特許第6248706号(P6248706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248706
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】応力分布計測装置及び応力分布計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/00 20060101AFI20171211BHJP
   G01B 11/24 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   G01L1/00 G
   !G01B11/24 K
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-40279(P2014-40279)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165206(P2015-165206A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩平
【審査官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−209132(JP,A)
【文献】 特開平11−108630(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0022775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00
G01L 1/24, 1/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重無負荷時の被計測物の温度画像と荷重負荷時の被計測物の温度画像との差分に基づいて当該被計測物の応力分布を推定する応力分布計測装置であって、
前記被計測物に所定のパターンを投影するプロジェクタと、
パターンが投影された被計測物を撮像する撮像手段と、
被計測物に負荷荷重を加える前の基準温度画像及び負荷荷重を加えたときの温度変動画像を取得する赤外線カメラと、
前記撮像手段で撮像された、パターンが投影された被計測物の画像から当該被計測物の三次元形状を算出する三次元形状算出手段と、
得られた被計測物の三次元形状の情報から得られる当該被計測物の高さ分布に基づいて、前記基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去するノイズ除去手段と、
ノイズ除去手段によりノイズが除去された基準温度画像及び温度分布画像の差分から前記被計測物の応力分布を算出する応力算出手段と
を備えたことを特徴とする、応力分布計測装置。
【請求項2】
前記三次元形状算出手段により得られる被計測物の三次元形状の情報から、当該被計測物の高さ分布に基づいて被計測物の画像領域を分割する分割手段を更に備えており、
前記ノイズ除去手段は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素と同じ画像領域に属する当該画素周辺の周辺領域を選択し、選択した周辺領域から、前記選択した画素のノイズ除去された画素値を推定する処理を全画素について実行する、請求項1に記載の応力分布計測装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去手段は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素周辺の周辺画素と前記選択された画素それぞれについて高さ分布に基づいて重み付けを行い、各画素の画素値と重みとの積の総和を前記選択した画素のノイズ除去された画素値とする処理を全画素について実行する、請求項1に記載の応力分布計測装置。
【請求項4】
前記プロジェクタが赤外線プロジェクタであり、前記赤外線カメラが前記撮像手段としても機能する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の応力分布計測装置。
【請求項5】
荷重無負荷時の被計測物の温度画像と荷重負荷時の被計測物の温度画像との差分に基づいて当該被計測物の応力分布を推定する応力分布計測方法であって、
プロジェクタから所定のパターンが投影された被計測物を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された、パターンが投影された被計測物の画像から当該被計測物の三次元形状を算出する三次元形状算出工程と、
赤外線カメラによって、被計測物に負荷荷重を加える前の基準温度画像及び負荷荷重を加えたときの温度変動画像を取得する画像取得工程と、
前記三次元形状算出工程において取得された被計測物の三次元形状の情報から得られる当該被計測物の高さ分布に基づいて、前記基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズ除去工程においてノイズが除去された基準温度画像及び温度分布画像の差分から前記被計測物の応力分布を算出する応力算出工程と
を含むことを特徴とする、応力分布計測方法。
【請求項6】
