(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音声認識手段は、前記音声入力手段に入力された音声を前記分割単位ずつ保存する入力音バッファを備え、前記音声入力手段への音声の入力が完了した後に、前記入力音バッファに保存されている前記分割単位の音声を統合したものと前記記憶手段に記憶されている階床名とを単語単位で比較する請求項2に記載のエレベータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付の図面を参照して、本発明を詳細に説明する。各図では、同一又は相当する部分に同一の符号を付している。重複する説明は、適宜簡略化あるいは省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるエレベータ制御装置を備えたエレベータシステムの構成図である。以下、
図1を参照して、エレベータ制御装置の構成を説明する。
【0011】
エレベータシステムは、かご1及びエレベータ制御装置2を備えている。かご1は、図示しない昇降路の内部に設けられている。昇降路は、複数の階床を備えた建物に設けられている。かご1の内部には、音声入力手段3及び戸開閉手段4が設けられている。音声入力手段3及び戸開閉手段4は、エレベータ制御装置2と接続されている。音声入力手段3は、例えば、マイク等である。
【0012】
エレベータ制御装置2は、記憶手段5、音声認識手段6、管理情報取得手段7、演算手段8、切換手段9、時刻取得手段10、戸制御手段11及び行先階登録手段12を備えている。エレベータ制御装置2は、例えば、制御盤として設けられている。記憶手段5は、例えば、制御盤に設けられたメモリである。
【0013】
記憶手段5は、1拍単位記憶手段13及び単語単位記憶手段14を備えている。音声認識手段6は、1拍単位音声認識手段15、単語単位音声認識手段16及び入力音バッファ17を備えている。入力音バッファ17は、例えば、制御盤に設けられたメモリである。演算手段8は、1拍単位有効判定手段18及び単語単位有効判定手段19を備えている。
【0014】
かご1は、昇降路の内部を昇降される。音声入力手段3には、音が入力される。音声入力手段3への入力音は、例えば、エレベータの利用者の音声等である。戸開閉手段4は、かご1の戸の開閉動作を行う。
【0015】
記憶手段5は、昇降路が設けられた建物の階床名等を示す情報を記憶している。音声認識手段6は、記憶手段5に記憶されている情報に基づいて、音声入力手段3に入力された音声を認識する。また、音声認識手段6は、音声入力手段3に入力された音声を入力音として入力音バッファ17に保存する。管理情報取得手段7は、エレベータの管理情報を取得する。演算手段8には、音声認識手段6から音声の認識結果が入力される。演算手段8は、管理情報取得手段7により取得された管理情報に基づいて、音声認識手段6により認識された音声が建物の有効な階床名を示すものであるか否か判定する。有効な階床名とは、行先階として呼びを登録できる階床である。切換手段9は、記憶手段5、音声認識手段6及び演算手段8を切り換える。時刻取得手段10は、現在の時刻を取得する。戸制御手段11は、複数の時間を示す情報を保持する。また、戸制御手段11は、音声認識手段6での認識結果、演算手段8での判定結果及び時刻取得手段10により取得された時刻に基づいて、戸開閉手段4を制御する。行先階登録手段12は、演算手段8での判定結果に基づいて、行先階への呼びを登録する。
【0016】
管理情報は、有効な階床名を決定するために用いられる情報である。実施の形態1において、管理情報は、エレベータのサービス階床の階床名及びかご1の進行方向に存在する階床の階床名等である。サービス階床とは、エレベータの利用者がかご1を乗り降りできる階床である。
【0017】
記憶手段5、音声認識手段6及び演算手段8は、建物の階床名を単語単位及び単語よりも小さい分割単位で処理する。実施の形態1において、単語よりも小さい分割単位は、1拍である。例えば、1階を示す階床名は、単語単位では「イッカイ」の1語として処理される。また、1階を示す階床名は、1拍単位では「イ」、「ッ」、「カ」及び「イ」の4語に分割されて処理される。
【0018】
1拍単位記憶手段13は、1拍単位に分割された階床名を記憶している。1拍単位音声認識手段15は、音声入力手段3に入力された音声に対して1拍単位の音声認識を行う。1拍単位有効判定手段18は、1拍単位音声認識手段15により認識された1拍単位の語が有効な階床名を構成する語として有効であるか否かを判定する。
【0019】
単語単位記憶手段14は、階床名を単語単位で記憶している。単語単位音声認識手段16は、入力音バッファ17に保存された入力音を用いて単語単位の音声認識を行う。単語単位有効判定手段19は、単語単位音声認識手段16により認識された単語が有効な階床名であるか否かを判定する。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1における記憶手段5の構成図である。
図2は、一例として、建物に存在する階が1階から5階である場合を示している。以下、
図2を参照して、記憶手段5について詳細に説明する。
【0021】
単語単位記憶手段14は、単語単位辞書20及び単語単位の音声認識の閾値21を記憶している。単語単位辞書20には、音響モデル22及びラベル23が含まれている。音響モデル22は、単語単位での各階床名の発音に対応した情報である。ラベル23は、各音響モデル22がどの階床名の単語に対応するかを示す情報である。各音響モデル22は、各ラベル23と1対1で対応付けられている。
図2において、音響モデル22及びラベル23は、「イッカイ」、「ニカイ」、「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」のように、各階床名を示す単語ごとに記憶されている。単語単位の音声認識の閾値21は、予め設定された値である。単語単位の音声認識の閾値21は、音声認識手段6が単語単位の音声認識を行う際に用いられる。
【0022】
1拍単位記憶手段13は、1拍単位辞書24及び1拍単位の音声認識の閾値25を記憶している。1拍単位辞書24には、音響モデル26及びラベル27が含まれている。音響モデル26は、各階床名を1拍単位に分割して得られた1拍単位の語の発音に対応する情報である。ラベル27は、各音響モデル26がどの1拍単位の語に対応するかを示す情報である。各音響モデル26は、各ラベル27と1対1で対応付けられている。
図2において、音響モデル26及びラベル27は、「イ」、「ッ」、「カ」、「ニ」、「サ」、「ン」、「ヨ」及び「ゴ」のように、各階床名を示す単語を構成する1拍分の語ごとに記憶されている。1拍単位の音声認識の閾値25は、予め設定された値である。1拍単位の音声認識の閾値25は、音声認識手段6が1拍単位の音声認識を行う際に用いられる。
【0023】
