特許第6248767号(P6248767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248767
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】パネル部材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20171211BHJP
【FI】
   G10K11/16 120
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-79302(P2014-79302)
(22)【出願日】2014年4月8日
(65)【公開番号】特開2015-200777(P2015-200777A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134980
【弁理士】
【氏名又は名称】千原 清誠
(74)【代理人】
【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 厚司
(72)【発明者】
【氏名】浜田 幸一
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/129386(WO,A2)
【文献】 特開2012−083429(JP,A)
【文献】 特表2001−506420(JP,A)
【文献】 米国特許第5058556(US,A)
【文献】 特表2013−535030(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0315473(US,A1)
【文献】 特表2013−508219(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0181811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
B60R 13/01−13/04
B60R 13/08
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下から上に順に積層された金属製のメインパネル、接着剤層、および金属製のパッチパネルを備え、
平面視において前記パッチパネルの下面は、その外周縁に少なくとも一つの角部を有し、
平面視において、前記角部を二等分する仮想直線を引き、前記直線と前記接着剤層の上面の外周縁との交点を第1点とし、前記角部の頂点を第2点とした場合に、前記第1点と前記第2点との距離dおよび前記接着剤層の厚さtが下記式(i)を満たす、パネル部材。
0.0(mm)≦d(mm)≦0.2t(mm) ・・・(i)
但し、第1点は、前記直線と前記接着剤層の前記外周縁との複数の交点のうち、第2点に最も近い交点のことである。距離dは、第1点が第2点よりも外側に位置する場合に正の値になり、第1点が第2点よりも内側に位置する場合には負の値になる。
【請求項2】
平面視において前記直線に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面で前記接着剤層および前記パッチパネルを切断した場合の前記接着剤層および前記パッチパネルの断面において、前記接着剤層および前記パッチパネルの界面と前記接着剤層の側面のうち前記第1点から下方に延びる部分とのなす角が90°〜135°である、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項3】
下から上に順に積層された金属製のメインパネル、接着剤層、および金属製のパッチパネルを備え、
平面視において前記パッチパネルの下面は、その外周縁に少なくとも一つの角部を有し、
平面視において、前記角部を二等分する仮想直線を引き、前記直線と前記接着剤層の上面の外周縁との交点を第1点とし、前記角部の頂点を第2点とした場合に、前記第1点と前記第2点との距離dが下記式(ii)を満たし、
平面視において前記直線に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面で前記接着剤層および前記パッチパネルを切断した場合の前記接着剤層および前記パッチパネルの断面において、前記接着剤層および前記パッチパネルの界面と前記パッチパネルの側面のうち前記第2点から上方に延びる部分とのなす角が45°以下である、パネル部材。
0.0(mm)≦d(mm) ・・・(ii)
但し、第1点は、前記直線と前記接着剤層の前記外周縁との複数の交点のうち、第2点に最も近い交点のことである。距離dは、第1点が第2点よりも外側に位置する場合に正の値になり、第1点が第2点よりも内側に位置する場合には負の値になる。
【請求項4】
前記角部が内角を有する屈曲部であり、
前記角部を二等分する仮想直線とは、平面視において前記角部の前記内角を二等分する直線である、請求項1から3までのいずれかに記載のパネル部材。
【請求項5】
前記角部が湾曲部であり、
前記第2点は、平面視において前記湾曲部のうち曲率が最大となる部分に位置し、
前記角部を二等分する仮想直線とは、平面視において、前記第2点を通る前記湾曲部の接線を引いた場合に前記接線に垂直でかつ前記第2点を通る直線である、請求項1から3までのいずれかに記載のパネル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響・振動を低減するパネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、船舶および航空機等の輸送機器においては、種々の要因により、音響・振動が発生する。
