特許第6248631号(P6248631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248631
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20171211BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20171211BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20171211BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20171211BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20171211BHJP
   H01M 10/6566 20140101ALI20171211BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   H01M10/613
   H01M10/647
   H01M10/651
   H01M10/6555
   H01M10/6566
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-520619(P2013-520619)
(86)(22)【出願日】2012年6月18日
(86)【国際出願番号】JP2012065490
(87)【国際公開番号】WO2012173269
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2011-135424(P2011-135424)
(32)【優先日】2011年6月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】増田 喜弘
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−076779(JP,A)
【文献】 特開2009−259455(JP,A)
【文献】 特開2008−159439(JP,A)
【文献】 特開2010−146777(JP,A)
【文献】 特開2009−054403(JP,A)
【文献】 特開2011−96536(JP,A)
【文献】 特開2009−110833(JP,A)
【文献】 特開2001−283937(JP,A)
【文献】 特開2006−235149(JP,A)
【文献】 特開2006−12847(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0232135(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0204840(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2001/0007728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/647
H01M 10/651
H01M 10/6555
H01M 10/6566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して配置された第1及び第2の単電池と、
前記第1及び第2の単電池の間に配置された、冷却媒体を通過させる冷却流路を設けるためのスペーサと
を備え、
前記スペーサは、
厚さ方向の中心から前記第1の単電池に向けて突出して前記第2の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第1の突出部と、前記厚さ方向の中心から前記第2の単電池に向けて突出して前記第1の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第2の突出部とを、前記冷却流路に直角な方向に連続して交互に繰り返し設けた蛇行部と、
前記冷却流路に交差する方向に延びるストレート部と
を備え、
前記蛇行部に前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成し、
前記ストレート部は前記スリットの一端縁と他端縁を連結していることを特徴とする組電池。
【請求項2】
互いに隣接して配置された第1及び第2の単電池と、
前記第1及び第2の単電池の間に配置された、冷却媒体を通過させる冷却流路を設けるためのスペーサと
を備え、
前記スペーサは、
厚さ方向の中心から前記第1の単電池に向けて突出して前記第2の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第1の突出部と、前記厚さ方向の中心から前記第2の単電池に向けて突出して前記第1の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第2の突出部とを、前記冷却流路に直角な方向に連続して交互に繰り返し設けた蛇行部と、
前記冷却流路に交差する方向に延びストレート部と
を備え
