(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
枚葉印刷機において被印刷物を搬送方向側からグリッパで引っ張りながら搬送させる際のばたつきを押さえるためにエア吹付手段からエアが吹き付けられた当該被印刷物をカメラで撮影した画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段が取得した画像に写る前記被印刷物の幅方向のエッジ上の2点以上の点に基づいて算出される境界線と、当該エッジ上の点であって当該境界線から最も離れた点との距離を、前記被印刷物のばたつき量として算出し、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えていると判定された場合に、前記エア吹付手段から前記被印刷物までの距離、前記エア吹付手段からのエアの流量、又は、前記エア吹付手段が前記被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の少なくとも何れか1つの条件を変更する条件変更手段と、
を備え、
前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えないと判定されるまで、前記画像取得手段、前記判定手段及び前記条件変更手段は、それぞれ、前記画像の取得、前記ばたつき量の判定、前記条件の変更を繰り返すことを特徴とする情報処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の非接触型のセンサ(レーザ距離計や超音波距離計)では、投/受光部や送/受信部が汚れて誤検知したり、吹き付けられるエアにより飛散する塵芥(紙粉等)を枚葉紙の浮き上がりとして誤検知したりしてしまう可能性がある。また、このような検出手段は高価であり製品コストが増大するという問題もある。一方、特許文献2に記載の接触型のセンサでは、被印刷物に擦れ不良(色落ち、汚れの付着等)が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みて為されたもので、従来のレーザ距離計や超音波距離計、接触型のセンサを用いずに、枚葉印刷機における被印刷物を搬送させる際のばたつきを押さえるためのエアの吹き付け条件を適切に設定することのできる情報処理装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、枚葉印刷機において被印刷物を搬送方向側からグリッパで引っ張りながら搬送させる際のばたつきを押さえるためにエア吹付手段からエアが吹き付けられた当該被印刷物をカメラで撮影した画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段が取得した画像
に写る前記被印刷物の幅方向のエッジ上の2点以上の点に基づいて算出される境界線と、当該エッジ上の点であって当該境界線から最も離れた点との距離を、前記被印刷物のばたつき量として算出し、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えていると判定された場合に、前記エア吹付手段から前記被印刷物までの距離、前記エア吹付手段からのエアの流量、又は、前記エア吹付手段が前記被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の少なくとも何れか1つの条件を変更する条件変更手段と、を備え、前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えないと判定されるまで、前記画像取得手段、前記判定手段及び前記条件変更手段は、それぞれ、前記画像の取得、前記ばたつき量の判定、前記条件の変更を繰り返すことを特徴とする。
【0009】
当該発明によれば、ばたつき量が閾値を超えなくなるまで、エア吹付手段から被印刷物までの距離、エア吹付手段からのエアの流量、又は、エア吹付手段が被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の条件が変更されることから、被印刷物の搬送時におけるばたつきを押さえるためのエアの吹き付け条件を適切に設定することができる。また、従来のレーザ距離計や超音波距離計、接触型のセンサを用いずに、カメラで撮影された画像に基づいて被印刷物のばたつき量を
算出し、ば
たつき量が閾値を超えているか否かを判定することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置であって、前記条件変更手段は、前記エアを吹き付ける角度から条件を変更していき、前記エアを吹き付ける角度を変更しても前記ばたつき量が閾値を超えてしまう場合に、前記エアの流量を増やした上で、再度、前記エアを吹き付ける角度を変更する処理を、前記ばたつき量が閾値を超えなくなるまで繰り返すことを特徴とする。
