(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
図1(a)〜
図4を参照して、第1実施形態の制御装置30(
図2参照)を備えるクレーン1(
図1(a)参照)について説明する。
【0013】
クレーン1は、
図1(a)に示すブーム25(アタッチメント)(後述)等により、吊荷を吊り上げる作業(荷役作業)等を行う。クレーン1は、移動式クレーンであり、クローラクレーンであり、例えばラチスブームクローラクレーンである。クレーン1は、作業状態と分解状態とに変形可能に構成される(後述)。クレーン1は、下部走行体10と、上部旋回体20と、を備える。
【0014】
下部走行体10は、地面Gに対してクレーン1を走行させる。以下、地面Gに対する下部走行体10の走行を、単に「下部走行体10の走行」ともいう。下部走行体10は、クローラ式である。
図1(c)に示すように、下部走行体10は、カーボディ11と、クローラ13と、を備える。
【0015】
カーボディ11は、上部旋回体20が取り付けられるフレームである。
【0016】
クローラ13は、カーボディ11の左右に取り付けられる(合計2つ設けられる)。左右のクローラ13それぞれは、クローラフレーム13aと、シュー13bと、を備える。クローラフレーム13aは、カーボディ11に分解可能に取り付けられる。シュー13bは、クローラフレーム13aの周囲に取り付けられる、無限軌道である。
【0017】
上部旋回体20は、
図1(a)に示す下部走行体10に対して旋回可能である。上部旋回体20は、上部本体21と、カウンタウェイト23と、ブーム25と、を備える。上部旋回体20に関する方向を次のように定義する。カウンタウェイト23に対する運転室21a(後述)側を「前」とする。運転室21aに対するカウンタウェイト23側を「後」とする。
【0018】
上部本体21は、下部走行体10に(カーボディ11に)対して旋回可能に搭載される(取り付けられる)。以下、下部走行体10に対する上部本体21の旋回を、単に「上部本体21の旋回」ともいう。上部本体21は、運転室21aを備える。運転室21aは、上部本体21の前部(例えば前端部)に配置される。
【0019】
カウンタウェイト23は、クレーン1の吊上げ能力を上げるためのおもりである。カウンタウェイト23は、上部本体21に分解可能に取り付けられる。カウンタウェイト23は、上部本体21の後端部に取り付けられる。カウンタウェイト23は、複数の単位ウェイトにより構成される。複数の単位ウェイトは、積み上げられる。単位ウェイトは、例えば直方体状であり、例えば板状である。
【0020】
ブーム25(アタッチメント)は、吊荷の吊り上げ等を行うための起伏部材である。ブーム25は、上部本体21に分解可能に取り付けられる(取り付け及び取り外し可能である)。ブーム25は、上部本体21の前端部に取り付けられる。ブーム25は、上部本体21に対して起伏(回動)可能である。ブーム25は、複数の単位ブームを備える。単位ブームには、下部ブーム25aと、先端側ブーム25b・25cと、を備える。
【0021】
下部ブーム25aは、ブーム25を構成する単位ブームのうち、最も上部本体21側(基端側)の単位ブームである。下部ブーム25aは、上部本体21に取り付けられる。
【0022】
先端側ブーム25b・25cは、下部ブーム25aよりも先端側の単位ブームである。先端側ブーム25bは、例えば、下部ブーム25aの先端部に連結される中間ブーム25bと、中間ブーム25bの先端部に連結される上部ブーム25cと、を備える。なお、先端側ブーム25b・25cを構成する単位ブームの数は、1や3以上でもよい。また、ブーム25の先端部に、ジブ(アタッチメント)やストラット(アタッチメント)等が取り付けられる場合もある(図示なし)。
【0023】
(作業状態、分解状態)
上述したように、クレーン1は、作業状態と分解状態とに変形可能に構成される。
【0024】
作業状態とは、
図1(a)に示すように、クレーン1を構成する各部品が組み立てられた状態であり、通常の作業(荷役作業など)が可能なクレーン1の状態である。作業状態は、少なくとも、下部走行体10、上部本体21、カウンタウェイト23、及びブーム25が、互いに組み立てられた状態である。
【0025】
分解状態とは、
図1(b)〜
図1(d)に示すように、作業状態のクレーン1(
図1(a)参照)に対し、クレーン1を構成する部品の少なくとも一部が分解された状態である。分解状態は、クローラ13(
図1(c)参照)、カウンタウェイト23(
図1(b)参照)、及び、ブーム25(
図1(a)参照)の少なくともいずれかが、カーボディ11や上部本体21から分解された状態である。分解状態には、例えば次のように様々な状態がある。
図1(b)に示すように、分解状態には、下部走行体10と、ブーム25のうち下部ブーム25aのみと、カウンタウェイト23と、が上部本体21に取り付けられた状態がある。
図1(c)に示すように、分解状態には、下部走行体10が上部本体21に取り付けられ、かつ、カウンタウェイト23(
図1(a)参照)及びブーム25(同図参照)が上部旋回体20に取り付けられていない状態がある。
図1(d)に示すように、分解状態には、カーボディ11が上部本体21に取り付けられ、かつ、クローラ13(
図1(c)参照)がカーボディ11に取り付けられず(カーボディ11が地面Gに対してジャッキアップされ)、かつ、カウンタウェイト23(
図1(a)参照)及びブーム25(同図参照)が上部本体21に取り付けられていない状態がある。また、分解状態には、カウンタウェイト23を構成する複数の単位ウェイトのうち、一部の単位ウェイトのみが上部本体21に取り付けられた状態がある(図示なし)。これらの様々な分解状態ごとに、上部本体21の旋回の制限内容(制限の有無等)や、下部走行体10の走行の制限内容が定められる(後述)。
【0026】
制御装置30(
図2参照)は、クレーン1の動作の制御を行う。制御装置30は、上部本体21の旋回の制御を行う。制御装置30は、上部本体21等に搭載される。
図2に示すように、制御装置30は、メイン回路31〜37と、制御用油圧機器類41〜49と、電気機器類50〜70と、を備える。
【0027】
