特許第6248724号(P6248724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6248724-積層ポリエステルフィルム 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248724
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】積層ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20171211BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20171211BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20171211BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20171211BHJP
   F21V 7/22 20060101ALI20171211BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20171211BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20171211BHJP
   B32B 5/18 20060101ALN20171211BHJP
【FI】
   B32B27/36
   B32B27/18 Z
   G02B5/08 A
   G02F1/13357
   F21V7/22 300
   F21V7/00 530
   F21S2/00 484
   !B32B5/18
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-53917(P2014-53917)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-174397(P2015-174397A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】舩冨 剛志
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正大
(72)【発明者】
【氏名】中村 昭
【審査官】 岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/129500(WO,A1)
【文献】 特開2002−98811(JP,A)
【文献】 特開2011−75944(JP,A)
【文献】 特開2010−224212(JP,A)
【文献】 特開2010−43208(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0203212(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
F21S 2/00
F21V 7/00
F21V 7/22
G02B 5/08
G02F 1/13357
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂からなり、A層/B層またはA層/B層/A層のフィルム構成を有し、B層は空洞を含有し、蛍光着色剤を含有する積層ポリエステルフィルムであって、該積層ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(3)の要件をすべて満たすことを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
(1)B層はB層を構成するポリエステルに非相溶な樹脂または無機粒子のうち選択された1種以上をB層質量を基準として、10質量%〜40質量%含有し、かつ気泡を有すること
(2)B層は吸収波長が350nmより大きく550nm未満、発光波長帯が390nmより大きく620nm未満である蛍光着色剤をB層質量を基準として0.1μg/g以上1μg/g未満含有すること
(3)A層は無機粒子を含有しており、その含有量がA層質量を基準として0.01質量%〜30質量%であること
【請求項2】
前記蛍光着色剤がスチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、スチリル・オキサゾール系、ピレン・オキサゾール系、クマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、アミノクマリン系、ナフタルイミド系、ペリレン系化合物のうちから選択された1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
積層ポリエステルフィルムの全厚みが50μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
