(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単位記録領域で区分された磁気テープであって走行する該磁気テープのいずれかのトラック間で、時間差でトラックのビット信号の同期エラーが検出された場合、該同期エラーが検出された記録領域毎に、前記走行する磁気テープのスピード変動の発生を検出する検出部と、
前記記録領域の前記スピード変動の発生状況に応じて、該記録領域を使用不可領域に設定する設定部と、
を備え、
前記磁気テープは、それぞれ前記磁気テープの長手方向に配列された複数のトラックを含む複数のハーフラップを含み、
前記記録領域は、前記複数のハーフラップの全ハーフラップを横断する領域であり、
前記検出部は、前記記録領域内の前記全ハーフラップのいずれかのハープラップのスピード変動の発生を検出した場合に、前記スピード変動の検出回数を計測し、
前記設定部は、計測された前記スピード変動の検出回数に基づいて、前記記録領域を使用不可領域に設定するか判断することを特徴とする磁気テープ制御装置。
前記検出部は、前記磁気テープの短手方向の両端寄りのトラックにおいて、中央寄りのトラックよりも早く前記同期エラーが検出された場合、前記同期エラーが検出された記録領域毎に、前記走行する磁気テープのスピード変動の発生を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の磁気テープ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述したように、走行する磁気テープのスピード変動による障害は、磁気テープに記録されるデータの信頼性を低下させることになる。また、磁気テープ装置と磁気テープ媒体の組み合わせが変わると再現性が著しく下がる事が多く、また、スピード変動発生時に読み出し波形のドロップアウトを伴わないため、エラー原因を判断することが困難である。
【0014】
そこで、本実施形態では次の磁気テープ装置を実現する。すなわち、本実施形態に係る磁気テープ装置は、劣化したテープを使用した際に発生する、ヘッドとテープの摩擦変動によるスピード変動事象を検出し、劣化した領域に関する情報(劣化領域情報)を生成する。それから、磁気テープ装置は、生成した劣化領域情報をテープカートリッジ内のカートリッジメモリ(以下、「CM」と称する)に記録する。次回より、磁気テープ装置は、CMより劣化領域情報を読み出し、その読み出した劣化領域情報に基づいて、テープ上の劣化した部分を認識する。その領域のスピード変動発生回数が閾値を超えた場合に、磁気テープ装置は、その領域を使用しない領域として扱う。これにより、テープに記録されるデータの信頼性を向上する。
【0015】
また、リニア方式の磁気テープ装置では、記憶容量を増やすために、折り返す度にヘッドの位置をずらしながら(ラップ(WRAP)を変える)テープを複数回往復走行させる。このため、磁気テープ装置は、磁気テープの劣化部分を複数回走行させることになる。劣化部分ではスピード変動が発生する確率が高いため、あるラップでスピード変動を検出した場合、異なるラップの同じ領域も使用しない領域として扱うことで、性能低下を未然に防止する。
【0016】
図1は、本実施形態における磁気テープ制御装置の一例を示す。磁気テープ制御装置1は、検出部2及び設定部3を含む。なお、磁気テープ制御装置1を、磁気テープ装置と称してもよい。
【0017】
検出部2は、単位記録領域で区分された磁気テープであって走行する磁気テープのいずれかのトラック間で、時間差でトラックのビット信号の同期エラーが検出された場合、該同期エラーが検出された記録領域毎に、前記走行する磁気テープのスピード変動の発生を検出する。具体的には、検出部2は、磁気テープの短手方向の両端寄りのトラックにおいて、中央寄りのトラックよりも早く同期エラーが検出された場合、同期エラーが検出された記録領域毎に、走行する磁気テープのスピード変動の発生を検出する。検出部2の一例としては、検出部13として機能する制御装置12が挙げられる。
【0018】
設定部3は、記録領域の前記スピード変動の発生状況に応じて、記録領域を使用不可領域に設定する。設定部3の一例として、スキップ部15として機能する制御装置12が挙げられる。
