(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り換え時点におけるヘッダ圧力値に補正された目標圧力値に前記単位差分値ずつ加算する前に、前記移行時間を前記分割数で除算して、前記単位時間を算出する、請求項2に記載のボイラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るボイラシステム1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るボイラシステム1の概略を示す図である。
なお、本発明の第1実施形態に係るボイラシステム1は、複数台の比例制御ボイラ、即ち燃焼量を連続的に変更して燃焼可能な複数台のボイラからなるボイラシステム1としているが、これに制限されない。複数台の段階値制御ボイラからなるボイラシステム1又は比例制御ボイラ及び段階値制御ボイラが混在するボイラシステム1にも本発明は適用される。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態のボイラシステム1は、複数(5台)のボイラ20を含むボイラ群2と、ボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気集合部としての蒸気ヘッダ6と、蒸気圧測定手段としての蒸気圧センサ7と、台数制御装置3と、を備える。
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
【0019】
蒸気ヘッダ6の上流側は、蒸気管11を介してボイラ群2(各ボイラ20)に接続されている。蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で発生させた蒸気を集合させて貯留することにより各ボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給するようになっている。
【0020】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0021】
本実施形態のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気によって運転される蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御時においては、この蒸気消費量に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼量を制御する。
【0022】
蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷が増加し、供給蒸気量が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷が減少し、供給蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。このため、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号により要求負荷の変動をモニターすることができる。ボイラシステム1は、この蒸気圧に基づいて蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じた目標蒸気量を算出するようになっている。
【0023】
台数制御装置3は、制御部4と記憶部5とを備える。台数制御装置3は、ボイラ群2の燃焼制御に関して、例えば、記憶部5に記憶される設定条件(目標圧力値、ボイラの優先順位等)を変更することができる。なお、設定条件の設定及び変更は、その全部又は一部を手動で行ってもよく、あるいは、その全部又は一部を自動で行ってもよい。
【0024】
ボイラ20は、燃料の燃焼量に応じた蒸気を発生する蒸気ボイラであって、燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラから構成されている。
図2に示すように、比例制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、最大燃焼率の20%の燃焼量における燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。比例制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼量を調整するようになっている。
【0025】
また、燃焼量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0026】
本実施形態におけるボイラは、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更については、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼量が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20それぞれには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変更可能となっている。
【0027】
単位蒸気量Uは、ボイラ20の最大燃焼状態S2における蒸気量(最大蒸気量)に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、ボイラ20の最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
尚、出力蒸気量とは、ボイラ群2により出力される蒸気量を示し、この出力蒸気量は、複数のボイラ20それぞれから出力される蒸気量の合計値により表される。
【0028】
複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示等を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。
