(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の前後方向に延在する第1の接合面が形成される第1の接合部と前記車両の前後方向後方に形成される第1の側壁とを有する第1のケースと、前記車両の前後方向に延在して前記第1の接合面に接合される第2の接合面が形成される第2の接合部と前記車両の前後方向後方に前記第1の側壁に対して車幅方向に対向する第2の側壁とを有する第2のケースとを含み、前記第1のケースおよび前記第2のケースに、変速機および前記変速機の後方に設置されて前記変速機から回転が伝達されるディファレンシャル装置を内蔵するトランスアクスルケースを備え、
前記ディファレンシャル装置が前記第1の側壁および前記第2の側壁に軸受を介して回転自在に支持され、
前記第1の側壁が、前記第1の接合部から車幅方向に延在する肩部を有し、
前記第2の接合部に締結具が挿通される複数の貫通孔が形成され、
前記第1の接合部に、前記貫通孔に挿通される締結具に螺合するネジ溝を有する複数のボス部が形成される動力伝達装置であって、
前記複数のボス部のうち、前記第1の接合部の円周方向において前記軸受の下方に設置され、かつ、前記車両の前後方向に離隔する第1のボス部および第2のボス部を連結するリブを設け、
前記リブは、前記肩部から下方に突出し、かつ、前記車両の前後方向中央部が前記車両の前後方向前端部および前後方向後端部に対して前記第1の接合部から離隔することを特徴とする動力伝達装置。
前記第1のケースの車幅方向一端部が、前記車両に搭載される内燃機関に連結され、前記第1のケースの車幅方向他端部が、前記第1の接合部を介して前記第2のケースの前記第2の接合部に接合され、
前記リブは、前記車両の前後方向前端部および前後方向後端部を結んだ仮想平面に対して、前記車両の前後方向中央部が前記第1の接合部から離隔するように湾曲するU字形状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の動力伝達装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の動力伝達装置にあっては、第1のケースの接合フランジの円周方向に隣接する締結孔の間の少なくとも1箇所に、機械的強度を有する補強プレートが接合フランジに沿って掛け渡されている。
【0008】
このため、トランスアクスルケースに外力が作用したときに、締結ボルトと締結ボルトとの間の接合フランジと、締結ボルトと締結ボルトとの間の補強プレートとが同じ動きをしてしまい、補強ボルトが補強フランジの変形を十分に抑制することができない。
【0009】
したがって、締結ボルトと締結ボルトとの間の接合フランジが変形してしまい、接合フランジのシール面圧を確保することができず、トランスアクスルケースを密閉できないおそれがある。
【0010】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、トランスアクスルケースの密閉性を高めることができる動力伝達装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、車両の前後方向に延在する第1の接合面が形成される第1の接合部と車両の前後方向後方に形成される第1の側壁とを有する第1のケースと、車両の前後方向に延在して第1の接合面に接合される第2の接合面が形成される第2の接合部と車両の前後方向後方に第1の側壁に対して車幅方向に対向する第2の側壁とを有する第2のケースとを含み、第1のケースおよび第2のケースに、変速機および変速機の後方に設置されて変速機から回転が伝達されるディファレンシャル装置を内蔵するトランスアクスルケースを備え、ディファレンシャル装置が第1の側壁および第2の側壁に軸受を介して回転自在に支持され、第1の側壁が、第1の接合部から車幅方向に延在する肩部を有し、第2の接合部に締結具が挿通される複数の貫通孔が形成され、第1の接合部に、貫通孔に挿通される締結具に螺合するネジ溝を有する複数のボス部が形成される動力伝達装置であって、複数のボス部のうち、第1の接合部の円周方向において軸受の下方に設置され、かつ、車両の前後方向に離隔する第1のボス部および第2のボス部を連結するリブを設け、リブは、肩部から下方に突出し、かつ、車両の前後方向中央部が車両の前後方向前端部および前後方向後端部に対して第1の接合部から離隔するものから構成されている。
【0012】