【0003】
例えば、自動車の動力源であるエンジンまたはモータは、駆動時に大きな音響・振動を発生する。この音響・振動が客室に伝達されると、客室内の乗員に不快感を与える。したがって、エンジンルームまたはモータルームと客室とを仕切るパネル部材(例えば、ダッシュクロス)は、音響・振動を低減する優れた機能を有することが重要である。
【0004】
そこで、従来、上記のような音響・振動の伝達を抑制するために、金属製のメインパネルに接着剤を介して金属製のパッチパネルを貼り付けた構成を有するパネル部材が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、主パネル、音減衰パッチ、および主パネルと音減衰パッチとを接着する接着層を有するパネル組立が開示されている。音減衰パッチは、形成特徴部を備える。形成特徴部は、音減衰パッチに形成された開口部、穴、スリット、突起および凹部を含む。形成特徴部は、パネル組立の音抑制特性を著しく損なうことなくパネル組立の成形性を改善するために設けられる。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、メインパネル、騒音減衰パッチ、およびメインパネルと騒音減衰パッチとを接着する接着層を有する車両床容器が開示されている。メインパネルと騒音減衰パッチとは、車両床容器の形成前に接着され、その後、一体に形成される。車両床容器において、メインパネルは、底壁、側壁、および底壁と側壁との接合部の近くに位置する複合応力域を有する。騒音減衰パッチは、上記複合応力域の近くに位置する形成用特徴部を有する。車両床容器の形成時には、形成用特徴部によって、複合応力域からの応力の一部がメインパネルから騒音減衰パッチに伝わることが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2013−535030号公報
【特許文献2】特表2013−508219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術によれば、パネル組立の音響・振動特性を向上させることができる。しかしながら、例えば、パネル組立の成形加工時およびパネル組立が振動環境下にある場合に、音減衰パッチが主パネルから剥離するおそれがある。このため、音減衰パッチの剥離を十分に抑制するためには、音減衰パッチと主パネルとの溶接個所を増やさなければならない。特許文献2の技術においても同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、パッチパネルがメインパネルから剥離することを抑制できるパネル部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
メインパネル上にパッチパネルを接着した構成を有するパネル部材は、例えば、プレス成形によって所定の形状に成形された後、輸送機器の構成部材として使用される。例えば車両の構成部材としてパネル部材を用いた場合には、エンジン作動中および走行中に車体に振動が生じるので、パネル部材に面外変形を伴う振動が生じる。このとき、パッチパネルとメインパネルとの間の接着剤層には、パッチパネルの慣性運動によって、引張応力および圧縮応力が繰り返し作用する。この引張応力の作用によって、パッチパネルと接着剤層との界面においてき裂が発生する場合がある。その結果、パッチパネルがメインパネルから剥離する場合がある。なお、このような剥離は、プレス成形時(張り出しおよび深絞り等の加工時)にも発生する場合がある。
【0011】
上記のような剥離の発生態様を解明するために、本発明者らは、振動発生時のパネル部材の変形挙動およびき裂の発生状況を詳細に調べた。以下、具体的に説明する。
【0012】
図1は、変形挙動およびき裂の発生状況を調べるために用いたパネル部材1の一例を示す図であり、(a)はパネル部材1の外観斜視図、(b)はパネル部材1の側面図である。
【0013】
図1に示すパネル部材1は、金属製のメインパネル2、樹脂製の接着剤層3、および金属製のパッチパネル4を有する。メインパネル2、接着剤層3およびパッチパネル4はそれぞれ、平面視において長方形状を有する。図1(b)に点線で示すように、本発明者らは、パネル部材1に面外変形を伴う振動を生じさせた。その結果、以下のことが分かった。
【0014】
図2は、パネル部材1に振動を生じさせた場合のメインパネル2、接着剤層3およびパッチパネル4の状態を模式的に示した側面図である。なお、図2には、パネル部材1のうちパッチパネル4の角部近傍の部分(図1(a)において点線で囲んだ部分)を示している。
【0015】
