特許第6248655号(P6248655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248655
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】摩擦クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   F16D25/12 C
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-15805(P2014-15805)
(22)【出願日】2014年1月30日
(65)【公開番号】特開2015-140913(P2015-140913A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 豪
(72)【発明者】
【氏名】大曽根 竜也
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−148947(JP,A)
【文献】 実開平02−060722(JP,U)
【文献】 実開昭56−162352(JP,U)
【文献】 実開昭54−178351(JP,U)
【文献】 米国特許第5810142(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
F16D 25/00−39/00,48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸とともに回転し、外周面にドライブプレートをスプライン嵌合するクラッチハブと、
前記クラッチハブの外周側に相対回転可能に設けられて第2回転軸とともに回転し、前記ドライブプレートに対して軸方向に接離可能に対向配置されたドリブンプレートを内周面にスプライン嵌合するクラッチドラムと、
前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートを開放方向と締結方向に移動させるクラッチ動作機構と、
前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートの間に潤滑油を供給する潤滑油供給機構と、を備える摩擦クラッチにおいて、
前記潤滑油供給機構は、前記第2回転軸の軸中心に形成された軸心油路から前記潤滑油が流入し、前記クラッチハブの外周面から前記潤滑油を流出するクラッチ潤滑油路と、
前記クラッチ潤滑油路の途中位置に設けられ、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用していないときに前記クラッチ潤滑油路を閉鎖し、前記第1回転軸の回転による遠心力によって前記クラッチ潤滑油路を開放する油路開閉バルブと、
を有し、
前記油路開閉バルブは、前記クラッチ潤滑油路の途中位置に設けられ、前記軸心油路側に小径部を有し、前記ドライブプレート側に前記小径部よりも内径寸法の大きい大径部を有する開閉油路部と、
前記開閉油路部の内部に配置されて前記潤滑油の流動方向に移動可能であって、直径寸法が前記小径部の内径寸法よりも大きく、前記大径部の内径寸法よりも小さい開閉部材と、
前記開閉部材を前記小径部に向けて付勢し、前記第1回転軸の回転による遠心力によって収縮するばね部材と、を有し、
前記開閉部材は、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用していないとき、前記ばね部材の付勢力で前記小径部を閉鎖し、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用したら、前記ばね部材の収縮によって潤滑油流出側に移動して前記大径部との間に隙間を生じさせる
ことを特徴とする摩擦クラッチ。
【請求項2】
請求項1に記載された摩擦クラッチにおいて、
前記油路開閉バルブは、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用していないとき、前記軸心油路を流れる潤滑油の油圧に抗して前記クラッチ潤滑油路を閉鎖する油路閉鎖部材を有する
ことを特徴とする摩擦クラッチ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された摩擦クラッチにおいて、
前記軸心油路から前記潤滑油が流入し、前記第2回転軸を支持するベアリングを潤滑する潤滑油が流れるベアリング潤滑経路を備え、
前記ベアリング潤滑経路は、前記軸心油路に直接連通し、
前記クラッチ潤滑油路は、前記油路開閉バルブを介して前記軸心油路に連通している
ことを特徴とする摩擦クラッチ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された摩擦クラッチにおいて、
前記クラッチハブは、外周面に複数のドライブプレートをスプライン嵌合し、
前記クラッチドラムは、前記複数のドライブプレートと交互に複数配列するように内周面に複数のドリブンプレートをスプライン嵌合し、
前記クラッチ潤滑油路は、前記油路開閉バルブの下流側に連通すると共に前記クラッチハブの軸方向に延びる中心油路と、前記中心油路から分岐して前記クラッチハブの軸方向に並んで外周面に開放する複数の分岐油路と、を有する