本発明の第2の態様としては、第1のケースの車幅方向一端部が、車両に搭載される内燃機関に連結され、第1のケースの車幅方向他端部が、第1の接合部を介して第2のケースの第2の接合部に接合され、リブは、車両の前後方向前端部および前後方向後端部を結んだ仮想平面に対して、車両の前後方向中央部が第1の接合部から離隔するように湾曲するU字形状に形成されてもよい。
【0013】
本発明の第3の態様としては、第1のボス部が第2のボス部に対して車両の前後方向前方に設けられ、リブの車両の前後方向前端部を第1のボス部の内燃機関側端部に連結するとともに、リブの車両の前後方向後端部を第2のボス部の内燃機関側端部に連結し、リブの車両の前後方向中央部を、第1のボス部および第2のボス部の内燃機関側端部に対して内燃機関側に位置させてもよい。
【0014】
本発明の第4の態様としては、第1のケースの車幅方向一端部に内燃機関に接合される第3の接合面が形成される第3の接合部を有し、第1の接合部および第3の接合部の間に位置し、かつ、ディファレンシャル装置の下方周囲を覆う第1のケースの底部に、第1のケースの底部から下方に突出する第1のリブおよび第2のリブが形成され、第1のリブが、第1のボス部の内燃機関側端部と第3の接合部とを連結し、第2のリブが、第2のボス部の内燃機関側端部と第3の接合部とを連結してもよい。
【0015】
本発明の第5の態様としては、第1のリブの突出方向高さが、第2のリブの突出方向高さよりも高くてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このように上記の第1の態様によれば、複数のボス部のうち、第1の接合部の円周方向において軸受の下方に設置され、かつ、車両の前後方向に離隔する第1のボス部および第2のボス部を連結するリブが設けられる。
【0017】
このため、リブによって第1のボス部と第2のボス部の剛性を高めることができ、変速機からディファレンシャル装置に伝達される荷重により、ディファレンシャル装置を介して軸受が下方向の荷重を受け、この荷重が第1の側壁および第2の側壁を介して第1のボス部および第2のボス部の周辺に伝達された場合に、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することを抑制できる。
【0018】
また、ディファレンシャル装置により軸受を下方に押圧する荷重が発生した場合に、この荷重を第1のボス部および第2のボス部に分散でき、第1のボス部および第2のボス部の周辺を変形し難くできる。
【0019】
一方、変速機からディファレンシャル装置に伝達される荷重により、締結具の軸線方向に荷重が作用する。すなわち、第1の接合部および第2の接合部が締結具の軸線方向に離隔する方向に荷重が作用し、第1の接合部および第2の接合部が締結具の軸線方向に変形する。
【0020】
本発明のリブは、肩部から下方に突出し、かつ、車両の前後方向中央部が車両の前後方向前端部および前後方向後端部に対して第1の接合部から離隔するので、リブによって第1の接合部および第2の接合部が締結具の軸線方向に変形することを抑制できる。
【0021】
以上の結果、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することを抑制でき、第1の接合部および第2の接合部の接合力を高めることができる。したがって、トランスアクスルケースの密閉性を高めることができる。
【0022】
これに加えて、第1のケースに設けられたリブによって第1のボス部および第2のボス部の周辺の剛性を高くできるので、ボス部や貫通孔を増やすことを不要にでき、トランスアクスルケースの部品点数が増加することを防止できる。
【0023】
上記の第2の態様によれば、第1のケースの車幅方向一端部が、車両に搭載される内燃機関に連結され、第1のケースの車幅方向他端部が第1の接合部を介して第2のケースの第2の接合部に接合されるので、軸受に対して下方向に加わる荷重が第1の側壁を伝わって第1の接合部に伝達され易い。
【0024】
また、第2のケースが第1のケースに対して後方に突き出る構成となるため、第2のケースの振動によって第2のケースから第1のケースの第1の接合部に荷重が伝達され、第1の接合部が締結具の軸線方向に荷重を受けて、第1の接合部および第2の接合部が締結具の軸線方向に離隔するように変形し易くなる。
【0025】
本発明のリブは、第1のボス部および第2のボス部を連結するように第1のケースに設けられるので、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することを抑制でき、第1の接合部および第2の接合部の接合力を高めることができる。
【0026】
