(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本実施形態では、化合物半導体装置として、MIS型のAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
図1〜
図2は、第1の実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【0012】
先ず、
図1(a)に示すように、成長用基板として例えばSi基板1上に、化合物半導体積層構造2を形成する。成長用基板としては、Si基板の代わりに、SiC基板、サファイア基板、GaAs基板、GaN基板等を用いても良い。また、基板の導電性としては、半絶縁性、導電性を問わない。
化合物半導体積層構造2は、バッファ層2a、電子走行層2b、及び電子供給層2cを有して構成される。
【0013】
完成したAlGaN/GaN・HEMTでは、その動作時において、電子走行層2bの電子供給層2cとの界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)が発生する。この2DEGは、電子走行層2bの化合物半導体(ここではGaN)と電子供給層2cの化合物半導体(ここではAlGaN)との格子定数の相違に基づいて生成される。
【0014】
詳細には、Si基板1上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法により、以下の各化合物半導体を成長する。MOVPE法の代わりに、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等を用いても良い。
Si基板1上に、AlNを100nm程度の厚みに、i(インテンショナリ・アンドープ)−GaNを1μm程度の厚みに、n−AlGaNを30nm程度の厚みに順次成長する。これにより、バッファ層2a、電子走行層2b、電子供給層2cが形成される。バッファ層2aとしては、AlNの代わりにAlGaNを用いたり、低温成長でGaNを成長するようにしても良い。また、電子走行層2bと電子供給層2cとの間に、スペーサ層として例えば薄いAlGaNを形成しても良い。電子供給層2c上に、キャップ層として例えば薄いn−GaNを形成しても良い。
【0015】
AlNの成長条件としては、原料ガスとしてトリメチルアルミニウム(TMAl)ガス及びアンモニア(NH
3)ガスの混合ガスを用いる。GaNの成長条件としては、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMGa)ガス及びNH
3ガスの混合ガスを用いる。AlGaNの成長条件としては、原料ガスとしてTMAlガス、TMGaガス、及びNH
3ガスの混合ガスを用いる。成長する化合物半導体層に応じて、Al源であるTMAlガス、Ga源であるTMGaガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。共通原料であるNH
3ガスの流量は、100ccm〜10LM程度とする。また、成長圧力は50Torr〜300Torr程度、成長温度は1000℃〜1200℃程度とする。
【0016】
AlGaN等をn型として成長する際には、n型不純物として例えばSiを含む例えばSiH
4ガスを所定の流量で原料ガスに添加し、AlGaNにSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、1×10
18/cm
3程度〜1×10
20/cm
3程度、例えば5×10
18/cm
3程度とする。
【0017】
続いて、
図1(b)に示すように、素子分離構造3を形成する。
図1(c)以降では、素子分離構造3の図示を省略する。
詳細には、化合物半導体積層構造2の素子分離領域に、例えばアルゴン(Ar)を注入する。これにより、化合物半導体積層構造2及びSi基板1の表層部分に素子分離構造3が形成される。素子分離構造3により、化合物半導体積層構造2上で活性領域が画定される。
なお、素子分離は、上記の注入法の代わりに、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)法を用いて行っても良い。このとき、化合物半導体積層構造2のドライエッチングには、例えば塩素系のエッチングガスを用いる。
【0018】
続いて、
図1(c)に示すように、化合物半導体積層構造2上にゲート絶縁膜4を形成する。
ゲート絶縁膜4は、その主面内において、ゲート電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分4aと、閾値変動の方向が負である第2の部分4bとが交互に並列配置されて構成されている。本実施形態では、ゲート絶縁膜4におけるゲート電極の形成予定部位でゲート電極の短手方向(ゲート長方向)に、長手方向(ゲート幅方向)に沿って第1の部分4aと第2の部分4bとが交互に並列配置されている。
【0019】
