特許第6248701号(P6248701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248701
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】支持ロール
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/128 20060101AFI20171211BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   B22D11/128 340B
   F16C13/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-38815(P2014-38815)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160246(P2015-160246A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】千代盛 豊
(72)【発明者】
【氏名】谷口 将士
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−167444(JP,A)
【文献】 実開昭59−148159(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/128,B21B 39/00,
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料を支持及び運搬する支持ロールであって、
前記支持ロールの回転軸方向に延伸する軸部材と、
前記軸部材に嵌合される円環形状を有し、前記回転軸方向に配列される複数のロール部材と、
を備え、
前記ロール部材の、外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域には、前記回転軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が形成され、
前記回転軸方向に隣り合う前記ロール部材の対向面間の前記薄肉部に対応する領域に、スリット部を有し、
前記ロール部材の外周部における前記スリット部の幅に対する前記スリット部の前記径方向の深さの比が、10以上である、ことを特徴とする、支持ロール。
【請求項2】
前記支持ロールの径方向での断面における前記スリット部の形状は、前記径方向において内側に向かうにつれて前記スリット部の幅が一様に小さくなるくさび型である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の支持ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料から熱負荷を加えられながら当該金属材料を支持及び搬送する支持ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造工程では、鋳型の下端から引き抜かれた鋳片が、複数対の支持ロールによって支持及び搬送されながら冷却される。鋳片は鋳型に注がれた溶融金属(例えば溶鋼)の外周面が冷却され凝固したものであり、支持ロールの鋳片との接触面には多大な熱負荷が加えられる。熱負荷が加えられることにより、支持ロールの表面には熱膨張による熱応力が発生し、熱亀裂が生じる可能性がある。熱亀裂が発生した支持ロールは交換する必要があるため、支持ロールの使用寿命が短い場合には短期間で支持ロールの交換が行われることとなり、設備保全のコストの増加につながる恐れがある。
【0003】
そこで、支持ロールの表面における熱応力を緩和することにより、支持ロールの使用寿命を長くする技術が提案されている。例えば、特許文献1には、連続鋳造用ロール(CCロール)において、ロール胴部の外周面に、アスペクト比が比較的高く、先端部(底部)に曲面状の空洞部を有するスリットを多数形成する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、鋳片との接触により支持ロールの表面に発生する熱膨張が当該スリットにより吸収され、熱応力が緩和されるため、熱亀裂の発生を抑制することができ、ロールの使用寿命を伸ばすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−195517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載の技術では、支持ロールにスリットを形成するために電解加工が用いられている。電解加工では、支持ロールと加工電極との間に電解液を供給しながら、両者の間に互いに逆符号の電圧を負荷することにより、支持ロールの表面のうち加工電極に接近している領域が溶解される。そして、支持ロールの溶解に合わせて加工電極を支持ロールの径方向に差し込んでいくことによりスリットが形成される。このような電解加工では、形成可能なスリット幅の最小値に制約があり、熱膨張を吸収するための最適なスリット幅を実現できない可能性があった。
【0006】
例えば、スリット幅が大きい場合には、支持ロールの表面のうちスリットが形成されない領域の面積、すなわち鋳片と接触する領域の面積が相対的に小さくなってしまうため、鋳片との接触面圧が増加する。従って、支持ロールの表面の摩耗速度が速まり、支持ロールの使用寿命が短くなってしまう可能性がある。このように、特許文献1に記載の技術では、支持ロールの表面にスリットが形成されることにより熱亀裂の発生は抑制される反面、当該スリットの幅を適切に制御できないことにより支持ロールの表面の摩耗が促進されてしまう可能性があり、ロールの使用寿命を延ばすことができない恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、金属材料を支持及び運搬する支持ロールに対して当該金属材料から熱負荷が加えられる工程において、支持ロールの使用寿命をより長大化することが可能な、新規かつ改良された支持ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、金属材料を支持及び運搬する支持ロールであって、前記支持ロールの回転軸方向に延伸する軸部材と、前記軸部材に嵌合される円環形状を有し、前記回転軸方向に配列される複数のロール部材と、を備え、前記ロール部材の、外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域には、前記回転軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が形成され、回転軸方向に隣り合う前記ロール部材の対向面間の薄肉部に対応する領域に、スリット部を有し、ロール部材の外周部におけるスリット部の幅に対するスリット部の径方向の深さの比が、10以上であることを特徴とする、支持ロールが提供される。
【0009】
また、当該支持ロールにおいては、前記支持ロールの径方向での断面における前記スリット部の形状は、前記径方向において内側に向かうにつれて前記スリット部の幅が一様に小さくなるくさび型であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、金属材料を支持及び運搬する支持ロールに対して当該金属材料から熱負荷が加えられる工程において、支持ロールの使用寿命をより長大化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る支持ロールが適用される連続鋳造機の概略構成を示す側断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る支持ロールの構成を示す正面図である。
図3図2に示す支持ロールのA−A断面での断面図である。
図4図3に示すロール部を構成するロール部材の形状を示す外観図及び断面図である。
図5】従来の支持ロールの一構成例を示す断面図である。
図6】連続鋳造工程において従来の支持ロールによって鋳片が支持される様子を模式的に示す概略図である
図7】スリット部の形状がくさび型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
図8】スリット部の形状が矩形型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
図9】スリット部の形状が放物線型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
図10】本実施形態に係る支持ロールのスリット部の形状について説明するための説明図である。