ことを特徴とする摩擦クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブプレートとドリブンプレートに潤滑油を供給する湿式の摩擦クラッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッチハブに保持されたドライブプレートと、クラッチドラムに保持されたドリブンプレートの間に潤滑油を供給し、両プレート間の冷却と潤滑を行う湿式の摩擦クラッチが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-98169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の摩擦クラッチでは、ドライブプレートとドリブンプレートの間に供給される潤滑油の油量がコントロールされていなかった。そのため、ドライブプレートとドリブンプレートを離間させたクラッチ開放状態にしたときにも、潤滑油が供給されていた。これにより、両プレート間の潤滑油量が多くなり、いわゆる引き摺りトルクが発生してしまい燃費悪化に繋がるという問題があった。また、両プレート間に常に潤滑油を供給するためには、オイルポンプからの供給油量を大きくする必要があり、オイルポンプの駆動トルクが増大するため、これによっても燃費が悪化してしまうという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ドライブプレートとドリブンプレートの間に潤滑油を供給するタイミングをコントロールし、燃費悪化を抑制することができる摩擦クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の摩擦クラッチは、クラッチハブと、クラッチドラム
と、クラッチ動作機構と、潤滑油供給機構と、を備えている。
前記クラッチハブは、第1回転軸とともに回転し、外周面にドライブプレートをスプライン嵌合する。
前記クラッチドラムは、前記クラッチハブの外周側に相対回転可能に設けられて第2回転軸とともに回転し、前記ドライブプレートに対して軸方向に接離可能に対向配置されたドリブンプレートを内周面にスプライン嵌合する。
前記クラッチ動作機構は、前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートを開放方向と締結方向に移動させる。
前記潤滑油供給機構は、前記ドライブプレートと前記ドリブンプレートの間に潤滑油を供給すると共に、前記第2回転軸の軸中心に形成された軸心油路から前記潤滑油が流入し、前記クラッチハブの外周面から前記潤滑油を流出するクラッチ潤滑油路と、前記クラッチ潤滑油路の途中位置に設けられ、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用していないときに前記クラッチ潤滑油路を閉鎖し、前記第1回転軸の回転による遠心力によって前記クラッチ潤滑油路を開放する油路開閉バルブと、を有する。
さらに、前記油路開閉バルブは、前記クラッチ潤滑油路の途中位置に設けられ、前記軸心油路側に小径部を有し、前記ドライブプレート側に前記小径部よりも内径寸法の大きい大径部を有する開閉油路部と、前記開閉油路部の内部に配置されて前記潤滑油の流動方向に移動可能であって、直径寸法が前記小径部の内径寸法よりも大きく、前記大径部の内径寸法よりも小さい開閉部材と、前記開閉部材を前記小径部に向けて付勢し、前記第1回転軸の回転による遠心力によって収縮するばね部材と、を有する。
そして、前記開閉部材は、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用していないとき、前記ばね部材の付勢力で前記小径部を閉鎖し、前記第1回転軸の回転による遠心力が作用したら、前記ばね部材の収縮によって潤滑油流出側に移動して前記大径部との間に隙間を生じさせる。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明の摩擦クラッチでは、軸心油路から流入した潤滑油をクラッチハブの外周面から流出するクラッチ潤滑油路の途中位置に、第1回転軸の回転による遠心力が作用していないときにこのクラッチ潤滑油路を閉鎖し、第1回転軸の回転による遠心力によってこのクラッチ潤滑油路を開放する油路開閉バルブが設けられている。
そのため、第1回転軸が回転せず、ドライブプレートとドリブンプレートを締結する必要のないとき(開放状態のとき)には、油路開閉バルブによってクラッチ潤滑油路を閉鎖して潤滑油が流出することを阻止する。また、第1回転軸が回転し、ドライブプレートとドリブンプレートを開放又は締結するときには、油路開閉バルブによってクラッチ潤滑油路を開放して潤滑油を流出可能とする。
すなわち、ドライブプレートとドリブンプレートを開放しているときには、潤滑油を供給せず、引き摺りトルクの発生やオイルポンプの駆動トルクの増大を抑制することができる。また、第1回転軸が回転することでドライブプレートとドリブンプレートの間に摩擦が発生するときには、潤滑油を供給し、両プレートの冷却と潤滑を行うことができる。
この結果、ドライブプレートとドリブンプレートの間に潤滑油を供給するタイミングをコントロールし、燃費悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の摩擦クラッチが適用された駆動力伝達装置を示す全体概略図である。
図2図1におけるA部の拡大図である。
図3図2におけるB部の拡大図である。
図4】エンジン出力軸の回転が停止しているときの潤滑油の流れを示す説明図である。