1拍単位音声認識手段15による1拍単位の音声認識について説明する。1拍単位音声認識手段15は、音声入力手段3に入力される音声を1拍分ずつ入力音バッファ17に保存する。1拍単位音声認識手段15は、1拍分の音声を1拍単位辞書24が記憶している音響モデル26と比較することで、1拍単位の類似度を算出する。1拍単位の類似度は、数値として算出される。1拍単位音声認識手段15は、1拍分の音声を全ての音響モデル26と比較することで、音響モデル26の数と同数の1拍単位の類似度を算出する。つまり、1拍分の音声について、音響モデル26の数と同数の1拍単位の類似度が算出される。1拍単位音声認識手段15は、音響モデル26と対応付けられたラベル27に基づいて、算出された1拍単位の類似度と1拍単位の語の組を作る。1拍単位音声認識手段15は、作られた組の中で、1拍単位の類似度が1拍単位の音声認識の閾値25を超えている組を全て選出する。このとき、選出された組が存在する場合、1拍単位音声認識手段15は、選出された組に含まれる1拍単位の語を全て認識結果として出力する。一方、選出された組が存在しない場合、1拍単位音声認識手段15は、音声認識の失敗を示す信号として「0」を出力する。1拍単位音声認識手段15は、音声入力手段3に1拍分の音声が入力されるたびに、以上のような処理を行う。
【0024】
図3は、本発明の実施の形態1における1拍単位の音声認識のフローチャートである。以下、音声入力手段3に1拍分の音声“ヨ”が入力された場合を例示して、1拍単位の音声認識について説明する。ここでは、1拍単位の音声認識の閾値25が0.8に設定されているものとする。
【0025】
1拍単位音声認識手段15は、1拍分の音声“ヨ”を入力音として入力音バッファ17に保存する(ステップS101)。1拍単位音声認識手段15は、1拍分の音声“ヨ”を1拍単位辞書24内の音響モデル26と比較することで、1拍単位の類似度を算出する。そして、1拍単位音声認識手段15は、ラベル27に基づいて、1拍単位の類似度と1拍単位の語の組を作る(ステップS102)。ここでは、1拍分の音声“ヨ”と各音響モデル26との類似度は、「イ」は0.63、「ッ」は0.32、「カ」は0.68、「ニ」は0.55、「サ」は0.73、「ン」は0.21、「ヨ」は0.87、「ゴ」は0.81であったとする。1拍単位音声認識手段15は、1拍単位の音声認識の閾値25の値である0.8よりも高い類似度を持つ組を選出する(ステップS103)。0.8よりも高い類似度は、「ヨ」と組となる0.87及び「ゴ」と組となる0.81であるため、この2つの組がステップS103で選出される。1拍単位音声認識手段15は、ステップS103で選出された組が存在するか否かを判定する(ステップS104)。ステップS104においてステップS103で選出された組が存在すると判定された場合、1拍単位音声認識手段15は、ステップS103で選出された組に含まれる1拍単位の語を認識結果として出力する(ステップS105)。一方、ステップS104においてステップS103で選出された組が存在しないと判定された場合、1拍単位音声認識手段15は、音声認識の失敗を示す信号を出力する(ステップS106)。ここでは、ステップS103で選出された組が存在しているため、ステップS104からステップS105へ進む。その結果、1拍単位音声認識手段15は、1拍単位の語「ヨ」及び「ゴ」を認識結果として出力する。
【0026】
単語単位音声認識手段16による単語単位の音声認識について説明する。単語単位音声認識手段16は、入力音バッファ17に入力音として保存されている全ての1拍分の音声を1つに合わせたものを統合入力音として処理する。単語単位音声認識手段16は、統合入力音を単語単位辞書20が記憶している音響モデル22と比較することで、単語単位の類似度を算出する。単語単位の類似度は、数値として算出される。単語単位音声認識手段16は、統合入力音を全ての音響モデル22と比較することで、音響モデル22の数と同数の単語単位の類似度を算出する。つまり、統合入力音について、音響モデル22の数と同数の単語単位の類似度が算出される。単語単位音声認識手段16は、音響モデル22と対応付けられたラベル23に基づいて、算出された単語単位の類似度と単語の組を作る。単語単位音声認識手段16は、作られた組の中で、単語単位の類似度が最も高い組を選出する。このとき、選出された組に含まれる単語単位の類似度が単語単位の音声認識の閾値21を超えている場合、単語単位音声認識手段16は、選出された組に含まれる単語を認識結果として出力する。一方、選出された組に含まれる単語単位の類似度が単語単位の音声認識の閾値21を超えていない場合、単語単位音声認識手段16は、音声認識の失敗を示す信号を出力する。
【0027】
図4は、本発明の実施の形態1における単語単位の音声認識のフローチャートである。以下、入力音バッファ17に統合入力音として“ヨンカイ”が保存されている場合を例示して、単語単位の音声認識について説明する。ここでは、単語単位の音声認識の閾値21が0.8に設定されているものとする。
【0028】
単語単位音声認識手段16は、入力音バッファ17より統合入力音“ヨンカイ”を読み出す。単語単位音声認識手段16は、統合入力音“ヨンカイ”を単語単位辞書20内の音響モデル22と比較することで、単語単位の類似度を算出する。そして、語単位音声認識手段16は、ラベル23に基づいて、単語単位の類似度と単語の組を作る(ステップS201)。ここでは、統合入力音“ヨンカイ”と各音響モデル22との類似度は、「イッカイ」は0.62、「ニカイ」は0.38、「サンカイ」は0.80、「ヨンカイ」は0.91、「ゴカイ」は0.43であったとする。単語単位音声認識手段16は、ステップS201で算出された類似度の中で最も高い類似度0.91を持つ「ヨンカイ」の組を選出する(ステップS202)。単語単位音声認識手段16は、ステップS202で選出された組が持つ類似度が単語単位の音声認識の閾値21より高いか否かを判定する(ステップS203)。ステップS203において、ステップS202で選出された組が持つ類似度が単語単位の音声認識の閾値21を超えていると判定された場合、単語単位音声認識手段16は、ステップS202で選出された組に含まれる単語を認識結果として出力する(ステップS204)。一方、ステップS203において、ステップS202で選出された組が持つ類似度が単語単位の音声認識の閾値21を超えていないと判定された場合、単語単位音声認識手段16は、音声認識の失敗を示す信号を出力する(ステップS205)。ここでは、「ヨンカイ」と組となる類似度0.91が単語単位の音声認識の閾値21の値である0.8を超えているため、ステップS203からステップS204へ進む。その結果、単語単位音声認識手段16は、単語「ヨンカイ」を認識結果として出力する。
【0029】
図5は、本発明の実施の形態1における演算手段8の構成図である。以下、
図5を参照して、演算手段8について詳細に説明する。
【0030】
