特許第6248636号(P6248636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6248636-ゴム補強用ポリエステル繊維コード 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248636
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】ゴム補強用ポリエステル繊維コード
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/693 20060101AFI20171211BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20171211BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20171211BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20171211BHJP
   D06M 13/156 20060101ALI20171211BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20171211BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   D06M15/693
   D06M13/395
   D06M15/41
   D06M15/55
   D06M13/156
   D02G3/44
   D06M101:32
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-544042(P2013-544042)
(86)(22)【出願日】2013年6月10日
(86)【国際出願番号】JP2013065955
(87)【国際公開番号】WO2013187364
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年6月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-131625(P2012-131625)
(32)【優先日】2012年6月11日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-244252(P2012-244252)
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】早川 喜教
(72)【発明者】
【氏名】岩間 遼平
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−316027(JP,A)
【文献】 特開2008−007929(JP,A)
【文献】 特開2007−169833(JP,A)
【文献】 特開2001−064878(JP,A)
【文献】 特開2001−064840(JP,A)
【文献】 特開2001−073247(JP,A)
【文献】 特開2001−003267(JP,A)
【文献】 特開平11−286875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08 − 15/14
C08J 5/04 − 5/10
C08J 5/24
D02G 3/44
D02G 3/48
D06M 13/00 − 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に、少なくともレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)、ブロックドポリイソシアネート化合物(B)、およびハロゲン化フェノール誘導体(C)を含む接着剤が付与されたゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、前記接着剤のレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)の原料であるゴムラテックスが、クロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合物をゴムラテックス全固形分100質量部中に80〜100質量部を含むものであり、かつクロロプレンゴムラテックス(D)とポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合比が、(D)/(E)=80/20〜20/80(固形分質量比)であることを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項2】
前記クロロプレンゴムラテックス(D)の表面張力が30〜44mN/mであり、かつ、平均粒径が50〜200nmであることを特徴とする請求項1に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項3】
前記ポリブタジエンゴムラテックス(E)の平均粒径が200〜330nmであることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項4】
前記ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維の非晶配向度(fa)が0.45〜0.65であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項5】
ゴム補強用ポリエステル繊維コードが、前記ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に前記接着剤を付与した後、乾燥・熱処理する1浴処理によって得られるものであり、かつ乾燥・熱処理におけるトータルストレッチ率が−10%〜−4%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項6】
前記レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)に含まれるレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物が、ノボラック型縮合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項7】
前記接着剤の配合比率が下記要件を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
(A)/(B)=5/1〜20/1、 (A)/(C)=1/1〜5/1