液晶ディスプレイ装置や液晶表示装置のバックライト反射フィルム、ブルーカット用の反射板フィルム、照明装置のバックシート、表示板用バックシート、壁紙フィルム、または波長変換用フィルムに用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビのLEDバックライト用部材、パソコンのLEDバックライト用部材、小型モニターのLED光源用部材、あるいは照明器具の反射用部材などの反射材料用で光源の明るさが必要とされる用途において、基材フィルムとして好適に用いられる積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、パソコン、スマートフォン、照明装置、照明看板等の光源部材には反射フィルムが多く使用されている。中でもLED液晶ディスプレイは、画面の大型化や表示精度などの高輝度化が進められ従来よりも明るい光源に改良されてきている。そのため、反射フィルムの高性能化が求められるが、従来の積層フィルムにある層内気泡による反射だけでは限界がある。この限界を超えるためには、新たな増光性能の技術が必要となり、該技術が要求されてきている。例えば液晶ディスプレイのバックライトに使用されているLED光源から発せられる光波長の強度は、青色光のピーク波長450nmの強度を100として、550nmから630nmのブロード波長域の黄色光が強度40程度である。この青色光と黄色光とが肉眼では混合されて白色光に見えるのである。液晶ディスプレイ装置内で光源からの光を増光するためには、黄色光波長500nmから550nmの輝度を特に高くできるバックライト部材用反射フィルムが要求され、かつ、上述の波長帯における反射率が特に高い反射フィルムがバックライト部材で要求されてきている。例えば、特許文献1は、無機物蛍光体あるいは有機物蛍光体を混ぜたものを白色フィルムに塗布あるいは層内に混合しているが、有機物の蛍光体を使用したときには含有率を大きくする必要があり、フィルムの色調、白色度、バックライトで使用した際の色度ズレなどの光学特性が大きく劣ることになる。特許文献2、特許文献3、特許文献4では、増白剤の使用であるために反射ピークが390nmとなり黄色光波長での増光が出来ないので要求を満たせない。こうした状況下、輝度の向上に優れた積層フィルムが、反射板用フィルムに求められているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−6540号公報
【特許文献2】特開2009−86451号公報
【特許文献3】特開2007−230242号公報
【特許文献4】特開2007−30284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液晶表示用バックライト、照明に用いた場合により明るくすることができ、かつ色度ズレが少ない積層フィルムおよび、当該フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層ポリエステルフィルムは以下の構成を有する。すなわち、
ポリエステル樹脂からなり、A層/B層またはA層/B層/A層のフィルム構成を有し、B層は空洞を含有し、蛍光着色剤を含有する積層ポリエステルフィルムであって、該積層ポリエステルフィルムが、下記の(1)〜(3)の要件をすべて満たすことを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
【0006】
(1)B層はB層を構成するポリエステルに非相溶な樹脂または無機粒子のうち選択された1種以上をB層質量を基準として、10質量%〜40質量%含有し、かつ気泡を有すること
(2)B層は吸収波長が350nmより大きく550nm未満、発光波長帯が390nmより大きく620nm未満である蛍光着色剤をB層質量を基準として0.1μg/g以上1μg/g未満含有すること
(3)A層は無機粒子を含有しており、その含有量がA層質量を基準として0.01質量%〜30質量%であること、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層フィルムは上記の構成にすることにより、白色光の光波長帯を増光する効果があり、液晶ディスプレイに使用すれば、LEDバックライト光を効率よく反射し、かつ色度ズレが少なく、昼間の明るさでも画面の文字、画像を見やすくできる。あるいは照明器具に用いられたときには、消費電力を減らしても明るくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】積層フィルムを組み込んだ液晶画面の概略断面図及び輝度測定法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ポリエステル樹脂からなり、A層/B層またはA層/B層/A層のフィルム構成を有し、B層は空洞を含有する積層ポリエステルフィルムである。
[ポリエステル]
本発明において、好適に用いられるポリエステルは、融点が250℃以上のポリエステルであることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタート、ポリエチレン−p−オキシベンゾエート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートなどが挙げられる。特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレートである。
〔A層〕