図2に示すように、ボイラ20の1号機〜5号機のそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、5号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0029】
複数のボイラ20のそれぞれは、信号線16を介して台数制御装置3と電気的に接続され、台数制御装置3の制御により燃焼状態(燃焼量)が制御される。また、複数のボイラ20のそれぞれは、運転者の操作により又は自動的に台数制御装置3の制御から切り離された場合、運転者の手動制御により燃焼状態が制御される。
【0030】
以上説明したボイラ20は、
図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、を備える。
ローカル制御部22は、蒸気消費量に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される制御信号又は運転者の手動操作により入力された制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、及びその他のデータ等が挙げられる。
【0031】
以上のように構成されたボイラシステム1では、ボイラ群2で発生させた蒸気が、蒸気ヘッダ6を介して蒸気使用設備18に供給される。
【0032】
ボイラシステム1において、ヘッダ圧力は、蒸気使用設備18における蒸気消費量(要求負荷)に応じて変動する。台数制御装置3は、PI又はPIDアルゴリズムによりヘッダ圧力を目標圧力にするために必要な蒸気量(必要蒸気量)を算出し、算出した蒸気量に基づいて自動運転ボイラの燃焼量(燃焼率)を制御する。これにより、自動運転ボイラから蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が調節されるため、ヘッダ圧力を目標圧力に近づけることができる。
【0033】
なお、前述したように、全台、一部のボイラ、又は実負荷を十分に賄えるだけのボイラ台数を手動運転している状態では、ボイラ燃焼中は配管内において圧損が発生することにより、ヘッダ圧力がボイラ圧力よりも低くなるため、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定する傾向がある。このような場合、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移することとなる。
【0034】
次に、台数制御装置3の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の目標蒸気量、及び目標蒸気量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(ローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。この台数制御装置3は、
図1に示すように、記憶部5と制御部4とを備え、信号線16を介して各ボイラ20に電気的に接続されている。
【0035】
制御部4は、信号線16を介してボイラ20に各種の指示を送信したり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、ボイラ20の燃焼状態及び運転台数の制御を実行する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って該当するボイラ20の燃焼量を制御する。なお、制御部4は、信号線16を介して自動運転ボイラのみならず、手動運転ボイラの燃焼状態に関する情報を受信する。
【0036】
制御部4は、ボイラ群2から発生した蒸気の圧力(蒸気ヘッダ6に貯留された蒸気の蒸気圧力)に基づくフィードバック制御により各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。即ち、制御部4は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧力と目標圧力値との偏差に対して、所定のPI又はPIDアルゴリズムに基づくフィードバック制御を行うことで、ヘッダ圧力が目標圧力値となるために必要な蒸気量を算出し、算出した蒸気量を発生するように自動運転ボイラ20を制御する。
制御部4の詳細な構成については後述する。
【0037】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、各ボイラ20の単位蒸気量Uの設定に関する情報、複数のボイラ20の優先順位の設定に関する情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。
【0038】
また、台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気圧に係る設定条件として、目標圧力値を記憶部5に記憶する。また、台数制御装置3は、当該目標圧力値に関連した第1閾値を記憶部5に記憶する。なお、第1閾値は目標圧力値とは独立して設定することもできる。
【0039】
次に制御部4の詳細な構成について説明する。
図3は、制御部4の機能構成を示すブロック図である。
図3に示すように、制御部4は、蒸気量算出部41と、出力制御部42と、制御対象切換部43と、判定部44と、補正部45と、を含んで構成される。
【0040】
蒸気量算出部41は、予め設定された目標圧力値、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出する。具体的には、蒸気量算出部41は、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値が、予め設定された目標圧力値となるように、必要蒸気量を、PI又はPIDアルゴリズムにより算出する。
【0041】
出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量を発生させるよう、自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。即ち、出力制御部42は、ボイラ群2から必要蒸気量分の蒸気が発生するように各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0042】
