(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1(A)、(B)は、本発明になるバネ穴構造の一実施形態の平面図及び断面図を示す。同図(A)、(B)において、バネ穴10は、スピーカホルダ11に穿設された平面が円形状の開口部12を有し、かつ、スピーカホルダ11の表面に対して所定の高さで形成された、挿通されるバネの外径より内径が大である大略中空円筒状の縦断面を有する穴である。バネ穴10の内壁にはバネ穴の軸方向に対して直交する方向に90度の等角度間隔で4本のリブ13a、13b、13c及び13dが形成されている。
【0013】
リブ13a、13b、13c及び13dのそれぞれは、
図1(B)に示すように、バネ穴の軸方向と同じ方向の長さがバネ穴の軸方向と直交する方向の長さに比し長い概略縦長形状の所定の長さで、かつ、バネ穴10の内壁面に対して直交する方向の高さが例えば0.4mmに形成されている。このリブ13a〜13dの高さは、隣り合うリブにより挿入時のバネを支えたときに、バネがバネ穴10の内壁に接触しない値である。また、開口部12の半径は従来のバネ穴のそれに比し、0.4mm広く形成されている。従って、リブ13a〜13dのそれぞれの高さ方向の各頂点を結ぶ仮想円の直径は、従来のバネ穴の直径と同じである。なお、バネ穴10の構造の詳細については後述する。
【0014】
ここで、本実施形態のバネ穴10は、天井スピーカのスピーカ本体を天井の板材の上面にて保持するとともに、スピーカ本体の前面の対応する天井板材の部分に穿設された開口部を塞ぐように上記天井板材の下側にスピーカパネルを保持するためのスピーカホルダに穿設されたバネ穴であるので、まず天井スピーカについて説明する。
【0015】
図2は、天井スピーカの一例の斜視図を示す。同図において、天井スピーカ20は、スピーカ本体21とスピーカホルダ22とから構成されている。スピーカ本体21は
図2では内蔵するスピーカの斜め後方が図示されており、スピーカの前面(開口面)は
図2には図示されていない。スピーカホルダ22は、スピーカ本体21を支持するためにスピーカ本体21をその上面に固定している、
図1(A)では11で示したホルダである。スピーカホルダ22は、スピーカ本体21の外側周辺部分の対向する二つの位置にそれぞれ穿設されたバネ穴23a及び23bを有する。バネ穴23a及び23bはそれぞれ同一構造であり、そのうちの一方が
図1にバネ穴10として図示されている。バネ24は、スピーカ本体21の後部の上を通ってバネ穴23a及び23bに挿通された引張コイルバネである。
【0016】
図3は、本発明になる取り付装置の一実施形態の縦断面図を示す。
図3中、
図2と同一構成部分には同一符号を付してある。なお、
図3には
図2に示したバネ24は図示されていない。
図3において、スピーカホルダ22は、本発明になる取付装置の一実施形態であって、上面にスピーカ本体21の開口面(具体的には内蔵するスピーカの放音面)を下側にして載置固定している。スピーカホルダ22は、スピーカホルダ22のスピーカ本体21の開口面に対向する位置に開口部25を有する。
【0017】
スピーカ本体21は、ドライバユニット211とフレーム212とを有して構成されている。フレーム212は、フレーム212の中央に貫通孔213、その周辺に貫通孔214がそれぞれ形成されている。
【0018】
フレーム212とドライバユニット211とは、ドライバユニット211の後端と、フレーム212におけるドライバユニット211の後端に対向する面と、が接着剤によって固定され、かつ、ネジ215が、フレーム212の貫通孔213を通って、ドライバユニット211の後端に設けられたネジ溝に螺合することによって固定されている。
【0019】
貫通孔214は、フレーム212とドライバユニット211との間に介在する接着剤の塗布量や塗布分布等の塗布状態を確認するために形成されている。
【0020】
ところで、フレーム212がドライバユニット211とは異なる材料で形成されている場合(例えば樹脂フレームの場合)、スピーカ本体21を廃棄処分する際に、ドライバユニット211とフレーム212と分離してから分別廃棄することが望ましい。ネジ215を緩めた状態で、又は、取り外した状態で、ドライバユニット211の後端を、外部から貫通孔214を通して機械的に衝撃を与えることで、ドライバユニット211とフレーム212とを容易に分離することができる。