前記蛇行部は、前記蛇行部に前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成することなく、前記ストレート部によって前記冷却流路が延びる方向に分離されており、
前記ストレート部は、前記隙間の前記スペーサの厚さ方向の寸法の中間に位置していることを特徴とする組電池。
【請求項3】
前記ストレート部は、前記スペーサの前記厚さ方向の中心に対して厚さ方向のいずれか一方に偏在していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記ストレート部は、前記隙間の前記スペーサの厚さ方向の寸法の中間に位置していることを特徴とする請求項1に記載の組電池。
【請求項5】
前記第1の突出部は前記第1の単電池に当接し、前記第2の突出部は前記第2の単電池に当接していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項6】
前記スペーサは、前記蛇行部の前記冷却流路に直角な方向の一端に第1桟部、他端に第2桟部をさらに備え、
前記ストレート部は前記第1桟部と前記第2桟部を連結することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の組電池。
【請求項7】
前記ストレート部の厚さは前記隙間の前記スペーサの厚さ方向の寸法より小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項8】
前記ストレート部の前記冷却流路の上流側端部は、角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項9】
前記ストレート部の前記冷却流路の下流側端部は、角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の組電池。
【請求項10】
前記ストレート部は金属製であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池が組み合わされた組電池、詳しくは各単電池間に配設されるスペーサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池の各単電池の間に、冷却媒体を通過させる冷却流路を形成するためにスペーサを配設し、この冷却流路を通過する冷却媒体によって、充放電の繰り返しにより発熱する単電池を冷却する構造が知られている。
【0003】
特許文献1には、電池モジュール間に配設されたスペーサが開示されている。このスペーサには、隣接する2つの電池モジュールのうち第1の電池モジュールと当接する第1当接部と第2の電池モジュールと当接する第2当接部とが交互に設けられ、それによって第1の電池モジュールと冷却媒体が接触する冷却流路と、第2の電池モジュールと冷却媒体が接触する冷却流路とが交互に形成されている。また、このスペーサは、該第1当接部と第2当接部の間に電池モジュールが膨張したときの冷却流路の狭小化を防止する壁を備える。
【0004】
特許文献2には、電池モジュールの間に波板状のスペーサを配設し、このスペーサと電池モジュールの隙間により冷却流路を形成したものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、冷却流路を形成されたスペーサを二次電池間に配設することと、二次電池間に波板材を介装することが提案されている。特に、特許文献3には、横桟と縦壁を組み合わせた構造で、交互に配置された2種類の冷却流路を形成するスペーサが開示されている。
【0006】
特許文献4には、蓄電セルと対向する面に直線状に延びる凹部と凸部を交互に並設し、凹部と蓄電セルの間の空間に冷却流路を形成したセルホルダ(スペーサ)が開示されている。
【0007】
特許文献5には、ベース壁の両面に溝部を設け、ベース壁の一端の支持枠のスリットから溝部を通って他端の支持枠のスリットに至る冷却流路を形成した電池ホルダー(スペーサ)が開示されている。
【0008】
特許文献6には、凸条と溝とが交互に並ぶ凹凸状として、溝に冷却媒体を通すスペーサが開示されている。
【0009】
しかし、いずれの先行技術文献に記載のスペーサも、スペーサに形成された凹凸形状により、冷却流路の方向に直角な方向に伸び易く、隣接する単電池が膨張したときに隣接する単電池間の距離が狭まる。隣接する単電池間の距離の縮小により冷却流路の流路断面積が減少し、冷却効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−073461号公報(段落0025-0027,図2
【特許文献2】特開2004−031364号公報(段落0056,図5
【特許文献3】特開2004−047426号公報(段落0035-0041,図7
【特許文献4】特開2010−186681号公報(段落0017-0018,図2