本発明においてA層は表層となる層である。背面への光漏洩を防ぐ役割、製膜を安定化させる支持層の役割を持たせるため、A層はポリエステルに無機粒子をA層質量に対して0.01−30質量%含有させることが必要で有り、光を散乱させる役割がある。A層の光散乱性は主に表面粗さを制御することにより調整することができ、他の方法としては、例えば、ポリエステル樹脂に屈折率の異なる粒子を添加する方法が挙げられる。ここで、A層に含有させる無機微粒子の種類としては、特に限定されるものではないがモース硬度3.0以上であることが好ましく、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化珪素、硫化亜鉛、硫酸バリウム、アルミナ、タルクなどが挙げられる。これらの無機粒子は、光沢度調整や白色度調整、耐光性付与などといった表面機能の付与の必要性に応じて、単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。
【0010】
本発明において、A層中に含有させる無機粒子の含有量はA層質量に対して0.01質量%以上30質量%以下である。0.01質量%未満であると、散乱光が不足して十分な反射性能を得ることができず、30質量%を超えると、製膜性が悪化する。
〔B層〕
B層はフィルム内部に微細な気泡を含有することによって白色化されている。微細な気泡の形成は、フィルム母材、たとえばポリエステル中に、ポリエステルとは非相溶な樹脂または、無機粒子を分散させ、それを延伸(たとえば二軸延伸)することにより達成できる。
本発明においてB層はB層を構成するポリエステルに非相溶な樹脂または無機粒子のうち選択された1種以上を含有することが必要である。ポリエステルに非相溶な樹脂(以下、非相溶樹脂と略すことがある)としては、単独重合体であっても共重合体であってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂などが好適に用いられる。これらは2種以上を併用してもよい。特にポリエステルとの臨界表面張力差が大きく、延伸後の熱処理によって変形しにくい樹脂が好ましく、具体的には、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、および、これらの共重合体を挙げることができる。これらの中でも特に環状オレフィン共重合体であるエチレンとビシクロアルケンの共重合体が好ましい。非相溶樹脂を含有することにより、延伸時に非相溶樹脂を核とした気泡が生まれ、この気泡界面により光反射が起きる。
【0011】
本発明において、B層中に含有させる非相溶樹脂は、ポリエステル樹脂からなるマトリックス中に数平均粒径が0.4μm以上3.0μm以下で分散していることが、適切な反射界面数、フィルム強度を得る上で好ましく、さらに好ましくは0.5μm以上1.5μm以下の範囲である。ここでいう数平均粒径とは、フィルムの幅方向(TD)の断面を切り出し、その断面のB層部分を日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)S−2100A形を用いて観測される粒子100個の面積を求め、真円に換算した際の直径の平均値である。
また、無機粒子としては、例えば炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウムなどが挙げられるが、これらの中で、400〜700nmの可視光域において吸収の少ない炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタンなどが反射特性や隠蔽性、製造コスト等の観点で好ましい。本発明において、フィルムの巻取り性、長時間の製膜安定性、反射特性向上の観点から、硫酸バリウム、二酸化チタンが最も好ましい。無機粒子の粒径としては、数平均粒径で0.1μm以上3.0μm以下のものを使用することが優れた反射性、隠蔽性を実現する上で好適である。
B層はB層を構成するポリエステルに非相溶な樹脂または無機粒子のうち選択された1種以上をB層の質量に対して、10質量%〜40質量%含有し、かつ気泡を有することが必要である。10質量%未満では所望の気泡が発現せず、高い輝度を得ることが出来ない。一方40質量%を超えると、製膜性が悪化することがある。
〔蛍光着色剤〕
本発明における蛍光着色剤の含有量はB層質量を基準として0.1μg/g以上1μg/g未満であることが必要である。蛍光着色剤の含有量が0.1μg/g未満であると蛍光着色剤の発光が少なく輝度を高める効果が出ない。1μg/g未満の場合、バックライトでの色度差が特に少なくなるので、液晶ディスプレイでの色補正が必要なくなる。
また、正確な色再現をするには、バックライトでの色度差Δx、Δy値が3/1000以内であることが好ましい。上記範囲を達成するには蛍光着色剤の含有量を0.1μg/g以上1μg/g未満であることが必要である。
【0012】
本発明において、蛍光着色剤とは、ポリエステル樹脂を着色する蛍光染料であり、蛍光増白剤とは異なる。LED光源から出る指向性の光を吸収し励起する分子構造を有し、吸収波長が350nm以上550nm未満のものである。また、B層に添加することにより、延伸製膜によって、蛍光着色剤分子がポリエステル分子と共に面配向をする。この面配向をした分子構造によってB層とA層との間に屈折差を生じるが、指向性の光がA層から入射すると、B層の界面では、光が界面反射しながらB層内部を面方向に光拡散するようになる。例えば、光がフィルム表面から入り込むと、B層内部にある蛍光着色剤分子が、透過光を吸収して、蛍光着色剤分子から蛍光が全方向に発光される。このとき、蛍光層であるB層の界面は外層に対して屈折率差が生じているために、蛍光は全反射となり、面方向に光拡散するため、高い輝度を出すことができる。
