(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0015】
(関連技術)
図1は、関連技術の一例としての光伝送システムを示すブロック図である。
図1に示す光伝送システム1は、例示的に、第1の光伝送装置10と、第2の光伝送装置30と、各光伝送装置10及び30を相互通信可能に接続する光伝送路50及び70と、を備える。
【0016】
光伝送路50及び70は、それぞれ例示的に、光ファイバを用いた伝送路である。光伝送路50は、光伝送装置10から光伝送装置30へ光信号を伝送する。光伝送路70は、逆に、光伝送装置30から光伝送装置10へ光信号を伝送する。
【0017】
したがって、各光伝送装置10及び30は、光伝送路50及び70を通じて互いに双方向の光通信が可能である。光伝送装置10及び30間で伝送される光信号は、複数波長の光が波長多重された波長多重光信号(WDM信号)でもよいし、1波長の光信号でもよい。
【0018】
なお、以下の説明において、光伝送装置10から光伝送装置30への伝送方向あるいは伝送ルートを便宜的に「順方向」あるいは「順ルート」と称することがある。そして、これとは逆の光伝送装置30から光伝送装置10への伝送方向あるいは伝送ルートを便宜的に「対向方向」あるいは「対向ルート」と称することがある。したがって、順ルートに着目すると、光伝送装置10は光伝送装置30へ光信号を送信する送信局に相当し、光伝送装置30は光伝送装置10から光信号を受信する受信局に相当する。対向ルートに着目すると送信局及び受信局の関係は逆になる。
【0019】
光伝送装置10内の光伝送路50(順ルート)上には、例示的に、光増幅器(ポストアンプ)11、光合波器(カプラ)12、及び、可変光アッテネータ(VOA)13が設けられる。
【0020】
ポストアンプ11は、主信号光を送信する光送信器(図示省略)の後段に配置され、光送信器が送信した主信号光を増幅して光合波器12へ出力する。
【0021】
光合波器12は、ポストアンプ11で増幅された主信号光に、OSC送信器16から入力されるOSC(Optical Supervisory Channel)光を重畳してVOA13へ出力する。OSC光は、対向局である光伝送装置30へ設定情報や制御情報を伝送したり後述するように光伝送路50(70)の損失(伝送路ロス)を測定したりするのに用いられる監視制御光の一例である。
【0022】
VOA13は、OSC光が重畳された主信号光の光伝送路50への送信パワーを調整する。当該調整は、例示的に、VOAロス決定回路18によってVOA13の減衰量が制御されることで実施される。
【0023】
OSC送信器16は、例示的に、図示を省略したレーザダイオード(LD)等の光源を有しており、当該光源の出力光を用いてOSC光を生成して光合波器12へ出力する。
【0024】
一方、光伝送装置10内の光伝送路70(対向ルート)上には、例示的に、光分波器(カプラ)14及び光増幅器(プリアンプ)15が設けられる。
【0025】
光分波器14は、光伝送路70を通じて受信された光信号を主信号光とOSC光とに分離し、主信号光はプリアンプ15へ出力し、OSC光はOSC受信器17に出力する。当該OSC光は、後述するように対向局30において光伝送路70(対向ルート)へ送信する主信号光に重畳されたOSC光である。
【0026】
OSC受信器17は、例示的に、図示を省略したフォトダイオード(PD)等の受光素子を有し、当該受光素子で受光した光を受光パワーに応じた電気信号に変換する。当該電気信号は、図示を省略したAD変換器等でデジタル情報に変換される。これにより、OSC光の受信パワー情報がデジタル情報により得られる。
【0027】
送信局10から送信され光伝送路50を通じて対向局30で受信されたOSC光の受信パワー情報を送信局10へ伝送(フィードバック)することで、順ルートの光伝送路50の伝送路ロスを送信局10において求めることができる
【0028】
例えば、送信局10のVOAロス決定回路18は、OSC送信器16によるOSC光の送信(出力)パワー情報と、OSC受信器17で受信された、対向局30でのOSC光の受信パワー情報と、に基づいて、光伝送路50(順ルート)の伝送路ロスを求める。そして、VOAロス決定回路18は、求めた伝送路ロスに応じたVOA13の減衰量(VOAロス)を決定し、決定した減衰量となるようにVOA13を制御する。