【0019】
磁気テープ制御装置1は、さらに、計測部4を含む。計測部4は、同期エラーが検出された記録領域毎に同期エラーの検出回数を計測する。計測部4の一例としては、管理部14として機能する制御装置12が挙げられる。この場合、設定部3は、書き込みアクセスにおいて、計測された同期エラーの検出回数が閾値以上の場合、記録領域を使用不可領域に設定し、次の記憶領域へ書き込みアクセスを行う。
【0020】
このように構成することにより、磁気テープに記録されるデータの信頼性を向上させることができる。
【0021】
図2は、本実施形態における磁気テープ装置の一例である。磁気テープ装置11は、例えば、リニア・サーペンタイン方式の磁気テープ装置である。磁気テープ装置11のスロットに、磁気テープ32を有するカートリッジ31をセットすると、磁気テープ32に読み書きすることができる。
【0022】
磁気テープ装置11は、FC、SCSI及びSASなどの規格に従った外部インタフェース(I/F)41を使用して上位装置と通信可能に接続することができる。ここで、FCは、Fiber Channelの略称である。SCSIは、Small Computer System Interfaceの略称である。SASは、Serial Attached SCSIの略称である。
【0023】
磁気テープ装置11は、制御装置12、CMリーダ・ライタ17、記憶装置18、AD変換部19、ヘッドアッセンブリ22、アクチュエータ25を含む。
【0024】
ヘッドアッセンブリ22は、リード・ライトヘッド23、サーボヘッド24を含むヘッドの集合体である。リード・ライトヘッド23は、磁気テープ32にデータを書き込むライトヘッド23aと、磁気テープ32に記憶されているデータを再生するリードヘッド23bと、を含む。ライトヘッド23aは、制御装置12から入力される電気信号にしたがって磁気テープ32の1以上のデータバンドにデータを書き込む。また、リードヘッド23bは、磁気テープ32の1以上のデータバンドに記憶されているデータにしたがって電気信号を再生し制御装置12に出力する。
【0025】
サーボヘッド24は、磁気テープの短手方向に対するリード・ライトヘッド23の位置決めを行うためのものであり、磁気テープ32のサーボバンドに記憶されているデータに従って電気信号を再生し制御装置12に出力する。このサーボヘッド24が再生する電気信号を「サーボ信号」という。
【0026】
アクチュエータ25は、制御装置12から出力される制御信号に従って、ヘッドアッセンブリ22の位置を、磁気テープ32の幅方向に変動させる。
【0027】
AD(アナログ−デジタル)変換部19は、ヘッドアッセンブリ22によって読み出されたアナログ信号をデジタル信号へ変換する。AD変換部19は、同期状態監視回路20、復調回路21を含む。
【0028】
復調回路21は、リードヘッド23bまたはサーボヘッド24によって読み出されたアナログ信号をデジタル信号に復調する。
【0029】
同期状態監視回路20は、磁気テープ32上の1以上のデータトラックから読み出したビット信号の同期状態を監視し、同期していないビット信号を同期エラー情報として検出する。リードヘッド23bにより読み出された各データトラックのビット信号は、不図示のPLL(phase locked loop)回路により、所定の時間(位相)内に検出されるようになっている。同期状態監視回路20は、各データトラックについて、PLL回路で設定された所定の時間(位相)からずれて検出されたビット信号を監視している。これにより、トラック間の信号の同期が維持されている。各データトラックのデータ信号が所定の時間からずれて検出された場合、同期状態監視回路20は、各データトラックついて同期状態が維持されていないことを示す同期エラー(Sync Error)情報を制御装置12に通知する。
【0030】
CMリーダ・ライタ17は、カートリッジ31に含まれるCM33に記憶されているCM情報34を読み出し、CM33から読み出したCM情報34を制御装置12に通知する。また、CMリーダ・ライタ17は、制御装置12からの指示に基づいて、レジスタ16に格納された所定の情報(磁気テープ32の単位記憶領域におけるスピード変動が発生した回数(スピード変動回数)を含む)をCM33に書き込む。