図5】エンジン出力軸が回転しているときの潤滑油の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の摩擦クラッチを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0010】
(実施例1)
まず、実施例1の摩擦クラッチの構成を、「駆動力伝達装置の全体構成」、「摩擦クラッチの詳細構成」、「摩擦クラッチ潤滑の詳細構成」に分けて説明する。
【0011】
[駆動力伝達装置の全体構成]
図1は、実施例1の摩擦クラッチが適用された駆動力伝達装置を示す全体概略図である。以下、図1に基づいて、実施例1の摩擦クラッチが適用された駆動力伝達装置の全体構成を説明する。
【0012】
実施例1の駆動力伝達装置は、ハイブリッド車両の駆動系に適用され、駆動源の駆動力を駆動輪に伝達する装置である。この駆動力伝達装置は、図1に示すように、エンジン1と、エンジン出力軸2と、モータ軸31を有するモータ/ジェネレータ3と、摩擦クラッチ4と、変速機ユニット5と、変速機入力軸6と、を備えている。なお、モータ/ジェネレータ3と摩擦クラッチ4を、モータ&クラッチハウジング7に内蔵することで、モータユニットを構成している。
【0013】
実施例1の駆動力伝達装置では、エンジン出力軸2とモータ軸31の間に摩擦クラッチ4を介装し、モータ軸31と変速機入力軸6はスプライン結合により連結されている。すなわち、モータ/ジェネレータ3は変速機ユニット5に常時連結し、エンジン1はモータ/ジェネレータ3に対して断接可能に連結している。
これにより、実施例1の駆動力伝達装置は、ノーマルオープンである湿式の摩擦クラッチ4を開放したときは、エンジン1を駆動系から切り離し、モータ/ジェネレータ3を走行駆動源とする電気自動車走行モードとする。また、摩擦クラッチ4を締結したときは、エンジン1を駆動系に連結し、エンジン1とモータ/ジェネレータ3を駆動源とするハイブリッド車走行モードとする。
【0014】
前記モータ/ジェネレータ3は、同期型交流電動機であり、図1に示すように、モータ軸31と、ロータ支持フレーム32と、モータロータ33と、モータステータ34と、を有する。
【0015】
前記モータ軸31は、両端が開放した中空の回転軸であり、変速機ユニット5側の一端に変速機入力軸6が差し込まれてスプライン結合している。また、エンジン1側の他端は、エンジン出力軸2の内側に差し込まれ、モータ軸支持ベアリングB1を介して支持されている。なお、このモータ軸31は軸方向中間部の外周面に段差部31aが形成されており、この段差部31aとエンジン出力軸2の変速機側端面2aとの間には、第1ニードルベアリングNB1が介装されている。
【0016】
前記ロータ支持フレーム32は、モータ軸31の外周面に溶接固定され、モータ軸31と一体的に回転する。このロータ支持フレーム32は、モータ軸31から径方向に延びるプレート部32aと、モータ軸31の周囲を取り囲む円筒形状を呈し、プレート部32aによって支持されるフレーム部32bと、を有している。
前記プレート部32aには、モータ軸31とモータ&クラッチハウジング7の間に介装された軸支持ベアリングB2を潤滑する潤滑油や、後述するクラッチ動作機構43を潤滑する潤滑油が流通する複数の潤滑油経路穴32cと、後述するピストンアーム43bが貫通するピストン貫通孔32dと、が形成されている。
【0017】
前記モータロータ33は、ロータ支持フレーム32のフレーム部32bの外周面に支持固定され、外周面に永久磁石が埋め込まれている。
【0018】
前記モータステータ34は、モータロータ33に対してエアギャップ34aを介して配置され、モータ&クラッチハウジング7に固定されている。このモータステータ34には、ステータコイル34bが巻きつけられている。なお、モータ&クラッチハウジング7には、モータステータ34に対向する位置に、ステータ冷却水を流通させるウォータジャケット7aが形成されている。
【0019】
なお、図1において、「8」はモータ/ジェネレータ3の回転角度を検出するレゾルバである。このレゾルバ8は、モータ&クラッチハウジング7に固定されたレゾルバステータ8aと、モータ軸31にスプライン結合すると共にレゾルバステータ8aの対向位置に配置されたレゾルバロータ8bと、によって構成されている。
【0020】
また、変速機入力軸6には、チェーンChを介して図示しないオイルポンプが連結されている。このオイルポンプは、必要部位への油圧を作り出す油圧源であり、ポンプ吐出圧を元圧としてライン圧を作り、このライン圧を元圧として変速油圧やクラッチ油圧等を調圧する。また、ライン圧や変速油圧等を調圧する際にドレンされた作動油等が潤滑油となり、図示しない潤滑油路を流れる。ここで、オイルポンプは、モータ/ジェネレータ3によって回転する変速機入力軸6の回転駆動トルクを、チェーンChを介して伝達することでポンプ駆動する。
【0021】
前記変速機ユニット5は、変速機入力軸6から入力された回転を変速するものであり、変速機ハウジングに内蔵した変速機構を有する。なお、変速機構は、例えば無段階の変速比を得るベルト式無段変速機構や、複数の変速比を段階的に得る有段変速機構からなる。
【0022】
前記エンジン出力軸2とモータ軸31と変速機入力軸6は同軸上に配置され、軸方向に延びる軸心油路9が形成されている。この軸心油路9は、変速機入力軸6及びモータ軸31を貫通し、エンジン出力軸2の内部に至るまで延在している。この軸心油路9は、変速機ユニット5に形成された不図示の潤滑油路に連通すると共に、ベアリング潤滑経路と、クラッチ潤滑油路44aに連通している。