出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量に基づいて、燃焼させる自動運転ボイラ20の台数を設定する。出力制御部42は、記憶部5に記載されている優先順位に従って燃焼を開始又は停止する自動運転ボイラ20を設定するとともに、それら自動運転ボイラ20のローカル制御部22に対して、台数制御信号(運転の開始又は停止)を出力する。また、出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量に基づいて、燃焼させる自動運転ボイラ20の燃焼量を設定する。これにより、必要蒸気量分の蒸気が発生するように各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御することで、手動運転ボイラの出力蒸気量と合わせて、必要蒸気量に対応する蒸気量(以下、「出力蒸気量」ともいう)が蒸気ヘッダ6に供給される。
【0043】
制御対象切換部43は、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、複数のボイラ20のうち全部又は一部の自動運転ボイラを制御部4の制御から切り離し、制御対象外の手動運転に切り換える。また、制御対象切換部43は、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、複数のボイラ20のうち全部又は一部の手動運転ボイラを制御部4の制御に復旧し、自動運転に切り換える。
【0044】
判定部44は、制御対象切換部43が手動運転ボイラを自動運転に切り換える場合、切り換え時点におけるヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えるか否かを判定する。
【0045】
補正部45は、判定部44が切り換え時点におけるヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えると判定したことに応じて、目標圧力値P1を、切り換え時点におけるヘッダ圧力値P2に補正したうえで、その後、移行時間をかけて段階的に、切り換え前の目標圧力値P1に戻すように、当該設定条件を補正する。そうすることで、切り換え時点におけるヘッダ圧力値P2に補正された目標圧力値は、移行時間の経過後に補正前の元の目標圧力値P1になる。
【0046】
次に、
図4A及び
図4Bを参照して、従来のボイラシステムにおいて、複数ボイラのうち一部の手動運転ボイラを自動運転に切り換えた場合と比較しながら、第1実施形態に係るボイラシステム1において、複数ボイラのうち一部の手動運転ボイラを自動運転に切り換えた場合の前記複数ボイラのヘッダ圧力の推移を説明する。
【0047】
図4Aは、従来のボイラシステムにおいて、時間T1に複数ボイラのうち全部又は一部の自動運転ボイラを手動運転に切り換え、その後、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定することで、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移し、時間T2において全台自動運転に復帰した場合のヘッダ圧力の推移を示す。
【0048】
図4Aに示すように、当初、制御部4は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧力と目標圧力値との偏差に対して、所定のPI又はPIDアルゴリズムに基づくフィードバック制御を行うことで、ヘッダ圧力が目標圧力値となるために必要な蒸気量を算出し、算出した蒸気量を発生するように自動運転ボイラ20を制御している。この状態で、ヘッダ圧力は安定している。
【0049】
時間T1において、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、制御対象切換部43が、全台、一部のボイラ、又は実負荷を十分に賄えるだけのボイラ台数を自動運転から手動運転に切り換え、その後、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定することで、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移し、制御部4に設定された目標圧力よりも高い圧力で安定している。なお、
図4Aでは、ヘッダ圧力値と設定条件で設定されている目標圧力値との差が第1閾値を超えた状態で安定している。
【0050】
次に、時間T2において、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、制御対象切換部43が、手動運転ボイラを制御部4の制御に復旧し、自動運転に切り換えた場合、制御部4のPI又はPID制御によりヘッダ圧力を目標圧力に収束させる制御が働く。
【0051】
しかしながら、時間T2において、ヘッダ圧力と目標圧力との差が大きいことから、燃焼量を過剰に減少させるようにPI又はPID制御が働くことになり、時間T2からTxにかけての自動運転復帰直後に蒸気ヘッダの内部の蒸気圧が急激に減少する。そして、時間Txにおいて、ヘッダ圧力値が下降から上昇に転じる際に必要蒸気量が過剰に確保されていることから、出力蒸気量が増加し続け、ヘッダ圧力値が増加し続けることにより、ヘッダ圧力と目標圧力との差が大きくなり、時間Tyではヘッダ圧力値が増加する。
【0052】
このように、従来のボイラシステム1においては、
図4Aに示すとおり、ヘッダ圧力値が目標圧力値を大幅に下回り、自動運転復帰時の圧力が不安定になる。
【0053】
これに対して、
図4Bは、第1実施形態に係るボイラシステム1において、時間T1に複数ボイラのうち全部又は一部の自動運転ボイラを手動運転に切り換え、その後、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定することで、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移し、時間T2において全台自動運転に復帰した場合のヘッダ圧力の推移を示す。