【0029】
プリアンプ15は、主信号光を受信する光受信器(図示省略)の前段に配置され、光分波器14から入力される主信号光を増幅する。プリアンプ15は、対向ルートの光伝送路70を伝送されることにより減衰した光信号を光受信器の受信可能レベルに増幅する。
【0030】
対向局である光伝送装置30も、光伝送装置10と同様の構成を有する。例えば、対向ルートの光伝送路70上には、例示的に、光増幅器(ポストアンプ)31、光合波器(カプラ)32、及び、可変光アッテネータ(VOA)33が設けられる。
【0031】
ポストアンプ31は、主信号光を送信する光送信器(図示省略)の後段に配置され、光送信器が送信した主信号光を増幅して光合波器32へ出力する。
【0032】
光合波器32は、ポストアンプ31で増幅された主信号光に、OSC送信器36から入力されるOSC光を重畳してVOA33へ出力する。
【0033】
VOA33は、OSC光が重畳された主信号光の光伝送路70への送信光パワーを調整する。当該調整は、例示的に、VOAロス決定回路38によってVOA33の減衰量が制御されることで実施される。
【0034】
一方、光伝送装置30内の光伝送路50(順ルート)上には、例示的に、光分波器(カプラ)34及び光増幅器(プリアンプ)35が設けられる。
【0035】
光分波器34は、光伝送路50を通じて受信された光信号を主信号光とOSC光とに分離し、主信号光はプリアンプ35へ出力し、OSC光はOSC受信器37に出力する。当該OSC光は、対向局10において光伝送路50(順ルート)へ送信する主信号光に重畳されたOSC光である。
【0036】
プリアンプ35は、主信号光を受信する光受信器(図示省略)の前段に配置され、光分波器34から入力される主信号光を増幅する。プリアンプ35は、順ルートの光伝送路50を伝送されることにより減衰した光信号を光受信器の受信可能レベルに増幅する。
【0037】
OSC受信器37は、例示的に、図示を省略したフォトダイオード(PD)等の受光素子を有し、当該受光素子で受光した光を受光パワーに応じた電気信号に変換する。当該電気信号は、図示を省略したAD変換器等でデジタル情報に変換される。これにより、OSC光の受信パワー情報がデジタル情報により得られる。
【0038】
ここで、上述したように順ルートの光伝送路50の伝送路ロスを測定する場合、OSC受信器37でのOSC光の受信パワー情報が対向ルート側のOSC送信器36に与えられる。OSC送信器36は、与えられたOSC光受信パワー情報を光合波器32へ出力することで、光伝送路70へ送信される主信号光に、順ルートのOSC光受信パワー情報を重畳する。
【0039】
また、
図1には図示を省略しているが、対向ルートのVOA33の減衰量は、VOAロス決定回路38によって、順ルートのVOA13と同様にして制御される。例えば、VOAロス決定回路38は、自局30のOSC送信器36によるOSC光の送信(出力)パワー情報と、OSC受信器37で受信された、対向局10でのOSC光の受信パワー情報と、に基づいて、光伝送路70(対向ルート)の伝送路ロスを求める。そして、VOAロス決定回路38は、求めた伝送路ロスに応じたVOA33の減衰量(VOAロス)を決定し、決定した減衰量となるようにVOA33を制御する。
【0040】
以上のように、光伝送システム1では、順ルートと対向ルートの2つの経路を使うことで、システムの立上げ及び運用を実現する。
【0041】
次に、送信局10(又は30)において、ポストアンプ11(又は31)の後段にVOA13(又は33)が配置される理由について説明する。
【0042】
伝送路ロスは、システムゲイン(SG)とも呼ばれ、伝送距離に依存してバラつく。近年、伝送距離は長距離化する傾向にあり、例えば、SGとして0〜30dBという範囲が要求される。そのため、受信局30(又は10)のプリアンプ15(35)の入力レベルも30dBの範囲でバラつくことになる。
【0043】
