特許第6248635号(P6248635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニー株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248635
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】センサ装置、解析装置および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20171211BHJP
   A63B 69/38 20060101ALI20171211BHJP
   A63B 49/00 20150101ALI20171211BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20171211BHJP
   G01H 1/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   A63B69/00 504C
   A63B69/38 B
   A63B49/00
   G01B21/00 D
   G01H1/00 F
【請求項の数】18
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-542913(P2013-542913)
(86)(22)【出願日】2012年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2012077316
(87)【国際公開番号】WO2013069447
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2011-244345(P2011-244345)
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】山下 功誠
(72)【発明者】
【氏名】松永 英行
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/024031(WO,A1)
【文献】 特開2006−323589(JP,A)
【文献】 特表2011−512952(JP,A)
【文献】 特開2009−295002(JP,A)
【文献】 特開平11−271183(JP,A)
【文献】 特開2011−187076(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/069698(WO,A1)
【文献】 米国特許第5056783(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0061076(US,A1)
【文献】 大舘 淳,岩原 光男,鈴木 芳,長松 昭男,モード解析によるテニスラケットの振動特性と構造最適化の研究,日本機械学会論文集(C編),日本,一般社団法人日本機械学会,2006年 6月25日,第72巻,第718号,第1751-1758頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00−71/16
A63B 49/00−60/64
G06F 3/03
G06F 3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面を有する第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの、第1のオブジェクトの振動状態の変化を検出して振動データを出力するセンサと、
前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分、かつ、前記第1のオブジェクトの前記第1の面または前記第2の面のいずれか一方で、前記センサを前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持する保持部と、
前記センサによって検出される単一の振動データを、該振動データを解析して前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置と、前記接触位置が前記第1のオブジェクトの第1の面であったか第2の面であったかを識別する解析装置に送信を行う通信部と、
前記振動データによって示される振動の振幅が所定の閾値以上である場合に、前記通信部に前記送信を行わせる制御部と
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記センサは、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突したときに前記第1のオブジェクトに発生する振動を検出して前記振動データを出力する、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1のオブジェクトは、打具であり、
前記第2のオブジェクトは、前記打具に衝突する被打物である、請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記センサは、所定の振動パターンで振動する前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触したことによる前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を検出して前記振動データを出力する、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1のオブジェクトに前記所定の振動パターンで振動を加える加振部をさらに備える、請求項4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
ユーザに情報を呈示する出力部をさらに備え、
前記通信部は、前記解析装置から前記接触位置に関する情報を受信し、
前記出力部は、前記接触位置に関する情報を前記ユーザに呈示する、請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項7】
第1の面と第2の面を有する第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分、かつ、前記第1の面または前記第2の面のいずれか一方で、前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する通信部と、
前記振動データの振動特性と、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置と、前記接触位置が前記第1のオブジェクトの第1の面であったか第2の面であったかを識別する識別部と
を備える解析装置。
【請求項8】
前記通信部は、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突したときに前記第1のオブジェクトに発生する振動を前記センサが検出した前記振動データを受信し、
前記識別部は、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突した衝突位置を識別する、請求項7に記載の解析装置。
【請求項9】
前記第1のオブジェクトは、打具であり、
前記第2のオブジェクトは、前記打具に衝突する被打物である、請求項8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記衝突位置に関する情報をユーザに呈示する出力部をさらに備える、請求項9に記載の解析装置。
【請求項11】
前記出力部は、前記衝突位置である確率が高い順に位置を示すリストを前記ユーザに呈示する、請求項10に記載の解析装置。
【請求項12】
前記出力部は、前記衝突位置を示すマップを前記ユーザに呈示する、請求項10に記載の解析装置。
【請求項13】
前記通信部は、所定の振動パターンで振動する前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触したことによる前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を前記センサが検出した前記振動データを受信する、請求項7に記載の解析装置。
【請求項14】
前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分に設定された位置群の中の位置ごとの振動特性が記憶された記憶部をさらに備え、
前記識別部は、前記位置群の中の1または複数の位置として前記接触位置を識別する、請求項7に記載の解析装置。
【請求項15】
前記記憶部には、前記位置群の中の少なくとも一部の位置に対応付けられるコマンドが記憶され、
前記識別部は、前記識別された接触位置に対応する前記コマンドを特定する、請求項14に記載の解析装置。
【請求項16】
前記通信部は、前記特定されたコマンドを外部装置に送信する、請求項15に記載の解析装置。
【請求項17】
前記記憶部には、前記位置群の中の所定の位置を組み合わせたパターンに対応付けられるコマンドが記憶され、
前記識別部は、前記識別された接触位置からなるパターンに対応する前記コマンドを特定する、請求項14に記載の解析装置。
【請求項18】
第1の面と第2の面を有する第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分、かつ、前記第1の面または前記第2の面のいずれか一方で、前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する機能と、
前記振動データの振動特性と、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置と、前記接触位置が前記第1のオブジェクトの第1の面であったか第2の面であったかを識別する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラムが記憶された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサ装置、解析装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、センシングや解析を利用して、ユーザの運動を支援する技術が多く開発されてきている。かかる技術として、例えば、テニス、バドミントン、卓球、ゴルフ、野球など、打具を用いてボールを打つスポーツにおいて、ボールが打具にヒットした回数やヒットした位置を検出し、ユーザに情報として呈示するものがある。このような技術の例として、例えば特許文献1には、テニスラケットの打面やその周辺にセンサを配置し、打面にボールがヒットしたことを検出してその回数や位置をユーザに通知する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−194761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の技術では、テニスラケットの打面上の各位置に対応して多数のセンサが配置される。これによって、打面にボールがヒットした回数のみならず打面のどこにボールがヒットしたかをも検出することが可能である。しかしながら、このような多数のセンサは、ユーザが打具を購入後に取付けるには手間がかかりすぎる。予めセンサが組み込まれた打具を販売してもよいが、打具の価格が上昇し、またユーザは打具の買い替えがしづらくなる。また、数千分の1のフレームレートで撮影可能なハイスピードカメラを利用してボールが衝突する瞬間を撮影し、ボールがヒットした位置を画像から確認する方法も考えられるが、ハイスピードカメラは高価であり、また操作も煩雑であるため、ユーザが手軽に利用することは難しい。
【0005】
また、上記の特許文献1に記載の技術は、あるオブジェクト(テニスラケット)に他のオブジェクト(ボール)が接触した位置を検出する技術ともいえる。他の分野におけるこのような技術として、例えばタッチパネルがよく知られている。タッチパネルも、検出対象の領域をカバーするように配置されたセンサの出力を利用して、あるオブジェクト(画面)に他のオブジェクト(指)が接触した位置を検出するという点で、特許文献1に記載の技術に類似している。かかる技術では、検出対象の領域が大きくなれば、その分だけ多くのセンサを配置する必要があり、装置の構成が複雑になっていた。
【0006】