メイン回路31〜37は、モータ33(後述)を駆動および制動するための回路である。メイン回路31〜37は、ポンプ31と、モータ33と、ブレーキ35と、コントロール弁37と、を備える。
【0028】
ポンプ31は、油(作動油、圧油)を吐出する。ポンプ31の駆動源は、例えばエンジン(図示なし)である。ポンプ31の容量は可変である。ポンプ31の容量は、傾転角を変えることで変わる。
【0029】
モータ33は、
図1(a)に示すクレーン1を動作させるアクチュエータである。モータ33は、下部走行体10に対して上部本体21を旋回させるための旋回モータである。モータ33は、上部本体21に搭載される。
図2に示すように、モータ33は、油圧モータであり、ポンプ31から油が供給されることで駆動する。
【0030】
ブレーキ35は、モータ33の停止状態を保つために用いられる。ブレーキ35は、上部本体21(
図1(a)参照)の旋回の停止状態を保つために用いられる。ブレーキ35は、モータ33の出力軸(駆動軸)に連結される。ブレーキ35は、ブレーキ35へのパイロット圧の入力の有無に応じて、ブレーキ動作(モータ33の停止状態を保つ動作)の有無(オン又はオフ)を切り替える。
【0031】
コントロール弁37は、モータ33の動作を制御する。コントロール弁37は、ポンプ31からモータ33に流れる油の流量や方向を制御する(変える)。コントロール弁37は、上部本体21の旋回を制御する、旋回コントロール弁である。コントロール弁37は、コントロール弁37に入力されるリモコン圧(パイロット圧)に応じて、切替位置や開度を変えることで、上記制御を行う。コントロール弁37は、ポンプ31とモータ33との間(ポンプ31とモータ33とをつなぐ油路上)に設けられる。
【0032】
制御用油圧機器類41〜49は、メイン回路31〜37の動作を制御するための油圧機器である。制御用油圧機器類41〜49は、ポンプ容量制御弁41と、ブレーキ制御弁45と、リモコン弁47と、リモコン圧制御弁49と、を備える。
【0033】
ポンプ容量制御弁41は、ポンプ31の容量を制御する。ポンプ容量制御弁41は、ポンプ31の傾転角を制御する。ポンプ容量制御弁41は、例えば電磁比例弁である。例えば電磁比例弁である点は、リモコン圧制御弁49も同様である。電磁比例弁は、この電磁比例弁に入力される電気信号に応じて、制御対象を制御する。ポンプ容量制御弁41は、ポンプ容量制御弁41に入力される電気信号に応じて、ポンプ31の容量を変える。
【0034】
ブレーキ制御弁45は、ブレーキ制御弁45に入力される電気信号(オン又はオフ)に応じて、ブレーキ35へのパイロット圧の出力の有無を切り替える。
【0035】
リモコン弁47は、コントロール弁37を制御する。リモコン弁47は、クレーン1(
図1(a)参照)の操作者に操作される操作レバーを備える。リモコン弁47は、操作レバーの操作方向および操作量に応じて(レバー操作に応じて)、コントロール弁37の切替位置および開度を変える。操作レバーの操作方向には、左旋回操作(一方側操作)と右旋回操作(他方側操作)とがある。リモコン弁47は、レバー操作に応じたリモコン圧をコントロール弁37に出力する。
【0036】
リモコン圧制御弁49は、リモコン弁47からコントロール弁37に出力(供給)されるリモコン圧を制御(減圧)する。全開状態のリモコン圧制御弁49は、リモコン圧を減圧しない。全閉状態または絞られた状態のリモコン圧制御弁49は、リモコン圧を減圧する。リモコン圧制御弁49は、操作レバーの操作方向ごとに設けられる。リモコン圧制御弁49には、一方側操作(左旋回操作)用のリモコン圧制御弁49aと、他方側操作(右旋回操作)用のリモコン圧制御弁49bと、がある。
【0037】
電気機器類50〜70は、メイン回路31〜37および制御用油圧機器類41〜49を制御する。電気機器類50〜70は、検出器50と、表示装置60と、コントローラ70と、を備える。
【0038】
検出器50は、クレーン1(
図1(a)参照)の状態を検出する。検出器50は、クレーン1の作業状態および分解状態を検出可能である。検出器50は、クレーン1が分解状態の場合、どのような分解状態であるかを検出可能である。検出器50には、クローラ検出器51と、カウンタウェイト検出器52と、ブーム検出器53(アタッチメント検出器)と、がある。
【0039】
クローラ検出器51は、
図1(c)に示すカーボディ11に対するクローラ13の組立状態を検出する。クローラ検出器51は、カーボディ11へのクローラ13の取り付けの有無を検出する。クローラ検出器51は、左右のクローラ13同士の幅(組立状態)を検出してもよい(後述する「第1実施形態の変形例1」参照)。クローラ検出器51は、例えば、左右のクローラ13両方について取付の有無を検出する。また例えば、クローラ検出器51は、左右のクローラ13のうち一方のみについて取付の有無を検出してもよい(一方のクローラ13のみがカーボディ11に取り付けられた状態で上部本体21の旋回が行われることは通常ないため)。クローラ検出器51は、例えばカーボディ11へのクローラ13の取り付けの有無に応じて切り替わるスイッチ等である。
【0040】
カウンタウェイト検出器52(
図2参照)は、
図1(a)に示す上部本体21へのカウンタウェイト23の組立状態を検出する。カウンタウェイト検出器52は、上部本体21に取り付けられたカウンタウェイト23の量(単位ウェイトの数)を検出する。カウンタウェイト検出器52は、各単位ウェイトそれぞれについて上部本体21への取り付けの有無を検出できるように構成される。カウンタウェイト検出器52は、複数設けられる。カウンタウェイト検出器52は、例えば、特開2012−096915、特開平8−217382、特開2006−315843等に記載の技術により、カウンタウェイト23の組立状態を検出可能である。例えば、カウンタウェイト検出器52は、カウンタウェイト23の質量や高さ(積み上げられた単位ウェイトの枚数)に応じて、出力する電気信号を変える。また例えば、カウンタウェイト検出器52は、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを利用したもの等である。
【0041】
ブーム検出器53(アタッチメント検出器)(