【0011】
当該発明によれば、適切なエアの吹き付け条件を見付け出すために、エアの流量が少ない条件から順にばたつき量が閾値を超えなくなるまで変更していくことから、より少ないエアの流量(より小さなエネルギー)で被印刷物のばたつきを押さえることができ、エネルギーを節約することができる。
【0014】
また、請求項
3に記載の発明は、枚葉印刷機において被印刷物を搬送方向側からグリッパで引っ張りながら搬送させる際のばたつきを押さえるためにエア吹付手段からエアが吹き付けられた当該被印刷物をカメラで撮影した画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程が取得した画像
に写る前記被印刷物の幅方向のエッジ上の2点以上の点に基づいて算出される境界線と、当該エッジ上の点であって当該境界線から最も離れた点との距離を、前記被印刷物のばたつき量として算出し、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かを判定する判定工程と、前記判定工程によりばたつき量が閾値を超えていると判定された場合に、前記エア吹付手段から前記被印刷物までの距離、前記エア吹付手段からのエアの流量、又は、前記エア吹付手段が前記被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の少なくとも何れか1つの条件を変更する条件変更工程と、を備え、前記判定工程によりばたつき量が閾値を超えないと判定されるまで、前記画像取得工程、前記判定工程及び前記条件変更工程では、それぞれ、前記画像の取得、前記ばたつき量の判定、前記条件の変更を繰り返すことを特徴とする。
【0015】
また、請求項
4に記載の発明は、コンピュータを、枚葉印刷機において被印刷物を搬送方向側からグリッパで引っ張りながら搬送させる際のばたつきを押さえるためにエア吹付手段からエアが吹き付けられた当該被印刷物をカメラで撮影した画像を取得する画像取得手段、前記画像取得手段が取得した画像
に写る前記被印刷物の幅方向のエッジ上の2点以上の点に基づいて算出される境界線と、当該エッジ上の点であって当該境界線から最も離れた点との距離を、前記被印刷物のばたつき量として算出し、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かを判定する判定手段、前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えていると判定された場合に、前記エア吹付手段から前記被印刷物までの距離、前記エア吹付手段からのエアの流量、又は、前記エア吹付手段が前記被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の少なくとも何れか1つの条件を変更する条件変更手段、として機能させる情報処理プログラムであって、前記判定手段によりばたつき量が閾値を超えないと判定されるまで、前記画像取得手段、前記判定手段及び前記条件変更手段は、それぞれ、前記画像の取得、前記ばたつき量の判定、前記条件の変更を繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ばたつき量が閾値を超えなくなるまで、エア吹付手段から被印刷物までの距離、エア吹付手段からのエアの流量、又は、エア吹付手段が被印刷物に対してエアを吹き付ける角度の条件が変更されることから、被印刷物の搬送時におけるばたつきを押さえるためのエアの吹き付け条件を適切に設定することができる。また、従来のレーザ距離計や超音波距離計、接触型のセンサを用いずに、カメラで撮影された画像に基づいて被印刷物のばたつき量を算出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、オフセット枚葉印刷機(以下、「印刷機」と記載する。)において本発明を適用した場合の実施形態である。また、本実施形態では、被印刷物が枚葉紙である場合について説明する。
【0019】
[1.印刷機及び検査システムの概要]
図1に示すように、印刷機には、版胴501、ブランケット胴502及び圧胴503を含んで構成される印刷部がインキの色毎に設けられており(
図1では、印刷部を1色分示しているが、インキの色が4色であれば4つの印刷部が設けられる)、ブランケット胴502と圧胴503の接点において、枚葉紙にインキがのせられる。また、印刷機には、印刷部間などの印刷部でない部分において枚葉紙を搬送するための紙渡し胴504、505等が設けられている。紙渡し胴504、圧胴503及び紙渡し胴505には、枚葉紙の搬送方向下流側端(咥え側)を咥えて引っ張りながら搬送するためのグリッパ(図示しない)が設けられている。枚葉紙は、紙渡し胴504、圧胴503、紙渡し胴505の順に、グリッパからグリッパへと咥え替えられながら搬送経路上を搬送される。