そこで、本開示では、より簡単な構成で、あるオブジェクトに他のオブジェクトが接触した位置を検出することが可能な、新規かつ改良されたセンサ装置、解析装置および記憶媒体を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの、第1のオブジェクトの振動状態の変化を検出して振動データを出力するセンサと、上記第1のオブジェクトの上記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で、上記センサを上記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持する保持部と、上記センサによって検出される単一の振動データを、該振動データを解析して上記第1のオブジェクトに上記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する解析装置に送信する通信部とを含むセンサ装置が提供される。
【0008】
また、本開示によれば、第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの上記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、上記第1のオブジェクトの上記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で上記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する通信部と、上記振動データの振動特性と、上記第1のオブジェクトの上記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、上記第1のオブジェクトに上記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する識別部とを含む解析装置が提供される。
【0009】
さらに、本開示によれば、第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの上記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、上記第1のオブジェクトの上記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で上記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する機能と、上記振動データの振動特性と、上記第1のオブジェクトの上記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、上記第1のオブジェクトに上記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する機能とをコンピュータに実現させるためのプログラムが記憶された記憶媒体が提供される。
【0010】
本開示によれば、第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で保持されたセンサによって取得される単一の振動データの解析によって、第1のオブジェクト上で第2のオブジェクトが接触した位置が識別される。接触位置にセンサが設けられなくてもよいため、第1のオブジェクトに設置する装置の構成がより簡単になる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本開示によれば、より簡単な構成で、あるオブジェクトに他のオブジェクトが接触した位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の第1の実施形態の全体構成を示す図である。
図2】本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3A】本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置がラケットに装着された状態を正面から見た図である。
図3B】本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置がラケットに装着された状態を側面から見た図である。
図4】本開示の第1の実施形態においてセンサ装置をラケットに装着する方法の一例を示す図である。
図5】本開示の第1の実施形態においてセンサ装置をラケットに装着する方法の別の例を示す図である。
図6】本開示の第1の実施形態に係る解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7】本開示の第1の実施形態において予め設定されるラケット上の位置群の例を示す図である。
図8】本開示の第1の実施形態におけるラケット上の位置ごとの振動特性の例を示す図である。
図9】本開示の第1の実施形態における衝突位置の推定について説明するための図である。
図10】本開示の第1の実施形態における衝突位置の推定についてさらに説明するための図である。
図11】本開示の第1の実施形態における衝突位置識別処理の第1の例を示すフローチャートである。
図12】本開示の第1の実施形態における衝突位置識別処理の第2の例を示すフローチャートである。
図13】本開示の第1の実施形態における結果表示の第1の例を示す図である。
図14】本開示の第1の実施形態における結果表示の第2の例を示す図である。
図15】本開示の第2の実施形態の全体構成を示す図である。
図16】本開示の第2の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図17】本開示の第2の実施形態における処理を概略的に示す図である。
図18】本開示の第2の実施形態における処理の第1の例を示すフローチャートである。
図19】本開示の第2の実施形態における処理の第2の例を示すフローチャートである。
図20】本開示の第2の実施形態における第1の変形例を示す図である。
図21】本開示の第2の実施形態における第2の変形例を示す図である。
図22】本開示の第2の実施形態における第3の変形例を示す図である。
図23】本開示の第2の実施形態における第4の変形例を示す図である。
図24】本開示の第2の実施形態における第5の変形例を示す図である。
図25】情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態
1−1.全体構成
1−2.センサ装置の構成
1−3.解析装置の構成
1−4.衝突位置識別の原理
1−5.衝突位置識別の処理例
1−6.結果の表示例
2.第2の実施形態
2−1.全体構成
2−2.センサ装置の構成
2−3.処理例
2−4.変形例
3.第3の実施形態
4.第4の実施形態
5.補足
【0015】
(1.第1の実施形態)
まず、図1図14を参照して、本開示の第1の実施形態について説明する。本実施形態では、センサ装置がスポーツで用いられる打具に装着され、解析装置が打具(第1のオブジェクト)にボール(第2のオブジェクト)が衝突(接触)した位置を識別する。
【0016】
(1−1.全体構成)
図1を参照して、本開示の第1の実施形態の全体構成について説明する。図1は、本開示の第1の実施形態の全体構成を示す図である。
【0017】
図1を参照すると、本開示の第1の実施形態では、ラケット12に装着されるセンサ装置100と、センサ装置100と通信する解析装置200とを含むシステム10が提供される。
【0018】
ここで、ラケット12は、テニスでボール14を打つための打具である。以下で説明する第1の実施形態では、打具(第1のオブジェクト)としてラケット12を例として説明するが、打具の例はこれには限られない。後述するように、本実施形態では、打具にボール(第2のオブジェクト)が衝突したときの振動に基づいて、ボールが衝突した打具上の位置が識別される。従って、スポーツに用いられてボールの衝突によって振動が発生する打具、例えばバドミントンのラケット、卓球のラケット、ゴルフのクラブ、野球のバットなど、あらゆるスポーツで用いられる打具について、本実施形態が適用可能である。打具(第1のオブジェクト)に衝突する被打物(第2のオブジェクト)も、ボールには限られず、例えばバドミントンのシャトルなどであってもよい。
【0019】
センサ装置100は、ラケット12に装着され、ラケット12にボール14が衝突したときの振動を検出して、検出結果を振動データとして解析装置200に送信する。解析装置200は、センサ装置100から受信される振動データを解析して、ボール14が衝突したラケット12上の位置を識別する。なお、簡単のため、ボール14が衝突したラケット12上の位置を、以下では単に衝突位置ともいう。解析装置200による識別の結果に関する情報は、例えば解析装置200からユーザに向けて出力されてもよく、また解析装置200からセンサ装置100に送信されて、センサ装置100からユーザに向けて出力されてもよい。
【0020】
このようなシステム10によって、ラケット12を用いてテニスをプレーするユーザは、ラケット12のどの部分にボール14が衝突したか、つまり、自分がラケット12のどの部分でボール14を打ったかを知ることができる。ここで、ラケット12には、スイートスポットと呼ばれる、ボール14を最も効果的に打てるとされる部分がある。例えば、このスイートスポット付近でボール14を打っている割合によって、ユーザのテニスの習熟度を推定することができる。また、ラケット12でボール14を打つことによってユーザの手などに伝わる振動や衝撃は、ラケット12のどの部分でボール14を打ったかによって変化し、スイートスポット付近でボール14を打つ場合が最も小さい。それゆえ、ボール14を打っている位置の分布によって、テニスのプレーによるユーザの身体的な負担を推定することもできる。
【0021】
なお、システム10に、さらに別のセンサや情報取得手段を付加し、これらから得られた情報と、上記の情報を組み合わせることで、さらに多彩かつ有用な情報をユーザに提供することも可能である。
【0022】
以下では、上記のセンサ装置100および解析装置200のそれぞれの構成について詳しく説明し、さらに、本開示の第1の実施形態においてラケット12にボール14が衝突(接触)した位置を識別する原理、処理の例、および結果の表示例について説明する。なお、本明細書において、“第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが衝突すること”は、“第1のオブジェクトに振動が発生するような状態(運動量が大きい、または接触時間が短い、など)で、第1のオブジェクトが第2のオブジェクトが接触すること”を意味する。つまり、本明細書において、“衝突”は“接触”の一態様として説明される。
【0023】
(1−2.センサ装置の構成)
次に、図2図5を参照して、本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置の構成について説明する。図2は、本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置の機能構成の一例を示すブロック図である。図3Aは、本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置がラケットに装着された状態を正面から見た図である。図3Bは、本開示の第1の実施形態に係るセンサ装置がラケットに装着された状態を側面から見た図である。図4は、本開示の第1の実施形態においてセンサ装置をラケットに装着する方法の一例を示す図である。図5は、本開示の第1の実施形態においてセンサ装置をラケットに装着する方法の別の例を示す図である。
【0024】
(機能構成)
図2を参照すると、センサ装置100は、センサ110と、増幅器122と、通信部124と、制御部126と、メモリ128と、出力部130とを含む。増幅器122、通信部124、制御部126、およびメモリ128は、まとめて回路部120とも呼ばれる。
【0025】
センサ110は、ラケット12にボール14が衝突したときの振動を検出して振動データを出力するセンサである。センサ110は、圧電素子(ピエゾ素子)、ひずみゲージ、または加速度センサなどによって実現される。これらの中で、例えば圧電素子のフィルム型のものを用いると、検出される周波数帯やダイナミックレンジが広く、また耐水性や耐衝撃性に優れており、ラケット12の使用に耐えて安定的に振動を検出できるという利点がある。
【0026】
増幅器122は、センサ110によって検出される振動データを増幅する場合に設けられる。例えば、センサ110がフィルム型の圧電素子であるような場合には、圧電素子から出力される電流が小さいため、増幅器122としてチャージアンプを用いることで、振動による圧電素子の静電容量の変化だけを増幅することが可能である。増幅器122には、この他にも、センサ110の種類に応じて適切な増幅回路が用いられうる。
【0027】