(式中の(A)はレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス、(B)はブロックドポリイソシアネート化合物、(C)ハロゲン化フェノール誘導体の量を表し、いずれも固形分質量での配合比率を表す。)
【請求項8】
ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に対する接着剤の固形分付着量が、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維100質量%に対して1〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項9】
ゴム補強用ポリエステル繊維コードが自動車ホース補強用コードであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項10】
前記自動車ホースにおいて、少なくともゴム補強用ポリエステル繊維コードと接触する部分がエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系ゴム配合物であることを特徴とする請求項に記載のゴム補強用ポリエステル繊維コード。
【請求項11】
ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に、少なくともレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)、ブロックドポリイソシアネート化合物(B)、およびハロゲン化フェノール誘導体(C)を含む接着剤を付与するゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法であって、該接着剤成分であるゴムラテックスが、クロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合物をゴムラテックス全固形分100質量部中に80〜100質量部を含むものであり、かつクロロプレンゴムラテックス(D)とポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合比が、(D)/(E)=80/20〜20/80(固形分質量比)であることを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。詳しくは、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(以下、「EPDM系ゴム」という)との接着性が良好であり、かつ、自動車ホース等の製品製造時の工程通過性、すなわち、ポリエステル繊維コード表面に接着剤として使用されるレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(以下「RFL」という場合がある。)の脱落を改善したゴム補強用ポリエステル繊維コードに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート繊維で代表されるポリエステル繊維は、強度およびモジュラスが大きく、伸度およびクリープが小さく、かつ耐疲労性に優れている等の物理的特性を有していることから、ゴムホース用の補強用繊維として従来から使用されている。ところが、ポリエステル繊維自体の表面が不活性なことから、ゴムとの接着性に乏しいという問題を有している。また、近年、ブレーキホースやエアコンホース等の自動車ホースに使用されるホース分野においては、高温特性に優れたEPDM系ゴムが主に使用されているが、該ゴムは、化学構造に二重結合が少なく、反応性に乏しいという問題を有している。このため、ポリエステル繊維コードとEPDM系ゴムとの接着性を改良する手法が種々検討されている。
【0003】
一方で、接着剤処理が施された繊維コードを複数本引き揃えてホース形状にブレードする際、接着剤処理されたコードがガイド類と摩擦する際に、接着剤の脱落、ガイド類への付着、飛散が生じ、生産性や作業環境を損なうという問題も提起されている。
【0004】
上記問題を解決する試みとしては、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維をレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスおよびクロロフェノール化合物を含む処理剤で処理する手法が開示されている(特許文献1)。また、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維を、変性VPを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスおよびクロロフェノール化合物を含む処理剤で処理する手法が開示されている(特許文献2)。また、ポリエステル繊維を、ポリエポキシド化合物とビニルピリジンスチレンブタジエンゴムラテックスからなる第1処理剤で処理後、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスおよびクロロフェノール化合物を含む第2処理剤で処理する手法が開示されている(特許文献3)。また、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維を、特定のビニルピリジン・スチレン・ブタジエンを含むレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスおよびクロロフェノール化合物を含む第2処理剤で処理する手法が開示されている(特許文献4)。さらには、ポリエステル繊維を、ポリエポキシド化合物を含む第1処理剤で処理した後、特定の組成のレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスおよびクロロフェノール化合物を含む第2処理剤で処理する手法が開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2008−7929号公報
【特許文献2】日本国特開2008−202182号公報
【特許文献3】日本国特開平7−216755号公報
【特許文献4】日本国特開平7−331583号公報
【特許文献5】日本国特開平11−286875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら手法では、EPDM系ゴムとの接着性については、ある程度の効果が見られるものの、製造工程での良好な工程通過性を有するゴム補強用ポリエステル繊維コードは得られないのが現状である。
【0007】