図11】比較例、実施例1及び実施例2における、使用後の支持ロールの径方向の摩耗量を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
また、以下の説明では、本発明の一実施形態として、本発明に係る支持ロールが連続鋳造工程に適用される場合を例に挙げて説明を行う。連続鋳造工程では、鋳造速度が約0〜4(mpm:meter per minute)であり、金属材料の通板速度が比較的遅いため、当該金属材料から支持ロールに対して加えられる熱負荷が他の工程に比べて大きい。本発明に係る支持ロールは、例えば連続鋳造工程のような、支持ロールに対して多大な熱負荷が加えられ得る工程に対して好適に適用される。ただし、本発明はかかる例に限定されず、本発明に係る支持ロールは、当該支持ロールによって金属材料が支持及び運搬される工程であって、当該金属材料から当該支持ロールに対して熱負荷が加えられる工程であれば、他の工程に対しても適用可能である。本発明に係る支持ロールがこのような他の工程に適用された場合であっても、後述する効果と同様の効果を得ることができる。
【0015】
<1.連続鋳造機の全体構成>
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る支持ロールが適用される連続鋳造機の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る支持ロールが適用される連続鋳造機の概略構成を示す側断面図である。なお、図1を含む以下に示す図面では、説明のため、本発明の主要部分である一部の構成部材の大きさを誇張して表現している場合があり、各図面において図示される各構成部材の相対的な大きさは、必ずしも実際の構成部材間における大小関係を正確に表現するものではない。
【0016】
図1に示すように、連続鋳造機20は、連続鋳造用の鋳型1を用いて溶融金属2(例えば溶鋼)を連続鋳造し、スラブ等の鋳片3を製造するための装置である。連続鋳造機20は、鋳型1と、取鍋4と、タンディッシュ5と、浸漬ノズル6と、二次冷却装置7と、鋳片切断機8とを備える。
【0017】
取鍋4は、溶融金属2を外部からタンディッシュ5まで搬送するための可動式の容器である。取鍋4は、タンディッシュ5の上方に配置され、取鍋4内の溶融金属2がタンディッシュ5に供給される。タンディッシュ5は、鋳型1の上方に配置され、溶融金属2を貯留して、当該溶融金属2中の介在物を除去する。浸漬ノズル6は、タンディッシュ5の下端から鋳型1に向けて下方に延び、その先端は鋳型1内の溶融金属2に浸漬されている。当該浸漬ノズル6は、タンディッシュ5にて介在物が除去された溶融金属2を鋳型1内に連続供給する。
【0018】
鋳型1は、鋳片3の幅及び厚さに応じた四角筒状であり、例えば、一対の長辺鋳型板で一対の短辺鋳型板を幅方向両側から挟むように組み立てられる。これら鋳型板は、例えば水冷銅板で構成されている。鋳型1は、かかる鋳型板と接触する溶融金属2を冷却して、外殻の凝固シェル3aの内部に未凝固部3bを含む鋳片3を製造する。凝固シェル3aが鋳型1下方に向かって移動するにつれて、内部の未凝固部3bの凝固が進行し、外殻の凝固シェル3aの厚さは、徐々に厚くなる。かかる凝固シェル3aと未凝固部3bを含む鋳片3は、鋳型1の下端から引き抜かれる。
【0019】
二次冷却装置7は、鋳型1の下方の二次冷却帯9に設けられ、鋳型1下端から引き抜かれた鋳片3を支持及び搬送しながら冷却する。この二次冷却装置7は、鋳片3の厚さ方向両側に配置される複数対の支持ロール(例えば、サポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13)と、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズル(図示せず。)とを有する。当該支持ロールとして本発明に係る支持ロールが適用され得る。
【0020】
二次冷却装置7に設けられる支持ロールは、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、鋳片3を支持しながら搬送する支持搬送手段として機能する。当該支持ロールにより鋳片3を厚さ方向両側から支持することで、二次冷却帯9において凝固途中の鋳片3のブレークアウトやバルジングを防止できる。
【0021】
当該支持ロールは、例えば、図1に示すサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13を含む。これらサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13は、二次冷却帯9における鋳片3の搬送経路(パスライン)を形成する。このパスラインは、図1に示すように、鋳型1の直下では垂直であり、次いで曲線状に湾曲して、最終的には水平になる。二次冷却帯9において、当該パスラインが垂直である部分を垂直部9A、湾曲している部分を湾曲部9B、水平である部分を水平部9Cと称する。このようなパスラインを有する連続鋳造機20は、垂直曲げ型の連続鋳造機20と呼称される。なお、本発明に係る支持ロールは、図1に示すような垂直曲げ型の連続鋳造機20に限定されず、湾曲型又は垂直型など他の各種の連続鋳造機に適用可能である。
【0022】
ここで、上記サポートロール11、ピンチロール12、及びセグメントロール13について説明する。サポートロール11は、鋳型1の直下の垂直部9Aに設けられる無駆動式ロールであり、鋳型1から引き抜かれた直後の鋳片3を支持する。鋳型1から引き抜かれた直後の鋳片3は、凝固シェル3aが薄い状態であるため、ブレークアウトやバルジングを防止するために比較的短い間隔(ロールピッチ)で支持する必要がある。そのため、サポートロール11としては、ロールピッチを短縮することが可能な小径のロールが用いられることが望ましい。図1に示す例では、垂直部9Aにおける鋳片3の両側に、小径のロールからなる3対のサポートロール11が、比較的狭いロールピッチで設けられている。
【0023】
ピンチロール12は、モータ等の駆動手段により回転する駆動式ロールであり、鋳片3を鋳型1から引き抜く機能を有する。ピンチロール12は、垂直部9A、湾曲部9B及び水平部9Cにおいて適切な位置にそれぞれ配置される。鋳片3は、ピンチロール12から伝達される力によって鋳型1から引き抜かれ、上記パスラインに沿って搬送される。なお、ピンチロール12の配置は図1に示す例に限定されず、その配置位置は任意に設定されてよい。
【0024】
セグメントロール13(ガイドロールとも称する。)は、湾曲部9B及び水平部9Cに設けられる無駆動式ロールであり、上記パスラインに沿って鋳片3を支持及び案内する。セグメントロール13は、パスライン上の位置によって、及び、鋳片3のF面(Fixed面、図1では左下側の面)とL面(Loose面、図1では右上側の面)とで、それぞれ異なるロール径やロールピッチで配置されてよい。
【0025】
鋳片切断機8は、上記パスラインの水平部9Cの終端に配置され、当該パスラインに沿って搬送された鋳片3を所定の長さに切断する。切断された厚板状の鋳片14は、テーブルロール15により次工程の設備に搬送される。
【0026】
以上、図1を参照して、本発明に係る支持ロールが適用される連続鋳造機20の全体構成について説明した。なお、連続鋳造機20によって製造される鋳片3の種類及びサイズは、特に限定されない。例えば、鋳片3は、厚さが250〜300(mm)程度のスラブ、500(mm)を超えるブルーム若しくはビレットであってもよいし、或いは、厚さが100(mm)程度の薄スラブ、50(mm)以下の薄帯連続鋳造鋳片等であってもよい。また、鋳片3の素材は連続鋳造が可能な金属であればよく、例えば、鉄鋼、特殊鋼の他、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン等、各種の金属であってよい。
【0027】
<2.支持ロールの構成>
[2−1.本実施形態に係る支持ロールの構成]
次に、図2を参照して、本発明の一実施形態に係る支持ロールの構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る支持ロールの構成を示す正面図である。図2を参照すると、本実施形態に係る支持ロール10は、軸部材110と、ロール部120と、を備える。なお、以下の説明では、支持ロール10の回転軸方向をz軸方向と定義する。また、z軸方向と垂直な平面内において互いに直交する2方向を、それぞれx軸方向、y軸方向と定義する。
【0028】