第1の部分4aの絶縁材料は、閾値変動の方向が正となる材料として、SiO
2,AlN,Al
2O
3,HfO
2から選ばれた1種とされる。本実施形態では、例えばSiO
2とする。第2の部分4bの絶縁材料は、閾値変動の方向が負となる材料として、例えばSiNとされる。
【0020】
以下、ゲート絶縁膜4の形成方法について、
図3を用いて詳述する。
図3の各図では、化合物半導体積層構造2の電子供給層2cから上方の部位のみを図示する。
先ず、
図3(a)に示すように、電子供給層2c上に第1の絶縁膜11を形成する。
詳細には、例えばプラズマCVD法により、第2の部分の絶縁材料であるSiNを例えば100nm程度の厚みに堆積する。これにより、第1の絶縁膜11が形成される。
【0021】
次に、
図3(b)に示すように、第1の絶縁膜11に複数の貫通溝11aを形成する。
詳細には、第1の絶縁膜11の表面にレジストを塗布する。レジストをリソグラフィーにより加工し、レジストに、貫通溝の形成予定部位に相当する第1の絶縁膜11の表面を露出する複数の開口を形成する。以上により、当該開口を有するレジストマスクが形成される。このレジストマスクを用いて、電子供給層2cの表面が露出するまで、第1の絶縁膜11をドライエッチングして除去する。以上により、第1の絶縁膜11のゲート電極の形成予定部位に、複数の貫通溝11aが形成される。貫通溝11aは、例えば100nm程度〜150nm程度のピッチ(貫通溝11aの幅及び貫通溝11a間の距離を共に100nm程度〜150nm程度の略同一値とする。)で、ゲート電極のゲート長方向に、ゲート幅方向に沿ったストライプ状に並列形成される。
レジストマスクは、アッシング処理又はウェット処理により除去される。
【0022】
次に、
図3(c)に示すように、第1の絶縁膜11上に第2の絶縁膜12を形成する。
詳細には、例えばプラズマCVD法により、第1の部分の絶縁材料であるSiO
2を貫通溝11a内を充填するように第1の絶縁膜11上に堆積する。これにより、第2の絶縁膜12が形成される。
【0023】
次に、
図3(d)に示すように、第1の絶縁膜11上の第2の絶縁膜12を除去する。
詳細には、例えばプラズマエッチングにより、第2の絶縁膜12について、貫通溝11a内を充填する部分のみを残して、第1の絶縁膜11上の部分をエッチングして除去する。貫通溝11a内をSiO
2で充填してなる部位が第1の部分4a、第1の部分4a間のSiNの部位が第2の部分4bとなる。
以上により、ゲート電極の形成予定部位に第1の部分4aと第2の部分4bとが交互に並列配置されてなるゲート絶縁膜4が形成される。
【0024】
続いて、
図2(a)に示すように、ソース電極5及びドレイン電極6を形成する。
詳細には、先ず、ゲート絶縁膜4におけるソース電極及びドレイン電極の形成予定部位に電極用貫通溝4A,4Bを形成する。
化合物半導体積層構造2の表面にレジストを塗布する。レジストをリソグラフィーにより加工し、レジストに、ソース電極及びドレイン電極の形成予定部位に相当する化合物半導体積層構造2の表面を露出する開口を形成する。以上により、当該開口を有するレジストマスクが形成される。
【0025】
このレジストマスクを用いて、電子供給層2cの表面が露出するまで、ゲート絶縁膜4のソース電極及びドレイン電極の形成予定部位をドライエッチングして除去する。以上により、ゲート絶縁膜4には、電子供給層2cの表面のソース電極及びドレイン電極の形成予定部位を露出する電極用貫通溝4A,4Bが形成される。
レジストマスクは、アッシング処理又はウェット処理により除去される。
【0026】
ソース電極及びドレイン電極を形成するためのレジストマスクを形成する。ここでは、蒸着法及びリフトオフ法に適した例えば庇構造2層レジストを用いる。このレジストを化合物半導体積層構造2上に塗布し、電極用貫通溝4A,4Bを露出させる開口を形成する。以上により、当該開口を有するレジストマスクが形成される。
このレジストマスクを用いて、電極材料として、例えばTa/Al(下層がTa、上層がAl)を、例えば蒸着法により、電極用貫通溝4A,4Bを露出させる開口内を含むレジストマスク上に堆積する。Taの厚みは20nm程度、Alの厚みは200nm程度とする。リフトオフ法により、レジストマスク及びその上に堆積したTa/Alを除去する。その後、Si基板1を、例えば窒素雰囲気中において400℃〜1000℃程度の温度、例えば600℃程度で熱処理し、残存したTa/Alを電子供給層2cとオーミックコンタクトさせる。Ta/Alの電子供給層2cとのオーミックコンタクトが得られるのであれば、熱処理が不要な場合もある。以上により、電極用貫通溝4A,4Bを電極材料の一部で埋め込むソース電極5及びドレイン電極6が形成される。
【0027】
続いて、
図2(b)に示すように、ゲート電極7を形成する。