上記の第3の態様によれば、リブの車両の前後方向前端部を第1のボス部の内燃機関側端部に連結するとともに、リブの車両の前後方向後端部を第2のボス部の内燃機関側端部に連結し、リブの車両の前後方向中央部を第1のボス部および第2のボス部の内燃機関側端部に対して内燃機関側に位置させている。
【0027】
このため、第1の接合部および第2の接合部が離れる方向に変形して第1のボス部および第2のボス部が内燃機関側に変形する場合に、第1のボス部および第2のボス部をリブの前端部および後端部によって第2のケース側に押し戻すことができる。
【0028】
したがって、第1のボス部および第2のボス部の周辺の剛性をより効果的に高めることができ、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することをより効果的に抑制できる。この結果、第1の接合部および第2の接合部の接合力をより効果的に高めることができる。
【0029】
また、リブの車両の前後方向中央部を第1のボス部および第2のボス部の内燃機関側端部に対して内燃機関側に位置させているので、リブの中央部を第1のケースの中で剛性が高い第1の接合部から遠ざけることができる。
【0030】
このため、第1の接合部の剛性がリブによってより一層高くなり、軸受の下方向に加わる荷重が第1の接合部に集中することを抑制でき、軸受の下方向に加わる荷重を第1のボス部および第2のボス部により効果的に分散できる。
【0031】
上記の第4の態様によれば、第1の接合部および第3の接合部の間に位置してディファレンシャル装置の下方周囲を覆う第1のケースの底部は、ディファレンシャル装置に設けられたデフケースの形状に沿って第1の接合部と第3の接合部との間で窪んだ形状となり、第1のケースの面剛性が低下する。
【0032】
これに対して、本発明の動力伝達装置は、第1のケースに、第1のケースの底部から下方に突出する第1のリブおよび第2のリブを形成し、第1のリブが、第1のボス部の内燃機関側端部と剛性の高い第3の接合部とを連結し、第2のリブが、第2のボス部の内燃機関側端部と剛性の高い第3の接合部とを連結する。
【0033】
このため、第1のケースの底部の面剛性が低下することを防止できるとともに、第1のリブおよび第2のリブによって第1のボス部および第2のボス部が内燃機関側に変形するのを抑制でき、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することをより効果的に抑制できる。
【0034】
この結果、第1の接合部および第2の接合部の接合力をより効果的に高めることができ、トランスアクスルケースの密閉性をより効果的に高めることができる。
【0035】
さらに、第1のボス部、第1のリブ、第3の接合部、第2のリブ、第2のボス部およびリブによって第1のケースの底部を連続して囲むので、第1のケースの底部の面剛性をより一層高めることができ、第1のボス部および第2のボス部の周辺が変形することをより効果的に抑制できる。
【0036】
上記の第5の態様によれば、車両の前進開始時に変速機からディファレンシャル装置に動力が伝達されるときに、ディファレンシャル装置が駆動輪から反力を受ける。このため、トランスアクスルケースの後部が下方に移動してトランスアクスルケースの後部を前方に押圧する回転力が発生することがある。
【0037】
このときに、第1のケースは、剛性の大きい内燃機関に接合される第3の接合部の前方に後方側よりも大きな荷重が加わり、第3の接合部の前方および第1のケースの底部の前方が変形し易くなる。
【0038】
本発明によれば、第1のリブの突出方向高さを、第2のリブの突出方向高さよりも高くしたので、第3の接合部の前方および第1のケースの底部の前方の剛性を後方の剛性よりも高くできる。このため、第3の接合部および第1のケースの底部が変形することを抑制でき、第1の接合部および第2の接合部の接合力を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る動力伝達装置の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1〜
図8は、本発明に係る一実施形態の動力伝達装置を示す図である。
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、エンジン2に連結される動力伝達装置3とを備えており、エンジン2の出力は、動力伝達装置3からドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪30L、30Rに伝達される。
【0041】
ここで、本実施形態では、運転席に着座した運転者から見た前後方向、左右方向、および上下方向と一致するように、図中で前、左、上の文字を付して矢印を記している。