【0031】
記憶装置18は、制御装置12に含まれるプロセッサによって実行される、本実施形態に係る磁気テープ装置300の動作を実現するための本実施形態に係るプログラムなどを記憶する。記憶装置18には、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)などの不揮発性メモリを使用することができる。本実施形態に係るプログラムは、プログラム提供者側から通信ネットワークを介して、例えば記憶装置18に格納されてもよい。また、本実施形態に係るプログラムは、市販され、流通している可搬型記憶媒体に格納されていてもよい。この場合、この可搬型記憶媒体は読み取り装置にセットされて、制御装置12またはコンピュータによってそのプログラムが読み出されて、実行されてもよい。可搬型記憶媒体としてはCD−ROM、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、ICカード、USBメモリ装置など様々な形式の記憶媒体を使用することができる。
【0032】
制御装置12は、ヘッドアッセンブリ22やアクチュエータ25を制御して、磁気テープ32に対するデータの読み書きを行なう。制御装置12は、記憶装置18に記憶された本実施形態に係るプログラムを実行することにより、後述する磁気テープ装置11の動作を実現する。
【0033】
例えば、制御装置12は、外部I/F41を介して上位装置からライトコマンドを受信すると、ライトコマンドとともに受信するライトデータに応じた電気信号を、AD変換部19を介して、ライトヘッド23aに出力する。すると、ライトヘッド23aは、入力される電気信号にしたがって、磁気テープ32にライトデータを書き込む。
【0034】
また、制御装置12は、外部I/F41を介して上位装置からリードコマンドを受信すると、リードヘッド23bが磁気テープ32から再生した電気信号を、AD変換部19を介してデジタルデータに変換し、データを読み出す。制御装置12は、この読み出したデータ(リードデータ)を、外部I/F41を介して上位装置に出力する。
【0035】
また、制御装置12は、サーボヘッド24で再生されるサーボ信号から、ヘッドアッセンブリ22の、磁気テープ32における短手方向の位置を算出する。算出したヘッドアッセンブリ22の位置と、目標位置、すなわち、磁気テープ32に含まれる所望のデータトラックに対してリード・ライトヘッド23がデータの読み書きを行なえる位置と、の差からオフトラック量を算出する。そして、制御装置12は、オフトラック量が減少するように、アクチュエータ25を制御してヘッドアッセンブリ22の磁気テープ32の短手方向の位置を調整する。
【0036】
また、制御装置12は、磁気テープ32の走行に使用する、図示しないリールのモータの回転数や電流値等を監視して、磁気テープ32のスピードやテープテンションを制御する。例えば、制御装置12は、カートリッジ31側の磁気テープ32が巻かれたリールを回転するモータの回転数や電流値などから磁気テープのスピードやテープテンションを制御することができる。
【0037】
制御装置12は、レジスタ16を含む。制御装置12は、CMリーダ・ライタ17がCM33から読み出したCM情報34をレジスタ16に記憶する。レジスタ16は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの不揮発性メモリを使用することができる。
【0038】
本実施形態で使用するカートリッジ31には、磁気テープ32と、CM(Cartridge Memory)33と、が含まれる。磁気テープ32は、リールに巻かれた状態でカートリッジ31に収納されている。
【0039】
カートリッジ31には、LTO(Linear Tape−Open)規格に準拠したカートリッジを使用することができる。LTO規格に準拠した磁気テープ32は、複数のデータバンドと、データバンドを挟むように配置されるサーボバンドと、が含まれる。そして、1つのデータバンドには、複数のデータトラックが含まれる。
【0040】