図2参照)は、上部本体21へのブーム25の組立状態を検出する。ブーム検出器53は、上部本体21へのブーム25(下部ブーム25a)の取り付けの有無を検出する。例えば、ブーム検出器53は、ブーム25の起伏角度を検出するブーム角度検出器を流用したものである。ブーム角度検出器は、クレーン1に通常常設されているものであり、例えばポテンショメータである。ブーム角度検出器は、上部本体21からブーム25を取り外すと断線状態となるので、ブーム25の上部本体21への取り付けの有無を検出可能である。なお、ブーム検出器53は、ブーム角度検出器とは別に設けられてもよい。また、「アタッチメント検出器」は、ブーム25への、ジブやストラット(図示なし)の取り付けの有無を検出してもよい。
【0042】
表示装置60は、
図3に示すように動作制限情報D(後述)を表示する。表示装置60は、クレーン1(
図1(a)参照)の組立作業や分解作業を行う作業者(以下、「作業者」)に動作制限情報Dを伝達するために設けられる。
図2に示す表示装置60は、例えば運転室21a(
図1(a)参照)内に設けられる、ディスプレー(モニタ)である。
【0043】
コントローラ70は、信号の入出力や演算(照合、判定など)を行う。コントローラ70は、モータ33の動作を制御する。コントローラ70には、検出器50が出力した検出結果(信号)が入力される。コントローラ70には、クローラ検出器51、カウンタウェイト検出器52、及びブーム検出器53、それぞれから組立状態の検出結果が入力される。コントローラ70は、ポンプ容量制御弁41、ブレーキ制御弁45、及び、リモコン圧制御弁49、それぞれに制御用の指令(信号)を出力する。コントローラ70は、表示装置60の出力(表示)を制御する。コントローラ70には、動作制限情報Dが予め記憶される(後述)。
【0044】
(動作)
制御装置30の動作について説明する。以下、上述したクレーン1の構成要素(制御装置30を除く)については
図1(a)〜
図1(d)、制御装置30の各構成要素については
図2、各ステップS11〜S60については
図4を参照して説明する。制御装置30の動作の概略は次の通りである。まず、検出器50が検出を行う(S11)。そして、コントローラ70は、検出結果を動作制限情報Dに照合し(S12)、モータ33の動作の制限内容を決定する(S21〜S22)(照合決定処理)。コントローラ70は、照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容に基づいて、モータ33を通常通り動作させる(S31)、又は、モータ33の動作を制限する(S32、S33)。表示装置60は、
図3に示す動作制限情報Dを表示する(S60)。次に、制御装置30の動作の詳細を説明する。
【0045】
ステップS11では、クレーン1の組立状態が検出される。ステップS11では、クローラ検出器51、カウンタウェイト検出器52、及びブーム検出器53により、クローラ13(
図1(c)参照)、カウンタウェイト23(
図1(a)参照)、及びブーム25(下部ブーム25a)それぞれの組立状態が検出される。次にステップS12に進む。
【0046】
ステップS12では、検出器50の検出結果が、動作制限情報D(
図3参照)(
図4における「メモリ内のパターン」)に照合される。この照合は、コントローラ70により行われる。コントローラ70により行われる点は、後述するステップS21及びS22の判定も同様である。
図3に示すように、動作制限情報Dは、検出器50に検出される組立状態D1と、モータ33の動作の制限内容D2と、の関係が定められた情報(パターン)である。組立状態D1と制限内容D2との関係は、クレーン1が安全に動作できるように(転倒しないように)定められる。動作制限情報Dは、コントローラ70の内部のメモリに予め記憶される。動作制限情報Dに設定されるモータ33の動作の制限内容D2には、「可」(制限なくモータ33が動作可能)と、「低速のみ可」(条件付きでモータ33が動作可能)と、「不可」(モータ33が動作不可能)と、がある。ステップS11での検出およびステップS12での照合は、クレーン1の組立中および分解中、常に行われる。次にステップS21に進む。なお、ステップS21〜S33をステップS20とする。
【0047】
ステップS21では、モータ33が動作可能か否かが判定(判断)される。ステップS21では、上部本体21が旋回可能か否かが判定される。モータ33が動作不可能(NO)の場合(
図3に示す制限内容D2が「不可」の場合)、ステップS33に進む。モータ33が動作可能(YES)の場合(
図3に示す制限内容D2が「可」又は「低速のみ可」の場合)、ステップS22に進む。
【0048】
ステップS22では、モータ33の動作速度の制限が必要か否かが判定される。ステップS22では、上部本体21の旋回速度の制限が必要か否かが判定される。モータ33の動作速度の制限が不要(NO)である場合(
図3に示す制限内容D2が「可」の場合)、ステップS31に進む。同制限が必要(NO)である場合(
図3に示す制限内容D2が「低速のみ可」の場合)、ステップS32に進む。
【0049】
ステップS31では、コントローラ70は、モータ33を通常通り(制限なく)動作可能とする。コントローラ70は、上部本体21を通常通り旋回可能とする。コントローラ70は、リモコン弁47の操作レバーのレバー操作に従って、モータ33を動作させる。具体的には、コントローラ70は、リモコン圧制御弁49を全開とする。コントローラ70は、ブレーキ制御弁45を介してブレーキ35を開放する。次に、ステップS60に進む。
【0050】
ステップS32では、コントローラ70は、条件付きでモータ33を動作可能とする。ステップS32では、コントローラ70は、条件付きで上部本体21を旋回可能とする。コントローラ70は、モータ33の動作速度の上限値を速度制限値(
図4における「低速」)に制限する。この速度制限値は、0を超え、かつ、モータ33が取り得る動作速度の最大値よりも小さい。この速度制限値に関する値は、コントローラ70に予め設定される。制限内容D2に複数の「低速のみ可」がある場合、複数の「低速のみ可」の速度制限値は、例えば互いに等しい(組立状態D1(
図3参照)にかかわらず一定値である)。また例えば、複数の「低速のみ可」の速度制限値は、互いに異なる値でもよい(組立状態D1(