ここで、「ベアリング潤滑経路」は、モータ軸支持ベアリングB1及び第1ニードルベアリングNB1を経由して、軸支持ベアリングB2や後述する第2ニードルベアリングNB2を潤滑する潤滑油が流れる経路である。また、「クラッチ潤滑油路44a」は、後述するドライブプレート41bとドリブンプレート42bの潤滑と冷却を行う潤滑油が流れる油路である。
前記ベアリング潤滑経路は、軸心油路9に直接連通しており、潤滑油が常時供給される。
前記クラッチ潤滑油路44aは、エンジン出力軸2の回転による遠心力でクラッチ潤滑油路44aを開放する油路開閉バルブ44b(図3参照)を介して軸心油路9に連通している。そのため、このクラッチ潤滑油路44aは、エンジン出力軸2の回転による遠心力が作用するときに潤滑油が供給される。
【0023】
前記モータ&クラッチハウジング7は、後述するクラッチドラム42のエンジン側端部に対向した位置に潤滑油排出開口7bが形成され、後述するクラッチハブ41のエンジン側端部に対向した位置に潤滑油リターン開口7cが形成されている。
さらに、このモータ&クラッチハウジング7のエンジン1側側面には、潤滑油排出開口7bと潤滑油リターン開口7cを覆うカバー7dが取り付けられている。
【0024】
[摩擦クラッチの詳細構成]
図2は、図1に示すA部の拡大図である。以下、図2に基づいて、実施例1の摩擦クラッチの詳細構成を説明する。
【0025】
前記摩擦クラッチ4は、図2に示すように、ロータ支持フレーム32とモータ&クラッチハウジング7の間をシールする第1,第2メカニカルシールMS1,MS2と、エンジン出力軸2とモータ&クラッチハウジング7の間をシールする第3メカニカルシールMS3と、によって区画されたウェット空間に配置された湿式多板クラッチである。この摩擦クラッチ4は、クラッチハブ41と、クラッチドラム42と、クラッチ動作機構43と、潤滑油供給機構44と、を備えている。
【0026】
前記クラッチハブ41は、エンジン出力軸2(第1回転軸)の外周面に固定され、このエンジン出力軸2とともに回転する。クラッチハブ41の外周面にはスプライン溝41aが形成され、複数のドライブプレート41bがスプライン嵌合している。
【0027】
前記クラッチドラム42は、クラッチハブ41の外周側に配置され、ロータ支持フレーム32のプレート部32aに溶接固定されて、このロータ支持フレーム32及びロータ支持フレーム32が固定されたモータ軸31(第2回転軸)とともに回転する。また、このクラッチドラム42は、クラッチハブ41との間に隙間を持って対向しており、相対回転可能となっている。クラッチドラム42の内周面には、スプライン溝42aが形成され、複数のドリブンプレート42bがスプライン嵌合している。
ここで、複数のドライブプレート41bと複数のドリブンプレート42bは、交互に対向配置され、軸方向に離接可能となっている。なお、クラッチドラム42のエンジン側端部近傍位置には、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの抜けを規制するスナップリング等のストッパ部材42cが設けられている。
【0028】
前記クラッチ動作機構43は、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bを開放方向と締結方向に移動させる油圧アクチュエータである。このクラッチ動作機構43は、ピストン43aを有する油圧シリンダーと、ピストン43aと両プレート41b,42bの間に配置されたピストンアーム43bと、ピストンアーム43bとロータ支持フレーム32のプレート部32aの間に介装されたリターンスプリング43cと、を有している。
【0029】
前記油圧シリンダーは、ピストン43aと、クラッチ圧油路43d(図1参照)と、シリンダー油室43eと、を有する。
前記ピストン43aは、モータ&クラッチハウジング7に形成されたピストン凹部7eの内側に、ピストンシールPSを介して摺動可能に設けられている。
前記クラッチ圧油路43dは、モータ&クラッチハウジング7に形成され、変速機ユニット5に形成した油路5aを介して図示しないコントロールバルブユニットによって作り出したクラッチ油圧を導く油路である。
前記シリンダー油室43eは、ピストン凹部7eとピストン43aの間に区画形成され、クラッチ圧油路43dに連通している(図1参照)。
【0030】
前記ピストンアーム43bは、油圧シリンダーからの押圧力によりドライブプレート41bとドリブンプレート42bに対して押付力を発生させるもので、図2に示すように、ピストン43aとプレート部32aの間に配置されている。このピストンアーム43bは、プレート部32aからピストン43aに向けて突出形成された案内筒部32eが差し込まれる円筒形状を呈し、この案内筒部32eの外周面に摺動リング部材43fを介して接し、案内筒部32eの外周面に沿って移動可能となっている。また、ピストンアーム43bのエンジン側端部は、ピストン貫通孔32dから両プレート41b,42bに向けて突出している。
なお、ピストンアーム43bとピストン43aの間には第2ニードルベアリングNB2が介装され、ピストン43aがピストンアーム43bの回転に伴って連れ回ることを抑えている。
【0031】
前記リターンスプリング43cは、ピストン43a及びピストンアーム43bをモータ&クラッチハウジング7に向けて付勢するコイルスプリングである。
【0032】
[摩擦クラッチ潤滑の詳細構成]