ここで、PBOT(Physical Begining of Tape)はテープの物理的な始端を示し、PEOT(Physical End of Tape)はテープの物理的な終端を示す。
【0041】
PBOTからPEOTまで磁気テープの走行方向に沿ってデータが記憶されるデータトラック、または、PEOTからPBOTまでPBOTに向かってデータが記憶されるデータトラックを「ハーフラップ(halfwrap)」という。ハーフラップについては、後述する。
【0042】
また、LBOTn(Logical begining of Tape halfwrap n)は、各ハーフラップに記録されるデータの始端を示す。LEOTn(Physical End of Tape halfwrap n)は当該ハーフラップ全体にデータを記録した場合における、データの終端を示す。
【0043】
ここで、例えば、本実施形態に係る磁気テープ装置11には、サーペンタイン方式の磁気テープ装置を使用することができる。この場合、磁気テープ装置11は、テープのLBOTn磁気テープの走行方向に沿ってデータトラックにデータを記憶し、LEOTnに向かってデータを記録する。それから、磁気テープ装置11は、当該ハーフラップのLEOTn Tape)で折り返してハーフラップを切替え(n+1)、LBOTn+1からLEOTn+1に向かって別のハーフラップのデータトラックにデータを記憶する往復動作を行なう。
【0044】
CM33は、後述するEOD(End Of Data)や累積ライト容量、磁気テープ32の単位記憶領域におけるスピード変動が発生した回数(スピード変動回数)などを含むCM情報34を記憶する記憶装置である。CM33には、例えば、RFIDタグなどの非接触型の記憶素子などを使用することができる。
【0045】
なお、磁気テープ装置11は、図示しないが、上位装置からのロードコマンドに従ってカートリッジ31を所定の位置にセットするローディング機構を含む。また、磁気テープ装置11は、一方のリールにセットした磁気テープ32を引き出して、他方のリールへセットするためのスレッド機構を含む。また、ローディング機構は、上位装置からのアンロードコマンドに従って、ヘッドアッセンブリ22が磁気テープ32に対してデータの読み書きが可能な状態を解除し、カートリッジ31を取り出し可能な位置に移動させることができる。
【0046】
本実施形態において、制御装置12は、記憶装置18から本実施形態に係るプログラムを読み出すと、検出部13、管理部14、スキップ部15として機能する。
【0047】
検出部13は、同期状態監視回路20から各トラックから読み出したビット信号が同期していないことにより、同期エラーが発生した場合に、次の処理を行う。すなわち、検出部13は、少なくともいずれかの2つ、好ましくは3つのトラックにおいて相互に、異なるタイミングで同期エラーを検出したとき、磁気テープのスピード変動が発生したことを特定する。例えば、磁気テープ32に対するアクセスエラーの発生時、磁気テープの短手方向の両端のエッジ寄りのトラックが、磁気テープのスキュー変動により、中央付近のトラックより早く同期エラーとなる特性がある。検出部13は、その特性を利用して、すなわち同期状態監視回路20により通知されたSync Error情報に応じて、アクセスエラー原因が磁気テープのスピード変動であることを特定する。
【0048】
本実施形態では、磁気テープの短手方向の両端のエッジ寄りのトラックが、磁気テープのスキュー変動により、中央付近のトラックより早く同期エラーとなる特性を利用して、スピード変動であることを特定した。すなわち、中央のトラック、両端のエッジよりのトラックの3つのトラックにおいて、磁気テープのスキュー変動により、一方のエッジ側が引っ張られる場合を考える。この場合、中央トラックを基準にすると、その一方のエッジ側のトラックのスピードが速くなり、他方のエッチ側のスピードは遅くなる。その結果、中央のトラックに比べて、スピード変動の激しい両端のエッジ側のトラックのデータ信号は、所定の時間から大きくずれて検出されるので、早いタイミングで同期エラーが検出される。
【0049】
管理部14は、アクセスエラー発生原因が磁気テープのスピード変動である場合、カートリッジの一定のテープ長単位毎に、スピード変動の発生回数をカウントし、そのスピード変動回数をレジスタ16に記録する。