【0020】
検査システムは、検査装置1、カメラ511、照明512及びエアノズル513を含んで構成されている。カメラ511は、ラインセンサカメラであり、圧胴503上を搬送される枚葉紙を撮影し、画像を検査装置1に送信する。エアノズル513は、後述するエア出力装置から出力されたエアを枚葉紙に吹き付ける。具体的には、エアノズル513は、圧胴503の幅方向に長い構造となっており、圧胴503上を搬送される枚葉紙が圧胴503から浮き上がらないように枚葉紙の幅方向全体にエアを吹き付ける。また、検査装置1からの指示に基づいて、後述するエアノズル姿勢制御装置がエアノズル513の位置や姿勢を変化させる。カメラ511、照明512及びエアノズル513は、全ての色の印刷が済んだ後の枚葉紙について良品検査を行うために、最後の印刷部の圧胴又は最後の印刷部より下流にある紙渡し胴に対して設置される。
【0021】
図2に示すように、カメラ511は、圧胴503の断面を円551としてみた場合に、カメラ511の光軸553が円551の接線552に対して垂直となる向きに設置される。光軸553と接線552の交点を点556とすると、エアノズル513は、枚葉紙にエアを吹き付ける向き554が点556に向くように設置される。このとき、エアを吹き付ける向き554と接線552がなす角度555を、「エア吹き付け角度」という。
【0022】
図1に戻り、枚葉紙は搬送される際、搬送方向下流側をグリッパに咥えられているとともに、搬送方向上流側をブランケット胴502及び圧胴503に挟まれている状態では、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)が無く、カメラ511が良品検査に適した画像を撮影することができる。一方、枚葉紙の搬送方向上流側がブランケット胴502及び圧胴503に挟まれなくなった際に、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)が起きやすく、カメラ511が良品検査に適した画像を撮影することができなくなる。そこで、エアノズル513は、搬送方向上流側がブランケット胴502及び圧胴503に挟まれていない状態であっても、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)が起きないようにエアを枚葉紙に吹き付ける。このとき、枚葉紙がばたつかないようにエアを吹き付けるための条件として3つ条件がある。具体的には、エアノズル513から枚葉紙までの距離(以下「ノズル距離」という)、エアノズル513からのエアの流量(以下、「エア流量」という)、及び、エアノズル513が枚葉紙に対してエアを吹き付ける角度(上述した「エア吹き付け角度」に該当する)であり、検査装置1はそれぞれの条件を変更しながら、最適な条件の組み合わせを決定する。なお、以下、ノズル距離、エア流量及びエア吹き付け角度をまとめて「エア条件」という場合がある。
【0023】
検査装置1は、カメラ511が撮影した枚葉紙の画像を良品の画像と比較することにより良品検査を行う。また、検査装置1は、カメラ511が良品検査に適した画像を撮影することができるように、エア条件を決定する。エア条件の決定は、良品検査を開始する前に行われる。
【0024】
検査装置1は、ノズル距離、エア流量又はエア吹き付け角度の少なくとも何れか1つの条件を変更していき、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)が無くなるまで当該変更を繰り返すことによりエア条件の決定を行う。本実施形態では、検査装置1がノズル距離、エア流量及びエア吹き付け角度を、それぞれ10段階変更することができるようになっている。
【0025】
ノズル距離は、初期段階(第1段階)で最も長い距離となっており、段階が上がるにしたがって徐々に距離が短くなる。つまり、ノズル距離の段階を上げていくことで、エアノズル513と点556の距離(
図2参照)は短くなっていく。但し、エアノズル513と点556の距離が短くなりすぎると、エアノズル513がカメラ511の撮影する画像に写り込んでしまうため、エアノズル513がカメラ511の撮影する画像に写り込んでしまわない距離を限界に各段階の距離が設定される。
【0026】
エア吹き付け角度は、初期段階(第1段階)で「5°」となっており、段階が1段階上がる毎に「5°」大きくなる。また、
図2に示すようにエア吹き付け角度(角度555)を大きくすぎると、エアノズル513がカメラ511の撮影する画像に写り込んでしまうため、エアノズル513がカメラ511の撮影する画像に写り込んでしまわない角度を限界(本実施形態では「50°」)に各段階の角度が設定される。
【0027】