前記三次元形状算出工程において取得される被計測物の三次元形状の情報から、当該被計測物の高さ分布に基づいて被計測物の画像領域を分割する分割工程を更に含んでおり、
前記ノイズ除去工程は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素と同じ画像領域に属する当該画素周辺の周辺領域を選択し、選択した周辺領域から、前記選択した画素のノイズ除去された画素値を推定する処理を全画素について実行する、請求項5に記載の応力分布計測方法。
【請求項7】
前記ノイズ除去工程は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素周辺の周辺画素と前記選択された画素それぞれについて高さ分布に基づいて重み付けを行い、各画素の画素値と重みとの積の総和を前記選択した画素のノイズ除去された画素値とする処理を全画素について実行する、請求項5に記載の応力分布計測方法。



























【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は応力分布計測装置及び応力分布計測方法に関する。さらに詳しくは、負荷荷重を受ける物体の温度分布の変化から当該物体に発生した応力分布を推定する応力分布計測装置及び応力分布計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部材の最適設計を行うためには当該部材にどのような応力が発生しているのかを把握することが重要である。そのために、例えば有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)等の数値解析により応力分布を求める方法、及び、歪ゲージを用いて部材に加わる応力を測定する方法が知られている。
【0003】
しかし、部材の形状が複雑である場合や、部材が複数の部品により構成されている場合等では、前述した方法で正確に応力を求めることができないことがある。
そこで、負荷荷重を受ける部材の温度分布を計測し、その温度分布の変化から当該部材の応力分布を推定する方法(例えば、赤外線応力測定法)が提案されている。
【0004】
赤外線応力測定法は、部材に作用する応力の変化に応じて当該部材に発生する熱(温度)の変化を赤外線カメラで測定する方法であるが、測定に際し、応力により発生する熱以外のノイズ(例えば、摩擦熱、雰囲気温度変化等)の影響を受ける。そして、このようなノイズを除去し、高精度な応力分布を得るための手法として、従来、ロックイン処理が採用されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0005】
特許文献1記載の方法におけるロックイン処理では、部材に繰り返し荷重変動を生じさせ、荷重変動の少なくとも1周期分をそれぞれ含む第1周期及びそれ以降の第2周期について、それぞれ温度平均値を求めて第1平均温度及び第2平均温度としている。そして、第1平均温度及び第2平均温度の差に基づいて時間に対する温度勾配を求め、この温度勾配と、部材の初期温度とから温度特性を決定し、部材について測定された実温度分布から前記温度特性に基づいて求めた温度を減じることで、ノイズが除去された補正温度分布を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−103124号公報
【特許文献2】特開2001−188028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ロックイン処理を行うためには荷重試験機から繰り返し荷重を部材に付加する必要があるため、その適用範囲が限定的である。すなわち、繰り返し荷重が作用しない部材に対してはロックイン処理を適用することができず、したがって高精度な応力分布を得ることができない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ロックイン処理が適用できない、繰り返し負荷でない条件下でもノイズを除去して高精度な応力分布を得ることができる応力分布計測装置及び応力分布計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の応力分布計測装置は、荷重無負荷時の被計測物の温度画像と荷重負荷時の被計測物の温度画像との差分に基づいて当該被計測物の応力分布を推定する応力分布計測装置であって、
前記被計測物に所定のパターンを投影するプロジェクタと、
パターンが投影された被計測物を撮像する撮像手段と、
被計測物に負荷荷重を加える前の基準温度画像及び負荷荷重を加えたときの温度変動画像を取得する赤外線カメラと、
前記撮像手段で撮像された、パターンが投影された被計測物の画像から当該被計測物の三次元形状を算出する三次元形状算出手段と、
得られた被計測物の三次元形状の情報から得られる当該被計測物の高さ分布に基づいて、前記基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去するノイズ除去手段と、
ノイズ除去手段によりノイズが除去された基準温度画像及び温度分布画像の差分から前記被計測物の応力分布を算出する応力算出手段と