通信部124は、センサ110から出力され、増幅器122によって必要に応じて増幅された振動データを、解析装置200に送信する通信インターフェースである。振動データの送受信には、例えば無線通信が用いられる。通信方式は特に限定されないが、例えば解析装置200がセンサ装置100の近くにある場合には、Bluetooth(登録商標)や無線LAN(Local Area Network)などの近距離無線通信を用いることが可能である。また、通信部124は、送信した振動データの解析結果として、衝突位置に関する情報を、解析装置200から受信してもよい。
【0028】
制御部126は、例えばメモリ128に格納されたプログラムによって動作するCPU(Central Processing Unit)によって実現され、センサ装置100の各部を制御する。本開示の第1の実施形態では、制御部126は、ボール14の衝突時に選択的に振動データを解析装置200に送信するように、通信部124を制御する。より具体的には、制御部126は、増幅器122から通信部124に入力される振動データによって示される振動の振幅を取得し、この振幅が所定の閾値以上である場合に通信部124が振動データを解析装置200に送信するように制御してもよい。何らかのデータを解析装置に送信する場合、通信が持続することによって電力消費が大きくなることは望ましくない場合がある。そこで、上記のように、ラケット12にボール14が衝突していない間は、通信部124による振動データの送信を休止させ、通信に要する電力を節約することができる。もちろん、このような制御部126による通信部124の制御をせず、センサ装置100の構成を簡略化してもよい。
【0029】
また、制御部126は、通信部124が解析装置200から受信した衝突位置に関する情報を、ラケット12のユーザに呈示する情報として後述する出力部130に提供してもよい。
【0030】
メモリ128は、回路部120に設けられるRAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などによって提供され、センサ装置100の動作に用いられる各種のデータを一時的または永続的に格納する。メモリ128は、例えば制御部126の機能を実現するCPUが動作するためのプログラムを格納する。また、メモリ128は、センサ110によって出力される振動データや、通信部124が受信する衝突位置に関する情報を、バッファとして一時的に格納してもよい。
【0031】
増幅器122、通信部124、制御部126、およびメモリ128を含む回路部120は、センサ装置100の一部としてラケット12に装着される。ラケット12は、屋外で使用される場合もあり、また汗などの水分が付着する可能性もあるため、回路部120には、防水加工がされていることが望ましい。また、ラケット12には、ボール14を打つときや、ユーザが移動するときなどに振動が発生するため、回路部120には、防振加工がされていることが望ましい。かかる防水加工および防振加工として、例えば、回路部120を樹脂コーティングしてもよい。
【0032】
出力部130は、通信部124が解析装置200から受信した衝突位置に関する情報をラケット12のユーザに呈示する。この情報の呈示は、例えば視覚的なものであってもよく、また音声を用いたもの、あるいは振動を用いたものであってもよい。出力部130は、情報の呈示の仕方に応じて、視覚的な情報を呈示するLED(Light Emitting Diode)やディスプレイ、音声で情報を呈示するスピーカやブザー、または振動によって情報を呈示するアクチュエータなど、適切な出力装置として実現される。
【0033】
上記の出力部130の例のうち、アクチュエータは、例えばセンサ110として用いられる圧電素子に通電することによって実現されてもよい。圧電素子は、通電することによってアクチュエータとして用いることも可能である。また、スピーカは、振動データを増幅してそのまま音声として再生するものであってもよい。もちろん、通信部124が衝突位置に関する情報を受信しない場合には、出力部130は設けられなくてもよい。
【0034】
(ラケットへの装着)
図3Aおよび図3Bを参照すると、本開示の第1の実施形態において、センサ装置100は、ラケット12のシャフト部分12sからグリップ部分12gにかけての部分に装着される。図示された例では、シャフト部分12sにセンサ110が、グリップ部分12gに回路部120が、それぞれ装着される。なお、出力部130は、付加的な構成要素であるため図示されていないが、例えば回路部120と同じ部分に装着されてもよい。
【0035】
センサ110は、図示されているように、シャフト部分12sの表面に装着される。シャフト部分12sは、ラケット12でボール14が本来衝突する部分、いわゆるフェイスの部分とは異なる部分である。この部分にセンサ110が装着されることによって、ユーザがラケット12でボール14を打つ動作へのセンサ110の影響が少なくなる。より具体的には、ラケット12の重心から遠いフェイス部分にセンサ110を装着した場合、ラケット12の重心が変化してユーザがボール14を打つ動作に影響が出るのに対し、ラケット12の重心に近いシャフト部分12sにセンサ110を装着した場合、そうした影響は少ない。また、シャフト部分12sは、ユーザがラケット12を把持するグリップ部分12gからも離れているため、シャフト部分12sに装着されたセンサ110が、ユーザがラケット12を把持するときに邪魔になるというようなこともない。さらに、ボール14が直接衝突することが少ないシャフト部分12sにセンサ110を装着することによって、例えば衝撃によるセンサ110の故障を防ぐことができる。
【0036】
ここで、ラケット12は、表面および裏面を有するが、センサ110は、シャフト部分12sで、ラケット12の表面または裏面のいずれか一方に装着される。また、ラケット12は、略左右対称な形状を有するが、センサ110は、シャフト部分12sで、ラケット12の左側または右側のいずれか一方に装着される。このように、ラケット12の表裏または左右について非対称な位置にセンサ110を装着することで、後述するように、振動データを用いて衝突位置の表裏または左右を識別することが可能になる。
【0037】
回路部120は、図示されているように、グリップ部分12gの内側に装着される。一般的に、ラケット12のグリップ部分12gは、内側が空洞になっている。この空洞部分に回路部120を装着することによって、例えばラケット12の表面に突出部などを発生させることなく、センサ装置100を装着することができる。また、グリップ部分12gは、ボール14を打つときにユーザによって把持されている部分であるため、ラケット12の他の部分に比べてボール14を打つときの振動が弱く、例えば回路部120に含まれる回路部品などを衝撃から保護することができる。
【0038】
なお、図3Aおよび図3Bによって示されたセンサ装置100のラケット12への装着方法は一例であり、他にも様々な装着方法をとることが可能である。上記の例では、センサ110と回路部120とがラケット12の別々の部分に装着され、ラケット12の表面または内部に設けられる配線で接続されている。しかし、例えば、センサ110と回路部120とは、いずれもラケット12の同じ部分に装着されてもよい。具体的には、センサ110と回路部120とは、いずれもシャフト部分12sに装着されてもよい。また、センサ110と回路部120とは、いずれもグリップ部分12gに装着されてもよい。
【0039】
図4には、センサ装置100をラケット12のシャフト部分12sに装着する場合の装着部材の例が示されている。この場合の装着部材は、ベルト142である。ベルト142は、例えば面ファスナーで係止されるゴムベルトであり、シャフト部分12sに巻き付けられる。上記のように、シャフト部分12sに装着されるのは、センサ装置100のうちのセンサ110だけであってもよいし、またセンサ110と回路部120とを含むセンサ装置100の全体であってもよい。ベルト142を用いることによって、ラケット12に係合用の穴開けなどの加工をすることなく、またラケット12の表面に粘着材などを付着させることもなく、シャフト部分12sにセンサ装置100を装着することができる。それゆえ、センサ装置100をラケット12に着脱することが容易であり、ユーザがラケット12を買い換えて新しいラケット12にセンサ装置100を付け替えるといったようなことも簡単である。
【0040】
図5には、センサ装置100をラケット12のグリップ部分12gに装着する場合の装着部材の例が示されている。この場合の装着部材は、筐体144である。筐体144は、例えば樹脂などで形成され、グリップ部分12gの内側の空洞に対応した形状を有し、グリップ部分12gの内側に嵌合される。上記のように、グリップ部分12gに装着されるのは、センサ装置100のうちの回路部120だけであってもよいし、またセンサ110と回路部120とを含むセンサ装置100の全体であってもよい。筐体144を用いることによって、ラケット12に係合用の穴開けなどの加工をすることなく、またラケット12の表面に粘着材などを付着させることもなく、グリップ部分12gにセンサ装置100を装着することができる。また、グリップ部分12gの内側の空洞の形状が共通するラケット12であれば、ユーザがラケット12を買い換えて新しいラケット12にセンサ装置100を付け替えるといったようなことも簡単である。
【0041】
(1−3.解析装置の構成)
次に、図6を参照して、本開示の第1の実施形態に係る解析装置の構成について説明する。図6は、本開示の第1の実施形態に係る解析装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
(機能構成)
図6を参照すると、解析装置200は、通信部202と、解析部204と、識別部206と、データベース208と、メモリ210と、出力部212とを含む。
【0043】
解析装置200は、例えばスマートフォン、タブレット型PC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯用ゲーム機、または携帯用音楽プレーヤのような携帯可能な情報処理装置である。この場合、ラケット12のユーザが解析装置200を携帯することで、リアルタイムに解析の結果を知ることができる。もちろん、解析装置200は、ノート型またはデスクトップ型のPCなどの他の情報処理装置であり、通信回線を経由した通信によってセンサ装置100から振動データを受信してもよい。
【0044】
通信部202は、センサ装置100から振動データを受信する通信インターフェースである。センサ装置100について説明したように、振動データの送受信には、Bluetooth(登録商標)や無線LANなどの近距離無線通信が用いられてもよい。例えばセンサ装置100が連続的に振動データを送信するような場合、通信部202は、後述する解析部204の処理のために、受信した振動データをメモリ210に一時的に格納する。また、通信部202は、識別部206によって識別された衝突位置に関する情報を、センサ装置100に送信してもよい。
【0045】
解析部204は、例えばメモリ210に格納されたプログラムによって動作するCPUによって実現され、通信部202が受信した振動データを解析する。解析部204は、例えば、通信部202が連続的に受信する振動データから、ボール14がラケット12に衝突したときの振動に対応するインパクト区間の振動データを抽出する。この抽出の処理のために、通信部202は、受信した振動データをメモリ210に一時的に格納し、解析部204は、メモリ210から必要な区間の振動データを取り出してもよい。なお、上記のように、センサ装置100の制御部126によって、ボール14の衝突時に選択的に振動データが送信されるように制御される場合には、既にインパクト区間が抽出された状態であるため、解析部204はインパクト区間の抽出を実行しなくてもよい。
【0046】
また、解析部204は、振動データのインパクト区間について、振動の周波数を解析する。解析部204は、例えば高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を実行し、振動データによって表される振動の周波数スペクトルを取得する。
【0047】
識別部206は、例えばメモリ210に格納されたプログラムによって動作するCPUによって実現され、解析部204が抽出した振動データの振動特性と、ラケット12のボール14が衝突する位置ごとの振動特性とを比較することによって、ボール14が衝突したラケット12上の衝突位置を識別する。本開示の第1の実施形態では、予め定義されたラケット12上の位置群の中の位置ごとの振動特性がデータベース208に格納されている。識別部206は、データベース208にアクセスして、この位置ごとの振動特性を参照し、振動データの振動特性と最もよく符合する振動特性を有する位置を衝突位置として特定する。なお、ここで実行される処理の原理、およびその詳細については、後述する。