【0050】
管理部14は、カートリッジ31のアンロード時に、CMリーダ・ライタ17を用いて、CM33の所定の記憶領域に、レジスタ16に保持されたスピード変動回数を含むCM情報34を格納する。
【0051】
管理部14は、カートリッジ31のロード時に、CMリーダ・ライタ17を用いて、CM33に格納されたCM情報34(スピード変動回数)を、レジスタ16に復元(リロード)する。
【0052】
スキップ部15は、ライトアクセス(テープ媒体への書き込み)時、レジスタ16に記録されたスピード変動回数に基づいて、現在のテープ位置及び、テープ進行方向に対して垂直方向の同一テープ位置の全ハープラップのスピード変動回数の総和を算出する。ここで、現在のテープ位置と、テープ進行方向に対して垂直方向の同一テープ位置とを含む単位記録領域を、対象領域と称する。それらの同一テープ位置の全ハープラップのスピード変動回数の総和が閾値を超えている場合、スキップ部15は、その対象領域は書き込み禁止領域であると判断して、不使用区間が開始することを示す特殊データを、対象領域の始端に記録して、対象領域をスキップし、対象領域の末端に到達したところで不使用区間が終了することを示す特殊データを記録し、次の単位記録領域にアクセスする。
【0053】
図3は、本実施形態における対象領域を説明するための図である。リニア・サーペンタイン方式の磁気テープ装置の場合、
図3に示すように、ヘッドアッセンブリ22が磁気テープの長手方向を相対的に往復する。上述したように、この往復するトラックの往路及び復路のそれぞれのデータトラックの集合をハーフラップという。テープ走行方向の切替時に、ヘッドアッセンブリ22が上下方向にスライドし、隣接する次のハーフラップへライトヘッド23a、リードヘッド23b、サーボヘッド24が移動する。
【0054】
図3に示すように、対象領域は、テープ進行方向に対して垂直方向の同一テープ位置を含む単位記録領域であり、そのヘッドアッセンブリ22がある位置にある全ハーフラップに跨っている。管理部14は、対象領域における走行中のハープラップにてスピード変動が検出されると、レジスタ16のスピード変動回数に加算することで、対象領域における全ハープラップのスピード変動回数の総和が得られる。対象領域における全ハープラップのスピード変動回数の総和が閾値を超えている場合、スキップ部15は、その対象領域は書き込み禁止領域であると判断する。この場合、スキップ部15は、不使用区間が開始することを示す特殊データを、対象領域の始端に記録して、対象領域をスキップし、対象領域の末端に到達したところで不使用区間が終了することを示す特殊データを記録し、次の単位記録領域にアクセスする。
【0055】
図4は、本実施形態におけるCM情報の一例を示す。CM情報34は、「EOD位置」、「累積ライト容量」、「本実施形態適用フラグ」、「スピード変動回数 エリアX」(X=0〜n(n:任意の整数))のデータ項目を含む。
【0056】
「EOD位置」には、EODの位置情報が格納される。EODは、ライトコマンド等にしたがって磁気テープ32にデータを書き込んだ際の、データの書き込み終了位置を示すデータである。
【0057】
「累積ライト容量」には、磁気テープ32に書き込んだ容量(累積値)が格納される。
【0058】
「適用フラグ」には、本実施形態を適用するか否かを示すフラグが格納される。例えば、本実施形態適用フラグに“AABBCC”が設定されている場合、本実施形態を適応するものとする。
【0059】
「スピード変動回数 エリアX」には、磁気テープ32上のテープ長単位領域におけるスピード変動が発生した回数(累積値)が格納される。磁気テープ32は、例えば、エリア0〜X(X=0〜n(n:任意の整数))で示される単位領域に区分されているとする。例えば、「スピード変動回数 エリア0」には、磁気テープ32上のエリア0においてスピード変動が発生した回数(累積値)、すなわち、エリア0における全ハープラップのスピード変動回数の総和が格納される。
【0060】
図5は、本実施形態におけるSync Error情報の検出例を示す。
図5では、データトラック数が16本の磁気テープ32を走行させた場合に生じたSync Error情報の一例を示す。