図3参照)に応じた異なる値でもよい)。
【0051】
このステップS32での、モータ33の動作速度の速度制限値以下への制限は、次のように行われる。コントローラ70は、モータ33に供給される油の流量を所定流量以下に制限する。この所定流量以下への制限は、例えば次の[制限a]や[制限b]のように行われる。
[制限a]ポンプ31の吐出量が、所定吐出量に制限される。[a−1]例えば、コントローラ70は、ポンプ容量制御弁41を介して、ポンプ31の容量を所定容量に制限する。この所定容量は、コントローラ70に予め設定される。[a−2]また例えば、コントローラ70は、ポンプ31の駆動源であるエンジン(図示なし)の回転数を所定回転数に制限する。この所定回転数は、コントローラ70に予め設定される。
[制限b]コントローラ70は、リモコン圧制御弁49の開度を所定開度に制限することで、コントロール弁37の開度を制限する。この所定開度は、コントローラ70に予め設定される。
これらの[制限a]又は[制限b]が行われる場合、これらの制限が行われない場合に比べ、リモコン弁47のレバー操作量が同じでも、モータ33の動作速度が小さくなる(例えば30%等になる)。次に、ステップS60に進む。
【0052】
ステップS33では、コントローラ70は、モータ33を動作不可能(動作速度を0)とする。ステップS33では、コントローラ70は、上部本体21を旋回不可能とする。コントローラ70は、リモコン圧制御弁49を全閉とする。また、コントローラ70は、ブレーキ制御弁45を介して、ブレーキ35を駆動する(ブレーキをかける)。次に、ステップS60に進む。
【0053】
ステップS60では、
図3に示すように、表示装置60が、動作制限情報Dを表示する。表示装置60は、表(一覧表)として、動作制限情報Dを表示する。
【0054】
表示装置60は、動作制限情報Dの全部(全パターン)を表示する。表示装置60は、検出器50に検出される可能性がある組立状態D1を、全パターン表示する。表示装置60は、全パターンの組立状態D1に対応する、モータ33の動作の制限内容D2を、全パターン表示する。これにより、組立状態D1と制限内容D2との関係を作業者は一目で把握できる。その結果、例えば、組立状態D1をどう変化させれば、制限内容D2が「不可」から「可」になるか(又は「可」から「不可」になるか)、等を一目で把握できる。
【0055】
表示装置60は、組立状態D1のうち、少なくとも、検出器50に実際に検出された組立状態D1a
(第1組立状態)を表示する。また、表示装置60は、制限内容D2のうち、少なくとも、照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容D2a(組立状態D1aに対応する制限内容D2a)を表示する。
【0056】
表示装置60は、実際に検出された組立状態D1a
(第1組立状態)と、それ以外の組立状態
(D1aを除くD1
)(第2組立状態)と、を作業者が区別できるように表示を行う。表示装置60は、照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容D2aと、それ以外の制限内容D2と、を作業者が区別できるように表示を行う。具体的には例えば、表示装置60は、制限内容D2aに網掛けを行う。表示装置60は、制限内容D2aを表示する枠内の色を、制限内容D2a以外の制限内容D2を表示する枠内と異なる色にする。その結果、
図3の表を見た作業者は、網掛けが行われた制限内容D2aだけでなく、組立状態D1aも把握できる。
【0057】
なお、
図3に示す一点鎖線および二点鎖線は、D1、D1a、D2、及びD2aが指し示す範囲を示すための線である。表示装置60は、これらの一点鎖線および二点鎖線を表示する必要はない。また、
図3に示す例では、カウンタウェイト23(
図1(a)参照)は、No.1、No.2、・・・、No.7、及びNo.8の8つの単位ウェイトで構成される。この例では、No.5及びNo.6の2つの単位ウェイトのうち一方のみが上部本体21に対して取り付けられた状態で、上部本体21が旋回することはない(例えば、これら2つの単位ウェイトは、上下に積み上げられるのではなく、上部本体21の前後方向や左右方向に並べて配置される)。そのため、表示装置60は組立状態D1として「No.1〜No.5」を表示していない(「No.1〜No.7」を表示していない理由も同様である)。
【0058】
(効果1(発明1))
図2に示す制御装置30による効果を説明する(制御装置30以外のクレーン1の構成要素については
図1(a)〜
図1(d)、制御装置30の各構成要素については
図2、各ステップS11〜S60については
図4を参照)。
制御装置30は、作業状態(
図1(a)参照)と分解状態(
図1(b)〜
図1(d)参照)とに変形可能に構成されるクレーン1が備えるものである。クレーン1は、下部走行体10と、下部走行体10に対して旋回可能に搭載される上部本体21と、上部本体21に分解可能に取り付けられるカウンタウェイト23と、上部本体21に分解可能に取り付けられるブーム25(アタッチメント)と、を備える。制御装置30は、クレーン1の状態を検出する検出器50と、クレーン1を動作させるモータ33と、モータ33の動作を制御するコントローラ70と、を備える。検出器50は、上部本体21へのカウンタウェイト23の組立状態を検出するカウンタウェイト検出器52と、上部本体21へのブーム25の組立状態を検出するブーム検出器53(アタッチメント検出器)と、を備える。
[構成1−1]コントローラ70は、照合決定処理(S12〜S22)を行う。照合決定処理は、検出器50の検出結果を、コントローラ70に予め設定された動作制限情報D(
図3参照)に照合することで、モータ33の動作の制限内容D2a(
図3参照)を決定する処理である。
[構成1−2]カウンタウェイト検出器52の検出結果およびブーム検出器53の検出結果は、照合決定処理(S12〜S22)に用いられる。
[構成1−3]コントローラ70は、照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容D2a(