図3は、図2に示すB部の拡大図である。以下、図3に基づき、実施例1の摩擦クラッチ潤滑の詳細構成について説明する。
【0033】
前記潤滑油供給機構44は、軸心油路9を介して供給される潤滑油を、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に供給する機構であり、クラッチ潤滑油路44aと、油路開閉バルブ44bと、を有している。
【0034】
前記クラッチ潤滑油路44aは、エンジン出力軸2及びクラッチハブ41を貫通し、軸心油路9に連通すると共に、クラッチハブ41の外周面であるスプライン溝41aの内側に開放している。すなわち、このクラッチ潤滑油路44aは、軸心油路9から潤滑油が流入し、クラッチハブ41の外周面(スプライン溝41aの内側)から潤滑油を流出する。
このクラッチ潤滑油路44aは、図3に示すように、第1径方向油路44cと、第2径方向油路44dと、中心油路44eと、分岐油路44fと、を有している。
前記第1径方向油路44cは、エンジン出力軸2に形成されて径方向に延びると共に、軸心油路9に連通している。前記第2径方向油路44dは、クラッチハブ41に形成されて径方向に延びると共に、第1径方向油路44cに連通している。前記中心油路44eは、第2径方向油路44dに連通し、クラッチハブ41の軸方向に延びている。前記分岐油路44fは、中心油路44eから複数分岐し、クラッチハブ41の軸方向に並ぶと共にスプライン溝41aの内側に開放している。
【0035】
前記油路開閉バルブ44bは、クラッチ潤滑油路44aの途中位置に設けられ、エンジン出力軸2の回転による遠心力が作用していないときにクラッチ潤滑油路44aを閉鎖し、エンジン出力軸2の回転による遠心力でクラッチ潤滑油路44aを開放する。
この油路開閉バルブ44bは、筒部材44gと、チェックボール44hと、ばね部材44jと、を有している。
【0036】
前記筒部材44gは、第1径方向油路44cに嵌着される両端が開放した円筒部材であり、軸心油路9側に比較的内径寸法の小さい小径部441gを有し、ドライブプレート41b側に小径部441gよりも内径寸法の大きい大径部442gを有している。つまり、この筒部材44gにより、小径部441gと大径部442gを有する開閉油路部が形成される。
【0037】
前記チェックボール44hは、筒部材44gの内部に配置された球体部材であり、潤滑油の流動方向(筒部材44gの軸方向)に移動可能となっている。このチェックボール44hの直径寸法は、小径部441gの内径寸法よりも大きく、大径部442gの内径寸法よりも小さくなっている。
これにより、このチェックボール44hが、小径部441gに接することでクラッチ潤滑油路44aを閉鎖する。また、大径部442gに対向すると、このチェックボール44hと筒部材44gの間に隙間が生じ、クラッチ潤滑油路44aが開放される。つまり、このチェックボール44hは、クラッチ潤滑油路44aを開閉する開閉部材に相当する。
【0038】
前記ばね部材44jは、第1径方向油路44cの内部に配置され、チェックボール44hを小径部441gに向けて付勢し、エンジン出力軸2の回転による遠心力によって収縮するコイルばねである。このばね部材44jは、軸心油路9を流れる潤滑油の油圧では収縮しない付勢力を有しており、軸心油路9を流れる潤滑油の油圧に抗してクラッチ潤滑油路44aを閉鎖する油路閉鎖部材に相当する。
【0039】
次に、実施例1の摩擦クラッチにおける作用を、「エンジン出力軸停止時潤滑作用」と、「エンジン出力軸回転時潤滑作用」に分けて説明する。
【0040】
[エンジン出力軸停止時潤滑作用]
図4は、エンジン出力軸の回転が停止しているときの潤滑油の流れを示す説明図である。以下、図4に基づき、実施例1のエンジン出力軸停止時潤滑作用について説明する。
【0041】
モータ/ジェネレータ3を駆動させると、このモータ/ジェネレータ3の駆動によって変速機入力軸6が回転駆動し、チェーンChを介して図示しないオイルポンプがポンプ駆動して、図示しない潤滑油路から軸心油路9へと潤滑油が流れ込む。また、モータ/ジェネレータ3の駆動によって、モータ軸31とともにクラッチドラム42が回転する。
【0042】
軸心油路9に流れ込んだ潤滑油は、変速機入力軸6及びモータ軸31の回転によって発生する遠心力により、軸心油路9から径方向へと流れる。すなわち、図示しない潤滑油路から軸心油路9へと流れ込んだ潤滑油は、図4に矢印で示すように、軸心油路9からエンジン出力軸2の内部へと流れ込み、モータ軸31とエンジン出力軸2の間に介装されたモータ軸支持ベアリングB1及び第1ニードルベアリングNB1を潤滑しつつ、モータ&クラッチハウジング7の内部へと流入する。
【0043】
モータ&クラッチハウジング7の内部に流入した潤滑油は、図4に矢印で示すように、潤滑油経路穴32cを経由して軸支持ベアリングB2や第2ニードルベアリングNB2を潤滑する。また、ピストン貫通孔32dを経由した潤滑油は、案内筒部32eと摺動リング部材43fの間を潤滑する。
【0044】
一方、このときエンジン1を停止していると、エンジン出力軸2は回転しない。さらに、摩擦クラッチ4を開放していれば、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bが相対回転しながら接触することはない。すなわち、モータ/ジェネレータ3の駆動時にエンジン1を停止すると共に、摩擦クラッチ4を開放している場合では、クラッチドラム42は回転するものの、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間の潤滑や冷却を行う必要はない。
