(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の回転電機の固定子を適用した第1の実施形態に係る車載用電動圧縮機について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る車載用電動圧縮機は、走行用の電動モータと内燃機関とを走行駆動源とするハイブリッド車に搭載されるスクロール型の電動圧縮機である。
車載用電動圧縮機は、車両用空調装置における冷媒回路の一部を構成している。
車両用空調装置は、車載用電動圧縮機のほか、図示はしないが、凝縮器としてのコンデンサと、レシーバと、膨張弁及びエバポレータを備えたクーリングユニットと、これらの機器を接続する配管を備えている。
【0016】
図1に示すように、車載用電動圧縮機(以下「圧縮機」と表記する)10は、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機構11と、圧縮機構11を駆動する回転電機としての電動モータ12が一体化された圧縮機である。
圧縮機10のハウジング13は金属製のハウジングであり、本実施形態ではアルミニウム系金属材料により形成されている。
ハウジング13は、第1ハウジング体14、第2ハウジング体15とを有している。
第1ハウジング体14の端面と第2ハウジング体15の端面とは接合され、第1ハウジング体14および第2ハウジング体15はボルト16により一体的に固定されている。
因みに、この実施形態の圧縮機10は、エンジンルーム内において横置き状態にて設置される。
【0017】
圧縮機10の第1ハウジング体14の内部には、圧縮機構11と電動モータ12とが収容されている。
圧縮機構11は固定スクロール17および可動スクロール18を備え、圧縮機構11には固定スクロール17および可動スクロール18により圧縮室19が形成されている。
可動スクロール18と対向して噛合する固定スクロール17が第1ハウジング体14に固定されている。
第1ハウジング体14の上部側には吸入口20が形成されている。
吸入口20は外部冷媒回路(図示せず)と接続されており、外部冷媒回路は第1ハウジング体14の内部と連通する。
圧縮機10の圧縮運転時には、低圧の冷媒は外部冷媒回路から吸入口20を通過し、第1ハウジング体14の内部に流入する。
【0018】
第2ハウジング体15の内部には圧縮室19と連通する吐出室21が形成されている。
第2ハウジング体15の上部には吐出口22が形成されており、吐出口22は外部冷媒回路と連通する。
第2ハウジング体15には、吐出室21と吐出口22との間を連通する連通路23が形成されている。
【0019】
第1ハウジング体14内における固定スクロール17と電動モータ12との間には、軸支部材24が設けられている。
軸支部材24は、圧縮機構11の一部を構成し、電動モータ12が備える回転軸25の一方の端部を軸支する軸受26を備えている。
回転軸25の他方の端部は、軸受27を介して第1ハウジング体14に支持されている。
軸支部材24には圧縮室19と連通する吸入ポート28が形成されており、吸入口20から第1ハウジング体14内に流入した冷媒は、吸入ポート28を通じて圧縮室19へ導入される。
また、軸支部材24には、固定側ピン29が圧入により固定されており、固定側ピン29は可動スクロール18へ向けて軸支部材24から突出している。
固定側ピン29は可動スクロール18の回転(自転)を防止する自転防止機構である。
【0020】
回転軸25の固定スクロール17側の端部には、固定スクロール17側へ突出する偏心軸30が設けられている。
偏心軸30は回転軸25の軸心Pに対して偏心した位置に設定されており、回転軸25が回転すると偏心軸30は回転軸25の軸心Pに対して偏心して回転する。
偏心軸30の外周には、ドライブブシュ31が相対回動可能に嵌合されている。
【0021】
ドライブブシュ31の外周には、可動スクロール18が軸受32を介して旋回自在に連結されている。
回転軸25が回転するとき、可動スクロール18は自転防止機構である固定側ピン29により回転(自転)を行うことなく、軸心Pの周囲を旋回する。
つまり、可動スクロール18は軸心Pの周囲を非自転状態にて旋回可能に設けられている。
【0022】
冷媒が吸入ポート28を通じて圧縮室19へ導入され、圧縮室19の容積減少により圧縮室19の冷媒は圧縮される。
固定スクロール17の中心に吐出室21と連通する吐出ポート33が形成されており、吐出ポート33を開閉する吐出弁34が備えられている。
圧縮された冷媒は、吐出ポート33を通じて吐出室21へ吐出される。
【0023】
圧縮機10は、第1ハウジング体14に接合される駆動回路ケース35を備えている。
駆動回路ケース35は、電動モータ12への電力供給を制御する駆動回路36を保護するケースである。
駆動回路36は、インバータおよびその他の電子部品と、インバータおよびその他の電子部品が固定される基板等を備えている。
インバータは、スイッチング素子を備えており、外部から圧縮機10の駆動に必要な電力の供給を受け、供給される直流電力を交流電力に変換する。
駆動回路ケース35はボルト37により第1ハウジング体14に固定される。