【特許文献5】特開2010−015949号公報(段落0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、冷却流路の方向に直角な方向の伸びを防止することができるスペーサを備えた組電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、互いに隣接して配置された第1及び第2の単電池と、前記第1及び第2の単電池の間に配置された、冷却媒体を通過させる冷却流路を設けるためのスペーサとを備え、前記スペーサは、厚さ方向の中心から前記第1の単電池に向けて突出して前記第2の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第1の突出部と、前記厚さ方向の中心から前記第2の単電池に向けて突出して前記第1の単電池との間に前記冷却流路として機能する隙間を形成する第2の突出部とを、前記冷却流路に直角な方向に連続して交互に繰り返し設けた蛇行部と、前記冷却流路に交差する方向に延びるストレート部(連結部)とを備えることを特徴とする組電池を提供する。
【0013】
蛇行部の第1の突出部と第2の単電池との間の隙間と、蛇行部の第2の突出部と第1の単電池との間の隙間を冷却媒体が流れ、これらの隙間が冷却流路として機能する。そのため、第1及び第2の単電池との間に冷却流路として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサを薄型化できる。
【0014】
ストレート部を設けることで、蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の剛性を補強できる。単電池の膨張により、スペーサが第1及び第2の単電池から圧縮力を受けても、蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の伸びを防止し、それによって第1及び第2の単電池間の間隔が狭まるのを防止できる。第1及び第2の単電池間の間隔を維持することで、冷却流路の流路断面積を確保し、冷却効率を維持できる。
【0015】
具体的には、前記蛇行部に前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成し、前記ストレート部は前記スリットの一端縁と他端縁を連結する。又は、蛇行部は、前記蛇行部に前記冷却流路に交差する方向に延びるスリットを形成することなく、前記ストレート部によって前記冷却流路が延びる方向に分離されている。
【0016】
好ましくは、前記第1の突出部は前記第1の単電池に当接し、前記第2の突出部は前記第2の単電池に当接している。
【0017】
蛇行部の第1の突出部と第2の単電池との間の隙間を通過した冷却媒体(第2の単電池と接触した冷却媒体)がスリットに流入する。また、蛇行部の第2の突出部と第1の単電池との間の隙間を通過した冷却媒体(第1の単電池と接触した冷却媒体)がスリットに流入する。スリットを通過する間、冷却媒体は第1及び第2の単電池の両方に接触し、それによって冷却効率が向上する。
【0018】
前記スペーサは、前記蛇行部の前記冷却流路に直角な方向の一端に第1桟部、他端に第2桟部をさらに備え、前記ストレート部は前記第1桟部と前記第2桟部を連結してもよい。
【0019】
この構成によりスペーサの剛性をさらに高めることができる。
【0020】
前記ストレート部は、前記スペーサの前記厚さ方向の中心に対して厚さ方向のいずれか一方に偏在していてもよい。
【0021】
前記ストレート部は、前記隙間の前記スペーサの厚さ方向の寸法の中間に位置してもよい。
【0022】
スリットに流入した冷却媒体の流れは、ストレート部により第1の単電池側と第2の単電池側に分流され、ストレート部を通過した際に合流する。そのため、第1の単電池側を流れていた冷却媒体と第1の単電池側を流れていた冷却媒体の流れの入れ替えが生じ、冷却効率が向上する。
【0023】
前記ストレート部の厚さは前記隙間の前記スペーサの厚さ方向の寸法より小さいことが、冷却媒体の流れがストレート部で妨げられることがないので好ましい。
【0024】
前記ストレート部の前記冷却流路の上流側端部と下流側端部の少なくともいずれか一方は、角部が面取りされていることが好ましい。この構成により、冷却媒体を圧損なく円滑にストレート部を通過させることができる。
【0025】
前記ストレート部は金属製であってもよい。ストレート部を金属製とすることで、樹脂製とした場合と比較してストレート部自体の強度が向上し、それによって蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の剛性をより効果的に補強できる。また、金属製とすることで、単電池の発熱に起因するストレート部の強度低下を著しく抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の組電池が備えるスペーサの蛇行部は冷却流路の方向に直角な方向に連続して交互に繰り返して設けられた第1及び第2の突出部を備え、第1及び第2の突出部と単電池との間に冷却流路として機能する隙間が形成される。この構成により、単電池との間に冷却流路として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサを薄型化できる。また、スペーサにストレート部を設けたことで、蛇行部の冷却流路の方向に直角な方向の剛性を補強し、単電池の膨張に対して単電池間の間隔を維持することで、冷却効率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る組電池の斜視図。