【0054】
図4Bに示すように、当初、第1実施形態に係るボイラシステム1に係る制御部4は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧力と目標圧力値P1との偏差に対して、所定のPI又はPIDアルゴリズムに基づくフィードバック制御を行うことで、ヘッダ圧力が目標圧力値となるために必要な蒸気量を算出し、算出した蒸気量を発生するように自動運転ボイラ20を制御している。この状態で、ヘッダ圧力は安定している。
【0055】
時間T1において、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、制御対象切換部43が、全台、一部のボイラ、又は実負荷を十分に賄えるだけのボイラ台数を自動運転から手動運転に切り換え、その後、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定することで、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移し、制御部4に設定された目標圧力よりも高い圧力で安定している。なお、
図4Bでは、ヘッダ圧力値と設定条件で設定されている目標圧力値との差が第1閾値を超えた状態で安定している。
【0056】
時間T2において、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、制御対象切換部43が、手動運転ボイラを制御部4の制御に復旧し、自動運転に切り換える場合、時間T2において、ヘッダ圧力と目標圧力P1との差が第1閾値を超えていることから、補正部45は、設定条件で設定されている目標圧力値P1を、時間T2におけるヘッダ圧力値P2(以下、「切り換え時のヘッダ圧力値P2」ともいう)に補正したうえで、補正された目標圧力値P2を、時間をかけて段階的に、補正前の元の目標圧力値P1に補正する。この結果、移行時間の経過後の時間T3において、補正前の元の目標圧力値P1になる。
【0057】
こうすることで、制御部4のPI又はPID制御によりヘッダ圧力を、時間T2におけるヘッダ圧力値P2から、設定条件で設定されている目標圧力値P1を大幅に下回ることなく、目標圧力値P1に、時間をかけて収束させることができる。
【0058】
このように、第1実施形態に係るボイラシステム1においては、
図4Bに示すとおり、ヘッダ圧力が大幅に下回ることなく目標圧力に収束する。
【0059】
次に、本実施形態1のボイラシステム1の動作について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、第1実施形態に係るボイラシステム1において、複数ボイラのうち一部の手動運転ボイラを自動運転に切り換える際に、切り換え時のヘッダ圧力と目標圧力との差が第1閾値を超えていると判定された場合に、設定条件の目標圧力値を補正する概略を示す図である。
図6は、第1実施形態に係るボイラシステム1の処理を示すフローチャートである。
【0060】
図5を参照して、補正部45による設定値の補正について説明する。
補正部45は、制御対象切換部43が複数のボイラのうち全部又は一部の手動運転ボイラを自動運転に切り換える時間T2のタイミングで、切り換え時のヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えていると判定した場合、設定条件の目標圧力値P1を切り換え時のヘッダ圧力値P2に補正する。
【0061】
その後、時間T2から時間T3の間である時間Taのタイミングで補正された目標圧力値P2を目標圧力値P2´に補正し、その後、時間Taから時間T3の間である時間Tbのタイミングで目標圧力値P2´を目標圧力値P2´´に補正し、その後、時間Tbから時間T3の間である時間Tcのタイミングで目標圧力値P2´´を目標圧力値P2´´´に補正し、その後、時間T3のタイミングで目標圧力値P2´´´を目標圧力値P1に補正する。
【0062】
即ち、補正部45は、切り換え時のヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えていると判定した場合、以下の手順で目標圧力値Pを変更する。
(1)切り換え前の目標圧力値P1を切り換え時のヘッダ圧力値P2に補正する。
(2)切り換え前の設定値P1と切り換え時のヘッダ圧力値P2に補正された設定値との差分である設定値差分値P3を算出する。
(3)切り換え前の設定値P1に到達する時間T3と設定条件を変更した時間T2との差分を所定の分割数nで除算して、単位時間ΔTを算出する。
(4)設定値差分値P3を所定の分割数nで除算して、単位差分値ΔPを算出する。
(5)単位時間ΔT毎に補正された目標圧力値Pに単位差分値ΔPずつ加算する。
(6)こうすることで、移行時間(T3−T2)の経過後の時間T3に切り換え前の目標圧力値P1になるように、目標圧力値Pは段階的に変更される。
【0063】
次に、
図6のフローチャートにしたがって、第1実施形態に係るボイラシステム1の処理を説明する。
【0064】
ステップS1において、制御対象切換部43は、例えば、運転員の指示又は外部入力信号に基づいて、複数のボイラのうち全部又は一部の手動運転ボイラを制御部4の制御に復旧し、自動運転に切り換える。
【0065】
ステップS2において、判定部44は、制御対象切換部43が複数のボイラのうち全部又は一部の手動運転ボイラを自動運転に切り換える場合、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部のヘッダ圧力値(切り換え時のヘッダ圧力値P2)と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えるか否かを判定する。