ここで、支持ロール10は、図1に示すサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13等の総称である。このように、本実施形態に係る支持ロール10は、連続鋳造機20に用いられるいずれのロールに対して適用されてもよい。支持ロール10は、鋳片3の厚さ方向両側に対となって配置され、当該両側から鋳片3を支持する機能を有する。また、支持ロール10は、鋳片3の移動に伴ってz軸方向(図1では紙面垂直方向)を回転軸方向として回転し、上述した所定のパスラインに沿って鋳片3を案内及び搬送する機能も有する。かかる支持ロール10をパスラインの両側に複数対設けることで、鋳片3の幅方向中央部が膨らむバルジング変形や、凝固シェル3aの破断によるブレークアウトを防止することができる。
【0029】
軸部材110は、支持ロール10の回転軸方向(すなわちz軸方向)に延伸する棒状の部材である。また、ロール部120は略円筒形状を有し、当該円筒形状の軸方向が軸部材110の延伸方向と一致するように軸部材110の外周部に嵌合される。鋳片3が支持及び搬送される際には、ロール部120の外周面が鋳片3と当接する。軸部材110の両端は連続鋳造機20に設けられる軸受け部(図1には図示せず。)によって軸支されており、軸部材110及びロール部120はz軸方向を回転軸方向として一体的に回転するように構成される。このように、本実施形態に係る支持ロール10は、軸部材110の外周部にロール部120が嵌合されたスリーブロールであると言える。
【0030】
なお、支持ロール10の直径は、例えば100(mm)〜450(mm)程度である。例えば、支持ロール10の直径が約400(mm)である場合、軸部材110の外径は約350(mm)であり得る。また、例えば、支持ロール10回転軸方向の長さは、300(mm)〜3000(mm)程度である。支持ロール10の具体的な形状は、連続鋳造工程において製造される鋳片3の種類及びサイズに応じて適宜選択される。
【0031】
ここで、図3を参照して、軸部材110及びロール部120の構成についてより詳細に説明する。図3は、図2に示す支持ロール10のA−A断面での断面図である。ただし、図3では、簡単のため、A−A断面のうち、支持ロール10の両端近傍については図示を省略している。
【0032】
図3を参照すると、軸部材110の内部にはz軸方向に貫通する空間111が設けられる。空間111には、例えば支持ロール10を冷却するための冷却水が流動される。鋳片3を支持及び運搬する支持ロール10には、鋳片3からの熱負荷が加えられるため、工程を通して支持ロール10は持続的に冷却される必要がある。軸部材110の内部の空間111に冷却水が流動されることにより、支持ロール10を内部から冷却することができる。また、図1を参照して上述したように、連続鋳造機20には、鋳片3に対して冷却水を噴射する複数のスプレーノズルが設けられる。当該スプレーノズルから噴射される冷却水は、鋳片3を冷却することを目的とするものであるが、鋳片3に噴射され流下した水によって支持ロール10も冷却され得る。このように、支持ロール10は、鋳片3を支持及び運搬する際に、軸部材110の内部の空間111に流動される冷却水と、スプレーノズルから噴射される冷却水とによって、内部及び外部から冷却され得る。
【0033】
ロール部120は、複数のロール部材121から構成される。ロール部材121は、略円環形状を有し、軸部材110の外周部に嵌合される。複数のロール部材121は、開口部122を互いに対向させた状態でz軸方向に配列され、z軸方向に連なった複数の開口部122に軸部材110が挿通され嵌合される。このように、支持ロール10は、軸部材110に対して円環形状を有する複数のロール部材121がスリーブ状に嵌合されて構成される。z軸方向に配列され軸部材110の外周部に嵌合された複数のロール部材121によって、図2に示す円筒形状を有するロール部120が構成され得る。ロール部材121は、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼又は超硬材等によって形成され得る。
【0034】
また、ロール部材121は、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するようにz軸方向に配列され、軸部材110の外周部に嵌合される。鋳片3が支持及び搬送される際には、ロール部120の外周面、すなわちロール部材121の円環形状の外周部が鋳片3と当接する。従って、ロール部材121が、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するように配列されることにより、当該間隔は、ロール部120の鋳片3と当接する表面においてスリット部として機能する。
【0035】
ロール部材121の、少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域には、z軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が形成される。ここで、当該他の領域とは、例えば、ロール部材121が軸部材110に嵌合されて隙間なく配列される際に隣り合うロール部材121間が互いに当接する領域であり、図3に示す例では、開口部122の縁部から径方向に所定の長さを有する領域に対応している。ロール部材121に当該薄肉部が設けられることにより、ロール部材121が外周部において互いに所定の間隔を有するようにz軸方向に配列されることとなる。具体的には、隣り合うロール部材121間の当該薄肉部に対応する領域に、径方向に所定の深さを有するスリット部123が形成される。当該薄肉部が形成される領域の径方向の長さによってスリット部123の深さ(スリット深さ)が規定され、当該薄肉部と上記他の領域とのz軸方向の厚さの差によってスリット部123の回転軸方向の幅(スリット幅)が規定される。また、ロール部材121の当該薄肉部以外の他の領域のz軸方向の厚さによって、スリット部123の間隔(スリットピッチ)が規定される。
【0036】
なお、図3に示す例では、ロール部材121の対向面のうち、薄肉部に対応する領域だけでなく、上記他の領域、例えば開口部122の縁部から径方向に所定の長さを有する領域においても、z軸方向に互いに所定の間隔が設けられているように図示されているが、本実施形態はかかる例に限定されない。本実施形態では、ロール部材121は、薄肉部に対応する領域以外はz軸方向に隙間なく配列されてもよい。
【0037】
ここで、図4を参照して、ロール部材121の形状についてより詳細に説明する。図4は、図3に示すロール部120を構成するロール部材121の形状を示す外観図及び断面図である。図4では、1つのロール部材121について、z軸方向から見た外観図と、図中に示すB−B断面での断面図とを併せて図示している。
【0038】
図4を参照すると、薄肉部124は、ロール部材121の少なくとも外縁部から径方向(図4に示す断面図ではx軸方向)に向かって所定の長さdを有する領域に設けられる。ロール部材121の、薄肉部124よりも径方向に内側に位置する領域を他の領域127と呼称することとすると、上述したように、薄肉部124は、そのz軸方向の厚さが、他の領域127よりも薄く形成される。当該他の領域127は、例えばロール部材121が軸部材110に嵌合されて隙間なく配列される際に、隣り合うロール部材121間が互いに当接する領域であってよい。図4に示す例では、他の領域127は、開口部122の縁部から径方向に所定の長さを有する領域に対応している。
【0039】
図4を参照すると、例えば、薄肉部124は、第1の領域125と第2の領域126とを有する。第1の領域125は、ロール部材121の外縁部から径方向に長さdよりも短い所定の長さを有する領域である。図4に示す例では、第1の領域125には、z軸方向に一定の深さtを有する段差部が形成されている。また、第2の領域126は、第1の領域125と径方向に連続的に形成される領域であり、第2の領域126には、径方向の断面において所定の半径R(例えばR=3(mm))の円弧状の断面を有する凹部が形成される。第2の領域126は、図4の外観図に示すように、ロール部材121の、z軸方向と垂直な面であって隣り合う他のロール部材121と対向する面(以下、単に「対向面」と呼称する。)の表面に円周状に設けられる領域であり得る。第1の領域125の径方向の長さと第2の領域126の径方向の長さとの和が、薄肉部124が形成される領域の径方向の長さdとなる。このように、薄肉部124は、ロール部材121の対向面における少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に段差部又は凹部が形成されることにより実現され得る。