を備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明の応力分布計測装置では、被計測物にパターンを投影して得られる当該被計測物の三次元形状の情報から得られる高さ分布に基づいて、基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去している。このため、被計測物に対し繰り返して荷重を負荷するロックイン処理によることなくノイズを除去して高精度な応力分布を得ることができる。
【0011】
なお、本明細書において「被計測物」とは、熱弾性効果を利用して、その応力分布を計測する対象物のことであり、形状やサイズについて特に限定されるものではないが、例えばリブの付いたアルミハウジング等を例示することができる。
【0012】
前記三次元形状算出手段により得られる被計測物の三次元形状の情報から、当該被計測物の高さ分布に基づいて被計測物の画像領域を分割する分割手段を更に備えており、
前記ノイズ除去手段は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素と同じ画像領域に属する当該画素周辺の周辺領域を選択し、選択した周辺領域から、前記選択した画素のノイズ除去された画素値を推定する処理を全画素について実行するものとすることができる。
【0013】
また、前記ノイズ除去手段は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素周辺の周辺画素と前記選択された画素それぞれについて高さ分布に基づいて重み付けを行い、各画素の画素値と重みとの積の総和を前記選択した画素のノイズ除去された画素値とする処理を全画素について実行するものとすることができる。
【0014】
(2)また、本発明の応力分布計測方法は、荷重無負荷時の被計測物の温度画像と荷重負荷時の被計測物の温度画像との差分に基づいて当該被計測物の応力分布を推定する応力分布計測方法であって、
プロジェクタから所定のパターンが投影された被計測物を撮像する撮像工程と、
前記撮像行程において撮像された、パターンが投影された被計測物の画像から当該被計測物の三次元形状を算出する三次元形状算出工程と、
赤外線カメラによって、被計測物に負荷荷重を加える前の基準温度画像及び負荷荷重を加えたときの温度変動画像を取得する画像取得工程と、
前記三次元形状算出工程において取得された被計測物の三次元形状の情報から得られる当該被計測物の高さ分布に基づいて、前記基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去するノイズ除去工程と、
ノイズ除去工程においてノイズが除去された基準温度画像及び温度分布画像の差分から前記被計測物の応力分布を算出する応力算出工程と
を含むことを特徴としている。
【0015】
本発明の応力分布計測方法では、被計測物にパターンを投影して得られる当該被計測物の三次元形状の情報から得られる高さ分布に基づいて、基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去している。このため、被計測物に対し繰り返して荷重を負荷するロックイン処理によることなくノイズを除去して高精度な応力分布を得ることができる。
【0016】
前記三次元形状算出工程において取得される被計測物の三次元形状の情報から、当該被計測物の高さ分布に基づいて被計測物の画像領域を分割する分割工程を更に含んでおり、
前記ノイズ除去工程は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素と同じ画像領域に属する当該画素周辺の周辺領域を選択し、選択した周辺領域から、前記選択した画素のノイズ除去された画素値を推定する処理を全画素について実行するものとすることができる。
【0017】
前記ノイズ除去工程は、ノイズ除去する画素を選択するとともに、当該画素周辺の周辺画素と前記選択された画素それぞれについて高さ分布に基づいて重みづけを行い、各画素の画素値と重みづけとの積の総和を前記選択した画素のノイズ除去された画素値とする処理を全画素について実行するものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の応力分布計測装置及び応力分布計測方法によれば、ロックイン処理が適用できない、繰り返し負荷でない条件下でもノイズを除去して高精度な応力分布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の応力分布計測装置の一実施形態の模式図である。
図2】(a)は本発明における被計測物の一例の平面図であり、(b)は同A−A線断面図である。
図3】本発明の応力分布計測方法の一実施形態における工程の流れを示す図である。
図4】ノイズ除去方法の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の応力分布計測装置及び応力分布計測方法の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
〔応力分布計測装置〕