【0013】
本発明のB層に使用する蛍光着色剤は、吸収波長が350nm以上550nm未満であり、吸収波長360nm以上540nm未満のものがさらに好ましく、吸収波長370nm以上530nm未満のものが好ましい。吸収波長350nm未満の蛍光着色剤は、発光開始の波長が390nm未満となり、発光色が青紫色にずれ輝度が低下するので液晶ディスプレイに好ましくない。吸収波長550nm以上の蛍光着色剤は発光波長ピークが620nmであり発光色が赤色にずれ輝度が低下するので液晶ディスプレイに好ましくない。
【0014】

発光波長は390nm以上520nm未満であることが好ましい。発光波長がこの範囲にあることによって、液晶ディスプレイで使用した際、着色が少なく、かつ高輝度な反射フィルムを得ることが出来る。
【0015】
本発明に用いる蛍光着色剤はスチルベン系、ジスチルベン系、ベンゾオキサゾール系、スチリル・オキサゾール系、ピレン・オキサゾール系、クマリン系、イミダゾール系、ベンゾイミダゾール系、ピラゾリン系、アミノクマリン系、ナフタルイミド系、ペリレン系化合物のうち選択された1種以上を含有することが好ましい。この中でも、耐久性が高く、輝度を向上する効果が高いことから、ペリレン系のLumogen(登録商標)F Yellow 083(BASF社製)、Lumogen(登録商標)F Yellow 170(BASF社製)、Lumogen(登録商標)F Orange 240(BASF社製)、また、ナフタルイミド系のLumogen(登録商標)F Violet 570(BASF社製)を使用することができる。また、FX305 LemonYellow(シンロイヒ(株)製)、FX305 LemonYellow(シンロイヒ(株)製)、FX306 Orange Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−12 Green(シンロイヒ(株)製)、FM−14 Orange(シンロイヒ(株)製)、FM−15 Lemon Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−16 Orange Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−25 Greenish Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−35 Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−105 Lemon Yellow(シンロイヒ(株)製)、FA−005 Lemon Yellow(シンロイヒ(株)製)、FM−006 Orange Yellow(シンロイヒ(株)製)等を使用することができるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの蛍光着色剤を使用すれば、上述に示した発光波長帯での発光によって、積層フィルムによってディスプレイの輝度を効率的に高めることができる。
[全厚み]
本発明において、積層ポリエステルフィルムの全厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以上350μm以下である。白色ポリエステルフィルムの全厚みを50μm以上とすることは反射率の点で好ましい。また、上限は特に制限する必要はないが、反射率、作業性、コストの点から500μm以下、より好ましくは350μm以下とすることが好ましい。500μmを超えるとこれ以上厚くしても反射率の上昇が望めず、またバックライトに組み込むために枚葉にして作業する際に高質量化により作業性(ハンドリング性)が悪化する。
【0016】
[製造方法]
本発明の積層フィルムの製造方法について説明するが、かかる例に限定されるものではない
添加剤(1)ポリエステル組成物と、白色粒子を含有してなるポリエステル組成物の製造方法(マスターペレット法)
ポリエステルと、白色粒子と、表面処理剤とを混合し、該混合物を押出機に投入し、溶融混練押出し、ペレタイズを行い、マスターペレットを得る。
【0017】
添加剤(2)ポリエステル組成物と、蛍光着色剤とを含有してなるポリエステル組成物の製造方法(マスターペレット法)
ポリエステルと、蛍光着色剤を混合し、該混合物を押出機に投入し、溶融混練押出し、ペレタイズを行い、マスターペレットを得る。
【0018】
三層積層フィルムの製造方法(二軸延伸法)
押出機Aと押出機BとTダイ3層口金を有する押出機を用いて、原料を押出機Aと押出機Bに投入し、溶融混練せしめ、A層/B層/A層からなる溶融押出シートを作成する。
【0019】
具体的には、A層用の原料として、上述の製造方法で得られた、添加剤(1)を含有するマスターペレットならびに必要に応じてポリエステルを混合し、乾燥させて250〜300℃の温度に加熱された押出機Aに供給する。
【0020】
次に、B層用の原料として、ポリエステルに非相溶な樹脂(例えば、ポリメチルペンテン)と、添加剤(2)とポリエステルとを混合し、乾燥させて250〜300℃の温度に加熱された押出機Bに供給する。