1拍単位有効判定手段18は、状態遷移28、階床名の受理に必要な遷移のリストL1及び完了判断保留フラグFL1を保持する。単語単位有効判定手段19は、有効な階床名のリストL2を保持する。状態遷移28は、階床名の音声入力の状態の遷移を示す情報である。状態遷移28は、1拍単位音声認識手段15から出力される1拍単位の音声認識の認識結果に基づいて更新される。階床名の受理に必要な遷移のリストL1は、建物に存在する各階の階床名が受理されるために必要な遷移を示す情報である。階床名が受理されるとは、当該階床名を示す単語を構成する1拍単位の語が正しい順番で音声入力されることである。完了判断保留フラグFL1は、有効な階床名の音声入力が完了したかの判断を保留中であるか否かを示す変数である。完了判断保留フラグFL1が1ならば、階床名の音声入力が完了したかの判断が保留中である。完了判断保留フラグFL1が0ならば、階床名の音声入力が完了したかの判断が保留中ではない。以下、階床名の受理に必要な遷移のリストL1及び有効な階床名のリストL2は、「リストL1」及び「リストL2」と略称する。また、完了判断保留フラグFL1は、「フラグFL1」と略称する。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態1における状態遷移28の第1の例を示す説明図である。
図6は、一例として、建物に存在する階が1階から5階である場合を示している。以下、
図6を参照して、状態遷移28について説明する。
【0032】
図6には、状態1から状態6及び遷移T201から遷移T209が示されている。状態1は、初期状態である。状態6は、受理状態である。各遷移は、それぞれ1つの1拍単位の語に対応付けられている。各遷移に対応付けられた1拍単位の語は、1拍単位辞書24に含まれているものと同じである。演算手段8に入力された1拍単位での認識結果が遷移に対応付けられた1拍単位の語と一致した場合に、当該遷移が行われる。各遷移は、それぞれフラグFL2を保持する。フラグFL2には、FL2[1]、FL2[2]、・・・のように番号が割り付けられている。フラグFL2の番号は、それを保持する遷移の番号と対応付けられている。例えば、FL2[3]は遷移T203に対応付けられている。フラグFL2は、それを保持する遷移が可能であるか否かを示す変数である。フラグFL2が1であれば、それを保持する遷移は可能である。フラグFL2が0であれば、それを保持する遷移は不可能である。つまり、フラグFL2が設定されることで、可能な遷移が変更される。フラグFL2の設定は、リストL1及びリストL2に基づき、有効な階床名に合わせて行われる。
図6では、全てのフラグFL2が1であるため、全ての遷移が可能である。全ての遷移が可能であれば、全ての階床名が受理され得る。受理される階床名を変更するためには、各遷移が保持するフラグFL2を最適に設定する必要がある。
【0033】
図7は、本発明の実施の形態1における階床名の受理に必要な遷移のリストL1の一例を示す表である。
図7は、一例として、建物に存在する階が1階から5階である場合を示している。このため、
図7のリストL1には、1階から5階の階床名を示す単語ごとに必要な遷移が示されている。
【0034】
図8は、本発明の実施の形態1における有効な階床名のリストL2の一例を示す表である。
図8は、建物に存在する階が1階から5階であり、進行方向が上向きのかご1が2階に停止している場合を示している。このため、
図8のリストL2には、3階から5階の階床名を示す単語が示されている。
【0035】
図9は、本発明の実施の形態1における状態遷移28の第2の例を示す説明図である。
図9は、
図7に示すリストL1及び
図8に示すリストL2に基づいて、
図8に示す状態遷移28のフラグFL2が設定された場合を示している。
図9では、FL2[1]、FL2[2]及びFL2[6]が0に設定されている。このため、遷移T201、遷移T202及び遷移T206は不可能な遷移となっている。遷移T201、遷移T202及び遷移T206は、有効でない階床名の受理にのみ必要な遷移である。
【0036】
演算手段8における状態遷移28の更新について説明する。演算手段8における状態遷移28の更新において、1拍単位有効判定手段18は、3回の選出処理を行う。1拍単位での認識結果が音声入力手段3から演算手段8に入力されると、1拍単位有効判定手段18は、1回目の選出処理を行う。1回目の選出処理において、1拍単位有効判定手段18は、状態遷移28における現在の状態が持つ遷移を全て選出する。2回目の選出処理において、1拍単位有効判定手段18は、1回目の選出処理で選出された遷移のうち保持するフラグFL2が“1”である遷移を全て選出する。2回目の選出処理で選出された遷移が1つでも存在する場合、1拍単位有効判定手段18は、3回目の選出処理を行う。3回目の選出処理において、1拍単位有効判定手段18は、2回目の選出処理で選出された遷移のうち演算手段8に入力された1拍単位での認識結果と同じ1拍単位の語に対応付けられた遷移を全て選出する。3回目の選出処理で選出された遷移が1つでも存在する場合、1拍単位有効判定手段18は、状態遷移28を更新する。具体的には、状態遷移28の現在の状態を、3回目の選出処理で選出された遷移による遷移先の状態とする。その後、演算手段8は、遷移を行った旨を出力する。なお、2回目又は3回目の選出処理で選出された遷移が1つも存在しない場合、演算手段8は、遷移を行わなかった旨を出力する。
【0037】
図10は、本発明の実施の形態1における状態遷移28の更新動作のフローチャートである。以下、演算手段8へ最初に入力される1拍単位での認識結果が「ヨ」及び「ゴ」である場合を例示して、状態遷移28の更新動作について説明する。ここでは、建物に存在する階が1階から5階であり、進行方向が上向きのかご1が2階に停止しているものとする。また、エレベータの全階床がサービス階床であるものとする。このとき、リストL1は
図7、リストL2は
図8のようになり、フラグFL2は
図9のように設定される。また、演算手段8への入力がまだ行われていないため、状態遷移28における現在の状態は状態1である。
【0038】