【0040】
図4に示すように、ロール部材121は、その一部領域に薄肉部124が形成されることにより、外周部におけるz軸方向の厚さ(t)が、他の領域127におけるz軸方向の厚さ(t)よりも薄くなるように形成される。図3に示すように、支持ロール10においては、ロール部材121が対向面を互いに対向させた状態で配列されるため、ロール部材121がz軸方向に隙間なく配列される場合であれば、隣り合うロール部材121との間で、少なくとも外周部にt−t=2tの幅を有するスリット部123が形成されることとなる。このように、本実施形態では、支持ロール10の表面に形成されるスリット部123の幅が、ロール部材121の薄肉部124の厚さと他の領域127の厚さとの差分によって制御され得る。
【0041】
以上、図2図4を参照して説明したように、本実施形態では、円環形状を有する複数のロール部材121がz軸方向に配列されることにより、支持ロール10のロール部120が構成される。また、ロール部120においては、ロール部材121が少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するように配列される。ロール部材121がロール部120として組み立てられた際に、当該間隔は、ロール部120の表面においてスリット部123として機能し得る。このように、本実施形態では、複数のロール部材121を、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するように配列させることにより、ロール部材121とロール部材121との当該間隔によってロール部120表面にスリット部123が形成される。具体的には、例えばロール部材121の少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に薄肉部124を設けることにより、当該薄肉部124によって、配列されたロール部材121間の外周部に所定の間隔が形成され、ロール部材121がロール部120として組み立てられた際にスリット部123が形成され得る。
【0042】
[2−2.従来の支持ロールとの比較]
ここで、本実施形態に係る支持ロール10の効果についてより詳しく説明するために、図5を参照して、従来の支持ロールの構成について説明する。図5は、従来の支持ロールの一構成例を示す断面図である。なお、図5では、従来の支持ロールの一構成例として、上記特許文献1に記載の連続鋳造用ロールの概略構成を図示している。また、図5に示す断面図は、図3に示す断面図に対応する断面(すなわち、支持ロールの回転軸を含み径方向と平行な断面)において、支持ロールの外周部近傍のスリットが形成される領域のみを図示している。
【0043】
図5を参照すると、従来の支持ロール50のロール胴部の外周面には、ロールの円周方向に沿ったスリット510が、所定の間隔(例えば約20(mm))を有して複数設けられる。スリット510は、アスペクト比(深さ/幅)が比較的高く(例えば10以上)形成される。また、スリット510の底部には、曲面状の空洞部が形成される。
【0044】
図5に示す支持ロール50は、例えば図1に示す連続鋳造機20のサポートロール11、ピンチロール12及びセグメントロール13として適用され得る。支持ロール50では、このようにロール胴部の外周面にスリット510を設けることにより、鋳片3との接触により発生する熱膨張が吸収され、熱応力が緩和されるため、熱亀裂の発生を抑制することができる。また、スリット510の底部に設けられる曲面状の空洞部は、例えばその曲率半径が2〜3(mm)程度の曲率半径を有するように形成されており、スリット510の底部における応力集中を緩和する機能を有する。
【0045】
しかしながら、従来の支持ロール50では、1本の円筒形のロール部材の表面に加工を施すことによりスリット510が形成される。従って、スリット510の加工方法に応じて、スリット510の幅や間隔が制限されてしまい、最適なスリット形状を実現できない可能性がある。例えば、特許文献1に記載の技術では、支持ロール50にスリット510を形成するために電解加工が用いられる。電解加工では、支持ロール50と加工電極との間に電解液を供給しながら、両者の間に互いに逆符号の電圧を負荷することにより、支持ロール50の表面のうち加工電極に接近している領域が溶解される。そして、支持ロール50の溶解に合わせて加工電極を支持ロール50の径方向に差し込んでいくことによりスリット510が形成される。
【0046】
上述したように、スリット510の底部には応力集中を緩和するための曲面状の空洞部が設けられ、当該空洞部は略2〜3(mm)の曲率半径を有するように形成される。電解加工によってこのような形状のスリット510を形成しようとすると、スリット510を形成するために差し込まれる加工電極に相応の太さが求められるため、形成可能なスリット幅の最小値が制限される。具体的には、発明者らの検討によれば、電解加工によって先端部に曲率半径2〜3(mm)程度の曲面状の空洞部を有するスリット510を形成しようとすると、スリット510の幅は略4〜6(mm)となってしまい、それよりもスリット幅を小さくすることは困難であった。
【0047】
ここで、連続鋳造工程においては、例えば鋳片3のバルジング変形を抑制するために、支持ロール50には鋳片3を支持する方向に所定の圧下力が負荷される。図6を参照して、従来の支持ロール50と鋳片3との間に働く各種の力について説明する。図6は、連続鋳造工程において従来の支持ロール50によって鋳片3が支持される様子を模式的に示す概略図である。図6では、例えば図1に示す連続鋳造機20における、鋳片3の搬送方向と垂直な断面での、鋳片3及び支持ロール50の断面図を図示している。なお、図6では、簡単のため、鋳片3の厚さ方向両側に配置される1対の支持ロール50のうち、一方(下側)のみを図示している。また、支持ロール50は模式的に長方形で図示し、スリット510については図示を省略している。
【0048】
図6に示すように、支持ロール50には鋳片3を支持する方向に所定の圧下力が負荷される。また、鋳片3から支持ロール50に対しては、鋳片3のバルジング変形に伴う力(バルジング力)が作用される。このように、支持ロール50の鋳片3との接触面(すなわち、スリット510が形成される支持ロール50の外周面)には、圧下力やバルジング力に対応する各種の力が作用し、所定の圧力(接触面圧)が負荷されることとなる。図6では、圧下力を白抜き矢印で、接触面圧に対応する力を実線の矢印で、模式的に図示している。スリット510の幅が大きいと、支持ロール50の表面のうちスリット510が形成されない領域の面積、すなわち、鋳片3と接触する面積が相対的に小さくなるため、鋳片3との接触面圧が増加する。従って、支持ロール50の表面の摩耗速度が速まり、支持ロール50の使用寿命が短くなってしまう可能性がある。
【0049】
ここで、特に鋳片3の端部では鋳片3の幅方向における中央部に比べて早期にシェルが形成されるため、支持ロール50の表面のうち鋳片3の端部を支持する領域には、他の領域に比べてより大きな圧下力及び接触面圧が負荷され得る。従って、支持ロール50の表面のうち鋳片3の端部を支持する領域では、他の領域よりも当該表面の摩耗が著しく進行する可能性がある。また、このような鋳片3の端部を支持する領域における接触面圧の増加は、スリット510の変形を引き起こす可能性がある。図6では、支持ロール50の表面のうち鋳片3の端部を支持する領域において発生し得るスリット510の変形について、当該領域を拡大した様子を図示している。図6に示すように、鋳片3の端部を支持する領域においては、多大な接触面圧によりスリット510が潰れ、変形してしまう恐れがある。スリット510が潰れることにより、熱応力の緩和というスリット510本来の効果が得られなくなるとともに、支持ロール50の径方向における形状が変形してしまうため、支持ロール50を交換する必要が生じる。
【0050】
以上、図5及び図6を参照して説明したように、従来の支持ロール50では、その外周面にスリット510が設けられることにより、熱応力が緩和され、熱亀裂の発生が抑制されることについては一定の効果を得ることができる。しかしながら、従来の支持ロール50では、スリット510を形成する際に、その加工方法から、スリット510の幅を所定の値以下にすることが困難であり、支持ロール50の鋳片3との接触面圧が大きくなってしまう恐れがあった。接触面圧の増大化は、支持ロール50表面の摩耗速度の増加や、スリット510の変形を引き起こし、支持ロール50の使用寿命を短くする原因となっていた。
【0051】