【0045】
これに対し、エンジン出力軸2が停止しているときには、油路開閉バルブ44bにおいて、軸心油路9を流れる潤滑油の油圧に抗して、チェックボール44hがばね部材44jの付勢力により筒部材44gの小径部441gに押し付けられている。そのため、チェックボール44hが筒部材44gに密着し、クラッチ潤滑油路44aは閉鎖されている。これにより、軸心油路9からクラッチ潤滑油路44aへと潤滑油が流れることが阻止され、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に潤滑油が供給されることはない。
【0046】
この結果、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間の潤滑油量を抑制することができ、モータ/ジェネレータ3の駆動によってモータ軸31が回転し、クラッチドラム42が回転しても、停止しているドライブプレート41bと回転するドリブンプレート42bの間に引き摺りトルクが発生することを防止できる。そのため、燃費悪化を防止することができる。
【0047】
特に、この実施例1では、ばね部材44jによって、軸心油路9を流れる潤滑油の油圧に抗して、チェックボール44hを小径部441gに押し付けているので、簡易な構造で確実にクラッチ潤滑油路44aを閉鎖することができる。
【0048】
また、エンジン出力軸2が停止し、エンジン出力軸2の回転による遠心力が作用していないときには、軸心油路9を流れる潤滑油がドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に流れ込むことがないことから、この軸心油路9を流れる潤滑油は、全てベアリング潤滑経路に流れる。
このため、オイルポンプからの供給油量を大きくしなくても、ベアリング潤滑経路に十分な量の潤滑油を流通させることができる。そして、オイルポンプの駆動トルクの増大を防止して、燃費悪化を抑えることができる。
【0049】
[エンジン出力軸回転時潤滑作用]
図5は、エンジン出力軸が回転しているときの潤滑油の流れを示す説明図である。以下、図5に基づき、実施例1のエンジン出力軸回転時潤滑作用について説明する。
【0050】
モータ/ジェネレータ3を駆動することで、軸心油路9に潤滑油が流れ込んだとき、摩擦クラッチ4のシリンダー油室43eにクラッチ油圧を供給し、ピストン43aを駆動する場合を考える。この場合では、ピストン43aの押圧力がピストンアーム43bを介してドライブプレート41bとドリブンプレート42bに伝達され、両プレート41b,42bが締結方向に移動する。これにより、クラッチドラム42の回転がクラッチハブ41に伝わり、クラッチハブ41及びエンジン出力軸2が回転する。
すなわち、モータ/ジェネレータ3の駆動時に摩擦クラッチ4を締結する場合では、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bが相対回転しながら接触し、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間の潤滑や冷却を行う必要が生じる。
【0051】
これに対し、エンジン出力軸2が回転することで、このエンジン出力軸2の回転による遠心力が油路開閉バルブ44bに作用し、図5に示すように、ばね部材44jを収縮させる。そして、ばね部材44jが収縮すると、軸心油路9を流れる潤滑油の油圧によってチェックボール44hが筒部材44gの内部に移動し、チェックボール44hが筒部材44gの大径部442gに対向する。これにより、チェックボール44hと筒部材44gの間に隙間が生じ、クラッチ潤滑油路44aが開放される。
【0052】
クラッチ潤滑油路44aが開放されると、軸心油路9を流れる潤滑油の一部は、モータ軸支持ベアリングB1を潤滑しつつ、クラッチ潤滑油路44aに流れ込み、第2径方向油路44dから中心油路44eへと順に流れ、分岐油路44fからクラッチハブ41の外方へと流れ出る。そして、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に流れ込んで、両プレート41b,42b間の潤滑と冷却を行う。
【0053】
一方、軸心油路9は、ベアリング潤滑経路に対しては直接接続しているので、軸心油路9を流れる潤滑油の一部は、モータ軸支持ベアリングB1及び第1ニードルベアリングNB1を潤滑しつつ、モータ&クラッチハウジング7の内部へと流入する。そして、潤滑油経路穴32cを経由して軸支持ベアリングB2や第2ニードルベアリングNB2を潤滑し、ピストン貫通孔32dを経由して、案内筒部32eと摺動リング部材43fの間を潤滑する。
【0054】
このように、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間の潤滑や冷却を行う必要が生じたときには、エンジン出力軸2の回転による遠心力と軸心油路9を流れる潤滑油の油圧によってチェックボール44hを移動させ、クラッチ潤滑油路44aを開放してドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間の潤滑を行うことができる。
【0055】
また、油路開閉バルブ44bによるクラッチ潤滑油路44aを閉鎖する力Fsは、下記式(1)により、求めることができる。
Fs=k×x …(1)