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム配合物(EPDM系ゴム)との接着性が良好であり、かつ、自動車ホース等の製品製造時の工程通過性(ポリエステル繊維コード表面のRFLの脱落)を改善するゴム補強用ポリエステル繊維コードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明は、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に、少なくともレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)、ブロックドポリイソシアネート化合物(B)、およびハロゲン化フェノール誘導体(C)を含む接着剤が付与されたゴム補強用ポリエステル繊維コードであって、前記接着剤のレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)の原料であるゴムラテックスが、クロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合物をゴムラテックス全固形分100質量部中に80〜100質量部を含むものであり、かつクロロプレンゴムラテックス(D)とポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合比が、(D)/(E)=80/20〜20/80(固形分質量比)であることを特徴とするゴム補強用ポリエステル繊維コードおよびその製造方法である。
【0009】
なお、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードにおいて、以下の(1)〜(9)が好ましい条件であり、これらの条件の適応により、さらに優れた効果を期待することができる。
(1)前記クロロプレンゴムラテックス(D)の表面張力が30〜44mN/mであり、また望ましくは平均粒径が50〜200nmであること。
(2)前記ポリブタジエンゴムラテックス(E)の平均粒径が200〜330nmであること。
(3)前記ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維の非晶配向度(fa)が0.45〜0.65であること。
(4)ゴム補強用ポリエステル繊維コードが、前記ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に前記接着剤を付与した後、乾燥・熱処理する1浴処理によって得られるものであり、かつ乾燥・熱処理におけるトータルストレッチ率が−10%〜−4%であること。
(5)前記レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)に含まれるレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物が、ノボラック型縮合体であること。
(6)前記接着剤の配合比率が下記要件を満たすこと。
(A)/(B)=5/1〜20/1、 (A)/(C)=1/1〜5/1
(式中の(A)はレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス、(B)はブロックドポリイソシアネート化合物、(C)ハロゲン化フェノール誘導体の量を表し、いずれも固形分質量での配合比率を表す。)
(7)前記接着剤の総固形分濃度が3〜15質量%であり、かつポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に対する接着剤の固形分付着量が、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維100質量%に対して1.0〜5.0質量%であること。
(8)ゴム補強用ポリエステル繊維コードが自動車ホース補強用コードであること。
(9)前記自動車ホースにおいて、少なくともゴム補強用ポリエステル繊維コードと接触する部分がエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系ゴム配合物であること。
【0010】
すなわち、本発明は、クロロプレンゴムラテックスおよびポリブタジエンゴムラテックスを特定の範囲で混合することによって、従来ゴム補強用ポリエステル繊維コードにおいてどうしても達成できなかった、EPDM系ゴムとの接着性、製造工程での良好な工程通過性を同時に満足することを可能にしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のゴム補強用ポリエステル繊維コードよりもEPDM系ゴムとの接着性が良好であり、かつ、自動車ホース等の製品製造時の工程通過性(ポリエステル繊維コード表面のRFLの脱落が少ないこと)が改善されたゴム補強用ポリエステル繊維コードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】繊維コードの工程通過性を評価する摩擦試験機を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】

本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コード(以下コードと称す)は、自動車用ホース、特に自動車ブレーキホースまたは自動車エアコンホース用途として、産業上実用的なコードを創出すべく、鋭意検討した結果、EPDM系ゴムとの良好な接着性、ホース製造時のコードからのRFL接着剤の脱落の少ない良好な工程通過性を兼ね備えたゴム補強用ポリエステル繊維コードを得るに至ったものである。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明で使用されるポリエステル繊維としては、ジカルボン酸とグリコールからなるポリエステルが好ましく挙げられる。前記ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。上記ジカルボン酸成分の一部を、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、スルホン酸金属置換イソフタル酸などで置き換えてもよく、また、上記のグリコール成分の一部を、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、およびポリアルキレングリコールなどに置き換えても良い。これらの中でも、ジカルボン酸成分の90モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールからなる、ポリエチレンテレフタレートが好適である。このポリエステルには、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、チッ化ケイ素、クレー、タルク、カオリン、ジルコニウム酸などの各種無機粒子や架橋高分子粒子、各種金属粒子などの粒子類のほか、従来からある抗酸化剤、金属イオン封鎖剤、イオン交換剤、着色防止剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0016】