1拍単位有効判定手段18は、現在の状態である状態1の持つ遷移T201、遷移T202、遷移T203、遷移T204及び遷移T205を選出する(ステップS301)。1拍単位有効判定手段18は、ステップS301で選出された遷移のうち保持するフラグFL2が“1”である遷移を選出する(ステップS302)。ここでは、FL2[1]=0、FL2[2]=0、FL2[3]=1、FL2[4]=1、FL2[5]=1であるため、ステップS302では、遷移T203、遷移T204及び遷移T205が選出される。1拍単位有効判定手段18は、ステップS302で選出された遷移が存在するか否かを判定する(ステップS302)。ステップS303において、ステップS302で選出された遷移が存在すると判定された場合、1拍単位有効判定手段18は、ステップS302で選出された遷移のうち「ヨ」及び「ゴ」に対応付けられた遷移を選出する(ステップS304)。ステップS304では、「ヨ」に対応付けられた遷移T204及び「ゴ」に対応付けられた遷移T205が選出される。続いて、1拍単位有効判定手段18は、ステップS304で選出された遷移が存在するか否かを判定する(ステップS305)。ステップS305において、ステップS304で選出された遷移が存在すると判定された場合、1拍単位有効判定手段18は、ステップS304で選出された遷移による遷移先を現在の状態とする(ステップS306)。ステップS306において、遷移T204による遷移先である状態3及び遷移T205による遷移先である状態4が現在の状態となる。このようにして、状態遷移28は更新される。ステップS306に続いて、1拍単位有効判定手段18は、遷移を行った旨を出力する(ステップS307)。なお、ステップS303において、ステップS302で選出された遷移が存在しないと判定された場合は、ステップS308に進む。また、ステップS305において、ステップS304で選出された遷移が存在しないと判定された場合は、ステップS308に進む。ステップS308において、1拍単位有効判定手段18は、遷移を行わなかった旨を出力する。
【0039】
演算手段8の初期化処理について説明する。演算手段8は、初期化処理として、状態遷移28の初期化、有効な階床名の導出及びフラグFL2の設定を行う。具体的には、初期化処理において、演算手段8は以下の動作を行う。フラグFL1を0に設定する。状態遷移28の現在の状態を初期状態に設定する。状態遷移28の各遷移が保持するフラグFL2をすべて0に設定する。管理情報取得手段7から管理情報を取得する。管理情報として、サービス階床の階床名を取得する。このとき、サービス階床の階床名は、文字列で与えられる。管理情報として、かご1の進行方向に存在する階床の階床名を取得する。このとき、かご1の進行方向に存在する階床の階床名は、文字列で与えられる。取得したサービス階床の階床名とかご1の進行方向に存在する階床の階床名とで共通するものを、リストL2に登録する。リストL1の遷移のうち、リストL2に登録されている階床名に対応する遷移をすべて選出する。選出された遷移が保持するフラグFL2を1に設定する。これにより、有効な階床名のみが受理されるようになる。
【0040】
図11は、本発明の実施の形態1における演算手段8の初期化処理のフローチャートである。以下、建物に存在する階が1階から5階であり、進行方向が上向きのかご1が2階に停止している場合を例示して、演算手段8の初期化処理について説明する。また、エレベータの全階床がサービス階床であるものとする。このとき、リストL1は
図7、リストL2は
図8のようになる。
【0041】
演算手段8は、1拍単位有効判定手段18の保持するフラグFL1を0に設定する(ステップS401)。演算手段8は、1拍単位有効判定手段18の保持する状態遷移28の現在の状態を初期状態に設定する。演算手段8は、1拍単位有効判定手段18の保持する状態遷移28のフラグFL2[1]〜FL2[9]をすべて0に設定する(ステップS403)。演算手段8は、管理情報取得手段7から、サービス階床の階床名「イッカイ」、「ニカイ」、「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」を取得する(ステップS404)。演算手段8は、管理情報取得手段7から、かご1の進行方向に存在する階床の階床名「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」を取得する(ステップS405)。演算手段8は、サービス階床の階床名とかご1の進行方向に存在する階床の階床名のうち共通の階床名をリストL2に登録する(ステップS406)。ステップS406では、「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」がリストL2に登録される。演算手段8は、リストL1の遷移のうちリストL2に登録されている「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」に対応する遷移を全て選出する(ステップS407)。ステップS407では、
図7に示すように、「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」の受理に必要な遷移を合わせて、遷移T203、T204、T205、T207、T208及びT209が選出される。演算手段8は、ステップS407で選出された遷移が保持するフラグFL2を1に設定する(ステップS408)。ステップS408では、遷移T203、T204、T205、T207、T208及びT209に対応するフラグFL2[3]、FL2[4]、FL2[5]、FL2[7]、FL2[8]及びFL2[9]が1に設定される。その結果、
図9に示すように、階床名のうち「サンカイ」、「ヨンカイ」及び「ゴカイ」のみが受理されるようになる。
【0042】
図12は、本発明の実施の形態1における戸制御手段11が保持する時間の一覧である。戸制御手段11は、初期戸開時間t1、戸開時間t2、戸開延長時間t3及び経過時間t4を保持する。t1、t2、t3及びt4は、全て秒単位で表される。
【0043】
初期戸開時間t1は、かご1の戸が戸開完了してから戸閉開始するまでの時間として予め設定された時間である。初期戸開時間t1は、例えば、かご1の戸が戸開完了してから利用者が1拍分の音声の入力を開始するまでにかかる時間以上の秒数として設定される。初期戸開時間t1は、例えば、4秒に設定される。戸開時間t2は、かご1の戸が戸開完了してから戸閉開始するまでの時間としてエレベータ運転時に格納される時間である。つまり、戸開時間t2は、エレベータ運転時にかご1の戸を実際に開けておく時間である。戸開時間t2は、戸制御手段11により延長された場合は更新される。戸開延長時間t3は、1度に戸開時間t2を延長できる時間の上限である。戸開延長時間t3は、例えば、1拍分の音声の入力を行うのにかかる時間以上の秒数として設定される。1拍分の音声の入力を行うのにかかる時間は、例えば、音声データから求められる。戸開延長時間t3は、例えば、1秒に設定される。経過時間t4は、かご1の戸が戸開完了してから現時点までに経過した時間である。経過時間t4は、エレベータ運転時に、戸制御手段11に格納される。経過時間t4は、かご1の戸が戸開している間は逐次更新される。
【0044】
図13は、本発明の実施の形態1における経過時間t4の更新動作のフローチャートである。以下、
図13を参照して、戸制御手段11による経過時間t4の更新動作について説明する。
【0045】
