特許第6248775号(P6248775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248775
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】パネル部材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20171211BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20171211BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   G10K11/16 120
   F16F15/02 Q
   B32B15/08 N
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-85683(P2014-85683)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-206836(P2015-206836A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134980
【弁理士】
【氏名又は名称】千原 清誠
(74)【代理人】
【識別番号】100093469
【弁理士】
【氏名又は名称】杉岡 幹二
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 厚司
(72)【発明者】
【氏名】浜田 幸一
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−508686(JP,A)
【文献】 特表2012−520401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0073899(US,A1)
【文献】 特開2005−239015(JP,A)
【文献】 特表2012−514075(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0250375(US,A1)
【文献】 特表2008−539108(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0045008(US,A1)
【文献】 特表2013−535030(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0315473(US,A1)
【文献】 特開平07−139585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00−13/00
F16F 15/00−15/36
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパッチパネル、金属製のメインパネル、および前記パッチパネルと前記メインパネルとを接着する接着部を備え、
前記接着部は、前記パッチパネルに接触している第1接着剤層と、前記第1接着剤層と前記メインパネルとの間に設けられた第2接着剤層とを含み、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層の熱膨張係数およびヤング率が、下記の(i)式および(ii)式を満たす、パネル部材。
α1<α2 ・・・ (i)
E1>E2 ・・・ (ii)
但し、(i)式において、α1は第1接着剤層の熱膨張係数を意味し、α2は第2接着剤層の熱膨張係数を意味する。(ii)式において、E1は第1接着剤層のヤング率を意味し、E2は第2接着剤層のヤング率を意味する。
【請求項2】
前記第2接着剤層が前記第1接着剤層に接触している、請求項1に記載のパネル部材。
【請求項3】
前記第2接着剤層が前記メインパネルに接触している、請求項1または2に記載のパネル部材。
【請求項4】
前記接着部は、前記第2接着剤層と前記メインパネルとの間に設けられた第3接着剤層をさらに備え、
前記第1接着剤層、前記第2接着剤層および前記第3接着剤層の熱膨張係数およびヤング率が、下記の(iii)式および(iv)式を満たす、請求項1または2に記載のパネル部材。
α2>max(α1、α3) ・・・ (iii)
E2<min(E1、E3) ・・・ (iv)
但し、(iii)式において、α3は第3接着剤層の熱膨張係数を意味し、max(α1、α3)はα1およびα3のうち大きい方の値を意味する。(iv)式において、E3は第3接着剤層のヤング率を意味し、min(E1、E3)はE1およびE3のうち小さい方の値を意味する。
【請求項5】
前記第3接着剤層が前記第2接着材層に接触している、請求項4に記載のパネル部材。
【請求項6】