図1は、本発明の一実施形態に係る応力分布計測装置1の模式図である。応力分布計測装置1は、被計測物に荷重を負荷していないときの当該被計測物の温度画像と、被計測物に荷重を負荷したときの当該被計測物の温度画像との差分に基づいて当該被計測物の応力分布を推定する装置である。応力分布計測装置1は、赤外線プロジェクタ2と、赤外線カメラ3と、画像処理装置4とを備えている。画像処理装置4は、演算部5(記憶部5aを含む。)と、表示部6と、入力部7とを備えている。また、本実施形態に係る応力分布計測装置1は、被計測物8に引張力を付与した場合に当該被計測物8に発生する応力の分布を計測する装置であり、被計測物8に引張力を付与するための荷重負荷部9を備えている。
【0022】
赤外線プロジェクタ2は、被計測物8に向けて配置されており、当該被計測物8に縞パターン等の所定のパターンを投影する。
【0023】
赤外線カメラ3は、物体の表面から放出される赤外線を検出し、赤外線センサにより電気信号に変換し、画像信号として出力する。この赤外線カメラ3は、被計測物8に向けて配置されており、所定のパターンが投影された被計測物8を撮像してパターン投影画像を取得するとともに、荷重無負荷時の被計測物8の温度分布である基準温度画像及び荷重負荷部9による荷重負荷時の被計測物8の温度分布である温度変動画像を取得する。
【0024】
演算部5は、赤外線カメラ3からの画像信号を受信し、この画像信号を処理することで得られる被計測物8の温度変動の分布に基づいて当該被計測物8の応力分布を算出する。表示部6は、この演算部5による算出結果をモニタ上に表示する。
【0025】
本実施形態における演算部5は、撮像手段である赤外線カメラ3で撮像された、パターンが投影された被計測物8の画像から当該被計測物8の三次元形状を算出する三次元形状算出手段、得られた被計測物8の三次元形状の情報から得られる当該被計測物8の高さ分布に基づいて、前記基準温度画像及び温度分布画像のノイズを除去するノイズ除去手段、及びノイズ除去手段によりノイズが除去された基準温度画像及び温度分布画像の差分から前記被計測物の応力分布を算出する応力算出手段として機能する。また、演算部5は、三次元形状算出手段により得られる被計測物の三次元形状の情報から、当該被計測物の高さ分布に基づいて被計測物の画像領域を分割する分割手段としても機能する。
【0026】
〔応力分布計測方法〕
次に、応力分布計測方法の手順について図3〜4を参照しつつ説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る応力分布計測方法における工程の流れを示す図であり、図4は、ノイズ除去方法の一例の説明図である。
【0027】
まず、ステップS1において、赤外線プロジェクタ2から所定のパターン(例えば、縞パターン)が被計測物8に投影され、所定のパターンが投影された被計測物8を赤外線カメラ3が撮像する。撮像された画像の信号は画像処理装置4に出力され、当該画像処理装置4において処理される。この処理については、後述する。
【0028】
ついで、ステップS2において、前記ステップS1で得られた、パターンが投影された被計測物8の画像から当該被計測物8の三次元形状が演算部5により算出される。パターンを用いた三次元形状の算出手法は、本発明において特に限定されるものではなく、例えば特開平7−63527号公報や特開平7−229723号公報に記載されているような一般的手法を適宜採用することができる。
【0029】
ついで、ステップS3において、荷重負荷部9により荷重(引張荷重)が負荷されていない状態の被計測物8の温度分布を示す基準温度画像を赤外線カメラ3で取得し、その後、荷重負荷部9により荷重を負荷した状態(本実施形態では、荷重負荷部9によって引張力が被計測物8の長手方向に沿って負荷される。図1の白抜きの矢印参照。)の被計測物8の温度分布を示す温度変動画像を同じく赤外線カメラ3で取得する。取得された両画像の信号は画像処理装置4に出力され、当該画像処理装置4において処理される。この処理についても、後述する。
【0030】
ついで、ステップS4において、ステップS2で得られた被計測物8の三次元形状の情報(三次元直交座標軸上の位置情報)から、当該被計測物8の高さ方向の分布に基づいて被計測物8の画像領域が演算部5により分割される。具体的に、本実施形態における被計測物8は、図2に示されるように、中央に円形の凹所8aが形成された矩形の板材である。この被計測物8の高さ方向を図2(b)における上下方向とすると、前記凹所8aの領域と、それ以外の領域とでは高さが異なっている。高さが異なる、すなわち段差があると当該段差で応力の分布が変わることから、本実施形態では、被計測物8の高さ方向の分布に基づいて当該被計測物8の画像領域を分割している。具体的に、本実施形態では、演算部5は凹所8aの領域とそれ以外の領域とに画像領域を分割する。
なお、以上の例では、簡単のため被計測物を2つの画像領域に分割しているが、複雑な形状の被計測物については、3つ以上の画像領域に分割することができる。
【0031】
ついで、ステップS5において、演算部5によってノイズ除去の処理が行われる。被計測物8の表面温度は、荷重負荷部9により負荷される応力だけに起因して変化するのではなく、ノイズ(例えば、摩擦熱、雰囲気温度変化等)の影響を受ける。したがって、このノイズの影響を排除しないと高精度に応力分布を推定することができない。本実施形態では、ステップS2で得られた基準温度画像及び温度変動画像について、例えば次のようにしてノイズの除去を行う。