経過時間t4の更新動作は、かご1の戸が戸開完了すると同時に開始される。戸制御手段11は、初期戸開時間t1の秒数を戸開時間t2として設定する(ステップS501)。初期戸開時間t1は、例えば、4秒である。ステップS501に続いて、戸制御手段11は、時刻取得手段10により現在時刻を取得する(ステップS502)。現在時刻は、時分秒で表される。ステップS502に続いて、戸制御手段11は、ステップS502で取得した現在時刻を戸開完了時刻として設定する(ステップS503)。戸開完了時刻は、時分秒で表される。ステップS503に続いて、戸制御手段11は、時刻取得手段10により現在時刻を取得する(ステップS504)。ステップS504に続いて、戸制御手段11は、ステップS504で得た現在時刻と戸開完了時刻の差分を秒単位で求める。そして、戸制御手段11は、当該差分を経過時間t4として設定する(ステップS505)。ステップS505に続いて、戸制御手段11は、経過時間t4が戸開時間t2以上であるか否かを判定する(ステップS506)。ステップS506において、経過時間t4が戸開時間t2以上であると判定された場合、戸制御手段11は、処理を終了する。一方、ステップS506で経過時間t4が戸開時間t2未満であると判定された場合は、ステップS504〜ステップS506の処理を繰り返す。このようにして、戸制御手段11は、経過時間t4を更新する。
【0046】
図14は、本発明の実施の形態1におけるエレベータ制御装置の全体的な動作のフローチャートである。
図14は、かご1が呼びに応じて停止してからの動作を示している。
図14に示す動作は、かご1の戸の戸開完了と同時に開始される。
【0047】
最初に、演算手段8が初期化処理を行う(ステップS601)。ステップS601に続いて、切換手段9により、記憶手段5が1拍単位記憶手段13へ、音声認識手段6が1拍単位音声認識手段15へ、演算手段8が1拍単位有効判定手段18へと切り換えられる(ステップS602)。ステップS602に続いて、1拍単位音声認識手段15は、1拍単位の音声認識を行う(ステップS603)。ステップS603に続いて、1拍単位音声認識手段15から認識結果が出力されたか否かの判定が行われる(ステップS604)。
【0048】
ステップS604において、認識結果として1拍単位の語が出力されたと判定された場合、演算手段8に認識結果が入力される(ステップS605)。ステップS605に続いて、認識結果の入力により1拍単位有効判定手段18が保持する状態遷移28において遷移が行われたか否かの判定が行われる(ステップS606)。ステップS606における判定は、1拍単位での認識結果が有効な階床名を構成する語として有効であるか無効であるかの判定である。
【0049】
ステップS606において、認識結果の入力により遷移が行われたと判定された場合、状態遷移28において現在の状態が受理状態であるか否かの判定が行われる(ステップS607)。ステップS607において、現在の状態のうち1つでも受理状態であると判定されるということは、階床名の音声入力が完了した可能性があることを意味する。一方、ステップS607において、現在の状態が受理状態でないと判定されるということは、階床名の音声入力が完了した可能性がないことを意味する。つまり、ステップS607現在の状態が受理状態に遷移したかを確認することで、今までに入力された1拍単位の語の集まりが有効な階床名であることが検出される。
【0050】
ステップS607において、現在の状態のうち1つでも受理状態であると判定された場合、ステップS608に進む。一方、ステップS607において、現在の状態が受理状態でないと判定された場合、ステップS610に進む。ステップS608では、現在の状態のうち保持するフラグFL2が“1”である遷移を持つ状態があるか否かの判定が行われる。つまり、ステップS608では、現在の状態から可能な遷移があるか否かが判定される。
【0051】
ステップS608において、現在の状態から可能な遷移があると判定された場合は、階床名の音声入力が完了したかの判断を保留するために、ステップS609に進む。ステップS609では、フラグFL1が1に設定される。FL1が1に設定されることにより、戸開延長時間t3の間、音声入力があるかを確認してから階床名の音声入力が完了したかの判断を行うことができる。ステップS609に続いて、戸制御手段11は、保持している戸開時間t2が経過時間t4と戸開延長時間t3の和未満であるか否かの判定を行う(ステップS610)。
【0052】
ステップS610において、戸開時間t2が経過時間t4と戸開延長時間t3の和未満であると判定された場合、戸制御手段11は、戸開時間t2を延長する(ステップS611)。ステップS611では、経過時間t4と戸開延長時間t3の和が戸開時間t2として設定される。ステップS611の後は、ステップS602に進む。一方、ステップS610において、戸開時間t2が経過時間t4と戸開延長時間t3の和以上であると判定された場合、ステップS602に進む。この場合、戸開時間t2が延長されなくとも現時点から戸開延長時間t3以上の間は戸開が継続されるため、戸制御手段11は戸開時間t2を延長しない。
【0053】
ステップS608において、現在の状態から可能な遷移がないと判定されるということは、階床名の音声入力が完了したことを意味する。ステップS608において、現在の状態から可能な遷移がないと判定された場合は、ステップS612に進む。ステップS612では、切換手段9により、記憶手段5が単語単位記憶手段14へ、音声認識手段6が単語単位音声認識手段16へ、演算手段8が単語単位有効判定手段19へと切り換えられる。ステップS612に続いて、単語単位音声認識手段16は、単語単位の音声認識を行う(ステップS613)。ステップS613に続いて、単語単位音声認識手段16から認識結果が出力されたか否かの判定が行われる(ステップS614)。
【0054】
ステップS614において、認識結果として単語が出力されたと判定された場合、単語単位音声認識手段16は、認識結果とリストL2を比較する(ステップS615)。そして、語単位音声認識手段16は、認識結果である単語がリストL2に含まれているか否かの判定を行う(ステップS616)。ステップS616において、認識結果である単語がリストL2に含まれていると判定されるということは、当該単語が有効な階床名であることを意味する。ステップS616において、認識結果である単語がリストL2に含まれていないと判定されるということは、当該単語が無効な階床名であることを意味する。つまり、ステップS616では、単語単位での認識結果が有効な階床名を示す単語であるか否かの判定が行われる。
【0055】
ステップS616において、認識結果である単語がリストL2に含まれていると判定された場合、ステップS617に進む。ステップS617では、行先階登録手段12が、ステップS616で有効な階床名であると判定された単語が示す階を行先階として呼びの登録を行う。ステップS617に続いて、戸制御手段11は、戸開閉手段4に戸閉指令を送る(ステップS621)。戸開閉手段4は、戸制御手段11から戸閉指令を受けると、かご1の戸を戸閉する。
【0056】