駆動回路36と電気的に接続された気密端子38が、第1ハウジング体14に設置されている。
【0024】
第1ハウジング体14の内部にはクラスタブロック39が設けられ、気密端子38は電動モータ12と電気的に接続されたクラスタブロック39と電気的に接続されている。
このように、電動モータ12と駆動回路36は電気的に接続されており、駆動回路36から気密端子38を介して電動モータ12に通電されると、電動モータ12が駆動され、回転軸25と連結された圧縮機構11が作動される。
【0025】
次に、電動モータ12の詳細を説明する。
電動モータ12は、駆動回路36により三相交流電力の供給を受けて駆動されるモータである。
電動モータ12が備える回転子としてのロータ40は、回転軸25の軸心P方向に設けた複数の磁石挿入孔を備えたロータコア41と、ロータコア41の磁石挿入孔に埋設された永久磁石42を有している。
ロータコア41は、磁性体の鋼板により製作された複数枚のコア板43を積層することにより形成されている。
ロータコア41の中心には回転軸25が挿通され、回転軸25とロータコア41とは互いに固定されている。
【0026】
電動モータ12が備える固定子としてのステータ44は、第1ハウジング体14の内壁に固定される環状のステータコア45を有している。
図2(a)に示すように、ステータコア45の内周には、複数配列されたティース46間にスロット47が形成されている。
ステータコア45におけるティース46の外周側に位置する部位はヨーク48である。
ティース46の外周部はヨーク48との境界部を形成する。
本実施形態では、ティース46およびスロット47の数は30個であり、ティース46およびスロット47は周方向に等間隔を以って配列されている。
図2(b)に示すように、本実施形態のステータコア45は、磁性体の鋼板により製作された複数枚のコア板49を積層することにより形成されており、互いに重なり合うコア板49を嵌合により固定するかしめ部50が形成されている。
図2(a)に示すように、本実施形態では、6個のかしめ部50がヨーク48において周方向に等間隔となるように形成されている。
本実施形態のかしめ部50はいずれもティース46の径方向の外周側であるヨーク48に位置するように設けられている。
図2(b)に示すように、コア板49には、略台形状の凸部51が表面に形成されるとともに、凹部52が裏面に形成されている。
そして、コア板49の凸部51が凸部51側に重ねられる別のコア板49の凹部52と嵌合され、凹部52には凹部52側に重ねられる別のコア板49の凸部51が嵌合し、コア板49同士が互いに連結される。
なお、ステータコア45の凸部51側の端面を形成するコア板49には、凸部51が挿入される貫通孔53が形成されている。
貫通孔53を有するコア板49は、隣り合う凸部51を有するコア板49に嵌合し、互いに連結される。
【0027】
図3に示すように、ステータコア45におけるスロット47は、U相のスロット47Uと、V相のスロット47Vと、W相のスロット47Wとから構成されている。
スロット47Uには、ステータコア45の最外周となるU相の巻線54Uが分布巻きの一種である波巻きにより巻回されている。
スロット47Vには、U相の巻線54Uの内周側となるV相の巻線54Vが波巻きにより巻回されている。
スロット47Wには、ステータコア45の最内周となるW相の巻線54Wが波巻きにより巻回されている。
【0028】
複数相の巻線54(54U、54V、54W)はステータコア45のコイルを形成する。
導電性の巻線54(54U、54V、54W)は、銅線により形成される芯線の外周面にエナメルによる絶縁被膜を形成したものである。
各スロット47には絶縁シート(図示せず)が挿入されており、各相の巻線54(54U、54V、54W)はスロット47(47U、47V、47W)の内壁面と絶縁されている。
【0029】
図3において、巻線54U、54V、54Wを実線により示す部分は、スロット47U、47V、47W外に配置されたステータコア45の一方の端面側(圧縮機構11側)のコイルエンド部55である。
また、巻線54U、54V、54Wを破線により示す部分は、スロット47U、47V、47W外に配置されたステータコア45の他方の端面側(駆動回路36側)のコイルエンド部56である。
各相の巻線54U、54V、54Wを実線により示す部分と、巻線54U、54V、54Wを破線により示す部分との間は、各相の巻線54U、54V、54Wにおいて対応するスロット47U、47V、47W内に配置されたスロット部(図示せず)である。
【0030】
図3に示すように、各相の巻線54U、54V、54Wの始端側は、互いに束ねられてリード線61として一方のコイルエンド部55から引き出され、クラスタブロック39において対応する入力端子62U、62V、62Wと電気的に接続されている。
従って、U相のスロット47Uに挿通されているU相の巻線54Uは、クラスタブロック39における入力端子62Uを介して駆動回路36と電気的に接続されている。
V相のスロット47Vに挿通されているV相の巻線54Vは、クラスタブロック39における入力端子62Vを介して駆動回路36と電気的に接続されている。