このような広範囲のSGに対して、光伝送システム1においては、プリアンプ15(又は35)の出力は一定で、かつ、波長に対してフラットであることが要求される。しかし、これだけ広範囲の入力レベルに対して、波長に対するフラット性と良好な雑音指数(NF)とを実現するのは困難である。そこで、上述のごとく送信局10(又は30)のポストアンプ11(又は31)の後段にVOA13(又は33)を配置し、SGのバラつきをVOA13(又は33)で吸収する。
【0044】
ちなみに、既述の特許文献1には、受信局30(又は10)において、プリアンプ35(又は15)の前段にVOAを配置し、プリアンプ35(又は15)の入力レベルに応じて当該VOAの減衰量をフィードバック制御することに相当する技術が記載されている。
【0045】
しかし、SGが小さい時は、プリアンプ35(又は15)の前段にVOAを配置するよりも、
図1により上述したようにポストアンプ11(又は31)の後段にVOA13(又は33)を配置した方が、メリットがある。例えば、VOA13(又は33)の減衰量を大きくして光伝送路50(又は70)への入力光パワーを小さくすることで、光伝送路50(又は70)で生じる非線形効果を抑制できるというメリットがある。
【0046】
ここで、光伝送装置10(又は30)の立上げ時において、VOA13(又は33)の減衰量(VOAロス)を設定するために、光伝送路50(又は70)のロスを既述のようにOSC光を用いて測定する。なお、立上げ時において、VOA13及び33のVOAロスは初期値として例えば0dBに設定される(
図2の処理P11)
【0047】
そして、送信局10(又は30)は、OSC送信器16(又は36)のLDを発光させてOSC光を受信局30(又は10)へ送信する。受信局30(又は10)は、OSC受信器37(又は17)のPDでOSC光受信パワーを測定する(
図2の処理P12)。
【0048】
これにより得られたOSC光受信パワーの測定値を、対向ルートのポストアンプ31(又は11)の出力光(主信号光)に重畳されるOSC光にデジタル情報として載せる(
図2の処理P13)。当該OSC光は、対向ルートの光伝送路70(又は50)を通じて送信局10(又は30)へ送信(フィードバック)される。
【0049】
フィードバックされたOSC光受信パワーのデジタル情報は、送信局10(又は30)においてOSC受信器17(又は37)のPDで受信され(
図2の処理P14)、デジタル情報としてVOAロス決定回路18(又は38)に与えられる(
図2の処理P15)。
【0050】
VOAロス決定回路18(又は38)は、自局10(又は30)のOSC光送信パワー情報と、対向局30(又は10)からフィードバックされたOSC光受信パワー情報と、に基づいて、光伝送路50(又は70)のSGを求める(
図2の処理P16)。そして、VOAロス決定回路18は、求めたSGを基にSGのバラつきを吸収するような減衰量となるようにVOA13(又は33)を制御する。例えば、VOAロスとSGとの和が目標値(例えば20dB等)になるように設定する(
図2の処理P17)。
【0051】
以上のようにして、OSC光を用いて順ルート及び対向ルートの伝送路ロス(SG)を測定し、その測定値に基づいて順ルート及び対向ルートのVOA13及び33の減衰量を制御する。これにより、システム立上げ時の順ルート及び対向ルートへの送信光パワーをSGに応じた適切な値に設定することができる。
【0052】
なお、仮にSGが20〜30dBの範囲であった場合は、VOAロスを0dBに設定しても、VOAロスとSGとの和が、目標値の20dBよりも大きい状態になることがある。しかし、プリアンプ15(又は35)は、10dB程度の入力範囲に対しては、良好な出力フラット性とNFとを実現できるので問題にならない。
【0053】
ところで、OSC送信器16(又は36)の送信パワーは、ポストアンプ11(又は31)の出力パワーと同程度で、例えば0dBmである。また、OSC受信器17(又は37)の受信レンジは、例えば−10〜−30dBmである。当該受信レンジの上限値は、一般にオーバーロード(overload)と称される。上限値を超えると、OSC受信器17(又は37)のPDに付属する電気回路の増幅器が飽和してしまうため、デジタル信号波形に歪みが生じ、ビットエラーレート(BER)が劣化する。一方、受信レンジの下限値は、最小受信感度と称される。下限値を下回ると、PDの暗電流、もしくは、PDに付属する電気回路の雑音の影響でBERが劣化する。