【0021】
上述したように、貫通孔214は、フレーム212とドライバユニット211との間に介在する接着剤の塗布状態を確認するための機能を有するとともに、ドライバユニット211とフレーム212とを容易に分離するための機能を有する。
【0022】
また、スピーカホルダ22は、スピーカ本体21の外側周辺部分の対向する二つの位置にそれぞれ穿設されたバネ穴23a及び23bを有する。バネ穴23a及び23bは、それぞれスピーカホルダ22の表面に対して所定の高さの大略中空円筒状の穴で、それぞれの内壁にはリブ13が形成されている。
図3に示すリブ13は、
図1(A)、(B)に示したリブ13a〜13dのうちの2個のリブに相当する。すなわち、バネ穴23a及び23bのそれぞれの内壁には
図1(A)、(B)に示したように、バネ穴の軸方向に対して直交する方向に90度間隔で縦長形状のリブ13が4個ずつ形成されている。
【0023】
次に、スピーカパネルの取り付け方法について、
図4(A)、(B)の断面図及び側面図と共に説明する。
図4(A)、(B)中、
図2及び
図3と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。まず、
図4(A)に示すように、
図2及び
図3に示した天井スピーカ20は、スピーカ本体21の開口面側を下にした状態で、かつ、スピーカホルダ22の一方をやや持ち上げた斜めの状態としつつ天井板27に穿設されている所定の径の天井スピーカ用開口部28を通して、天井板27の上に引き上げられて載置される。この載置位置は、
図4(A)に示すように、スピーカ本体21の開口面が天井板27の天井スピーカ用開口部28に対応する位置とされる。
【0024】
次いで、
図4(A)に示すように、バネ24がバネ穴23a及び23bに通される。バネ24には両端にそれぞれフック26a及び26bが設けられている。続いて、フック26aを作業者がバネ24のバネ力に抗して手で引っ張ってスピーカパネル29の対向する両端の一方の端部に引っ掛けた後、同様にフック26bをバネ24のバネ力に抗して手で引っ張ってスピーカパネル29の他方の端部に引っ掛けてから手を放す。バネ24は引張コイルバネであり、その収縮力がスピーカパネル29の自重よりも大きなものが用いられている。従って、手を放すとバネ24はその収縮力によりスピーカパネル29を
図4(B)に示すように、自動的に上方向に天井板27まで引き上げて開口部28を覆うような状態で固定する。このようにして、本実施形態の取付装置であるスピーカホルダ22は、スピーカ本体21とスピーカパネル29とをバネ穴23a及び24bに挿通されるバネ24によって天井板27の上側と下側とに対向させて取り付ける。
【0025】
次に、本実施形態のバネ穴構造について、詳細に説明する。
【0026】
図4(A)、(B)と共に説明したように、天井スピーカ20とスピーカパネル29とを固定するためのバネ24は、スピーカパネル29の固定時にバネ穴23a、23bに対しバネ穴の中央部ではなく上側端部からバネ穴中央部方向へ斜めに進入する。すなわち、
図5の斜視図に示すように、バネはバネ穴10(
図3、
図4の23a、23bに相当)に対して、矢印Aで示すように、バネ穴の上側端部からバネ穴10の内壁に設けられたリブ13a〜13dの中央部(すなわち、バネ穴中央部)の方向へ斜めに進入するように挿通される。
【0027】
ここで、本実施形態のバネ穴構造では、リブ13a〜13dのそれぞれの高さ(バネ穴10の内壁からバネ穴中心方向に向かう長さ)が、バネがバネ穴10に挿通されたときに、リブ13a〜13dのうち隣り合うリブでバネが接触しない高さで配置されている。このため、バネが
図5の左下方向へ抜けるように引っ張られている場合、当該バネはバネ穴10への進入時に、例えば
図6の平面図に点線の丸で示したリブ13a、13bと点接触する。一方、バネ脱出時はバネはリブ13c、13dと点接触する。
【0028】