図2図1の組電池のスペーサの斜視図。
図3図1の組電池のスペーサの正面図。
図4図2のスペーサのIV−IV線断面図。
図5図1の組電池の冷却媒体の流れを示す斜視図。
図6】(a)は図2のスペーサのVIa−VIa線断面図、(b)はVIb−VIb線断面図。
図7図2のスペーサの変形例を示す断面図。
図8図2のスペーサの他の変形例を示す断面図。
図9図2のスペーサのさらに他の変形例を示す斜視図。
図10】スペーサの他の実施形態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。本明細書では、説明の便宜上、図1に示すように、水平面内で互い直交するX,Y軸と、これらのX,Y軸に直交する鉛直面内のZ軸とを設定する。X,Y,Z軸に平行な方向をそれぞれ、X方向、Y方向、Z方向という。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態に係る組電池1を示す。この組電池1は、スタックケース2に複数の単電池3を並設し、各単電池3の間にスペーサ4を配設して構成されている。
【0030】
スタックケース2は鋼板から製造されている。スタックケース2は、X方向及びY方向に延びる矩形の底板5と、底板5のX方向の両端にZ方向に立ち上がる左壁部6a,右壁部6bとから構成されている。スタックケース2のY方向の両端及びZ方向の上端は開放されている。
【0031】
底板5は、中央部がX方向の両端部よりも僅かに高く形成された電池載置部7を有している。
【0032】
左壁部6a及び右壁部6bは、外壁8と内壁9からなっている。外壁8の下端は、底板5のX方向の端部と連続するように、底板5と一体に形成されている。内壁9の下端は底板5に接合されている。外壁8と内壁9の上端部10は互いに接近する方向にL字形に屈曲して接合されている。
【0033】
左壁部6aの外壁8と内壁9の間の空間は、第1冷媒通路11を形成している。右壁部6bの外壁8と内壁9の間の空間も、同様に、第2冷媒通路12を形成している。
【0034】
左壁部6aの内壁9には第1冷媒通路11に連通する複数の第1開口部13がY方向にスペーサ4の配列間隔と同じ一定間隔で形成されている。右壁部6bの内壁9にも、左壁部6aの第1開口部13と同様な第2開口部14が形成されている。
【0035】
壁部6a,6bの上端部10,10には、図示しない蓋を固定するためのナット15が固着されている。
【0036】
単電池3は、リチウムイオン電池などの非水二次電池からなっている。単電池3は、前記スタックケース2の左壁部6aと右壁部6bの間に収容可能なX方向の幅と、Y方向の奥行きと、Z方向の高さとを有している。単電池3は、上面に正と負の電極21,22を有している。Y方向に隣接する単電池3の電極21,22は図示しないバスバーにより連結される。単電池3は、文字通り単一の電池であってもよいし、X方向に列設して複数の小電池のユニットで構成されていてもよい。
【0037】
スペーサ4は、合成樹脂から成型されている。スペーサ4は、X方向に延びる上桟23と下桟24を有し、これらの上桟23と下桟24の間に蛇行部25が形成されている。蛇行部25には、上桟23から下桟24までZ方向に延びるスリット26がX方向の中央部と両端部の3箇所に形成されている。各スリット26の内部には、スリット26の上縁すなわち上桟23と下縁すなわち下桟24とを連結するストレート部(連結部)27がZ方向に真直に延びるように形成されている。前記スリット26及びストレート部27は、Z方向に限らず、後述する冷却流路30,31に交差する方向に延びていればよい。
【0038】
スペーサ4の大きさは、X方向の幅が単電池3の幅とほぼ同じかそれよりも小さく、Z方向の高さも、単電池3の高さとほぼ同じかそれよりも大きく或いは小さくなるように、決定されている。スペーサ4のY方向の寸法すなわち厚さは、隣接する単電池3間のY方向の間隔を決定する。スペーサ4の上桟23と下桟24のZ方向の寸法すなわち高さは、蛇行部25をできるだけ広くして後述する冷却流路30,31を確保するために、出来るだけ小さい方が好ましい。
【0039】
スペーサ4の蛇行部25には、第1の突出部41と第2の突出部42がZ方向(後述する冷却流路30,31に直角な方向)に連続して交互に繰り返して設けられている。第1の突出部41はスペーサ4の厚さ方向の中心C(図4参照)に対してX方向から見て左側の単電池3に向けて突出している。第1の突出部41とX方向から見て右側の単電池3との隙間が冷却流路31として機能する。第2の突出部42はスペーサ4の厚さ方向の中心Cに対してX方向から見て右側の単電池3に向けて突出している。第2の突出部42とX方向から見て左側の単電池3との隙間が冷却流路30として機能する。図4に最も明瞭に表れているように、X方向から見ると、蛇行部25は第1及び第2の突出部41,42が連続して交互に繰り返し設けられていることで、ジグザグ状ないし蛇行した形状を呈している。なお、図4は、便宜上、単電池3とスペーサ4の間に隙間があるように記載されているが、実際には第1の突出部41は左側の単電池3に接触し、第2の突出部42は右側の単電池3に接触している(後述する図6〜8も同様)。