エア流量は、エアノズル513にエアを送り込むエア出力装置の能力に応じて10段階変更することができるようになっている。本実施形態では、段階が上がるにしたがってエア流量が多くなるように設定される。つまり、10段階目が設定されると最大出力でエアを吹き付けることとなる。
【0028】
なお、印刷機によってカメラ511、照明512、エアノズル513の設置環境が異なるため、ノズル距離及びエア吹き付け角度は、設置環境で許容される範囲で変更できるように設定される。
【0029】
次に、
図3及び
図4を用いて、エア条件の決定方法について説明する。上述したように、エア条件の決定は、ノズル距離、エア流量又はエア吹き付け角度の少なくとも何れか1つの条件を変更していき、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)が無くなるまで繰り返すことにより行われる。
図3は、距離を第1段階に設定し、エア流量及びエア吹き付け角度を第1段階から1段階ずつ変更していき、圧胴503からの浮き上がり(ばたつき)があったケースに「×」を記し、浮き上がり(ばたつき)が無かったケースに「○」を記したテーブルの一例である。
図3に示すように、エア流量、エア吹き付け角度ともに、段階が上がるほど、浮き上がり(ばたつき)が無くなっている。また、
図3のテーブルにおいて「○」が記された部分であれば、何れのエア条件であっても浮き上がり(ばたつき)が無く、良品検査に適した画像を撮影することができる。そこで、検査装置1は、浮き上がり(ばたつき)が起きないエア条件(すなわち「○」となるエア条件)を見付け出すための処理を行う。このとき、検査装置1は、
図3に示したテーブルのように全てのエア条件について「○」、「×」を判定することなく、最初に「○」となるエア条件を見付け出した段階で処理を終える。
【0030】
検査装置1は、枚葉紙に浮き上がり(ばたつき)が起きているか否かを、カメラ511が撮影した画像に基づいてばたつき量を算出し、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かによって判定する。
図4は、カメラ511が枚葉紙600を撮影した画像Pの一例である。
図4(A)は、枚葉紙600の搬送方向下流側の角(幅方向の端部)がグリッパGで隠れておらず、
図4(B)は、枚葉紙600の搬送方向下流側の角部分がグリッパGで隠れている場合の例を示している。
図4(A)、(B)に示すように、枚葉紙600の搬送時に浮き上がり(ばたつき)が起きている場合には、搬送方向上流側の角が横に広がったように撮影されるため、検査装置1は、その広がりの度合いに応じてばたつき量を算出する。
【0031】
検査装置1は、カメラ511が撮影した画像Pを取得すると、枚葉紙600における幅方向の両エッジに沿う線(「境界線」という)L1、L2を算出し、枚葉紙600の搬送方向上流側の角に当たる点611、661と境界線L1、L2の距離621、671を算出し、距離が長い方の値を選択した上で閾値と比較し、距離が閾値を超えていれば浮き上がり(ばたつき)が起きていると判定する。閾値は、良品検査の精度が充分に保たれるように設定される。ここで、検査装置1は、境界線L1、L2と点611、661の距離が最短距離となるように、L1上の点603(点611からL1に垂線を引いた際に交差する点)と点611の距離と、L2上の点653(点661からL2に垂線を引いた際に交差する点)と点661の距離を算出する。なお、良品検査に適した画像とは、枚葉紙600の幅方向のエッジを構成する全ての点(画素)が境界線L1、L2と一致する画像であるが、本実施形態では、枚葉紙600の幅方向のエッジを構成する点のうち、境界線から最も離れている点(多くのケースで枚葉紙600の搬送方向下流側の角であるが、枚葉紙600の幅方向のエッジ上のその他の点であるケースもある)と境界線との距離が閾値以内であれば、良品検査に適した画像と判定する。
【0032】
境界線L1の算出方法(境界線L2についても同様であるので、ここでは、境界線L1の算出方法を説明する)は、様々な手法を採用することができる。例えば、
図4(A)のように、枚葉紙600の搬送方向下流側の角がグリッパGで隠れていない場合には、搬送方向下流側の角に当たる点601と、点601に沿って検出される枚葉紙600のエッジ上の任意の点602の2点間を直線で結び、搬送方向上流側に延ばすことで境界線L1を算出することができる。このとき、任意の点602は、点601から所定の距離内にある点をサンプリングするのが好ましい。なぜなら、境界線L1は枚葉紙600における幅方向のエッジに沿う線であることが好ましく、点601から所定の距離を超えた点をサンプリングしてしまうと、点604から点611のエッジ上の点のようにばたつきが発生した箇所の点をサンプリングしてしまうこととなり、本来あるべきエッジに沿う線を算出できないおそれがあるからである。つまり、ばたつきが発生していない箇所の点をサンプリングすることが好ましいが、搬送方向上流側がブランケット胴502及び圧胴503に挟まれている状態ではばたつきがおこりにくいことから、この状態で撮影された画像(画素)に対応するエッジ上の点をサンプリングすればよい。すなわち、上記所定の距離は、搬送方向上流側がブランケット胴502及び圧胴503に挟まれている状態が維持される距離を枚葉紙600の搬送方向の長さに基づいて算出して設定することが好ましい。