W相のスロット47Wに挿通されているU相の巻線54Wは、クラスタブロック39における入力端子62Wを介して駆動回路36と電気的に接続されている。
【0031】
一方、
図3に示すように、各相の巻線54U、54V、54Wの終端側は、ステータコア45の一方の端面側における各相のコイルエンド部55と対応して引き出された巻線54U、54V、54Wによる引出部63を備えている。
引出部63の先端部は互いに束ねられ、各相の巻線54U、54V、54Wの芯線を互いに半田付けにより接続しており、電動モータ12の中性点64となる。
引出部63の先端部には絶縁性の樹脂フィルム(図示せず)が巻回され、樹脂フィルムの先端が封止されることにより中性点64の絶縁性が保たれている。
樹脂フィルムに覆われた引出部63の先端部は、次に説明する紐60によりステータコア45の一方の端面側に固定される。
【0032】
次に、コイルエンド部55、56の緊縛について説明する。
本実施形態では、
図4(a)、
図4(b)および
図5に示すように、ステータコア45の一方の端面側におけるコイルエンド部55(55U、55V、55W)は1本の紐65により緊縛される。
また、
図5に示すように、ステータコア45の他方の端面側におけるコイルエンド部56(56U、56V、56W)は別の1本の紐65により緊縛される。
なお、
図4(a)では、リード線61および中性点64側の引出部63の図示を省略する。
また、
図5では、説明の便宜上、ステータコア45およびコイルエンド部55、56の一部を平面的に展開して示した展開図としており、
図5では区別しやすいようにコイルエンド部55U、56Uにのみハッチングを施している。
【0033】
図4(a)に示すように、ステータコア45の一方の端面においてスロット47U外に配置されるコイルエンド部55Uとスロット47V外に配置されるコイルエンド部55Vとの間には第1の相間絶縁シート57が周方向にわたって介在されている。
また、ステータコア45の一方の端面においてスロット47V外に配置されるコイルエンド部55Vとスロット47W外に配置されるコイルエンド部55Wとの間には第2の相間絶縁シート58が周方向にわたって介在されている。
第1の相間絶縁シート57および第2の相間絶縁シート58は、樹脂材料により形成された帯状の樹脂シートであり、周方向の両端部は重ねられている。
因みに、ステータコア45の他方の端面においてスロット47U外に配置されるコイルエンド部56Uとスロット47V外に配置されるコイルエンド部56Vとの間には第3の相間絶縁シート(図示せず)が周方向にわたって介在されている。
また、ステータコア45の一方の端面においてスロット47V外に配置されるコイルエンド部56Vとスロット47W外に配置されるコイルエンド部56Wとの間には第4の相間絶縁シート(図示せず)が周方向にわたって介在されている。
第3の相間絶縁シートおよび第4の相間絶縁シートは、樹脂材料により形成された帯状の樹脂シートであり、周方向の両端部は重ねられている。
【0034】
図5に示すように、コイルエンド部55U、55V、55Wとステータコア45との間には、ティース空間66が形成されている。
ティース空間66は、ティース46毎に形成されるが、
図5に示すように、説明の便宜上、区別する場合には、ティース空間66A、66B、66Cとする。
なお、ティース空間66A、66B、66Cは、ステータコア45の周方向においてティース空間66A、66B、66Cの順序が繰り返されるように配設されている。
【0035】
本実施形態では、
図4(b)に示すように、レーシング用の鉤針69を用いてコイルエンド部55を紐65により緊縛する。
鉤針69は、ステータコア45の外周側に位置し、鉤針69の駆動手段(図示せず)によりステータコア45の径方向へ向けて進退自在であってステータコア45の軸方向に往復動自在である。
鉤針69の先端部には紐65を係止する係止部70を備えている。
紐65はステータコア45の内周側において移動可能に設けられた給糸機構(図示せず)より供給される。
図4(b)に示すように、鉤針69はティース空間66およびコイルエンド部55の端面側付近を進退する。
図示はされないが、レーシングの際にはコイルエンド部55側と同様にコイルエンド部56側にも同様の鉤針69および給糸機構が用意され、コイルエンド部56の紐65による緊縛が行われる。
【0036】
図4(a)、
図5に示すように、本実施形態では、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66は、紐65が通されない非挿通のティース空間66である。
そして、かしめ部50が外周側に配置される非挿通のティース空間66の両側に位置するティース空間66は、紐65がそれぞれ挿通される挿通のティース空間66である。
かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66と、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側のティース空間66とを除く残りのティース空間66については、紐65が通されない非挿通のティース空間66が周方向において連続して配置されない。