【0048】
ここで、識別部206によって識別された衝突位置に関する情報は、出力部212に提供されてもよく、通信部202を介してセンサ装置100に送信されてもよい。また、衝突位置に関する情報は、通信部202を介してさらに別の装置に送信されてもよい。さらに別の装置は、例えば各種のPCや、ネットワークを介してユーザにサービスを提供するサーバ装置などでありうる。
【0049】
データベース208は、解析装置200に設けられるRAM、ROM、ストレージ装置またはリムーバブル記憶媒体によって実現され、予め定義されたラケット12上の位置群の中の位置ごとの振動特性を記憶する。後述するように、この振動特性は、周波数スペクトルでありえ、例えば所定の入力信号に対する出力信号の周波数スペクトル、または任意の入力信号に対する伝達関数として記憶される。
【0050】
メモリ210は、解析装置200に設けられるRAM、ROM、ストレージ装置またはリムーバブル記憶媒体によって実現され、解析装置200の動作に用いられる各種のデータを一時的または永続的に格納する。メモリ210は、例えば解析部204および識別部206を実現するCPUが動作するためのプログラムを格納する。また、メモリ210は、通信部202によって受信された振動データや、識別部206によって出力される衝突位置に関する情報を、バッファとして一時的に格納してもよい。
【0051】
出力部212は、識別部206によって出力される衝突位置に関する情報を、ユーザに呈示する。この情報の呈示は、例えば視覚的なものであってもよく、また音声を用いたもの、あるいは振動を用いたものであってもよい。出力部212は、情報の呈示の仕方に応じて、視覚的な情報を呈示するLEDやディスプレイ、音声で情報を呈示するスピーカやブザー、または振動によって情報を呈示するアクチュエータなど、適切な出力装置として実現される。
【0052】
(1−4.衝突位置識別の原理)
次に、図7図10を参照して、本開示の第1の実施形態における衝突位置識別の原理について説明する。図7は、本開示の第1の実施形態において予め設定されるラケット上の位置群の例を示す図である。図8は、本開示の第1の実施形態におけるラケット上の位置ごとの振動特性の例を示す図である。図9は、本開示の第1の実施形態における衝突位置の推定について説明するための図である。図10は、本開示の第1の実施形態における衝突位置の推定についてさらに説明するための図である。
【0053】
(衝突位置候補の定義)
図7は、衝突位置の識別のために、予め設定されるラケット12上の位置群の例を示す。本開示の第1の実施形態では、このように、ラケット12上に所定の間隔で位置を定義し、かかる位置からなる位置群を、衝突位置の候補として扱う。なお、図示された例では、シャフト部分12sやグリップ部分12g、フレームの部分にも位置(1〜25と付番されている)が定義されているが、これは必ずしも必要ではなく、フェイス部分の位置(26〜51と付番されている)だけが定義されてもよい。
【0054】
図8は、上記のように設定された位置群の中の位置ごとの振動特性の例を示す。ここでいう振動特性は、それぞれの位置に所定の振動を入力信号として入力した場合の、センサ110の位置までの伝達関数(FRF:Frequency Response Function)である。図では、上記の位置群のうちの3つの位置(41番、39番、44番)について、それぞれの位置に同じインパルス入力を与えた場合の伝達関数が示されている。このように、同じ入力が与えられた場合でも、伝達関数は、ラケット12上の位置によって異なる。それゆえ、逆にいえば、ボール14の衝突が振動として伝達されるときの伝達関数がわかれば、ボール14が衝突したラケット12上の位置を推定することが可能である。
【0055】
このような振動の解析手法は、モーダル解析として知られている。モーダル解析は、それぞれの物体に固有の振動特性、例えば固有モードや固有振動数、モード減衰比などを解析することである。特に、固有振動数は、伝達関数の極(ピーク)として観測され、このピークの先鋭度が高いほど、モード減衰比が低いことを意味する。一般的に、物体の振動は、複数の固有振動数での振動が重ね合わせられたものとして表現される。本開示の第1の実施形態は、ラケット12にもこのような固有の振動特性があることに着目し、モーダル解析の手法を応用して、ラケット12の振動から加振点、つまりボール14の衝突位置を推定することを目指すものである。
【0056】
図9には、ラケット12がある振動モードで振動する場合の振動の波形が示されている。モーダル解析の知見によれば、物体には、複数の固有振動数にそれぞれ対応する振動モード(振動数が低いものから順に1次、2次、3次、・・・とも呼ばれる)があり、物体の振動は、それぞれの振動モードでの振動の重ねあわせとして説明される。それぞれの振動モードによって、振動する場合の波形は決まっている。図示された例は、あるラケット12が3次振動モード(例えば170Hz)で振動する場合の縦断面方向の波形である。この場合、波形には2つの節N0,N1をもつ定在波が発生する。節N0はグリップ部分であり、節N1はいわゆるスイートスポットである。
【0057】
ここで、ラケットのスイートスポットと呼ばれる部分について説明する。一般的にいうスイートスポットは、(i)COP(Center Of Percussion)、(ii)バイブレーションノード(Vibration Node)、または(iii)パワーポイント(Power Point)のいずれかを指す。(i)COPは、ボールを打ったときにラケットを持つ手に伝わる衝撃が最小になる位置、いわゆる撃心であり、野球のバットであれば芯と呼ばれる部分である。COPの位置は、ラケットが振られる速度によって変化する。(ii)バイブレーションノードは、ボールを打ったときのラケットの振動が最小になる位置である。上記のように、ラケットは固有の振動特性を有するため、バイブレーションノードの位置はラケットが振られる速度やボールの当たり方によっては変化しない。(iii)パワーポイントは、ボールに伝わるパワーが最大になる位置である。パワーポイントは、ボールが最もよく跳ねるポイントであり、ラケットが振られる速度によって位置が変化する。本開示の第1の実施形態では、これらのうち(ii)バイブレーションノードを、スイートスポットとして扱う。
【0058】
上記のようにスイートスポットを定義した場合、図9に示される波形において、節N1の位置がスイートスポットにあたるということは容易に理解されるであろう。つまり、節N1の位置にボール14が衝突した場合、その位置は3次振動モードに関しては節であるために、3次振動モード(例えば170Hz)での振動は励起されない。そうではなく、節N1から離れた位置にボール14が衝突した場合、ラケット12に3次振動モードでの振動が励起される。
【0059】
図示された例において、センサ110は、3次振動モードの腹に近い位置にあるため、ボール14が節N1から離れた位置に衝突した場合、励起される3次振動モードによる振動成分が大きく検出される。逆にいうと、センサ110で3次振動モードによる振動成分が大きく検出された場合、ボール14は、節N1から離れた位置に衝突した可能性が高いと推定される。
【0060】
図10には、ボール14の衝突位置の違いによって生じる、ラケット12の振動の位相の違いが示されている。図には、図9と同様に、あるラケット12が3次振動モードで振動する場合の縦断面方向の波形が示されている。(a)の例では、ボール14が節N1からグリップ側に離れた位置に衝突し、(b)の例では、ボール14が節N1からグリップとは反対側に離れた位置に衝突している。
【0061】
ここで、図9を参照して説明したように、(a)、(b)の例ともに、ボール14が節N1から離れた位置に衝突しているため、ラケット12には3次振動モードでの振動が励起される。しかしながら、センサ110の位置において検出される振動は、(a)の例と(b)の例とで位相が逆になる。(a)の場合は、ボール14の衝突位置が節N1を挟んでセンサ110と反対側であるため、衝突直後には、センサ110の位置が波形の山になる。一方、(b)の場合は、ボール14の衝突位置が節N1からみてセンサ110と同じ側であるため、衝突直後には、センサ110の位置が波形の谷になる。
【0062】
なお、ラケット12の裏面のある位置にボール14が衝突した場合の振動の位相は、表面の同じ位置にボール14が衝突した場合の振動の位相の逆位相になる。それゆえ、位相が反転した同様の波形を識別することによって、ボール14がラケット12の表面に衝突したか裏面に衝突したかを識別することが可能である。
【0063】
以上で図9および図10を参照して説明したように、ボール14の衝突位置によって、ラケット12に生じるそれぞれの振動モードでの振動の振幅および位相が異なる。そのような各振動モードでの振動が重ね合わせられた結果、図8に示すように、ボール14の衝突位置によってセンサ110によって検出される振動の特性が変化する。従って、センサ110によって検出される振動の特性を解析することによって、ボール14の衝突位置を検出することができる。
【0064】
なお、センサ110が、略左右対称な形状を有するラケット12の対称軸上に設けられている場合、対称軸について対称な2つの位置にボール14が衝突した場合にセンサ110によって検出される振動の特性はほぼ同じになる。また、センサ110が、ラケット12の表面と裏面の間、例えば側面に設けられている場合、表面と裏面のそれぞれ同じ位置にボール14が衝突した場合にセンサ110によって検出される振動の特性はほぼ同じになる(センサ110が装着面に垂直な方向の振動を検出する場合。センサ110が装着面に平行な方向の振動を検出する場合はこの限りではない)。それゆえ、上述のように、衝突位置の推定においてラケット12の表裏または左右を識別するためには、ラケット12の表裏または左右について非対称な位置にセンサ110を装着することが望ましい。
【0065】
(1−5.衝突位置識別の処理例)
続いて、図11および図12を参照して、本開示の第1の実施形態における衝突位置識別の処理の2つの例について説明する。図11は、本開示の第1の実施形態における衝突位置識別処理の第1の例を示すフローチャートである。図12は、本開示の第1の実施形態における衝突位置識別処理の第2の例を示すフローチャートである。
【0066】
(第1の処理例)
図11を参照すると、第1の処理例では、まず、ステップS101において、センサ装置100のセンサ110が、ラケット12の振動を検出する。検出された振動は、振動データとして通信部124から解析装置200に送信される。
【0067】
次に、ステップS103において、解析装置200の解析部204が、通信部202によって受信された振動データによって示される振動の振幅が閾値以上であるか否かを判定する。これは、例えば、ラケット12の振動が、ラケット12自体の変位によるものか、ボール14の衝突によるものかの判定である。
【0068】
上記のステップS103で、振動の振幅が閾値以上であると判定された場合、ステップS105において、解析部204が、インパクト区間の振動データを抽出する。インパクト区間は、ラケット12にボール14が衝突した後の所定の時間のラケット12の振動を示す振動データの区間である。一方、ステップS103で、振動の振幅が閾値以上であると判定されなかった場合、解析部204は、それ以上の解析には進まず、処理はステップS101に戻る。
【0069】
なお、センサ装置の制御部126が、ボール14の衝突時に選択的に振動データを解析装置200に送信するように通信部124を制御する場合、上記のステップS103およびステップS105の処理は、この通信部124および制御部126の処理によって代替されうる。この場合、例えば解析装置200の通信部202は、抽出されたインパクト区間の振動データを受信し、解析部204はそれをそのまま解析してもよい。
【0070】
次に、ステップS107において、解析部204が、振動データの周波数解析を実行して、振動データ、つまりセンサ110からの出力信号の周波数スペクトルY(jω)を算出する。
【0071】
次に、ステップS109において、識別部206が、ラケット12上の位置P(m=1,2,3,・・・)のそれぞれについて、データベース208に格納された伝達関数(FRF)H(jω)を用いて、振動データの周波数スペクトルY(jω)から入力信号の周波数スペクトルX(jω)を算出する。なお、ここで、これらの周波数スペクトルX(jω)およびY(jω)、ならびに伝達関数H(jω)は、複素数で表現され、周波数の振幅情報と位相情報とを同時に含む信号である。jは虚数単位、ωは角速度をそれぞれ表す。