図3参照)に基づいて、モータ33の動作を制限することで、上部本体21の旋回を制限する。
【0059】
制御装置30は、上記[構成1−1]及び[構成1−2]を備える。よって、カウンタウェイト23及びブーム25の実際の組立状態D1a(
図3参照)に基づいて、モータ33の動作の制限内容D2a(
図3参照)が決定される。そして、上記[構成1−3]により、制限内容D2a(
図3参照)に基づいてモータ33の動作が自動的に制限される。よって、組立状態D1(
図3参照)に応じたモータ33の動作の制限内容D2(
図3参照)を、作業者が表等を見て判断する必要がなく、また、作業者が記憶に基づいて判断する必要がない。よって、クレーン1の組立作業及び分解作業時に、作業者が誤ってクレーン1を(モータ33を)動作させることを防ぐことができる(作業者が誤って上部本体21を旋回させることを防ぐことができる)。よって、クレーン1の組立作業及び分解作業の安全性を向上させることができる。
【0060】
(効果2(発明2))
図1(c)に示すように、下部走行体10は、上部本体21が取り付けられるカーボディ11と、カーボディ11に取り付けられるクローラ13と、を備える。
図2に示す検出器50は、カーボディ11に対するクローラ13の組立状態を検出するクローラ検出器51を備える。
[構成2]クローラ検出器51の検出結果は、照合決定処理(S12〜S22)に用いられる。コントローラ70は、モータ33の動作を制限することで、上部本体21(
図1(a)参照)の旋回を制限する。
【0061】
上記[構成2]により、照合決定処理(S12〜S22)では、
図1(a)に示すブーム25及びカウンタウェイト23の組立状態だけでなく、
図1(c)に示すクローラ13の組立状態も用いられる。よって、クローラ13の組立状態が照合決定処理に用いられない場合に比べ、
図2に示すモータ33の動作の制限(上部本体21の旋回の制限)を少なくできる。よって、クレーン1の組立作業及び分解作業を行いやすい(利便性を向上させることができる)。
【0062】
この効果の詳細は次の通りである。仮に、クローラ13(
図1(c)参照)の組立状態が照合決定処理(S12〜S22)に用いられないとする。すると、クローラ13の組立状態にかかわらず、
図3の「クローラなし」に対応する制限内容D2が選択される必要がある。これは、クレーン1の転倒を防ぐためである。一方、
図1(c)に示すクローラ13の組立状態が照合決定処理(S12〜S22)に用いられる場合、クローラ13がカーボディ11に取り付けられていれば、
図3の「クローラ付」に対応する制限内容D2が選択される。その結果、モータ33の動作の制限を少なくできる。
【0063】
(効果3(発明6))
[構成3]照合決定処理(S12〜S22)で決定される制限内容には、モータ33の動作速度の上限値を、0を超える所定値に制限することが含まれる。
【0064】
上記[構成3]により、モータ33の動作の制限内容D2(
図3参照)が、制限なし(
図4のS31、
図3の「可」)、及び、動作不可能(
図4のS33、
図3の「不可」)のみの場合に比べ、モータ33の動作の制限内容をより詳細に(適切に)設定できる。その結果、モータ33の動作の制限を少なくでき、組立作業及び分解作業を行いやすい(利便性を向上させることができる)。
【0065】
(効果4(発明7))
制御装置30は、コントローラ70に制御される表示装置60を備える。
[構成4]表示装置60は、検出器50に検出された組立状態D1a(
図3参照)と、照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容D2a(
図3参照)と、を表示する。
【0066】
上記[構成4]により、作業者は、組立状態D1a(
図3参照)と制限内容D2a(
図3参照)とを把握できる。よって、作業者がモータ33の動作の制限に戸惑うことを抑制できる。具体的には例えば、作業者がリモコン弁47の操作レバーを操作しているのに、モータ33が動作しない(又は低速でのみ動作する)ことに、作業者が戸惑うことを抑制できる。
【0067】
(第1実施形態の変形例1)
第1実施形態の変形例1について、上記第1実施形態との相違点を説明する。
上記第1実施形態では、
図1(c)に示すクローラ13(クローラフレーム13a)は、カーボディ11に対して分解可能に取り付けられた。一方、第1実施形態の変形例1では、クレーン1の輸送時でも、クローラ13はカーボディ11に取り付けられたままである。また、左右のクローラ13の幅が可変である。
上記第1実施形態では、クローラ検出器51は、カーボディ11に対するクローラ13の取付の有無(組立状態)を検出した。一方、第1実施形態の変形例1では、クローラ検出器51は、左右のクローラ13の幅(組立状態)を検出する。以下、これらの相違点をさらに説明する。
【0068】
クローラ13は、張出状態と縮小状態とに変形可能である。左右のクローラ13の幅は、可変である。張出状態のクローラ13は、カーボディ11から左右に張り出される(左右に突出する)。クレーン1が作業状態のとき(
図1(a)参照)、クローラ13は張出状態とされる。縮小状態のクローラ13は、張出状態のクローラ13よりも幅(左右方向の幅)が狭い。クローラ13が縮小状態のとき、クレーン1は分解状態である。クレーン1が輸送されるとき、クローラ13は縮小状態とされる。これにより、下部走行体10を輸送するトレーラ(図示なし)から、クローラ13がはみ出ない。クローラ13が、張出状態であるか、縮小状態であるかは、クローラ検出器51によって検出される。
【0069】
(動作)
上記第1実施形態では、カーボディ11に対するクローラ13の取付の有無が、照合決定処理(S12〜S22)に用いられた。また、カーボディ11に対するクローラ13の取付の有無が、組立状態D1として表示装置60に表示された(
図3に示す「クローラ付」や「クローラなし」参照、
図4のS60)。一方、第1実施形態の変形例1では、左右のクローラ13の幅が、照合決定処理(S12〜S22)に用いられる。また、左右のクローラ13の幅に関する内容(例えば「クローラ張出」や「クローラ縮小」等)が、組立状態D1として表示装置60に表示される(図示なし)。
【0070】
(第1実施形態の変形例2)