【0033】
一方、
図4(B)のように、枚葉紙600の搬送方向下流側の角がグリッパGで隠れている場合には、検査装置1は、幅方向のエッジを検出し、なるべく搬送方向下流側のエッジ上の任意の複数の点(例えば、点601Bや点602)をサンプリングし、近似直線を境界線L1として算出する。
図4(A)のケースと同様に、任意の複数の点をサンプリングする際には、搬送方向下流側のエッジから所定の距離内にある点をサンプリングするのが好ましい。つまり、搬送方向上流側がブランケット胴502及び圧胴503に挟まれている状態で撮影された画素に対応する点をサンプリングすることが好ましい。
【0034】
[2.検査装置1の構成]
次に、
図5を用いて、検査装置1の構成について説明する。
【0035】
図5に示すように、検査装置1は、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、表示部14と、操作部15とを備えている。
【0036】
記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ等により構成されており、オペレーティングシステムや、サーバ用のプログラム等の各種プログラムを記憶する。特に本実施形態の記憶部12は、後述する検査処理に関するプログラムを記憶する。なお、各種プログラムは、例えば、他のサーバ装置等からネットワークNWを介して取得されるようにしても良いし、記録媒体に記録されてドライブ装置を介して読み込まれるようにしても良い。
【0037】
通信部13は、カメラ511、エア出力装置701及びエアノズル姿勢制御装置702等との通信を制御するようになっている。エアノズル姿勢制御装置702は、アクチュエータを備え、検査装置1からの指示に基づいて、エアノズル513の位置(例えば、ノズル距離)や姿勢(例えば、エア吹き出し角度)を変化させる。表示部14は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ等により構成されており、文字や画像等の情報を表示するようになっている。操作部15は、例えば、キーボード、マウス等により構成されており、オペレータからの操作指示を受け付け、その指示内容を指示信号として制御部11に出力するようになっている。
【0038】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。そして、CPUが、ROMや記憶部12に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより各種機能を実現する。また、制御部11は、エアノズル513の位置や姿勢の変更を決定し、エアノズル姿勢制御装置に対してエアノズル513の位置や姿勢を変更させるための指示情報を出力する。更に、制御部11は、エア流量の変更を決定し、エア出力装置701に対してエアノズル513から吹き出すエア流量を変更させるための指示情報を出力する。
【0039】
[3.検査装置1の動作]
次に、
図6を用いて、検査装置1によるエア条件決定処理について説明する。なお、カメラ511は、枚葉紙600を撮影する度に画像を検査装置1に送信する。
【0040】
まず、検査装置1の制御部11は、エアノズル513の初期設定処理を行う(ステップS1)。具体的には、制御部11は、ノズル距離、エア流量及びエア吹き付け角度を全て初期段階(第1段階)に変更することを決定し、エア出力装置701及びエアノズル姿勢制御装置702に指示情報を出力する。これを受けて、エア出力装置701は、エアを第1段階の出力でエアノズル513から出力させ、エアノズル姿勢制御装置702は、ノズル距離を第1段階となるようにエアノズル513を移動させるとともに、エア吹き付け角度が第1段階となるようにエアノズル513の向き(姿勢)を変える。
【0041】
次に、制御部11は、カメラ511(ラインセンサカメラ)から取得した画像を編成して1枚の画像Pを取得する(ステップS2)。
【0042】
次に、制御部11は、ステップS2の処理で取得した画像からばたつき量を算出する(ステップS3)。具体的には、
図4を用いて上述したように、画像Pに基づいて境界線L1、L2を算出し、枚葉紙600の幅方向のエッジを構成する点のうち境界線L1、L2から最も離れている点(例えば、枚葉紙600における搬送方向上流側の角に当たる点611、661)と境界線L1、L2の距離621、671をばたつき量として算出する。