【0042】
動力伝達装置3はトランスアクスルケース4を備えており、このトランスアクスルケース4は、第1のケース5および第2のケース6を備えている。
【0043】
図1、
図4において、第1のケース5の車幅方向一端部には本発明の第3の接合面を構成する接合面5aが形成されており、接合面5aは、エンジン2の接合面2aに接合される。このため、第1のケース5は、エンジン2に連結される。
【0044】
図2〜
図4、
図5において、第1のケース5の車幅方向他端部には車両1の前後方向に延在する接合面5bが形成されており、第1のケース5は、車両1の前後方向後方に側壁7を有している。ここで、接合面5bは、本発明の第1の接合面を構成し、側壁7は、本発明の第1の側壁を構成する。
【0045】
図2、
図4、
図5において、第2のケース6には車両1の前後方向に延在する接合面6aが形成されており、後述するボルトにより接合面6aが接合面5bに接合されることにより、第1のケース5と第2のケース6とが締結される。第2のケース5は、車両1の前後方向後方に側壁8を有しており、側壁8は、側壁7に対して車幅方向に対向している。なお、接合面6aは、本発明の第2の接合面を構成し、側壁8は、本発明第2の側壁を構成する。
【0046】
ここで、後方、前方という表現は、車両1の前後方向に対して後方であることおよび前方であることを意味し、車両1の前後方向後方および前方は、以下、単に後方、前方と表現する。
【0047】
図2において、第1のケース5および第2のケース6からなるトランスアクスルケース4の内部には図示しない単板式クラッチと、変速機9と、ディファレンシャル装置50とが収容されており、ディファレンシャル装置50は、変速機9の後方に設置されている。
【0048】
動力伝達装置3は、単板式クラッチを介してエンジン2の動力を変速機9に入力し、図示しないシフタ軸の作動により変速機9において変速を行い、変速された回転をディファレンシャル装置50により、ドライブシャフト24L、24Rを介して駆動輪30L、30Rに伝達する。
【0049】
図2、
図3において、変速機9は、単板式クラッチを介して図示しないクランクシャフトに連結されるインプット軸10と、インプット軸10と平行な回転軸を有するカウンタ軸11およびリバース軸12とを備えている。
【0050】
インプット軸10には複数の変速ギヤ13が設けられており、変速ギヤ13は、1速ドライブギヤ14A、2速ドライブギヤ14B、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14Dおよび5速ドライブギヤ14Eを有している。
【0051】
1速ドライブギヤ14Aは、エンジン2側に配置されており、エンジン2から軸線方向に遠ざかるに従って2速ドライブギヤ14B、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14D、5速ドライブギヤ14Eが順次、設けられている。
【0052】
1速ドライブギヤ14Aおよび2速ドライブギヤ14Bは、インプット軸10に固定されており、3速ドライブギヤ14C、4速ドライブギヤ14Dおよび5速ドライブギヤ14Eは、インプット軸10に対して回転自在に設けられている。
【0053】
カウンタ軸11には複数の変速ギヤ15が設けられている。変速ギヤ15は、1速ドリブンギヤ16A、2速ドリブンギヤ16B、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16Dおよび5速ドリブンギヤ16Eを有している。
【0054】
具体的には、変速ギヤ15は、エンジン2側に1速ドリブンギヤ16Aが位置しており、エンジン2から軸線方向に遠ざかるに従って2速ドリブンギヤ16B、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16D、5速ドリブンギヤ16Eが順次、設けられている。
【0055】
変速ギヤ15は、同一の各変速段を構成する変速ギヤ13に常時噛合しており、1速ドリブンギヤ16Aおよび2速ドリブンギヤ16Bがカウンタ軸11に回転自在に設けられているとともに、3速ドリブンギヤ16C、4速ドリブンギヤ16Dおよび5速ドリブンギヤ16Eがカウンタ軸11に固定されている。
【0056】
リバース軸12には変速ギヤとしてのリバースアイドラギヤ17が軸線方向に移動自在に設けられている。さらに、インプット軸10にリバースドライブギヤ14Fが固定されるとともにカウンタ軸11にリバースドリブンギヤ16Fが固定されている。
【0057】