本発明において使用するポリエポキシド化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ基の量はポリエポキシド化合物1000gあたり1個以上である(すなわちエポキシ当量が1000g/eq以下である)ことが好ましい具体的には以下のものが例示される。ペンタエリスリトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物もしくは過酸化物または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物である。すなわち、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキリレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート等の化合物や、フェノールノボラック型、ハイドロキノン型、ビフェニル型、ビスフェノールS型、臭素化ノボラック型、キシレン変性ノボラック型、フェノールグリオキザール型、トリスオキシフェニルメタン型、トリスフェノールPA型、ビスフェノール型のポリエポキシド等の芳香族ポリエポキシド等が挙げられる。特に好ましいのは、ソルビトールグリシジルエーテル型やクレゾールノボラック型のポリエポキシドである。
【0017】
これらの化合物は、通常は乳化液に含有させて使用される。乳化液、又は溶液にするには、ポリエポキシド化合物をそのまま液体と混合して乳化液または溶液とすることができる。必要に応じてポリエポキシド化合物を少量の溶媒に溶解し、それをアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物等の乳化剤と共に液体と混合し、乳化液、又は溶解液を得ることができる。
【0018】
本発明において使用するポリエポキシド化合物は、通常は、ポリエステル繊維の製糸工程において紡糸油剤と共に付与される。この際のポリエポキシド化合物の付着量は、通常、ポリエステル繊維に対し0.1〜5質量%の範囲である。ポリエポキシド化合物の付着量が0.1質量%未満では、ポリエポキシド化合物の効果が十分に発揮されず、ポリエステル繊維とEPDM系ゴムとの間で満足できる接着性が得られないおそれがある。一方、ポリエポキシド化合物の付着量が5質量%を超えると繊維が非常に硬くなり、製糸工程において付与することが困難である場合があるだけでなく、次工程以降で処理する接着剤の浸透性が低下する結果、接着性能が低下する場合があるので好ましくない。
【0019】
本発明において使用する予めポリエポキシド化合物を付与したポリエステル繊維の非晶配向度(fa)は0.45〜0.65が好ましく、より好ましくは0.47〜0.62、さらに好ましくは0.50〜0.60である。この値が小さいとでは自動車ホースとして使用した際の耐久性が不足することがあり、大きいと、接着性が不足することがある。
【0020】
さらに、本発明のゴム補強用ポリエステルコードに用いられる予めポリエポキシド化合物を付与したポリエステル繊維は、以下の(a)〜(c)の特性を有することが好ましい。
(a)単糸繊度:3.6〜5.5dtex
(b)中間伸度(4.0cN/dtex応力時伸度):4〜6%
(c)乾熱収縮率(ΔS):2〜14%
ポリエステル繊維の単糸繊度は3.6〜5.5dtexが好ましく、より好ましくは4.0〜5.3dtexである。3.6dtex未満のものは安定な製糸が困難であり、5.5dtexを越えると、接着性が低下することがある。
【0021】
ここでいう中間伸度は、4.0cN/dtex応力時の伸度である。その値は4〜6%が好ましく、より好ましくは4.3〜5.7%である。4%未満の中間伸度を得ようとすると本発明の乾熱収縮率を得ることが困難である。一方、6%を越える中間伸度の場合は自動車ホース補強用として使用する場合、耐圧性が低下することがある。
【0022】
ポリエステル繊維の乾熱収縮率は2〜14%が好ましく、より好ましくは4〜12%である。小さい収縮率の繊維を得ようとすると、中間伸度を上記の範囲に保持することが困難である。一方、収縮率が高すぎると接着性が低下することがある。
【0023】
本発明のコードは、ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に、少なくともレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)、ブロックドポリイソシアネート化合物(B)、およびハロゲン化フェノール誘導体(C)を含む接着剤が付与されたものである。
【0024】
ここで、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスとは、レゾルシンとホルムアルデヒドの初期縮合物とゴムラテックスの混合物である。レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とは、アルカリ触媒または酸触媒の存在下で、レゾルシンとホルムアルデヒドを縮合させたものであって、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)のモル比が1/0.5〜1/3であることが好ましく、さらに好ましくは1/1〜1/3の範囲であるのが良い。R/Fのモル比が上記範囲を外れると、接着性が低下したり、工程通過性が悪化することがある。
【0025】
さらには、レゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物として、あらかじめジヒドロキシベンゼンとホルムアルデヒドとを無触媒または酸性触媒の下で反応させて得られるノボラック型の樹脂を用いることもできる。具体的には、例えば、レゾルシン1モルに対してホルムアルデヒド0.7モル以下とで縮合した化合物である。例えば、商品名“スミカノール”700(S)(登録商標)、住友化学(株)製)がある。このようなレゾルシンに対してホルムアルデヒドが少ない化合物を用いて、レゾルシン(R)とホルムアルデヒド(F)のモル比を上記したさらに好ましい範囲としたい場合には、そのようなレゾルシンとホルムアルデヒドのノボラック型縮合物をアルカリ触媒を含む水に溶解し、その後ホルムアルデヒドを添加し、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比を1/1〜1/3に調整することが好ましい。ここで使用するアルカリ触媒としては、アルカリ金属水酸化物が好ましくさらに好ましくは、水酸化ナトリウムであるアルカリ触媒水分散液の濃度は1〜10モル濃度程度でよい。