【0054】
図3に、光伝送システム1におけるOSC光パワーのレベルダイヤの一例を示す。VOAロスの初期値を0dBに設定してシステムを立ち上げた場合、仮に、SGの最小値(SGmin)が0dBだとするとOSC光受信パワーが受信レンジの上限値を超えてしまう(符号100参照)。
【0055】
これは、順ルートのOSC受信器37(又は17)でのOSC光受信パワーのデジタル情報を、対向ルートのOSC送信器36(又は16)から送信しても、対向ルートのOSC受信器17(又は37)に届かず、システムを立上げることができないことを意味する。
【0056】
そこで、仮に、VOAロスの初期値を10dBに設定すれば、SGが0dBでも、OSC光受信パワーを受信レンジの上限値以下にすることができるので(点線矢印200参照)、システムの立上げを行なうことが可能である。しかし、仮に、SGが30dBであったとすると、対向ルートのOSC受信器17(又は37)の受信光パワーが受信レンジの下限値を下回るため(点線矢印300参照)、デジタル情報を正しく受信できず、システムを立上げることができない。
【0057】
OSC光受信パワーが所定の受信レンジに収まるように、送信局のVOA13(又は33)の減衰量を盲目的に変更しても、OSC光受信パワーが受信レンジに収まったことを受信局から送信局に教えるために、対向ルートのOSC光を使用することになる。しかし、この時、対向ルートについても、OSC受信器17(又は37)の受信光パワーが受信レンジに収まってない状態である可能性がある。
【0058】
つまり、受信レンジ内であるか否かを示す情報がリアルタイムにVOA13(又は33)に届かず、OSC光が疎通するVOAロスに設定されるまでの時間が見積もれない。あるいは、いつまで経ってもOSC光の疎通が確立できずに、立上げが完了しない可能性がある。
【0059】
なお、特許文献1に記載されるように、VOAを受信局のプリアンプの前段に配置した場合は、以上のようなシステム立上げ時の課題は生じない。なぜなら、対向ルートのOSC光を用いて対向局(送信局)と通信しなくても、受信局においてOSC受信器の受信光パワーが受信レンジに入るようにVOAロスを設定することが可能であるからである。
【0060】
以下に説明する実施形態では、
図1に例示するような双方向の光通信が可能な光伝送システム1において、伝送路ロス(SG)に依存しないで、どのような条件下でも、システム1の立上げを可能にする技術について提案する。
【0061】
(一実施形態)
図4は、一実施形態に係る光伝送システムを示すブロック図である。
図4に示す光伝送システム1は、
図1に比して、例示的に、順ルートの送信局である光伝送装置10において、パルス発生回路19、レンジ範囲値選択回路20、VOAロス算出回路21、VOAロス決定回路22、及び、スイッチ23を備える点が異なる。また、
図4に例示する順ルートの受信局である光伝送装置30は、
図1に比して、パルス発生回路39及びVOAロス決定回路42を備える点が異なる。
【0062】
なお、対向ルートに着目すれば、光伝送装置30は送信局であり、光伝送装置30は受信局である。また、
図4には、図示を省略しているが、対向ルートの送信局である光伝送装置30にも、対向ルートに関して、レンジ範囲値選択回路20、VOAロス算出回路21、及び、VOAロス決定回路22にそれぞれ相当する回路が備えられている。
【0063】
順ルートの送信局10(又は対向ルートの送信局30)において、パルス発生回路19(又は39)は、装置(システム)立上げ開始時に、VOA13(又は33)の減衰量を2つ以上の異なる値に変更するVOA制御信号(パルス)を発生する。当該VOA制御信号は、例示的に、1秒ごとに0dB→10dB→0dBとVOAロスを変更する(切り替える)周期的なパルスである(
図5の処理P21)。
【0064】