上述したように、パネル部材1に面外変形を伴う振動を発生させた場合、パッチパネル4の慣性運動によって接着剤層3に圧縮応力および引張応力が繰り返し作用する。接着剤層3のヤング率はメインパネル2およびパッチパネル4よりも低いので、接着剤層3に引張応力が作用している場合には、接着剤層3は厚さを増すように変形した。このとき、図2に模式的に示すように、接着剤層3は、厚さ方向に直角な方向(横方向)に縮むようにも変形した。これらの変形に伴い、接着剤層3とパッチパネル4との界面5は、端部5aに近づくほど接着剤層3側に撓んだ。また、界面5ほどでは無いが、メインパネル2と接着剤層3との界面6も、端部6aに近づくほど接着剤層3側に撓んだ。そして、面外変形の振幅を増大させてパネル部材1に繰り返し振動を与えた結果、界面5からき裂が発生してパッチパネル4が剥離した。なお、界面6からき裂が発生する場合もあったが、界面5からき裂が発生する場合に比べてき裂発生までの時間が長かった。すなわち、界面6からき裂が発生したパネル部材1では、界面5からき裂が発生したパネル部材1に比べて、パッチパネル4の剥離を抑制できていた。
【0016】
さらに本発明者らは、メインパネル2、接着剤層3およびパッチパネル4の形状を変えた種々のパネル部材1を作製し、パネル部材1の変形挙動およびき裂の発生状況を調べた。その結果、接着剤層3とパッチパネル4との界面5の撓みを小さくすることによって、界面5におけるき裂の発生を抑制できることが分かった。
【0017】
そこで、本発明者らは、パネル部材1の各部の形状と界面5の撓みとの関係を調べた。図3は、パネル部材1の各部の形状と界面5の撓みとの関係を調べる際に用いたパネル部材1の一例を示す側面図である。
【0018】
図3を参照して、本発明者らの研究の結果、パッチパネル4の角部近傍において、接着剤層3の上面3aの端部3bとパッチパネル4の下面4aの端部4bとの距離を適切に調整することによって、界面5の撓みを小さくできることが分かった。さらに、パッチパネル4の角部近傍において、界面5と接着剤層3の側面3cとのなす角を適切に調整することによって、界面5の撓みをさらに小さくできることが分かった。また、これらの調整とは別に、パッチパネル4の角部近傍において、界面5とパッチパネル4の側面4cとのなす角を適切に調整することによっても、界面5の撓みを小さくできることが分かった。
【0019】
なお、上述のパネル部材1では、パッチパネル4の外周縁が上記角部において屈曲しているが、図4に示すように、パッチパネル4の外周縁が角部において湾曲している場合にも、上記と同様に接着剤層3およびパッチパネル4の形状を調整することによって、界面5の撓みを小さくできることが分かった。
【0020】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記のパネル部材を要旨とする。
【0021】
(1)下から上に順に積層された金属製のメインパネル、接着剤層、および金属製のパッチパネルを備え、
平面視において前記パッチパネルの下面は、その外周縁に少なくとも一つの角部を有し、
平面視において、前記角部を二等分する仮想直線を引き、前記直線と前記接着剤層の上面の外周縁との交点を第1点とし、前記角部の頂点を第2点とした場合に、前記第1点と前記第2点との距離dおよび前記接着剤層の厚さtが下記式(i)を満たす、パネル部材。
0.0(mm)≦d(mm)≦0.2t(mm) ・・・(i)
但し、第1点は、前記直線と前記接着剤層の前記外周縁との複数の交点のうち、第2点に最も近い交点のことである。距離dは、第1点が第2点よりも外側に位置する場合に正の値になり、第1点が第2点よりも内側に位置する場合には負の値になる。
【0022】
(2)平面視において前記直線に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面で前記接着剤層および前記パッチパネルを切断した場合の前記接着剤層および前記パッチパネルの断面において、前記接着剤層および前記パッチパネルの界面と前記接着剤層の側面のうち前記第1点から下方に延びる部分とのなす角が90°〜135°である、上記(1)のパネル部材。
【0023】
(3)下から上に順に積層された金属製のメインパネル、接着剤層、および金属製のパッチパネルを備え、
平面視において前記パッチパネルの下面は、その外周縁に少なくとも一つの角部を有し、
平面視において、前記角部を二等分する仮想直線を引き、前記直線と前記接着剤層の上面の外周縁との交点を第1点とし、前記角部の頂点を第2点とした場合に、前記第1点と前記第2点との距離dが下記式(ii)を満たし、
平面視において前記直線に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面で前記接着剤層および前記パッチパネルを切断した場合の前記接着剤層および前記パッチパネルの断面において、前記接着剤層および前記パッチパネルの界面と前記パッチパネルの側面のうち前記第2点から上方に延びる部分とのなす角が45°以下である、パネル部材。
0.0(mm)≦d(mm) ・・・(ii)
但し、第1点は、前記直線と前記接着剤層の前記外周縁との複数の交点のうち、第2点に最も近い交点のことである。距離dは、第1点が第2点よりも外側に位置する場合に正の値になり、第1点が第2点よりも内側に位置する場合には負の値になる。
【0024】
(4)前記角部が内角を有する屈曲部であり、
前記角部を二等分する仮想直線とは、平面視において前記角部の前記内角を二等分する直線である、上記(1)から(3)までのいずれかのパネル部材。
【0025】
(5)前記角部が湾曲部であり、
前記第2点は、平面視において前記湾曲部のうち曲率が最大となる部分に位置し、