前記第3接着剤層が前記メインパネルに接触している、請求項4または5に記載のパネル部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響・振動を低減するパネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、鉄道車両、船舶および航空機等の輸送機器においては、種々の要因により、音響・振動が発生する。
【0003】
例えば、自動車の動力源であるエンジンまたはモータは、駆動時に大きな音響・振動を発生する。この音響・振動が客室に伝達されると、客室内の乗員に不快感を与える。したがって、エンジンルームまたはモータルームと客室とを仕切るパネル部材(例えば、ダッシュクロス)は、音響・振動を低減する優れた機能を有することが重要である。
【0004】
そこで、従来、上記のような音響・振動の伝達を抑制するために、金属製のメインパネルに接着剤層を介して金属製のパッチパネルを貼り付けた構成を有するパネル部材が開発されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、一対の高剛性層と、これらの間に挟まれた減音材層とを含む金属減音積層体が開示されている。金属減音積層体は、例えば、自動車用部品として用いられ、音響・振動エネルギーを減衰する。減音材層は、例えば、沈殿相、粘性層および補助成分の中から選ばれる1つ以上と、ポリマーマトリックスとを含む。減音材層は、音響・振動エネルギーを減衰させるとともに、一対の高剛性相を互いに結合する接着剤として機能する。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、主パネル、音減衰パッチ、および主パネルと音減衰パッチとを接着する接着層を有するパネル組立が開示されている。音減衰パッチは、形成特徴部を備える。形成特徴部は、音減衰パッチに形成された開口部、穴、スリット、突起および凹部を含む。形成特徴部は、パネル組立の音抑制特性を著しく損なうことなくパネル組立の成形性を改善するために設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−539108号公報
【特許文献2】特表2013−535030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来のパネル部材を製造する際には、まず、メインパネル上にシート状の接着剤を配置し、接着剤上にパッチパネルを配置する。そして、接着剤が溶融する温度(例えば、100〜300℃)まで加熱し、メインパネルおよびパッチパネルを平坦な金型で挟んでプレスする。これによって、メインパネルおよびパッチパネルが接着剤を介して接着され、パネル部材が完成する。
【0009】
このようなプレス接着によって製造されるパネル部材では、メインパネルと接着剤との界面およびパッチパネルと接着剤との界面に残留応力が発生する。この残留応力が原因となって、パネル部材が変形する場合がある。言い換えると、平坦なパネル部材を得られない場合がある。
【0010】
ところで、パネル部材を輸送機器等の構成部材として用いる場合には、一般に、パネル部材にプレス成形が施される。このとき、プレス成形前のパネル部材が平坦な形状を有していなければ、プレス成形時に成形不良が発生する場合がある。
【0011】
また、パネル部材を輸送機器の構成部材として用いる場合、エンジン作動中等にパネル部材に面外変形を伴う振動が生じる。このとき、パッチパネルとメインパネルとの間の接着剤には、パッチパネルの慣性運動によって、引張応力および圧縮応力が繰り返し作用する。この引張応力の作用によって、パッチパネルと接着剤との界面においてき裂が発生する場合がある。特に、パネル部材に上記残留応力が発生している場合には、残留応力が引張応力に重畳し、き裂の発生を促進してしまう。これにより、パッチパネルがメインパネルから剥離してしまうことがある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、プレス接着後の変形を抑制できかつパッチパネルの剥離を抑制できるパネル部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
まず、本発明者らは、プレス接着後のパネル部材の変形態様を検証した。図1は、変形態様を検証するために用いたパネル部材1を示す図であり、(a)はパネル部材1の外観斜視図、(b)はパネル部材1の側面図である。
【0014】
図1に示すパネル部材1は、金属製のパッチパネル2、接着剤層3および金属製のメインパネル4を備える。本発明者らは、このパネル部材1において、パッチパネル2、接着剤層3およびメインパネル4の特性を種々に変えて、パネル部材1の変形態様を検証した。その結果、パッチパネル2と接着剤層3との熱膨張係数の差、およびメインパネル4と接着剤層3との熱膨張係数の差が大きくなるほど、プレス接着後にパネル部材1の変形量が大きくなることを見出した。