スイッチ23(又は43)は、パルス発生回路19(又は39)の出力とVOAロス決定回路22(又は42)の出力とのいずれかを選択してVOA13(又は33)に出力する。装置(システム)立上げ開始時には、当該スイッチ23(又は43)は、接点a側へ切り替えられ、パルス発生回路19(又は39)の出力がVOA13(又は33)に与えられる。したがって、VOA13(又は33)は、上述したVOA制御パルスに従ってVOAロスを変更する。
【0065】
なお、後述するようにVOAロス決定回路22(又は42)によりVOAロスが決定されると、スイッチ23(又は43)は、接点b側へ切り替えられ、VOAロス決定回路22(又は42)の出力がVOA13(又は33)に与えられる。別言すると、スイッチ23(又は43)は、VOAロス決定回路22(又は42)によるVOAロスの決定前は接点a側に切り替えられ、決定後は接点b側へ切り替えられる。したがって、VOAロス決定前はVOAロスが例えば周期的に異なる値に切り替えられ、VOAロス決定後は決定したVOAロスにVOA13(又は33)が固定的に設定される。
【0066】
VOAロス決定前では、VOAロスが異なる値に切り替えられるため、光伝送路50(又は70)への入力光パワーも当該切り替えに応じて変動する。したがって、光伝送路50(又は70)を伝送されるOSC光のパワーも当該切り替えに応じて変動する。別言すると、パルス発生回路19(又は39)及びVOA13(又は33)は、対向局30(又は10)へ送信する光パワーの値を変動させる送信光パワー調整部の一例として機能する。パルス発生回路19(又は39)及びVOA13(又は33)を用いることで、対向局30(又は10)へ送信する光パワーの値を変動させる送信光パワー調整部を容易に実現できる。
【0067】
順ルートの受信局30(又は対向ルートの受信局10)では、このようにパワーの変動するOSC光がOSC受信器37(又は17)で受信される。OSC受信器37(又は17)は、受信光測定部の一例であり、変動する多値(本例では0dBと10dBの2値)のOSC光受信パワー情報をそれぞれ測定する(
図5の処理P22)。各測定値は、デジタル情報に変換されて対向ルート(又は順ルート)のOSC送信器36(又は16)に与えられる。
【0068】
OSC送信器36(又は16)は、与えられた2値のデジタル情報を載せたOSC光を生成して光合波器32(又は12)に出力する(
図5の処理P23)。光合波器32(又は12)は、ポストアンプ31(又は11)で増幅された主信号光にOSC光を重畳し、VOA33(又は13)を通じて光伝送路70(又は50)へ出力する。別言すると、OSC送信器36(又は16)は、受信光測定部の一例であるOSC受信器37(又は17)での測定結果を対向局10(又は30)へ通知する通知部の一例として機能する。
【0069】
光伝送路70(又は50)を伝送されたOSC光は、対向局10(又は30)の光分波器14(又は34)で主信号光から分離されて対向ルート(又は順ルート)のOSC受信器17(又は37)に入力される(
図5の処理P24)。
【0070】
OSC受信器17(又は37)では、OSC光受信パワーが変動する(例えば1秒ごとに10dB変動する)が、いずれかの時間帯では、OSC受信器17(又は37)の受信レンジの上限値と下限値との間に入る。したがって、OSC受信器17(又は37)は、対向局30(又は10)からOSC光により送信されてくる2値のデジタル情報をいずれかの時間帯で必ず受信、取得することができる。なお、「受信レンジ」は、例えばOSC受信器17に備えられたPD等の受光素子のダイナミックレンジに応じて定まる動作可能範囲の一例である
【0071】
OSC受信器17(又は37)は、このようにして取得した2値のデジタル情報、すなわち、対向局30(又は10)でのOSC光受信パワー情報をレンジ範囲値選択回路20に与える(
図5の処理P25)。
【0072】
レンジ範囲値選択回路20は、与えられた2値のデジタル情報とOSC受信器17(又は37)の受信レンジ情報(例えば、上限値及び下限値)とに基づいて、2値のデジタル情報の一方を選択してVOAロス算出回路21に与える。受信レンジ情報は、例示的に、図示を省略したメモリ等の記憶部に予め記憶、設定されている。ただし、受信レンジ情報は、例えば、対向局30(又は10)のOSC送信器36(又は16)から対向ルートを通じて送信されるOSC光によって通知されるようにしてもよい。