【0061】
本実施形態の例では、1ハーフラップの走行で、ライトヘッド23aについては16本データトラックにデータを書き込み、リードヘッド23bについては16本データトラックからデータを読み出すが、データトラック数はこれに限定されない。上述したように、リードヘッド23bにより読み出された各データトラックのビット信号は、PLL(phase locked loop)回路により、所定の時間内に検出されるようになっている。各データトラックのデータ信号が所定の時間からずれて検出された場合、
図5に示すように、各データトラックついて同期状態が維持されていないことを示すSync Error情報が生じる。
【0062】
上述したように、磁気テープ32のスキュー変動によりカートリッジ31へのアクセスエラーの発生時、中央トラックを基準にすると、その一方のエッジ側のトラックのスピードが速くなり、他方のエッジ側のスピードは遅くなる。その結果、中央のトラックに比べて、スピード変動の激しい両端のエッジ側のトラックのデータ信号は、所定の時間から大きくずれて検出されるので、早いタイミングで同期エラーが検出される。その結果、磁気テープの短手方向の両端のエッジ寄りのトラックが、磁気テープ32のスキュー変動により、中央付近のトラックより早く同期エラーとなる特性がある。すなわち、
図5に示すように、両端のエッジ側のトラックが最も早くSync Error情報が立ち上がり、中央のトラックになるにつれて徐々に遅れてSync Error情報が立ち上がっていく結果、全体として弓なりのSync Error情報が立ち上がることが多い。検出部13として機能する制御装置12は、その特性を利用して、すなわち同期状態監視回路20により通知されたSync Error情報に応じて、アクセスエラー原因が磁気テープのスピード変動であることを特定する。
【0063】
図6A−
図6Fは、本実施形態における磁気テープ装置の制御装置の処理フローを示す。磁気テープ装置11に電源が投入されると、制御装置12は、アイドル状態、すなわち、上位装置からのコマンド待ちの状態となる(S1)。そして、外部I/F41を介して上位装置からコマンドを受信すると(S2)、制御装置12は、受信したコマンドの種別を判別する(S3)。
【0064】
S2において、カートリッジ31がロードされている状態で、受信したコマンドがアンロードコマンドの場合(S3で「Yes」)、制御装置12は、レジスタ16に記憶しているCM情報をCM33に書き込む(S4)。これにより、CM33に記憶されているCM情報34が更新される。ここで、CM情報34には、各領域のスピード変動回数、及びEOD位置、累積ライト容量等が含まれている。
【0065】
そして、制御装置12は、磁気テープ装置11にロード中のカートリッジ31をアンロードする(S5)。このアンロード処理では、制御装置12が、磁気テープ装置11にロード中のカートリッジ31を物理的に取り出し可能な状態にする。そして、制御装置12は、再びアイドル状態に移行する。
【0066】
S2で受信したコマンドがアンロードコマンドでない場合(S3で「No」)、制御装置12は、処理をS6に移行する。そして、S2で受信したコマンドがロードコマンドの場合(S6で「Yes」)、制御装置12は、カートリッジ31を搬送するローダキャリアを磁気テープ32上に下ろす(S7)。制御装置12は、カートリッジ31を磁気テープ装置11にロードする。なお、ロードコマンドには、上位装置から受信するロードコマンドの他に、カートリッジ31の磁気テープ装置11への挿入に基づいて発生するロード指示も含んでもよい。また、ロードコマンドには、手動でカートリッジ31が挿入されたことを検出する図示しないセンサからの検出信号や、磁気テープ装置11と通信可能に接続するテープライブラリ装置などが出力するロードコマンドなどを含む。
【0067】
カートリッジ31のロードが完了すると、制御装置12は、ロードしたカートリッジ31内のCM33からCM情報34を読み出す(S8)。制御装置12は、CM33のベンダユニーク領域に、本実施形態を適用することを判別する適用フラグとして、例えば、文字列“AABBCC”が記録されているか否かを判定する(S9)。ここで、ベンダユニーク領域とは、各社が独立して使用できる記憶領域を示す。