【0026】
レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスで使用されるゴムラテックスとしては、クロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)を含むことが必要である。これらが混合されていないと、EPDM系ゴムとの実用的な接着力が発現しない。
【0027】
また、クロロプレンゴムラテックス(D)とポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合比は、固形分質量比で(D)/(E)=80/20〜20/80であることが必要であり、好ましくは70/30〜30/70、さらに好ましくは60/40〜40/60である。(D)/(E)比が大きすぎると、接着性が低下することがあり、(D)/(E)比が小さすぎると工程通過性が悪化することがある。
【0028】
また、本発明においては上記ゴムラテックス以外のゴムラテックスを混合して使用しても良い。その場合、ゴムラテックス全固形分100質量部中にクロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)の混合物を80〜100質量部を含むことが必要である。(D)および(E)の和の質量が少なすぎると、接着力および工程通過性が悪化することがある。
【0029】
クロロプレンゴムラテックス(D)およびポリブタジエンゴムラテックス(E)以外のゴムラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエンゴムラテックス、エチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、エチレン系不飽和酸変性ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレン、エチレン・プロピレン・非共役ジエン系三元共重合体ゴムラテックスなどが挙げられる。
【0030】
上で例示したエチレン系不飽和酸変性スチレン・ブタジエンゴムラテックスおよびエチレン系不飽和酸変性ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックスを製造するために変性剤として使用されるエチレン系不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸、イタコン酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸モノブチルエステルなどの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、アクリル酸スルホエチルナトリウム塩、メタクリル酸スルホプロピルナトリウム塩、アクリルアミドプロパンスルホン酸などの不飽和スルホン酸またはそのアルカリ塩などが挙げられ、これらは一種もしくは二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0031】
なお、上記エチレン系不飽和酸でゴムラテックスを変性させる際、エチレン系不飽和酸のカルボキシル基はエチレン性不飽和エステル単量体またはエチレン系不飽和酸無水物単量体を共重合した後に加水分解することによってゴムラテックスに導入してもよい。この場合のエチレン系不飽和酸エステル単量体やエチレン系不飽和酸無水物単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、ブテントリカルボン酸などの不飽和カルボン酸のモノ、ジ、およびトリエステル、マレイン酸無水物などが例示され、これらの一種または二種以上が使用される。
【0032】
前記クロロプレンゴムラテックスは、表面張力が30〜44mN/mであることが好ましく、より好ましくは33〜42mN/mであるのがよい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。
【0033】
また、前記クロロプレンゴムラテックスの平均粒径が50〜200nmであることが好ましく、より好ましくは100〜180nmであるのがよい。この範囲を外れると、接着力が低下することがある。
【0034】
前記ポリブタジエンゴムラテックスは、平均粒径が200〜330nmであることが好ましく、よりに好ましくは260〜310nmであるのがよい。この範囲を外れると、工程通過性が低下することがある。
【0035】
さらに、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスのレゾルシン・ホルマリン(RF)と、ゴムラテックス(L)の配合比は、固形分質量でRF/L=1/3〜1/15であることが好ましく、より好ましくは1/5〜1/12、さらに好ましくは1/7〜1/10であるのが良い。RF/L比がこの範囲を外れると、接着性が低下したり、工程通過性が悪化することがある。
【0036】
本発明に用いられるブロックドポリイソシアネート化合物は加熱によりブロック剤が遊離して活性なイソシアネート基を生じるものである。例えばトリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート化合物と、フェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類およびエチレンイミン等のブロック化剤との反応物である。これら化合物のうち、特にメチルエチルケトオキシムでブロックされた芳香族ポリイソシアネート化合物、およびジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族化合物が特に好ましく使用される。
【0037】
また、本発明で使用することのできるブロックドイソシアネートは、解離温度が140℃〜180℃であることが好ましく、より好ましくは150℃〜170℃であるのが良い。解離温度が140℃未満であると、接着性が不足することがあり、180℃を超えると、コードが硬くなり、自動車ホース用途として使用した場合に耐疲労性が不足することがある。
【0038】
本発明で使用することのできるブロックドポリイソシアネート化合物(B)と、上述したレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)との配合比は、固形分質量比で(A)/(B)=5/1〜20/1であることが好ましく、より好ましくは8/1〜15/1であるのが良い。(A)/(B)が小さすぎると、コードが硬くなり、(A)/(B)が大きすぎると接着性が低下することがある。