第1実施形態の変形例2について、上記第1実施形態との相違点を説明する。
【0071】
図2に示すように、第1実施形態の変形例2の制御装置30は、旋回角度検出器154を備える。旋回角度検出器154は、下部走行体10に対する上部本体21の旋回角度(以下「上部本体21の旋回角度」)を検出する。旋回角度検出器154の検出結果は、コントローラ70に入力される。コントローラ70は、上部本体21の旋回角度に応じて、モータ33の動作を制限する。
【0072】
(動作)
旋回角度検出器154の検出結果は、照合決定処理(
図4のS12〜S22)に用いられる。動作の詳細を
図4を参照して説明する。
【0073】
ステップS11では、上記第1実施形態で行われた検出に加えて、旋回角度検出器154(
図2参照)により上部本体21の旋回角度の検出が行われる。
【0074】
ステップS12では、上記第1実施形態で行われた照合に加えて、上部本体21の旋回角度が、動作制限情報D(
図3参照)に照合される。動作制限情報Dには、上部本体21の旋回角度と、モータ33の動作の制限の内容と、の関係が定められる(図示なし)。制限内容D2(
図3参照)として、第1実施形態の「低速のみ可」や「不可」に代えて(又は「低速のみ可」に加えて)、「α度以内のみ可」(上部本体21の旋回角度が所定角度範囲以内の場合のみモータ33が動作可能)が設定される(図示なし)。上記「α度」(所定角度範囲)は、具体的には例えば、「±30度」(右に30度〜左に30度)などである。但し、下部走行体10の前後の向きと上部本体21の前後の向きとが一致するときの旋回角度を0度とする。
【0075】
ステップS21では、モータ33が動作可能か否かが判定される。下記の[条件A]を満たす場合、上記第1実施形態と異なる判定が行われる。下記の[条件A]かつ[条件B]を満たす場合、モータ33が動作可能(YES)と判断される。下記の[条件A]を満たし、[条件B]を満たさない場合、モータ33が動作不可能(NO)と判断される。
[条件A]照合決定処理(S12〜S22)で決定された制限内容D2aが、「α度以内のみ可」である。
[条件B]旋回角度検出器154に検出された(実際の)旋回角度が、α度以内(所定角度範囲以内)である。
【0076】
ステップS60では、表示装置60は、第1実施形態の制限内容D2に代えて(又は加えて)、「α度以内のみ可」(例えば「±30度以内のみ可」)を表示する。なお、表示装置60は、旋回角度検出器154の検出結果を表示しない(表示してもよい)。
【0077】
(効果5(発明3))
第1実施形態の変形例2の制御装置30による効果を説明する。
図2に示すように、検出器50は、下部走行体10に対する上部本体21の旋回角度を検出する旋回角度検出器154を備える。
[構成5]旋回角度検出器154の検出結果は、照合決定処理(
図4のS12〜S22)に用いられる。コントローラ70は、モータ33の動作を制限することで、上部本体21の旋回を制限する。
【0078】
上記[構成5]により、照合決定処理(S12〜S22)では、上部本体21の旋回角度が用いられる。よって、上部本体21の旋回角度が照合決定処理(
図4のS12〜S22)に用いられない場合に比べ、モータ33の動作の制限(上部本体21の旋回の制限)を少なくできる。よって、クレーン1の組立作業及び分解作業を行いやすい(利便性を向上させることができる)。
【0079】
(第2実施形態)
図5〜
図7を参照して、第2実施形態の制御装置230について、第1実施形態の制御装置30(
図2参照)との相違点を説明する。相違点は次の通りである。
図2に示す第1実施形態のモータ33は、
図1(a)に示す上部本体21の旋回用であったが、
図5に示す第2実施形態のモータ233は、
図1(a)に示す下部走行体10の走行用である。
図2に示す第1実施形態の制御装置30は、ブレーキ35及びブレーキ制御弁45を備えたが、
図5に示す第2実施形態の制御装置230はこれらを備えない。
図2に示す第1実施形態の制御装置30は、クローラ検出器51を備えたが、
図5に示す第2実施形態の制御装置230は、クローラ検出器51を備える必要はない。また、制御装置230は、旋回角度検出器254と、操作方向検出器255と、傾斜検出器256と、を備える。
図2に示す第1実施形態のコントローラ70は、
図1(a)に示す上部本体21の旋回を制御(制限)したが、
図5に示す第2実施形態のコントローラ270は、
図1(a)に示す下部走行体10の走行を制御(制限)する。
以下、上記相違点をさらに説明する。以下では、クレーン1の構成要素(制御装置230を除く)については
図1(a)〜
図1(c)を参照して説明する。
【0080】
モータ233(
図5参照)は、下部走行体10の走行用である。モータ233は、地面G(
図1(a)参照)に対して下部走行体10を(クレーン1を)走行させる。モータ233は、クローラ13(
図1(c)参照)を駆動する。モータ233は、クローラフレーム13a(
図1(c)参照)に搭載される。
【0081】
このモータ233と同様に、ポンプ31、コントロール弁37、及びリモコン弁47も、下部走行体10の走行用である。リモコン圧制御弁49aは、下部走行体10の前進側のリモコン圧を制御(減圧)する。さらに詳しくは、リモコン圧制御弁49aは、下部走行体10を前進させる操作がリモコン弁47により行われたときに、リモコン弁47からコントロール弁37に出力されるリモコン圧を制御する弁である。リモコン圧制御弁49bは、下部走行体10の後進側のリモコン圧を制御する。
【0082】
旋回角度検出器254は、第1実施形態の変形例2の旋回角度検出器154(
図2参照)と同様に、下部走行体10に対する上部本体21の旋回角度を検出する。旋回角度検出器254は、下部走行体10の前後の向きと上部本体21の前後の向きとが、同じ向きか逆向きかを検出する。上記「同じ向き」は、上部本体21の旋回角度が、右に90度未満、かつ、左に90度未満の場合である。但し、上述したように、下部走行体10の前後の向きと上部本体21の前後の向きとが一致するときの旋回角度を0度とする。上記「逆向き」は、上部本体21の旋回角度が、右に90度を超え、かつ、左に90度を超える場合である。旋回角度検出器254により上記「同じ向き」が検出された場合、下部走行体10の走行の向き(前進または後進)と、上部旋回体20の走行の向きと、が同じになる。旋回角度検出器254により上記「逆向き」が検出された場合、下部走行体10の走行の向きと、上部旋回体20の走行の向きと、が逆向きになる。以下では、上部本体21が前進することを(下部走行体10の走行の向きにかかわらず)「前進走行」とする。上部本体21が後進することを「後進走行」とする。