前記角部を二等分する仮想直線とは、平面視において、前記第2点を通る前記湾曲部の接線を引いた場合に前記接線に垂直でかつ前記第2点を通る直線である、上記(1)から(3)までのいずれかのパネル部材。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パッチパネルとメインパネルとの溶接個所を増加させることなく、パッチパネルの剥離を抑制できるパネル部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】変形挙動およびき裂の発生状況を調べるために用いたパネル部材の一例を示す図であり、(a)はパネル部材の外観斜視図、(b)はパネル部材の側面図
図2】パネル部材に振動を生じさせた場合のメインパネル、接着剤層およびパッチパネルの状態を模式的に示した側面図
図3】パネル部材の各部の形状と接着剤層およびパッチパネルの界面の撓みとの関係を調べる際に用いたパネル部材の一例を示す側面図
図4】湾曲した角部を有するパッチパネルを備えたパネル部材の一例を示す斜視図
図5】本発明の一実施形態に係るパネル部材を示す図であり、(a)はパネル部材の平面図、(b)はパネル部材の側面図
図6】パッチパネルの下面の角部と接着剤層の上面との関係を示す拡大平面図
図7】平面視において仮想直線に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面でパネル部材を切断した場合の断面を示す図
図8】パネル部材の他の例を示す断面図
図9】パネル部材のさらに他の例を示す断面図
図10】パネル部材のさらに他の例を示す断面図
図11】パネル部材のさらに他の例を示す断面図
図12】パネル部材のさらに他の例を示す断面図
図13】パネル部材のさらに他の例を示す断面図
図14】パッチパネルの下面の角部と接着剤層の上面との関係の他の例を示す拡大平面図
図15】疲労試験片を示す図であり、(a)は疲労試験片の平面図、(b)は疲労試験片の側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のパネル部材について詳細に説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るパネル部材10を示す図であり、(a)はパネル部材10の平面図、(b)はパネル部材10の側面図である。パネル部材10は、例えば成形加工を施した後、輸送機器の構成部材として用いられる。より具体的には、パネル部材10は、例えば自動車製造工場において、自動車のダッシュパネルに加工される。
【0029】
図5に示すように、パネル部材10は、下から上に順に積層されたメインパネル12、接着剤層14およびパッチパネル16を備える。パッチパネル16は、接着剤層14を介してメインパネル12に接着される。メインパネル12およびパッチパネル16としては、種々の金属板(例えば、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、チタン板、チタン合金板、マグネシウム板、またはマグネシウム合金板)を用いることができる。接着剤層14は、例えば樹脂製の接着剤(例えば、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂)からなる。本実施形態では、接着剤層14のヤング率は、メインパネル12およびパッチパネル16のヤング率よりも低い。
【0030】
本実施形態では、メインパネル12、接着剤層14およびパッチパネル16はそれぞれ、平面視長方形状を有する。より具体的には、メインパネル12、接着剤層14およびパッチパネル16はそれぞれ、直方体形状を有する。平面視において、接着剤層14はパッチパネル16よりも大きく、メインパネル12は接着剤層14よりも大きい。
【0031】
メインパネル12の厚みは、例えば、0.5〜3.2mmであり、0.7〜2.3mmであることがより好ましい。接着剤層14の厚みは、例えば、0.02〜1.0mmであり、0.04〜0.5mmであることがより好ましい。パッチパネル16の厚みは、例えば、0.5〜3.0mmであり、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。
【0032】
上述のように、本実施形態ではパッチパネル16が直方体形状を有するので、パッチパネル16の下面16aは、その外周縁に4つの角部18a、18b、18cおよび18dを有する。本実施形態では、各角部18a〜18dの内角は、90°である。すなわち、各角部18a〜18dはそれぞれ、下面16aの外周縁が90°に折れ曲がることによって形成される屈曲部である。
【0033】
図6は、パッチパネル16の下面16aの角部18aと接着剤層14の上面14aとの関係を示す拡大平面図である。図6には、平面視において角部18aを二等分する仮想直線L1を引いている。図6においては、上面14aと下面16aとの区別を明確にするために、下面16aにハッチングを付している。本実施形態では、直線L1は、平面視において角部(屈曲部)18aの内角を二等分する。
【0034】
図7は、平面視において直線L1に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面(図示せず)でパネル部材10を切断した場合の断面を示す図である。なお、図7に示すように、本実施形態では、接着剤層14およびパッチパネル16の界面20と接着剤層14の側面14bとなす角αは、例えば90°である。また、界面20とパッチパネル16の側面16bとのなす角βも、例えば90°である。