【0073】
非限定的な一例として、レンジ範囲値選択回路20は、2値のデジタル情報のうち高い方の値がOSC受信器17(又は37)の受信レンジの上限値を超えている場合、正しいOSC受信光パワーが測定できていない可能性があると判断して当該値は使用しない。
【0074】
一方、2値のデジタル情報のうち、低い方の値がOSC受信器17(又は37)の受信レンジの下限値を下回っている場合も、レンジ範囲値選択回路20は、正しいOSC光受信パワーが測定できていない可能性があると判断して使用しない。
【0075】
したがって、レンジ範囲値選択回路20は、2値のデジタル情報のうち、OSC受信器17(又は37)の受信レンジに入っている情報を有効な情報として選択(採用)してVOAロス算出回路21に与える(
図5の処理P26)。なお、2値のデジタル情報のうち、OSC受信器17(又は37)の受信レンジから外れている情報については無効な情報として認識され、無視される。
【0076】
VOAロス算出回路21は、レンジ範囲値選択回路20から与えられたデジタル情報と、OSC送信器16(又は36)によるOSC光の送信パワー情報(設定値)と、に基づいて、VOAロス(SG)を算出する(
図5の処理P27)。
【0077】
例えば、レンジ範囲値選択回路20で選択されたデジタル情報が2値のうちの低い方のパワー値であった場合、VOAロス算出回路21は、以下の計算式(1)によりSGを算出する。
【0078】
SG=(OSC光送信パワー設定値)−(VOAロス2値の大きい方の値)−(OSC光受信パワー2値のうち低い方の値)…(1)
【0079】
これに対し、レンジ範囲値選択回路20で選択されたデジタル情報が2値のうちの高い方のパワー値であった場合は、VOAロス算出回路21は、以下の計算式(2)によりSGを算出する。
【0080】
SG=(OSC光送信パワー設定値)−(VOAロス2値の小さい方の値)−(OSC光受信パワー2値のうち高い方の値)…(2)
【0081】
なお、上記の計算式(1)又は(2)における「VOAロス2値」は、例示的に、パルス発生回路19(又は39)から取得できる。上記の計算式(1)又は(2)により算出されたSGは、VOAロス決定回路22(又は42)に与えられる。
【0082】
VOAロス決定回路22(又は42)は、与えられたSGを基に、SG+VOAロス=目標値を満たすVOAロスを決定する(
図5の処理P28)。VOAロスが決定すると、スイッチ23(又は43)が接点b側へ切り替えられる。これにより、VOAロスの変動が停止されて、決定したVOAロスとなるようにVOA13(又は33)が制御される。
【0083】
別言すると、レンジ範囲値選択回路20、VOAロス算出回路21、VOAロス決定回路22(又は42)、及び、スイッチ23(又は43)は、制御部の一例として機能する。当該制御部は、対向局30(又は10)からOSC送信器36(又は16)により通知された対向局30(又は10)でのOSC光の受信測定結果に基づいて対向局30(又は10)へ送信する光パワーを決定する。そして、制御部は、決定した光パワーとなるように、VOA13(又は33)のVOAロスを設定する。これにより、光伝送路50(又は70)へ送信される光パワーの変動が停止される。
【0084】
以上のようにして、装置(システム)の立上げが成功する。すなわち、システム立上げ時の順ルート及び対向ルートへの送信光パワーをSG及びOSC受信器37(又は17)の受信レンジに応じた適切な値に設定することができる。
【0085】
なお、
図4に例示する順ルートの送信局10において、符号25は、上述したパルス発生回路19、レンジ範囲値選択回路20、VOAロス算出回路21、及び、VOAロス決定回路22の一部又は全部を含む回路ブロックを示す。当該回路ブロック25は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)やLSI(Large Scale Integration)等の集積回路を用いて実現してよい。同様に、