【0083】
操作方向検出器255は、リモコン弁47の操作レバーの操作方向(下部走行体10の前進および後進)を検出する。操作方向検出器255は、2つの操作方向ごとに1つずつ(合計2つ)設けられる。操作方向検出器255は、リモコン弁47からコントロール弁37に出力されるリモコン圧を検出する。操作方向検出器255は、例えば、リモコン弁47とリモコン圧制御弁49との間に設けられる。操作方向検出器255には、下部走行体10を前進させる操作を検出する操作方向検出器255aと、下部走行体10を後進させる操作を検出する操作方向検出器255bと、がある。操作方向検出器255a・255bの検出結果と、旋回角度検出器254の検出結果と、により上部本体21の進行方向を検出できる。
【0084】
傾斜検出器256は、クレーン1の傾斜角度(上部本体21の傾斜角度、下部走行体10の傾斜角度、地面G(
図1(a)参照)の傾斜角度)を検出する。傾斜検出器256は、例えば上部本体21に取り付けられ、また例えば下部走行体10に取り付けられる。
【0085】
コントローラ270には、旋回角度検出器254、操作方向検出器255、及び傾斜検出器256、それぞれから検出結果が常時入力される。
【0086】
(動作)
第1実施形態の制御装置30(
図2参照)の動作に対する、制御装置230の動作の相違点の概略は次の通りである。以下、制御装置230の各構成要素については
図5、各ステップS211〜S260については
図7を参照して説明する。まず、検出器50が検出を行う(S211)。そして、コントローラ270は、検出結果を動作制限情報Dに照合する(S212)。コントローラ270は、前進走行の制限の制御(S220(S221〜S233))と、後進走行の制限の制御(S240(S241〜S253))と、を行う。表示装置60は、動作制限情報Dを表示する(S260)。以下、制御装置230の動作について、第1実施形態の制御装置30(
図2参照)の動作との相違点を
図7を参照して説明する。
【0087】
ステップS211では、クレーン1の組立状態等が検出器50により検出される。ステップS211では、カウンタウェイト23及びブーム25の組立状態と、上部本体21の旋回角度と、クレーン1の傾斜角度と、が検出される。この検出は、カウンタウェイト検出器52、ブーム検出器53、旋回角度検出器254、及び傾斜検出器256により行われる。次にステップS212に進む。
【0088】
ステップS212では、ステップS211で検出された検出結果が、動作制限情報D(
図6参照)(
図7における「メモリ内のパターン」)に照合される。
図6に示すように、動作制限情報Dに設定される制限内容D2は、前進走行および後進走行それぞれについて設定される。制限内容D2には、「可」(制限なくモータ233が動作可能)と、「可(β度以下)」(条件付きでモータ233が動作可能」)と、「不可」(モータ233が動作不可能)と、がある。上記「可(β度以下)」の「β」として、クレーン1の傾斜角度の制限値(最大値)が設定される。次にステップS221に進む。なお、ステップS221〜S233を、ステップS220(前進走行の制限の制御)とする。
【0089】
ステップS221では、前進走行が可能か否かが判定される。下記の[条件E]を満たす場合、上記第1実施形態のステップS21(
図4参照)と異なる判定が行われる。下記の[条件E]かつ[条件F]を満たす場合、前進走行が可能(YES)であると判断され、ステップS231に進む。下記の[条件E]を満たし、[条件F]を満たさない場合、前進走行が不可能(NO)であると判断され、ステップS233に進む。
[条件E]照合決定処理(S212,S221)で決定された制限内容D2a(
図6参照)が「可(β度以下)」である。
[条件F]傾斜検出器256に検出されたクレーン1の(実際の)傾斜角度が、β度以下である。
【0090】
ステップS231では、コントローラ270は、モータ233の前進走行側の動作を可能とする。コントローラ270は、リモコン弁47の操作レバーによる前進走行の操作に従って、モータ233を動作させる。具体的には、旋回角度検出器254の検出結果が上記「同じ向き」の場合、コントローラ270は、リモコン圧制御弁49a(下部走行体10の前進側)を全開にする。旋回角度検出器254の検出結果が上記「逆向き」の場合、コントローラ270は、リモコン圧制御弁49b(下部走行体10の後進側)を全開にする。次に、ステップS241に進む。
【0091】
ステップS233では、コントローラ270は、モータ233の前進走行側の動作を不可能とする。コントローラ270は、リモコン弁47の操作レバーによる前進走行の操作を無効とする。具体的には、旋回角度検出器254の検出結果が上記「同じ向き」の場合、コントローラ270は、リモコン圧制御弁49a(下部走行体10の前進側)を全閉にする。旋回角度検出器254の検出結果が上記「逆向き」の場合、コントローラ270は、リモコン圧制御弁49b(下部走行体10の後進側)を全閉にする。次に、ステップS241に進む。なお、ステップS241〜S253を、ステップS240(後進走行の制限の制御)とする。
【0092】
ステップS241〜S253では、ステップS221〜S233で行われる前進走行に関する処理と同様に、後進走行に関する処理が行われる。なお、ステップS221とS241とが対応し、S231とS251とが対応し、S233とS253とが対応する。ステップS251やS253の次に、ステップS260に進む。なお、
図6に例示した動作制限情報Dでは、後進走行時は、どの組立状態D1でも制限内容D2は「可」である。しかし、後進走行時に、制限内容D2が「不可」等になる場合もあり得る(図示なし)。
【0093】
ステップS260では、表示装置60が、動作制限情報Dを表示する。表示装置60は、第1実施形態(