つまり、隣り合うティース空間66のうち一方には紐65が挿通されており、コイルエンド部55は、紐65を非挿通とするティース空間66が周方向において連続しないように、紐65により緊縛されている。
【0037】
紐65のレーシングは、紐65を通したティース空間66と紐65を通さないティース空間66が存在する他は、公知のレーシングと基本的に同じである。
例えば、
図5において最下部に示すU相の巻線54Uのコイルエンド部55Uでは、かしめ部50が、コイルエンド部55Uの中心側に位置するティース空間66Bの外周側に配置されている。
このコイルエンド部55Uでは、
図5において最下部に示されるティース空間66Aの内周側から外周側へ輪にした紐65を鉤針69により通し、外周側に通された輪の紐65をティース空間66A側へ向けて用意されている紐65の輪に通している。
紐65の輪を通したティース空間66Aからの紐65の輪の中に、コイルエンド部55Uの端部側から輪にした紐65を通し、コイルエンド部55Uの内周側から外周側へ通した側の紐65の輪を残す。
次に、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66Bを飛ばして次のティース空間66Cの内周側から外周側へ輪にした紐65を通し、コイルエンド部55Uの外周側で残した紐65の輪に、ティース空間66Cを通した紐65を通す。
従って、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66Bには紐65が挿通されず、ティース空間66Bの両側に位置するティース空間66A、66Cは紐65が通される。
【0038】
かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66は、紐65が挿通されないティース空間66であり、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側に位置するティース空間66は、必ず紐65が通されるティース空間66である。
このようにして、コイルエンド部55の全周にわたって紐65を編み込むことにより、紐65がコイルエンド部55において網目状に編み込まれる。
【0039】
ステータコア45における他方の端面側のコイルエンド部56でも、
図5に示すように、レーシングはコイルエンド部56と同様である。
かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66は、紐65が挿通されないティース空間66であり、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側に位置するティース空間66は、必ず紐65が通されるティース空間66である。
コイルエンド部56の全周にわたって紐65を編み込むことにより、紐65がコイルエンド部56において網目状に編み込まれる。
【0040】
コイルエンド部55、56は、レーシングに先立ってプレス装置により環状に成形されている。
本実施形態では、ステータコア45における一方の端面側のコイルエンド部55と他方の端面側のコイルエンド部56とは同時にレーシングが行われる。
【0041】
本実施形態の圧縮機10は以下の作用効果を奏する。
(1)かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66にはレーシングの紐65が挿通されないから、レーシングの際に鉤針69がかしめ部50と干渉することはない。加えて、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側に位置するティース空間66には紐65が通されるとともに、紐65を非挿通とするティース空間66が周方向に連続しないようにコイルエンド部55(56)が紐65により緊縛されている。このため、紐65によるコイルエンド部55(56)の緊縛を確実とすることができる。
【0042】
(2)紐65が挿通されないティース空間66が連続しない範囲において非挿通のティース空間66が形成されている。このため、かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66を除く全てのティース空間66に紐65を挿通する場合と比較して、紐65の使用量を抑制し、かつレーシングする時間が短くなり、生産性を向上させることができる。
【0043】
(3)互いに重なり合うコア板49を固定する複数のかしめ部50がステータコア45のティース46の外周側において周方向に等間隔を保って形成される。このため、スロット47の外周側にかしめ部を形成する場合と比較して、ステータコア45における磁束の流れは良好となる。
【0044】
(4)ステータコア45において周方向に等間隔に設けたかしめ部50の数は偶数個であるから、偶数である電動モータ12の極数およびスロット数と対応する。このため、かしめ部の数を奇数個とする場合と比較すると、ステータコア45における磁束の流れをバランス良くすることができる。
【0045】
(5)レーシングの際に鉤針69や紐65がかしめ部50と干渉することはないので、鉤針69が変形したり損傷したりすることはなく、電動モータ12におけるレーシング工程における作業効率を向上させることができる。
【0046】