図4に例示する順ルートの受信局30において、パルス発生回路39及びVOAロス決定回路42の一方又は双方を含む回路ブロック45も、FPGAやLSI等の集積回路を用いて実現してよい。
【0086】
次に、
図4に例示したシステム構成において、変動するVOAロスの設定値の決め方について、
図6を用いて説明する。上述した例のように、周期的(例えば1秒ごと)にVOAロスを2値(例えば、0dB及び10dB)の間で変化させた時にいずれかの時間帯でOSC光に載せたデジタル情報がOSC受信器17(又は37)で正しく受信できるように設定する。
【0087】
非限定的な一例として、ポストアンプ11(又は31)で増幅された主信号光に重畳されるOSC光の送信パワーは0dBM、SGのサポート範囲は0〜30dBとする。また、OSC受信器17(又は37)の受信レンジの上限値は−10dBm、同下限値は−30dBmとする。
【0088】
図6から分かるように、VOAロスが0dB及び10dBの2値のうち、ロスが小さい方の値については、SGが最大値(SGmax)である30dBでも、OSC光受信パワーが受信レンジの下限値以上のパワーになるように設定する。したがって、
図6の例では、VOAロス0dB以下、つまり0dBとなる。
【0089】
一方、2値のうちロスが大きい方の値については、SGが最小値である0dBでも、OSC光受信パワーが受信レンジの上限値以下のパワーになるように設定する。したがって、
図6の例では、VOAロスは10dB以上になる。
【0090】
ただし、10dB以上ならどのような値でもよい訳ではない。仮に、20dB以上に設定してしまうと、
図6から分かるように、SGが10dB未満の領域では、2値のいずれにおいても、OSC受信器17(又は37)の受信レンジに入らないSGが発生し得る。そのため、2値のうちロスが大きい方のVOAロスは10dB以上で20dB未満の範囲で設定するとよい。
【0091】
なお、上述した実施形態では、VOAロスを1秒間隔で変更しているが、これに限られない。例えば、VOAロスを変更する時間間隔は、OSC光による送信ビットレートと、OSC光に載せる2値の受信パワー情報の情報量と、に基づき、当該受信パワー情報が載せられる時間間隔以上であれば特に問わない。
【0092】
非限定的な一例を挙げると、OSC光を用いて転送するデジタル情報で99.9dBm〜−99.9dBmの範囲の3桁の情報を表示する場合、11ビット以上あれば足りる。したがって、
図7に例示するように、VOAロスが10dBの時とVOAロスが0dBの時のそれぞれのOSC光受信パワー情報を載せるには、11ビット×2で22ビット以上あれば足りる。よって、仮に、OSC送信器16(又は36)の送信ビットレートが100Mbpsである場合、VOAロスを変更する時間間隔は、22ビット/100Mbps=0.22μs以上となる。ただし、当該時間間隔を数分等までに延ばしてしまうと、立上げ時間がその分かかるため、なるべく短い時間が好ましい。
【0093】
なお、上述した実施形態では、変更するVOAロスを2値とした場合について説明したが、3値以上にしてもよい。この場合、サポートされるSGのどの値であっても、いずれか1つ以上のVOAロスの設定値において、OSC光受信パワーがOSC受信器17(又は37)の受信レンジに入ることが保証されるように、VOAロスの各値を決めればよい。具体的な決め方は、上述した実施形態と同様である。また、VOAロスの多値数を増やすことでVOAロスをアナログ的に変化させることも可能である。
【0094】
また、上述した実施形態では、光伝送路50(又は70)へ送信されるOSC光のパワーの値を変動させる手段の一例として、VOA13(又は33)を適用したが、光減衰量を調整可能なデバイスであれば同様に適用可能である。例えば、波長選択スイッチ(WSS)を適用してもよい。
【0095】
さらに、上述した実施形態では、光伝送路50(又は70)へ送信されるOSC光のパワーの値を周期的に変動させる例について説明したが、必ずしも周期的な変動でなくてもよい。ただし、周期的な変動によれば、変動制御を簡易化することができる。