リバースアイドラギヤ17は、軸線方向に移動することで、インプット軸10に設けられたリバースドライブギヤ14Fおよびカウンタ軸11に設けられたリバースドリブンギヤ16Fに噛合する。
【0058】
また、変速機9は、噛み合いクラッチ18〜22を備えており、噛み合いクラッチ20〜22は、3速ドライブギヤ14Cとインプット軸10の間、4速ドライブギヤ14Dとインプット軸10の間、および5速ドライブギヤ14Eとインプット軸10の間にそれぞれ設けられている。
【0059】
噛み合いクラッチ18、19は、1速ドリブンギヤ16Aとカウンタ軸11の間、2速ドリブンギヤ16Bとカウンタ軸11との間にそれぞれ設けられている。
【0060】
この変速機9は、図示しないシフト操作を行い、噛み合いクラッチ18〜22を軸線方向に移動させて各変速段を構成する変速ギヤ13、15を適宜噛合させることで、各変速段を成立させる。
【0061】
また、変速機9は、リバースアイドラギヤ17を変速ギヤ13のリバースドライブギヤ14Fおよび変速ギヤ15のリバースドリブンギヤ16Fに噛合させ、後進段を形成する。
【0062】
また、カウンタ軸11のエンジン2側の端部には変速ギヤ15の一部を構成するファイナルドライブギヤ16Gが固定して設けられており、このファイナルドライブギヤ16Gには、大径のファイナルギヤ23が噛合している。
【0063】
動力伝達装置3にはディファレンシャル装置50が設けられている。ディファレンシャル装置50は、大径のファイナルギヤ23が固定されたデフケース51と、ピニオンシャフト52と、ピニオンシャフト52に回転自在に支持された一対のピニオンギヤ53A、53Bと、ピニオンギヤ53A、53Bに噛合する一対のサイドギヤ54A、54Bとを有している。これらサイドギヤ54A、54Bは、左右のドライブシャフト24L、24Rに連結されている。
【0064】
ファイナルギヤ23は、ファイナルドライブギヤ16Gに噛合しており、ディファレンシャル装置50は、左右の駆動輪30L、30Rの差動を許容しつつ、ファイナルドライブギヤ16Gの回転を左右の駆動輪30L、30Rに伝達する。
【0065】
デフケース51の車幅方向一端部(左端部)は、軸受55Aを介して第2のケース6の側壁8に回転自在に支持されており、デフケース51の車幅方向他端部(右端部)は、軸受55Bを介して第1のケース6の側壁7に回転自在に支持されている。
【0066】
図5において、第1のケース5および第2のケース6にはそれぞれ開口部5c、6bが形成されており、ドライブシャフト24L、24Rは、開口部5c、6bを通して第1のケース5および第2のケース6の外方に突出している。
【0067】
図2、
図3、
図5、
図7において、側壁7は、接合面5bが形成される接合部7Aを備えている。接合部7Aは、フランジを含んで構成され、第2のケース6の接合面6aに対向している。
【0068】
図2、
図5、
図7において、側壁8は、接合面6aが形成される接合部8Aを備えており、接合部8Aは、フランジを含んで構成され、第1のケース5の接合面5bに対向して接合面5bに接合される。ここで、接合部7Aは、本発明の第1の接合部を構成し、接合部8Aは、本発明の第2の接合部を構成する。
【0069】
図4において、接合部8Aには接合部8Aの円周方向に沿って複数の貫通孔8bが形成されており、貫通孔8bには締結具としてのボルト25が挿通される。
【0070】
第1のケース5の車幅方向一端部の外周縁には本発明の第3の接合部を構成する接合部7Bが形成されており、接合部7Bは、エンジン2に接合される接合面5aを有する(
図4、
図7参照)。
【0071】
接合部7Bには接合部7Bの円周方向に沿って複数の締結部7bが形成されており、締結部7bは、図示しないボルトを介してエンジン2に締結される。
【0072】
図3、
図4において、接合部7Aには接合部7Aの円周方向に沿って複数のボス部26が形成されており、このボス部26の内周部には貫通孔8bに挿通されるボルト25に螺合するネジ溝26cが形成されている(
図4、
図7参照)。
【0073】
図4、
図7において、第1のケース5の側壁7には、肩部7aが形成されており、この肩部7aは、第1のケース5の内部にデフケース51を収納するための空間を確保するために接合部7Aから車幅方向右方に延在している。
【0074】
図4〜
図7において、第1のケース5の下面にはリブ27が設けられている。リブ27は、複数のボス部26のうち、接合部7Aの円周方向において軸受55Bの下方に設置されて車両1の前後方向に離隔する第1のボス部としてのボス部26Aおよび第2のボス部としてのボス部26Bを連結している。