このように、連続鋳造工程における支持ロールの使用寿命を長大化させるためには、熱応力を緩和するために支持ロール表面にスリットを設けるとともに、当該スリットの幅をより狭く形成することにより鋳片3との接触面圧をより低下させる技術が求められていた。
【0052】
ここで、図2図4を参照して説明したように、本実施形態に係る支持ロール10では、円環形状を有する複数のロール部材121がz軸方向に配列されることによりロール部120が構成される。また、当該ロール部材121が、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するように配列されることにより、当該間隔によってロール部120の表面にスリット部123が構成される。例えばロール部材121には、少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に、z軸方向の厚さが他の領域127よりも薄い薄肉部124が設けられる。当該他の領域127は、例えばロール部材121が軸部材110に嵌合されて隙間なく配列される際に、隣り合うロール部材121間が互いに当接する領域であってよい。よって、隣り合うロール部材121間の当該薄肉部124に対応する領域にスリット部123が形成される。円環形状のロール部材121の一部領域に所定の形状で薄肉部124を形成することは、既存の機械加工の技術によって高い精度で実現可能であるため、当該薄肉部124の形状によって規定されるスリット部123の形状(例えばスリット幅及びスリット深さ)も高い精度で制御され得る。また、ロール部材121の他の領域127におけるz軸方向の厚さも、既存の機械加工の技術によって高い精度で調整可能であるため、当該厚さによって規定されるスリット部123のスリットピッチも高い精度で制御され得る。
【0053】
従って、本実施形態に係る支持ロール10では、支持ロール10の表面におけるスリット部123のスリット幅及びスリットピッチを、熱膨張を吸収し熱応力を緩和しつつ、摩耗速度が低減されるような、最適な値に制御することが可能となる。本実施形態では、例えば、スリット部123のスリット幅が0.1(mm)〜1(mm)程度となるように薄肉部124が形成される。また、スリット部123のスリットピッチが、例えば約15(mm)となるようにロール部材121の他の領域127の厚さが調整される。また、スリット部123の深さは、支持ロール10の径方向における熱負荷の影響が十分低減され得る値に制御される。本実施形態では、例えば、スリット部123のスリット深さが約15(mm)となるように薄肉部124が形成される。なお、スリット部123のスリット幅、スリット深さ及びスリットピッチを設計する際の設計手法については、下記<4.スリット部の形状>で詳しく説明する。
【0054】
このように、本実施形態では、ロール部材121に形成される薄肉部124によって、ロール部材121がロール部120として組み立てられた際にスリット部123が形成されるため、上述した従来の支持ロール50のスリット510に比べて、より小さいスリット幅を有するスリット部123を形成することが可能となる。従って、従来の支持ロール50と比べて鋳片3からの接触面圧を低下させることができ、摩耗速度を低減することが可能となる。このように、本実施形態に係る支持ロール10では、支持ロール10の表面におけるスリット部123の幅を、熱膨張を吸収し熱応力を緩和しつつ、摩耗速度が低減されるような、最適な値に制御することができるため、支持ロール10の使用寿命の長大化が実現される。
【0055】
なお、ロール部材121における開口部122及び薄肉部124の加工方法としては、例えば、切削、鍛造、鋳造、焼結等の既存の各種の加工方法を用いることができる。所定の加工方法によって所定の形状の開口部122及び薄肉部124が形成されたロール部材121を複数製作し、軸部材110を1列に配列された所定の数のロール部材121の開口部122に挿通することにより、支持ロール10が製作される。なお、支持ロール10を製作する際には、軸部材110に所定の数のロール部材121を嵌合させた後にロール部材121の外周面をまとめて研磨することにより、ロール部120としての外周面(すなわち1列に配列された複数のロール部材121の外周面)における平坦度を向上させる工程が行われてもよい。
【0056】
また、ロール部材121は、例えばマルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼又は超硬材等によって形成され得る。ロール部材121として超硬材が用いられることにより、支持ロール10の表面の摩耗がより抑制され得る。ここで、超硬材によって一体的な部材を形成しようとする場合には、技術的な観点から、加工可能な部材の大きさが制限される場合がある。従って、図5に示すような、1本の円筒形のロール部材によって構成される従来の支持ロール50を超硬材によって形成することは、支持ロール50の大きさによっては、加工技術の観点から困難である可能性がある。しかしながら、本実施形態では、複数のロール部材121を組み合わせることにより支持ロール10のロール部120が構成されるため、比較的大型の支持ロール10であっても、その構成部材であるロール部材121は比較的小さいサイズで形成することができる。従って、ロール部材121を超硬材によって形成することができ、支持ロール10の表面の摩耗がより抑制され、支持ロール10の使用寿命をより長大化することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る支持ロール10では、例えば連続鋳造時の使用条件に応じて、複数のロール部材121のうちの一部のロール部材121の材質が変更されてもよい。例えば、複数のロール部材121のうちの所定のロール部材121に大きな接触面圧が負荷されることが予め想定され得る場合には、当該所定のロール部材121の材質が他のロール部材121よりも高い硬度を有する材質に変更され得る。例えば、図6を参照して上述したように、連続鋳造機20においては、支持ロール10のうち鋳片3の端部を支持する領域には、他の領域に比べて大きな接触面圧が作用し得る。従って、支持ロール10のロール部120を構成するロール部材121のうち、鋳片3の端部を支持する領域に対応する部分のロール部材121には超硬材が用いられ、その他の領域に対応する部分のロール部材121にはステンレス鋼が用いられてよい。このように、支持ロール10の表面においてより大きな負荷が与えられるであろう箇所を予測し、当該箇所のみ選択的にロール部材121の材質をより高い硬度を有する材質に変更することにより、支持ロール10の表面の摩耗がより抑制され、支持ロール10の更なる使用寿命の長大化が実現され得る。なお、連続鋳造工程において製造される鋳片3のサイズに応じて、支持ロール10の表面内における鋳片3の端部を支持する領域の位置は変化し得るため、複数のロール部材121のうち材質が変更され得るロール部材121は、鋳片3のサイズに応じて適宜選択されてよい。
【0058】
また、本実施形態では、支持ロール10のロール部120が複数のロール部材121によって構成されることにより、例えば一部のロール部材121が破損した場合であっても、支持ロール10を全て交換する必要がない。支持ロール10の補修のためには、破損したロール部材121だけを交換するだけでよく、設備の保全に要するコストを低減することが可能となる。ここで、従来の支持ロール50は、上述したように、1本の円筒形のロール部材によって構成されていたため、回転軸方向における所定の領域が破損しただけでも支持ロール50を全て交換する必要があった。また、支持ロール50の回転軸方向における所定の領域のみ、その材質を変更することも困難であった。しかしながら、本実施形態に係る支持ロール10は、ロール部120が、回転軸方向に配列された複数のロール部材121によって構成される。従って、上述したように、支持ロール10が破損した際の部分的な補修や、破損しやすい箇所を予め予測し回転軸方向における当該箇所のみ材質を変更する等の予防措置が可能となり、設備の保全に要するコストを低減することができる。
【0059】
また、上述したように、本実施形態に係る支持ロール10は、軸部材110に対して複数のロール部材121が嵌合されたスリーブ形状を有する。従って、例えば図3に示すように、z軸方向におけるロール部材121とロール部材121との間には、ロール部120の表面から軸部材110の外周面に至る亀裂が初めから存在しているとみなすことができる。よって、支持ロール10に熱負荷が加えられた場合であっても、ロール部材121自体に熱亀裂が生じる可能性は低いと考えられる。また、径方向に進展する熱亀裂が生じた場合であっても、軸部材110の外周面によって当該熱亀裂の進展が止められるため、例えば支持ロール10が径方向に破断されるような深刻な破損が防止され得る。