ステップS604において、音声認識の失敗を示す信号が出力されている場合、ステップS618に進む。ステップS606において、遷移が行われていない場合、ステップS618に進む。ステップS614において、音声認識の失敗を示す信号が出力されている場合、ステップS618に進む。ステップS616において、認識結果である単語がリストL2に含まれていない場合、ステップS618に進む。
【0057】
ステップS618では、戸制御手段11が、保持している経過時間t4が戸開時間t2以上であるか否かの判定を行う。経過時間t4が戸開時間t2以上であるということは、戸開時間t2の時間ぶんは戸開が行われたことを意味する。ステップS618において、経過時間t4が戸開時間t2以上であると判定された場合、ステップS619に進む。一方、ステップS618において、経過時間t4が戸開時間t2未満であると判定された場合、ステップS602に進む。
【0058】
ステップS619では、フラグFL1が1であるか否かの判定が行われる。ステップS619において、フラグFL1が1であるということは、階床名の音声入力が完了したかの判断の保留中に新たな音声入力がなかったことを意味する。この場合、階床名の音声入力が完了していると判断できるため、フラグFL1が0に設定される(ステップS620)。ステップS620の後は、ステップS612に進む。
【0059】
ステップS619において、フラグFL1が1でないということは、階床名の音声入力が完了せずに戸開時間t2が経過したことを意味する。この場合、階床名の音声入力が完了していると判断できるため、ステップS621に進む。
【0060】
図14を参照して、エレベータ制御装置の動作の具体例を説明する。以下、利用者が“ヨンカイ”と発話して呼びを登録する場合について説明する。ここでは、建物に存在する階が1階から5階であり、進行方向が上向きのかご1が2階に停止している場合を例示する。また、エレベータの全階床がサービス階床であるものとする。初期戸開時間t1は4秒、戸開延長時間t3は1秒とする。最初の戸開時間t2は4秒に、経過時間t4は0秒に設定される。
【0061】
ステップS601における演算手段8の初期化処理により、リストL2は
図8、フラグFL2は
図9のように設定される。また、ステップS601において、フラグFL1は0に設定される。
【0062】
ステップS602では、切換手段9により、記憶手段5が1拍単位記憶手段13へ、音声認識手段6が1拍単位音声認識手段15へ、演算手段8が1拍単位有効判定手段18へと切り換えられる。ステップS603の時点で利用者による音声入力がまだ行われていなければ、入力音は無音となる。この場合、1拍単位音声認識手段15は、無音に対して1拍単位の音声認識を行う。その結果、音声認識手段15は認識結果を出力しない。このため、ステップS604の次はステップS618に進む。ステップS618の時点での経過時間t4が0.5秒であるとすると、経過時間t4は4秒に設定された戸開時間t2より小さい。この場合、ステップS618の次はステップS602に進む。ステップS602〜ステップS618の処理は、利用者による音声入力が行われるまで繰り返される。
【0063】
1拍単位音声認識手段15は、1拍分の音声入力がされるたびに1拍単位の音声認識を行う。例えば、1拍単位音声認識手段15は、利用者による“ヨンカイ”という発話が始まってから終わるまでの間に、ステップS603の処理を4回行う。
【0064】
利用者が“ヨンカイ”のうち“ヨ”を発話した時点で、1拍単位音声認識手段15は、最初の入力音“ヨ”に対して1拍単位の音声認識を行う(ステップS603)。ここでは、1拍単位音声認識手段15から認識結果として「ヨ」及び「ゴ」が出力されたとする。この場合、ステップS604の次はステップS605に進む。
【0065】
ステップS605では、演算手段8に認識結果「ヨ」及び「ゴ」が入力される。
図9に示すように、「ヨ」に対応する遷移T204のフラグFL2[3]は1である。また、「ゴ」に対応する遷移T205のフラグFL2[5]は1である。つまり、遷移T204及び遷移T205は可能な遷移である。このため、1拍単位有効判定手段18は、状態の遷移を行い、現在の状態を状態3及び状態4に更新する。ステップS605で遷移が行われたため、ステップS606の次はステップS607に進む。
【0066】
現在の状態である状態3及び状態4はともに受理状態でないため、ステップS607の次はステップS610に進む。ステップS610の時点での経過時間t4が2.5秒であるとすると、経過時間t4と戸開延長時間t3の和である3.5秒は、4秒に設定された戸開時間t2より小さい。このため、ステップS610の次はステップS602に進む。この場合、戸開時間t2の延長は行われない。
【0067】
利用者が“ヨンカイ”のうち“ヨン”まで発話した時点で、1拍単位音声認識手段15は、2番目の入力音“ン”に対して1拍単位の音声認識を行う(ステップS603)。ここでは、1拍単位音声認識手段15から認識結果として「ン」が出力されたとする。この場合、ステップS604の次はステップS605に進む。
【0068】
ステップS605では、演算手段8に認識結果「ン」が入力される。
図9に示すように、「ン」に対応する遷移T207のフラグFL2[7]は1である。つまり、遷移T207は可能な遷移である。このため、1拍単位有効判定手段18は、状態の遷移を行い、現在の状態を状態4に更新する。ステップS605で遷移が行われたため、ステップS606の次はステップS607に進む。
【0069】
現在の状態である状態4は受理状態でないため、ステップS607の次はステップS610に進む。ステップS610の時点での経過時間t4が3.1秒であるとすると、経過時間t4と戸開延長時間t3の和である4.1秒は、4秒に設定された戸開時間t2より大きい。このため、ステップS610の次はステップS611に進む。ステップS611では、4.1秒が戸開時間t2として設定されることで、戸開時間t2の延長が行われる。
【0070】
利用者が“ヨンカイ”のうち“ヨンカ”まで発話した時点で、1拍単位音声認識手段15は、3番目の入力音“カ”に対して1拍単位の音声認識を行う(ステップS603)。ここでは、1拍単位音声認識手段15から認識結果として「カ」が出力されたとする。この場合、ステップS604の次はステップS605に進む。
【0071】
ステップS605では、演算手段8に認識結果「カ」が入力される。
図9に示すように、「カ」に対応する遷移T208のフラグFL2[8]は1である。つまり、遷移T208は可能な遷移である。このため、1拍単位有効判定手段18は、状態の遷移を行い、現在の状態を状態5に更新する。ステップS605で遷移が行われたため、ステップS606の次はステップS607に進む。
【0072】