そして、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部のヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超えない場合(No)には、ステップS10へ移る。一方、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部のヘッダ圧力値P2と設定条件で設定されている目標圧力値P1との差が第1閾値を超える場合(Yes)には、ステップS3へ移る。
【0066】
ステップS3以降において、補正部45は、設定条件で設定されている目標圧力値P1を、切り換え時のヘッダ圧力値P2に補正したうえで、時間をかけて段階的に、補正前の元の目標圧力値P1になるように、目標圧力値を補正する。
より詳細には、次のとおりである。
【0067】
ステップS3において、補正部45は、設定条件で設定されている目標圧力値P1を、切り換え時のヘッダ圧力値P2に補正する。
【0068】
ステップS4において、補正部45は、変更前の元の目標圧力値P1から切り換え時のヘッダ圧力値P2を減算して、設定値差分値P3を算出する。
【0069】
ステップS5において、補正部45は、移行時間(時間T3−時間T2)を所定の分割数nで除算して、単位時間ΔTを算出する。
【0070】
ステップS6において、補正部45は、設定値差分値P3を分割数nで除算して、単位差分値ΔPを算出する。
【0071】
ステップS7において、制御部4は、単位時間ΔT毎に補正される目標圧力値Pに基づいて、必要蒸気量を、PI又はPIDアルゴリズムにより算出し、各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。より詳しくは、蒸気量算出部41は、目標圧力値P、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出し、出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量を発生させるよう、自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。
【0072】
ステップS8において、補正部45は、単位時間ΔT毎に目標圧力値Pに単位差分値ΔPずつ加算して、目標圧力値Pを補正する。
なお、ステップS7及びステップS8を、移行時間の経過後の時間T3になるまで繰り返す。
【0073】
ステップS9において、移行時間が経過したか否かを判断する。移行時間が経過した場合(Yes)には、ステップS10へ移る。移行時間が経過していない場合(No)には、ステップS7へ戻る。移行後の時間T3に、目標圧力値Pは、補正前の元の目標圧力値P1になる。
【0074】
ステップS10において、制御部4は、設定条件で設定されている元の目標圧力値P1、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出し、各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。より詳しくは、蒸気量算出部41は、目標圧力値P1、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出し、出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量を発生させるよう、自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。
【0075】
第1実施形態のボイラシステム1によれば、例えば、次の効果が奏される。
第1実施形態のボイラシステム1においては、補正部45は、制御対象切換部43が手動運転ボイラを自動運転に切り換える場合、判定部44が切り換え時点T2におけるヘッダ圧力値P2と目標圧力値P1との差が第1閾値を超えると判定したことに応答して、目標圧力値P1を切り換え時点T2におけるヘッダ圧力値P2に補正して、制御部4は、自動運転ボイラの燃焼状態を制御し、その後、補正部45は、移行時間(T3−T2)をかけて段階的に、目標圧力値P2を補正前の元の目標圧力値P1に戻すように補正するとともに、制御部4は自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。こうすることで、補正部45は、移行時間(T3−T2)の経過後(T3)に補正前の元の目標圧力値P1に戻るように補正する。
【0076】
そのため、第1実施形態によれば、全台、一部のボイラ、又は実負荷を十分に賄えるだけのボイラ台数を手動運転している状態であって、手動運転ボイラのボイラ圧力を実際の圧損以上に高めに設定することで、ヘッダ圧力が目標圧力よりも高めに推移している状態で、手動運転ボイラが自動運転に復帰した場合に、ヘッダ圧力が目標圧力を大幅に下回ることなく、目標圧力に収束させて、圧力の安定性を向上することができる
【0077】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については詳細な説明を省略する。第2実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0078】
図7を参照して第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態に係るボイラシステム1の動作を示すフローチャートである。第2実施形態は、第1実施形態に比して、分割数nを算出する点が主として異なる。従って、第2実施形態については、分割数nを算出する点を中心に説明する。
【0079】
第2実施形態のボイラシステム1において、
図7を参照しながら説明する。
【0080】
図7に示すように、ステップS14において、補正部45は、補正前の元の目標圧力値P1から切り換え時のヘッダ圧力値P2を減算して、設定値差分値P3を算出する。
【0081】
ステップS15において、補正部45は、移行時間(時間T3−時間T2)を所定の単位時間ΔTで除算して、分割数nを算出する。
【0082】
ステップS16において、補正部45は、設定値差分値P3を分割数nで除算して、単位差分値ΔPを算出する。