【0060】
また、図3及び図4に示す例では、薄肉部124は第1の領域125と第2の領域126とを有し、スリット部123の底部に当たる部分は、第2の領域126に対応している。このような薄肉部124を有する複数のロール部材121がz軸方向に配列されることにより、図3に示すように、隣り合うロール部材121間の薄肉部124によって、ロール部材121の外周部から径方向に所定の長さまでは幅が略一定で、底部に所定の半径Rの曲面状の空間(空洞部)を有するスリット部123が形成される。以下の説明では、図3に示すスリット部123の形状を涙目型の形状とも呼称する。スリット部123の底部には、スリット部123の空隙を伝達してきた鋳片3からの輻射熱や、鋳片3との接触面からロール部材121の内部を伝導してきた熱によって熱負荷が加えられ、熱応力が生じ得る。本実施形態のように、スリット部123として涙目型の形状を有するスリットを形成することにより、スリット部123の底部に所定の半径Rを有する曲面状の空間が設けられるため、スリット部123の底部の特定の箇所への応力集中を回避することができ、熱応力による熱亀裂の発生をより抑制することが可能となる。応力集中を効果的に抑制するために、スリット部123の底部の曲率Rは、例えば約3(mm)に設計される。また、涙目型の形状を有するスリット部123では、薄肉部124における第1の領域125及び第2の領域126の形状を適宜調整することにより、スリット部123の形状を適宜調整し、熱輻射によるスリット部123の底部への影響を低減することができる。例えば、第1の領域125におけるz軸方向の段差の深さ、すなわち、スリット部123の幅を狭くすることにより、鋳片3からスリット部123の底部に熱輻射によって伝達する熱量を低減することができるため、スリット部123の底部に対する熱輻射による熱負荷を抑制することができる。
【0061】
なお、図3及び図4では、本実施形態に係る支持ロール10におけるスリット部123の一例として、スリット部123を形成する薄肉部124が、z軸方向に一定の深さtを有する段差部が形成される第1の領域125と径方向の断面において所定の半径Rの円弧状の断面形状を有する凹部が形成される第2の領域126とによって構成される場合について説明したが、本実施形態はかかる例に限定されない。本実施形態では、ロール部材121に形成される薄肉部124は、ロール部材121の少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に、例えば隣接するロール部材121と互いに当接する領域である他の領域127よりもz軸方向の厚さが薄く形成されればよく、その形状はあらゆる形状であってよい。従って、隣り合って配列されるロール部材121間において薄肉部124によって形成されるスリット部123の形状も図示した例に限定されず、あらゆる形状であり得る。支持ロール10の薄肉部124及びスリット部123の他の形状については、下記<3.変形例>で詳しく説明する。
【0062】
<3.変形例>
上述したように、従来の支持ロール50では、電解加工によってスリット510が形成されていた。電解加工では、支持ロール50を電気分解によって溶解することによりスリット510が形成されるため、その形状は、例えば図5に示す、底部に曲面状の空洞部を有するものに限定されており、他の形状を有するスリット510を形成することは困難であった。一方、本実施形態では、隣り合うロール部材121間の薄肉部124によってスリット部123が形成される。従って、薄肉部124の形状を変更することにより、多様な形状のスリット部123を形成することができる。
【0063】
図7図9を参照して、本実施形態に係る支持ロール10において、スリット部123の形状が異なる変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例では、スリット部123の形状が異なるだけで、その他の構成については、以上説明した支持ロール10と同様であってよい。従って、以下の変形例についての説明では、上述した実施形態との相違点について主に説明することとし、重複する事項については詳細な説明を省略する。なお、図7図9では、図3に示す断面図に対応する断面(すなわち、支持ロールの回転軸を含み径方向と平行な断面)での断面図を図示している。
【0064】
[3−1.スリット部の形状がくさび型である変形例]
まず、図7を参照して、本実施形態に係る支持ロールにおいて、スリット部の形状がくさび型である変形例について説明する。図7は、スリット部の形状がくさび型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
【0065】
図7を参照すると、本変形例に係る支持ロール10aは、軸部材110と、ロール部120aと、を備える。軸部材110の構成は、図2及び図3に示す支持ロール10の軸部材110と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0066】
ロール部120aは、複数のロール部材121aによって構成される。ロール部材121aは、略円環形状を有し、軸部材110の外周部に嵌合される。複数のロール部材121aは、開口部122aを互いに対向させた状態でz軸方向に配列され、z軸方向に連なった複数の開口部122aに軸部材110が挿通され嵌合される。
【0067】
ロール部材121aは、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するようにz軸方向に配列される。図7に示す例では、ロール部材121aの、少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に、z軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が設けられる。ここで、当該他の領域とは、例えばロール部材121aが隙間なく配列される際に隣り合うロール部材121a間が互いに当接する領域であってよい。隣り合うロール部材121a間の当該薄肉部によって、径方向に所定の深さを有するスリット部123aが形成される。
【0068】
図7に示すように、本変形例では、当該薄肉部は、外縁部においてz軸方向の厚さが最も薄く、径方向において内側に向かうほどz軸方向の厚さが徐々に大きくなるように形成される。具体的には、当該薄肉部は、径方向において内側に向かうほどz軸方向の厚さが一様に大きくなるように形成される。当該薄肉部がこのような形状を有することにより、隣り合うロール部材121a間の当該薄肉部によって形成されるスリット部123aの断面形状は、図7に示すようにくさび型となる。スリット部123aの形状がくさび型である場合には、図2図4に示すスリット部123が涙目型の形状を有する場合と比べて、ロール部材121aの表面における段差部の加工を容易に行うことができる。
【0069】
また、下記<4.スリット部の形状>で後述するように、ロール部材121aに生じる熱応力は、高温物である鋳片3との接触領域(すなわち、ロール部材121aの外周面)においてより大きな値を有し、当該接触領域から離れるにつれて、すなわち、径方向において内側に向かうにつれてその値が減少する。従って、熱応力を緩和するためのスリット部123aの形状も、支持ロール10aの径方向において内側に向かうにつれて徐々にスリット幅が小さくなるように形成されてよい。本変形例に係るスリット部123aは、支持ロール10aの径方向において内側に向かうにつれて徐々にスリット幅が小さくなるくさび型の形状を有するため、くさび型の形状におけるスリット部123aの側壁の傾斜角度(すなわち、スリット幅が小さくなる度合い)を適宜調整することにより、ロール部材121a内部における熱応力の径方向への分布に応じた適切な形状が実現され得る。
【0070】
[3−2.スリット部の形状が矩形型である変形例]
次に、図8を参照して、本実施形態に係る支持ロールにおいて、スリット部の形状が矩形型である変形例について説明する。図8は、スリット部の形状が矩形型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
【0071】
図8を参照すると、本変形例に係る支持ロール10bは、軸部材110と、ロール部120bと、を備える。軸部材110の構成は、図2図4に示す支持ロール10の軸部材110と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