【0075】
図4において、リブ27は、肩部7aから下方に突出しており、車両1の前後方向中央部(以下、単に中央部27Aという)が車両1の前後方向前端部(以下、単に前端部27Bという)および前後方向後端部(以下、単に後端部27Cという)に対して接合部7Aから離隔している(
図4参照)。
【0076】
具体的には、
図4に示すように、リブ27は、前端部27Bおよび後端部27Cを結んだ仮想平面Lに対して、中央部27Aが接合部7Aから離隔するように湾曲するU字形状に形成されている。
【0077】
また、リブ27は、前端部27Bがボス部26Aの内燃機関側端部(以下、エンジン側端部26aという)に連結されており、後端部27Cがボス部26Bの内燃機関側端部(以下、エンジン側端部26bという)に連結されている。
【0078】
また、リブ27において、接合部7Aに対する中央部27Aの位置は、ボス部26Aのエンジン側端部26aおよびボス部26Bのエンジン側端部26bからエンジン2側に位置している。
【0079】
一方、
図4の下面視において、トランスアクスルケース4は、ディファレンシャル装置50を回転自在に支持する第1のケース5の側壁7と第2のケース6の側壁8とがトランスアクスルケース4の前方側から後方に突き出る、所謂、オーバーハングしている。
【0080】
また、ディファレンシャル装置50の下方周囲を覆う第1のケース5の底部5dは、ディファレンシャル装置50に設けられたデフケース51の形状に沿って接合部7Aと接合部7Bとの間で上方に窪んだ形状に形成されている。
【0081】
すなわち、ディファレンシャル装置50の下方周囲を覆う第1のケース5の底部5dは、接合部7Aからデフケース51の形状に沿って上方に窪み、ドライブシャフト24Rの回転軸線方向に亙って窪んだ状態を維持して接合部7Bに連続している。
【0082】
第1のケース5には底部5dから下方に突出し、本発明の第1のリブを構成するリブ28が形成されており、リブ28は、ボス部26Aのエンジン側端部26aと接合部7Bとを連結している。
【0083】
第1のケース5には底部5dから下方に突出し、本発明の第2のリブを構成するリブ29が形成されており、リブ29は、ボス部26Bのエンジン側端部26bと接合部7Bとを連結している。
【0084】
本実施形態のリブ28は、リブ29に対して前方に設けられており、リブ28の突出方向高さT1は、リブ29の突出方向高さT2よりも高く形成される(
図6参照)。
【0085】
次に、作用を説明する。
図3に示すように、車両1の前進走行時には時計回転方向R1に回転するファイナルドライブギヤ16Gからファイナルギヤ23に動力が伝達され、ファイナルギヤ23が反時計回転方向R2に回転する。
【0086】
ファイナルドライブギヤ16Gとファイナルギヤ23との噛み合いにより、ファイナルドライブギヤ16Gとファイナルギヤ23の接線方向L1に車両1の斜め前方下向きの荷重F1が発生するとともに、接線方向L1と直交する方向に車両1の斜め後方下向きの荷重F2が発生し、荷重F1とF2と合成した下向きの荷重Fcが発生する。
【0087】
ディファレンシャル装置50のデフケース51は、第1のケース5の側壁7および第2のケース6の側壁8に軸受55A、55Bを介して回転自在に支持されるので、側壁7、8には軸受55A、55Bから下方に荷重Fcを受ける。
【0088】
この下向きの荷重Fcは、側壁7、8からディファレンシャル装置50の下方のボス部26A、26Bの周囲に伝達されることになり、ボス部26A、26Bの周囲に応力が集中することになる。
【0089】
また、ファイナルドライブギヤ16Gとファイナルギヤ23との噛み合いにより、ファイナルドライブギヤ16Gとファイナルギヤ23の軸線方向に荷重F3が発生し、この荷重F3により、第1のケース5の側壁7や接合部7Aがファイナルギヤ23の軸線方向に変形しようとする力が作用する。
【0090】
このため、ボルト25の軸線方向に荷重F3が作用して、第1のケース5の接合部7Aと第2のケース6の接合部8Aとが離隔する方向に変形してしまい、接合部7A、8Aの接合力、換言すれば、接合面5b、6aの面圧が低下するおそれがある。
【0091】
本実施形態の動力伝達装置3は、接合部7Aに形成される複数のボス部26のうち、接合部7Aの円周方向において軸受55Bの下方に設置され、かつ、車両1の前後方向に離隔するボス部26A、26Bを連結するリブ27を設けた。
【0092】