【0040】
第1及び第2の突出部41,42を連続して交互に設けた蛇行部25は、片方の面に着目すると以下の形状を有する。
【0041】
蛇行部25は、Y方向から見た第1面(図4において左側)に、X方向に延びる凹部28と凸部29がZ方向に交互に形成され、第1面の裏側の第2面(図4において右側)にも、X方向に延びる凹部28と凸部29がZ方向に交互に形成されている。蛇行部25は、本実施形態では、平坦な凹部28と凸部29が傾斜部28aを介して連続している形状であるが、平坦な凹部と凸部が水平部を介して連続している形状であってもよいし、凹部と凸部が波形に連続している形状であってもよい。
【0042】
蛇行部25の冷却流路30,31の上流側端部または下流側端部の少なくともいずれか一方は、角部が斜面の面取り32がなされているが、丸みの面取りでもよい。これにより、冷却媒体の流れの圧損が小さくなり、冷却流路30,31における冷却媒体の流れが円滑になる。
【0043】
第1面の凹部28と第2面の凸部29は、互いに相補する形状であり、すなわち、第1面の凹部28が第2面の凸部29を形成している。同様に、第1面の凸部29と第2面の凹部28は、互いに相補する形状であり、すなわち、第1面の凸部29が第2面の凹部28を形成している。第1面の凹部28は第1面と対向する単電池3の冷却流路30を形成し、第1面の凸部29は第2面と対向する単電池3と接触している。同様に、第2面の凹部28は第2面と対向する単電池3の冷却流路31を形成し、第2面の凸部29は第1面と対向する単電池3と接触している。
【0044】
スペーサ4の蛇行部25は、スリット26によって、X方向に、第1、第2、第3、第4の4つ蛇行部25a,25b,25c,25dに分離されている。第1、第2、第3、第4の蛇行部25a,25b,25c,25dの凹部28と凸部29は、いずれも位相が同じであり、各蛇行部25a,25b,25c,25dの凹部28はX方向の同一線上にあり、凸部29もX方向の同一線上にある。
【0045】
スペーサ4のスリット26のX方向の幅Wは、図3に示すように、スペーサ4の剛性を保つために、出来るだけ小さい方が好ましい。また、スリット26の数は、実施例のように3カ所が好ましいが、それ以上であってもよいし、中央に1カ所、又は両端に2カ所でもよい。
【0046】
スペーサ4のストレート部(連結部)27は、実施例では矩形の断面を有しているが、円形の断面、楕円形の断面でもよい。ストレート部27は、スペーサ4の厚さの中心から厚さ方向のいずれか一方に偏在している。本実施例では、第2面の側に偏在しているが、第1面の側に偏在していてもよい。
【0047】
スペーサ4のストレート部27のX方向の幅S(図3参照)は、スリット26の幅Wより小さければよく、Z方向の伸びに対する引張強度と、全体の剛性を考慮して決定すればよい。ストレート部27のY方向の肉厚Tは、図4に示すように、冷却流路30,31の流路抵抗を小さくするために、好ましくは凹部28の深さよりも小さく、さらに好ましくは、蛇行部25のY方向の肉厚と同じかそれよりも薄いことが好ましい。
【0048】
スペーサ4のストレート部27の冷却流路30,31の上流側端部または下流側端部の少なくともいずれか一方は、角部が斜面の面取り32がなされているが、丸みの面取りでもよい。これにより、冷却媒体の流れの圧損が小さくなり、冷却流路30,31における冷却媒体の流れが円滑になる。
【0049】
ストレート部27の数は、実施例のように3カ所が好ましいが、それ以上であってもよいし、中央に1カ所、又は両端に2カ所でもよい。ストレート部27が1つであれば、そのストレート部27の両側の蛇行部25の端が伸びやすくなり、これに伴って単電池3がその膨張によって膨れる虞がある。このため、単電池3の膨張による膨れを防止する観点からはストレート部27は複数あるほうが好ましい。
【0050】
図4を参照すると、スペーサ4の厚さt1は冷却流路30,31の深さdとスペーサ4の肉厚thの和に相当する。つまり、第1及び第2の突出部41,42を冷却流路30,31に直角な方向に連続して交互に繰り返して設けた蛇行部25を採用することで、単電池3との間に冷却流路30,31として機能する上で必要な断面積の隙間を確保しつつ、スペーサ4を薄型化できる。
【0051】
次に、以上の構成からなる組電池1の特にスペーサ4の作用について説明する。
【0052】
図5に示すように、スタックケース2の左壁部6aの第1冷媒通路11に導入された冷媒は、それぞれ内壁9の第1開口部13からスペーサ4の第1面の凹部28(第2の突出部42と左側の単電池3との間の隙間)と第2面の凹部28(第1の突出部41と右側の単電池3との間の隙間)に流入する。第1開口部13からスペーサ4の第1面の凹部28に流入した冷媒は、当該凹部28が形成する冷却流路30に沿ってX方向に流れ、第1面と対向する単電池3を冷却する。同様に、第1開口部13からスペーサ4の第2面の凹部28に流入した冷媒は、当該凹部28が形成する冷却流路31に沿ってX方向に流れ、第2面と対向する単電池3を冷却する。スペーサ4の第1から第4の蛇行部25a〜25dの冷却流路30,31を通過した冷媒は、凹部28からスタックケース2の右壁部6bの第2開口部14を通って、第2冷媒通路12に流出する。