【0035】
図6および図7を参照して、本実施形態では、平面視において直線L1と接着剤層14の上面14aの外周縁との交点を第1点P1(以下、単に点P1とする。)とし、角部18aの頂点を第2点P2(以下、単に点P2とする。)とした場合に、点P1と点P2との距離dおよび接着剤層14の厚さtが下記式(i)を満たす。なお、図6はパネル部材10をより拡大して示した図であるので、図6の距離dは図7の距離dよりも大きく示されている。
0.0(mm)≦d(mm)≦0.2t(mm) ・・・(i)
但し、点P1は、直線L1と接着剤層14の上面14aの外周縁との複数の交点のうち、点P2に最も近い交点のことである。距離dは、パネル部材10の横方向(上下方向に直角な方向)において、点P1が点P2よりも外側に位置する場合に正の値になり、点P1が点P2よりも内側に位置する場合には負の値になる。言い換えると、距離dは、パネル部材10の横方向において、点P2から見て、点P1がパッチパネル16側に位置する場合に負の値になり、点P1がパッチパネル16とは反対側に位置する場合に正の値になる。図6および7においては、点P1は、点P2から見てパッチパネル16とは反対側(すなわち、パネル部材10の横方向において外側)に位置している。したがって、距離dは正の値になる。なお、点P2は、平面視において、直線L1と下面16aの外周縁との交点でもある。また、点P2は、接着剤層14とパッチパネル16との界面20上の点である。接着剤層14の厚さが均一でない場合には、厚さtは、パッチパネル16に対向する領域における接着剤層14の厚さの平均値とする。
【0036】
本実施形態に係るパネル部材10では、距離dおよび厚さtが上記式(i)を満たすことによって、接着剤層14とパッチパネル16との界面20の撓みを小さくできる。これにより、界面20においてき裂が発生することが防止され、パッチパネル16の剥離を抑制できる。
【0037】
上述の実施形態では、平面視において直線L1に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面でパネル部材10を切断した場合の断面において、界面20と側面14bとのなす角αが90°の場合について説明したが、界面20に対して側面14bが傾斜していてもよい。例えば、図8に示すように、上記断面において、側面14bが、点P1から斜め下方に延びる傾斜部14cを含んでいてもよい。なお、上記断面において、側面14bの全体が、界面20に対して傾斜していてもよい。
【0038】
なお、側面14bのうち点P1から下方に延びる部分(図8のパネル部材10では傾斜部14c)と界面20とのなす角αは、90〜135°に設定することが好ましい。この場合、界面20においてき裂が発生することをより確実に抑制できる。
【0039】
上述の実施形態では、平面視において直線L1(図6参照)に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面でパネル部材10を切断した場合の断面において、界面20(図7参照)と側面16b(図7参照)とのなす角βが90°の場合について説明したが、界面20に対して側面16bが傾斜していてもよい。例えば、図9に示すように、上記断面において、角βが90°未満になるように側面16bが傾斜していてもよく、図10に示すように、角βが90°を超えるように側面16bが傾斜していてもよい。
【0040】
なお、図11に示すように、接着剤層14の上端部において、パッチパネル16よりも外側に凹部14dが形成されている場合には、点P1は、凹部14dの点P2側の端部に位置する点とする。図示は省略するが、凹部14dの代わりに凸部が形成されている場合には、点P1は、凸部の点P2側の端部に位置する点とする。すなわち、本発明において接着剤層14の上面14aの外周縁とは、例えば、界面20と同じ高さでかつ界面20に連続する面の外周縁のことを意味する。
【0041】
上述の実施形態では、距離dおよび厚さtが上記式(i)を満たすように接着剤層14およびパッチパネル16を構成しているが、接着剤層14およびパッチパネル16の構成は上述の例に限定されない。図12は、パネル部材10の他の実施形態を示す図である。
【0042】
図12に示すパネル部材10では、平面視において直線L1(図6参照)に一致しかつ上下方向に延びる仮想平面でパネル部材10を切断した場合の断面において、側面16bと界面20とのなす角βが45°以下に設定される。この場合、距離dおよび厚さtが下記式(ii)を満たしていればよい。
0.0(mm)≦d(mm) ・・・(ii)
【0043】
なお、パッチパネル16の加工コストに対する界面20の撓み低減効果の観点(費用対効果の観点)からは、角βは20°以上に設定することが好ましい。また、図13に示すように側面16bの界面20に対する傾斜角度が途中で変わる場合には、側面16bのうち点P2から上方に延びる部分16cと界面20とのなす角を角βとする。
【0044】
上述の実施形態では、パッチパネル16の下面16aの角部18a〜18dがそれぞれ屈曲部として構成される場合について説明したが、角部18a〜18dのうちの全てまたはいずれかが湾曲部として構成されてもよい。図14は、角部18aが湾曲部として構成される場合における、角部18aと接着剤層14との関係を示す拡大平面図である。なお、本実施形態では、角部18aは、パネル部材10の横方向において外側に膨らむように湾曲している。