このため、リブ27によってボス部26A、26Bまたはボス部26A、26Bの周囲の剛性を高めることができ、変速機9からディファレンシャル装置50に伝達される荷重により、ディファレンシャル装置50を介して軸受55A、55Bが下方向の荷重Fcを受け、この荷重Fcが側壁7、8を介してボス部26A、26Bの周辺に伝達された場合に、ボス部26A、26Bの周辺が変形することを抑制できる。
【0093】
また、ディファレンシャル装置50により軸受55A、55Bを下方に押圧する荷重Fcが発生した場合に、この荷重FcをFc1、Fc2として、ボス部26A、26Bに分散でき、ボス部26A、26Bおよびボス部26A、26Bの周辺に局所的な応力またはひずみが集中することを防止して、ボス部26A、26Bの周辺を変形し難くできる。
【0094】
また、本実施形態のリブ27は、肩部7aから下方に突出しており、中央部27Aが前端部27Bおよび後端部27Cに対して接合部7Aから離隔するので、荷重F3が作用した場合に、リブ27によって接合部7A、8Aがボルト25の軸線方向に変形することを抑制できる。
【0095】
以上の結果、ボス部26A、26Bの周辺に荷重F1〜F3が合成された荷重Fc+F3が加わった場合であっても、ボス部26A、26Bの周辺が変形することを抑制でき、接合部7A、8Aの接合力を高めることができ、トランスアクスルケース4の密閉性を高めることができる。
【0096】
このようにトランスアクスルケース4の密閉性を高めることができるので、トランスアクスルケース4に収容されている変速機9やディファレンシャル装置50を潤滑するオイルが漏出することを防止できる。
【0097】
これに加えて、本実施形態の動力伝達装置3は、第1のケース5に設けられたリブ27によってボス部26A、26Bの周辺の剛性を高くできるので、ボス部26や貫通孔8bを増やすことを不要にでき、トランスアクスルケース4の部品点数が増加することを防止できる。
【0098】
一方、本実施形態の動力伝達装置3において、第1のケース5の車幅方向一端部がエンジン2に連結され、第1のケース5の車幅方向他端部が接合部7Aを介して第2のケース6の接合部8Aに接合されるので、軸受55A、55Bに対して下方向に加わる荷重Fcが第1のケース5の側壁7を伝わって接合部7Aに伝達され易い。
【0099】
これに加えて、第2のケース6が第1のケース5に対して後方にオーバーハングしているため、第2のケース6の振動によって第2のケース6から第1のケース5の接合部7Aに荷重が伝達される。このため、接合部7Aがボルト25の軸線方向に荷重を受けて、接合部7A、8Aがボルト25の軸線方向に離隔するように変形し易くなる。
【0100】
これに対して、本実施形態のリブ27は、ボス部26A、26Bを連結するように第1のケース5に設けられるので、ボス部26A、26Bの周辺が変形することを抑制でき、接合部7A、8Aの接合力を高めることができる。
【0101】
特に、本実施形態の動力伝達装置3は、リブ27の前端部27Bをボス部26Aのエンジン側端部26aに連結するとともに、リブ27の後端部27Cをボス部26Bのエンジン側端部26bに連結し、リブ27の中央部27Aをボス部26A、26Bのエンジン側端部26a、26bに対してエンジン2側に位置させている。
【0102】
このため、接合部7A、8Aが離れる方向に変形してボス部26A、26Bがエンジン2側に変形する場合に、リブ27の前端部27Bおよび後端部27Cによってボス部26A、26Bを第2のケース6側に押し戻すことができる。
【0103】
したがって、ボス部26A、26Bの周辺の剛性をより効果的に高めることができ、ボス部26A、26Bの周辺が変形することをより効果的に抑制できる。この結果、ボス部7A、8Aの接合力をより効果的に高めることができる。
【0104】
また、リブ27の中央部27Aをボス部26A、26Bのエンジン側端部26a、26bに対してエンジン2側に位置させているので、リブ27の中央部27Aを第1のケースの中で剛性が高いボス部7Aから遠ざけることができる。
【0105】
このため、ボス部7Aの剛性がリブ27によってより一層高くなり、軸受55A、55Bの下方向に加わる荷重Fcがボス部7Aに集中することを抑制でき、軸受の下方向に加わる荷重をボス部26A、26Bにより効果的に分散できる。
【0106】
一方、
図4、
図7において、接合部7A、7Bの間に位置してディファレンシャル装置50の下方周囲を覆う第1のケース5の底部5dは、デフケース51の形状に沿って接合部7A、7Bとの間で窪んだ形状となり、第1のケース5の面剛性が低下する。
【0107】
これに対して、本実施形態の動力伝達装置3は、第1のケース5に、第1のケース5の底部5dから下方に突出するリブ28、29を形成し、リブ28、29が、それぞれボス部26A、26Bのエンジン側端部26a、26bと剛性の高い接合部7Bを連結する。