【0068】
CM33のベンダユニーク領域に、適用フラグとして、文字列“AABBCC”が記録されていない場合(S9で「No」)、制御装置12は、次の処理を行う。すなわち、制御装置12は、CM33のベンダユニーク領域に、適用フラグとして文字列“AABBCC”を記録すると共に、レジスタ16に、その適用フラグを記憶する(S10)。
【0069】
CM33のベンダユニーク領域に、適用フラグとして、文字列“AABBCC”が記録されている場合(S9で「Yes」)、制御装置12は、CM33のベンダユニーク領域から、レジスタ16へ、CM情報34を読み出す(S11)。上述したように、CM情報34は、磁気テープの各領域のスピード変動回数を含む。
【0070】
S2で受信したコマンドがロードコマンドでない場合(S6で「No」)、制御装置12は、処理をS12に移行する。S2で受信したコマンドがライトコマンドでない場合(S12で「No」)、制御装置12は、処理をS19に移行する。
【0071】
S2で受信したコマンドがライトコマンドの場合(S12で「Yes」)、制御装置12は、ライトコマンドのための動作を開始する(S13)。
【0072】
制御装置12は、レジスタ16に格納したCM情報34から、これから走行する磁気テープの領域のスピード変動回数を読み出す。制御装置12は、これから走行する磁気テープの領域のスピード変動回数が、予めレジスタ16または記憶装置18に記憶された閾値以上かを判定する(S14)。
【0073】
これから走行する磁気テープの領域(対象領域)のスピード変動回数が閾値以上である場合(S14で「Yes」)、制御装置12は、対象領域のスキップ処理を行う(S15)。すなわち、制御装置12は、不使用区間が開始することを示す特殊データを、対象領域の始端に記録して、対象領域をスキップし、対象領域の末端に到達したところで不使用区間が終了することを示す特殊データを記録して、次の単位記録領域に書き込みを行う。
【0074】
これから走行する磁気テープの領域(対象領域)のスピード変動回数が閾値未満である場合(S14で「No」)、制御装置12は、ライトコマンド動作中に、磁気テープ装置11にアクセスエラーが発生しているかを判定する(S16)。アクセスエラーが発生していないと判定した場合(S16で「No」)、制御装置12は、ライト動作を完了する(S18)。
【0075】
S16で、アクセスエラーが発生していると判定した場合(S16で「Yes」)、制御装置12は、ライトコマンドのリトライ処理を実行する(S17)。このリトライ処理では、必要に応じて、ライトコマンド処理の最初または途中からライトコマンドを実行する。ライトコマンドのリトライ処理をした場合、制御装置12は、同期状態監視回路20からの出力結果に基づいて、磁気テープ32の走行スピードに変動があるかを判定する(S17−1)。ここでは、制御装置12は、同期状態監視回路20を用いて、トラック毎の同期信号のエラー(Sync Error)情報を監視する。そして、制御装置12は、
図5で説明したように、磁気テープの短手側の両端トラックにおいて中央付近のトラックより早くSync Errorとなった場合、スピード変動が発生したと判断する。
【0076】
磁気テープ32の走行スピードに変動がある場合(S17−1で「Yes」)、制御装置12は、レジスタ16において、エラー発生領域(対象領域)に対応する領域のスピード変動回数をインクリメントする(S17−2)。
【0077】
制御装置12は、対象領域のスピード変動回数が閾値以上か否かを判定する(S17−3)。このとき、制御装置12は、別ラップの同領域についてもS20の処理を行う。このように行うのは、リニア方式の磁気テープ装置11は往復走行を繰り返して記録(ラップ)するため、磁気テープ32の同じ領域を複数回走行させるので、別ラップで同じ領域を走行した場合にもスピード変動が発生する可能性が高いためである。これにより磁気テープの性能低下を未然に防止することができる。
【0078】