ここで、「k」は、ばね部材44jのばね定数である。「x」は、ばね部材44jの自然長からの縮み寸法である。
また、エンジン出力軸2の回転によって発生する遠心力Fは、下記式(2)により、求めることができる。
F=m×r×ω …(2)
ここで、「m」は、チェックボール44hの質量である。「r」は、エンジン出力軸2の軸位置からばね部材44jまでの距離(寸法)である。ωは、エンジン出力軸2の角速度である。
【0056】
すなわち、遠心力F>クラッチ潤滑油路44aを閉鎖する力Fsとなったタイミングでクラッチ潤滑油路44aが開放するので、この開放タイミングは、チェックボール44hの質量やばね部材44jのばね反力を調整することで、適宜設定することができる。そのため、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間への潤滑油供給を、適切なタイミングで行うことができ、さらなる燃費向上を図ることができる。
【0057】
なお、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間を潤滑・冷却した潤滑油は、図5に矢印で示すように、クラッチドラム42のエンジン側端部から潤滑油排出開口7bを介してモータ&クラッチハウジング7の外側に排出される。そして、潤滑油リターン開口7cを経由してモータ&クラッチハウジング7の内部に循環され、ドレンされる。
【0058】
また、実施例1では、ベアリング潤滑経路は軸心油路9に直接連通し、クラッチ潤滑油路44aは油路開閉バルブ44bを介して軸心油路9に連通している。そのため、ベアリング潤滑経路には、常時潤滑油を供給することができる。一方、クラッチ潤滑油路44aへは、エンジン出力軸2の回転による遠心力が作用するときだけ潤滑油を供給することができる。これにより、エンジン出力軸2の回転による遠心力を利用して、潤滑油が常時必要な箇所には常時潤滑油を供給しつつ、常時潤滑油が必要でない箇所には必要なタイミングで潤滑油を供給することができる。
【0059】
さらに、実施例1では、摩擦クラッチ4が、複数のドライブプレート41bと複数のドリブンプレート42bを有する多板クラッチであり、クラッチ潤滑油路44aが、油路開閉バルブ44bの下流側に連通すると共にクラッチハブ41の軸方向に延びる中心油路44eと、この中心油路44eから分岐してクラッチハブ41の軸方向に並んで外周面に開放する複数の分岐油路44fと、を有している。
これにより、複数のドライブプレート41bと複数のドリブンプレート42bに対して、潤滑油を均等に供給することが可能になり、潤滑油の偏りを防止することができる。
【0060】
そして、実施例1の油路開閉バルブ44bは、クラッチ潤滑油路44aの途中位置に設けられ、軸心油路9側に小径部441gを有し、ドライブプレート41b側に小径部441gよりも内径寸法の大きい大径部442gを有する筒部材44gと、筒部材44gの内部に配置されて潤滑油の流動方向に移動可能であって、外形最大寸法である直径が小径部441gの内径寸法よりも大きく、大径部442gの内径寸法よりも小さいチェックボール44hと、チェックボール44hを小径部441gに向けて付勢し、エンジン出力軸2の回転による遠心力によって収縮するばね部材44jと、を有している。
これにより、簡易な構造であっても、エンジン出力軸2の回転による遠心力を利用して、クラッチ潤滑油路44aの開閉を行うことができ、必要なタイミングで潤滑油の供給を可能とすることができる。
【0061】
次に、効果を説明する。
実施例1の摩擦クラッチにあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0062】
(1) 第1回転軸(エンジン出力軸2)とともに回転し、外周面にドライブプレート41bをスプライン嵌合するクラッチハブ41と、
前記クラッチハブ41の外周側に相対回転可能に設けられて第2回転軸(モータ軸31)とともに回転し、前記ドライブプレート41bに対して軸方向に接離可能に対向配置されたドリブンプレート42bを内周面にスプライン嵌合するクラッチドラム42と、
前記ドライブプレート41bと前記ドリブンプレート42bを開放方向と締結方向に移動させるクラッチ動作機構43と、
前記ドライブプレート41bと前記ドリブンプレート42bの間に潤滑油を供給する潤滑油供給機構44と、を備える摩擦クラッチ4において、
前記潤滑油供給機構44は、前記第2回転軸(モータ軸31)に形成された軸心油路9から前記潤滑油が流入し、前記クラッチハブ41の外周面(スプライン溝41aの内側)から前記潤滑油を流出するクラッチ潤滑油路44aと、
前記クラッチ潤滑油路44aの途中位置に設けられ、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力が作用していないときに前記クラッチ潤滑油路44aを閉鎖し、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力によって前記クラッチ潤滑油路44aを開放する油路開閉バルブ44bと、
を有する構成とした。
これにより、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に潤滑油を供給するタイミングをコントロールし、燃費悪化を抑制することができる。
【0063】