つまり、バネがバネ穴10に対しどのような通り方をしても、バネは外周面が従来のようにバネ穴の内壁面とぴったり接触することはなく、点・線接触となる。このため、本実施形態のバネ穴構造によれば、従来に比べて挿通するバネの外周面と穴内壁面との接触部やその周辺部に表面張力によって溜まる水分を減らすことができ、結果としてバネの腐食が起こりにくくすることができる。
【0029】
次に、本実施形態のバネ穴構造における、バネをスムーズに誘導できる構造について説明する。
図7は、本発明になるバネ穴構造の一実施形態の要部の断面図、
図8は、リブの各例の断面とバネとの関係を示す図である。
図7中、
図1と同一構成部分には同一符号を付してある。本実施形態のバネ穴構造では、バネ穴10の内壁に形成されるリブ13a〜13dは穴の軸方向に伸びる縦長形状であるのに対し、バネは
図4に24で示した引張コイルバネであり穴の軸方向に対して略直交する横方向に巻回されているため、リブの先端形状によってはバネ引張り時にバネがリブ先端部に引っ掛かってしまう。
【0030】
すなわち、
図8にバネとリブの断面との関係を示すように、直角に形成された先端部31を有するリブ131に比べて、若干曲面に形成された先端部32を有するリブ132の方がバネ24との引っ掛かりが起きにくく、更に大きな曲率の曲面に形成された先端部33を有するリブ133の方がバネ24との引っ掛かりが起きにくくすることができる。そこで、本実施形態におけるバネ穴構造では、リブ13a〜13dは、
図7に示すように、バネ穴10における矢印Aに示す方向で進入するバネの進入側の開口面からのリブ開始位置15と、リブ開始位置15からリブ高さ最大位置16までの長さとが適切で、かつ、
図9に示すリブ開始角θが適切な角度である大略台形状の断面を有する構成とされている。また、リブ13a〜13dは、リブ開始位置15からリブ高さ最大位置16までの平面形状は
図7に示すように、リブ開始位置15を頂点とする大略三角形状とされている。なお、リブ開始位置15からリブ高さ最大位置16までの長さは、例えば1mm程度である。
【0031】
更に、本実施形態のバネ穴構造では、バネ穴10にバネをスムーズに挿通できるようにするため、バネ穴10は
図7に14で示すように、バネ穴の開口面に一致する先端部からリブ開始位置15の直前までの部分が直角ではなく、ある曲率(例えばR1.5)をもった曲面形状に形成されている。
【0032】
次に、以上説明した本実施形態のバネ穴構造と従来のバネ穴構造との2つの比較実験結果について説明する。
【0033】
<比較実験1>
温度26.6℃(室温)、湿度45%の条件下で、リブの有る本実施形態のバネ穴構造とリブの無い従来のバネ穴構造のそれぞれについて、バネを挿入した状態で水につけた後、一定時間(20分、40分、60分の3回試行)放置したとき、どちらの方が水気が早く無くなるかを確認する実験を行った。その結果、従来のバネ穴構造では60分経過後も水分が残っていたが、本実施形態のバネ穴構造では40分後に水分がほぼ無くなり、60分経過した時点では水分は完全になくなったことが確かめられた。
【0034】
<比較実験2>
塩濃度5%(±1%)、間歇4サイクル96時間(1サイクル8時間塩水噴霧16時間放置)の条件下で、リブの有る本実施形態のバネ穴構造とリブの無い従来のバネ穴構造のそれぞれについて、バネを挿入した状態で塩水噴霧実験を行った。実験開始後96時間後に錆の様子を確認したところ、バネの挿入部分の水平断面における錆の範囲は、従来のバネ穴構造に挿入したバネでは
図10(A)に41で示された範囲、本実施形態のバネ穴構造に挿入したバネでは
図10(B)に42で示された範囲となり、本実施形態のバネ穴構造に挿入したバネの方が錆の存在していない範囲が多いことが確かめられた。
【0035】
このように、比較実験1及び2のいずれにおいても、本実施形態のバネ穴構造の方が、従来のバネ穴構造に比べて、バネの外周面と穴内壁面との接触部やその周辺部に表面張力によって溜まる水分を早く減らすことができ、結果として錆によるバネの腐食が起こりにくくできることが確かめられた。
【0036】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、以下の種々の変形例も包含するものである。