【0072】
次に、ステップS111において、識別部206が、ラケット12上の位置Pのそれぞれについて、データベース208に格納された入力信号の周波数スペクトルX(jω)と、振動データから算出された入力信号の周波数スペクトルX(jω)との差分を算出する。この差分は、例えばベクトル距離として算出される。ベクトル距離の算出には、例えば内積計算やユークリッド距離計算が用いられる。
【0073】
次に、ステップS113において、識別部206が、入力信号の周波数スペクトルX(jω)と、振動データから算出された入力信号の周波数スペクトルX(jω)との差分が最小になるラケット12上の位置Pを、ボール14の衝突位置として識別する。
【0074】
以上で説明した第1の処理例で用いられる衝突位置識別のためのアルゴリズムについて、さらに説明する。
【0075】
ラケット12上の位置Pにボール14が衝突したときの当該位置への入力信号を、周波数スペクトルX(jω)の振動とする。この振動は、ラケット12内を伝達されて、センサ110の位置では周波数スペクトルY(jω)の振動の出力信号として検出される。ここで、位置Pからセンサ110の位置までの伝達関数(FRF)をH(jω)とすると、
(jω)=H(jω)・X(jω) ・・・(式1)
という関係が成り立つ。
【0076】
第1の処理例では、上記の知見に基づき、予め、ラケット12上の位置Pのそれぞれにボール14を衝突させた(周波数スペクトルX(jω)の入力信号を与えた)場合のセンサ110の位置での振動(周波数スペクトルY(jω))を測定し、位置Pのそれぞれについての伝達関数H(jω)を算出している。伝達関数H(jω)は、例えば位置Pを示すラベルとともにデータベース208に格納される。
【0077】
ここで、上記の式1を逆にすると、
X(jω)=Y(jω)・H−1(jω) ・・・(式2)
という関係が成り立つ。ここで、H−1(jω)は、伝達関数H(jω)の逆行列を表す。上記のステップS109では、識別部206が、位置Pのそれぞれについて、この式2を用いて、振動データの周波数スペクトルY(jω)から入力信号の推定周波数スペクトルX(jω)を算出する。具体的には、識別部206は、
(jω)=Y(jω)・H−1(jω) ・・・(式3)
という式によって、入力信号の推定周波数スペクトルX(jω)を算出する。
【0078】
実際には、ボール14が衝突して周波数スペクトルX(jω)の入力信号が与えられたのは、位置Pのうちのいずれかの位置である。それゆえ、上記の式3によって算出される入力信号の推定周波数スペクトルX(jω)が、実際の周波数スペクトルX(jω)に近い形になるのは、実際にボールが衝突した位置Pについての伝達関数の逆行列H−1(jω)が用いられた場合に限られる。それ以外の場合は、実際の振動の伝達とは異なる伝達関数の逆行列H−1(jω)が用いられることになるため、式3によって算出される推定入力信号の周波数スペクトルX(jω)は、周波数スペクトルX(jω)とは異なる形、例えば意味をなさないノイズ波形になる。なお、ここで、周波数スペクトルX(jω)は、上述のモーダル解析によって予め測定されるものとする。この周波数スペクトルX(jω)は、ボールの衝突信号であるため、衝撃波(インパルス信号)に近い時間波形を有する。実際にラケット12にボールが衝突した場合、ボールが衝突した位置Pにのみ、この衝突波形が表れることになる。また、この例において、推定入力信号の周波数スペクトルX(jω)と周波数スペクトルX(jω)との比較では、上述のベクトル距離の計算によって尤度(類似度)を求めるものとする。
【0079】
なお、上記の説明では、入力信号の周波数スペクトルとして、位置Pすべてに共通の周波数スペクトルX(jω)を用いているが、位置Pそれぞれで異なる周波数スペクトルX(jω)を用いてもよい。
【0080】
このようにして、第1の処理例では、「当該位置の伝達関数を用いて出力信号から入力信号を推定した場合に、もっともらしい推定入力信号が得られる位置」を、ラケット12上のボール14の衝突位置として識別する。
【0081】
(第2の処理例)
図12を参照すると、第2の処理例では、ステップS101〜ステップS107までが、上記の第1の処理例と同様の処理である。
【0082】
ステップS101〜ステップS107に続いて、ステップS209において、解析装置200の識別部206が、ラケット12上の位置Pのそれぞれについて、データベース208に格納されたモデル出力信号の周波数スペクトルY(jω)と、振動データの周波数スペクトルY(jω)との差分を算出する。この差分は、例えばベクトル距離として算出される。ベクトル距離の算出には、例えば内積計算やユークリッド距離計算が用いられる。
【0083】
次に、ステップS211において、識別部206が、モデル出力信号の周波数スペクトルY(jω)と、振動データの周波数スペクトルY(jω)との差分が最小になるラケット12上の位置Pを、ボール14の衝突位置として識別する。
【0084】
以上で説明した第2の処理例で用いられる衝突位置識別のためのアルゴリズムについて、さらに説明する。
【0085】
上記の第1の処理例で説明したように、位置Pに加えられる入力信号の周波数スペクトルX(jω)、センサ110の出力信号の周波数スペクトルY(jω)、および位置Pからセンサ110の位置までの伝達関数(FRF)H(jω)の間には、式1の関係が成り立つ。ここで、振動データの周波数スペクトルY(jω)から伝達関数H(jω)を同定することによって、ボールの衝突位置を識別することが可能である。以下、その方法を説明する。
【0086】
ラケット12にボール14が衝突した場合の入力信号は、ボール14の衝突が瞬間的なものであるため、インパルス信号に近い特性をもっている。入力信号の周波数スペクトルX(jω)がインパルス信号の周波数スペクトルに近いと仮定した場合、出力信号の周波数スペクトルY(jω)は、限りなく伝達関数H(jω)に近い特性を有し、伝達関数H(jω)に近似することが可能である。
【0087】
第2の処理例では、上記の知見に基づき、予め、ラケット12上の位置Pのそれぞれにボール14を衝突させた(インパルス信号に近い周波数スペクトルX(jω)の入力信号を与えた)場合のセンサ110の位置での振動(周波数スペクトルY(jω))を測定している。周波数スペクトルY(jω)は、例えば位置Pを示すラベルとともにデータベース208に格納される。上述のように、周波数スペクトルY(jω)は、伝達関数H(jω)に近い特性を有し、ラケット12の固有振動成分を表す信号とみなすことが可能である。
【0088】
上記のステップS209〜ステップS211では、識別部206が、データベース208に格納された位置Pのそれぞれについての周波数スペクトルY(jω)を機械学習の“教師データ”として用いて、実際にボール14が衝突したときの振動データの周波数スペクトルY(jω)を、位置Pのいずれかに分類する。上記のように周波数スペクトルY(jω)は、“教師データ”として用いられるため、位置Pごとに複数回、例えば数十回測定されたもの(サンプル)がそれぞれデータベース208に格納されていてもよい。機械学習を利用することによって、例えば周波数スペクトルのばらつきに対するロバスト性が増し、識別率が向上するという利点がある。
【0089】
このようにして、第2の処理例では、「サンプルとして用意されている各位置の出力信号を教師データとして、実際の出力信号を分類する」ことによって、ラケット12上のボール14の衝突位置を識別する。
【0090】
(1−6.結果の表示例)
続いて、図13および図14を参照して、本開示の第1の実施形態における衝突位置識別の結果の表示例について説明する。図13は、本開示の第1の実施形態における結果表示の第1の例を示す図である。図14は、本開示の第1の実施形態における結果表示の第2の例を示す図である。
【0091】
以下では、本開示の第1の実施形態において、衝突位置識別の結果を表示部への表示として出力する場合の例について説明する。上述のように、衝突位置識別の結果は、表示部への表示によってユーザに視覚的に呈示される以外にも、音声による情報の呈示や、振動による情報の呈示によって出力されうる。かかる出力の方法自体については公知であり、またその内容についても以下の説明から類推可能である。従って、以下の説明は、衝突位置識別の結果の出力を表示による出力に限定するものではない。
【0092】
図13の例では、ラケット12の画像の上に、ボール14が衝突したと推定される位置がマッピングされて表示されている。上記の処理例の説明で述べたように、本開示の第1の実施形態において、ボール14の衝突位置は、ラケット12上に予め設定された位置群に含まれる位置のうち、どの位置が衝突位置により近いかを推定することによって識別される。従って、“最も近いと推定される位置”、“2番目に近いと推定される位置”、“3番目に近いと推定される位置”、・・・といったように、複数の位置が衝突位置として抽出される場合もある。この場合、複数の位置は、その位置が衝突位置である確率とともに抽出されてもよい。
【0093】
図示された例では、ボール14の衝突位置であると推定されるラケット12上の7つの位置が、その位置が衝突位置である確率が高い順を示す記号とともに表示されている。“T”と表示されている位置が衝突位置である確率が最も高い位置であり、“2”がその次に衝突位置である確率が高い位置であり、以下同様に“3”、“4”、・・・、“7”と続く。このように、衝突位置をマップとしてユーザに呈示することによって、ユーザは直感的に衝突位置を把握することができる。
【0094】
図14の例では、ボール14の衝突位置である確率が高い位置およびそのデータが、リストとして表示されている。例えば、上記の第2の処理例のように、ラケット12上の位置について複数のサンプルデータが予め用意される場合、実際のボール14の衝突による振動が、“どの位置の”、“何番目のサンプルの”振動に近いか、という形で衝突位置の推定がなされうる。この場合、図示された例のように、サンプル単位の結果がそのままリストとしてユーザに呈示されてもよい。図において、例えばサンプル“37−3”は、“位置37の第3のサンプル”を示す。
【0095】
また、例えばk近傍法(k−NN法:k-Nearest Neighbor algorithm)によって、実際の振動に近いサンプルを所定の数抽出し、この抽出されたサンプルが最も多く属している位置を衝突位置として特定してもよい。図示された例において、例えばk近傍法(k=7)によって衝突位置を特定する場合、7サンプル中4サンプルが属する位置37が、衝突位置として特定される。また、機械学習には、一般的なSVM(Support Vector Machine)法を利用してもよい。
【0096】
衝突位置識別の結果の他の表示例として、例えば、衝突位置が存在する確率分布を、ラケット12上に等高線状に表示するなどしてもよい。
【0097】
(2.第2の実施形態)
次に、図15図24を参照して、本開示の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、センサ装置が様々な物体に設置され、解析装置が物体(第1のオブジェクト)にユーザの指など(第2のオブジェクト)が接触した位置を識別する。
【0098】
(2−1.全体構成)
図15を参照して、本開示の第2の実施形態の全体構成について説明する。図15は、本開示の第2の実施形態の全体構成を示す図である。
【0099】
図15を参照すると、本開示の第2の実施形態では、テーブル22に装着されるセンサ装置300と、センサ装置300と通信する解析装置200とを含むシステム20が提供される。
【0100】
ここで、テーブル22は、ユーザが指でタップする(ユーザの指が衝突する)ことによって振動する物体の一例である。以下の説明では、物体(第1のオブジェクト)としてテーブル22を例として説明するが、物体の例はこれには限られない。後述するように、本実施形態では、ユーザが指でオブジェクトをタップしたときの振動に基づいて、ユーザの指が接触した物体上の位置が識別される。従って、ユーザのタップによって振動する物体であれば、どのような物体であっても本実施形態が適用可能である。接触主体(第2のオブジェクト)も、ユーザの指には限られず、例えばスタイラスや指し棒などであってもよい。
【0101】
センサ装置300は、テーブル22上に配置され、ユーザがテーブル22の面をタップしたときの振動を検出して、検出結果を振動データとして解析装置200に送信する。解析装置200は、センサ装置300から受信される振動データを解析して、ユーザが指でタップしたテーブル22上の位置を識別する。なお、簡単のため、ユーザが指でタップしたテーブル22上の位置を、以下では単に接触位置ともいう。解析装置200による識別の結果は、例えば解析装置200自身、または解析装置200に接続される装置において実行されるコマンドを選択するために利用されてもよい。