【0053】
ストレート部27を設けることで、蛇行部25のZ方向の剛性が補強されている。充放電の繰り返しにより、単電池3が膨張すると、隣接する単電池3,3はスペーサ4を押圧する。これにより、スペーサ4の蛇行部25は押し潰されてZ方向に伸びようとするが、ストレート部27が突っ張ってこれを防止する。スペーサ4の蛇行部25の伸びが防止されるため、隣接する単電池3の間の間隔が一定に保たれ、隣接する組電池3間の距離が狭まることがなくなり、冷却流路として機能する上で必要な断面積の隙間を確保し、冷却効率を維持することができる。
【0054】
図6(a)に示すように、スペーサ4の第1面の凹部28が形成する冷却流路30(第2の突出部42と左側の単電池3との間の隙間)を冷却媒体が流れてスリット26を通過するときには、スリット26とストレート部27の間に入り込むことよって流れが乱されるとともに、第2面と対向する単電池3をも冷却するので、冷却効率が向上する。
【0055】
同様に、図6(b)に示すように、スペーサ4の第2面の凹部28が形成する冷却流路31(第1の突出部41と右側の単電池3との間の隙間)を冷媒が流れてスリット26を通過するときには、ストレート部27との衝突と、これにより第1面側への曲がりによって流れが乱されるとともに、第1面と対向する単電池3をも冷却するので、冷却効率が向上する。
【0056】
前記実施形態は、種々変更することができる。
【0057】
例えば、スペーサ4のストレート部27のY方向の位置は、本実施形態では、スペーサ4の第2面の凹部28の開口部側に位置しているが、図7に示すように、第1面の凹部28の開口部側に位置していてもよい。なお、図7では、ストレート部27と凹部28の冷却流路30に対して上流側端部と下流側端部が傾斜した面取り32がなされている。
【0058】
さらに、図8に示すように、ストレート部27は凹部28の深さの中間に位置することができる。この場合、凹部28を流出した冷媒の流れがストレート部27に流入する際に隣接する単電池3の一方の側と他方の側に分流され、ストレート部27から流出する際に合流する。そのため、凹部28の底側を流れていた冷媒と凹部28の開口側の単電池3に近接して流れていた冷媒の流れの入れ替えが生じ、これによっても冷却効率が向上する。なお、図8では、ストレート部27と凹部28の冷却流路30に対して上流側端部と下流側端部に丸みの面取り33がなされている。
【0059】
また、図9に示すように、ストレート部27のX方向の少なくとも一部は、スリット26の縁、すなわち、凹部28又は凸部29の端縁と接合されていてもよい。
【0060】
前記実施形態のようなスリット26を設けることなく、ストレート部27を形成することもできる。すなわち、図10に示すように、第1面において冷却流路30,31の方向に隣接する2つの蛇行部25、例えば第2蛇行部25bの凹部28と第3蛇行部25cの凹部28(換言すれば、第2面において第2蛇行部25bの凸部29と第3蛇行部25cの凸部29)に面一になるようにストレート部27を設ける。このようにすれば、スリットがないだけ、スペーサ4の剛性が高まるとともに、冷却流路30,31を流れる冷媒の流動抵抗が少なくなるという利点がある。
【0061】
上桟23と下桟24を設けないことも可能であるが、これらを設けたほうが、スペーサ4としての剛性が高まる。
【0062】
ストレート部27は金属製であってもよい。ストレート部27を金属製とすることで、樹脂製とした場合と比較してストレート部27自体の強度が向上し、それによって蛇行部25のZ方向の剛性をより効果的に補強できる。また、金属製とすることで、単電池の発熱に起因するストレート部27の強度低下を著しく抑制できる。実施形態のストレート部27は実質的に真直な断面矩形のロッド状であるが、ストレート部はある程度屈曲していてもよいし、部分的な凹凸を有していてもよい。蛇行部25のZ方向の剛性を補強する効果は、実施形態のストレート部27のように実質的に真直であることがより好ましい。
【0063】
実施形態では、スペーサ4の各蛇行部25の突出部41,42は、それぞれ単電池3に直接的に当接ないし接触している。しかし、スペーサ4とその両側に配置された単電池3の間に介在物を配置し、この介在物が突出部41,42と単電池3との間に位置してもよい。つまり、突出部41,42は介在物を介して単電池と間接的に当接ないし接触してもよい。このような介在物は例えば絶縁性を有するシート材があるが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 組電池
2 単電池
4 スペーサ
25 蛇行部
26 スリット
27 ストレート部
28 凹部
29 凸部
30 冷却流路
31 冷却流路
32 面取り
33 面取り
41 第1の突出部
42 第2の突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10