詳細には、先ず、ゲート電極を形成するためのレジストマスクを形成する。ここでは、蒸着法及びリフトオフ法に適した例えば庇構造2層レジストを用いる。このレジストをゲート絶縁膜4上に塗布し、ゲート絶縁膜4の第1及び第2の部分4a,4b(ゲート電極の形成予定部位)を露出させる開口を形成する。以上により、当該開口を有するレジストマスクが形成される。
【0028】
このレジストマスクを用いて、電極材料として、例えばNi/Au(下層がNi、上層がAu)を、例えば蒸着法により、ゲート絶縁膜4の第1及び第2の部分4a,4bを露出させる開口内を含むレジストマスク上に堆積する。Niの厚みは30nm程度、Auの厚みは400nm程度とする。リフトオフ法により、レジストマスク及びその上に堆積したNi/Auを除去する。以上により、ゲート絶縁膜4の第1及び第2の部分4a,4b上にゲート電極7が形成される。
【0029】
しかる後、層間絶縁膜の形成、ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7と接続される配線の形成、上層の保護膜の形成、最表面に露出する接続電極の形成等の諸工程を経て、本実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
【0030】
以下、本実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの奏する作用効果を、比較例との比較に基づいて説明するために行ったシミュレーション実験について説明する。
【0031】
先ず、本実施形態の比較例として、比較例1及び比較例2を提示する。比較例1では、電圧印加により生じる閾値変動の方向が負である単一の絶縁材料、ここではSiNからなる単層のゲート絶縁膜を有するAlGaN/GaN・HEMTを用いた。比較例2では、閾値変動の方向が正である単一の絶縁材料、ここではSiO
2と同じ性質を有するAlNからなる単層のゲート絶縁膜を有するAlGaN/GaN・HEMTを用いた。
【0032】
AlGaN/GaN・HEMTにおけるゲート電圧Vgとドレイン電流Idとの関係を、シミュレーションにより調べた。
比較例1では、
図4(a)に示すように、ドレイン電極の端子に400V程度の電圧を印加すると、閾値が負側に大きくシフトすることが確認された。比較例2では、
図4(b)に示すように、ドレイン電極の端子に400V程度の電圧を印加すると、閾値が正側に大きくシフトすることが確認された。
【0033】
本実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTとして、閾値変動の方向が正である第1の部分がAlNであり、閾値変動の方向が負である第2の部分がSiNであるゲート絶縁膜を有するHEMTを提示する。本実施形態では、
図5に示すように、ドレイン電極の端子に400V程度の電圧を印加しても閾値には変化が殆ど見られず、電圧印加の前後で閾値の変動が抑えられていることが確認された。
【0034】
更に、本実施形態によるAlGaN/GaN・HEMTとして、閾値変動の方向が正である第1の部分がSiO
2であり、閾値変動の方向が負である第2の部分がSiNであるゲート絶縁膜を有するHEMTを提示する。本実施形態では、ゲート絶縁膜の厚みを50nm程度で第1の部分と第2の部分とを100nm程度のピッチで交互に配置した。ドレイン電圧を20Vとし、ゲート電圧を+1Vから−15Vにスイープして、ドレイン電流を計算した。計算結果からドレイン電流が1μA/mmとなるゲート電圧を閾値とした。
【0035】
シミュレーション結果を
図6に示す。
図6では、初期状態の特性と、第1の部分のSiO
2が+1V、第2の部分のSiNが−1Vだけ閾値がシフトした状態の特性と、第1の部分のSiO
2が+2V、第2の部分のSiNが−2Vだけ閾値がシフトした状態の特性とを示している。本実施形態のように、ゲート絶縁膜を第1の部分及び第2の部分を交互に配置した構造とすることで、第1の部分及び第2の部分において2Vの閾値変動が発生したとしても、閾値の変動量が低減し、初期状態からの閾値変動が抑えられることが確認された。
【0036】
本実施形態のゲート絶縁膜において、第1の部分及び第2の部分で正負同じ大きさの閾値シフトが生じるとは限らない。そのため、第1の部分のSiO
2と第2の部分のSiNで閾値のシフト量が異なる場合について、シフト量が2V以内の範囲で閾値を計算した。その結果を
図7に示す。
図7では、(a)が閾値のシフト量を、(b)が初期値との差をそれぞれ示している。
図7のように、第1の部分及び第2の部分の夫々に、異なる大きさの閾値シフトが生じている場合では、初期状態からの閾値変動が小さく抑えられていることが確認された。
【0037】
以上のシミュレーション実験の結果を踏まえ、本実施形態により奏される作用効果のメカニズムについて説明する。
図8に示すように、第2の部分の絶縁材料であるSiN等は、トラップ準位に電子がトラップされている状態で安定している。これに高い電圧が印加されるとトラップされていた電子が放出される。電子が抜ける影響でチャネルに電子が引き寄せられ易くなり、結果的に閾値は初期値から負側にシフトする。