【0102】
図示された例では、テーブル22には、“A”〜“F”という文字が表示されている。この表示は、例えばテーブル22に直接印刷されていてもよく、手書きで記入されていてもよく、シールとして貼られていてもよく、投影されていてもよく、また彫り込まれていてもよい。あるいは、テーブル22上に文字の形の別の板が配置されていてもよい。この例において、テーブル22上に表示された各文字の位置に関する情報は、予め解析装置200に提供され、例えばメモリに記憶されている。従って、解析装置200は、テーブル22上の接触位置を識別するとともに、接触位置に近い位置に表示された文字を特定することが可能である。従って、ユーザは、テーブル22上の各文字に対応する位置をタップすることによって、システム20を文字入力装置として利用することができる。なお、簡単のために図ではテーブル22上に6つだけ文字が表示されているが、実際には例えばキーボードを構成するさらに多くのアルファベットや数字が表示されてもよい。
【0103】
なお、システム20に、さらに別のセンサや情報取得手段を付加し、これらから得られた情報と、上記のセンサ装置300および解析装置200によって得られた情報とを組み合わせることで、ユーザによるさらに多彩な操作入力を取得することも可能である。
【0104】
以下では、上記のセンサ装置300の構成について詳しく説明する。なお、解析装置200の構成、およびオブジェクトの接触位置を識別する原理および処理の例は、上記の第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0105】
(2−2.センサ装置の構成)
次に、図16を参照して、本開示の第2の実施形態に係るセンサ装置の構成について説明する。図16は、本開示の第2の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
【0106】
図16を参照すると、センサ装置300は、センサ110と、回路部120と、ウェイト部342とを含む。なお、センサ110および回路部120は、上記の第1の実施形態におけるセンサ装置100と同様の構成要素である。回路部120は、増幅器122、通信部124、制御部126、およびメモリ128(いずれも図示せず)を含みうる。
【0107】
センサ110は、テーブル22の振動を検出して振動データを出力するセンサである。図示された例では、ウェイト部342の重みでセンサ装置300がテーブル22に密着する。従ってセンサ装置300に設けられるセンサ110は、テーブル22の振動が伝達される状態で保持される。センサ110は、例えば図示されたようにウェイト部342に埋め込まれるように配置されてテーブル22に密着し、直接的にテーブル22の振動を検出してもよい。あるいは、センサ110は、ウェイト部342の上面などに密着し、ウェイト部342から伝達されたテーブル22の振動を間接的に検出してもよい。
【0108】
回路部120に含まれる増幅器122、通信部124、制御部126、およびメモリ128は、いずれも上記の第1の実施形態と同様の機能を有する。つまり、センサ110によって検出された振動データは、必要に応じて増幅器122によって増幅され、通信部124によって解析装置200に向けて送信される。制御部126は、センサ装置300の各部を制御する。また、メモリ128は、センサ装置300の動作に用いられる各種のデータを一時的または永続的に格納する。
【0109】
なお、図示された例では、センサ装置300が出力部を含んでいないが、出力部を有する構成も可能である。この場合、出力部は、第1の実施形態におけるセンサ装置100の出力部130と同様の機能を有しうる。出力部130から出力される情報は、例えば、通信部124が解析装置200から受信した解析結果に関する情報でありうる。解析結果に関する情報は、例えばユーザがテーブル22上でどの文字の位置をタップしたか否かを示す情報でありうる。あるいは、解析結果に関する情報は、接触位置の解析が成功したか否か、つまりユーザのタップによる文字情報の入力が成功したか否かを示す情報であってもよい。情報は、視覚的な情報、音声情報、または振動などによって出力されうる。
【0110】
(2−3.処理例)
続いて、図17図19を参照して、本開示の第2の実施形態における処理の例について説明する。図17は、本開示の第2の実施形態における処理を概略的に示す図である。図18は、本開示の第2の実施形態における処理の第1の例を示すフローチャートである。図19は、本開示の第2の実施形態における処理の第2の例を示すフローチャートである。
【0111】
図17を参照すると、本実施形態では、テーブル22上の位置24をユーザが指などでタップしたときの振動をセンサ装置300が検出し、振動データを解析装置200に送信する。解析装置200は、例えば上記の第1の実施形態で図7図12を参照して説明したような処理によって、位置24をユーザの接触位置として識別し、その位置24の近傍に位置する文字26を、ユーザがテーブル22をタップすることによって入力する文字として特定する。この結果に基づいて、解析装置200は、例えば自らの表示部に文字26(この場合は“C”)を表示してもよい。
【0112】
この処理を、本実施形態に即してさらに具体的に説明する。テーブル22上には、所定の間隔で予め位置が定義され、かかる位置からなる位置群が接触位置の候補として扱われる。例えば、位置群はテーブル22の天面に縦横等間隔で配置されてもよい。また、位置群の少なくとも一部は、テーブル22上に表示された文字に対応付けられる。かかる位置群および位置群に含まれる位置に対応付けられる文字の情報は、例えば解析装置200のメモリ210に予め格納されうる。
【0113】
例えば、図示されたように“A”〜“F”の6文字が表示される場合、位置群を構成する各位置は、“A”〜“F”のいずれかの文字に対応付けられてもよい。この場合、例えば“A”〜“F”の文字の位置に合わせてテーブル22の天面を6つの領域に区画し、それぞれの領域に含まれる位置を各文字に対応付けてもよい。あるいは、各文字の中心から所定の距離以内の位置が各文字に対応付けられ、残りの位置は文字に対応付けられなくてもよい。この場合、ユーザが文字に対応付けられない位置をタップしたことは、無効な入力として識別されてもよいし、スペースなど表示された文字以外の入力として識別されてもよい。
【0114】
なお、上述のように、テーブル22に表示される文字は6文字には限られず、さらに多くの文字、数字、または記号が表示され、これらに対応付けられるテーブル22上の位置が予め定義されてもよい。また、予め位置が定義されるのはテーブル22の天面には限られず、例えばテーブル22の側面や底面、または脚の部分に位置が定義されてもよい。
【0115】
上記のように予め定義された各位置について、ユーザの指などによるタップを入力信号として与えた場合にセンサ装置300で検出される振動が予め測定されている。さらに、ここで測定された振動に基づいて、各位置についての伝達関数が算出される。解析装置200は、このようにして予め算出された伝達関数を用いて、センサ装置300から受信した振動データに基づいてテーブル22上の接触位置を識別する。さらに、解析装置200は、例えば、接触位置として識別された位置に対応付けられた文字を入力するコマンドを、実行すべきコマンドとして特定する。このコマンドを解析装置200が自ら実行する、または通信部202を介して外部装置に送信することによって、ユーザがテーブル22上に表示された文字をタップすることによる当該文字の入力を実現することができる。
【0116】
かかる接触位置の識別は、例えば入力がユーザの指によるタップであり、入力信号がインパルス信号とは異なる特性を有するような場合には、上記の第1の実施形態において図11を参照して説明した第1の処理例のような処理によって実行されてもよい。一方、例えば入力がスタイラスや指し棒などによるタップであり、入力信号がインパルス信号に近い特性を有するような場合には、第1の実施形態において図12を参照して説明した第2の処理例のような処理が実行されてもよい。
【0117】
(第1の例)
図18に示す第1の例では、解析装置200の識別部206が、接触位置を識別した(ステップS301)後、その接触位置が予め登録されたコマンドに対応するか否かを判定する(ステップS303)。例えば図17に示された例であれば、ここでの判定は、接触位置に対応付けられている文字などが存在するか否かの判定でありうる。ここで、接触位置に対応付けられている文字が存在する場合、接触位置と“文字を入力する”というコマンドとが対応していることになる。また、上記のように、どの文字からも離れた領域への接触がスペースなどの入力として識別される場合、かかる領域に含まれる位置は、“スペースを入力する”などのコマンドに対応していることになる。
【0118】
ステップS303において、識別された接触位置がコマンドに対応している場合、識別部206は、当該コマンドを実行する(ステップS305)。ここでいうコマンドの実行は、文字入力には限らずさまざまな動作を含みうる。例えば、識別部206は、出力部212からの情報を出力するというコマンドを実行してもよい。あるいは、識別部206は、自らコマンドを実行する代わりに、通信部202を介してコマンドを外部装置に送信してもよい。例えば図17に示された文字入力の例であれば、文字入力のコマンドが、通信部202からPCなどの他の装置に送信されてもよい。
【0119】
(第2の例)
図19に示す第2の例では、解析装置200の識別部206が、接触位置を識別した(ステップS401)後、さらに連続した接触があるか否かを識別する(ステップS403)。連続した接触がある場合、識別部206は、さらに続く接触についても接触位置を識別する(ステップS401)。
【0120】
ステップS403で、連続した接触がない、つまり一連の接触が終了したと判定された場合、識別部206は、一連の接触位置が、予め登録されたコマンドに対応するか否かを判定する(ステップS405)。例えば、図17に示された文字入力の例であれば、“F”→“E”→“E”→“D”のように、一連の接触位置によって示される文字列にコマンドが対応付けられていてもよい。また、テーブル22に文字が表示されていない場合でも、例えば“特定の位置を所定回数タップする”ことに対してコマンドが対応付けられていてもよい。
【0121】
ステップS405において、一連の接触位置がコマンドに対応している場合、識別部206は、当該コマンドを実行する(ステップS407)。ここでも、上記の第1の例と同様に、解析装置200自身が出力部212などを用いてコマンドを実行してもよく、また通信部202を介して外部装置にコマンドが送信されてもよい。
【0122】
(2−4.変形例)
続いて、図20図24を参照して、本開示の第2の実施形態の変形例について説明する。図20は、本開示の第2の実施形態における第1の変形例を示す図である。図21は、本開示の第2の実施形態における第2の変形例を示す図である。図22は、本開示の第2の実施形態における第3の変形例を示す図である。図23は、本開示の第2の実施形態における第4の変形例を示す図である。図24は、本開示の第2の実施形態における第5の変形例を示す図である。
【0123】
図20に示される第1の変形例では、センサ装置300が、フライパン28の柄の部分に装着される。センサ装置300は、例えば上記の図16の例におけるウェイト部342の代わりに磁石を有し、この磁石が、金属などの磁性体からなるフライパン28の柄の部分に吸着することで、センサ110をフライパン28の振動が伝達される状態で保持する。例えば、フライパン28の各部に対応付けて何らかのコマンド(例えば台所に置いてあるPCの操作、ガスコンロなど調理設備の操作など)を登録し、ユーザがコマンドに対応する位置を指や調理器具などでタップすることによって、ユーザは作業中の手の汚れなどを気にすることなく装置や設備に所望のコマンドを実行させることができる。同様の構成は、例えば包丁やまな板など他の調理器具、およびスパナやハンマーなどの工具などにも適用可能である。
【0124】
図21に示される第2の変形例では、センサ装置300が、ゴルフクラブ30の柄の部分に装着される。センサ装置300は、例えば上記の図16の例におけるウェイト部342の代わりにゴムバンドを有し、このゴムバンドがゴルフクラブ30の柄の部分に巻きつけられることで、センサ110をゴルフクラブ30の振動が伝達される状態で保持する。あるいは、センサ装置300はウェイト部342の代わりにクリップを有し、このクリップがゴルフクラブ30の柄の部分を挟持してもよい。このようにゴムバンドやクリップなどを用いることによって、振動が激しい物体にもセンサ装置300を安定して装着することができる。