【0039】
本発明で用いるハロゲン化フェノール誘導体としては、ハロゲン化フェノール化合物を含むフェノール系化合物とホルムアルデヒドを縮合してなる縮合物が挙げられ、主成分として下記一般式を含んでなる化合物が好ましく挙げられる。
【0040】
【化1】
【0041】
ただし、式中のXはClまたはBrを、Y、ZはCl、Br、H、OHおよび炭素数1〜4のアルキル基から選ばれたいずれかを、またnは1〜10の整数をそれぞれ表す。
【0042】
これらハロゲン化フェノール誘導体の調整に際し、例えば、パラクロロフェノール、パラブロモフェノール、オルソクロロフェノール、オルソブロモフェノールなどのハロゲン化フェノール化合物などが出発原料として挙げられ、なかでもパラクロロフェノール、パラブロモフェノール、とくにパラクロロフェノールが好ましく用いられる。
【0043】
このような原料をアルカリ触媒存在下にホルムアルデヒドと縮合させることによって、または、原料を予め酸触媒の存在下で反応させ得られた縮合物をアルカリ触媒の存在下でホルムアルデヒドと反応させることによって、ハロゲン化フェノール誘導体を得ることができる。
【0044】
また、上記ハロゲン化フェノール化合物は、その他のフェノール系化合物と併用してホルムアルデヒドとともに共縮合することも可能である。その他のフェノール系化合物としては、フェノール、レゾルシン、オルソクレゾール、パラクレゾール、パラターシャルブチルフェノールおよび2,5−ジメチルフェノール等が挙げられる。なかでもレゾルシンが特に好ましく用いられる。
【0045】
ハロゲン化フェノール誘導体の具体例としては、2,6−ビス(2’,4’−ジヒドロキシ−フェニルメチル)−4−クロロフェノール(トーマスワン(株)製“カサボンド”、ナガセ化成工業(株)製“デナボンド”(登録商標)など)、2,6−ビス(2’,4’−ジヒドロキシ−フェニルメチル)−4−ブロモフェノールおよび2,6−ビス(2’,4’−ジクロロフェニルメチル)−4−クロロフェノールなどが挙げられる。なかでも特にベンゼン核を3以上有するクロロフェノール化合物を主成分とするものが接着性および工程通過性の点から好ましく用いられる。
【0046】
上記式で表されるハロゲン化フェノール誘導体(C)とレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(A)との配合比は、固形分質量比で(A)/(C)=1/1〜5/1であることが好ましく、より好ましくは(A)/(C)=3/1〜5/1である。(A)/(C)が小さすぎるとコードが硬くなり、(A)/(C)が大きすぎると接着性が低下することがある。
【0047】
本発明で使用する接着剤において、レゾルシン(R)とホルマリン(F)の熟成条件は、20〜30℃の条件下、2〜6時間熟成させることが好ましく、より好ましくは3〜5時間であることが好ましい。熟成時間が2時間未満であると、工程通過性が悪化することがあり、6時間を越えるとRF液の粘度が向上し、ポリエステル繊維にRFL接着剤を均一に塗布することが困難になることがある。
【0048】
また、RFLの熟成条件は、20〜30℃の条件下、14〜35時間であることが好ましく、より好ましくは16〜30時間であるのが良い。この範囲外であると接着性が低下することがある。
【0049】
次に、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードの好ましい製造方法の概略について説明する。
【0050】
溶媒をo-クロロフェノールとして、145℃、10分間での固有粘度(IV)が1.00〜1.50、好ましくは1.20〜1.50のポリエチレンテレフタレートチップを、エクストルーダー型紡糸機を用いて紡糸温度285〜300℃で溶融紡糸する。紡出後、オイリングローラーにて紡糸油剤中にポリエポキシド化合物を混合した処理剤を付与する。紡糸速度は2200〜2800m/分、延伸倍率2.1〜2.4倍で多段熱延伸し、1.0〜4.0%の弛緩を与えた後巻き取りポリエステル繊維を得る。ポリエステル繊維の繊度および単糸繊度は口金の孔数および吐出量を変更して行う。ポリエステル繊維の熱延伸は、80〜250℃の加熱ロールに糸条を捲回させて行う。
【0051】
上記のようにして得られたポリエステル繊維に撚りをかけて、未処理コードとする。ここで、撚り形態は、片撚り、諸撚りいずれでも適用できるが、本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードでは、片撚りを施すことが好ましい。また、撚り数は、5〜20t/10cmが好ましく、より好ましくは8〜18t/10cmであるのがよい。5t/10cm未満であると、ホースの耐疲労性が不足することがあり、20t/10cm以上であると、コードに捲縮が生じ、工程通過性が悪くなることがある。
【0052】
次に、該未処理コードに本発明の接着剤を付与する。接着剤の付与は、接着剤を液体に溶解または分散させた処理液のかたちが好ましい。処理液における接着剤の総固形分濃度は、3〜15質量%が好ましく、より好ましくは4〜10質量%である。かかる範囲とすると、接着剤を含む処理液の安定性が優れ、ポリエステル繊維にRFL処理剤を均一に塗布することができる。
【0053】
本発明で使用する接着剤を含む処理液をポリエステル繊維に付着させるには、浸漬、ノズル噴霧、ローラーによる塗布などの任意の方法を採用することができる。例えば、リツラー社製コンピュートリーターまたは多錘型コードセッター機を用いて処理することができる。
【0054】
ポリエポキシド化合物を予め付与したポリエステル繊維に対する接着剤の付着量は、乾燥質量対比で1〜5質量%、特に1.5〜3質量%の範囲が好ましく、この範囲とすることで、ゴムとの接着性および工程通過性が良好になる。接着剤の付着量の制御は例えば、接着剤濃度、接着剤液浸漬後の液除去条件を設定することによって可能である。
【0055】
通常は、ポリエステル繊維に接着剤を付与した後、熱処理する。その熱処理は通常、80〜180℃で0.5〜5分間、より好ましくは1〜3分間乾燥し、次いで150〜260℃、より好ましくは220℃〜250℃の温度で0.5〜5.0分間、より好ましくは1〜3分間熱処理するのが良い。
【0056】