【0015】
上記のようにパネル部材1の変形量が大きくなる理由を、本発明者らは以下のように考えた。まず、パッチパネル2、接着剤層3およびメインパネル4(以下、各構成要素ともいう。)は、プレス接着時に同じ温度に加熱され、その後、室温まで冷却される。この冷却時に、各構成要素は、熱膨張係数に比例して収縮する。一般に、接着剤の方が金属よりも熱膨張係数が大きいので、パッチパネル2およびメインパネル4よりも、接着剤層3の収縮量が大きくなる。このため、パッチパネル2と接着剤層3との界面およびメインパネル4と接着剤層3との界面には、各構成要素の収縮量の差に起因して引張応力が発生する。これにより、パネル部材1が変形すると考えられる。そして、パッチパネル2と接着剤層3との熱膨張係数の差、およびメインパネル4と接着剤層3との熱膨張係数の差が大きくなると、上記収縮量の差も大きくなるので、パネル部材1の変形量も大きくなると考えられる。
【0016】
次に、本発明者らは、上述の構成を有するパネル部材1を用いて、振動発生時のパネル部材1の変形挙動およびき裂の発生状況を詳細に調べた。具体的には、図1(b)に点線で示すように、本発明者らは、パネル部材1に面外変形を伴う振動を生じさせた。その結果、以下のことが分かった。
【0017】
図2は、パネル部材1に振動を生じさせた場合のパッチパネル2、接着剤層3およびメインパネル4の状態を模式的に示した側面図である。上述したように、パネル部材1に面外変形を伴う振動を発生させた場合、パッチパネル2の慣性運動によって接着剤層3に圧縮応力および引張応力が繰り返し作用する。接着剤層3のヤング率はパッチパネル2およびメインパネル4よりも低いので、接着剤層3に引張応力が作用している場合には、接着剤層3は厚さを増すように変形した。このとき、図2に模式的に示すように、接着剤層3は、厚さ方向に直角な方向(横方向)に縮むようにも変形した。これらの変形に伴い、パッチパネル2と接着剤層3との界面5は、端部5aに近づくほど接着剤層3側に撓んだ。また、界面5ほどでは無いが、メインパネル4と接着剤層3との界面6も、端部6aに近づくほど接着剤層3側に撓んだ。そして、面外変形の振幅を増大させてパネル部材1に繰り返し振動を与えた結果、界面5からき裂が発生してパッチパネル2が剥離した。
【0018】
界面5および界面6における上記の変形は、パッチパネル2およびメインパネル4と接着剤層3とのヤング率の差が大きいほど大きくなり、界面5におけるき裂の発生も早くなった。一方、パッチパネル2と接着剤層3とのヤング率の差が小さい場合には、界面6からき裂が発生して、パッチパネル2が剥離した。
【0019】
上記の結果を踏まえて、本発明者らはさらに、複数の接着剤層を備えたパネル部材を作製し、プレス接着後のパネル部材の変形および振動発生時のパッチパネルの剥離について詳細に検証した。その結果、複数の接着剤層のヤング率を適切に調整することによって、プレス接着後のパネル部材の変形を抑制できるとともに、パッチパネルの剥離を抑制できることが分かった。
【0020】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記のパネル部材を要旨とする。
【0021】
(1)金属製のパッチパネル、金属製のメインパネル、および前記パッチパネルと前記メインパネルとを接着する接着部を備え、
前記接着部は、前記パッチパネルに接触している第1接着剤層と、前記第1接着剤層と前記メインパネルとの間に設けられた第2接着剤層とを含み、
前記第1接着剤層および前記第2接着剤層の熱膨張係数およびヤング率が、下記の(i)式および(ii)式を満たす、パネル部材。
α1<α2 ・・・ (i)
E1>E2 ・・・ (ii)
但し、(i)式において、α1は第1接着剤層の熱膨張係数を意味し、α2は第2接着剤層の熱膨張係数を意味する。(ii)式において、E1は第1接着剤層のヤング率を意味し、E2は第2接着剤層のヤング率を意味する。
【0022】
(2)前記第2接着剤層が前記第1接着剤層に接触している、上記(1)のパネル部材。
【0023】
(3)前記第2接着剤層が前記メインパネルに接触している、上記(1)または(2)のパネル部材。
【0024】
(4)前記接着部は、前記第2接着剤層と前記メインパネルとの間に設けられた第3接着剤層をさらに備え、
前記第1接着剤層、前記第2接着剤層および前記第3接着剤層の熱膨張係数およびヤング率が、下記の(iii)式および(iv)式を満たす、上記(1)または(2)のパネル部材。
α2>max(α1、α3) ・・・ (iii)
E2<min(E1、E3) ・・・ (iv)
但し、(iii)式において、α3は第3接着剤層の熱膨張係数を意味し、max(α1、α3)はα1およびα3のうち大きい方の値を意味する。(iv)式において、E3は第3接着剤層のヤング率を意味し、min(E1、E3)はE1およびE3のうち小さい方の値を意味する。