【0125】
本変形例では、例えば、ゴルフクラブ30の各部に対応付けて何らかのコマンド(例えばゴルフ練習場の設備の操作、プレーするユーザを撮影する録画機器の操作など)を登録し、ユーザがコマンドに対応する位置を指などでタップすることによって、ユーザはプレーを中断することなく装置や設備に所望のコマンドを実行させることができる。これによって、例えばビデオの録画開始、メタ情報の付加などの操作を、プレー中に実行することもできる。また、上記の第1の実施形態と同様に、ゴルフクラブ30のヘッド部分で、どの位置にボールが衝突したかをセンサ装置300が検出する振動から識別することも可能である。
【0126】
さらに、この2種類の機能は組み合わせられてもよい。例えば、ゴルフクラブ30のヘッド部分でボールを打った場合にはボールの衝突した位置が検出され、それ以外の、例えば、柄やグリップの部分をタップした場合には所定のコマンドが実行されてもよい。この場合、位置に応じて、例えばボールの衝突およびユーザのタップという2種類の入力信号のいずれかまたは両方をそれぞれ与えた場合にセンサ装置300で検出される振動が予め測定されている。本変形例の構成は、ゴルフクラブ30に限らず、第1の実施形態で説明したようなラケット12や、その他のあらゆるスポーツで用いられる打具について適用可能である。
【0127】
図22に示される第3の変形例では、センサ装置300が、金庫32の扉34に、例えばネジや接着剤などを用いて取り付けられる。これらのネジまたは接着剤などは、センサ装置300を扉34に密着させることで、センサ110を扉34の振動が伝達される状態で保持する。例えば、扉34をタップする位置や回数などによって所定のパターンを構成し、このパターンに対応付けて金庫32のロック36を開錠/施錠するというコマンドを登録することによって、ユーザは扉34のタップによって金庫32を開錠/施錠することができる。なお、扉34が閉じられている場合に金庫32の本体と密着しており、扉34と本体とが一体的に振動する場合、センサ装置300は、金庫32の本体側に取り付けられてもよい。
【0128】
これによって、扉34の表面にはスイッチやダイヤルなどを配置しなくてよく、例えば金庫32の外部が超高温になる場合でも、内部への熱の侵入を防ぐことができる。同様の利点は、例えばセンサ装置300を宇宙船や潜水艦の扉の表面に取り付ける場合にも得られる。高温・低温や、高圧・低圧などの過酷な環境にさらされる扉では、表面に配置する部品は少ない方が好ましいためである。また、物理的な鍵が扉の表面に露出しないことによって、鍵を破ることがきわめて難しくなり、セキュリティを向上させる効果もある。この観点でいえば、住宅などのドアにセンサ装置300を取り付け、ドアをタップするパターンに対応付けて開錠のコマンドを登録することも有用である。
【0129】
図23に示される第4の変形例では、センサ装置300が、ガラス窓38のガラス部分40に、例えば接着剤や吸盤などを用いて取り付けられる。これらの接着剤または吸盤などは、センサ装置300をガラス部分40に密着させることで、センサ110をガラス部分40の振動が伝達される状態で保持する。例えば、ガラス部分40をタップする位置や回数などによって所定のパターンを構成し、このパターンに対応付けてガラス窓38のロック42を開錠/施錠するというコマンドを登録することによって、ユーザはガラス部分40のタップによってガラス窓38を開錠/施錠することができる。なお、ガラス部分40と周囲の窓枠部分とが一体的に振動する場合、センサ装置300は、窓枠部分に取り付けられてもよい。
【0130】
これによって、ガラス部分40の透明性を確保しつつ、ガラス部分40におけるユーザの接触位置を識別し、識別された接触位置に対応したコマンドを実行することができる。同様の機能は、例えば透明電極を用いたタッチパネルをガラス部分40に配置したり、ガラス部分40の周囲に複数のセンサを配置したりすることによっても実現可能である。しかし、本変形例によれば、単一のセンサ装置300をガラス部分40などに配置することによって接触位置の検出が可能になるため、安価かつ簡便な装置構成によって上記の機能を実現することができる。なお、同様の構成は、他にもテレビなど任意の装置で、透明性を要求される面を入力部として使用する場合に適用可能である。例えばテレビの場合、画面の任意の位置をタップすることで、チャンネル選択や音量調節などの様々なコマンドを実行させることが可能である。
【0131】
図24に示される第5の変形例では、センサ装置300が、卓球台44に、例えば接着剤やネジ、または吸盤などを用いて取り付けられる。これらの接着剤やネジ、または吸盤などは、センサ装置300を卓球台44に密着させることで、センサ110を卓球台44の振動が伝達される状態で保持する。例えば、卓球のボールがそれぞれのコートの領域内の位置に落ちた場合にセンサ装置300で検出される振動を予め測定しておくことで、卓球台44を使用した卓球の試合中にボールがどちらのコートに落ちたかを識別することが可能である。この場合、例えばボールが一方のコートに落ちた場合には他方の得点を加算するというコマンドを設定することによって、卓球の試合の得点を自動的に計算することができる。
【0132】
図示して説明されたもの以外にも、本実施形態では様々な変形例が可能である。例えば、クラシックギターやバイオリンなどの木製楽器では、マイクなどをボディ外側に取り付けることは比較的よく行われるが、ボタンやノブなどの電気的な部品を埋め込むことは、ボディを傷つけることになるため困難である。そこで、センサ装置300をクリップなどを用いてボディの表面に取り付け、ユーザがボディをタップする位置と各種コマンドとを予め対応付けて設定することで、ボディを傷つけることなく、演奏中に音量や音質を調節したり、付加的な音を出力したりすることが可能になる。
【0133】
また、例えば、家庭でダンスゲームなどをプレーする場合、ボタンを内蔵した専用のシートを敷いてその上でプレーする必要があった。しかし、センサ装置300を床上に設置し、センサ装置300の位置を基準にしてプレーヤのステップの位置を判定すれば、専用のシートを敷かなくても、そのようなゲームをプレーすることが可能になる。
【0134】
また、例えば、スマートフォンなど各種の電子機器に搭載される加速度センサは、サンプリング周波数を高くすることで、上記のセンサ装置300におけるセンサ110と同様に振動データを取得することが可能である。これを用いて、例えばユーザがスマートフォンの表面をタップした位置を識別し、タップの位置および回数などのパターンが所定のパターンと一致した場合にスマートフォンのロックを解除することも可能である。この場合、スマートフォンは、本実施形態におけるセンサ装置と解析装置との機能を兼ね備えた装置にあたる。
【0135】
また、例えば、自然の石や木片などの物体にセンサ装置300を装着し、ユーザが当該物体の所定の位置をタップしたときの振動を、何らかの鍵にあたる情報として用いてもよい。それぞれの物体には固有の振動特性があるため、この振動特性を鍵にあたる情報の一部として利用すれば、鍵をコピーすることが困難になり、セキュリティを向上させる効果が期待される。
【0136】
上記のように、振動特性は、それぞれの物体に固有である。従って、ほぼ同じ構造の物体があれば、振動特性はほぼ同じになる。それゆえ、例えばセンサ装置300が装着される物体(第1のオブジェクト)が規格化された工業製品であるなどして構造が既知であり、さらにセンサ装置300が予め指定された位置に装着されるとすれば、物体の振動特性は、同じ製品で同じ位置にセンサ装置300を装着して計測したデータを利用するなどして、既知のデータとして与えられうる。そうすると、物体にセンサ装置300を装着した後に各位置にユーザが接触した場合の振動を測定するキャリブレーションの手順を省略することができる。
【0137】
この場合、物体は、例えば型番の入力などによって特定されてもよいし、HMD(Head Mounted Display)などに搭載されたカメラの画像に基づく物体認識によって特定されてもよい。物体認識によって物体を特定する場合、画像にセンサ装置300が映っていれば、センサ装置300の装着位置をも併せて特定することができる。
【0138】
(3.第3の実施形態)
次に、本開示の第3の実施形態について説明する。上記の第1の実施形態、第2の実施形態では、センサ装置が装着される物体(第1のオブジェクト)が静止しているところに、接触主体(第2のオブジェクト)が接触するという例について説明した。この場合、第1のオブジェクトへの第2のオブジェクトの“接触”は、第1のオブジェクトに振動を発生するようなもの、つまり“衝突”である。しかし、本開示の実施形態は、このように第2のオブジェクトが第1のオブジェクトに“衝突”するものには限られず、より一般的に“接触”する場合にも適用可能である。
【0139】
本実施形態では、第1のオブジェクトが所定の振動パターンで振動する。この振動は、例えば定常的なパターンで加えられる微細な振動であり、センサ装置が備えるバイブレータなどの加振部によって加えられるものでありうる。第1のオブジェクトの所定の振動パターンでの振動は、いわばホワイトノイズ的なものである。第1のオブジェクトに設置されたセンサ装置は、この所定の振動パターンでの振動が、第2のオブジェクトが接触したことによってどのように変化したかを検出する。
【0140】
振動の伝達関数は物体の位置ごとに異なるため、振動する物体(第1のオブジェクト)のいずれかの位置に他の物体(第2のオブジェクト)が接触した場合、物体の振動状態がどのように変化するかは、接触位置によって異なる。この性質を利用すれば、第1のオブジェクトを振動させることによって、第2のオブジェクトがソフトに接触した場合であっても、接触位置を検出することができる。
【0141】
本実施形態において、第2のオブジェクトは、第1のオブジェクトに接触した後に跳ね返って第1のオブジェクトから離れなくてもよく、そのまま接触状態を持続してもよい。第2のオブジェクトが第1のオブジェクトとの接触状態を持続したまま移動するときに、第2のオブジェクトの接触による第1のオブジェクトの振動状態の変化を時系列で計測すれば、いわゆるドラッグ操作のような操作情報を取得することができる。
【0142】
また、2つの接触(第1/第2の接触)に時間差があれば、第1の接触の前後の物体の振動状態を比較し、さらに第2の接触の前後の物体の振動状態を比較することによって、2つの接触位置をそれぞれ検出することができる。これによって、例えばピンチイン/アウトのような操作情報を取得することも可能である。
【0143】
(4.第4の実施形態)
次に、本開示の第4の実施形態について説明する。本実施形態では、第2のオブジェクトが所定の振動パターンで振動する。この振動も、上記の第3の実施形態における第1のオブジェクトの振動と同様に、例えば定常的なパターンで加えられる微細な振動である。例えば、第2のオブジェクトがスタイラスなどの器具であれば、器具にバイブレータなどが内蔵されることによって振動が加えられうる。また、例えば、第2のオブジェクトがユーザの指であれば、腕時計状の器具をユーザが装着し、これに内蔵されるバイブレータなどによって振動が加えられうる。
【0144】
第2のオブジェクトが振動している場合、第2のオブジェクトが第1のオブジェクトにソフトに接触した場合であっても、第1のオブジェクトには振動が発生する。振動の伝達関数は物体の位置ごとに異なるため、例えば静止した物体(第1のオブジェクト)のいずれかの位置に振動するユーザの指など(第2のオブジェクト)が接触した場合、振動がセンサ装置300で伝達される過程でどのように変化するかは、接触位置によって異なる。この性質を利用すれば、第1のオブジェクトに振動する第2のオブジェクトを接触させることによって、第2のオブジェクトがソフトに接触した場合であっても、接触位置を検出することができる。なお、本実施形態でも、上記の第3の実施形態と同様にして、ドラッグ操作のような操作情報を取得したり、ピンチイン/アウトのような操作情報を取得したりすることが可能である。
【0145】
また、第2のオブジェクトの振動が固有のパターンを有する振動である場合、接触位置に加えて、この振動のパターン自体をコマンドに対応付けることが可能である。例えば、図22を参照して説明した金庫32の例の場合、扉34の所定の位置に、所定のパターンの振動が与えられることを、開錠のコマンドに対応付けてもよい。この場合、所定のパターンの振動は、例えば、金庫32の鍵として作製されるバイブレータによって発生する。このバイブレータを扉34に直接接触させてもよいし、このバイブレータ(例えば腕時計型)を装着したユーザの指を扉34に接触させてもよい。
【0146】