また、コード物性の制御と接着力向上の観点から、乾燥は0〜1%のストレッチをかけるのが好ましい。また熱処理は0〜1%のストレッチをかけた後−10%〜−5%の弛緩を与えながら行うのが好ましく、これらストレッチ率および弛緩率を合計したトータルストレッチ率は−10%〜−4%となるのが好ましく、−8%〜−5%となるのが好ましい。トータルストレッチ率が−10%を超えると、コードが弛むことがあり安定した処理が困難になり、−4%未満であると、接着剤がコード表層に偏在することがあり工程通過性が悪くなる傾向がある。
【0057】
本発明のゴム補強用ポリエステル繊維コードは、各種自動車ホース、例えばブレーキホース、エアコンホース、燃料ホース等の補強用コードとして用いることができる。
【0058】
さらに前記自動車ホースの場合は、少なくともゴム補強用ポリエステル繊維コードと接触する部分がエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン系ゴム配合物(EPDM系ゴム)であることが本発明の効果を最も発揮できる点から好ましい。
【0059】
上記自動車ホースの形状および構造としては、従来のものを適用することができるが、それに限らない。内層ゴムの上に1層または2層以上に補強用繊維を巻き回し、その上に外層ゴムを被覆したものが好ましい。
【0060】
補強用繊維コードの巻き回し方法としては、一方の繊維コードと他方の繊維コードが上下交互に巻き回すブレード方式、一方の繊維コードを巻き回した上から他方の繊維コードを巻き回すスパイラル方式などがあり、補強用繊維コードが互いに密着した形状や、補強用繊維コードが互いに間隔をおいている形状があるが、特に指定はない。
【0061】
自動車ホースの加硫方法としては乾熱下での加硫と水蒸気下での加硫があり、通常、150℃〜160℃で30分〜1時間で行うが、加硫方法、加硫時間および加硫温度などの条件は適宜選択すればよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0063】
また、本発明においてゴム補強用コードのコード形状・特性要件および物性の測定方法、評価方法は、以下に示すとおりである。
【0064】
<ポリエステル繊維(物性)の評価方法>
(1)繊度
JIS L1013(2010)8.3.1 A法により、所定荷重0.045cN/dTexで正量繊度を測定して総繊度とした。
【0065】
(2)単糸繊度
繊度を単繊維数で割り返した値を採用した。
【0066】
(3)強度、中間伸度
JIS L1013(2010)8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。試料をオリエンテック社製“テンシロン”(TENSILON(登録商標))UCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分で行った。なお、伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。原糸の中間伸度は4.0cN/dtex応力時伸度とした。(繊度1100dTexの原糸は44N時の伸度(%)を測定した。)
(4)乾熱収縮率
JIS L−1013(2010)8.18.2乾熱収縮率a)かせ収縮率(A法)に従って、試料採取時の所定荷重5mN/tex×表示テックス数、処理温度150℃、また、かせ長測定時の所定荷重200mN/tex×表示テックス数として測定した。
【0067】
(5)非晶配向度 (fa)
非晶配向度(fa)は、複屈折、密度から求めた結晶化度、及び結晶配向度を用い、下記R.S.Stein et al,J.Polymer Sci.,21巻,381頁,(1956)の式から求めることができ、2回の測定の平均値を求めた。
Δn=XfΔ0c+(1−X)fΔ0
ここで、Δn=複屈折、X:結晶化度、fc:結晶配向度(fc=0.980)、fa:非晶分子配向度、Δ0:結晶部の固有複屈折、Δ0:非晶部の固有複屈折、(Δ0=Δ0=0.23)である。
【0068】
複屈折率は、日本工学工業(株)製POH型偏光顕微鏡を用いてベレックコンペンセータ法により測定して得られた3回の試行の平均値を用いた。
密度は、軽液にトルエン、重液に四塩化炭素を用いた密度勾配管法によって25℃で測定して得られた3回の試行の平均値を用いた。
結晶化度は、次式を用いて計算した。
結晶化度(X)={dc(d−da)}/{d(dc−da)}
この時、dcは結晶密度(=1.455g/cm)、daは非晶密度(=1.335g/cm)、dは試料の密度。
【0069】
<ポリエステル繊維コード(物性)の評価方法>
(1)撚り数
JIS L1017(2002)8.4によって求めた。
【0070】
(2)処理剤付着量
JIS L1017(2002)8.15 b)の質量法によって求めた。
【0071】
(3)コード剥離接着力
表1に示した配合組成のEPDM系ゴムシート(5mm厚み)の上にコードを平行に並べ(打ち込み本数36本/2.54cm)、プレス加硫を行った(150℃、30分、ゴムとコードの面圧300N/cm)。当該試料を室温に戻したのち、20℃の環境下で50mm/分の速度で、ゴムとコードの角度を90°に保ちながら、ゴムからコードを引き剥がす剥離試験を実施した。この時に剥離に要した力をN/2.54cmで表示した。
【0072】
【表1】
【0073】
(4)工程通過性
コードを図1に示す東レ・エンジニアリング(株)製摩擦試験機に走行させ、ガイド類へのRFLカスの付着状況を指標とした。繊維コードは、測定用の繊維コードサンプル1から取り出され、糸送り用のニップローラー2を経て、荷重3が付与され、梨地クロムメッキ加工管4の表面に一部巻き付けられて走行する。さらに繊維コードは糸送り用のニップローラー5を経て巻き取られる。その際の糸送り用のニップローラー2およびニップローラー5へのRFL付着量を測定した。カスの発生の極端に少ないものはA、少ないものはB、多量のカスが発生するものはCと表示し、いずれとも判定し難いものはNDと表示した。
【0074】
(5)ラテックスの粒子径
ラテックス滴をコロージョン膜を付与した透過型電子顕微鏡用銅メッシュ上に載せ、これを四酸化オスミウムで染色後水分を蒸発乾固させ透過型電子顕微鏡で写真撮影した後、粒子径を測定した。真球状ではないものは、長径と短径の平均値を粒子径とした。50個の測定値の算術平均値を粒子径とした。
【0075】
(6)ラテックスの表面張力
表面張力測定機を用いて25℃にて測定した。ラテックスを試料台上の容器に入れ、よく洗浄された白金リングを試料中に浸した後、試料台をゆっくり下降させ、リングが液面から離れる時の最大荷重を検出し、表面張力の値とした。5回の測定値の平均値を採用した。
【0076】
(実施例1)