一方、第1の部分の絶縁材料であるSiO
2やAlN等は、トラップ準位に電子がない状態で安定している。これに高い電圧が印加されると電子がトラップされる。電子がトラップされる影響でチャネルの電子が遠ざけられ、結果的に閾値は初期値から正側にシフトする。
【0038】
閾値変動は、ゲート絶縁膜の電子捕獲又は電子放出により発生する。上述した比較例1,2のように、ゲート絶縁膜は、その絶縁材料により、電圧印加により正又は負の閾値変動が生じる。ゲート絶縁膜にはトラップ順位が不可避であり、この閾値変動を0に近づけることは極めて困難である。本実施形態では、この事実に着目して、電圧印加により正の閾値変動が生じる第1の部分と、負の閾値変動が生じる第2の部分とを交互に配置してゲート絶縁膜を構成し、隣接する部分同士で閾値変動を相殺して膜全体で閾値変動を抑止する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
【0040】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、MIS型のAlGaN/GaN・HEMTについて開示するが、ゲート絶縁膜の構成が異なる点で相違する。なお、第1の実施形態の構成部材等と同一のものについては、同符号を付して詳しい説明を省略する。
図9は、第2の実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTの製造方法の主要工程を示す概略断面図である。
【0041】
本実施形態では、第1の実施形態と同様に、先ず
図1(a)〜
図1(b)の諸工程を経る。このとき、化合物半導体積層構造2上で活性領域を画定する素子分離構造3が形成される。
続いて、
図9(a)に示すように、化合物半導体積層構造2上にゲート絶縁膜21を形成する。
ゲート絶縁膜21は、その主面内において、ゲート電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分21aと、閾値変動の方向が負である第2の部分21bとが交互に並列配置されて構成されている。本実施形態では、ゲート絶縁膜21におけるゲート電極の形成予定部位でゲート電極の短手方向(ゲート長方向)に、長手方向(ゲート幅方向)に沿って第1の部分21aと第2の部分21bとが交互に並列配置されている。
【0042】
第1の部分21a及び第2の部分21bの絶縁材料は、共にSiONとされる。SiONは、その酸素含有量が多いほど正方向に閾値のシフトが大きくなり、酸素含有量が少ないほど負方向に閾値のシフトが大きくなる。第1の部分21aのSiONは、第2の部分21bのSiONよりも酸素含有量が多い。例えば、第1の部分21aの酸素含有量は50%以上とされており、第2の部分21bの酸素含有量は50%未満とされている。
【0043】
以下、ゲート絶縁膜21の形成方法について、
図10を用いて詳述する。
図10の各図では、化合物半導体積層構造2の電子供給層2cから上方の部位のみを図示する。
先ず、
図10(a)に示すように、電子供給層2c上に第1の絶縁膜22を形成する。
詳細には、例えばプラズマCVD法により、第2の部分の絶縁材料である酸素含有量の少ないSiONを例えば100nm程度の厚みに堆積する。これにより、第1の絶縁膜22が形成される。
【0044】
次に、
図10(b)に示すように、第1の絶縁膜22に複数の貫通溝22aを形成する。
詳細には、第1の絶縁膜22の表面にレジストを塗布する。レジストをリソグラフィーにより加工し、レジストに、貫通溝の形成予定部位に相当する第1の絶縁膜22の表面を露出する複数の開口を形成する。以上により、当該開口を有するレジストマスクが形成される。このレジストマスクを用いて、電子供給層2cの表面が露出するまで、第1の絶縁膜22をドライエッチングして除去する。以上により、第1の絶縁膜22のゲート電極の形成予定部位に、複数の貫通溝22aが形成される。貫通溝22aは、例えば100nm程度〜150nm程度のピッチ(貫通溝22aの幅及び貫通溝22a間の距離を共に100nm程度〜150nm程度の略同一値とする。)で、ゲート電極のゲート長方向に、ゲート幅方向に沿ったストライプ状に並列形成される。
レジストマスクは、アッシング処理又はウェット処理により除去される。
【0045】
次に、
図10(c)に示すように、第1の絶縁膜22上に第2の絶縁膜23を形成する。
詳細には、例えばプラズマCVD法により、第1の部分の絶縁材料である酸素含有量の多いSiONを貫通溝22a内を充填するように第1の絶縁膜22上に堆積する。これにより、第2の絶縁膜23が形成される。
【0046】
次に、
図10(d)に示すように、第1の絶縁膜22上の第2の絶縁膜23を除去する。
詳細には、例えばプラズマエッチングにより、第2の絶縁膜23について、貫通溝22a内を充填する部分のみを残して、第1の絶縁膜22上の部分をエッチングして除去する。貫通溝22a内を酸素含有量の多いSiONで充填してなる部位が第1の部分21a、第1の部分21a間の酸素含有量の少ないSiONの部位が第2の部分21bとなる。