現在の状態である状態5は受理状態でないため、ステップS607の次はステップS610に進む。ステップS610の時点での経過時間t4が3.6秒であるとすると、経過時間t4と戸開延長時間t3の和である4.6秒は、4秒に設定された戸開時間t2より大きい。このため、ステップS610の次はステップS611に進む。ステップS611では、4.6秒が戸開時間t2として設定されることで、戸開時間t2の延長が行われる。
【0073】
利用者が“ヨンカイ”と発話した時点で、1拍単位音声認識手段15は、4番目の入力音“イ”に対して1拍単位の音声認識を行う(ステップS603)。ここでは、1拍単位音声認識手段15から認識結果として「イ」が出力されたとする。この場合、ステップS604の次はステップS605に進む。
【0074】
ステップS605では、演算手段8に認識結果「イ」が入力される。
図9に示すように、「イ」に対応する遷移T209のフラグFL2[9]は1である。つまり、遷移T209は可能な遷移である。このため、1拍単位有効判定手段18は、状態の遷移を行い、現在の状態を状態6に更新する。ステップS605で遷移が行われたため、ステップS606の次はステップS607に進む。現在の状態である状態6は受理状態であるため、ステップS607の次はステップS608に進む。状態6から可能な遷移はないため、ステップS608の次はステップS
612に進む。
【0075】
ステップS612では、切換手段9により、記憶手段5が単語単位記憶手段14へ、音声認識手段6が単語単位音声認識手段16へ、演算手段8が単語単位有効判定手段19へと切り換えられる。ステップS613では、単語単位音声認識手段16は、入力音バッファ17に保存されている統合入力音“ヨンカイ”に対して単語単位の音声認識を行う。ここでは、単語単位音声認識手段16から認識結果として「ヨンカイ」が出力されたとする。この場合、ステップS614の次はステップS615に進む。
【0076】
認識結果「ヨンカイ」がリストL2に含まれているため、ステップS616の次はステップS617に進む。では、行先階登録手段12が、行先階として「ヨンカイ」を登録する。ステップS621では、戸制御手段11が、戸開閉手段4に戸閉指令を送る。
【0077】
図15は、本発明の実施の形態1における状態遷移28の第3の例を示す説明図である。
図15は、建物に存在する階が1階から3階であり、かご1の進行方向に1階及び2階が存在する場合を示している。また、エレベータの全階床がサービス階床であるものとする。1階、2階及び3階の階床名は、それぞれ「イチ」、「ニ」及び「サン」と表される。このとき、有効な階床名は、「イチ」及び「ニ」となる。以下、
図14も参照して、1拍単位音声認識手段15による最初の認識結果として「イ」及び「ニ」が出力された場合のエレベータ制御装置の動作を説明する。
【0078】
ステップS605では、演算手段8に認識結果「イ」及び「ニ」が入力される。
図15に示すように、「イ」に対応する遷移T801のフラグFL2[81]及び「ニ」に対応する遷移T802のフラグFL2[82]は1である。つまり、遷移T801及び遷移T804は可能な遷移である。このため、1拍単位有効判定手段18は、状態の遷移を行い、現在の状態を状態2及び状態4に更新する。ステップS605で遷移が行われたため、ステップS606の次はステップS607に進む。
【0079】
ステップS607では、現在の状態が受理状態であるか否かの判定が行われる。状態2は受理状態ではないが、状態4が受理状態であるため、ステップS607の次はステップS608に進む。ステップS608では、現在の状態から可能な遷移があるか否かが判定される。状態2が可能な遷移T804を持っているため、ステップS608の次はステップS609に進む。ステップS609では、FL1が1に設定される。
【0080】
その後、戸開時間t2以内に「チ」が入力され、ステップS608で階床名の音声入力が完了したと判定された場合、フラグFL1が1に設定された後の入力「チ」も含めて単語単位の音声認識及び単語単位の有効の判定が行われる。
【0081】
一方、戸開時間t2以内にステップS608で階床名の音声入力が完了したと判定されなかった場合、ステップS618で戸開時間t2が経過したと判断された後、ステップS619でフラグFL1の確認が行われる。FL1=1であるため、ステップS619で階床名の音声入力が完了したかの判断が保留されていると判定される。そして、ステップS620でFL1が0に設定された後、既に入力されている入力音を用いて単語単位の処理が行われる。
【0082】
実施の形態1において、エレベータ制御装置は、記憶手段5、音声認識手段6、演算手段8及び戸制御手段11を備えている。記憶手段5は、エレベータが設置された建物の階床名を記憶している。音声認識手段6は、音声の入力を受け付ける音声入力手段3に入力された音声と記憶手段5に記憶されている階床名とを1拍単位で比較することで、音声を1拍単位で認識する。演算手段8は、音声認識手段6による1拍単位での認識結果が階床名を構成する語として有効か無効かを判定する。戸制御手段11は、演算手段により1拍単位での認識結果が有効と判定された場合は、かご1の戸開時間を延長させる。戸制御手段11は、演算手段により1拍単位での認識結果が無効と判定された場合は、かご1の戸開時間を延長させない。つまり、エレベータ制御装置は、エレベータの利用者が発話する音声の1拍ごとに戸開時間を延長するか否かの判断を行う。これにより、かご1の戸開時間が必要最小限に抑えられる。その結果、エレベータの利用者の余分な待ち時間を短縮することができる。
【0083】
実施の形態1において、エレベータ制御装置は、管理情報取得手段7及び行先階登録手段12を備えている。管理情報取得手段7は、エレベータの管理情報を取得する。音声認識手段6は、音声の入力が完了した後に、既に音声入力手段3に入力されている音声と記憶手段5に記憶されている階床名とを単語単位で比較することで音声を単語単位で認識する。演算手段8は、管理情報取得手段7により取得された管理情報に基づいて、音声認識手段6による単語単位での認識結果が有効な階床名を示す単語であるか否かを判定する。行先階登録手段12は、演算手段8による単語単位での認識結果についての判定に基づいて、かご1の行先階を登録する。このため、実施の形態1におけるエレベータ制御装置によれば、利用者の余分な待ち時間を短縮しつつ、音声認識によって正確に行先階を登録することができる。
【0084】
実施の形態1において、エレベータ制御装置は、音声認識手段6が有する1拍単位音声認識手段15、音声認識手段6が有する単語単位音声認識手段16及び切換手段9を備えている。1拍単位音声認識手段15は、音声を1拍単位で認識する。単語単位音声認識手段16は、音声を単語単位で認識する。切換手段9は、階床名の音声入力が完了した後に、音声認識手段6の動作を1拍単位音声認識手段15によるものから単語単位音声認識手段16によるものに切り換える。このため、エレベータ制御装置は、利用者の余分な待ち時間を短縮するための動作を行った後に、正確に行先階を登録するための動作を行うことができる。
【0085】
実施の形態2.