【0025】
(5)前記第3接着剤層が前記第2接着材層に接触している、上記(4)のパネル部材。
【0026】
(6)前記第3接着剤層が前記メインパネルに接触している、上記(4)または(5)のパネル部材。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、プレス接着後の変形を抑制できかつパッチパネルの剥離を抑制できるパネル部材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】変形態様の検証のために用いたパネル部材を示す図であり、(a)はパネル部材の外観斜視図、(b)はパネル部材の側面図
図2図1のパネル部材に振動を生じさせた場合のメインパネル、接着剤層およびパッチパネルの状態を模式的に示した側面図
図3】本発明の第1実施形態のパネル部材を示す側面図
図4】本発明の第2実施形態のパネル部材を示す側面図
図5】疲労試験片を示す図であり、(a)は疲労試験片の平面図、(b)は疲労試験片の側面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係るパネル部材10を示す側面図である。図3に示すように、パネル部材10は、パッチパネル12、接着部14およびメインパネル16を備える。パッチパネル12およびメインパネル16は、接着部14を介して互いに接着される。なお、パッチパネル12、接着部14およびメインパネル16の形状は、パネル部材10の使用環境および用途等によって決定される。パッチパネル12、接着部14およびメインパネル16は、例えば、図1のパネル部材1と同様に平面視長方形状に形成してもよい。
【0030】
パネル部材10は、例えば成形加工(プレス成形等)を施した後、輸送機器の構成部材として用いられる。より具体的には、パネル部材10は、例えば自動車製造工場において、自動車のダッシュパネルに加工される。
【0031】
接着部14は、複数の接着剤層を含む。本実施形態では、接着部14は、第1接着剤層14aおよび第2接着剤層14b(以下、それぞれ第1層14aおよび第2層14bと略記する。)を含む。第1層14aは、パッチパネル12に接触している。第2層14bは、第1層14aとメインパネル16との間に設けられる。本実施形態では、第2層14bは、第1層14aおよびメインパネル16に接触している。すなわち、本実施形態では、メインパネル16上に、第2層14b、第1層14aおよびパッチパネル12が順に積層されている。
【0032】
パッチパネル12の厚みは、例えば0.5〜3.2mmであり、0.7〜2.3mmであることが好ましい。第1層14aの厚みは、例えば0.02〜1.0mmであり、0.03〜0.5mmであることが好ましい。第2層14bの厚みは、例えば0.02〜1.0mmであり、0.03〜0.5mmであることが好ましい。メインパネル16の厚みは、例えば0.5〜2.0mmであり、0.5〜1.5mmであることが好ましい。
【0033】
パッチパネル12およびメインパネル16としては、種々の金属板(例えば、鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、チタン板、チタン合金板、マグネシウム板、またはマグネシウム合金板)を用いることができる。第1層14aおよび第2層14bは、例えば樹脂製の接着剤(アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等)からなる。第1層14aおよび第2層14bの熱膨張係数は、パッチパネル12およびメインパネル16の熱膨張係数よりも大きく、第1層14aおよび第2層14bのヤング率は、パッチパネル12およびメインパネル16のヤング率よりも低い。
【0034】
パネル部材10は、例えば以下のようにして製造できる。まず、メインパネル16の上面に第2層14bおよび第1層14aを形成する。第2層14bおよび第1層14aは、例えば、接着剤シートをメインパネル16に貼り付けることによって形成できる。その後、第1層14a上にパッチパネル12を置き、接着部14として用いた接着剤のガラス遷移温度以上に加熱する。加熱した状態で、パッチパネル12およびメインパネル16を金型を用いて互いに押し付ける。すなわち、パッチパネル12およびメインパネル16をプレス接着する。最後に、パッチパネル12、接着部14およびメインパネル16を冷却する。
【0035】
本実施形態では、下記の(i)式および(ii)式を満たすように、第1層14aおよび第2層14bの材料が適宜選択される。
α1<α2 ・・・ (i)
E1>E2 ・・・ (ii)
但し、(i)式において、α1は第1層14aの熱膨張係数を意味し、α2は第2層14bの熱膨張係数を意味する。(ii)式において、E1は第1層14aのヤング率を意味し、E2は第2層14bのヤング率を意味する。