【0108】
このため、第1のケース5の底部5dの面剛性が低下することを防止できるとともに、リブ28、29によってボス部26A、26Bがエンジン2側に変形するのを抑制でき、ボス部26A、26Bの周辺が変形することをより効果的に抑制できる。
この結果、ボス部7A、8Aの接合力をより効果的に高めることができ、トランスアクスルケース4の密閉性を高より効果的に高めることができる。
【0109】
さらに、
図4、
図7に示すように、ボス部26A、リブ28、接合部7B、リブ29、ボス部26Bおよびリブ27によって第1のケース5の底部5dを連続して囲むので、第1のケース5の底部5dの面剛性をより一層高めることができ、ボス部26A、26Bの周辺が変形することをより効果的に抑制できる。
【0110】
一方、本実施形態のトランスアクスルケース4は、例えば、
図3に示すように前方側、かつ上方に設定されたマウント位置Mにおいて、車両1の図示しない車体に弾性的に支持される。
【0111】
トランスアクスルケース4がマウント位置Mで車体に支持されると、車両1の前進開始時において、変速機9のファイナルドライブギヤ16Gからディファレンシャル装置50のファイナルギヤ23に動力が伝達されるときに、ファイナルギヤ23が、駆動輪30L、30Rからファイナルギヤ23の回転方向と反対方向である反時計回転方向に反力を受ける。
【0112】
このため、
図3に示すように、トランスアクスルケース4の後部が下方に移動してトランスアクスルケース4の後部を前方に押圧する回転力Roが発生することがある。このときに、第1のケース5は、剛性の大きいエンジン2に接合される接合部7Bの前方に後方側よりも大きな荷重が加わり、接合部7Bの前方および第1のケース5の底部5dの前方が変形し易くなる。
【0113】
本実施形態の動力伝達装置3によれば、リブ28の突出方向高さT1を、リブ29の突出方向高さT2よりも高くしたので、接合部7Bの前方および第1のケース5の底部5dの前方の剛性を後方の剛性よりも高くできる。このため、接合部7Bおよび第1のケース5の底部5dが変形することを抑制でき、ボス部7A、8Aの接合力を高めることができる。
【0114】
次に、
図8に基づいて第1のケース5の製造方法を説明する。
図8は、第1のケース5を成形する金型を模式的に示した図である。
図8において、金型61は、第1のケース5の外周形状に対応する内周形状を有し、パーティング面63を介して水平方向Eに型締め、型開きされ金型62A〜62Eを有する。
【0115】
また、金型61は、金型62A〜62Eに対して上方向Aから型締めおよび型開きされ、第1のケース5における第2のケース6側の内周形状に対応する外周形状を有する上中子64と、金型62A〜62Eに対して下方向Bから型締めおよび型開きされ、第1のケース5におけるエンジン2側の内周形状に対応する外周形状を有する下中子65とを備えている。
【0116】
このような構成を有する金型61によって第1のケース5を製造するには、型締めされた金型62A〜62E、上中子64および下中子65の間に形成される図示しないキャビティに金属材料からなる溶湯を流し込んで第1のケース5を成形する。
【0117】
その後に、金型62A〜62Eから上中子64および下中子65をそれぞれ上下方向に引き抜く。本実施形態の第1のケース5は、第1のケース5の肩部7aから突出するリブ27を有し、このリブ27は、肩部7aから金型62Dの方向に突出している。
【0118】
金型62Dの内周面にはリブ27を形成するための溝が形成されているため、金型62A〜62Eから上中子64および下中子65をそれぞれ上下方向に引き抜くときに、リブ27が金型62Dに引っ掛かることで、第1のケース5が金型62A〜62Eに対して上下方向に移動することを規制できる。
【0119】
このため、上中子64および下中子65を金型62A〜62Eから円滑に引き抜くことができ、第1のケース5の製造作業の作業性を向上させることができる。したがって、第1のケース5の生産性を向上させることができ、結果的にトランスアクスルケース4の生産性を向上させることができる。
【0120】
なお、本実施形態のトランスアクスルケース4は、エンジン2に連結される側のケースを第1のケースとしたが、エンジン2に連結される側のケースを第2のケースから構成し、この第2のケースからオーバーハングした第2のケースを第1のケースから構成してもよい。
【0121】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。