図16は、本発明の実施の形態2におけるエレベータ制御装置を備えたエレベータシステムの構成図である。以下、実施の形態1との相違点を中心にエレベータ制御装置の構成を説明する。実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付して、一部の説明を省略する。
【0086】
エレベータ制御装置は、1音節単位記憶手段53、1音節音声認識手段55及び1音節単位有効判定手段58を備えている。1音節単位記憶手段53、1音節音声認識手段55及び1音節単位有効判定手段58は、建物の階床名を単語単位及び単語よりも小さい分割単位で処理する。実施の形態2において、単語よりも小さい分割単位は、1音節である。例えば、1階を示す階床名は、1音節単位では「イッ」、「カ」及び「イ」の3語に分割されて処理される。
【0087】
図17は、本発明の実施の形態2におけるエレベータ制御装置の全体的な動作のフローチャートである。
図17に示す動作は、1拍単位ではなく1音節単位で処理が行われる点を除いて
図14の場合と同様である。
【0088】
実施の形態2では、単語よりも小さい分割単位として、1音節が用いられている。この場合も、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0089】
実施の形態2において、エレベータ制御装置は、音声認識手段6が有する1音節単位音声認識手段55、音声認識手段6が有する単語単位音声認識手段16及び切換手段9を備えている。1音節単位音声認識手段55は、音声を1音節単位で認識する。単語単位音声認識手段16は、音声を単語単位で認識する。切換手段9は、階床名の音声入力が完了した後に、音声認識手段6の動作を1音節単位音声認識手段55によるものから単語単位音声認識手段16によるものに切り換える。このため、エレベータ制御装置は、利用者の余分な待ち時間を短縮するための動作を行った後に、正確に行先階を登録するための動作を行うことができる。
【0090】
実施の形態1及び2において、音声認識手段6は、入力音バッファ17を備えている。入力音バッファ17は、音声入力手段3に入力された音声を単語よりも小さい分割単位ずつ保存する。音声認識手段6は、音声入力手段3への音声の入力が完了した後に、入力音バッファ17に保存されている分割単位の音声を統合したものと記憶手段5に記憶されている階床名とを単語単位で比較することで、単語単位の音声認識を行う。このため、音声認識手段6は、1回の音声入力に対して、分割単位の音声認識及び単語単位の音声認識の双方を行うことができる。
【0091】
実施の形態1及び2において、音声認識手段6は、単語よりも小さい分割単位での認識結果として複数の語を出力可能である。以下、音声認識手段6が認識結果として複数の語を出力可能としている理由について説明する。単語ごとの音声認識であれば、利用者の発話した音声に明瞭ではない語が混じっていたとしても、残りの語の発話が明瞭であれば、全体として類似度が高くなる場合がある。この場合は、利用者の意図通りの単語が認識結果として出力される。しかし、1拍単位又は1音節単位の音声認識では、不明瞭な音声が入力されると、利用者の意図した語とは異なる語との類似度が最も高くなり誤認識を起こすことが考えられる。そして、ステップS606又はステップS706の判定で無効と判定され、後続音の入力が不可能となる可能性が高くなる。このため、単語よりも小さい分割単位での認識結果として複数の語を出力し、階床名を構成する語として有効か否かの判定に用いれば、後続音の入力が不可能となることを抑制することができる。
【0092】
実施の形態1及び2において、エレベータの管理情報は、かご1の進行方向に存在する階床名及びエレベータのサービス階床の階床名を含んでいる。このため、エレベータ制御装置は、有効な階床名を適切に決定することができる。
【0093】
管理情報は、かご1の進行方向に存在する階床名又はエレベータのサービス階床の階床名のいずれか片方のみを含むものでもよい。この場合も、有効な階床名を適切に決定することができる。管理情報がエレベータの進行方向に存在する階床の階床名のみを含む場合は、
図11のステップS406において、エレベータの進行方向に存在する階床の階床名がそのまま有効な階床名としてリストL2に登録されることになる。管理情報がサービス階床の階床名のみを含む場合は、
図11のステップS406において、サービス階床の階床名がそのまま有効な階床名としてリストL2に登録されることになる。
【0094】
管理情報は、かご1の進行方向に存在しない階床の階床名及びエレベータのサービス階床でない階床名を含むものでもよい。この場合、存在する階床の階床名のリストが演算手段8等に保存されていれば、有効な階床名を適切に決定することができる。具体的には、
図11のステップS406において、存在する階床の階床名のうち、エレベータの進行方向上に存在しない階床の階床名及びサービス階床でない階床名のどちらでもない階床名のみを選出して有効な階床としてリストL2に登録すればよい。
【0095】
管理情報は、かご1の進行方向に存在しない階床の階床名又はエレベータのサービス階床でない階床名のいずれか片方を含むものでもよい。この場合も、有効な階床名を適切に決定することができる。管理情報がエレベータの進行方向に存在しない階床の階床名のみを含む場合は、
図11のステップS406において、存在する階床の階床名のうち、かご1の進行方向に存在しない階床の階床名に含まれない階床名を有効な階床名としてリストL2に登録すればよい。管理情報がサービスしていない階床の階床名のみであれば、
図11のステップS406において、存在する階床の階床名のうち、サービス階床でない階床の階床名に含まれない階床名を有効な階床名としてリストL2に登録すればよい。
【0096】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、数字を用いた階床名の代わりに「ロビー」及び「テンボウカイ」等の数字を用いない階床名を用いてもよい。この場合も、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。