【0036】
上述したように、第1層14aの熱膨張係数は、金属製のパッチパネル12の熱膨張係数よりも大きい。第1層14aおよびパッチパネル12の熱膨張係数の差が大きい場合には、パネル部材10の冷却時に、第1層14aおよびパッチパネル12の収縮量の差が大きくなる。しかし、熱膨張係数α1,α2が(i)式を満たす場合、すなわち、第1層14aの熱膨張係数が小さい場合には、第1層14aおよびパッチパネル12の熱膨張係数の差を小さくできる。これにより、プレス接着後のパネル部材10の冷却時に、第1層14aおよびパッチパネル12の収縮量の差を小さくできる。その結果、プレス接着後のパネル部材10において、第1層14aとパッチパネル12との界面18近傍に発生する残留応力を小さくできる。これにより、プレス接着後のパネル部材10の変形を抑制できる。
【0037】
上述したように、第1層14aのヤング率は、金属製のパッチパネル12のヤング率よりも低い。第1層14aおよびパッチパネル12のヤング率の差が大きい場合には、パネル部材10に面外変形を伴う振動が発生した際に、第1層14aおよびパッチパネル12の変形量の差が大きくなる。これにより、第1層14aとパッチパネル12との界面18の撓みが大きくなる。しかし、ヤング率E1,E2が(ii)式を満たす場合、すなわち、第1層14aのヤング率が高い場合には、第1層14aおよびパッチパネル12のヤング率の差を小さくできる。これにより、パネル部材10に面外変形を伴う振動が発生した際に、第1層14aおよびパッチパネル12の変形量の差が大きくなることを防止できる。その結果、第1層14aとパッチパネル12との界面18の撓みを抑制できる。また、本実施形態では、上述のように界面18近傍における残留応力の発生が抑制されている。これにより、振動に伴うパッチパネル12の慣性運動によって第1層14aに引張応力が作用しても、界面18近傍において大きな重畳応力(引張応力および残留応力の和)が発生することを防止できる。これらの結果、界面18においてき裂が発生することを抑制でき、パッチパネル12の剥離を抑制できる。
【0038】
パネル部材10では、接着部14において第1層14aよりもメインパネル16側に、第1層14aよりもヤング率が低い第2層14bが設けられる。これにより、接着部14の平均ヤング率(本実施形態では、第1層14aおよび第2層14bのヤング率の平均値)を低くすることができ、パネル部材10に生じた振動を十分に減衰させることができる。すなわち、パネル部材10では、第1層14aによってパッチパネル12の剥離を防止しつつ、第2層14bによってパネル部材10の振動を抑制できる。
【0039】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係るパネル部材20を示す側面図である。パネル部材20が上述のパネル部材10と異なるのは、接着部14の代わりに接着部22を備えている点である。接着部22が接着部14と異なるのは、第1層14aおよび第2層14bの代わりに、第1接着剤層22a、第2接着剤層22bおよび第3接着剤層22c(以下、それぞれ第1層22a、第2層22bおよび第3層22cと略記する。)を備える点である。
【0040】
第1層22aは、パッチパネル12に接触している。第3層22cは、メインパネル16に接触している。第2層22bは、第1層22aと第3層22cとの間に設けられている。第2層22bは、第1層22aおよび第3層22cに接触している。すなわち、本実施形態では、メインパネル16上に、第3層22c、第2層22b、第1層22aおよびパッチパネル12が順に積層されている。
【0041】
なお、第1層22a、第2層22bおよび第3層22cとしては、例えば、上述の第1層14aおよび第2層14bと同様の材料を用いることができる。また、パネル部材20は、例えば、上述のパネル部材10と同様の方法で製造できる。本実施形態では、第1層22a、第2層22bおよび第3層22cの熱膨張係数は、パッチパネル12およびメインパネル16の熱膨張係数よりも大きく、第1層22a、第2層22bおよび第3層22cのヤング率は、パッチパネル12およびメインパネル16のヤング率よりも低い。
【0042】
パネル部材20においては、第1層22aの厚みは、例えば0.02〜1.0mmであり、0.03〜0.5mmであることが好ましい。第2層22bの厚みは、例えば0.02〜1.0mmであり、0.03〜0.5mmであることが好ましい。第3層22cの厚みは、例えば0.03〜1.0mmであり、0.03〜0.5mmであることが好ましい。
【0043】
本実施形態では、下記の(iii)式および(iv)式を満たすように、第1層22a、第2層22bおよび第3層22cの材料が適宜選択される。
α2>max(α1、α3) ・・・ (iii)
E2<min(E1、E3) ・・・ (iv)