【0043】
次に、制御部11は、ステップS3の処理で算出したばたつき量が閾値を超えているか否かを判定する(ステップS4)。具体的には、制御部11は、ステップS3の処理で算出した距離621と、距離671のうち長い方の距離を選択して、閾値を超えているか否かを判定する。つまり、制御部11は、ばたつきのより大きい方のばたつき量が閾値を超えているか判定する。
【0044】
制御部11は、ばたつき量が閾値を超えていないと判定した場合には(ステップS4:NO)、その時点でのノズル距離、エア流量、エア吹き付け角度をエア条件として決定し(ステップS12)、エア条件決定処理を終了する。一方、制御部11は、ばたつき量が閾値を超えていると判定した場合には(ステップS4:YES)、現段階のエア流量でエア吹き付け角度を全段階変更したか否かを判定する(ステップS5)。すなわち、制御部11は、エア流量を現段階に設定した状態で、エア吹き付け角度を第1段階から第10段階まで変更したか否かを判定する。
【0045】
制御部11は、現段階のエア流量でエア吹き付け角度を全段階変更していないと判定した場合には(ステップS5:NO)、エア吹き付け角度を1段階上の段階に変更し(ステップS6)、ステップS2の処理に移行する。制御部11は、ステップS6の処理において、例えば、エア吹き付け角度の現段階が第1段階であれば第2段階に変更し、第2段階であれば第3段階に変更する。一方、制御部11は、現段階のエア流量でエア吹き付け角度を全段階変更したと判定した場合には(ステップS5:YES)、次いで、現段階のノズル距離でエア流量を全段階変更したか否かを判定する(ステップS7)。すなわち、制御部11は、ノズル距離を現段階に設定した状態で、エア流量を第1段階から第10段階まで変更したか否かを判定する。
【0046】
制御部11は、現段階のノズル距離でエア流量を全段階変更していないと判定した場合には(ステップS7:NO)、エア流量を1段階上の段階に変更し(ステップS8)、ステップS2の処理に移行する。制御部11は、ステップS8の処理において、例えば、エア流量の現段階が第1段階であれば第2段階に変更し、第2段階であれば第3段階に変更する。一方、制御部11は、現段階のノズル距離でエア流量を全段階変更したと判定した場合には(ステップS7:YES)、次いで、ノズル距離を全段階変更したか否かを判定する(ステップS9)。すなわち、制御部11は、ノズル距離を第1段階から第10段階まで変更したか否かを判定する。
【0047】
制御部11は、ノズル距離を全段階変更していないと判定した場合には(ステップS9:NO)、ノズル距離を1段階上の段階に変更し(ステップS10)、ステップS2の処理に移行する。制御部11は、ステップS10の処理において、例えば、ノズル距離の現段階が第1段階であれば第2段階に変更し、第2段階であれば第3段階に変更する。一方、制御部11は、現段階のノズル距離を全段階変更したと判定した場合には(ステップS9:YES)、次いで、エラー情報を出力し(ステップS11)、エア条件決定処理を終了する。制御部11は、ステップS9の処理で「YES」と判定した場合、すなわち、ノズル距離、エア流量及びエア吹き付け角度の各条件をどのように組み合わせてもばたつき量が閾値を超えてしまった場合に、ステップS11の処理において、ばたつきを押さえることができなかったことを示すエラー情報を出力する。エラー情報の出力方法としては、様々な方法を採用することができる。例えば、表示部14にエラーメッセージを表示することとしてもよい。
【0048】
このように、制御部11は、ノズル距離及びエア流量を固定した上で、エア吹き付け角度を1段階ずつ変更していき、ばたつき量が閾値を超えなくなったか(ばたつきを押さえることができたか)の判定を繰り返す。制御部11は、エア吹き付け角度を変更しただけでは、ばたつき量が閾値を超えないようにすることができなかった場合には、ノズル距離及びエア流量のうちエア流量を1段階変更して、再度、エア吹き付け角度を1段階ずつ変更していく。つまり、
図4に示したテーブルにおける左上隅のマスから縦(下)方向に、ばたつき量が閾値を超えなくなったかの判定を繰り返し、そのエア流量の段階(列)ではばたつき量が閾値を超えないようにすることができなかった場合に、次いで、右隣りの列に移動し、再度、縦(下)方向に、ばたつき量が閾値を超えなくなったかの判定を繰り返すこととなる。なお、