【0083】
ステップS17において、制御部4は、単位時間ΔT毎に補正される目標圧力値Pに基づいて、必要蒸気量を、PI又はPIDアルゴリズムにより算出し、各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。より詳しくは、蒸気量算出部41は、目標圧力値P、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出し、出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量を発生させるよう、自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。
【0084】
ステップS18において、補正部45は、単位時間ΔT毎に切り換え時のヘッダ圧力値P2に単位差分値ΔPずつ加算して、目標圧力値Pを補正する。
なお、ステップS17及びステップS18を、移行時間の経過後の時間T3になるまで繰り返す。
【0085】
ステップS19において、移行時間が経過したか否かを判断する。移行時間が経過した場合(Yes)には、ステップS20へ移る。移行時間が経過していない場合(No)には、ステップS17へ戻る。移行後の時間T3に、目標圧力値Pは、補正前の元の目標圧力値P1になる。
【0086】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様な構成については詳細な説明を省略する。第3実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第3実施形態においても、第1実施形態と同様な効果が奏される。
【0087】
図8を参照して第3実施形態について説明する。
図8は、第3実施形態に係るボイラシステム1の動作を示すフローチャートである。第3実施形態は、第1実施形態に比して、単位差分値ΔP及び単位時間ΔTが予め設定されており、移行時間を算出する点が主として異なる。従って、第3実施形態については、移行時間を算出する点を中心に説明する。
【0088】
第3実施形態のボイラシステム1において、
図8を参照しながら説明する。
【0089】
図8に示すように、ステップS24において、補正部45は、補正前の元の目標圧力値P1から切り換え時のヘッダ圧力値P2を減算して、設定値差分値P3を算出する。
【0090】
ステップS25において、補正部45は、設定値差分値P3を単位差分値ΔPで除算した商(P3/ΔP)を算出する。
【0091】
ステップS26において、補正部45は、商(P3/ΔP)に単位時間ΔTを乗算して、移行時間を算出する。
【0092】
ステップS27において、制御部4は、単位時間ΔT毎に補正される目標圧力値Pに基づいて、必要蒸気量を、PI又はPIDアルゴリズムにより算出し、各自動運転ボイラ20の燃焼状態を制御する。より詳しくは、蒸気量算出部41は、目標圧力値P、蒸気圧センサ7で測定された蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧力値等に基づいて、必要蒸気量を算出し、出力制御部42は、蒸気量算出部41により算出された必要蒸気量を発生させるよう、自動運転ボイラの燃焼状態を制御する。
【0093】
ステップS28において、補正部45は、単位時間ΔT毎に切り換え時のヘッダ圧力値P2に単位差分値ΔPずつ加算して、目標圧力値Pを補正する。
なお、ステップS27及びステップS28を、移行時間の経過後の時間T3になるまで繰り返す。
【0094】
ステップS29において、移行時間が経過したか否かを判断する。移行時間が経過した場合(Yes)には、ステップS30へ移る。移行時間が経過していない場合(No)には、ステップS27へ戻る。移行後の時間T3に、目標圧力値Pは、補正前の元の目標圧力値P1になる。
【0095】
以上、好適な実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、元の目標圧力値P1は、いずれも切り換え時のヘッダ圧力値P2よりも小さくなっている。そのため、設定値差分値P3及び単位差分値ΔPは、いずれも、マイナス(−)となっている。しかし、元の目標圧力値P1が切り換え時のヘッダ圧力値P2よりも大きくなっていてもよい。その場合には、設定値差分値P3及び単位差分値ΔPはプラス(+)となる。
【0096】
また、前記実施形態においては、判定部44が切り換え時点T2におけるヘッダ圧力値P2と目標圧力値P1との差が第1閾値を超えるか否かを判定しているが、判定部44は切り換え時点T2におけるヘッダ圧力値P2と目標圧力値P1との差が第1閾値以上であるか否かを判定することとしてもよい。
【0097】
第1実施形態においては、切り換え時のヘッダ圧力値P2に単位差分値ΔPずつ加算する前であって、移行時間を所定の分割数nで除算して単位時間ΔTを算出した後に、設定値差分値P3を分割数nで除算して、単位差分値ΔPを算出しているが、これに制限されない。切り換え時のヘッダ圧力値P2に単位差分値ΔPずつ加算する前であって、設定値差分値P3を分割数nで除算して単位差分値ΔPを算出した後に、移行時間を分割数nで除算して、単位時間ΔTを算出してもよい。
【0098】
第3実施形態においては、補正部45は、設定値差分値P3を単位差分値ΔPで除算した商(P3/ΔP)に単位時間ΔTを乗算して、移行時間を算出しているが、これに制限されない。補正部45は、設定値差分値P3に単位時間ΔTを乗算して、積(P3×ΔT)を算出した後に、単位差分値ΔPで除算して、移行時間を算出してもよい。また、補正部は、単位時間ΔTを単位差分値ΔPで除算して商(ΔT/ΔP)を算出した後に、設定値差分値P3に商(ΔT/ΔP)を乗算して、移行時間を算出してもよい。また、補正部45は、設定値差分値P3を算出する前に、単位時間ΔTを単位差分値ΔPで除算して商(ΔT/ΔP)を算出しておいてもよい。
【0099】
また、蒸気ヘッダは、集合させた蒸気を貯留する蒸気ヘッダ6に制限されず、例えば、単に蒸気を集合させるだけの蒸気集合管でもよい。