【0032】
<ノイズ除去>
ノイズの除去は赤外線カメラ3で取得された画像全体について行われる。例えば、100×100画素の赤外線カメラ3の場合、10000個の画素についてノイズ除去の処理が行われる。
【0033】
ノイズを除去しようとする着目画素p1のひとつ外側の画素(p2〜p9)が存在する領域を前記着目画素p1の周辺領域とする。図4に示される例では、着目画素p1の周辺領域には8つの画素p2〜p9が存在している(図4の(a)参照)。
【0034】
今、ダブルハッチングを施した2つの画素p4、p6が属する画像領域(ステップS4において、演算部5により分割された画像領域)が、それ以外の7つの画素が属する画像領域と異なるとする(図4の(b)参照)。この場合、ノイズ除去手段によって、着目画素p1と同じ画像領域に属し、且つ、当該着目画素p1の周辺に位置する画素、すなわち画素p2、p3、p5、p7、p8及びp9、合計6つの画素が選択される。そして、これら6つの画素の画素値を用いて着目画素p1のノイズ除去された画素値が推定される。例えば、6つの画素値の平均を着目画素p1のノイズ除去された画素値とすることができる。
【0035】
着目画素を上下又は左右に順次シフトさせて新たな着目画素を設定し、前述した処理を繰り返すことで、全ての画素についてノイズ除去された画素値を得ることができる。このノイズ除去の処理は、基準温度画像及び温度変動画像それぞれについて行われる。
【0036】
ついで、ステップS6において、演算部5は、ノイズが除去された基準温度画像及び温度変動画像の差分を取得し、その後、ステップS7において、演算部5は、ステップS6で取得した前記差分から被計測物8の応力分布を算出する。応力の算出に際しては、被計測物8を構成する材料の熱弾性係数が利用される。算出された応力分布は、表示部6のモニタ上に表示される。
【0037】
〔その他の変形例〕
なお、今回開示された実施の形態はすべての点において単なる例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【0038】
例えば、前述した実施形態では、分割手段によって、被計測物の画像領域を当該被計測物の高さ分布に基づいて分割しているが、このような分割処理をせずにノイズ除去を行うこともできる。
【0039】
今、図4の(a)に示されるように、着目画素p1を中心として8つの周辺画素が存在する場合を考える。
ステップS2において被計測物8の三次元形状の情報(三次元直交座標軸上の位置情報)が算出されている。
【0040】
ついで、着目画素p1と周辺画素p2〜p9の重み付けを行う。この重み付けは、種々の方法により行うことができるが、例えば各画素の空間距離に基づいて行うことができる。本発明では、被計測物の三次元形状が測定されているため、各画素の相対距離が分かっている。すなわち、或る周辺画素(例えば、画素p2)の座標と着目画素p1の座標との距離である、「各画素の空間距離」が分かっている。そして、着目画素p1との距離が近い周辺画素であれば重みを大きくし、逆に、着目画素p1との距離が遠い周辺画素であれば、重みを小さくするという処理(重み付け)を行う。この重み付けの手法は、本発明において特に限定されるものではなく、従来知られている手法を適宜採用することができ、例えば、ガウシアンフィルタに基づく重み付けを用いたり、着目画素との距離が大きく離れていれば重みをゼロにしたりする(閾値処理)ことができる。
【0041】
そして、画素p1〜p9のそれぞれについて、画素の輝度値×重みを算出し、その総和を算出することで、着目画素p1についてノイズが除去された輝度値を得ることができる。
【0042】
また、前述した実施形態では、赤外線カメラを用いてパターン投影画像、基準温度画像及び温度変動画像を取得しているが、パターン投影画像については、赤外線カメラでなく通常のカメラ(撮像手段)でも取得することができる。すなわち、赤外線プロジェクタではなく一般的なプロジェクタで投影されたパターン画像を通常のカメラで取得し、基準温度画像及び温度変動画像を赤外線カメラで取得することもできる。ただし、2台のカメラ(通常のカメラと赤外線カメラ)を使用する場合、両カメラの座標系を把握しておく必要がある(両カメラの相対的な関係を知っておくために、両カメラの座標系と姿勢をカメラキャリブレーションなどの手段で把握する必要がある)ことから、赤外線カメラをパターン撮像手段としても機能させることが、システムを簡素化させる点からは望ましい。
【0043】
また、前述した実施形態では、3×3画素、合計9つの画素内に着目画素と周辺画素が存在しているが、ノイズ除去時の単位画素数はこれに限定されるものではなく、例えば5×5画素、合計25画素内に着目画素と周辺画素が存在してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:応力分布計測装置、2:赤外線プロジェクタ、3:赤外線カメラ、4:画像処理装置、5:演算部、6:表示部、7:入力部、8:被計測物、8a:凹所、9:荷重負荷部







図1
図2
図3
図4