(2) 前記油路開閉バルブ44bは、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力が作用していないとき、前記軸心油路9を流れる潤滑油の油圧に抗して前記クラッチ潤滑油路44aを閉鎖する油路閉鎖部材(ばね部材44j)を有する構成とした。
これにより、上記(1)の効果に加え、エンジン出力軸2の回転による遠心力が作用しなければ、クラッチ潤滑油路44aに潤滑油が流入することが規制され、適切なタイミングでドライブプレート41bとドリブンプレート42bの間に潤滑油を供給することができる。
【0064】
(3) 前記油路開閉バルブ44bは、前記クラッチ潤滑油路44aの途中位置に設けられ、前記軸心油路9側に小径部441gを有し、前記ドライブプレート41b側に前記小径部441gよりも内径寸法の大きい大径部442gを有する開閉油路部(筒部材44g)と、
前記開閉油路部(筒部材44g)の内部に配置されて前記潤滑油の流動方向に移動可能であって、外形最大寸法(直径寸法)が前記小径部441gの内径寸法よりも大きく、前記大径部442gの内径寸法よりも小さい開閉部材(チェックボール44h)と、
前記開閉部材(チェックボール44h)を前記小径部441gに向けて付勢し、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力によって収縮するばね部材44jと、を有し、
前記開閉部材(チェックボール44h)は、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力が作用していないとき、前記ばね部材44jの付勢力で前記小径部441gを閉鎖し、前記第1回転軸(エンジン出力軸2)の回転による遠心力が作用したら、前記ばね部材44jの収縮によって前記ドライブプレート41b側に移動して前記大径部442gとの間に隙間を生じさせる構成とした。
これにより、上記(1)又は(2)の効果に加え、簡易な構造であっても、エンジン出力軸2の回転による遠心力を利用して必要なタイミングでクラッチ潤滑油路44aの開閉を行い、燃費の悪化を抑制することができる。
【0065】
(4) 前記軸心油路9から前記潤滑油が流入し、前記第2回転軸(モータ軸31)を支持するベアリング(軸支持ベアリングB2)を潤滑する潤滑油が流れるベアリング潤滑経路を備え、
前記ベアリング潤滑経路は、前記軸心油路9に直接連通し、
前記クラッチ潤滑油路44aは、前記油路開閉バルブ44bを介して前記軸心油路9に連通している構成とした。
これにより、上記(1)から(3)のいずれかの効果に加え、エンジン出力軸2の回転による遠心力を利用して、潤滑油が常時必要な箇所には常時潤滑油を供給しつつ、常時潤滑油が必要でない箇所には必要なタイミングで潤滑油を供給することができる。
【0066】
(5) 前記クラッチハブ41は、外周面に複数のドライブプレート41bをスプライン嵌合し、
前記クラッチドラム42は、前記複数のドライブプレート41bと交互に複数配列するように内周面に複数のドリブンプレート42bをスプライン嵌合し、
前記クラッチ潤滑油路44aは、前記油路開閉バルブ44bの下流側に連通すると共に前記クラッチハブ41の軸方向に延びる中心油路44eと、前記中心油路44eから分岐して前記クラッチハブ41の軸方向に並んで外周面に開放する複数の分岐油路44fと、を有する構成とした。
これにより、上記(1)から(4)のいずれかの効果に加え、複数のドライブプレート41bと複数のドリブンプレート42bに対して、潤滑油を均等に供給することが可能になり、潤滑油の偏りを防止することができる。
【0067】
以上、本発明の摩擦クラッチを実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0068】
実施例1では、クラッチ潤滑油路44aがエンジン出力軸2とクラッチハブ41を貫通し、油路開閉バルブ44bがエンジン出力軸2に形成された第1径方向油路44cに設けられた例を示している。しかしながら、これに限らず、クラッチ潤滑油路44aは、クラッチハブ41だけに形成されたものであってもよい。
【0069】
また、油路開閉バルブ44bが、開閉部材としてチェックボール44hを有する例を示したが、例えば開閉部材がプレート形状を呈してもよい。エンジン出力軸2が回転することで生じる遠心力によって開放する逆止弁であればよい。
【0070】
実施例1では、本発明の摩擦クラッチをエンジン1とモータ/ジェネレータ3の間に配置した例を示したが、これに限らない。湿式の摩擦クラッチであれば、配置位置に拘わらず本発明の構成を適用することができる。さらに、実施例1では多板クラッチに適用する例を示したが、ドライブプレート41bとドリブンプレート42bをそれぞれ一つずつ有する単板クラッチであっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 エンジン
2 エンジン出力軸(第1回転軸)
3 モータ/ジェネレータ
31 モータ軸(第2回転軸)
4 摩擦クラッチ
5 変速機ユニット
6 変速機入力軸
7 モータ&クラッチハウジング
9 軸心油路
41 クラッチハブ
41b ドライブプレート
42 クラッチドラム
42b ドリブンプレート
43 クラッチ動作機構
44 潤滑油供給機構
44a クラッチ潤滑油路
44b 油路開閉バルブ
44c 第1径方向油路
44d 第2径方向油路
44e 中心油路
44f 分岐油路
44g 筒部材(開閉油路部)
441g 小径部
442g 大径部
44h チェックボール(開閉部材)
44j ばね部材(油路閉鎖部材)
図1
図2
図3
図4
図5