ロール部120bは、複数のロール部材121bによって構成される。ロール部材121bは、略円環形状を有し、軸部材110の外周部に嵌合される。複数のロール部材121bは、開口部122bを互いに対向させた状態でz軸方向に配列され、z軸方向に連なった複数の開口部122bに軸部材110が挿通され嵌合される。
【0073】
ロール部材121bは、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するようにz軸方向に配列される。図8に示す例では、ロール部材121bの、少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に、z軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が設けられる。ここで、当該他の領域とは、例えばロール部材121bが隙間なく配列される際に隣り合うロール部材121b間が互いに当接する領域であってよい。隣り合うロール部材121b間の当該薄肉部によって、径方向に所定の深さを有するスリット部123bが形成される。
【0074】
図8に示すように、本変形例では、当該薄肉部は、対向面において、z軸方向の深さが略一定の段差部として形成される。当該薄肉部がこのような形状を有することにより、隣り合うロール部材121b間の当該薄肉部によって形成されるスリット部123bの断面形状は、図8に示すように、スリット部123bの幅が略一定である矩形型となる。スリット部123bの形状が矩形型である場合には、図2図4に示すスリット部123が涙目型の形状を有する場合と比べて、ロール部材121bにおける薄肉部の加工を容易に行うことができる。なお、図8に示す例では、スリット部123bの底部の角部は略直角に形成されているが、本変形例は図示される例に限定されず、当該角部は所定の半径を有する曲面状に適宜加工されてよい。スリット部123bの底部の角部が曲面形状を有することにより、当該角部における応力集中が緩和され、熱亀裂の発生がより抑制され得る。
【0075】
[3−3.スリット部の形状が放物線型である変形例]
次に、図9を参照して、本実施形態に係る支持ロールにおいて、スリット部の形状が放物線型である変形例について説明する。図9は、スリット部の形状が放物線型である変形例に係る支持ロールの構成を示す断面図である。
【0076】
図9を参照すると、本変形例に係る支持ロール10cは、軸部材110と、ロール部120cと、を備える。軸部材110の構成は、図2図4に示す支持ロール10の軸部材110と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0077】
ロール部120cは、複数のロール部材121cによって構成される。ロール部材121cは、略円環形状を有し、軸部材110の外周部に嵌合される。複数のロール部材121cは、開口部122cを互いに対向させた状態でz軸方向に配列され、z軸方向に連なった複数の開口部122cに軸部材110が挿通され嵌合される。
【0078】
ロール部材121cは、少なくとも外周部において互いに所定の間隔を有するようにz軸方向に配列される。図9に示す例では、ロール部材121cの、少なくとも外縁部を含む径方向に所定の長さを有する領域に、z軸方向の厚さが他の領域よりも薄い薄肉部が設けられる。ここで、当該他の領域とは、例えばロール部材121cが隙間なく配列される際に隣り合うロール部材121c間が互いに当接する領域であってよい。隣り合うロール部材121c間の当該薄肉部によって、径方向に所定の深さを有するスリット部123cが形成される。
【0079】
図9に示すように、本変形例では、当該薄肉部は、外縁部においてz軸方向の厚さが最も薄く、径方向において内側に向かうほどz軸方向の厚さが徐々に大きくなるように形成される。具体的には、当該薄肉部は、径方向における断面において、径方向において内側に向かうほどz軸方向の厚さが曲線的に徐々に大きくなるように形成される。当該薄肉部がこのような形状を有することにより、隣り合うロール部材121c間の当該薄肉部によって形成されるスリット部123cの断面形状は、図9に示すように放物線型となる。スリット部123cの形状が放物線型である場合には、図2図4に示すスリット部123が涙目型の形状を有する場合と比べて、ロール部材121cの表面における段差部の加工を容易に行うことができる。
【0080】
以上、図7図9を参照して、本実施形態に係る支持ロールにおいて、スリット部の形状が異なる変形例について説明した。なお、以上の説明では、本実施形態に係るスリット部の形状として、涙目型、くさび型、矩形型及び放物線型の各形状について説明したが、本実施形態はかかる例に限定されない。本実施形態では、ロール部材の表面に形成される薄肉部の形状を適宜設計することにより、あらゆる形状を有するスリット部が形成され得る。
【0081】
本実施形態に係るスリット部の形状は、例えば熱負荷が与えられる条件に応じて適宜設計されてよい。例えば、図1に示す連続鋳造機20において、前段側と後段側とでは、鋳片3の冷却度合いが異なるため、鋳片3から支持ロールに対して加えられる熱負荷は異なる。また、連続鋳造機20においては、鋳片3に冷却水を噴射するスプレーノズルが鋳片3のパスライン上の各所に配置されるため、当該スプレーノズルの近隣に配置され当該スプレーノズルからの冷却水によって冷却され得る支持ロールは、他の位置に配置される支持ロールに比べて熱負荷が小さいと言える。このように、連続鋳造機20における配置位置に応じて、支持ロールに加えられる熱負荷は異なるため、支持ロールに設けられるスリット部の形状は、その配置位置に応じた熱負荷量の違いを考慮して適宜設計されてよい。また、支持ロールのロール部を構成するロール部材の材質も、連続鋳造機20における配置位置に応じた熱負荷量の違いを考慮して適宜選択されてよい。
【0082】
<4.スリット部の形状>
以上説明したように、本実施形態では、支持ロールの表面にスリット部を形成することにより熱膨張を吸収し熱応力を緩和する。また、当該スリット部の形状、特にスリット幅は、鋳片との接触面圧を考慮して、表面の摩耗やスリット部の変形が生じ難いように設計される。このように、本実施形態では、スリット部の幅や深さ、間隔は、熱亀裂を抑制するために熱応力を緩和するように設計されるとともに、表面の摩耗やスリット部の変形を抑制するために接触面圧がより低減されるように設計され得る。以下では、本実施形態に係る支持ロールのスリット部の一例として、図7に示すくさび型の形状を有するスリット部を例に挙げて、当該スリット部の形状を設計する際の設計手法について説明する。ただし、以下に説明するスリット部の形状の設計手法は、上述したような他の形状を有するスリット部に対しても同様に適用され得る。
【0083】
図10を参照して、本実施形態に係る支持ロールのスリット部の形状を設計する際の設計手法について詳細に説明する。図10は、本実施形態に係る支持ロールのスリット部の形状について説明するための説明図である。図10では、図7に示す支持ロール10aのスリット部123aのうちの一部分を拡大して図示している。図10に示すように、スリット部123aの形状は、z軸方向のスリット幅a、径方向のスリット深さd及び隣り合うスリット部123aとのスリットピッチpによって決定され得る。
【0084】
まず、スリット幅aについて説明する。図10に示すように、スリット幅aはスリット部123aのz軸方向の幅である。図10に示す例では、スリット部123aの形状はくさび型であるため、スリット幅aは径方向(x軸方向)において一定ではない。従って、x軸の原点をロール部材121aの外周面(すなわち、鋳片3との接触面)に取ると、スリット幅aはxの関数(a=f(x))として表すことができる。なお、関数f(x)の具体的な形は、スリット部123aの形状に基づいて幾何学的に決定され得る。
【0085】
一方、鋳片3から与えられる熱によりロール部材121aの温度が温度Tだけ上昇したとすると、ロール部材121aにおけるz軸方向の熱膨張lは、温度Tの関数(l=g(T))として表すことができる。ここで、支持ロール10aは、鋳片3から熱を受けながら、スプレーノズルから噴射される冷却水や軸部材110の内部に流動される冷却水によって冷却されるため、温度Tは連続鋳造工程中に動的に変化し得る。スリット幅aが連続鋳造工程中における熱膨張lよりも常に小さくなるようにスリット幅aの値を設計することにより、熱膨張によるロール部材121aのz軸方向の変形量をスリット部123aによって吸収することができ、熱応力の発生を抑制することができる。従って、スリット幅aは、下記数式(1)を満たすように設計されることが好ましい。
【0086】
【数1】
【0087】