図2参照)と同様に、カウンタウェイト検出器52及びブーム検出器53に検出された組立状態D1(組立状態D1aを含む)と、制限内容D2(制限内容D2aを含む)と、を表示する。なお、表示装置60は、旋回角度検出器254の検出結果(上部本体21の旋回角度)や、傾斜検出器256の検出結果(クレーン1の傾斜角度)を表示しない(表示してもよい)。
【0094】
(効果6(発明4))
制御装置230による効果を説明する。
[構成6]検出器50は、下部走行体10に対する上部本体21の旋回角度を検出する旋回角度検出器254を備える。旋回角度検出器254の検出結果は、照合決定処理(特にS221,S241)に用いられる。コントローラ270は、モータ233の動作を制限することで、下部走行体10の走行を制限する。
【0095】
下部走行体10が走行するときに、上部本体21が前に進む(前進走行)か後ろに進む(後進走行)かは、下部走行体10に対する上部本体21の旋回角度によって異なる。また、クレーン1の組立状態が同じでも、上部本体21が前進走行するか後進走行するかによって、クレーン1の安定性が異なる。そこで、上記[構成6]では、上部本体21の旋回角度が照合決定処理(特にS221,S241)に用いられる。よって、上部本体21の前進走行および後進走行それぞれについて(別々に)、モータ233の動作制限を行える。
【0096】
(第2実施形態の変形例)
図8を参照して、第2実施形態の変形例について、上記第1,第2実施形態との相違点を説明する。
上記第1実施形態では、モータ33(
図2参照)が「低速のみ可」(
図3参照)に制限される場合があり、一方、上記第2実施形態では、モータ233(
図5参照)が「低速のみ可」に制限される場合がなかった。しかし、第2実施形態の変形例では、モータ233が「低速のみ可」に制限される(
図8のS322、S332、S342、及びS352)。以下、この相違点を
図8を参照してさらに説明する(上記と同様、制御装置230以外のクレーン1の構成要素については
図1(a)〜
図1(d)、制御装置230の各構成要素については
図5参照)。
【0097】
ステップS221で前進走行可能(YES)の場合、ステップS322に進む。なお、ステップS221、S231、S233、S322、及びS332を、ステップS320とする。
【0098】
ステップS322では、第1実施形態のステップS22(
図4参照)と同様に、モータ233の動作速度の制限が必要(条件付きで動作可能)か、不要(制限なく動作可能)か、が判定される。ステップS322では、前進走行の走行速度の制限が必要か否かが判定される。コントローラ270の動作制限情報Dの制限内容D2には、第1実施形態と同様に、モータ233の動作が「低速のみ可」(
図3参照)が含まれる。前進走行時にモータ233の動作速度の制限が必要(YES)である場合、ステップS332に進む。同制限が不要(NO)である場合、ステップS231に進み、コントローラ270はモータ233を制限なく前進走行可能とする。
【0099】
ステップS332では、第1実施形態のステップS32(
図4参照)と同様に、コントローラ270は、速度制限値(
図8における「低速」)以下でのみモータ233を前進走行側に動作可能とする。コントローラ270は、リモコン弁47の操作レバーにより前進走行の操作があるときに、モータ233の動作速度の上限値を速度制限値に制限する。同操作がないときには、コントローラ270は、モータ233の動作速度の上限値を制限しなくてもよい(してもよい)。次に、ステップS241に進む。ステップS241で後進走行可能(YES)の場合、ステップS342に進む。なお、ステップS241、S251,S253,S342、及びS352を、ステップS340とする。
【0100】
ステップS342及びS352では、ステップS322及びS332で行われる前進走行時のモータ233の動作速度の上限値の制限と同様に、後進走行時のモータ233の動作速度の上限値の制限が行われる。なお、ステップS342とS322とが対応し、ステップS352とS332とが対応する。ステップS352の次に、ステップS260に進み、
図6に示すように、表示装置60による動作制限情報Dの表示が行われる。制限内容D2には、第1実施形態と同様に「低速のみ可」が表示される(図示なし)。
【0101】
(他の変形例)
上記実施形態および上記変形例は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。具体的には、上部本体21の旋回用のモータ33(
図2参照)の制限の制御(
図9のS20)と、下部走行体10の走行用のモータ233(
図5参照)の制限の制御(
図9のS220、S240)と、を両方行ってもよい。
【0102】
この場合の制御装置30,230(
図2及び
図5参照)の動作は次の通りである。
図9に示すように、ステップS411では、第1実施形態のステップS11(
図4参照)及び第2実施形態のステップS211(
図7,
図8参照)で検出された組立状態等が全て検出される。次に、ステップS412では、ステップS411で検出された検出結果と、動作制限情報Dとが照合される。次に、第1実施形態のステップS20(
図4参照)と、第2実施形態のステップS220,S240(
図7参照)と、が行われる。なお、ステップS220,S240に代えて、第2実施形態の変形例のステップS320,S340(
図8参照)が行われてもよい。次に、ステップS460では、
図3に示す第1実施形態の表示内容(組立状態D1及び旋回の制限内容D2)と、
図7に示す第2実施形態の表示内容(組立状態D1及び走行の制限内容D2)と、が表示装置60により表示される。表示装置60は、旋回に関する制限内容D2(
図3参照)と、走行に関する制限内容D2(
図7参照)と、を同時に表示してもよく、操作(ボタン操作やタッチ操作等)により切り替えて表示してもよい。
【0103】
この場合、
図2に示す旋回制御用の機器(メイン回路31〜37及び制御用油圧機器類41〜49)と、
図5に示す走行制御用の機器(メイン回路31〜37及び制御用油圧機器類41〜49)と、が別々に設けられる。但し、
図2及び
図5に示すポンプ31及びポンプ容量制御弁41は、旋回制御用と走行制御用とで共通とされてもよい。