以上により、ゲート電極の形成予定部位に第1の部分21aと第2の部分21bとが交互に並列配置されてなるゲート絶縁膜21が形成される。
【0047】
その後、第1の実施形態と同様に、
図2(a)〜
図2(b)の諸工程を経る。
図2(b)に対応する様子を
図10(b)に示す。
【0048】
しかる後、層間絶縁膜の形成、ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極7と接続される配線の形成、上層の保護膜の形成、最表面に露出する接続電極の形成等の諸工程を経て、本実施形態によるMIS型のAlGaN/GaN・HEMTが形成される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
【0050】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1又は第2の実施形態のAlGaN/GaN・HEMTを適用した電源装置を開示する。
図11は、第3の実施形態による電源装置の概略構成を示す結線図である。
【0051】
本実施形態による電源装置は、高圧の一次側回路31及び低圧の二次側回路32と、一次側回路31と二次側回路32との間に配設されるトランス33とを備えて構成される。
一次側回路31は、交流電源34と、いわゆるブリッジ整流回路35と、複数(ここでは4つ)のスイッチング素子36a,36b,36c,36dとを備えて構成される。また、ブリッジ整流回路35は、スイッチング素子36eを有している。
二次側回路32は、複数(ここでは3つ)のスイッチング素子37a,37b,37cを備えて構成される。
【0052】
本実施形態では、一次側回路31のスイッチング素子36a,36b,36c,36d,36eが、第1又は第2の実施形態のAlGaN/GaN・HEMTとされている。一方、二次側回路32のスイッチング素子37a,37b,37cは、シリコンを用いた通常のMIS・FETとされている。
【0053】
本実施形態では、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のAlGaN/GaN・HEMTを、高圧回路に適用する。これにより、信頼性の高い大電力の電源回路が実現する。
【0054】
(第4の実施形態)
本実施形態では、第1又は第2の実施形態のAlGaN/GaN・HEMTを適用した高周波増幅器を開示する。
図12は、第4の実施形態による高周波増幅器の概略構成を示す結線図である。
【0055】
本実施形態による高周波増幅器は、ディジタル・プレディストーション回路41と、ミキサー42a,42bと、パワーアンプ43とを備えて構成される。
ディジタル・プレディストーション回路41は、入力信号の非線形歪みを補償するものである。ミキサー42aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号をミキシングするものである。パワーアンプ43は、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅するものであり、第1又は第2の実施形態のAlGaN/GaN・HEMTを有している。なお
図12では、例えばスイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー42bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路41に送出できる構成とされている。
【0056】
本実施形態では、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のAlGaN/GaN・HEMTを、高周波増幅器に適用する。これにより、信頼性の高い高耐圧の高周波増幅器が実現する。
【0057】
(他の実施形態)
第1〜第4の実施形態では、化合物半導体装置としてAlGaN/GaN・HEMTを例示した。化合物半導体装置としては、AlGaN/GaN・HEMT以外にも、以下のようなHEMTに適用できる。
【0058】
・その他のHEMT例1
本例では、化合物半導体装置として、InAlN/GaN・HEMTを開示する。
InAlNとGaNは、組成によって格子定数を近くすることが可能な化合物半導体である。この場合、上記した第1〜第4の実施形態では、電子走行層がi−GaN、電子供給層がn−InAlNで形成される。また、この場合のピエゾ分極がほとんど発生しないため、2次元電子ガスは主にInAlNの自発分極により発生する。
【0059】
本例によれば、上述したAlGaN/GaN・HEMTと同様に、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のInAlN/GaN・HEMTが実現する。
【0060】