図11(A)、(B)は、本発明になるバネ穴構造の第1変形例の要部の断面図及び斜視図を示す。同図(A)、(B)中、
図1(A)、(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図11(A)、(B)において、本実施形態のバネ穴50は、穴内部から穴外周に貫通するスリット52、53、54が穿設されている点に特徴がある。なお、バネ穴50は、スピーカホルダ11に穿設された平面が円形状の開口部51を有し、かつ、スピーカホルダ11の表面に対して所定の高さで形成された大略中空円筒状の縦断面を有する穴で、その内壁にはバネ穴の軸方向に対して直交する方向に90度の等角度間隔で4本のリブ13a、13b、13c及び13dが形成されている点は第1の実施形態のバネ穴10と同様である。本変形例によれば、バネ穴50の内部の通気性がバネ穴10よりも良くなり、バネに対するより高い防錆効果を発揮できる。
【0037】
図12(A)及び(B)は、本発明になるバネ穴構造の第2変形例の平面図及び要部の断面図を示す。同図(A)及び(B)に示すバネ穴60は、円形状の開口部61を有する大略中空円筒状の縦断面を有する穴で、その内壁には開口部61の端部、すなわち開口端にまで伸びる4個のリブ62a〜62dが形成されている構造である。リブ62a〜62dはバネ穴の軸方向に対して直交する方向に90度の等角度間隔で形成されている。この変形例における4個のリブ62a〜62dは、隣接する2個のリブがバネ穴60に挿通されてバネ穴60の開口端で
図4(A)、(B)に示したように直ちに折れ曲がるバネ24を支持する際に、バネ24がバネ穴60の内壁に接触しないような高さに設定されている。このため、本変形例では、バネがバネ穴60の開口端で折れ曲がっても、バネ穴60の内壁に触れずに済むという効果がある。
【0038】
図13(A)及び(B)は、本発明になるバネ穴構造の第3変形例の平面図及び(A)のI−I線に沿う要部の断面図を示す。
図13(A)及び(B)中、
図12(A)、(B)と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
図13(A)及び(B)に示すバネ穴70は、
図12に示したバネ穴60の内壁に形成された4個のリブ62a〜62dの間に、開口端の付近にのみリブ63a、63b、63c及び63dを追加した構造である。
【0039】
図13(A)に示すように、バネがバネ穴70の開口部に沿って折れ曲がったときに、穴内部のリブの間隔bよりも開口端のリブの間隔aの方が広いため、上述したバネ穴10、50、60ではバネ穴の開口端付近の内壁にバネが接触する可能性がある。そこで、本変形例のバネ穴70では、開口端の付近にのみリブ63a、63b、63c及び63dを補助リブとして追加した構造とすることで、上記のバネ穴の開口端付近の内壁にバネが接触する現象を防止することができる。ここで、開口端の付近にリブを追加するときに、追加する上記の補助リブは、バネが開口端でバネ穴の内壁に触れないようにするために径方向の高さを設定したり、配置するリブの周方向の間隔を狭めたりしてもよい。
【0040】
なお、上記の変形例以外にも、バネ穴の内壁にバネ穴の開口面と平行な環状のリブを1本又は数本形成したバネ穴構造でも、バネ穴の開口端付近の内壁にバネが接触する現象を防止することができる。
【0041】
また、バネが、バネ穴軸からずれた方向に延出する場合には、リブの間隔を不等間隔として、バネが延出する開口端側のリブの間隔を狭くしてもよい。これによって、何かの衝撃でバネがずれてリブとリブの間から外れてしまっても、隣のリブとリブの間に収まるため、より確実に開口端付近のバネ穴の内壁に接触させない構造にできる。
【0042】
また、バネ穴の開口端で折れ曲がったバネが接触するリブに対向する位置のバネ穴壁面部分を取り去ったバネ穴構造でもよい。更に、バネ穴の開口端付近の内壁に、挿入されるバネ(引張コイルばね)の巻回方向と逆方向の螺旋状にリブを形成するようにしてもよい。この場合はバネがリブに引っ掛ることなく挿入でき、また螺旋状リブによりバネがバネ穴の開口端付近の内壁に接触することも防止することができる。