【0021】
Tダイ3層口金内で押出機Aに投入されたポリエステル組成物が両表層にくるように、かつ押出機Bに投入されたポリエステル組成物が内層にくるように積層し、三層構成の溶融押出シートを吐出する。
【0022】
この溶融されたシートを、ドラム表面温度10℃〜40℃に冷却されたドラム上で静電気力にて密着冷却固化し、該未延伸フィルムを70℃〜120℃に加熱したロール群に導き、長手方向に2.0倍〜5.0倍縦延伸し、20℃〜30℃のロール群で冷却する。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き90℃〜150℃に一時加熱された雰囲気中で横延伸を行い、180℃〜240℃の熱固定を経て、均一に徐冷後、室温まで冷却して巻き取った後、スリットを行い、本発明の積層フィルムを得る。
また、二層積層フィルムの製造方法は、Tダイ二層口金を有する押出機を用いて、原料を押出機Aと押出機Bに投入し、溶融混練せしめ、A層/B層からなる溶融押出シートにつき上述の三層積層と同じ手法で製膜を行い、本発明の積層フィルムを得る。
【実施例】
【0023】
[測定方法]
(1)フィルム厚み・層厚み
フィルムの厚みは、JIS C2151−2006に準じて測定した。
フィルムをミクロトームを用いて厚み方向に潰すことなく切断し、切片サンプルを得た。
該切片サンプルの断面を日立製作所製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)S−2100A形を用いて、3000倍の倍率で撮像し、撮像から積層厚みを採寸し各層厚みと厚み比を算出した。
【0024】
(2)見かけ密度
フィルムを100×100mm角に切取り、ダイアルゲージ(三豊製作所製No.2109−10)に、直径10mmの測定子(No.7002)を取り付けたものにて10点の厚みを測定し、厚みの平均値d(μm)を計算する。また、このフィルムを直示天秤にて秤量し、重さw(g)を10−4gの単位まで読み取る。下記の式で計算される値を見かけ密度とする。
見かけ密度=w/d×100 (g/cm)。
【0025】
(3)輝度(直下型方式輝度)および色度差
図1に示したように181BLM07(NEC(株)製)のバックライト内に張り合わせてある反射フィルムを基準サンプルもしくは評価サンプルに変更し、点灯させた。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し画像解析装置アイシステム製アイスケールで画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度、および色度に変換した。
輝度および色度評価として、東レ株式会社製#250E6SLを基準サンプルを用いた。下記の式でフィルムサンプルの相対輝度を求めて、この数値を輝度として評価した。
輝度(%)=(フィルムサンプルの輝度(%))/(基準サンプルの輝度(%))×100 。
また、輝度の評価は下記の基準で評価した。
◎:103%以上
○:101%以上103%未満
×:101%未満
上記の◎および○を合格とした。
また、色度差は下記の式を用いて評価した。
色度差Δx=(フィルムサンプルのx値)―(基準サンプルのx値)
色度差Δy=(フィルムサンプルのy値)―(基準サンプルのy値)
◎:優良 0.000以上0.002未満
○:良好 0.002以上0.003未満
×:劣る 0.003を超える
上記の◎および○を合格とした。
ここで、x値、y値は色度図(CIE1931)における座標を表す指数である。
【0026】
(4)製膜性
フィルム破れの発生回数で評価を行った。評価は1日あたりの破れ回数にて行い、以下の基準で判定をした。なお、○、△が合格である。
○:良好 (破れ発生がほとんどない(1回/日未満))
△:やや劣る (破れが時々発生(1〜2回/日))
×:劣る (破れが多発(2回/日以上))。
【0027】
(5) 蛍光着色剤の最大吸収・発光波長
分光式色差計SE−2000型(日本電色工業(株)製)を用い、JIS Z−8722(2000)に準じてA層側の反射モードの光線反射率を測定した。サンプル数はn=5とし、それぞれの光線反射率を測定して、その平均値を算出した。試料測定径は30mmφである。光線反射率の測定方法を以下に示す。酸化アルミニウム製の標準白色板(日本電色工業(株)製、部品No.SE−11628)を100%としたときのA層側の面における光線反射率を350nm以上900nm以下にわたって測定する。得られた反射率チャートより5nm間隔で反射率を読み取り、算術平均値を計算し、反射率を求めた。また、発光波長は、A層側から分光反射率を測定した波長の範囲の反射率のチャートから数値を読み取り、蛍光着色剤に特有の発光波長に従って、ピーク値が0.5%以上出ていたときに発光があると判定し、その最大値を最大吸収波長とした。一方、吸収波長は上記同様に、ピーク値が0.5%以上下がっていた時に、吸収があると判定し、その最小値を最大吸収波長とした。
本発明に使用する蛍光着色剤に特有の吸収・発光波長を特定するには、予め、各種の蛍光着色剤試料で、単独の吸収・発光波長を測定することによって、各種蛍光着色剤の吸収・発光波長と可視光波領域の位置が決められる。これを用いて、サンプルの吸収・発光波長と可視光波長域の位置を取って、照らし合わせて特定する。