・その他のHEMT例2
本例では、化合物半導体装置として、InAlGaN/GaN・HEMTを開示する。
GaNとInAlGaNは、後者の方が前者よりも組成によって格子定数を小さくすることができる化合物半導体である。この場合、上記した第1〜第4の実施形態では、電子走行層がi−GaN、電子供給層がn−InAlGaNで形成される。
【0061】
本例によれば、上述したAlGaN/GaN・HEMTと同様に、ゲート絶縁膜における閾値変動を実質的に抑制し、不完全なスイッチ動作を低減してデバイス破壊を抑止する信頼性の高いMIS型のInAlGaN/GaN・HEMTが実現する。
【0062】
以下、半導体装置及びその製造方法、並びに電源装置及び高周波増幅器の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0063】
(付記1)半導体領域と、
前記半導体領域の上方に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に形成された電極と
を含み、
前記絶縁膜は、当該絶縁膜の主面内において、前記電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分と、前記閾値変動の方向が負である第2の部分とが交互に並列配置されてなることを特徴とする半導体装置。
【0064】
(付記2)前記絶縁膜は、前記第1の部分と前記第2の部分とが前記電極の短手方向に沿って交互に並列配置されてなることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0065】
(付記3)前記絶縁膜は、前記第1の部分の絶縁材料がSiO
2,AlN,Al
2O
3,HfO
2から選ばれた1種であり、前記第2の部分がSiNであることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0066】
(付記4)前記絶縁膜は、前記第1の部分及び前記第2の部分の絶縁材料が共にSiONであり、前記第1の部分が前記第2の部分よりも酸素の含有率が高いことを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0067】
(付記5)半導体領域の上方に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜の上方に電極を形成する工程と
を含み、
前記絶縁膜は、当該絶縁膜の主面内において、前記電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分と、前記閾値変動の方向が負である第2の部分とが交互に並列配置されてなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0068】
(付記6)前記絶縁膜は、前記第1の部分と前記第2の部分とが前記電極の短手方向に沿って交互に並列配置されてなることを特徴とする付記5に記載の半導体装置の製造方法。
【0069】
(付記7)前記絶縁膜は、前記第1の部分の絶縁材料がSiO
2,AlN,Al
2O
3,HfO
2から選ばれた1種であり、前記第2の部分の絶縁材料がSiNであることを特徴とする付記5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【0070】
(付記8)前記絶縁膜は、前記第1の部分及び前記第2の部分の絶縁材料が共にSiONであり、前記第1の部分が前記第2の部分よりも酸素の含有率が高いことを特徴とする付記5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【0071】
(付記9)変圧器と、前記変圧器を挟んで高圧回路及び低圧回路とを備えた電源回路であって、
前記高圧回路はトランジスタを有しており、
前記トランジスタは、
半導体領域と、
前記半導体領域の上方に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に形成された電極と
を含み、
前記絶縁膜は、当該絶縁膜の主面内において、前記電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分と、前記閾値変動の方向が負である第2の部分とが交互に並列配置されてなることを特徴とする電源回路。
【0072】
(付記10)入力した高周波電圧を増幅して出力する高周波増幅器であって、
トランジスタを有しており、
前記トランジスタは、
半導体領域と、
前記半導体領域の上方に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に形成された電極と
を含み、
前記絶縁膜は、当該絶縁膜の主面内において、前記電極からの電圧の印加により生じる閾値変動の方向が正である第1の部分と、前記閾値変動の方向が負である第2の部分とが交互に並列配置されてなることを特徴とする高周波増幅器。