対象領域のスピード変動回数が閾値以上である場合(S17−3で「Yes」)、制御装置12は、対象領域のスキップ処理、すなわち、不使用区間であることを示す特殊データを対象領域の前後に記録する(S17−4)。この場合、制御装置12は、磁気テープ32を巻き戻してから、その特殊データを記録する。それから、制御装置12は、その対象領域をスキップして、次の単位記録領域に書き込みを行う。
【0079】
ライトコマンドのリトライ処理後、磁気テープ32の走行スピードに変動がない場合(S17−1で「No」)、制御装置12は、ライトコマンドのリトライが成功したか否かを判定する(S17−5)。ライトコマンドのリトライが失敗した場合(S17−5で「No」)、制御装置12は、発生したアクセスエラーに対応するエラー処理を行い(S17−6)、エラーが終了する(S25)。
【0080】
ライトコマンドのリトライが成功した場合(S17−5で「Yes」)、制御装置12は、ライト動作を完了する(S18)。そして、制御装置12は、再びアイドル状態に移行する。
【0081】
また、S19において、S2で受信したコマンドがリードコマンドでも、スペース系コマンドでもない場合(S19で「No」)、制御装置12は、そのコマンドに対応する処理を行う(S25)。そして、制御装置12は、再びアイドル状態に移行する。ここで、スペース系コマンドには、例えば、スペースコマンド、バックスペースコマンド、スペースファイルコマンド、バックスペースファイルコマンド等のスペースを越えてデータの頭出しを行うコマンドや、ロケートコマンド等の検索を行うコマンド等が含まれる。
【0082】
S19において、S2で受信したコマンドがリードコマンドまたはスペース系コマンドである場合(S19で「Yes」)、制御装置12は、リードコマンドまたはスペース系コマンドのための動作を開始する(S21)。
【0083】
リードコマンドまたはスペース系コマンド実行中に、制御装置12は、磁気テープ装置11にアクセスエラーが発生しているかを判定する(S22)。
【0084】
S22で、アクセスエラーが発生していると判定した場合(S22で「Yes」)、制御装置12は、リードコマンドまたはスペース系コマンドのリトライ処理を実行する。このリトライ処理では、必要に応じて、リードコマンドまたはスペース系コマンド処理の最初または途中からリードコマンドまたはスペース系コマンドを実行する。リードコマンドまたはスペース系コマンドのリトライ処理をした場合、制御装置12は、同期状態監視回路20からの出力結果に基づいて、磁気テープ32の走行スピードに変動があるかを判定する(S23−1)。ここでは、制御装置12は、同期状態監視回路20を用いて、トラック毎の同期信号のエラー(Sync Error)情報を監視する。そして、制御装置12は、
図5で説明したように、テープの短手側の両端トラックにおいて中央付近のトラックより早くSync Errorとなった場合、スピード変動が発生したと判断する。
【0085】
磁気テープ32の走行スピードに変動がある場合(S23−1で「Yes」)、制御装置12は、レジスタ16において、エラー発生領域(対象領域)に対応する領域のスピード変動回数をインクリメントする(S23−2)。
【0086】
制御装置12は、リードコマンドまたはスペース系コマンドのリトライが成功したか否かを判定する(S23−3)。リードコマンドまたはスペース系コマンドのリトライが失敗した場合(S23−3で「No」)、制御装置12は、発生したアクセスエラーに対応するエラー処理を行い(S23−4)、エラーが終了する(S25)。
【0087】
リードコマンドまたはスペース系コマンドのリトライが成功した場合(S23−3で「Yes」)、制御装置12は、リードコマンドまたはスペース系コマンドによるコマンド動作を完了する(S24)。そして、制御装置12は、再びアイドル状態に移行する。
【0088】
本実施形態によれば、スピード変動が所定回数以上発生した領域を使用不可にすることができるので、原因不明のリード不可障害を低減させることができる。すなわち、本実施形態を適用することによって、記憶媒体の不良領域へのデータの書き込みを回避するので、リード不可障害の発生を低減できる。
【0089】
なお、本実施形態は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を取ることができる。