但し、(iii)式において、α3は第3層22cの熱膨張係数を意味し、max(α1、α3)はα1およびα3のうち大きい方の値を意味する。(iv)式において、E3は第3層22cのヤング率を意味し、min(E1、E3)はE1およびE3のうち小さい方の値を意味する。
【0044】
上述したように、第1層22aおよび第3層22cの熱膨張係数は、パッチパネル12およびメインパネル16の熱膨張係数よりも大きい。第1層22aおよびパッチパネル12の熱膨張係数の差が大きい場合には、パネル部材20の冷却時に、第1層14aおよびパッチパネル12の収縮量の差が大きくなる。同様に、第3層22cおよびメインパネル16の熱膨張係数の差が大きい場合には、パネル部材20の冷却時に、第3層22cおよびメインパネル16の収縮量の差が大きくなる。
【0045】
しかし、熱膨張係数α1,α2,α3が(iii)式を満たす場合、すなわち、第1層22aおよび第3層22cの熱膨張係数が小さい場合には、第1層22aとパッチパネル12との熱膨張係数の差および第3層22cとメインパネル16との熱膨張係数の差を小さくできる。これにより、プレス接着後のパネル部材20の冷却時に、第1層22aとパッチパネル12との収縮量の差および第3層22cとメインパネル16との収縮量の差を小さくできる。その結果、プレス接着後のパネル部材20において、第1層22aとパッチパネル12との界面24近傍に発生する残留応力および第3層22cとメインパネル16との界面26近傍に発生する残留応力を小さくできる。これにより、プレス接着後のパネル部材20の変形を抑制できる。
【0046】
上述したように、第1層22aおよび第3層22cのヤング率は、パッチパネル12およびメインパネル16のヤング率よりも低い。第1層22aおよびパッチパネル12のヤング率の差が大きい場合には、パネル部材20に面外変形を伴う振動が発生した際に、第1層22aおよびパッチパネル12の変形量の差が大きくなる。これにより、第1層22aとパッチパネル12との界面24の撓みが大きくなる。同様に、第3層22cおよびメインパネル16のヤング率の差が大きい場合には、パネル部材20に面外変形を伴う振動が発生した際に、第3層22cおよびメインパネル16の変形量の差が大きくなる。これにより、第3層22cとメインパネル16との界面26の撓みが大きくなる。
【0047】
しかし、ヤング率E1,E2,E3が(iv)式を満たす場合、すなわち、第1層22aおよび第3層22cのヤング率が高い場合には、第1層22aとパッチパネル12とのヤング率の差および第3層22cとメインパネル16とのヤング率の差を小さくできる。これにより、パネル部材20に面外変形を伴う振動が発生した際に、第1層22aとパッチパネル12との変形量の差および第3層22cとメインパネル16との変形量の差が大きくなることを防止できる。その結果、界面24,26の撓みを抑制できる。また、本実施形態では、上述のように界面24,26近傍における残留応力の発生が抑制されている。これにより、振動に伴うパッチパネル12の慣性運動によって第1層22aおよび第3層22cに引張応力が作用しても、界面24,26近傍において大きな重畳応力(引張応力および残留応力の和)が発生することを防止できる。これらの結果、界面24,26においてき裂が発生することを抑制でき、パッチパネル12の剥離を抑制できる。
【0048】
パネル部材20では、接着部22において第1層22aと第3層22cとの間に、第1層22aおよび第3層22cよりもヤング率が低い第2層22bが設けられる。これにより、接着部22の平均ヤング率(本実施形態では、第1層22a、第2層22bおよび第3層22cのヤング率の平均値)を低くすることができ、パネル部材20に生じた振動を十分に減衰させることができる。すなわち、パネル部材20では、第1層22aおよび第3層22cによってパッチパネル12の剥離を防止しつつ、第2層22bによってパネル部材20の振動を抑制できる。
【0049】
(他の実施形態)
本発明では、少なくとも、上記の(i)式および(ii)式を満たす第1接着剤層および第2接着剤層を有していればよく、接着部の構成は上述の例に限定されない。例えば、上述のパネル部材10において、第1層14aと第2層14bとの間に他の1または複数の接着剤層をさらに設けてもよく、第2層14bとメインパネル16との間に他の1または複数の接着剤層をさらに設けてもよい。例えば、上述のパネル部材20において、第1層22aと第2層22bとの間に他の1または複数の接着剤層をさらに設けてもよく、第2層22bと第3層22cとの間に他の1または複数の接着剤層をさらに設けてもよく、第3層22cとメインパネル16との間に他の1または複数の接着剤層をさらに設けてもよい。
【0050】
また、例えば、第2実施形態と同様に接着部が3つの層から構成されている場合において、第3接着剤層(メインパネルに接触している層)の熱膨張係数およびヤング率が上記の(iii)式および(iv)式を満たしていなくてもよい。