なお、本発明で使用した蛍光着色剤の吸収・発光波長は表1の通りである。
【0028】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0029】
[実施例1]
分子量4000のポリエチレングリコールを使用し、重合後のポリエチレンテレフタレートの色調(JIS K7105−1981、刺激値直読方法で測定)がL値62.8、b値0.5、ヘイズ0.2%であるポリエチレンテレフタレートを使用し、ポリエチレンテレフタレート53質量部、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの(PBT/PTMG)共重合物を8質量部(商品名:東レデュポン社製ハイトレル)、エチレングリコールに対し1,4−シクロヘキサンジメタノールが33mol%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート(33mol%CHDM共重合PET)8質量部、ポリ(5−メチル)ノルボルネン10質量部、硫酸バリウム20質量部、蛍光着色剤マスターペレット(マスターペレット総量に対してルモゲンFYellow083:BASF社製を10μg/g含有)1質量部を調整混合し、180℃で3時間乾燥させた後、270〜300℃に加熱された押出機Bに供給(B層)した。一方、ポリエチレンテレフタレート99質量部、数平均粒径0.6μmの二酸化珪素粒子含有ポリエチレンテレフタレートマスター1質量部(マスターチップ総量に対して二酸化珪素1質量%含有)とを180℃で3時間真空乾燥した後、280℃に加熱された押出機Aに供給し(A層)、これらポリマーをA層/B層/A層となるように積層装置を通して積層し、Tダイよりシート状に成形した。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化した未延伸フィルムを85〜98℃に加熱したロール群に導き、長手方向に3.6倍縦延伸し、21℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向に3.6倍横延伸した。その後テンター内で200℃の熱固定を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却し二軸延伸された積層フィルムを得た。光反射用基材としての物性は表2の通りである。
【0030】
[実施例2〜21]
A層、B層の原料組成、A層の厚み、フィルム全厚みを表2、3に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で積層フィルムを得た。いずれの実施例も相対輝度、色度差、製膜安定性は良好であった。
【0031】
[比較例1]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。色度差Δx、Δy値は3/1000以内であったが、蛍光着色剤の濃度が低かったため、相対輝度は100.9%と不十分であった。
【0032】
[比較例2、3]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。蛍光着色剤の濃度が高かったため、相対輝度は高輝度であったが、色度差が不十分であった。
【0033】
[比較例4]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。蛍光着色剤を添加しなかったため、色度差Δx、Δy値は3/1000以内であったが、相対輝度が不十分であった。
【0034】
[比較例5]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。色度差Δx、Δy値は3/1000以内、相対輝度は高輝度であったが、B層の無機粒子の含有量が高く、製膜安定性が不十分であった。
【0035】
[比較例6]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み225μmのフィルムを得た。蛍光増白剤を添加したので、色度差Δx、Δy値は3/1000以内であったが、相対輝度が不十分であった。
【0036】
[比較例7]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法を実施したが、A層の無機粒子の含有量が高く、製膜不可であった。
【0037】
[比較例8]
積層構成および原料組成を表4に記載したとおりに変更した以外は、実施例1と同様の方法で厚み150μmのフィルムを得た。色度差Δx、Δy値は3/1000以内であったが、A層の無機粒子の含有量が低く、相対輝度が不十分であった。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の積層フィルムは、液晶テレビのバックライト用部材、パソコンのバックライト用部材、小型モニターの光源用部材、照明器具の反射シートなどで、高い反射性および高輝度が必要とされる用途に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1;積層フィルム
2;冷陰極管
3;乳白板
4;拡散板
5;プリズムシート
6;偏光プリズムシート
7;CCDカメラ
8;画像解析装置(アイスケール)
図1