苛性ソーダ水溶液に、レゾルシン・ホルマリン初期縮合物:“スミカノール”700(S)”(登録商標)(住友化学(株)製、65%水溶液)を添加して十分に攪拌し分散させる。これにホルマリンを、結果としてレゾルシン/ホルマリンがモル比で1/2になるように添加して均一に混合し、温度25℃で4時間熟成させ、レゾルシン・ホルマリン縮合物の溶液を得た。次に、クロロプレンゴムラテックス(“ショウプレン”(登録商標)750(昭和電工(株)製、表面張力39mN/m、平均粒径120nm)を60質量部及びポリブタジエンゴムラテックス(“ニッポール”(登録商標)LX−111A(日本ゼオン(株)製、平均粒径300nm)40質量部を混合しゴムラテックス混合液を準備した。もの、前記ゴムラテックス混合液と前記レゾルシン・ホルマリン縮合物の溶液とを、とを、固形分質量比が前者が7、後者が1となるよう混合し、温度25℃で24時間熟成し、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスの分散液を得た。さらに、ハロゲン化フェノール誘導体(“デナボンドE”(登録商標)(ナガセ化成工業(株)製、20%溶液))を、前記分散液に、固形分質量比が、前者が1,後者が3となるよう添加し、十分攪拌して、25℃で20時間熟成した。さらに、ブロックドポリイソシアネート化合物(“エラストロン”(登録商標)BN27(第一工業製薬株式会社))を、前記混合物に、固形分質量比が、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックスが10、ブロックドポリイソシアネート化合物が1となるように添加し、十分攪拌し、接着剤を含む処理液を得た。接着剤の濃度は10質量%であった。
【0077】
一方、製糸工程において紡糸油剤としてポリエポキシド化合物を混合する方法で、ポリエポキシド化合物(ソルビトールポリグリシジルエーテル)を予め付与したポリエステル繊維(東レ(株)製、T707M(1100dTex)(単糸繊度4.6dTex、44N時伸度4.5%、乾熱収縮率10.5%、非晶配向度0.55、1100デシテックス、240フィラメント、表2で原糸Aと記載)のマルチフィラメント1本を10t/10cmの片撚りを施して撚糸コードを得た。
【0078】
該コードをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー(株)製、タイヤコード処理機)を用いて前記の処理剤に浸漬したのち、温度120℃で0%のストレッチ条件下で2分間乾燥し、続いて240℃で0%のストレッチ条件下で1分間熱処理、続いて240℃で−6%の弛緩を与えながら1分間熱処理した(トータルストレッチ率−6%)。コードには処理剤の固形分、すなわち接着剤が2.5質量%付着していた。
このようにして得られたコードを上記のように、コード剥離接着力および工程通過性を測定した。結果を表2に示す。
【0079】
(実施例2〜10、比較例1〜6)
実施例1において、使用する原糸、ラテックス、トータルストレッチ率を表2および表3に示すように変更した以外は実施例1と同様の条件で処理し、同様に評価した。評価結果を表2および3に併せて示す。
【0080】
【表2】
【0081】
ショウプレン750:クロロプレンゴムラテックス“ショウプレン” (登録商標)750(昭和電工(株)製)
ショウプレン115:クロロプレンゴムラテックス“ショウプレン”(登録商標)115(昭和電工(株)製)
LX111A:ポリブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)LX−111A(日本ゼオン(株)製)
LX111NF:ポリブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)LX−111NF(日本ゼオン(株)製)
Nipol 2518FS:ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)2518FS(日本ゼオン(株)製)
Nipol LX517B:アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス“ニッポール“(登録商標)LX−517B(日本ゼオン(株)製)
【0082】
【表3】
【0083】
ショウプレン750:クロロプレンゴムラテックス“ショウプレン” (登録商標)750(昭和電工(株)製)
ショウプレン115:クロロプレンゴムラテックス“ショウプレン”(登録商標)115(昭和電工(株)製)
LX111A:ポリブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)LX−111A(日本ゼオン(株)製)
LX111NF:ポリブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)LX−111NF(日本ゼオン(株)製)
Nipol 2518FS:ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス“ニッポール”(登録商標)2518FS(日本ゼオン(株)製)
Nipol LX517B:アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス“ニッポール“(登録商標)LX−517B(日本ゼオン(株)製)

原糸B:製糸工程において、紡糸油剤としてポリエポキシド化合物(ソルビトールポリグリシジルエーテル)を予め付与したポリエステル繊維(東レ(株)製、T707C(1100dTex)(単糸繊度5.7dTex、44N時伸度4.2%、乾熱収縮率15.5%、非晶配向度0.70、1100デシテックス、192フィラメント))
“ショウプレン”(登録商標)115:クロロプレンゴムラテックス(昭和電工(株)製、表面張力47mN/m、平均粒径300nm)
“ニッポール”(登録商標)LX−111NF:ポリブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン(株)製、平均粒径350nm)
“ニッポール”(登録商標)2518FS:ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン(株)製)
“ニッポール“(登録商標)LX−517B:アクリロニトリル・ブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン(株)製)
実施例2では−6%の弛緩を0%のストレッチに変更し、トータルストレッチ率0%とした。
【0084】
表2および表3に示す評価結果から判るように、本発明によるゴム補強用ポリエステル繊維コードは、EPDM系ゴムとの接着性に優れ、かつ工程通過性が良好であることがわかる。
【符号の説明】
【0085】
1:測定用の繊維コードサンプル
2:糸送り用のニップローラー
3:荷重
4:梨地クロムメッキ加工管
5:糸送り用のニップローラー
図1