(6)かしめ部50が外周側に配置されるティース空間66にはレーシングの紐65が挿通されないことから、例えば、電動モータ12が小型化される場合であって、鉤針69との干渉回避のためのかしめ部50の設計上の制約はない。このため、電動モータ12の小型化に適したかしめ部50の設計自由度を保つことができる。
【0047】
(
参考例1)
次に、
参考例1に係る車載用電動圧縮機について図面を参照して説明する。
本
参考例は、かしめ部が外周側に配置されるティース空間を除くティース空間に、全て紐を挿通した例である。
本
参考例では、他方の端面側のコイルエンド部における紐による編み方が、第1の実施形態と異なるだけであるから、第1の実施形態の符号を共通して用いる。
【0048】
図6に示すように、ステータコア45においてかしめ部50が外周側に配置されるティース空間66には紐65が挿通されない。
かしめ部50が外周側に配置されたティース空間66を除く全てのティース空間66には紐65が挿通されている。
従って、ステータコア45においてかしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側となるティース空間66には紐65が挿通されている。
【0049】
本
参考例によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(3)〜(6)と同等の作用効果を奏する。
また、かしめ部50が外周側に配置されたティース空間66を除く全てのティース空間66には紐65が挿通されているため、コイルエンド部55(56)をより強固に緊縛することができる。
【0050】
(
参考例2)
次に、
参考例2に係る車載用電動圧縮機について図面を参照して説明する。
本
参考例は、ステータコアにおけるかしめ部の数を5個とした例である。
本
参考例では、かしめ部の数が第1の実施形態と異なるだけであるから、第1の実施形態の符号を共通して用いる。
【0051】
図7に示すように、本
参考例では、5個のかしめ部50がヨーク48において周方向に等間隔となるように形成されている。
かしめ部50の数は奇数個であるが、かしめ部50はいずれもヨーク48においてティース46の径方向の外周側に位置するように設けられている。
図7では、ステータコア45の端面とコイルエンド部55(56)との間に形成されるティース空間66は図示されないが、紐65を挿通するティース空間66に対応するティース46に一点鎖線によって紐65の一部を示す。
従って、ステータコア45においてかしめ部50が外周側に配置されるティース空間66には紐65が挿通されない。
また、本
参考例では、かしめ部50が外周側に配置されたティース空間66を除く全てのティース空間66には紐65が挿通されている。
従って、ステータコア45においてかしめ部50が外周側に配置されるティース空間66の両側となるティース空間66には紐65が挿通されている。
【0052】
本
参考例によれば、第1の実施形態の作用効果(1)、(3)、(5)、(6)と同等の作用効果を奏する。
また、かしめ部50の数が奇数個であっても、レーシング用の鉤針69とかしめ部50との干渉を確実に回避することができるとともに、紐65によるコイルエンド部55(56)の緊縛を確実とする。
さらに言うと、かしめ部50の外周側に配置されたティース空間66を除く全てのティース空間66には紐65が挿通されているため、コイルエンド部55(56)をより強固に緊縛することができる。
【0053】
なお、上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0054】
○ 上記の実施形態では、固定スクロールおよび可動スクロールを備えるスクロール型の圧縮機構としたが、圧縮機構の形式は特に限定されない。例えば、圧縮機構をベーン式の圧縮機構やピストンを用いた往復動式の圧縮機構としてもよい。
○ 上記の実施形態では、極数が10極であって30スロットのステータコアを備える三相の電動モータとし
た。
○ 上記の実施形態では、巻線が波巻きによりステータコアのスロットに巻回されるとしたが、巻線は分布巻きの一種である同心巻きによりスロットに巻回されてもよい。この場合も、かしめ部が外周側に配置されるティース空間にはレーシングの紐を挿通せず、レーシングの際に鉤針がかしめ部と干渉しないようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、かしめ部をいずれもティースの径方向の外周側であるヨークに位置するように設けたが、かしめ部を設ける位置は、ティースの外周側であるヨークに限定されない。例えば、ティースにおける外周部であるヨークとの境界部にかしめ部を設けてもよく、この場合、かしめ部の周方向の長さはティースの周方向の長さよりも小さく設定すればよい。
○
参考例2では、かしめ部の外周側に配置されたティース空間を除く全てのティース空間に紐を挿通するとしたがこの限りではない。例えば、かしめ部の外周側に配置されたティース空間は紐を非挿通とし、かしめ部の外周側に配置されたティース空間の両側のティース空間に紐を挿通する。さらに、残りのティース空間について紐を挿通するティース空間と非挿通のティース空間が交互となるようにしてもよい。