石、13a,13b…ヨーク、20…振動発電デバイス、21…振動子、22…電線、30…巻き線機、31…支持板、32…支持部材、33…回転台、34…振動子取付け部、36…抑え治具、37…支柱、38…アーム、39…モータ、40…回転板、41…オフセット調整板、42…ボビン、43…ガイド部材、44…ガイドリング、50…制御部、51…回転台駆動部、52…ヒータ、53…操作部、60…振動発電デバイス、63…磁石、64…重り、65…振動源、66…電源回路、67…センサデバイス、70…巻き線機、71…支持板、72…電線送り部、72a,72b…筒状部材、73…突起、74…送りロール、75,78…回転板、76…ボビン、77…抑え治具、79…スペーサ、80…巻き線部、81…モータ、82…支柱、83…アーム、90…制御部、91…電線送り駆動部、92…送りロール駆動部、93…操作部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16