【0045】
図14を参照して、角部18aが湾曲部として構成される場合には、直線L1は以下のよう規定する。まず、角部18aのうち曲率が最大となる位置を点P2とし、点P2を通る接線L2を引く。そして、平面視において、接線L2に垂直でかつ点P2を通る直線を引き、直線L1とする。このようにして規定される直線L1に基づいて、上述の実施形態と同様に点P1および距離dを決定する。なお、角部18aにおいて曲率が最大となる部分が連続して存在する場合には、その連続する部分の中点を点P2とする。本発明は、曲率が0.1(1/mm)以上である角部に適用することによって、より効果を発揮する。
【0046】
上述の実施形態では、角部18aに注目して本発明の要件を説明したが、全ての角部18a〜18dにおいて本発明の要件を満足していてもよく、角部18a〜18dのうちのいずれかの角部において本発明の要件を満足していてもよい。例えば、パネル部材10を実際に使用する条件を考慮して、パッチパネル16の剥離が問題となりそうな角部において、本発明の要件を満足させてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、パッチパネル16の下面16aが4つの角部18a〜18dを有する場合について説明したが、角部の数は4つに限定されず、3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。また、メインパネル12および接着剤層14の形状も上述の例に限定されず、適宜変更してもよい。
【0048】
上述のパネル部材10は、例えば以下のようにして製造できる。まず、メインパネル12の上面に接着剤を塗布し、接着剤層14を形成する。その後、接着剤層14を間に挟んでメインパネル12上にパッチパネル16を重ね、加熱する。加熱した状態で、メインパネル12およびパッチパネル16を金型を用いて互いに押し付ける。これにより、メインパネル12上にパッチパネル16が接着される。
【0049】
なお、接着剤層14の側面14bの形状は、例えば、メインパネル12とパッチパネル16との接着直後に、へら等の工具を用いて加工することによって調整してもよく、接着剤の硬化後にグラインダー等の工具を用いて加工することによって調整してもよい。また、パッチパネル16の側面16bの形状は、グラインダー等の工具を用いて加工することによって調整してもよく、パッチパネル16の端部をプレス加工することによって調整してもよい。また、パッチパネル16のせん断加工時に、ダイとパンチとのクリアランスを大きくとって破断面の面積を増やすことによって側面16bの形状を調整してもよい。
【0050】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
実施例では、メインパネル、接着剤層およびパッチパネルの形状を変えて、本発明例および比較例のパネル部材を複数作製した。そして、各パネル部材から、図15に示す形状および寸法の疲労試験片を採取した。なお、図示は省略するが、図15の疲労試験片において、メインパネルの先端部(図15において右端部)は、溶接等によってパッチパネルの下面に接合されている。採取した試験片に繰り返し荷重を与えることによって、面外変形を伴う振動(周波数:25Hz)を生じさせ、パッチパネルの剥離が発生するまでの繰り返し数を求めた。下記の表1に、本発明例および比較例のパネル部材の構成とともに、上記の疲労試験の結果を示す。なお、表1に示す繰り返し数は、試験No.1〜13については、試験No.1の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値であり、試験No.14〜26については、試験No.14の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値である。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から明らかなように、請求項1または3の要件を満たした本発明例の試験片では、請求項1および3のいずれの要件も満たしていない比較例の試験片に比べて、パッチパネルの剥離が生じるまでの繰り返し数が明らかに増加した。特に請求項2の要件を満たした本発明例の試験片では、繰り返し数が大幅に増加した。以上のことから、本発明のパネル部材によれば、パッチパネルの剥離を十分に防止できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のパネル部材よれば、パッチパネルとメインパネルとの溶接個所を増加させることなく、パッチパネルの剥離を抑制できる。したがって、本発明のパネル部材は、種々の輸送機器の構成部材として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0055】
10 パネル部材
12 メインパネル
14 接着剤層
14a 接着剤層の上面
14b 接着剤層の側面
16 パッチパネル
16a パッチパネルの下面
16b パッチパネルの側面
18a、18b、18c、18d 角部
20 接着剤層とパッチパネルとの界面
P1 第1点
P2 第2点
L1 仮想直線
L2 接線
d 点P1と点P2との距離
t 接着剤層の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15