(5.補足)
(ハードウェア構成)
図25を参照して、上記で説明された本開示の各実施形態に係る解析装置200を実現しうる情報処理装置900のハードウェア構成について説明する。図25は、情報処理装置のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0147】
情報処理装置900は、CPU901、ROM903、およびRAM905を含む。さらに、情報処理装置900は、ホストバス907、ブリッジ909、外部バス911、インターフェース913、入力装置915、出力装置917、ストレージ装置919、ドライブ921、接続ポート923、および通信装置925を含んでもよい。
【0148】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置919、またはリムーバブル記録媒体927に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータなどを記憶する。RAM905は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータなどを一次記憶する。CPU901、ROM903、およびRAM905は、CPUバスなどの内部バスにより構成されるホストバス907により相互に接続されている。さらに、ホストバス907は、ブリッジ909を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス911に接続されている。
【0149】
入力装置915は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなど、ユーザによって操作される装置である。入力装置915は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、情報処理装置900の操作に対応した携帯電話などの外部接続機器929であってもよい。入力装置915は、ユーザが入力した情報に基づいて入力信号を生成してCPU901に出力する入力制御回路を含む。ユーザは、この入力装置915を操作することによって、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0150】
出力装置917は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。出力装置917は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置、ならびにプリンタ装置などでありうる。出力装置917は、情報処理装置900の処理により得られた結果を、テキストまたは画像などの映像として出力したり、音声または音響などの音声として出力したりする。
【0151】
ストレージ装置919は、情報処理装置900の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置919は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイスなどにより構成される。このストレージ装置919は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0152】
ドライブ921は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体927のためのリーダライタであり、情報処理装置900に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ921は、装着されているリムーバブル記録媒体927に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ921は、装着されているリムーバブル記録媒体927に記録を書き込む。
【0153】
接続ポート923は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート923は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポートなどでありうる。また、接続ポート923は、RS−232Cポート、光オーディオ端子、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ポートなどであってもよい。接続ポート923に外部接続機器929を接続することで、情報処理装置900と外部接続機器929との間で各種のデータが交換されうる。
【0154】
通信装置925は、例えば、通信ネットワーク931に接続するための通信デバイスなどで構成された通信インターフェースである。通信装置925は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カードなどでありうる。また、通信装置925は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデムなどであってもよい。通信装置925は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、TCP/IPなどの所定のプロトコルを用いて信号などを送受信する。また、通信装置925に接続される通信ネットワーク931は、有線または無線によって接続されたネットワークであり、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信などである。
【0155】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。かかる構成は、実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更されうる。
【0156】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0157】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの、第1のオブジェクトの振動状態の変化を検出して振動データを出力するセンサと、
前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で、前記センサを前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持する保持部と、
前記センサによって検出される単一の振動データを、該振動データを解析して前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する解析装置に送信する通信部と
を備えるセンサ装置。
(2)前記センサは、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突したときに前記第1のオブジェクトに発生する振動を検出して前記振動データを出力する、前記(1)に記載のセンサ装置。
(3)前記第1のオブジェクトは、打具であり、
前記第2のオブジェクトは、前記打具に衝突する被打物である、前記(2)に記載のセンサ装置。
(4)前記センサは、所定の振動パターンで振動する前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触したことによる前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を検出して前記振動データを出力する、前記(1)に記載のセンサ装置。
(5)前記第1のオブジェクトに前記所定の振動パターンで振動を加える加振部をさらに備える、前記(4)に記載のセンサ装置。
(6)ユーザに情報を呈示する出力部をさらに備え、
前記通信部は、前記解析装置から前記接触位置に関する情報を受信し、
前記出力部は、前記接触位置に関する情報を前記ユーザに呈示する、前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のセンサ装置。
(7)第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する通信部と、
前記振動データの振動特性と、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する識別部と
を備える解析装置。
(8)前記通信部は、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突したときに前記第1のオブジェクトに発生する振動を前記センサが検出した前記振動データを受信し、
前記識別部は、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが衝突した衝突位置を識別する、前記(7)に記載の解析装置。
(9)前記第1のオブジェクトは、打具であり、
前記第2のオブジェクトは、前記打具に衝突する被打物である、前記(8)に記載の解析装置。
(10)前記衝突位置に関する情報をユーザに呈示する出力部をさらに備える、前記(9)に記載の解析装置。
(11)前記出力部は、前記衝突位置である確率が高い順に位置を示すリストを前記ユーザに呈示する、前記(10)に記載の解析装置。
(12)前記出力部は、前記衝突位置を示すマップを前記ユーザに呈示する、前記(10)に記載の解析装置。
(13)前記センサは、表裏両面を有する前記打具の表面または裏面のいずれか一方に装着され、
前記識別部は、前記衝突位置が、前記打具の表面であったか裏面であったかを識別する、前記(9)〜(12)のいずれか1項に記載の解析装置。
(14)前記センサは、左右対称な形状を有する前記打具の左側または右側のいずれか一方に装着され、
前記識別部は、前記衝突位置が、前記打具の左側であったか右側であったかを識別する、前記(9)〜(13)のいずれか1項に記載の解析装置。
(15)前記通信部は、所定の振動パターンで振動する前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触したことによる前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を前記センサが検出した前記振動データを受信する、前記(7)に記載の解析装置。
(16)前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分に設定された位置群の中の位置ごとの振動特性が記憶された記憶部をさらに備え、
前記識別部は、前記位置群の中の1または複数の位置として前記接触位置を識別する、前記(7)〜(15)のいずれか1項に記載の解析装置。
(17)前記記憶部には、前記位置群の中の少なくとも一部の位置に対応付けられるコマンドが記憶され、
前記識別部は、前記識別された接触位置に対応する前記コマンドを特定する、前記(16)に記載の解析装置。
(18)前記通信部は、前記特定されたコマンドを外部装置に送信する、前記(17)に記載の解析装置。
(19)前記記憶部には、前記位置群の中の所定の位置を組み合わせたパターンに対応付けられるコマンドが記憶され、
前記識別部は、前記識別された接触位置からなるパターンに対応する前記コマンドを特定する、前記(16)に記載の解析装置。
(20)第1のオブジェクトに第2のオブジェクトが接触したときの前記第1のオブジェクトの振動状態の変化を、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する部分とは異なる部分で前記第1のオブジェクトの振動が伝達される状態で保持されたセンサによって検出した単一の振動データを受信する機能と、
前記振動データの振動特性と、前記第1のオブジェクトの前記第2のオブジェクトが接触する位置ごとの振動特性とを比較することによって、前記第1のオブジェクトに前記第2のオブジェクトが接触した接触位置を識別する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラムが記憶された記憶媒体。
【符号の説明】
【0158】
10,20 システム
12 ラケット
12s シャフト部分
12g グリップ部分
14 ボール
22 テーブル
28 フライパン
30 ゴルフクラブ
32 金庫
38 ガラス窓
44 卓球台
100,300 センサ装置
110 センサ
120 回路部
122 増幅器
124 通信部
126 制御部
128 メモリ
130 出力部
142 ベルト
144 筐体
200 解析装置
202 通信部
204 解析部
206 識別部
208 データベース
210 メモリ
212 出力部
342 ウェイト部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25