【0051】
上述の実施形態では、接着部の全体が複数の接着剤層によって構成される場合について説明したが、接着部の構成は上述の例に限定されない。例えば、パッチパネルの剥離が特に生じやすい部分についてのみ、本発明の要件を満たすように複数の接着剤層を設けてもよい。具体的には、例えば、パッチパネル12の角部近傍においてのみ、複数の接着剤層によって接着部を構成し、上記角部近傍以外の部分では、1つの接着剤層(すなわち、単層の接着剤)によって接着部を構成してもよい。
【0052】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0053】
実施例1では、パッチパネル、メインパネルおよび接着部の特性を変えて、上述した製造方法によって請求項1に係るパネル部材(以下、本発明例ともいう)および比較例のパネル部材を複数作製した。そして、各パネル部材から、図5に示す形状および寸法の疲労試験片を採取した。なお、図示は省略するが、図5の疲労試験片において、メインパネルの先端部(図5において右端部)は、溶接等によってパッチパネルの下面に接合されている。採取した試験片に繰り返し荷重を与えることによって、面外変形を伴う振動(周波数:25Hz)を生じさせ、パッチパネルの剥離が発生するまでの繰り返し数を求めた。
【0054】
下記の表1に、本発明例および比較例のパネル部材の構成とともに、上記の疲労試験の結果を示す。なお、試験No.1および6において用いた比較例のパネル部材は、接着部が1つの接着剤層からなる。表1に示す繰り返し数は、試験No.1〜5については、試験No.1の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値であり、試験No.6〜10については、試験No.6の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値である。
【0055】
【表1】
【0056】
表1から明らかなように、本発明の要件を満たした試験片では、本発明の要件を満たしていない比較例の試験片に比べて、パッチパネルの剥離が生じるまでの繰り返し数が明らかに増加した。以上のことから、本発明のパネル部材によれば、パッチパネルの剥離を十分に防止できることが分かる。
【実施例2】
【0057】
実施例2では、パッチパネル、メインパネルおよび接着部の特性を変えて、上述した製造方法によって請求項1および3に係るパネル部材(以下、本発明例ともいう)ならびに比較例のパネル部材を複数作製した。そして、各パネル部材から、上記実施例1と同様に、図5に示す形状および寸法の疲労試験片を採取した。採取した試験片に繰り返し荷重を与えることによって、面外変形を伴う振動(周波数:25Hz)を生じさせ、パッチパネルの剥離が発生するまでの繰り返し数を求めた。
【0058】
下記の表2に、本発明例および比較例のパネル部材の構成とともに、疲労試験の結果を示す。なお、試験No.14、15および21において用いた本発明例のパネル部材は、請求項4の要件を満たしている。一方、試験No.20において用いた本発明例のパネル部材は、請求項1の要件は満たしているが、請求項4の要件は満たしていない。試験No.11および16において用いた比較例のパネル部材は、接着部が1つの接着剤層からなる。表2に示す繰り返し数は、試験No.11〜15については、試験No.11の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値であり、試験No.16〜21については、試験No.16の疲労試験片の繰り返し数で除することによって無次元化した値である。
【0059】
【表2】
【0060】
表2から明らかなように、本発明の要件を満たした試験片では、本発明の要件を満たしていない比較例の試験片に比べて、パッチパネルの剥離が生じるまでの繰り返し数が明らかに増加した。特に、請求項4の要件を満たしたパネル部材では、パッチパネルの剥離が十分に防止できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、プレス接着後の変形を抑制できかつパッチパネルの剥離を抑制できるパネル部材が得られる。したがって、本発明のパネル部材は、種々の輸送機器の構成部材として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1、10、20 パネル部材
2、12 パッチパネル
3 接着剤層
4、16 メインパネル
5、6 界面
5a、6a 端部
14、22 接着部
14a、22a 第1接着剤層
14b、22b 第2接着剤層
18、24、26 界面
22c 第3接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5