図4に示したテーブル(距離=第1段階)の各条件では、ばたつき量が閾値を超えないようにすることができなかった場合(全てのマスが「×」となった場合)には、ノズル距離の段階を1段階上げたテーブル(「距離=第2段階」)について同様の処理を繰り返していくこととなる。そして、制御部11は、順次、条件を変更した結果、ばたつき量が閾値を超えないようにすることができた場合には、その時点のノズル距離、エア流量及びエア吹き付け角度をエア条件として決定する。本実施形態では、エア流量が少ない段階からエア流量が多い段階へとエア流量を増やしていきながらエア条件を決定しているので、エア流量の少ないエア条件を決定することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の検査装置1の制御部11(「画像取得手段」、「判定手段」、「条件変更手段」の一例)は、枚葉印刷機において枚葉紙600(「被印刷物」の一例)を搬送方向側からグリッパGで引っ張りながら搬送させる際のばたつきを押さえるためにエアノズル(「エア吹付手段」の一例)からエアが吹き付けられた枚葉紙600をカメラ511で撮影した画像を取得し(ステップS2)、当該取得した画像に基づいて枚葉紙600のばたつき量を算出し(ステップS3)、当該ばたつき量が閾値を超えているか否かを判定し(ステップS4)、閾値を超えていると判定した場合に、エアノズル513から枚葉紙600までのノズル距離、エアノズル513からのエアの流量、又は、エアノズル513が枚葉紙600に対してエアを吹き付ける角度の少なくとも何れか1つの条件を変更する。そして、制御部11は、ばたつき量が閾値を超えないと判定するまで、画像の取得(ステップS2)、ばたつき量の判定(ステップS4)、条件の変更(ステップS6、ステップS8、ステップS10)を繰り返す。
【0050】
したがって、本実施形態の検査装置1によれば、ばたつき量が閾値を超えなくなるまで、ノズル距離、エアの流量、又は、エア吹き付け角度の条件が変更されることから、枚葉紙600の搬送時におけるばたつきを押さえるためのエアの吹き付け条件を適切に設定することができる。また、従来のレーザ距離計や超音波距離計、接触型のセンサを用いずに、カメラ511で撮影された画像に基づいて枚葉紙600のばたつき量を判定することができる。
【0051】
また、制御部11は、エア吹き付け角度(「エアを吹き付ける角度」の一例)から条件を変更していき、エア吹き付け角度を変更してもばたつき量が閾値を超えてしまう場合に、エア流量を増やした上で、再度、エア吹き付け角度を変更する処理を、ばたつき量が閾値を超えなくなるまで繰り返す。
【0052】
したがって、本実施形態の検査装置1によれば、適切なエアの吹き付け条件を見付け出すために、エアの流量を流量が少ない条件から順にばたつき量が閾値を超えなくなるまで変更していくことから、より少ないエアの流量(より小さなエネルギー)で枚葉紙600のばたつきを押さえることができ、エネルギーを節約することができる。
【0053】
ここで、
図7に、本実施形態のエア条件決定処理により決定されたエア条件にてエア押さえを行った場合の画像(A)と、エア押さえを行っていない場合の画像(B)を示す。
図7(A)に示す画像は、枚葉紙600の幅方向のエッジが直線になっており、良品検査に適した画像となっている。一方、
図7(B)に示す画像は、枚葉紙600の幅方向のエッジが搬送方向上流側で外側に広がっており、良品検査に適さない画像となっている。
【0054】
[4.変形例]
次に、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例は適宜組み合わせることができる。
【0055】
[4.1.エア条件]
上記実施形態では、エアノズル513が画像に写り込まないようにするため、エアノズル513を段階的に枚葉紙600(圧胴503)に近づけていき、ばたつき量が閾値を超えなくなったところで、エア条件を決定する構成としたが、エアノズル513を画像に写り込まない範囲であって、且つ、枚葉紙600(圧胴503)に最も近い位置に固定した上で、エア吹き付け角度やエア流量を、ばたつき量が閾値を超えなくなるまで変更する構成としてもよい。この場合、
図6のステップ9の処理及びステップS10の処理は不要となり、ステップS7の処理で「YES」と判定した場合には、ステップS11の処理に移行することとなる。本変形例によれば、エアノズル513が画像に写り込まない範囲で、エアノズル513が枚葉紙600(圧胴503)に近づくため、エア流量がより少ないエア条件を決定することができる。
【0056】
[4.2.カメラ511の位置]
上記実施形態では、
図1に示したように、カメラ511が圧胴503上を搬送される枚葉紙600を撮影する構成としたが、枚葉紙600の裏面についても良品検査を行う場合には、裏面側についても画像を取得するために、例えば、
図1に示した紙渡し胴505の下方側にカメラ511、照明512及びエアノズル513を更に設置する構成とすることができる。本変形例において新たに設置されるカメラ511、照明512及びエアノズル513についても、上記実施形態と同様に、検査装置1がエア条件を決定する。