なお、関数g(T)の具体的な形は、ロール部材121aの材質に応じた熱膨張に関する物理量(例えば熱膨張係数等)や一般的な熱膨張における各種の理論式に基づいて決定され得る。また、温度Tは、例えば有限要素法(FEM:Finite Element Method)を用いた数値解析により、ロール部材121a内部の温度分布を計算することにより求められる。
【0088】
次に、スリット深さdについて説明する。図10に示すように、スリット深さdはスリット部123aの径方向(x軸方向)における深さである。ここで、ロール部材121aに生じる熱応力は、高温物である鋳片3との接触領域(すなわち、ロール部材121aの外周面)においてより大きな値を有し、当該接触領域から離れるにつれてその値が減少する。従って、x軸方向における熱応力の変化に注目すると、ロール部材121aに生じる熱応力σは、xの関数(σ=h(x))として表すことができる。
【0089】
ここで、ロール部材121aの径方向における所定の深さxの領域において、ロール部材121aの疲労限度σ又は許容応力σと同等の熱応力が生じるとする。スリット部123aの空隙によって熱膨張が吸収され熱応力が緩和されるのであるから、スリット深さdが深さxの領域にまで達するようにスリット深さdの値を設計することにより、ロール部材121aに生じる熱応力を疲労限度σ又は許容応力σよりも小さくすることができる。従って、スリット深さdは、下記数式(2)を満たすように設計されることが好ましい。ただし、下記数式(2)右辺の疲労限度σ又は許容応力σには、適切な安全率が乗じられてよい。なお、疲労限度σ又は許容応力σの具体的な値は、ロール部材121aの材質に応じて、実験値、文献値等に基づいて決定され得る。
【0090】
【数2】
【0091】
次に、スリットピッチpについて説明する。図10に示すように、スリットピッチpはz軸方向においてスリット部123aが形成される間隔である。スリットピッチpが小さい場合には、相対的にスリット部123aの数が多くなり、ロール部120の外周面における鋳片3との接触面積が小さくなる。従って、図6を参照して上述したように、ロール部120の外周面における鋳片3との接触面圧が大きくなり、スリット部123aが変形してしまう恐れがある。よって、スリットピッチpの値は、スリット部123aが変形しない範囲で設計されることが好ましい。具体的には、スリット部123aに変形が生じ得るときのスリットピッチをスリットピッチpとすれば、スリットピッチpは、下記数式(3)を満たすように設計され得る。なお、スリットピッチpの具体的な値は、例えばFEMを用いた数値解析により、スリット部123aの変形量が許容範囲に含まれるようなスリットピッチの値として決定され得る。
【0092】
【数3】
【0093】
以上、図10を参照して、本実施形態に係る支持ロールにおけるスリット部の形状の設計手法について説明した。本実施形態では、例えば上記数式(1)−(3)を満たすようにスリット部123aのスリット幅a、スリット深さd及びスリットピッチpが設計されることにより、熱応力や接触面圧による変形が抑制された、使用寿命のより長い支持ロールが実現され得る。
【0094】
なお、スリット幅a、スリット深さd及びスリットピッチpは、例えばFEMを用いた数値解析によって算出され得る。具体的には、初期値として所定のスリット幅a、スリット深さd及びスリットピッチpを有するスリット部が形成された支持ロールを模した計算モデルを作成する。そして、当該計算モデルに対して、実際に連続鋳造工程において負荷され得る外力(例えば圧下力や接触面圧等)や熱源(鋳片3)を与えた状態で、FEMを用いて当該計算モデルにおける温度分布や応力分布(熱応力を含む)、変形量(熱膨張による変形量を含む)等を計算する。スリット幅a、スリット深さd及びスリットピッチpの値を適宜変更しながら当該計算を繰り返し行うことにより、上記数式(1)−(3)を満たすようなスリット幅a、スリット深さd及びスリットピッチpの値を決定することができる。
【実施例】
【0095】
本発明に係る支持ロールを連続鋳造機に適用した実施例について説明する。実施例として、図7に示すくさび型のスリット部123aが形成された支持ロール10aを、図1に示す連続鋳造機20に適用し、以下の使用条件の下で連続鋳造を行った。
【0096】
鋳造速度:2.0(mpm)
使用期間:7(年)
冷却水量:45(l/min)
支持ロール軸長:2500(mm)
支持ロール径:400(mm)(軸部材のロール径:350(mm))
支持ロールスリットピッチ:15(mm)
鋳片温度:900(度)以上
【0097】
また、実施例としては、ロール部材121aの表面材質がステンレス鋼であるもの(実施例1)と、ロール部材121aの表面材質が超硬材であるもの(実施例2)と、2種類の支持ロール10aを用いて連続鋳造を行った。また、比較例として、特許文献1に記載の従来の支持ロールについても、上記と同様の使用条件の下で連続鋳造を行った。比較例、実施例1及び実施例2における支持ロールの構成について下記表1にまとめる。
【0098】
【表1】
【0099】
これらの比較例、実施例1及び実施例2について、上記使用条件の下で連続鋳造を行った後、支持ロール表面における熱亀裂の発生有無及び径方向の摩耗量について調査した。まず、熱亀裂の発生有無については、比較例、実施例1及び実施例2の全てにおいて、使用後の支持ロール表面における熱亀裂は確認されなかった。当該結果から、比較例である特許文献1に記載の支持ロールと同様、本実施形態に係る支持ロール10aによっても、熱亀裂の発生が抑制されていることが分かった。これは、支持ロール10aの表面に形成されるスリット部123aによって、支持ロール10aにおける熱膨張が吸収され、熱応力が緩和されるためであると考えられる。
【0100】
次に、図11を参照して、比較例、実施例1及び実施例2における、使用後の支持ロールの径方向の摩耗量について説明する。図11は、比較例、実施例1及び実施例2における、使用後の支持ロールの径方向の摩耗量を示すグラフ図である。図11に示すように、従来の支持ロールを用いた比較例においては、径方向の摩耗量が約1.2(mm)であった。一方、本実施形態に係る支持ロール10aを用いた実施例1においては、径方向の摩耗量は約0.8(mm)であり、従来に比べて摩耗量が低減していることが確認された。これは、実施例1では、比較例に比べてスリット幅が小さく形成されているため、支持ロール10aの表面における接触面圧を低減させることができ、摩耗量が低減されたと考えられる。
【0101】
また、図11に示すように、本実施形態に係る支持ロール10aであって、ロール部材121aの材質として超硬材を用いた実施例2においては、径方向の摩耗量は約0.05(mm)であり、実施例1よりも更に摩耗量が低減されることが確認された。このように、ロール部材121aの材質として超硬材を使用することにより、支持ロール10a表面の摩耗が更に抑制され、支持ロール10aの使用寿命を更に延ばすことが可能となる。
【0102】
以上、本発明に係る支持ロールを連続鋳造機に適用した実施例について説明した。以上説明したように、本発明に係る支持ロールを連続鋳造機に適用することにより、熱亀裂の発生を抑制しつつ、支持ロールの表面の摩耗量を低減できることが分かった。従って、本発明によれば、支持ロールの使用寿命をより長大化することが可能となる。このように、本発明に係る支持ロールは、例えば連続鋳造工程のような、支持ロールに対してより大きな熱負荷が加えられ得る工程に対して好適に適用可能である。
【0103】
<5.補足>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0104】
例えば、上記では、本発明に係る支持ロールが連続鋳造工程に適用される実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明に係る支持ロールは、当該支持ロールによって金属材料が支持及び運搬される工程であって、当該金属材料から当該支持ロールに対して熱負荷が加えられる工程であれば、他の工程に対しても適用可能である。本発明に係る支持ロールがこのような他の工程に適用された場合であっても、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0105】
10、10a、10b、10c 支持ロール
20 連続鋳造機
110 軸部材
120、120a、120b、120c ロール部
121、121a、121b、121c ロール部材
122、122a、122b、122c 開口部
123、123a、123b、123c スリット部
124 薄肉部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11